(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
試料を搭載し移動させるステージ機構と、前記ステージ機構を駆動する駆動部と、前記ステージ機構に対する動作の指示を入力するためのステージ操作入力部と、前記ステージ操作入力部からの入力に従い前記ステージ機構を制御するステージ制御部とを有するステージ装置において、
前記ステージ操作入力部によって入力された指令値と所定時間ごとの指令電圧値を表す駆動波形データとから前記駆動部へ出力する電圧信号を生成する波形生成部と、
前記生成された電圧信号を増幅して前記駆動部へ出力する増幅部と、
所定時間ごとの指令電圧値を表す標準波形データと、前記駆動部を一定速度で移動させるように前記標準波形データを補正する補正データとを格納する記憶部と、を有し、
前記補正データは、前記標準波形データを用いて前記ステージ機構を駆動したときの変位または速度の第一の時刻歴応答と前記ステージ機構の速度が一定となる場合の変位または速度の第二の時刻歴応答との差をゼロにするように、前記標準波形データの指令電圧値または指令電圧値の出力タイミングを補正するものであって、
前記標準波形データを前記補正データにより補正して前記駆動波形データとすることを特徴とするステージ装置。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施例1を示すステージ装置の構成図の例である。
【
図2】ステージ装置を使用する走査電子顕微鏡の構成図である。
【
図4】本発明に用いるウォーキング型ピエゾモータの構成図の例である。
【
図5】本発明に用いるピエゾ素子の動作を説明する図である。
【
図6】本発明に用いるウォーキング型ピエゾモータの動作を説明する図である。
【
図7】標準波形データを用いたときのウォーキング型ピエゾモータの速度応答を示す図である。
【
図8】標準波形データを用いたときのウォーキング型ピエゾモータの変位応答を示す図であり、ウォーキング型ピエゾモータの速度変動の周期性を説明する図である。
【
図9】標準波形データを用いたときのウォーキング型ピエゾモータの速度応答を示す図であり、ウォーキング型ピエゾモータの速度変動の周期性を説明する図である。
【
図10】本発明の実施例1における変位応答を示す図である。
【
図11】本発明の実施例2を示すステージ装置の構成図の例である。
【
図12】本発明の実施例2における補正波形データの生成方法を示す模式図である。
【
図13a】本発明の実施例3を示すステージ装置の構成図の例である。
【
図13b】本発明の実施例3を示すステージ装置の構成図の例である。
【
図14】本発明の実施例4を示すステージ装置の構成図の例である。
【
図15】本発明の実施例5を示すステージ装置の構成図の例である。
【
図16】本発明の実施例6を示すステージ装置の構成図の例である。
【
図17】本発明の実施例7を示すステージ装置の構成図の例である。
【
図18】速度指令値の一例を説明するための図である。
【
図19】補正データ生成時のスイッチの状態を示す構成図の例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施例について図面を用いて説明する。以下では、走査電子顕微鏡の例を示すが、本発明はこれに限定されるものではなく、光学式顕微鏡やイオン顕微鏡、走査透過電子顕微鏡(STEM)等の試料観察装置に適用可能である。特に観察対象が微細である場合には高精度な位置決めおよびステージ速度の高い安定性が必要となるため、これらの装置に有効である。
【実施例1】
【0013】
本発明の実施例1を示すステージ装置について説明する。
図1において、ステージ11は観察対象となる試料12を載置する可動テーブル101などを有するステージ機構108をモータ104などの駆動部107により駆動し、そのステージ移動量を計測する位置検出部106を備えている。ステージ11はステージ制御部15によって制御されている。ステージ制御部15は、モータ104に与える指令値を出力する。ステージ制御部15には、スイッチ215と、スイッチ216と、波形出力部205と、標準波形データ209stdと、補正タイミングデータ209と、補正タイミング生成部213とを備えている。標準波形データ209stdと、補正タイミングデータ209は、例えばメモリ等に保持されている。ステージ装置は、標準波形データ209stdと、補正タイミングデータ209から、波形出力部205で、波形データとタイミングを制御することにより、高い位置決め精度と速度安定性を持つ駆動を実現する。波形出力部205から出力された波形は増幅器206で増幅され駆動部107に伝えられる。
【0014】
本実施例のステージ装置を用いるSEMの構成について、
図2を用いて説明する。SEM1は、電子光学系を備えた鏡筒2、試料室3、ステージ11、その他の制御部やコンピュータなどから構成される。電子銃4から発生した一次電子線5は収束レンズ6、対物レンズ7を通して試料12に照射され、これにより試料12から発生した二次電子、反射電子等の二次粒子9は二次粒子検出器10により検出される。一次電子線5は走査偏向器8により観察する試料12の表面を二次元状に走査する。電子光学系制御部13は走査偏向器8による一次電子線5の走査を制御するとともに、二次粒子検出器10により検出される二次粒子9の強度を一次電子線の走査と同期して走査生成される画像の輝度変調入力とすることで試料表面の観察画像(SEM画像)を生成する。生成されたSEM画像は表示装置14に表示される。またSEM画像は図示しない記憶装置に保存されても良い。
【0015】
観察対象となる試料12は、試料室3内に置かれたステージ11に搭載される。ステージ11は試料12を移動・回転させるものであり、水平方向(XY方向)、上下方向(Z方向)、回転(Z軸回りの回転)、傾斜などの自由度を持つ(図では1自由度のみを示す)。ステージ制御部15は、例えばトラックボールやジョイスティックなどの入力デバイスであるステージ操作入力部16からの入力に従いステージ11を制御する。また、ステージ操作入力部16としてネットワークやシリアルなどで接続されたPCを用いてもよい。なお、電子光学系制御部13やステージ制御部15は専用回路基板によりハードで構成されてもよいし、SEMを制御するコンピュータで実行されるプログラムによりソフトとして実現されても良い。
【0016】
観察対象となる試料表面の選択はステージ11を位置決めすることにより行う。操作者はSEM画像を見ながらステージ操作入力部16を操作して、目的とする観察部位がSEM画像として得られるまでステージ11を移動させる。このとき、速度安定性が低いと、操作入力に対する応答性が悪くなり操作性が悪化することに加え、急峻に速度が変動した場合には観察対象を見落とす恐れがある。また、半導体ウェハなど同じような微細パターン(セル)が連続している試料を観察する場合には、ステージ操作入力部16から移動方向と速度をステージ制御部15へ入力してステージ11を一定速度で移動させ、操作者の目視もしくは画像処理によりSEM画面上を通過するセルの数を計測することで目的とする部位に到達したか判定する方法も行われる。この場合も急峻な速度変動が発生すると対象とするセルの見落としが発生する恐れがあり、位置の検出が正しくできないという問題がある。
【0017】
本実施例のステージ装置の機構部について、
図3を用いて説明する。ステージ11は、可動テーブル101に試料を取り付け、ベース100に取り付けたガイドレール102に沿って可動テーブル101を移動させることにより試料を移動させる。可動テーブルを動かすための駆動部として直動アクチュエータが用いられる。これは、シャフト103とモータ104とから構成され、モータ104へ駆動信号を入力するとシャフト103に沿ってモータ104が移動する。このモータ104を可動テーブル101に、シャフト103をベースに取り付ける。なお、シャフト103を可動テーブル101に、モータ104をベースに取り付ける構成でもよい。
【0018】
可動テーブル101の位置を検出するための位置検出部としては、例えばスケール105、センサヘッドとから構成されるリニアスケールを用いる。このスケール105には一定間隔にスリットがつけられており、その上をセンサヘッドが通過するたびにパルスが発生する。そのパルスの数を計測することにより位置が取得できる。このスケール105をベース100に、センサヘッドを可動テーブル101に取り付ける。なお、位置検出手段として、レーザー干渉計や、レーザー変位計などを用いてもよい。
【0019】
ステージ制御部15は、ステージ操作入力部16から入力される指令値と、位置検出部により検出される位置情報から制御演算を行い、モータ104への駆動信号を出力することでステージを動作させる。ここでは、位置情報を用いてフィードバック制御を行う構成を示しているが、位置情報を用いずにオープンループ制御を行うようにしてもよい。
【0020】
なお、
図3には1自由度のステージの構成を示しているが、これと同様のステージを組み合わせることで多自由度のステージを構成することができる。
【0021】
本実施例のステージに使用する駆動部の一例を
図4〜
図6を用いて説明する。ここではウォーキング型ピエゾモータを例に説明する。
図4にピエゾモータの構成例を示す。モータ104の内部には、積層ピエゾ板300a、300bを張り合わせたピエゾ素子300、301、302、303があり、図示していないバネによりピエゾ素子の先端をシャフト103に押し付けている。
図5にピエゾ素子に入力される指令電圧に対応したピエゾ素子の動作を示す。例えば
図5に示すような指令電圧を貼り合わせて積層ピエゾ板300a(右)、300b(左)に与えると、ピエゾ素子は指令電圧の和と差に応じて伸縮・屈曲し、ピエゾ素子先端が楕円軌道を描くような動作を行う。
図6はピエゾ素子2本分を取り出してウォーキング型ピエゾモータの動作原理を示す。ピエゾ素子A、Bに
図6のような指令電圧を与えると、ピエゾ素子は地面を歩くように動作する。例えば、ピエゾ素子Aがシャフト103に接触して動いている間にモータ104は移動し、その間にピエゾ素子Bは振り戻り動作を行う。この1周期分の動作は具体的な周期の長短に限定されるものではない。そのため、1周期分の波形を等分割した(正規化した)電圧データを用意し、電圧データの出力時間間隔(以下、正規化された単位時間)を変える(伸び縮みさせる)ことで、その指令電圧波形の周期を変化させて、速度を制御する。
図5、
図6には1サイクル分の駆動信号の波形を示しているが、モータを連続して移動させる場合にはこの波形を繰り返し与えればよい。なお、これは駆動部の一構成例であり、これにより本発明が限定されるものではない。
【0022】
図7は、波形生成部から指令電圧波形を一定の出力タイミングで4周期分入力した際の速度応答波形を示す。
図7から速度が指令速度に対して、変動が大きいことがわかる。この理由は、ピエゾ素子の角度や長さ、特に屈曲量にばらつきが生じるために速度安定性が悪化するためである。
【0023】
次に、
図7の移動開始と移動終了の指令電圧波形それぞれ半周期ずつを除外した3周期分を取り出し、それぞれ1周期分の変位応答と速度応答をそれぞれ
図8、
図9に示す。これらの図から1周期目から3周期までの変位応答と速度応答の波形形状が、それぞれほぼ一致していることがわかる。すなわち、指令値に対する実際の変位の応答と速度の応答には周期性があり、その周期は指令電圧波形の周期と一致している。また、このような周期性は、ステージ機構の駆動位置、速度によらず確認できる。そこで、本実施例では、この周期性を利用して、事前に計測した変位または速度から、指令電圧波形出力タイミング補正データを求め、指令電圧出力タイミングを可変とすることにより、速度安定性が高い駆動を可能とする。
【0024】
ここで、具体的な補正データの生成方法について
図19と
図10を用いて説明する。
図19は補正データ生成時のスイッチの状態を示す。スイッチ215をOFF、スイッチ216をONとし、標準波形データを一定時間間隔で波形出力生成部より出力し、位置検出部106から得られる位置または速度データから、補正タイミング生成部213において、可動テーブルが一定速度で移動するように補正タイミングデータ209が生成される。ここでは、標準波形データが時刻iのときにx(i)で与えられているとする。標準波形データとは、所定時間ごとの指令電圧値を表すものであって、本実施例の補正を行わない場合にはこのデータのみに基づいて駆動部への指令電圧波形が決められる。なお、本明細書において「所定時間」とは、予め定められた時間間隔のことをいい、通常「一定時間間隔」ごとである場合が多いが本発明は特にこれに限られるものではない。
【0025】
x(i)はiに関するテーブルとして与えられていてもよいし、iに関する関数として与えられていてもよい。ここでは前者の場合を例に説明する。x(i)を波形生成部により一定時間間隔Δtstdで出力してステージを動作させたときに得られた変位をy(i)とする。一定速度vで移動している場合には変位y(i)に到達したときの理想的な時刻はy(i)/vとなる。ところが、実際には速度変動が発生しているために変位y(i)に達した時刻は、この時刻と異なることになり、その差はΔt(i)=i・Δtstd−y(i)/vとなる。したがって、指令電圧x(i)の時刻iのときの値がΔt(i)だけずらして出力することによりステージを一定速度vで動かすことが可能となる。すなわち、補正データは、標準波形データを用いてステージ機構を駆動したときの変位(
図8)または速度(
図9)の第一の時刻歴応答とステージ機構の速度が一定となる場合の変位または速度の第二の時刻歴応答との差をゼロにするように、前記標準波形データの指令電圧値の出力タイミングをずらす時間間隔Δt(i)を規定するものである。指令電圧値の出力タイミングをΔt(i)ずらすことで、実際に変位y(i)に到達するときの時刻がy(i)/vとなり、ステージ機構の速度が一定となる場合の理想的な変位に一致する。
【0026】
なお、標準波形データおよび補正データはステージ制御手段15に接続されたメモリやハードディスク等の記憶部(図示しない)に格納されている。
【0027】
また、補正データは前述の正規化された単位時間に対して保持しておけばよい。これによってステージ速度を変えた場合であっても同じ補正データを用いて補正することが可能となる。
【0028】
以上のように得られた補正データΔt(i)により標準波形データx(i)の出力タイミングを補正して動作させたときの指令電圧と実測変位を
図10に示す。この図から明らかなようにステージは一定速度で動作することが確認できる。
【0029】
以上述べたように、本実施例のステージ装置を用いることによって速度変動を抑制し、高い速度安定性を得ることができる。
【実施例2】
【0030】
本発明の別の構成例を
図11に示す。以下、実施例1と同様の部分については説明を省略する。本実施例では実施例1で求めた出力タイミングのずれを一定時間ごとに出力する電圧値の変動に変換して、補正データを指令電圧値として規定する例である。なお、以下「補正データ」とは実施例1で説明した「補正タイミングデータ」と本実施例で説明する「補正波形データ」を含むものとし、特に断りが無い限り、これらは代替することが可能であるものとする。
【0031】
図11では
図1に加えて、補正波形データ219を生成する補正波形生成部217とスイッチ218を付加している。補正波形生成部217は、実施例1に示したように標準波形データx(i)の出力タイミングの補正値Δt(i)を補正タイミング生成部213で求めた後に、一定時間間隔Δtstdの電圧データに変換し、これを補正波形データ219とする。よって補正波形データ219は一定時間間隔の電圧指令値の時間推移を表す波形データである。
【0032】
図12を用いて補正波形データの生成方法を示す。まず、x(i)の出力タイミングをΔt(i)だけずらして得られる波形データを生成する(
図12の矢印による曲線)。このときの一定時刻間隔Δtstdごとの点の指令電圧(
図12の○印の点)をその時間の前後のプロット点から線形補間を行い求める。これにより、同じ波形データを一定時刻間隔Δtstdの指令電圧値のテーブルx′(i)として得ることができ、これを補正波形データとすればよい。実稼働時にはx′(i)を一定時間間隔Δtstdで出力すれば結果的にはx(i)の出力タイミングをずらしたことと同じ効果を得ることができ、一定速度でステージを動作させることが可能となる。
【0033】
以上述べたように、本実施例のステージ装置を用いることによっても速度変動を抑制し、高い速度安定性を得ることができる。
【実施例3】
【0034】
本発明の別の構成例を
図13aと
図13bに示す。以下、実施例1−2と同様の部分については説明を省略する。この実施例は
図1または
図11、のスイッチ216をOFFにした状態の構成に対して、位置検出部から検出される現在のステージの位置情報と速度指令値とから波形生成部へ入力する指令値を求める補償部203を付加したものである。
図1および
図11のように求めた補正データを使えばピエゾ素子の角度や長さ、特に屈曲量のばらつきについて補償することが可能となる。しかしながら、外乱やステージの傾斜や試料負荷の変動によっても、速度変動は発生する。そこで、
図13aまたは
図13bのように位置情報をフィードバックすることにより、これら負荷変動の影響を抑制することが可能となる。
【実施例4】
【0035】
本発明の別の構成例を
図14に示す。以下、実施例1−3と同様の部分については説明を省略する。本実施例はステージの負荷に対して補正波形データが変動することに着目して、ステージの負荷に応じて複数の補正データを設ける例である。ここでステージの負荷とはステージの傾斜と試料の質量による可動質量やガイドレール102の摺動抵抗などによって、ステージが可動するために必要な力の大きさのことであり、多くの種類の試料を様々な方法で観察する汎用の電子顕微鏡においては、特に本実施例の方法が有効である。
【0036】
図14の構成は、
図13bの構成に対して、負荷推定部207と、少なくとも二つの補正波形データ219a、219b、…、補正データ補間部208、スイッチ220、スイッチ221を付加したものである。少なくとも二つの補正データは任意の負荷状態(例えば最低負荷状態、最大負荷状態)で補正波形データを求めたものであり、その方法は負荷を変化(ステージの傾斜、試料負荷の変更)させた状態で実施例1または実施例2で述べた方法により取得することができる。傾斜角度が既知の場合、負荷推定部207は、補償部203から得られる傾斜角度情報から、ステージに加わる負荷Fを推定するものである。傾斜角度が未知の場合でも、スイッチ220をONとし、負荷推定部207は位置検出部106から得られた位置情報と波形出力部205への指令値とからステージに加わる負荷Fを推定することも可能である。補正データ補間部208は複数の補正データ209a、209b、…と負荷推定部207により推定された負荷Fとから波形生成部が使用する駆動波形を生成するものである。負荷F1における補正データをx′1(i)、負荷F2における補正データをx′2(i)とすると、推定された負荷Fに対応した補正波形x′(i)は、例えばx′1(i)とx′2(i)を線形補間することにより求めることができる。実施例1、2のように求められる補正データはステージ負荷が異なることによりその形状が異なることがわかっており、本実施例のようにステージ負荷状態により補正データを生成できるようにすることで、高精度な補正が可能となり、速度変動をより抑制することが可能となり、より高い速度安定性を得ることができる。
【0037】
また、スイッチ221をONし、フィードバック制御を行う補償部203のパラメータ、例えばフィーバックゲインをステージ負荷により可変とすることで、より高精度な補償を実現することができる。
【実施例5】
【0038】
本発明の別の構成例を
図15に示す。以下、実施例1−4と同様の部分については説明を省略する。本実施例はスイッチ220、スイッチ221をともにONとした実施例4の補償部203を2自由度制御とした場合をより詳細に説明するものである。位置検出部106から取得される位置情報からノイズ成分を取り除くための第一のローパスフィルタ201を通した信号と、ステージ操作入力部16から入力される速度指令値を積分器200と第二のローパスフィルタ202を通した信号との偏差からフィードバック補償部222にて補償演算を行う。このとき、第二のローパスフィルタ202は第一のローパスフィルタ201と同じ周波数特性をもつ。これにより二つのローパスフィルタを通して得られる信号の位相差をなくすことができる。また、速度指令値はフィードフォワード補償部204によりフィードフォワード補償演算が行われ、その結果とフィードバック補償部の出力が加算され波形出力部205への入力となる。ピエゾモータは負荷が大きくなると同じ指令値を与えていても実速度が遅くなることが分かっており、フィードフォワード補償はこれをフォードフォワード的に補償するものである。このとき、フィードフォワード補償量は負荷推定部207により推定された負荷により変化させる。
【0039】
以上のようにすれば、より高精度な補償を行うことができ、高い速度安定性を得ることができる。
【実施例6】
【0040】
本発明の別の構成例を
図16に示す。以下、実施例1−5と同様の部分については説明を省略する。この実施例は
図15に示した構成で、負荷推定部207をより詳細に示したものである。
【0041】
負荷推定部207は、速度演算部210、速度比演算部211、負荷特性テーブル212とを有する。速度演算部210は第一のローパスフィルタ201の出力からステージの速度を演算するものであり、例えば差分演算やオブザーバーなどにより速度を求めることができる。速度演算部210で得られたステージ速度Vと波形生成部への指令値Vcとの間には比例関係が成り立つことが分かっている。その比例係数をKとすると、比例係数Kは負荷Fが大きくなると小さくなることが分かっており、比例係数Kと負荷Fとの関係は使用するモータにより決まっている。そこで、モータ毎に比例係数Kと負荷Fとの関係をデータベース(負荷特性テーブル212)として予め記憶しておき、速度演算部210から得られるステージ速度Vと波形生成部への指令値Vcとから速度比演算部211は比Kを計算し、比Kをデータベースの値と比較することで負荷Fを推定する。これにより、さらに高精度な補償を行うことが可能となる。
【実施例7】
【0042】
本発明の別の構成例を
図17に示す。以下、実施例1−6と同様の部分については説明を省略する。この実施例はステージ操作入力部から位置指令値が与えられたときの構成を示すものである。
【0043】
図17は、これまで述べた実施例に速度指令値生成部214を付加したものである。速度指令値生成部214に位置指令値が入力されると、速度指令値生成部214では、例えば
図18に示されるような速度パターンが生成され出力される。この速度パターンは以下の四つのフェーズで構成される。
(1)予め設定された加速度で、速度指令値を増加させる。
(2)速度指令値が設定された速度Vmaxに達したら、速度指令値を保持する。
(3)現在位置が減速開始位置に到達したら、予め設定された減速度で指令速度を減少させる。
(4)現在位置が位置指令値近傍に達したら、極低速で移動させ目標位置へ位置決めする。
【0044】
なお、これは速度指令値生成の一例であり、滑らかに速度が変化する速度パターンが生成できるものであればよく、これにより本発明が限定されるものではない。
【0045】
以上のようにすれば位置指令値が与えられた場合でも速度変動を抑制し、高い速度安定性を得ることができる。
【0046】
以上述べた実施例ではウォーキング型ピエゾモータを例に説明したが、周期的な速度変動をもつアクチュエータであれば、ウォーキング型ピエゾモータ以外にも適用可能である。
【0047】
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0048】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、たとえば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。
【0049】
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。