(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0029】
〈実施形態1〉
本発明の表面処理方法の実施に用いる触媒CVD装置について説明する。
図1は、触媒CVD装置の概略構成図である。触媒CVD装置は、処理容器1内を真空に排気する排気系11と、当該処理容器1内に所定の反応性ガスを供給する反応性ガス供給系21とが接続されている。
【0030】
処理容器1内には、処理容器1内に供給された反応性ガスが表面を通過するように触媒体3が配置されている。触媒体3には、所定の温度(1100〜2000℃程度の高温)に加熱、維持するように、電力を与える電力供給機構30が接続されている。また、処理容器1内には、ガス供給器2が触媒体3に対向して配置されている。
【0031】
処理容器1には、結晶系シリコンからなる被処理基板40を搬入・搬出するためのゲートバルブ5が設けられ、また、被処理基板40が載置されるステージ4が設けられている。ステージ4には、特に図示しないが、被処理基板40を加熱するための加熱機構が備えられている。
【0032】
反応性ガス供給系21は、不図示の反応性ガスが充填されたボンベ、供給圧調整器、流量調整器、供給/停止切換バルブ等から構成されている。反応性ガスは、この反応性ガス供給系21より処理容器1内のガス供給器2を介して処理容器1内に供給されている。
【0033】
ガス供給器2は、処理容器1において触媒体3に対向して配置されている。また、ガス供給器2は中空構造となっており、ステージ4と対向する面に多数のガス吹出孔22が形成されている。
【0034】
一方、排気系11は、排気速度調整機能を有するメインバルブ12を介して処理容器1と接続されている。この排気速度調整機能により処理容器1内の圧力が制御される。
【0035】
触媒体3は、一般に線状の部材からなるものであり、鋸歯状に折り曲げられ、少なくとも表面が絶縁体である支持体31により保持されている。また、触媒体3には、電力供給機構30からの電力供給線32が接続端子33により接続されている。触媒体3は、ここを介して電力の供給を受け、発熱体CVD法に要求される所定の温度への加熱、所定の温度での維持が図られている。
【0036】
電力供給機構30には、通常、直流電源又は交流電源が用いられる。触媒体3は、電源から電力が供給されて、通電加熱により所定の温度に設定されるようになっている。この触媒体3を高温加熱することにより、反応性ガスを分解及び/又はラジカル化することができる。
【0037】
触媒体3は通電加熱により、1100〜2000℃程度という高温に加熱される。触媒体3の材料としては高融点金属が用いられ、一般にはタングステンや、タンタル、及びモリブデンからなる群から選択される何れか一つが用いられる。
【0038】
このような構成の触媒CVD装置では、反応性ガス供給系21からガス供給器2を介して処理容器1内に反応性ガスが供給され、触媒体3に接触する。反応性ガスは、触媒体3でラジカル化、又は分解され、ステージ4の加熱機構で所定温度にされた被処理基板40表面に堆積する。例えば、シラン(SiH
4)を含む反応性ガスを用いれば、被処理基板40に、非晶質のシリコン膜が形成される。
【0039】
触媒CVD装置は、上述したような成膜プロセスのみならず、被処理基板40の表面処理・改質プロセスにも利用可能である。ここで、この触媒CVD装置を用いて、本発明の実施形態に係る表面処理方法について説明する。
【0040】
図2(a)に示すように、結晶系シリコンからなる被処理基板40をステージ4(
図1参照)に載置する。ここでいう結晶系シリコンとは、単結晶シリコン又は多結晶シリコンである。本実施形態では、被処理基板40は、p型の多結晶シリコンから形成されている。また、被処理基板40は、本発明の表面処理方法が実施されたのち、その表面にシリコン系薄膜が形成されるものである。詳細は後述するが、被処理基板40には、シリコン系薄膜が成膜されて太陽電池セルなどが形成される。
【0041】
次に、被処理基板40の温度や触媒体3の温度、反応性ガスの組成、処理容器1内の圧力などについて所定の成膜条件に設定する。
【0042】
そして、p型ドーパント又はn型ドーパントと、水素ガスとを含む反応性ガスを反応性ガス供給系21から処理容器1内に供給する。p型ドーパントは、p型半導体を形成するために半導体にドーピングされる不純物である。p型ドーパントとしては、ホウ素やアルミニウムなどの3族元素が挙げられる。n型ドーパントは、n型半導体を形成するために半導体にドーピングされる不純物である。n型ドーパントとしては、リンやヒ素などの5族元素が挙げられる。本実施形態では、反応性ガスとして、ホスフィン(PH
3)ガスと水素ガスとを含むものを用いる。
【0043】
反応性ガス供給系21から処理容器1内に供給された反応性ガスは触媒体3によりラジカル化され、ラジカル化した水素とリンとが形成される。ラジカル化した水素は、被処理基板40の表面のCHを脱離したり、被処理基板40の表面の欠陥を補修する。
【0044】
さらに、ラジカル化したリンが、被処理基板40の表面に供給され、リンが被処理基板40に導入される。これにより、
図2(b)に示すように、被処理基板40の表面には、リンを含むリン含有層41が形成される。すなわち、p型の多結晶シリコンから形成された被処理基板40に、リンがドープされたn
+型ドープ層の一例であるリン含有層41が形成される。
【0045】
また、表面処理を行う場合の触媒体3の温度は、成膜プロセスを行う場合の温度(1600℃〜2000℃)よりも低く、1100℃〜1400℃であることが好ましく、さらに好ましくは1300℃である。
【0046】
1100℃未満であると表面処理の効果が十分でなく、キャリアの再結合寿命を十分に延長することができず、1400℃を超えると被処理基板40がエッチングされてしまうからである。
【0047】
以上に説明したように、本実施形態に係る表面処理方法によれば、水素を含む反応性ガスで被処理基板40を洗浄する際に、ホスフィンガス(n型ドーパントを含むガス)を含む反応性ガスを用いることで、被処理基板40の表面にリンが導入されたリン含有層41が形成される。そして、このような表面処理方法が実施された被処理基板40と、当該被処理基板40のリン含有層41側に成膜される他のシリコン系薄膜との界面におけるキャリアの寿命は、長寿命化する。シリコン系薄膜としては、例えば、シリコン窒化膜などシリコンを含む薄膜や、非晶質シリコン膜などシリコンのみからなる薄膜を挙げることができる。
【0048】
特に、本実施形態に係る表面処理方法は、結晶系シリコン基板を用いる太陽電池セルの製造に有用である。例えば、被処理基板に当該表面処理方法を適用し、その後、被処理基板に非晶質シリコン膜からなるパッシベーション膜や反射防止のためのシリコン窒化膜などを形成し、さらに電極等を形成して太陽電池セルとする。このような太陽電池セルは、キャリアの再結合による損失が抑制されているので、出力特性の向上という優れた効果を奏し得る。このように、本実施形態に係る表面処理方法は、特性が向上した太陽電池セルに用いられる結晶系シリコン基板を提供できる。もちろん、本発明に係る表面処理方法は、太陽電池の出力特性のためのみに適用されるものではなく、種々の半導体装置の製造に際して適用できるものである。
【0049】
仮に、プラズマCVD装置により本願発明と同様に表面処理を行うとすると、プラズマによるダメージが被処理基板40に加わるため、プラズマCVDで表面処理が行われた被処理基板にシリコン系薄膜を形成したものは、本願発明により表面処理が施された被処理基板40にシリコン系薄膜を形成したものよりもキャリア寿命は短いと解される。
【0050】
一方、本発明では、被処理基板40の表面処理に際して反応性ガスをラジカル化する際には、プラズマではなく触媒体3を用いたので、プラズマにより被処理基板40にダメージが与えられることを回避することができる。また、触媒CVD装置を用いる場合、被処理基板40に加えられる熱は、プラズマCVD装置において加えられる熱よりも低くてすむため、熱によるダメージを低減することができる。
【0051】
したがって、本実施形態のように触媒CVD装置を用いて被処理基板40の表面処理を行うことで、プラズマCVD装置を用いて表面処理を行うよりも、キャリア寿命を長くすることができる。
【0052】
また、従来技術に係るゲッタリングでは、キャリアの長寿命化のために、被処理基板に対して、PSG層や多孔質化した層を設け、所定の処理をした後それらの層を除去する、といった煩雑な工程を要する。一方、本実施形態に係る表面処理方法は、触媒CVD装置で表面処理をするだけであるので、簡易な工程でキャリアを長寿命化することができる。
【0053】
〈実施形態2〉
本実施形態では、結晶系シリコンからなる被処理基板に、上述した表面処理方法を行い、当該被処理基板にpn接合を形成して太陽電池セルを作成する太陽電池セルの製造方法について説明する。
【0054】
図3は、本実施形態に係る太陽電池セルの概略断面図であり、
図4は、本実施形態に係る太陽電池セルの製造方法を示す概略断面図である。
【0055】
図3に示すように、太陽電池セル50は、p型の多結晶シリコンからなる被処理基板51と、その受光面(
図3中の上側)にn型ドーパントがドープされたn
+型ドープ層52と、n
+型ドープ層52の表面に設けられたp型シリコン窒化膜53と、被処理基板51の裏面(受光面とは反対側の面)にp型ドーパントがドープされたp
+型ドープ層54と、その表面に設けられたn型シリコン窒化膜55とを備えている。さらに、n
+型ドープ層52の一部に接触した受光面電極56が形成され、p
+型ドープ層54の一部に接触した裏面電極57が形成されている。受光面電極56は、例えば銀からなり、裏面電極57は、例えばアルミニウムからなる。なお、p
+及びn
+はドーパント濃度が高いことを意味している。例えば、p
+型ドープ層54のp型ドーパント濃度は、被処理基板51のp型ドーパント濃度よりも高い。
【0056】
p型シリコン窒化膜53及びn型シリコン窒化膜55は、請求項に記載したシリコン系薄膜の一例である。p型シリコン窒化膜とは、組成が、窒素とケイ素のみからなる場合、窒素成分の割合が化学量論比より大きいものをいう。n型シリコン窒化膜とは、窒素成分の割合が化学量論比よりも小さいものをいう。理論上、シリコン窒化膜は、SiNxと表され、X=1.33(原子比)が化学量論比である。
【0057】
また、被処理基板51は、実施形態1に説明した表面処理方法が実施されたものである。このように、表面処理方法を実施された被処理基板51を用いて太陽電池セル50としたことで、太陽電池セル50は、キャリアのライフタイムが長寿命化しており、出力向上等の特性が向上したものとなる。
【0058】
以下、本実施形態に係る太陽電池セルの製造方法について説明する。
【0059】
図4(a)に示すように、p型ドーパントがドーピングされたp型の多結晶シリコンからなる被処理基板51を用いる。次に、
図4(b)に示すように、被処理基板51の一方面(受光面)に、実施形態1に説明した表面処理方法を実施する。この表面処理方法により、n型ドーパントがドープされたn
+型ドープ層52が形成される。p型の被処理基板51にn
+型ドープ層52が形成されることでpn接合が形成される。
【0060】
次に、
図4(c)に示すように、被処理基板51の他方面(受光面とは反対側の面)に、p型ドーパントをドーピングしてp+型ドープ層54を形成する。このp
+型ドープ層54は、電界層(Back Surface Field)として機能する。p
+型ドープ層54は、例えば、反応性ガスとして、ジボランガスを用い、実施形態1に示した表面処理を被処理基板51に適用することで作製できる。
【0061】
次に、
図4(d)に示すように、n
+型ドープ層52の表面に、p型シリコン窒化膜53を形成し、p
+型ドープ層54の表面にn型シリコン窒化膜55を形成する。p型シリコン窒化膜53及びn型シリコン窒化膜55は、触媒CVD法、プラズマCVD法又は熱窒化法などで製造することができる。原料ガスとしては、例えば、ケイ素原子(Si)が含まれるシラン(SiH
4)、フッ化シラン(SiF
4)、及び窒素原子(N)が含まれるアンモニア(NH
3)、窒素(N
2)等が挙げられる。
【0062】
その後、特に図示しないが、n
+型ドープ層52の一部に接触するように受光面電極56を形成し、p
+型ドープ層54の一部に接触するように裏面電極57を形成する。具体的には、電極ペーストを受光面及び裏面に印刷し、500〜800℃で焼成を行って各電極を形成する。ここで、電極ペーストとして、アルミニウム、銀等を含むペーストが挙げられる。焼成は、電極がシリコン窒化膜を突き抜けて、受光面側のn
+型ドープ層52及び裏面側のp
+型ドープ層54と接触する条件であることが好ましい。
【0063】
なお、受光面電極56及び裏面電極57の形成は、このような方法に限らない。例えば、フォトレジストにより、p型シリコン窒化膜53の一部を除去してn
+型ドープ層52の一部を露出させ、同様に、n型シリコン窒化膜55の一部を除去してp
+型ドープ層54の一部を露出させる。そして、この露出した部分に埋め込むように受光面電極56及び裏面電極57を形成する。
【0064】
このように受光面電極56及び裏面電極57を形成することで、
図3に示したような太陽電池セル50が形成される。
【0065】
以上に説明したように、本実施形態に係る太陽電池セルの製造方法によれば、被処理基板51に形成されるn
+型ドープ層52及びp
+型ドープ層54は、実施形態1に説明した表面処理方法により形成される。このような表面処理方法が実施された被処理基板51のn
+型ドープ層52とp型シリコン窒化膜53との界面、及びp
+型ドープ層54とn型シリコン窒化膜55との界面におけるキャリアの寿命は、長寿命化する。このように太陽電池セル50は、キャリアの再結合による損失が抑制されているので、出力特性の向上という優れた効果を奏し得る。
【0066】
〈実施形態3〉
本実施形態では、結晶系シリコンからなる被処理基板に、上述した表面処理方法を行い、当該被処理基板にpn接合を形成して太陽電池セルを作成する太陽電池セルの製造方法について説明する。
【0067】
図5は、本実施形態に係る太陽電池セルの概略断面図であり、
図6は、本実施形態に係る太陽電池セルの製造方法を示す概略断面図である。
【0068】
図5に示すように、本実施形態に係る太陽電池セル60は、被処理基板61の裏面(受光面とは反対側の面)側にpn接合と電極を配置した裏面接合型の太陽電池である。
【0069】
具体的には、太陽電池セル60は、例えば、p型の多結晶シリコンからなる被処理基板61の裏面側に設けられたn
+型ドープ層62と、当該n
+型ドープ層62上に設けられたシリコン系薄膜の一例である非晶質(アモルファス)シリコン膜63とを備えている。さらに、太陽電池セル60は、非晶質シリコン膜63上に設けられたp型半導体層64及びn型半導体層65と、当該p型半導体層64及びn型半導体層65上に設けられた電極66を備えている。p型半導体層64とn型半導体層65とが非晶質シリコン膜63を介してpn接合している。
【0070】
n
+型ドープ層62は、実施形態1で説明した表面処理方法により被処理基板61に形成されたものである。
【0071】
また、非晶質シリコン膜63は、非晶質シリコン膜、または非晶質シリコンと微結晶シリコン膜とのヘテロ構造膜、または非晶質炭化シリコン膜、または非晶質炭化シリコン膜と微結晶シリコン膜とのヘテロ構造膜等である。この非晶質シリコン膜63は、電気的に中性な膜であり、この膜をpn接合間に挟むことで、水素パッシベーション効果があり、開放電圧が上昇する等の電気的特性の改良が可能である。さらに、非晶質シリコン膜としては、n型アモルファスシリコン膜(n−a−Si)、p型アモルファスシリコン膜(p−a−Si)であってもよい。この場合においても、被処理基板61と非晶質シリコン膜63との界面におけるキャリアの寿命を長寿命化することができる。
【0072】
非晶質シリコン膜63の表面には、p型ドーパントをドープしたp型半導体層64と、n型ドーパントをドープしたn型半導体層65とが交互に並べて配置されている。これらのp型半導体層64及びn型半導体層65上に設けられた電極66は、例えば、銀などの材料から形成されている。
【0073】
特に図示しないが、p型半導体層64及びn型半導体層65は、それぞれ櫛歯状に形成されており、櫛歯の部分が交互に並べて互いに平行に配置されている。電極66も、これらのp型半導体層64及びn型半導体層65上に対向して櫛歯状に形成されている。電極66の各櫛歯の部分は、一端部が集結されている。したがって、太陽電池セル60の起電力はp型半導体層64に接続した電極66の一端部が集結した部分と、n型半導体層65に接続した電極66の一端部が集結した部分とで取り出される。
【0074】
また、非晶質シリコン膜63の表面に平行な方向において、隣接するp型半導体層64とn型半導体層65との間には、例えば、ポリイミド樹脂膜などからなる絶縁膜67が設けられている。この絶縁膜67により、隣接するp型半導体層64とn型半導体層65との直接的な接触が防止されている。
【0075】
このように、被処理基板61には、実施形態1に係る表面処理方法を実施したことによりn
+型ドープ層62が形成されているので、当該n
+型ドープ層62と非晶質シリコン膜63との界面におけるキャリアのライフタイムは長寿命化する。これにより、太陽電池セル60は、出力向上等の特性が向上したものとなる。
【0076】
以下、本実施形態に係る太陽電池セルの製造方法について説明する。
【0077】
図6(a)に示すように、p型ドーパントがドーピングされたp型の多結晶シリコンからなる被処理基板61を用いる。次に、
図6(b)に示すように、被処理基板61の裏面(受光面とは反対側の面)に、実施形態1に説明した表面処理方法を実施する。この表面処理方法により、n型ドーパントがドープされたn
+型ドープ層62が形成される。
【0078】
次に、
図6(c)に示すように、n
+型ドープ層62の表面に、非晶質シリコン膜63を形成する。非晶質シリコン膜63は、プラズマCVD法、好ましくは触媒CVD法で形成することが好ましい。
【0079】
触媒CVD法は、例えば、
図1に示した触媒CVD装置を用い、シラン(SiH
4)を含む反応性ガスを用いることで、非晶質シリコン膜63を形成することができる。触媒CVD法は、プラズマCVD法と比較すると、被処理基板61へのプラズマダメージがほとんど存在しないことや、装置の構造が簡単でかつ低コストであることや、スケールアップが容易であること等の特徴がある。特に、成膜速度が、例えば5〜10nm/秒程度と比較的高く、非晶質シリコン膜や微結晶シリコン膜等の形成で品質が高い膜が比較的短時間で得られる。
【0080】
次に、
図6(d)に示すように、非晶質シリコン膜63の表面に、p型半導体層64及びn型半導体層65を形成する。例えば、非晶質シリコン膜63の表面に、触媒CVD法によりp型の非晶質導電性シリコンからなるp型半導体層64を、メタルマスクを用いて櫛歯状に形成する。そして、非晶質シリコン膜63の表面に、触媒CVD法によりn型の非晶質導電性シリコンからなるn型半導体層65を、メタルマスクを用いて櫛歯状に形成する。このとき、p型半導体層64の櫛歯の間に、n型半導体層65の櫛歯を平行に挿入するように形成する。
【0081】
次に、
図6(e)に示すように、絶縁膜67を形成する。絶縁膜67は、例えばポリイミド樹脂ペーストをスクリーン印刷法等により、p型半導体層64及びn型半導体層65の間に埋め込んで、250℃以下の温度で加温硬化することにより形成する。この絶縁膜67の形成により、p型半導体層64及びn型半導体層65間は絶縁され、また、耐候性および耐はんだ付け性が向上する。
【0082】
そして、p型半導体層64及びn型半導体層65上に、電極66を形成し、
図5に示したような太陽電池セル60を形成する。具体的には、p型半導体層64及びn型半導体層65上に、例えば銀等の導電性ペーストをスクリーン印刷によりパターン形成し、これを加温硬化して電極66を形成する。
【0083】
以上に説明したように、本実施形態に係る太陽電池セルの製造方法によれば、被処理基板61に形成されるn
+型ドープ層62は、実施形態1に説明した表面処理方法により形成される。このような表面処理方法が実施された被処理基板61のn
+型ドープ層62と非晶質シリコン膜63との界面におけるキャリアの寿命は、長寿命化する。このように太陽電池セル60は、キャリアの再結合による損失が抑制されているので、出力特性の向上という優れた効果を奏し得る。また、本実施形態に係る太陽電池セル60は、受光面側には透明電極が存在しないので、これによる遮蔽損が発生せず、高い発電効率等の良好な光電変換特性が得られる。
【0084】
〈他の実施形態〉
上述した実施形態1〜実施形態3において、被処理基板40、51、61は、多結晶シリコンから形成されていたが、単結晶シリコンから形成されていてもよい。また、被処理基板40、61は、n型を用いてもよく、n型の被処理基板40、61に、p型のドーパントがドープされたp
+型ドープ層を形成してもよい。p型ドーパントとしてはホウ素などの3族元素が挙げられる。この場合、n型ドーパントと、水素ガスとを含む反応性ガス(例えば、ジボランガス)を反応性ガス供給系21から処理容器1内に供給する。また実施形態2に係る構成の太陽電池セルは、被処理基板51をn型とし、受光面側にp
+型ドープ層、裏面側にn
+型ドープ層を形成して作製しても良い。
【0085】
また、シリコン系薄膜として、シリコン窒化膜や非晶質シリコン層を例示したがこれに限らず、シリコンを含む薄膜又はシリコンのみからなる薄膜であってもよい。
【0086】
さらに、太陽電池セルとしては、実施形態2及び実施形態3に例示した構成のものに限らず、結晶系シリコン基板にpn接合が形成された太陽電池セルを製造する場合にも、本発明に係る表面処理方法を適用しうる。
【0087】
[実施例]
以下に、本発明に係る表面処理方法を適用した被処理基板の実施例について説明する。
【0088】
図3に示したように、被処理基板51に、
図1に示したような触媒CVD装置(株式会社アルバック製)を用いて、実施形態1で説明した表面処理を行い、p型シリコン窒化膜53を形成して試料を作製した。
【0089】
表面処理の条件を変えて試料を形成し、これらを実施例A、B、C、Dとする。表1に各実施例の表面処理の条件を例示する。なお、ホスフィンガスの流量は、ヘリウムガスで2.25%に希釈されたガスを用いており、表1に示したホスフィンガスの流量は正味のホスフィンガス流量である。なお、触媒体3の温度は1300℃とした。かかる表面処理により、被処理基板51には、25nm程度のn
+型ドープ層52が形成された。
【0091】
被処理基板51は、FZウェハ(p型単結晶シリコン)からなり、厚さは290μmとした。また、p型シリコン窒化膜53の厚さはそれぞれ25nmとした。なお、p型シリコン窒化膜53は、
図1に示したような触媒CVD装置(株式会社アルバック製)を用いて次のように製造した。シランガス及び窒素ガスを含む反応性ガスを、反応性ガス供給系21から処理容器1内に導入し、原料ガスを触媒体3で分解させてラジカルを形成し、該ラジカルを被処理基板40に堆積させることでp型シリコン窒化膜53を形成した。このp型シリコン窒化膜53の成膜条件は、シランガス流量を20sccmとし、窒素ガス流量を15sccmとし、圧力を1.5Paとし、被処理基板51の温度を150℃とし、触媒体3の温度を1750℃とし、堆積時間を20秒とした。
【0092】
なお、比較例については、水素ガスのみで被処理基板51の表面を洗浄し、その後、p型シリコン窒化膜53を形成することにより作製した。
【0093】
このように形成された実施例A〜D及び比較例について、キャリアの寿命を測定した。この測定は、マイクロ波光導電減衰法(μ−PCD法)により行った。なお、当該測定の測定条件は、励起レーザ光強度については、波長が904nmであり、5.0×10
13Photons/cm
2である。また励起レーザ進入長は略30μmであり、周波数は10GHzである。
【0094】
図7に、実施例A〜D及び比較例について、ホスフィンガスの流量とキャリアの寿命とをプロットしたグラフを示す。同図のτmaxは、各試料(実施例A〜D及び比較例)について、p型シリコン窒化膜53の表面の各部位で測定されたキャリア寿命の最大値である。τavrは、各試料(実施例A〜D及び比較例)について、p型シリコン窒化膜53の表面の各部位で測定されたキャリアの寿命の平均値である。
【0095】
同図に示すように、表面処理時にホスフィンガスを用いないで形成した比較例については、キャリアの寿命の最大値(τmax)が約2500μs、平均値(τavr)が約2000μsである。一方、ホスフィンガスを含む反応性ガスで表面処理を適用した実施例A〜Dについては、実施例A〜Dの何れも最大値(τmax)が約3800μs以上、平均値(τavr)が約3000μs以上であり、非常に長寿命化していることが分かる。
【0096】
このような実施例A〜Dから、被処理基板51にホスフィンガスを含む反応性ガスで表面処理を行った結果、比較例と比べて、被処理基板51(n
+型ドープ層52)とp型シリコン窒化膜53との界面におけるキャリアの寿命は長寿命化したことが分かる。
【0097】
さらに、
図5に示したように、被処理基板61の両面に、実施形態1で説明した表面処理を行い、非晶質シリコン膜63を形成して試料を作製した。
【0098】
表面処理の条件を変えて試料を形成し、これらを実施例E、F、G、Hとする。表2に各実施例の表面処理の条件を例示する。なお、ホスフィンガスの流量は、ヘリウムガスで2.25%に希釈されたガスを用いており、表2に示したホスフィンガスの流量は正味のホスフィンガス流量である。なお、触媒体3の温度は1300℃とした。かかる表面処理により、被処理基板61には、25nm程度のn
+ドープ層62が形成された。
【0100】
被処理基板61は、FZウェハ(p型単結晶シリコン)からなり、厚さは290μmとした。また、被処理基板61の裏面に形成した非晶質シリコン膜63の厚さは100nmとした。なお、非晶質シリコン膜63は、ノンドープのi型の非晶質シリコン膜であり、次のように製造した。まず、シランガスと、希釈用のガスとしての水素ガスとからなる原料ガスを、反応性ガス供給系21から処理容器1内に導入し、原料ガスを触媒体3で分解させてラジカルを形成し、該ラジカルを被処理基板40に堆積させることで非晶質シリコン膜63を形成した。この非晶質シリコン膜63の成膜条件は、シランガス流量を20sccmとし、圧力を1Paとし、被処理基板61の温度を150℃とし、触媒体3の温度を1700℃とし、堆積時間を60秒とした。
【0101】
なお、比較例については、水素ガスのみで被処理基板61の表面を洗浄し、その後非晶質シリコン膜63を形成することにより作製した。
【0102】
このように形成された実施例E〜H及び比較例について、キャリアの寿命を測定した。この測定は、マイクロ波光導電減衰法(μ−PCD法)により行った。なお、当該測定の測定条件は、励起レーザ光強度については、波長が904nmであり、5.0×10
13Photons/cm
2である。また励起レーザ進入長は略30μmであり、周波数は10GHzである。
【0103】
図8〜
図10は、それぞれ実施例E、実施例F、比較例に係る試料の平面視(非晶質シリコン膜63の表面)における各部位でのキャリアの寿命を、色分けして示したものと、そのキャリアの寿命のヒストグラムである。これらの図のヒストグラムは、縦軸にキャリアの寿命(μs)をとり、横軸に度数を取っている。ヒストグラムに示されるように、比較例は、縦軸の中央部にピークがあり、実施例E、Fについては、縦軸の上部にピークがある。つまり、実施例E、Fは比較例よりも、全般的に長寿命であることが分かる。
【0104】
図11に、実施例E〜H及び比較例について、ホスフィンガスの流量とキャリアの寿命とをプロットしたグラフを示す。同図のτmaxは、各試料(実施例E〜H及び比較例)について、非晶質シリコン膜63の表面の各部位で測定されたキャリア寿命の最大値である。τavrは、各試料(実施例E〜H及び比較例)について、非晶質シリコン膜63の表面の各部位で測定されたキャリアの寿命の平均値である。同図に示すように、表面処理時にホスフィンガスを用いないで形成した比較例については、キャリアの寿命の最大値(τmax)が約2600μs、平均値(τavr)が約2200μsである。一方、ホスフィンガスを含む反応性ガスで表面処理を適用した実施例E〜Hについては、実施例E〜Hの何れも最大値(τmax)が約4000μs以上、平均値(τavr)でも約3500μs以上と、非常に長寿命化していることが分かる。
【0105】
このような実施例E〜Hから、被処理基板61にホスフィンガスを含む反応性ガスで表面処理を行った結果、比較例と比べて、被処理基板61(n
+型ドープ層62)と非晶質シリコン膜63との界面におけるキャリアの寿命は長寿命化したことが分かる。