(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
基材層が、ポリアミド(a)からなるポリアミド(a)繊維と、ポリアミド(a)およびポリアミド(b)を含むポリアミド(ab)からなるポリアミド(ab)繊維とを含み、
前記ポリアミド(b)を構成するジカルボン酸単位とジアミン単位は、
(i)ジカルボン酸単位の60モル%以上が、テレフタル酸単位およびイソフタル酸単位で構成される群から選択される少なくとも一種のジカルボン酸単位であり、
(ii)ジアミン単位の60モル%以上が、2,2,4−トリメチルヘキサンジアミン単位、2,4,4−トリメチルヘキサンジアミン単位および1,6−ヘキサンジアミン単位で構成される群から選択される少なくとも一種のジアミン単位である、
請求項1または2に記載のキャパシタ用セパレータ。
ポリアミド(a)の有機溶媒溶液または溶融液を用いて静電紡糸を行って、ポリアミド(a)からなる平均繊維径10〜600nmのポリアミドフィラメントよりなるナノファイバー層を、基材層上に積層して形成したものである請求項1〜5のいずれか1項に記載のキャパシタ用セパレータ。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明について詳細に説明する。
本発明の積層体は、ナノファイバー層および基材層を有する積層体であって、当該積層体の一方の表面または両方の表面にナノファイバー層が存在する(ナノファイバー層が位置する)積層体からなっている。本発明の積層体は、耐熱性や微粒子除去性能に優れているため、キャパシタ用セパレータ(以下単に「セパレータ」ということがある)やフィルターとして好適に用いることができる。
【0023】
[ナノファイバー層]
本発明の積層体におけるナノファイバー層は、ナノサイズの平均繊維径を有する半芳香族ポリアミドフィラメントから形成されている[以下、ポリアミド(a)よりなるナノサイズの平均繊維径を有するポリアミドフィラメントを、「ポリアミド(a)ナノフィラメント」ということがある]。
【0024】
(ポリアミド(a)ナノフィラメント)
微粒子の除去効率を向上する観点から、ナノファイバー層を形成するポリアミド(a)ナノフィラメントの平均繊維径は、10〜1000nm(好ましくは10〜600nm程度、より好ましくは40〜550nm程度、さらに好ましくは50〜450nm程度)である。1000nmよりも大きいと、ナノファイバー層における孔のサイズ(ポアサイズ)が大きくなり、微粒子の除去効率が低減する虞がある。一方、ポリアミド(a)からなるポリアミドフィラメントの平均繊維径が10nm未満であると、積層体を製造する際の加工性が低下して安定な生産が困難になる場合がある。
【0025】
特に、積層体でセパレータを形成する場合、ナノファイバー層を形成する、ポリアミド(a)ナノフィラメントの平均繊維径は、10〜600nm程度である。600nmよりも大きいと、ナノファイバー層における孔のサイズ(ポアサイズ)が大きくなり、電極物質などの遮蔽性能が低下し、キャパシタに使用した際に漏れ電流が大きくなり、キャパシタの性能の低下を招くので好ましくない。
【0026】
セパレータとしての遮蔽性能およびセパレータ用の積層体を製造する際の生産性の両方を考慮すると、ポリアミド(a)ナノフィラメントの平均繊維径は、40〜500nmであることが好ましく、100〜400nmであることがより好ましい。
【0027】
なお、ここで、本明細書における「平均繊維径」は、以下の実施例に記載した方法で求められる平均繊維径をいう。
【0028】
(ポリアミド(a))
前記ポリアミド(a)ナノフィラメントを形成するポリアミド(a)は、ジカルボン酸単位とジアミン単位よりなるポリアミドであって、ジカルボン酸単位の60モル%以上がテレフタル酸単位であり、ジアミン単位の60モル%以上が1,9−ノナンジアミン単位および/または2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位(言い換えると、1,9−ノナンジアミン単位および2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位で構成される群から選択される少なくとも一種のジアミン単位)であるポリアミド(a)である。このような特定のポリアミド(a)を用いることにより、平均繊維径の小さいナノフィラメントであっても、優れた耐熱性、さらには耐薬品性を実現することができる。
さらに、セパレータとして用いた場合、セパレータの耐熱性が良好になるだけでなく、電解液に侵されにくくなり耐電解液性も良好になる。
【0029】
ポリアミド(a)におけるテレフタル酸単位の割合が全ジカルボン酸単位に対して60モル%未満であると、積層体としての耐熱性が低下するだけでなく、セパレータの耐熱性、耐電解液性なども低下する。
ポリアミド(a)では、耐熱性、耐薬品性(例えば耐電解液性)などの点から、ポリアミド(a)を構成する全ジカルボン酸単位に対して、70モル%以上がテレフタル酸単位であることが好ましく、80モル%以上がテレフタル酸単位であることがより好ましく、90〜100モル%がテレフタル酸単位であることが更に好ましい。
【0030】
ポリアミド(a)が、テレフタル酸単位と共に他のジカルボン酸単位を有する場合は、
他のジカルボン酸単位として、例えば、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、ジ安息香酸、4,4'−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4'−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4'−ジカルボン酸、4,4'−ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸;マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、3,3−ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸の1種または2種以上に由来するジカルボン酸単位を有することができる。
【0031】
また、ポリアミド(a)は、必要に応じて、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸などの多価カルボン酸に由来する構造単位を、上記したポリアミド(a)ナノフィラメントの形成が可能な範囲で有していてもよい。
そのうちでも、ポリアミド(a)では、ポリアミド(a)を構成する全ジカルボン酸単位に対して、芳香族ジカルボン酸単位の割合が、75モル%以上、特に100モル%であることが、セパレータの耐熱性、耐電解液性などの点から好ましい。
【0032】
全ジアミン単位に対する1,9−ノナンジアミン単位および/または2−メチル−1,
8−オクタンジアミン単位の割合(1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位の両方を有する場合は両単位の合計割合)が60モル%未満であるポリアミドは、一般に耐熱性、耐薬品性(例えば、耐電解液性)などに劣る。
【0033】
かかる点から、ポリアミド(a)の耐熱性および耐電解液性を良好なものとするために、ポリアミド(a)を構成する全ジアミン単位に対して、1,9−ノナンジアミン単位および/または2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位の割合は60モル%以上であり、70モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、90〜100モル%であることが更に好ましい。
【0034】
ポリアミド(a)における全ジアミン単位が1,9−ノナンジアミン単位単独からなっていても、または全ジアミン単位が2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位単独からなっていてもよいが、ポリアミド(a)は、1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位の両方を有していることが好ましい。特に1,9−ノナンジアミン単位:2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位の含有比率が、モル比で30:70〜99:1、特に40:60〜95:5であることが耐熱性の点からより好ましい。
【0035】
ポリアミド(a)が、1,9−ノナンジアミン単位および/または2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位と共に他のジアミン単位を有する場合は、他のジアミン単位として、1,9−ノナンジアミンおよび2−メチル−1,8−オクタンジアミン以外の炭素数が6〜12のアルキレンジアミン、具体例としては、1,6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミン、5−メチル−1,9−ノナンジアミン;前記した炭素数6〜12のアルキレンジアミン以外のジアミン、具体例としては、エチレンジアミン、1,4−ブタンジアミンなどの脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、メチルシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、ノルボルナンジメチルジアミン、トリシクロデカンジメチルジアミンなどの脂環式ジアミン;p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、キシリレンジアミン、キシレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルメタン、4,4'−ジアミノジフェニルスルホン、4,4'−ジアミノジフェニルエーテルなどの芳香族ジアミンの1種または2種以上に由来するジアミン単位を有していることができる。
【0036】
ポリアミド(a)では、ポリアミド(a)を構成する全ジアミン単位に対して、炭素数6〜12のアルキレンジアミン単位の割合が、1,9−ノナンジアミン単位および2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位をも含めて、75モル%以上、特に90モル%以上であることが、耐熱性の点から好ましい。
【0037】
また、ポリアミド(a)では、当該ポリアミド分子鎖におけるアミド結合(−CONH−)とメチレン基(−CH
2−)のモル比[(−CONH−)/(−CH
2−)]が、1/2〜1/8、特に1/3〜1/5であることが好ましい。ポリアミド(a)におけるアミド結合とメチレン基のモル比が前記範囲内であると、積層体としての耐熱性、さらにはセパレータの耐電解液性および耐熱性が優れたものになる。
【0038】
ポリアミド(a)は、その極限粘度(濃硫酸30℃で測定した値)が0.6〜2dl/gであることが好ましく、0.6〜1.8dl/gであることがより好ましく、0.7〜1.6dl/gであることが更に好ましい。ポリアミド(a)の極限粘度が前記範囲内であると、繊維化時の溶融粘度特性が良好になる。そのため、ナノファイバー層を有していても、積層体としての強度や耐熱性、さらには、セパレータの強度、耐電解液性および耐熱性が優れたものになる。
なお、本明細書におけるポリアミドの極限粘度は、以下の実施例に記載した方法で求めた極限粘度である。
【0039】
また、ポリアミド(a)は、その分子鎖の末端基の10%以上、更には40%以上、特に70%以上が末端封止剤により封止されていることが好ましい。ポリアミド(a)の分子鎖の末端が前記割合で封止されていると、セパレータの強度、耐電解液性、耐熱性等が優れたものとなる。
【0040】
末端封止剤としては、ポリアミド末端のアミノ基またはカルボキシル基と反応性を有する単官能性の化合物であればとくに制限はないが、反応性および封止末端の安定性などの点からモノカルボン酸、モノアミンが好ましい。取り扱いの容易さ、反応性、封止末端の安定性、価格の点でモノカルボン酸が好ましい。モノカルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、安息香酸などを挙げることができる。なお、末端の封止率は
1H−NMRにより、各末端基に対応する特性シグナルの積分値より求めることができる。
【0041】
本発明の積層体は、微粒子の捕集効率と、十分な通気または通液量とをかね揃える観点から、ナノファイバー層の厚さが3〜30μmであることが好ましく、5〜27μmであることがより好ましく、7〜25μmであることが更に好ましい。ナノファイバー層の厚みがこのような範囲内であると、本発明の積層体でセパレータを形成する場合、セパレータを薄葉化してキャパシタにおける電極物質の充填容積を増大させ、それによってキャパシタにおける電極物質の充填量を増加させてキャパシタの性能を向上させることができる。
【0042】
また、通気性または通液性と、微粒子などの捕集効率とを両立する観点から、ナノファイバー層の目付は、0.1〜10g/m
2であることが好ましく、0.2〜5g/m
2であることがより好ましい。ナノファイバー層の目付がこのような範囲内であると、本発明の積層体からなるセパレータの内部抵抗を低減できるとともに、電極物質の遮蔽性能などを向上することができる。
【0043】
そして、本発明の積層体およびセパレータでは、通気性または通液性の確保、内部抵抗の低減、微粒子などの捕集効率、電極物質の遮蔽性能などの点から、ナノファイバー層の密度(嵩密度)は、0.08〜0.5g/cm
3であることが好ましく、0.1〜0.45g/cm
3であることがより好ましく、0.14〜0.4g/cm
3であることが更に好ましい。
【0044】
微粒子の捕集効率を高める観点から、ポリアミド(a)ナノフィラメントよりなるナノファイバー層の空隙率は、50〜95%であることが好ましく、60〜93%であることがより好ましい。このような空隙率であると、微粒子との接触面積を広くして、微粒子を効率よく捕集できる。
【0045】
また、特に積層体をセパレータとして用いる場合、キャパシタに用いた際に内部抵抗を低くして電解液の通過が良好に行われるセパレータを得るために、ポリアミド(a)ナノフィラメントよりなるナノファイバー層の空隙率は、65〜95%であることが好ましく、70〜90%であることがより好ましい。ナノファイバー層の空隙率が65%未満であると、キャパシタのセパレータとして使用したときに、内部抵抗が高くなって、電解液の通過が円滑に行われなくなり、キャパシタの性能が劣ったものになり易い。一方、ナノファイバー層の空隙率が95%よりも大きいと、空隙が広くなりすぎて、電極物質などの遮蔽性が低下して漏れ電流が大きくなり、キャパシタの性能が劣ったものになり易い。
【0046】
微細なフィブリル繊維や細繊度の短繊維を含む抄造原料を湿式抄造して製造した従来のセパレータでは、空隙率を高くする(例えば、65%以上にする)ことが困難で、内部抵抗が高いため、キャパシタに用いたときに電解液が良好に通過せず、滑らかで安定した充放電ができにくいが、本発明のセパレータでは、電極物質などの遮蔽層として機能するナノファイバー層が、短繊維やフィブリル繊維を用いる湿式抄造ではなくて、平均繊維径10〜600nmのポリアミド(a)ナノフィラメントが堆積(集積)した層(不織布層)であるため、ナノファイバー層の空隙率を上記した65〜95%という高い値にすることができる。
なお、ここで、本明細書における「空隙率」は、以下の実施例に記載する方法で求められる空隙率をいう。
【0047】
平均繊維径が10〜1000nm(特に10〜600nm)のポリアミド(a)ナノフィラメントから構成される前記した物性を有するナノファイバー層は、以下で説明するように、ポリアミド(a)の有機溶媒溶液または溶融液を用いて静電紡糸を行って、ポリアミド(a)ナノフィラメントの層を、基材層上に不織布状に積層(堆積)することによって円滑に形成することができる。
【0048】
[基材層]
本発明の積層体における基材層は、ジカルボン酸単位とジアミン単位よりなるポリアミドであって、ジカルボン酸単位の60モル%以上がテレフタル酸単位であり、ジアミン単位の60モル%以上が1,9−ノナンジアミン単位および/または2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位であるポリアミド(a)からなる繊維を少なくとも含む繊維から形成されている。
【0049】
(ポリアミド(a)繊維)
基材層を構成している「ポリアミド(a)からなるポリアミド繊維」[以下「ポリアミ
ド(a)繊維」ということがある]を形成しているポリアミド(a)は、ナノファイバー層を構成するポリアミド(a)ナノフィラメントを形成しているポリアミド(a)と同じ範疇に属するポリアミドである。
【0050】
基材層を構成するポリアミド(a)繊維は、ポリアミド(a)ナノフィラメントを形成しているポリアミド(a)と全く同じポリアミドから形成されていてもよいし、またはポリアミド(a)の範疇に属するが、ポリアミド(a)ナノフィラメントを形成しているのとは異なるポリアミドから形成されていてもよい。
【0051】
本発明の積層体(例えば、セパレータ)では、積層体におけるナノファイバー層がポリアミド(a)ナノフィラメントから形成され、基材層がポリアミド(a)繊維を少なくとも含む繊維から形成されていて、ナノファイバー層と基材層とが同じ又は同種のポリアミドから形成されているので、ナノファイバー層と基材層とが強固に接着してナノファイバー層と基材層との間のズレがなく、機械的特性、耐久性、取り扱い性に優れる。
しかも、この積層体からなるセパレータをキャパシタに使用する場合、ナノファイバー層と基材層とのズレによる漏れ電流の発生などが生じにくくなる。
【0052】
ポリアミド(a)ナノフィラメントから構成されるナノファイバー層と、ポリアミド(a)繊維を含む繊維から構成される基材層とが積層した本発明の積層体は、通常5g/30mm以上の高い剥離強力を有している。本発明の積層体におけるナノファイバー層と基材層との剥離強力は5〜100g/30mmであることが好ましく、7.5〜75g/30mmがより好ましく、10〜50g/30mmであることがさらに好ましい。
なお、本願明細書における剥離強力は以下の実施例に記載する方法で測定した剥離強力をいう。
【0053】
このような剥離強力を有する積層体は、ナノファイバー層と基材層との一体性が高く、積層体としての耐久性に優れるだけでなく、通気性や通液性と、微粒子の捕集効率とを両立することができる。
【0054】
なお、剥離強力が100g/30mmを超える積層体では、高い剥離強力を付与するために多量の接着成分を含む場合が多く、それにより積層体の空隙が接着成分で塞がれる可能性がある。そのため、積層体の剥離強力の上限は100g/30mmが好ましい。特に、積層体をセパレータとして用いる場合、内部抵抗の高いセパレータとなるのを防ぐ観点から、剥離強力の上限が100g/30mmであるのが好ましい。
【0055】
前記した剥離強力は、ナノファイバー層と基材層とを公知または慣用の接着剤により接着することにより達成してもよいが、基材層を、ポリアミド(a)繊維と共に接着成分をなすポリアミドバインダー繊維を含む繊維混合物を用いて形成することによって、接着剤を外部から付与しなくとも、ナノファイバー層と基材層の剥離強力をより高くすることができる。
【0056】
基材層は、ポリアミド(a)繊維単独から形成されていてもよいが、ナノファイバー層と基材層の接着を強固にし、且つ基材層を形成する繊維間の結合を強くして、機械的特性、耐久性、取り扱い性により優れ、漏れ電流の発生の原因となる層間のズレのないセパレータを得るためには、基材層を、ポリアミド(a)繊維と、後述するポリアミドバインダー繊維(またはポリアミド(ab)繊維)との繊維混合物から形成することが好ましい。
【0057】
熱接着性と耐熱性とは、相反する性質であるが、基材層を、ポリアミド(a)繊維とポリアミド(ab)繊維との繊維混合物から形成するだけでなく、この基材層と、ポリアミド(a)繊維から形成したナノファイバー層とを組み合わせると、基材層とナノファイバー層を熱接着して積層できるだけでなく、得られた積層体は、優れた耐熱性をも実現することができる。
【0058】
特に、基材層を、ポリアミド(a)繊維と混合ポリアミド(ab)繊維を混合した繊維混合物から形成することによって、上記した5〜100g/30mmという高い接着強力を有するセパレータを円滑に得ることができる。
【0059】
(混合ポリアミド(ab)繊維)
バインダー成分をなすポリアミドバインダー繊維は、前記したポリアミド(a)とポリアミド(b)とを混合した混合ポリアミド(ポリアミド組成物)[以下「混合ポリアミド(ab)」ということがある]から形成した繊維[以下「混合ポリアミド(ab)繊維」ということがある]である。
【0060】
(ポリアミド(a))
なお、ポリアミド(a)は、前述の通り、ジカルボン酸単位とジアミン単位よりなるポリアミドであってジカルボン酸単位の60モル%以上がテレフタル酸単位であり、ジアミン単位の60モル%以上が1,9−ノナンジアミン単位および/または2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位であるポリアミドである。
【0061】
(ポリアミド(b))
ポリアミド(b)は、ジカルボン酸単位とジアミン単位よりなるポリアミドであって、ジカルボン酸単位の60モル%以上がテレフタル酸単位および/またはイソフタル酸単位(すなわち、ジカルボン酸単位の60モル%以上が、テレフタル酸単位およびイソフタル酸単位で構成される群から選択される少なくとも一種のジカルボン酸単位)であり、ジアミン単位の60モル%以上が2,2,4−トリメチルヘキサンジアミン単位、2,4,4−トリメチルヘキサンジアミン単位および1,6−ヘキサンジアミン単位から選択される少なくとも一種のジアミン単位である。
【0062】
ポリアミド(b)では、ポリアミドを構成する全ジカルボン酸単位の60モル%以上がテレフタル酸単位および/またはイソフタル酸単位からなる。ポリアミド(b)におけるテレフタル酸単位および/またはイソフタル酸単位の含有割合が60モル%未満であると、混合ポリアミド(ab)繊維の接着性、セパレータの耐電解液性などが低下する。
【0063】
混合ポリアミド(ab)繊維の接着性、セパレータの耐電解液性などの点から、ポリアミド(b)では、全ジカルボン酸単位に対して、70モル%以上がテレフタル酸単位および/またはイソフタル酸単位であることが好ましく、80モル%以上がテレフタル酸単位および/またはイソフタル酸単位であることがより好ましく、90〜100モル%がテレフタル酸単位および/またはイソフタル酸単位であることが更に好ましい。
【0064】
ポリアミド(b)が、テレフタル酸単位および/またはイソフタル酸単位と共に他のジカルボン酸単位を有する場合は、他のジカルボン酸単位として、例えば、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,4−フェニレンジオキシジ酢酸、1,3−フェニレンジオキシジ酢酸、ジフェン酸、ジ安息香酸、4,4’−オキシジ安息香酸、ジフェニルメタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルスルホン−4,4’−ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、3,3−ジエチルコハク酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、スベリン酸などの脂肪族ジカルボン酸;1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸の1種または2種以上に由来するジカルボン酸単位を有することができる。
【0065】
なかでも積層体の耐熱性と接着性とを両立する観点から、ポリアミド(b)では、ジカルボン酸単位の100%がテレフタル酸および/またはイソフタル酸であることが好ましい。また、ポリアミド(b)におけるテレフタル酸単位:イソフタル酸単位の比率(モル比)は、100:0〜0:100とすることができ、特に70:30〜50:50であることが好ましい。特に、このような積層体から形成されたセパレータは、強度、耐薬品性、耐電解液性、耐酸化性などに優れている。
【0066】
ポリアミド(b)では、接着性の観点から、全ジアミン単位に対して、2,2,4−トリメチルヘキサンジアミン単位、2,4,4−トリメチルヘキサンジアミン単位および1,6−ヘキサンジアミン単位から選ばれる1つ以上のジアミン単位を、60モル%以上の割合で有しており、70モル%以上の割合で有することが好ましく、80モル%以上の割合で有することがより好ましく、100モル%の割合で有することが更に好ましい。
【0067】
ポリアミド(b)において、2,2,4−トリメチルヘキサンジアミン単位、2,4,
4−トリメチルヘキサンジアミン単位および1,6−ヘキサンジアミン単位から選ばれる1つ以上のジアミン単位の割合が少なすぎると、接着性が低下し、セパレータの耐電解液性、強度などが低下する。
【0068】
2,2,4−トリメチルヘキサンジアミン単位、2,4,4−トリメチルヘキサンジアミン単位および1,6−ヘキサンジアミン単位から選ばれる1つ以上のジアミン単位を60モル%以上の割合で有するポリアミド(b)においては、[1,6−ヘキサンジアミン単位]:[1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位の合計]のモル比が100:0〜50:50、特に100:0〜60:40であることが好ましい。また、ポリアミド(b)が1,9−ノナンジアミン単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位の双方を有する場合は、[1,9−ノナンジアミン単位]:[2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位]のモル比が99:1〜40:60、特に90:10〜45:55であることが好ましい。ジアミン単位を前記範囲のモル比にすることにより、バインダー繊維である混合ポリアミド(ab)繊維の接着性能と分散性能のバランスが良好になる。
【0069】
また、ポリアミド(b)では、当該ポリアミド分子鎖におけるアミド結合(−CONH−)とメチレン基(−CH
2−)のモル比[(−CONH−)/(−CH
2−)]が、1/2〜1/8、特に1/3〜1/5であることが好ましい。ポリアミド(b)におけるアミド結合とメチレン基のモル比が前記範囲内であると、積層体の耐熱性および耐薬品性、特にセパレータの耐電解液性および耐熱性が優れたものになる。
【0070】
ポリアミド(b)は、その極限粘度(濃硫酸30℃で測定した値)が0.6〜2.5dl/gであることが好ましく、0.7〜2dl/gであることがより好ましく、0.8〜1.7dl/gであることが更に好ましい。ポリアミド(b)の極限粘度が前記範囲内であると、繊維化時の溶融粘度特性が良好になり、繊維形成性だけでなく、耐熱性および耐薬品性も向上することができる。しかも、セパレータとして用いた場合、セパレータの強度、耐電解液性、耐熱性が優れたものになる。
【0071】
また、ポリアミド(b)は、その分子鎖の末端基の10%以上、更には40%以上、特に70%以上が末端封止剤により封止されていることが好ましい。ポリアミド(b)の分子鎖の末端が前記割合で封止されていると、積層体の耐熱性および耐薬品性、特にセパレータの強度、耐電解液性、耐熱性等が優れたものとなる。
【0072】
末端封止剤としては、ポリアミド末端のアミノ基またはカルボキシル基と反応性を有する単官能性の化合物であればとくに制限はないが、反応性および封止末端の安定性などの点からモノカルボン酸、モノアミンが好ましい。取り扱いの容易さ、反応性、封止末端の安定性、価格の点でモノカルボン酸が好ましい。モノカルボン酸としては、例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、安息香酸などを挙げることができる。なお、末端の封止率は
1H−NMRにより、各末端基に対応する特性シグナルの積分値より求めることができる。
【0073】
混合ポリアミド(ab)繊維を製造するための混合ポリアミド(ab)におけるポリアミド(a)とポリアミド(b)の混合割合は、質量比で、ポリアミド(a):ポリアミド(b)=10:90〜90:10が好ましく、15:85〜70:30がより好ましく、20:80〜40:60が更に好ましい。ポリアミド(a)とポリアミド(b)の混合比率を前記範囲にすることにより、接着性能および分散性能においてバランスのとれた混合ポリアミド(ab)繊維が得られる。
混合ポリアミド(ab)は、ポリアミド(a)とポリアミド(b)を押出機などを用いて溶融混練することによって得ることができる。
【0074】
基材層を、主体繊維であるポリアミド(a)繊維とバインダー繊維である混合ポリアミド(ab)繊維を混合した繊維混合物から形成する場合は、両者の混合割合は、質量比で、ポリアミド(a)繊維:混合ポリアミド(ab)繊維=90:10〜50:50であることが好ましく、80:20〜55:45であることがより好ましい。バインダー繊維である混合ポリアミド(ab)繊維の割合が多くなり過ぎると、積層体の力学的強度や剥離強力は増すが、混合ポリアミド(ab)繊維によって積層体の空隙が埋まってしまって空隙率が低下してしまう虞がある。その結果、セパレータとして用いた場合、内部抵抗の高いセパレータとなり、キャパシタに使用しても性能に優れるキャパシタが得られなくなる可能性がある。
なお、基材層は、性能の低下を招かない範囲で、ポリアミド(a)繊維および混合ポリアミド(ab)繊維以外の他の繊維を含んでいてもよい。
【0075】
基材層を形成するポリアミド(a)繊維および混合ポリアミド(ab)繊維の繊維形態としては、短繊維、フィラメント(長繊維)、それらの混合物などのいずれであってもよい。
【0076】
基材層を構成するポリアミド(a)繊維および混合ポリアミド(ab)繊維の単繊維繊度は、通気性または通液性と、強度とを両立する観点から、0.01〜5.0dtexであることが好ましく、0.06〜3dtexであることがより好ましい。基材層を構成する繊維の単繊維繊度が小さすぎると、強度に耐える目付とした場合に抵抗値が高くなってしまい、電解液の通過性に劣るようになり、一方単繊維繊度が大きすぎると基材層を構成する繊維の本数が少なくなり、基材層、ひいてはセパレータの強度が低下し易くなる。
基材層を形成するポリアミド(a)繊維および混合ポリアミド(ab)繊維の製造方法は特に制限されず、例えば溶融紡糸方法などによって製造することができる。
【0077】
基材層の形態としては、不織布、織布、編布などのいずれであってもよく、セパレート性、機械的特性などの点から不織布であることが好ましい。
基材層が不織布からなる場合は、湿式抄造不織布、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、スパンレース不織布、サーマルボンド不織布、ケミカルボンド不織布、エアレイド不織布、ニードルパンチ不織布などのいずれであってもよい。そのうちでも、湿式抄造不織布であることが、薄くて均一な基材層用シート(不織布)が得られる点から好ましい。
【0078】
基材層の厚さは、通気性または通液性と、強度とを両立する観点から、15〜70μmであることが好ましく、20〜50μmであることがより好ましく、23〜40μmであることが更に好ましい。特に、基材層がこのような範囲の厚みであると、積層体をセパレータとして用いた場合、セパレータを薄葉化してキャパシタにおける電極物質の充填容積を増大させ、それによってキャパシタにおける電極物質の充填量を増加させてキャパシタの性能を向上させることができる。
【0079】
基材層は、積層体の製造時にナノファイバー層を支持するための支持体としての役割を持つことから、セパレータをなす積層体の生産工程に耐えうる強力物性が必要であり、そのため基材層の目付は、5〜50g/m
2であることが好ましく、8〜30g/m
2であることがより好ましい。基材層の目付が小さすぎると、積層体の生産工程に耐えうる強力を確保できない。また、積層体をセパレータとして用いる場合、基材層の目付が大きすぎると、基材層が厚くなり過ぎ、それに伴ってセパレータの厚さが大きくなりすぎて、キャパシタに用いたときに電極間距離が遠くなり、キャパシタの抵抗が大きくなり、性能に優れるキャパシタが得られなくなる。
【0080】
通気性または通液性と、強度とを両立する観点から、基材層の空隙率は50〜80%であることが好ましく、55〜70%であることがより好ましい。例えば、基材層の空隙率が低くなりすぎると、キャパシタのセパレータとして使用したときに、内部抵抗が高くなって、電解液の通過が円滑に行われなくなり、キャパシタの性能に劣ったものになり易い。一方、基材層の空隙率が大きすぎると、基材層の強度が低下し、ナノファイバー層の支持体(補強層)として機能しにくくなる。
【0081】
そして、本発明の積層体およびセパレータでは、通気性または通液性、強度などの点から、基材層の密度(嵩密度)は、0.25〜0.7g/cm
3であることが好ましく、0.3〜0.6g/cm
3であることがより好ましく、0.35〜0.55g/cm
3であることが更に好ましい。
【0082】
[積層体]
ナノファイバー層および基材層を有する積層体(セパレータ)では、ナノファイバー層が、積層体(セパレータ)の一方の表面または両方の表面に少なくとも存在し(位置し)、一方または両方の表面に少なくとも存在するサイズの小さな孔を有するナノファイバー層が、電極から脱落した電極物質の通過を阻止する遮蔽層として機能する。
【0083】
本発明の積層体の具体例としては、ナノファイバー層/基材層からなる2層構造積層体、ナノファイバー層/基材層/ナノファイバー層からなる3層構造積層体、ナノファイバー層/基材層/ナノファイバー層/基材層/ナノファイバー層からなる5層構造積層体、ナノファイバー層/基材層/ナノファイバー層/基材層/ナノファイバー層/基材層/ナノファイバー層からなる7層構造積層体などを挙げることができる。
【0084】
ナノファイバー層が複数あると、一方の表面のナノファイバー層が製造工程中に擦過などで損傷した場合にも残りのナノファイバー層で、微粒子(例えば、粉塵、電極物質など)の通過を阻止することができ、積層体の捕集性能や、セパレータの遮蔽性能が良好に維持される。但し、全体の層数が多くなると、セパレータの厚さが大きくなり、内部抵抗の増加を招き易くなるので、内部抵抗が高くならないようにすることが必要である。
【0085】
積層体(セパレータ)が厚くなり過ぎず、遮蔽性能、キャパシタに用いたときに内部抵抗の増加の防止、積層体(セパレータ)の製造工程の簡素化、セパレータの薄葉化によるキャパシタにおける電極物質の充填容積の増大と電極物質の充填量の増加によるキャパシタの高性能化などの点から、セパレータは、ナノファイバー層/基材層からなる2層構造積層体およびナノファイバー層/基材層/ナノファイバー層からなる3層構造積層体、特に後者の3層構造積層体からなっていることが好ましい。
【0086】
本発明の積層体(セパレータ)では、全体の厚さ(総厚み)を18〜100μm、特に25〜50μm(例えば、27〜49.5μm)とすると、強度、取り扱い性、内部抵抗の低減、セパレータの薄葉化によるキャパシタにおける電極物質の充填容積の増大と電極物質の充填量の増加によるキャパシタの高性能化などの点から好ましい。
【0087】
また、積層体の総厚みに応じて、ナノファイバー層の厚みに対する基材層の厚みも適宜設定することができるが、例えば、ナノファイバー層の厚みに対する基材層の厚みは、0.8〜3.5倍程度が好ましく、より好ましくは0.9〜3.3倍程度、さらに好ましくは1.0〜3倍程度である。ナノファイバー層の厚みと基材層の厚みとを、上記の範囲に設定すると、積層体におけるナノファイバー層の特性を有効に発揮できるとともに、積層体全体の強度を維持することができ、積層体の耐久性を向上することができる。
【0088】
本発明の積層体では、積層体の微粒子捕集性と通気性または通液性とを両立する観点から、積層体全体での平均ポアサイズ(平均孔径)が0.1〜10μmであることが好ましく、0.2〜9μmであることがより好ましく、0.3〜8μmであることが更に好ましい。
【0089】
また、本発明の積層体をセパレータとして用いた場合、電極物質などの遮蔽性能を良好なものとし且つ内部抵抗を低くするために、セパレータ全体での平均ポアサイズ(平均孔径)は、0.1〜10μmであることが好まし、0.15〜5μmであることがより好ましく、0.2〜3μmであることが更に好ましい。
セパレータにおける平均ポアサイズが小さすぎると、電極物質などの遮蔽性能は向上するが内部抵抗が高くなって電解液の通過性が低下し、一方平均ポアサイズが大きすぎると電極物質などの遮蔽性が低下して漏れ電流が大きくなり易い。
ここで、本明細書でいうセパレータの「平均ポアサイズ(平均孔径)」は、以下の実施
例に記載する方法で測定した平均ポアサイズ(平均孔径)である。
【0090】
本発明の積層体は、特定のポリアミドを用いてナノファイバー層と基材層とを形成するため、耐熱性に優れており、例えば、真空下で200℃に保持した乾燥機中で24時間乾燥処理しても、加熱前後の寸法変化率は、例えば、2.5%未満であり、好ましくは2.3%以下であり、さらに好ましくは2.1%以下であってもよい。
【0091】
なお、加熱後の寸法変化率が大きすぎると(例えば、3.0%以上)、積層体をエンジンルームなどの過酷な条件下での使用に際すると、熱収縮が発生してしまうため、短期間で使用できなくなり、耐久性に欠ける。さらに、積層体をセパレータとして用いた場合、キャパシタ成型時の乾燥工程で収縮が発生し、電極同士が接してしまうため、キャパシタとして機能しなくなってしまう。
ここで、本明細書でいうセパレータの「加熱前後の寸法変化率」は、以下の実施
例に記載する方法で測定した加熱前後の寸法変化率である。
【0092】
本発明のセパレータをなす積層体の製法は特に制限されないが、本発明のセパレータをなす積層体は、ポリアミド(a)繊維から構成される基材シート、またはポリアミド(a)繊維と混合ポリアミド(ab)繊維の繊維混合物から構成される基材シートに向けて、ポリアミド(a)の有機溶媒溶液または溶融液を用いて静電紡糸して、基材シート上に平均繊維径10〜600nmのポリアミド(a)ナノフィラメントよりなるナノファイバー層を不織布状に積層(堆積)して、ナノファイバー層を一方または両方の表面に少なくとも有するナノファイバー層と基材層との積層体を形成し、その後に必要に応じて(好ましくは)当該積層体を、混合ポリアミド(ab)繊維は軟化または溶融するが、ポリアミド(a)ナノフィラメントおよびポリアミド(a)繊維は軟化および溶融しない温度で熱プレスすることによって円滑に製造することができる。
ナノファイバー層を両方の表面に合計で2層有する積層体は、上記した操作を一方の表面側ともう一方の表面側とで2回繰り返して行ってもよいし、または基材層の両面にナノファイバー層を同時に形成できる静電紡糸装置を用いて1回の操作で製造してもよい。
【0093】
静電紡糸に当たって、ポリアミド(a)を有機溶媒に溶解して調製した溶液を紡糸原液として用いる場合は、有機溶媒としては、ポリアミド(a)を溶解し得る有機溶媒のいずれもが使用でき、具体例としては、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)、フェノール、クレゾール、濃硫酸、蟻酸などのプロトン性極性溶媒、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMAc)などの非プロトン性極性溶媒などを挙げることができる。そのうちでも、有機溶媒としては、ヘキサフルオロイソプロパノール、蟻酸が紡糸原液の安定性の点から好ましく用いられる。
【0094】
ポリアミド(a)の有機溶媒溶液におけるポリアミド(a)の濃度は、2〜20質量%
が好ましく、特に3〜15質量%であることが、平均繊維径10〜600nmのポリアミド(a)ナノフィラメントを円滑に製造できる点から好ましい。ポリアミド(a)の有機溶媒溶液におけるポリアミド(a)の濃度が低すぎると、静電紡糸したときにビーズ状の塊になり易く、一方濃度が高すぎると、ポリアミド(a)ナノフィラメントの平均繊維径が前記範囲よりも大きくなり易い。
【0095】
また、ポリアミド(a)を加熱溶融して調製した溶融液を紡糸原液として用いる場合には、ポリアミド(a)を好ましくは250〜370℃、より好ましくは270〜350℃に加熱溶融して静電紡糸を行うとよい。溶融温度が低すぎると、溶融液の粘度が高くなり過ぎて、得られるポリアミド(a)ナノフィラメントの平均繊維径が大きくなり、平均繊維径10〜600nmのポリアミド(a)ナノフィラメントが得られにくくなる。一方、溶融温度が高すぎると、ポリアミドの熱分解による劣化が生じ易い。
【0096】
静電紡糸方法には特に制限はなく、紡糸原液を供給できる導電性部材に高電圧を印加することで、接地した対極側にナノファイバーを堆積させる方法であればいずれの方法を採用してもよい。その際に対極側に基材層をなす基材を配置しておくことにより、基材層上にポリアミド(a)ナノフィラメントからなるナノファイバー層が不織布状に堆積・積層した積層体が形成される。
【0097】
紡糸原液の供給部から吐出された紡糸原液は、高電圧の印加によって帯電分割され、次いで電場により液滴の一点から繊維(ナノフィラメント)が連続的に引き出され、分割された繊維が多数拡散する。有機溶媒溶液を紡糸原液として用いた場合には紡糸原液におけるポリアミド(a)の濃度が10質量%下であっても有機溶媒は繊維形成と細化の段階で容易に蒸発して除かれて、また溶融液を紡糸原液として用いた場合には溶融温度以下に冷却されて、紡糸原液の供給部より数cm〜数十cm離れて設置された捕集ベルトまたは捕集シート上に配置した基材層用の繊維シート上に堆積する。堆積と共に半乾燥状態にあるナノフィラメント同士が微膠着し、ナノフィラメント間の移動が阻止され、新たなナノフィラメントが逐次堆積し、ナノフィラメントよりなるナノファイバー層が形成される。
【0098】
何ら限定されるものではないが、本発明のセパレータをなす積層体の製造に好ましく用いられる製造装置の一例として、
図1に示す静電紡糸装置を挙げることができる。
図1において、1は紡糸原液を供給するためのポンプ、2は分配整流ブロック、3は口金部、4は突出した口金、5は電気絶縁部、6は直流高電圧発生電源、7は無端コンベアからなる移送装置、8は導電性部材を示す。
【0099】
図1の装置を使用して、本発明のセパレータをなす、ナノファイバー層と基材層を有する積層体を製造する方法について説明する。
ポリアミド(a)の有機溶媒溶液または溶融液よりなる紡糸原液は、定量ポンプ1により計量されて、分配整流ブロック2により均一な圧力と液量となるように分配されて口金部3に送られる。口金部3には中空針状の1ホール毎に突出させた口金4が取り付けられ、電気絶縁部5によって電気が口金部3全体に洩れるのを防止している。導電材料で作られた突出した口金4は無端コンベアからなる移送装置7の進行方向に直角方向に多数並列に垂直下向きに取り付けられ、直流高電圧発生電源6の一方の出力端子を該突出した口金4に取り付け、各突出口金4は導線により印加を可能にしている。移送装置7の無端コンベアにはアースをとった導電性部材8が取り付けられ、印加された電位が中和できるようになっている。
図1には示してないが、基材シートを移送装置7の無端コンベアに取り付けた導電性部材上に無端コンベアを包囲するようにして巻き付けるか、または移送装置7の無端コンベアに取り付けた導電性部材8上に長尺または短尺の基材シートを載置して、基材シートを無端コンベアによって
図1の右側から左側へと移送する。口金部3より突出口金4に圧送された紡糸原液は帯電分裂され、次いで電場により液滴の1点からファイバーが連続的に引き出され分割された繊維(ナノフィラメント)が多数拡散し、半乾燥の状態で移送装置7に取り付けられた導電性部材8の上に巻き付けられているかまたは導電性部材8上に載置されている基材シート上に堆積し、微膠着が進み、移送装置7により移動され、その移動と共に次の突出口金からのナノフィラメントの堆積を受け、次々と堆積を繰り返しながら均一なシート状のナノファイバー層が基材シート上に形成され、ナノファイバー層と基材層を有するセパレータ用の積層体が形成される。
【0100】
上記により得られるナノファイバー層と基材層よりなるセパレータ用の積層体は、必要に応じて、エンボス処理やカレンダー処理による熱圧融着を行ってナノファイバー層と基材層をより強固に接着させてもよい。
また、上記により得られるセパレータ用の積層体は、必要に応じて熱プレスまたは冷間プレスを行って、目的とする厚さに調整してもよい。
【0101】
そして、本発明のセパレータを正極と負極との間に配置して素子を形成し、当該素子に電解液を含浸させることによって、キャパシタ(電気二重層キャパシタ)を形成することができる。前記キャパシタにおける正極および負極の種類、電解液の種類などは特に限定されず、キャパシタ、特に電気二重層キャパシタにおいて従来から採用されているものを用いることができる。特に、本発明のセパレータは、炭素質の正極および負極を備え、電解液として非水系の有機系電解液[例えば、テトラアルキルアンモニウムカチオンとBF
4-,PF
6-,SO
3CF
3-,AsF
6-,N(SO
2CF
3)
2-,ClO
4−などのアニオンとの塩をプロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、スルホラン、メチルスルホランなどの有機溶媒に溶解した電解液]を用いる電気二重層キャパシタ用のセパレータとして適している。
【実施例】
【0102】
以下に本発明を実施例などにより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。以下の例において、各物性値は以下のようにして測定した。
【0103】
(1)ポリアミドの極限粘度:
硫酸中、30℃にて、ポリアミドの濃度が0.05g/dl、0.1g/dl、0.2g/dl、0.4g/dlの試料溶液を調製し、それぞれの試料溶液の固有粘度(ηinh)を測定し、これを濃度0g/dlに外挿した値を極限粘度[η]とした。
なお、各試料溶液の固有粘度(ηinh)は、下記の数式(i)から求められる。
固有粘度(ηinh)(dl/g)=[In(t
1/t
0)]/c (i)
[式中、t
1は溶媒(硫酸)の流下時間(秒)、t
0は各試料溶液の流下時間(秒)、c
は試料溶液中のポリアミドの濃度(g/dl)を示す。]
【0104】
(2)ナノファイバー層、基材層および不織布シートを構成する繊維の平均繊維径:
下記の実施例および比較例で得られたセパレータ(ナノファイバー層と基材層からなる積層体または不織布シート)を、厚さ方向に切断し、その切断断面を日立製作所製の電子顕微鏡により倍率5000倍で写真撮影し、その写真の縦×横=20mm×20mmの正方形の面積部分に含まれる全ての繊維横断面について、繊維径(繊維横断面において最も大きな値となる径を繊維径とする)を測定し、その平均値を採って平均繊維径とした。なお、ナノファイバー層と基材層からなる積層体については、各層ごとに層を構成する繊維の平均繊維径を求めた。
平均繊維径は、ナノファイバー層では約20個の繊維横断面の平均値であり、基材層および不織布シートでは約20個の繊維横断面の平均値である。
【0105】
(3)積層体、ナノファイバー層、基材層および不織布の目付(g/m
2):
下記の実施例および比較例で得られたセパレータ(ナノファイバー層と基材層からなる積層体または不織布)について、セパレータ(積層体)全体の目付、積層体におけるナノファイバー層と基材層の目付および不織布シートの目付を、JISP 8124「紙のメートル目付測定方法」に準じて測定した。
【0106】
(4)積層体、ナノファイバー層、基材層および不織布の厚さ(μm):
下記の実施例および比較例で得られたセパレータ(ナノファイバー層と基材層からなる積層体または不織布)について、積層体全体の厚さ、ナノファイバー層と基材層の厚さおよび不織布の厚さをJISP 8118「紙及び板紙の厚さと密度の試験方法」に準じて測定した。
【0107】
(5)積層体、ナノファイバー層、基材層および不織布の空隙率:
下記の実施例および比較例で得られたセパレータ(ナノファイバー層と基材層からなる積層体または不織布シート)について、積層体全体、ナノファイバー層、基材層および不織布の空隙率(%)を下記の数式(ii)から求めた。
空隙率(%)={(d
1−E)/d
1}×100 (ii)
式(ii)中、
d
1は、ナノファイバー層、基材層または不織布シートを構成する繊維を形成している樹脂(重合体)の比重(g/cm
3)(2種類以上の繊維の混合物を用いている場合は、混合割合に応じて比重を算出)であり;
Eは、上記(3)で求めたナノファイバー層、基材層または不織布シートの目付と上記(4)で求めたナノファイバー層、基材層または不織布シートの厚さの逆数との積(ナノファイバー層、基材層または不織布シートの嵩密度;単位g/cm
3)である。
【0108】
(6)積層体(セパレータ)の平均ポアサイズ(平均孔径):
下記の実施例および比較例で得られたセパレータ(ナノファイバー層と基材層からなる積層体または不織布)について、コールターエレクトロニクス社製の「colter POROMETER II」を用いて、バブルポイント法によりシート(セパレータ)の孔径分布を測定し、その平均値を平均ポアサイズ(μm)とした。
【0109】
(7)積層体(セパレータ)の剥離強力:
下記の実施例および比較例で得られたセパレータ(ナノファイバー層と基材層からなる積層体)から巾30mm×長さ170mmの試料を採取し、当該試料の長さ方向の一方の端部でナノファイバー層と基材層を長さ方向に50mm剥離させ、引張り試験機(インストロン社製「Model5540」)を使用して剥離試験を行い、剥離時の強力を測定して、剥離時の最大荷重を剥離強力とした。
【0110】
(8)積層体(セパレータ)の耐電解液性:
下記の実施例および比較例で得られたセパレータ(ナノファイバー層と基材層からなる積層体または不織布シート)から採取した試験片(巾×長さ=15mm×170mm)について、JIS P 8113に準じて、電解液処理前後の試験片の強力(N/15mm)を測定して、電解液処理後の強力保持率(%)を求めて耐電解液性とした。
なお、試験片の電解液処理は、試験片を窒素雰囲気下で50℃のプロピレンカーボネート液(和光純薬株式会社製)中に1時間浸漬して行った。
【0111】
(9)積層体(セパレータ)の耐熱性(加熱前後の寸法変化率):
下記の実施例および比較例で得られた積層体(ナノファイバー層と基材層からなる積層体または不織布シート)を温度23℃および湿度65%RHの条件下で24時間調湿した後、それから縦×横=20cm×20cmの試験片を採取し、試験片を真空下で200℃に保持した乾燥機中で24時間乾燥処理し、次いで試験片を乾燥機から取り出して温度23℃および湿度65%RHの条件下で24時間調湿し、それによって得られた試験片の縦および横の寸法を測定した。そして、縦および横のうち、寸法変化の大きい方の寸法と、乾燥処理を行う前の寸法(20cm)とを比べて評価した。
【0112】
(10)電気二重層キャパシタの漏れ電流および内部抵抗:
以下の実施例および比較例で作製した電気二重層キャパシタを、充電電流20mAにて2.7Vまで充電後、2.7Vの定電圧条件にて2時間充電を行い、放電電流20mAにて0Vまで放電を行った。この充電−放電サイクルを5回繰り返し、5サイクル目の定電圧充電で2時間保持後の電流値を漏れ電流とした。
また、内部抵抗値は、前記したサイクルの放電直後の電圧低下より求めた。
漏れ電流については、高性能キャパシタに求められるレベルとして、50μA未満を極めて良好(◎)、100μA未満を良好(○)とし、通常のキャパシタとしての性能に満たないレベルとなる100μA以上を不良(×)とした。
内部抵抗については、高性能キャパシタとして求められるレベルとして、1.5Ω未満を極めて良好(◎)、2.0Ω未満を良好(○)とし、通常のキャパシタとしての性能に満たないレベルとなる2.0Ω以上を不良(×)とした。
【0113】
《実施例1》
(1)基材用の湿式不織布の製造:
(i) ジカルボン酸単位の100モル%がテレフタル酸単位からなり、ジアミン単位の50モル%が1,9−ノナンジアミン単位および50モル%が2−メチル−1,8−オクタンジアミン単位からなるポリアミド(極限粘度0.73dl/g、末端封止率91%)(以下「ポリアミド9T」という)を溶融紡糸・延伸して、単繊維繊度0.1dtexのポリアミド延伸糸(延伸繊維)を製造し、これを切断して繊維長3mmの短繊維(主体繊維)にした。
(ii) ジカルボン酸単位の80モル%がテレフタル酸単位および20モル%がイソフタル酸単位からなり、ジアミン単位の100モル%が1,6−ヘキサンジアミン単位からなるポリアミド(三井・デュポンポリケミカル株式会社製「シーラーPA3426」)(以下「ポリアミド6IT」という)40質量部と、前記(i)で用いたのと同じポリアミド9T60質量部をドライブレンドし溶融混練した後に溶融紡糸して、単繊維繊度2.9dtexのポリアミド繊維を製造し、これを切断して繊維長10mmの短繊維(バインダー繊維)にした。
(iii) 上記(i)で得られた主体繊維70質量部および上記(ii)で得られたバイン
ダー繊維30質量部を水に分散させて抄造原料(繊維含量0.2質量%)を調製し、当該抄造原料を用いて長網抄造機にて抄造し、次いでヤンキー型乾燥機にて乾燥して、目付11.8g/m
2の基材用の湿式不織布を製造した。
【0114】
(2)積層体の製造:
(i) 上記(1)の(i)で使用したのと同じポリアミド9Tを蟻酸溶媒に投入し、25℃で静置溶解して濃度20質量%の紡糸原液を調製した。
(ii) 上記(i)で得られた紡糸原液を使用して、
図1に示す紡糸装置にて静電紡糸を行って、基材層上にナノファイバー層が積層した積層体を製造した。
具体的には、口金4として内径が0.9mmのニードルを使用し、口金4と移送装置7との間の距離を15cmとし、移送装置7に設けた導電性部材8の上面全体に上記(1)で得られた基材用の湿式不織布を巻き付けて配置した。次いで、移送速度0.1m/分で移送装置7を移送しながら、紡糸原液を所定の供給量で口金4から紡出し、口金4に20kVの印加電圧を与えて、導電性部材8の上面に配置した湿式不織布上に平均繊維径320nmのポリアミド9Tよりなるナノフィラメントを4.1g/m
2になるように均一な厚さに積層(堆積)させてナノファイバー層と基材層が積層した積層体(積層シート)を製造した。
(iii) 上記(ii)で得られた積層体(積層シート)を装置から取り外し、170℃で60秒間熱プレス処理して基材層とナノファイバー層を一体化して、積層体を得た。
これによって得られた積層体の物性を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0115】
(3)電気二重層キャパシタの作製:
(i) 活性炭(クラレケミカル製「YP17D」)とポリテトラフロロエチレンとカーボンブラック(電気化学工業製「デンカブラック」)を80:10:10の質量比で混錬した後、圧延して厚さ150μmのシートにし、当該シートから縦×横=30mm×30mmの正方形のシート片を2枚切り出して、シート状の分極性電極とした。
(ii) 上記(2)で得られたセパレータ用の積層体から、縦×横=40mm×40mmの正方形の片をセパレータとして切り出し、このセパレータを、上記(i)で得られたシート状の分極性電極2枚と共に、180℃に保持した真空乾燥機で12時間乾燥した後、分極性電極およびセパレータを−60℃以下の露点雰囲気のドライボックスに収容した。
(iii) 分極性電極およびセパレータに、テトラエチルアンモニウムテトラフロロボレートを1mol%/Lの濃度で含有するプロピレンカーボネート溶液(水分率20ppm以下)を真空下で含浸させた後、分極性電極、セパレータ、分極性電極の順に重ね合せることで電気二重層キャパシタを作製した。
(iv) 上記(iii)で得られた電気二重層キャパシタの性能(漏れ電流および内部抵抗)を上記した方法で評価したところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0116】
《実施例2》
(1) 実施例1の(2)の(i)において、ナノファイバー層を形成するためのポリアミド9Tの紡糸原液におけるポリアミド9Tの濃度を20質量%から10質量%に変えるとともに、口金4と移送装置7との間の距離を15cmから13cmに変更して、湿式不織布上に平均繊維径80nmのポリアミド9Tよりなるナノフィラメントを3.7g/m
2になるように均一な厚さに積層(堆積)させた以外は、実施例1の(1)および(2)と同様の工程および操作を行って、積層体を製造した。
これによって得られた積層体の物性を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
(2) 上記(1)で得られたセパレータ用の積層体を用いて、実施例1の(3)と同様にして、電気二重層キャパシタを作製し、その性能(漏れ電流および内部抵抗)を上記した方法で評価したところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0117】
《実施例3》
(1) 実施例1の(2)の(i)において、ナノファイバー層を形成するためのポリアミド9Tの紡糸原液におけるポリアミド9Tの濃度を20質量%から23質量%に変えて、湿式不織布上に平均繊維径500nmのポリアミド9Tよりなるナノフィラメントを3.3g/m
2になるように均一な厚さに積層(堆積)させた以外は、実施例1の(1)および(2)と同様の工程および操作を行って、積層体を製造した。
これによって積層体の物性を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
(2) 上記(1)で得られたセパレータ用の積層体を用いて、実施例1の(3)と同様にして、電気二重層キャパシタを作製し、その性能(漏れ電流および内部抵抗)を上記した方法で評価したところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0118】
《実施例4》
(1)基材用の湿式不織布の製造:
(i) ポリアミド9Tを溶融紡糸・延伸して、単繊維繊度0.7dtexのポリアミド延伸糸(延伸繊維)を製造し、これを切断して繊維長10mmの短繊維(主体繊維)にした。
(ii) 上記(i)で得られた主体繊維70質量部および実施例1の(1)の(ii)で製
造したのと同じバインダー繊維30質量部を水に分散させて抄造原料(繊維含量0.2質量%)を調製し、当該抄造原料を用いて長網抄造機にて抄造し、次いでヤンキー型乾燥機にて乾燥して、目付11.8g/m
2の基材用の湿式不織布を製造した。
【0119】
(2)積層体の製造:
導電性部材8の上面に、上記(1)で得られた湿式不織布を配置する以外は、実施例1と同様にして、実施例1の(1)および(2)と同様の工程および操作を行って、積層体を製造した。
これによって得られた積層体の物性を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。さらにこの積層体をセパレータとして用いたところ、下記の表3に示す物性を示した。
【0120】
《実施例5》
(1) 実施例1において、ナノファイバー層を形成するための紡糸原液濃度を8質量%とする以外は実施例1と同様にして積層体を製造した。
これによって得られた積層体の物性を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。さらにこの積層体をセパレータとして用いたところ、下記の表3に示す物性を示した。
【0121】
《実施例6》
(1) 実施例1において、ナノファイバー層を形成するための紡糸原液濃度を23.5質量%とする以外は実施例1と同様にして積層体を製造した。
これによって得られた積層体の物性を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。さらにこの積層体をセパレータとして用いたところ、下記の表3に示す物性を示した。
【0122】
《実施例7
:参考例である》
(1) 実施例1において、ナノファイバー層を形成するための紡糸原液濃度を26質量
%とする以外は実施例1と同様にして積層体を製造した。
これによって得られた積層体の物性を上記した方法で測定または評価したところ、下記
の表1に示すとおりであった。
【0123】
《実施例8》
(1) 実施例1において、ナノファイバー層を形成するための紡糸原液濃度を24質量%とする以外は実施例1と同様にして積層体を製造した。
これによって得られた積層体の物性を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表1に示すとおりであった。
【0124】
《比較例1》
(1) 実施例1で用いたポリアミド9Tを島成分とし、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を共重合した易アルカリ減量性ポリエステルを海成分とした海島型複合繊維を溶融紡糸・延伸した後、アルカリ減量することによって海成分を完全に除去して得られた単繊維繊度が0.005detexのポリアミド延伸繊維を切断して繊維長1mmの短繊維(主体繊維)を製造した。
(2) 実施例1の(1)で使用したのと同じポリアミド6ITの40質量部とポリアミド9Tの60質量部をドライブレンドし溶融混練した後に溶融紡糸して、単繊維繊度2.9dtexのポリアミド繊維を製造し、これを切断して繊維長10mmの短繊維(バインダー繊維)にした。
(3) 上記(1)で得られた主体繊維70質量部および上記(2)で得られたバインダー繊維30質量部を水に分散させて抄造原料(繊維含量0.2質量%)を調製し、当該抄造原料を用いて長網抄造機にて抄造し、次いでヤンキー型乾燥機にて乾燥して、目付14.2g/m
2の湿式不織布を製造した。
この湿式不織布の物性を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(4) 上記(3)で得られた湿式不織布から縦×横=40mm×40mmの不織布片を切り出し、この不織布片をセパレータとして用いて、実施例1の(3)と同様にして、電気二重層キャパシタを作製し、その性能(漏れ電流および内部抵抗)を上記した方法で評価したところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0125】
《比較例2》
(1)(i) 溶解槽に予め開繊したパルプ(ウエスタンパルプ社製、重合度DP=621、ALICELL)を入れ、80℃に加熱して1時間放置した。
(ii) また、上記(i)とは別に、90℃に加熱したN−メチルモルホリン−N−オキサイド水和物液に、没食子酸−n−プロピル(溶液安定剤、パルプに対して0.25質量%の量)およびラウリル硫酸ナトリウム(界面活性剤、パルプに対して0.25質量%となる量)で添加し、攪拌、溶解した溶液を調製した。
(iii) 上記(ii)で調製した溶液を、上記(i)の80℃に加熱されたパルプに振り
かけ、溶解槽の蓋をして窒素置換を行い、30分間放置してパルプを十分に膨潤させ、溶解槽設置の攪拌機で1時間攪拌してパルプを完全に溶解させた。その後溶解槽の温度を100℃に昇温し、攪拌を停止して4時間放置して十分に脱泡を行って紡糸原液を調製した。
(2)(i) 上記(1)で調製した紡糸原液を用いる以外は、実施例1の(2)と同様
の静電紡糸操作を行って、導電性部材8の上面に配置した湿式不織布[実施例1の(1)
で得られたのと同じ湿式不織布]上に平均繊維径450nmのセルロースよりなるナノフィラメントを3.9g/m
2になるように均一な厚さに積層(堆積)させてナノファイバー層と基材層が積層した積層体(積層シート)を製造した。
(ii) 上記(i)で得られた積層体(積層シート)を装置から取り外し、170℃で60秒間熱プレス処理して基材層とナノファイバー層を一体化して、積層体を得た。これによって得られた積層体の物性を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
なお、これによって得られた積層体は、耐熱性が低く、熱プレス時の加熱によってナノファイバー層が脆化してしまい、キャパシタ用のセパレータとして用いることができなったので、電気二重層キャパシタの作製およびその性能評価は行わなかった。
【0126】
《比較例3》
(1)基材用の湿式不織布の製造:
ポリエチレンテレフタレート繊維(主体繊維)(単繊維繊度0.5dtex、株式会社クラレ製「EP043×3」)70質量部と、ポリエチレンテレフタレート未延伸繊維(バインダー繊維)(単繊維繊度1.1dtex、株式会社クラレ製「EP101×5」)30質量部を水に分散させて抄造原料(繊維含量0.2質量%)を調製し、当該抄造原料を用いて長網抄造機にて抄造し、次いでヤンキー型乾燥機にて乾燥して、目付12.1g/m
2の基材用の湿式不織布を製造した。
(2)積層体の製造:
実施例1の(2)において、基材用の湿式不織布として、実施例1の(1)で得られたポリアミド繊維からなる湿式不織布を用いる代わりに、本比較例の上記(1)で得られたポリエチレンテレフタレート繊維からなる湿式不織布を用い、それ以外は実施例1の(2)と同様の操作を行って、ポリエチレンテレフタレート繊維製湿式不織布よりなる基材層上にポリアミド9Tのナノフィラメントからなるナノファイバー層が積層した積層体を製造した。
これによって得られた積層体の物性を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
なお、これによって得られた積層体は、熱プレス時の加熱によってナノファイバー層と基材層が剥離してしまい、耐熱性も劣っており、キャパシタ用のセパレータとして用いることができなったので、電気二重層キャパシタの作製およびその性能評価は行わなかった。
【0127】
《比較例4》
(1) メタ系アラミド繊維(2.0dtex、帝人株式会社製「コーネックス」)を繊
維長1mmに切断して得られた短繊維を、シングルディスクリファイナーで叩解処理して平均繊維径500nmの微細繊維を得た。
(2) 上記(1)で得られたメタ系アラミド微細繊維70質量部と、実施例1の(1)
の(i)で得られたのと同じバインダー繊維(ポリアミド繊維)30質量部を水に分散させて抄造原料(繊維含量0.2質量%)を調製し、当該抄造原料を用いて長網抄造機にて抄造し、次いでヤンキー型乾燥機にて乾燥して、目付21.1g/m
2の湿式不織布を製造した。
この湿式不織布の物性を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。
(3) 上記(2)で得られた湿式不織布から縦×横=40mm×40mmの不織布片を切り出し、この不織布片をセパレータとして用いて、実施例1の(3)と同様にして、電気二重層キャパシタを作製し、その性能(漏れ電流および内部抵抗)を上記した方法で評価したところ、下記の表3に示すとおりであった。
【0128】
《比較例5》
(1)基材用の湿式不織布の製造:
上記比較例3の(1)と同様にして基材用の湿式不織布を製造した。
【0129】
(2)積層体の製造:
(i) ポリアクリルニトリル(アルドリッチ社製、平均分子量15万)をDMF溶媒に投入し、25℃で静置溶解して濃度14質量%の紡糸原液を調製した。
(ii) 上記(i)で得られた紡糸原液を使用して、
図1に示す紡糸装置にて静電紡糸を行って、基材層上にナノファイバー層が積層した積層体を製造した。
具体的には、口金4として内径が0.9mmのニードルを使用し、口金4と移送装置7との間の距離を13cmとし、移送装置7に設けた導電性部材8の上面全体に上記(1)で得られた基材用の湿式不織布を巻き付けて配置した。次いで、移送速度0.1m/分で移送装置7を移送しながら、紡糸原液を所定の供給量で口金4から紡出し、口金4に18kVの印加電圧を与えて、導電性部材8の上面に配置した湿式不織布上に平均繊維径270nmのポリアクリルニトリルよりなるナノフィラメントを3.1g/m
2になるように均一な厚さに積層(堆積)させてナノファイバー層と基材層が積層した積層体(積層シート)を製造した。
(iii) 上記(ii)で得られた積層体(積層シート)を装置から取り外し、170℃で60秒間熱プレス処理して基材層とナノファイバー層を一体化して、セパレータ用の積層体を得た。
これによって得られた積層体の物性を上記した方法で測定または評価したところ、下記の表2に示すとおりであった。さらにこの積層体をセパレータとして用いたところ、下記の表3に示す物性を示した。
【0130】
【表1】
【0131】
【表2】
【0132】
【表3】
【0133】
上記の表1および2の結果にみるように、実施例1〜8の積層体は、ポリアミド(a)の範疇に属するポリアミド9Tからなるナノファイバー層とポリアミド(a)繊維を少なくとも含む繊維から形成された基材層、特にポリアミド(a)繊維と混合ポリアミド(ab)繊維(バインダー繊維)との混合繊維から形成された基材層の一方の表面または両方の表面に有していることにより、耐熱性に優れていて、乾燥時や加工時の加熱によって物性や性能の低下がない。しかも、耐電解液性に優れ、更にはナノファイバー層と基材層の接着が強固に行われていて剥離強力が高い。
その上、ナノファイバー層の平均繊維径を10〜600nmの範囲内とする実施例1〜6の積層体でセパレータを形成すると、このセパレータは、正負電極から剥がれた電極物質などの遮蔽性能に優れ、その一方で電解液の通過性に優れるため、電気二重層キャパシタのセパレータとして用いたときに、漏れ電流が少なく且つ内部抵抗の低い、高性能のキャパシタを作製することができる。
【0134】
それに対して、上記の表2の結果にみるように、比較例1のセパレータは、ポリアミド9Tのナノフィラメントからなるナノファイバー層を有しておらず、ポリアミド9Tからなる微細繊維(主体繊維)と混合ポリアミド(ab)繊維(バインダー繊維)との混合繊維から形成された湿式不織布単独からなっているために空隙率が低くて抵抗が大きく、電気二重層キャパシタのセパレータとして用いたときに電解液が円滑に通過せず、性能の良好なキャパシタが得られない。
【0135】
さらに、比較例2のセパレータをなす積層体は、ナノファイバー層がポリアミド(a)繊維から形成されておらず、セルロースナノフィラメントから形成されていることにより、耐熱性に劣っていて、熱処理時に寸法の変化が大きく、そのため、キャパシタ用のセパレータとして有効に使用できない。
【0136】
また、比較例3のセパレータをなす積層体は、基材層がポリアミド(a)繊維を含む繊維から形成されておらず、ポリエチレンテレフタレート繊維から形成されているために、ポリアミド(a)ナノフィラメントよりなるナノファイバー層と基材層とが強固に接着しておらず、接着強力が低い。また、耐熱性に劣っており、熱処理により収縮したために、電極同士が接触してしまい、キャパシタ用のセパレータとして有効に使用できない。
【0137】
比較例4のセパレータは、ポリアミド9Tのナノフィラメントからなるナノファイバー層を有しておらず、メタ系アラミドからなる微細繊維(主体繊維)と混合ポリアミド(ab)繊維(バインダー繊維)との混合繊維から形成された湿式不織布単独からなっているために、空隙率が低く、微粒子との接触面積を確保できない。また、セパレータとして用いた場合、空隙率が低くて抵抗が大きく、電気二重層キャパシタのセパレータとして用いたときに電解液が円滑に通過せず、性能の良好なキャパシタが得られない。
【0138】
比較例5のセパレータは、ナノファイバー層がポリアクリルニトリルのナノフィラメントから形成されているため、耐熱性に劣っており、熱処理時に寸法の変化が大きい。しかも、積層体としての剥離強度も低く、耐久性にも劣る。さらに、熱処理により収縮したために、電極同士が接触してしまい、キャパシタ用のセパレータとして有効に使用できない。
【0139】
なお、実施例7および8の積層体をセパレータとして用いた場合、内部抵抗は双方とも1.1Ωを示して良好であったが、積層体の平均繊維径がそれぞれ970nmおよび650nmであったためか、実施例7では漏れ電流が112μA存在し、実施例8では漏れ電流が102μA存在した。そのため、内部抵抗と漏れ電流の双方を満足することができない。