【実施例】
【0038】
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、本実施例における重量平均分子量のデータは、ポリスチレンを標準物質としてGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法)によって求めたものである。GPCの測定条件は、次の通りである。
装置:日本分光株式会社製 JASCO GULLIVER 1500
検出器:インテリジェント示差屈折率計 RI-1530
溶剤:テトラヒドロフラン
流速:1.0ml/min
カラム温度:40℃
使用カラム:昭和電工株式会社製(Shodex KF-G(ガードカラム)、Shodex KF-804L×2本)
上記カラムを直列に繋いで使用
較正曲線用標準資料:Polymer laboratories社製 Polymer Standards(PL), Polystyrene
【0039】
[合成例1]<化合物(1−0−1)の合成>
環流冷却器、温度計、及び滴下漏斗を取り付けた反応容器に、フェニルトリメトキシシラン(6.54kg)、水酸化ナトリウム(0.88kg)、水(0.66kg)、及び2−プロピルアルコール(26.3リットル)を仕込んだ。窒素気流下、撹拌しながら加熱を開始した。還流開始から6時間撹拌を継続したのち室温で1晩静置した。そして反応混合物を濾過器ヘ移し窒素ガスで加圧して濾過した。得られた固体を2−プロピルアルコールで1回洗浄、濾過したのち80℃で減圧乾燥を行うことにより、無色固体(3.3kg)を得た。これを化合物(1−0−1)とする。
【化8】
【0040】
[合成例2]<化合物(1−0−2)の合成>
環流冷却器、温度計、及び滴下漏斗を取り付けた反応容器に、シクロペンチルメチルエーテル(2005g)、2−プロパノール(243g)、イオン交換水(1400g)、塩酸(461g)を仕込み、窒素雰囲気下、室温で攪拌した。続いて滴下ロートに、合成例1で得られた化合物(1−0−1)を(800g)、シクロペンチルメチルエーテル(2003g)を仕込み、スラリー状にして30分かけて反応器に滴下し、滴下終了後30分攪拌を継続した。反応後攪拌を停止し、静置して有機層と水層に分けた。得られた有機層は水洗により中性とした後、メンブレンフィルタにてゴミを取り除き、ロータリーエバポレーターを用いて60℃で減圧濃縮して、678gの無色固体を得た。この無色固体を酢酸メチル(980g)で洗浄し、減圧乾燥して無色粉末状固体496gを得た。これを化合物(1−0−2)とする。
【化9】
【0041】
[合成例3]<化合物(1−1−1)の合成>
環流冷却器、温度計、及び滴下漏斗を取り付けた反応容器に、合成例2で得られた化合物(1−0−2)(32.3g)、テトラヒドロフラン(342g)、メチルビニルジクロロシラン(12.5g)を仕込み、窒素気流下、反応混合物の温度が40〜50℃になるように攪拌した。そしてトリエチルアミン(12.3g)を滴下したのち、3時間撹拌を継続した。その後、反応混合物の温度を10℃まで冷却したのち、イオン交換水(220g)とトルエン(43g)を加えて15分間撹拌した。分液ロートに移しいれ、水洗して中性とした。ロータリーエバポレーターを用いて50℃で減圧濃縮を行い、得られた残渣をテトラヒドロフラン(40g)に再溶解させ、メタノール(247g)を加えて固体を析出させた後、60分攪拌した。析出した固体を濾過・減圧乾燥して31.6gの無色固体を得た。得られた無色固体は下記の分析結果から化合物(1−1−1)の構造を有すると判断される。
1H−NMR(溶剤:CDCl
3):δ(ppm);0.37(s,6H)、5.90−6.20(m,6H)、7.13−7.60(m,40H).
29Si−NMR(溶剤:CDCl
3):δ(ppm);−31.35(s,2Si)、−78.24(s,4Si)、−79.41(s,4Si).
【0042】
【化10】
【0043】
[合成例4]<化合物(2−2−1)の合成>
滴下漏斗、温度計、及び還流冷却器を取り付けた反応器に、合成例2で得られた化合物(1−0−2)(7160g)、トルエン(72.6kg)、ジメチルクロロシラン(2850g)を仕込み、乾燥窒素にてシールした。次いでトリエチルアミン(3230g)を滴下漏斗から約20分間で滴下した。このとき、溶液温度が35℃〜40℃になるよう滴下速度を調節した。滴下終了後、1時間攪拌を継続し、反応を完結させた。反応終了後、イオン交換水(16.7kg)を投入して過剰量のジメチルクロロシランを加水分解し、有機層と水層に分けた。有機層を水洗により中性とした後、ロータリーエバポレーターを用いて85℃で減圧濃縮を行い、得られた残渣をメタノール(19.95kg)で洗浄し、8587.6gの無色固体を得た。この無色固体を酢酸メチル(9.31kg)で洗浄し、減圧乾燥して無色粉末状固体7339gを得た。得られた無色固体は下記の分析結果から化合物(2−2−1)の構造を有すると判断される。
1H−NMR(溶剤:CDCl
3):δ(ppm);0.16(d,24H)、4.84−4.89(m,4H)、7.05−7.50(m,40H).
29Si−NMR(溶剤:CDCl
3):δ(ppm);3.85(s,4Si)、−71.90(s,4Si)、−75.05(s,4Si).
【0044】
【化11】
【0045】
[合成例5]<化合物(4−1−1)の合成>
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えた反応容器に合成例2で製造した化合物(1−0−2)(66g)、酢酸エチル(600ml)、テトラヒドロフラン(20ml)を仕込み、窒素気流下40℃に加熱攪拌した。温度が40℃に達したところでテトラクロロシラン(22.1g)を、反応液温度が45℃を超えないように滴下した。滴下終了後3時間反応を継続させた後、室温まで冷却した。蒸留水にて中和水洗した後、エバポレータで溶剤を除去し、粗生成物75gを得た。得られた粗生成物を酢酸メチル(150ml)で再結晶処理を行い、化合物(4−1−1)59gを得た。
【0046】
【化12】
【0047】
[合成例6]<化合物(4−1−2)の合成>
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えた反応容器にトルエン(300ml)、ジメチルクロロシラン(18.6g)、トリエチルアミン(19.9g)を仕込み、窒素気流下10℃に冷却した。続いて、酢酸エチル(150ml)に、合成例5で製造した化合物(4−1−1)(38.5g)を溶解させて滴下ロートに仕込み、反応器内の温度が10℃を超えないよう反応器に滴下した。滴下終了後室温で3時間熟成を行った。反応後、中和水洗してエバポレータで溶剤を除去した後、粗生成物をメタノール(150ml)で洗浄し、濾過により固形分を濾別して化合物(4−1−2)35gを得た。
【0048】
【化13】
【0049】
[合成例7]<化合物(4−1−3)の合成>
温度計、還流冷却器、攪拌機を備えた反応容器にトルエン(300ml)、ジメチルビニルクロロシラン(18.3g)、トリエチルアミン(15.3g)を仕込み、窒素気流下10℃に冷却した。続いて、酢酸エチル(150ml)に、合成例5で製造した化合物(4−1−1)(30g)を溶解させて滴下ロートに仕込み、反応器内の温度が10℃を超えないよう反応器に滴下した。滴下終了後室温で4時間熟成を行った。反応後、中和水洗してエバポレータで溶剤を除去した後、粗生成物をメタノール(150ml)で洗浄し、濾過により固形分を濾別して化合物(4−1−3)33gを得た。
【0050】
【化14】
【0051】
[ポリマー合成例1]<PSQ5033の製造>
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた反応容器に合成例3で製造した化合物(1−1−1)(157.3g)、合成例4で製造した化合物(2−2−1)(63.7g)、FM−1105(式(3−2−1):チッソ株式会社製、両末端Si−Hシリコーン、分子量約600)(19.0g)、トルエン(960g)を仕込み、窒素気流下100℃で加熱攪拌した。反応混合物が100℃に達してから、カルステッド触媒(8.5μl)を添加したのち、15.5時間攪拌した。そして氷浴で反応混合物を10℃以下まで冷却したのち、減圧濃縮することによって無色固体を得た。そして得られた無色固体を60℃で減圧乾燥を3時間行い、無色固体(233.7g)を得た。これをPSQ5033とする。このようにして得られた固体の分子量は、重量平均分子量(Mw):168,500であった。
なお、この重合体のmは5であり、(A)は0.261、(B)は0.196、(C)は0.065であることから、(m+2)×(C)/(A)=1.750であった。
また、(B)/(C)=3であった。
【0052】
【化15】
【0053】
[ポリマー合成例2]<PSQ5020の製造>
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた反応容器に合成例3で製造した化合物(1−1−1)(25.6g)、合成例4で製造した化合物(2−2−1)(12.4g)、FM−1111(式(3−2−2):チッソ株式会社製、両末端Si−Hシリコーン、分子量約1000)(2.0g)、及びトルエン(160g)を仕込み、窒素気流下100℃で加熱攪拌した。反応混合物が100℃に達してから、カルステッド触媒(1.4μl)を添加したのち、9時間攪拌した。そして氷浴で反応混合物を10℃以下まで冷却したのち、減圧濃縮することによって無色固体を得た。そして得られた無色固体を50℃で減圧乾燥を3時間行い、無色固体(26.0g)を得た。これをPSQ5020とする。このようにして得られた固体の分子量は、重量平均分子量(Mw):418,000であった。
なお、この重合体のmは12であり、(A)は0.042、(B)は0.038、(C)は0.004であることから、(m+2)×(C)/(A)=1.400であった。
また、(B)/(C)=9であった。
【0054】
【化16】
【0055】
[ポリマー合成例3]<PSQ5034の製造>
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた反応容器に合成例3で製造した化合物(1−1−1)(27.9g)、合成例4で製造した化合物(2−2−1)(11.3g)、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(式(3−2−3))(0.8g)、及びトルエン(160g)を仕込み、窒素気流下100℃で加熱攪拌した。反応混合物が100℃に達してから、カルステッド触媒(1.5μl)を添加したのち、7.5時間攪拌した。そして氷浴で反応混合物を10℃以下まで冷却したのち、減圧濃縮することによって無色固体を得た。そして得られた無色固体を50℃で減圧乾燥を3時間行い、無色固体(38.1g)を得た。これをPSQ5034とする。このようにして得られた固体の分子量は、重量平均分子量(Mw):378,000であった。
なお、この重合体のmは0であり、(A)は0.046、(B)は0.035、(C)は0.012であることから、(m+2)×(C)/(A)=0.500であった。
また、(B)/(C)=3であった。
【化17】
【0056】
[ポリマー合成例4]<PSQ5031の製造>
温度計、還流冷却器、撹拌機を備えた反応容器に合成例3で製造した化合物(1−1−1)(25.0g)、合成例4で製造した化合物(2−2−1)(10.1g)、FM−1105(式(3−2−1))(4.9g)、及びトルエン(160g)を仕込み、窒素気流下100℃で加熱攪拌した。反応混合物が100℃に達してから、カルステッド触媒(1.3μl)を添加したのち、5時間攪拌した。そして氷浴で反応混合物を10℃以下まで冷却したのち、減圧濃縮することによって無色固体を得た。そして得られた無色固体を50℃で減圧乾燥を3時間行い、無色固体(37.9g)を得た。これをPSQ5031とする。このようにして得られた固体の分子量は、重量平均分子量(Mw):416,000であった。
なお、この重合体のmは5であり、(A)は0.041、(B)は0.031、(C)は0.010であることから、(m+2)×(C)/(A)=3.500であった。
また、(B)/(C)=3であった。
【0057】
紡糸に用いた重合体溶液の溶剤、及び凝固浴の溶剤についての、20℃での蒸気圧と溶解パラメータ(δ値)を以下に示す(Wiley & Sons, Inc.社刊「POLYMER HANDBOOK Third Edition」(ISBN 0-471-81244-7)記載の値)。
蒸気圧(20℃)/ kPa δ値/ √(cal/cm
3) δ値/ √(MPa)
アセトン 24.7 9.9 20.3
トルエン 2.9 8.9 18.2
DMF 0.36 10.6 21.7
ピリジン 2.0 10.7 21.9
メタノール 13.0 14.5 29.7
エタノール 5.9 12.7 26.0
【0058】
[実施例1]<シルセスキオキサン繊維(PSQ5033)の作製>
アセトン/トルエン混合溶媒(35/65質量比)を用いて、ポリマー合成例1で得られたPSQ5033を溶解し、及びPSQ5033:100質量部に対して合成例7で得られた化合物(4−1−3)を1質量部、カルステッド触媒を0.25質量部溶解し、紡糸用溶液においてPSQ5033が60質量%となるように紡糸用溶液を調製した。この溶液を用いてエレクトロスピニング法にて紡糸を行なった。装置は、NANON((株)メック製)を用い、ノズル径200μm、紡糸距離15cm、溶液送り速度1.2ml/hr、印加電圧15kv、ノズル振り巾20mm、及びノズル水平移動速度10mm/secの条件で行なった。次に、得られた不織布状膜を、100℃で1時間保持し、内部架橋を促進させた。最終的に得られた不織布状膜の繊維径を測定すると、7.91±1.32μmであった。また、繊維同士の融着は認められなかった。また、繊維を指に巻き付けても、形状が崩れなかった。
【0059】
次にこの不織布の一部を取り、耐熱試験を行なった。不織布を250℃で2時間保持した後、質量変化と繊維の融着を観察したが、変化は認められなかった。熱分析(TG−DTA)による質量減少開始温度は、350℃であった。
【0060】
次にこの不織布の一部を取り、耐溶剤試験を行なった。不織布をトルエンに浸漬し、60℃で8時間保持した後、重量変化と繊維径の変化を測定したところ、変化は認められなかった。次に不織布の別の部分をとり、キシレン還流温度(138-140℃)にて8時間浸漬し、同様に重量変化と繊維径の変化を測定したところ,変化は認められなかった。
【0061】
[実施例2]
実施例1のカルステッド触媒量をPSQ5033:100質量部に対して0.5質量部用いた以外は、実施例1と同様に紡糸、熱処理による内部架橋を行ない、繊維径6.88±1.56μmの不織布を得た。繊維の融着は認められなかった。また、繊維を指に巻き付けても、形状が崩れなかった。また、実施例1と同様に耐熱試験と耐溶剤試験を行なった結果、変化は認められなかった。
【0062】
[実施例3]<シルセスキオキサン繊維(PSQ5020)の作製>
PSQ5033に変えて、ポリマー合成例2で得られたPSQ5020を用いた以外は、実施例1と同様に紡糸、熱処理による内部架橋を行ない、繊維径5.48±0.36μmの不織布を得た。繊維の融着は認められなかった。また、繊維を指に巻き付けても、形状が崩れなかった。
これの一部を取り、実施例1と同様に耐熱試験、耐溶剤試験を行なった結果、変化は認められなかった。
【0063】
[実施例4]<複合繊維からのシルセスキオキサン繊維(PSQ5033)の作製>
アセトン/トルエン混合溶媒(35/65質量比)を用いて、ポリマー合成例1で得られたPSQ5033が60質量%となるように溶解し、芯材用溶液を調製した。また、ナイロン6,6をヘキサフルオロイソプロパノール(以下HFIPと呼ぶ)に溶解し、40質量%の鞘材溶液を調製した。この2種類の溶液で、芯鞘複合ノズルを用いて、実施例1の条件でエレクトロスピニングを行い、鞘がナイロン、芯がPSQ5033の複合繊維不織布を得た。次にこの不織布を100℃1時間、150℃1時間、200℃2時間熱処理を行い、PSQ5033に残っている反応部位で内部架橋させた。その後、室温まで戻した後、HFIPに24時間浸漬し、鞘側のナイロンを溶解させ、PSQ5033だけで構成された不織布を得た。繊維径は0.96±0.23μmであった。繊維の融着は認められなかった。また、繊維を指に巻き付けても、形状が崩れなかった。
この不織布を実施例1と同様に、耐熱試験、耐溶剤試験を行なった結果、変化は認められなかった。
【0064】
[実施例5]<多孔質シルセスキオキサン繊維(PSQ5033)の作製>
溶媒をアセトン/DMF(35/65質量比)に、溶液送り速度を1.8ml/hr、印加電圧を20.5kvに変更した以外は実施例1と同様に紡糸、熱処理を行ない、繊維径3.92±0.36μmの不織布を得た。観察したところ、表面と内部に多孔質構造をもった繊維となっていた。繊維の融着は認められなかった。また、繊維を指に巻き付けても、形状が崩れなかった。
この不織布を実施例1と同様に、耐熱試験、耐溶剤試験を行なった結果、変化は認められなかった。
【0065】
[実施例6]
溶媒をアセトン/ピリジン(35/65質量比)に変更した以外は、実施例5と同様に、紡糸、熱処理を行ない、繊維径5.13±1.00μmの多孔質繊維の不織布を得た。繊維の融着は認められなかった。また、繊維を指に巻き付けても、形状が崩れなかった。
この不織布を実施例1と同様に、耐熱試験、耐溶剤試験を行なった結果、変化は認められなかった。
【0066】
[実施例7]
紡糸用溶液にドデシルスルホン酸ナトリウム(SDS)を0.1質量%添加した以外は、実施例5と同様に紡糸、熱処理を行ない、繊維径1.14±0.14μmの多孔質繊維の不織布を得た。繊維の融着は認められなかった。また、繊維を指に巻き付けても、形状が崩れなかった。
この不織布を実施例1と同様に、耐熱試験、耐溶剤試験を行なった結果、変化は認められなかった。
【0067】
[実施例8]
溶媒をDMF/ピリジン(80/20質量比)に、溶液送り速度を1.9ml/hr、印加電圧を21.0kvに変更した以外は、実施例5と同様に、紡糸、熱処理を行ない、繊維径4.82±0.96μmの多孔質繊維の不織布を得た。繊維の融着は認められなかった。また、繊維を指に巻き付けても、形状が崩れなかった。
この不織布を実施例1と同様に、耐熱試験、耐溶剤試験を行なった結果、変化は認められなかった。
実施例8で得られた不織布の電子顕微鏡写真を
図1及び
図2として添付する。
図1は繊維の側面を写した写真である。一方
図2は、繊維の断面を写した写真である。
【0068】
[実施例9]
溶媒をDMFに変更し、PSQ5033の濃度を48質量%にした以外は、実施例7と同様に、紡糸、熱処理を行ない、繊維径0.80±0.11μmの多孔質繊維の不織布を得た。繊維の融着は認められなかった。また、繊維を指に巻き付けても、形状が崩れなかった。
この不織布を実施例1と同様に、耐熱試験、耐溶剤試験を行なった結果、変化は認められなかった。
【0069】
[実施例10]
溶媒をDMF/メタノール(80/20質量比)に変更し、実施例8と同様の条件で、メタノール中で湿式紡糸を行なった。その後、100℃で1時間熱処理を行ない、繊維径3.90±0.35μmの多孔質繊維の不織布を得た。繊維の融着は認められなかった。また、繊維を指に巻き付けても、形状が崩れなかった。
この不織布を実施例1と同様に、耐熱試験、耐溶剤試験を行なった結果、変化は認められなかった。
実施例10で得られた不織布の電子顕微鏡写真を
図3及び
図4として添付する。
図3は繊維の側面を写した写真である。
図4は繊維の断面を写した写真である。
【0070】
[実施例11]<不燃性シルセスキオキサン繊維(PSQ5033)の作製>
実施例1で最終的に得られた不織布の1部を取り、窒素雰囲気下、350℃で8時間、熱処理を行なった。顕微鏡観察では、繊維形状に変化は見られなかった。また、指に巻きつけても形状は崩れなかった。この高温処理した不織布に、ライターの炎で火を着けようとしても、着火しなかった。
実施例11において、熱処理前の不織布、すなわち実施例1で最終的に得られた不織布の熱分析(TG−DTA)の結果を表すグラフを
図5に示す。また、熱処理後の不織布の熱分析(TG−DTA)の結果を表すグラフを
図6に示す。これらの結果の比較から、前者で観察された質量減少開始温度350℃が、後者では明らかに消失していることがわかる。
上記実施例1〜11の条件及び結果を表1〜2に示す。
【0071】
[比較例1]
実施例1においてPSQ5033を、ポリマー合成例3で得られたPSQ5034に変更した以外は、実施例1と同様に紡糸、内部架橋を行い、繊維径6.95±0.57μmの不織布を得た。このものは繊維が硬く、指に巻きつけようとすると、折れてしまった。
【0072】
[比較例2]
実施例1においてPSQ5033を、ポリマー合成例4で得られたPSQ5031に変更した以外は、実施例1と同様に紡糸を行い、繊維径5.96±0.73μmの不織布を得た。このものを内部架橋させるべく100℃で1時間処理すると、繊維が融解して繊維形状を保たなくなり、多孔質のフィルムとなった。
【0073】
[比較例3]
実施例4においてPSQ5033をポリマー合成例3で得られたPSQ5034に変更した以外は、実施例4と同様に芯鞘構造の複合繊維の紡糸、内部架橋、鞘材のナイロン除去を行い、繊維径0.89±0.18μmの不織布を得た。このものは繊維が硬く、指に巻きつけようとすると、折れてしまった。
【0074】
[比較例4]
比較例2で用いた、架橋剤、触媒入りのPSQ5031の原料溶液を芯材溶液とした以外は、比較例3と同様に芯鞘構造の複合繊維の紡糸、内部架橋、鞘材のナイロン除去を行い、繊維径0.91±0.16μmの不織布を得た。
このものを耐熱試験(250℃2時間熱処理)すると、一部繊維同士の融着がおこった。
【0075】
[比較例5]
実施例11において、窒素雰囲気下、350℃で8時間、熱処理を行なうところを250℃で8時間に条件を変更した。顕微鏡観察では、繊維形状に変化は見られなかった。また、指に巻きつけても形状は崩れなかった。この高温処理した不織布に、ライターの炎で火を着けようとすると、着火した。ライターの炎を消すと、すぐ火が消えた。
上記比較例1〜5の条件及び結果を表3に示す。
なお、実施例1〜10及び比較例1〜4において、紡糸雰囲気の温度は21〜23℃、相対湿度は表1〜3に示す通りであった。温度および相対湿度の測定は、株式会社カスタム製デジタル温湿度計CTH−201を使用して行った。以下の実施例12〜18も同様に測定し、紡糸雰囲気の温度は21〜23℃で実験を行った。
【0076】
[実施例12]<湿度制御による多孔質シルセスキオキサン繊維(PSQ5033)の作製>
まずエレクトロスピニング装置内に乾燥シリカゲル100gを置き、紡糸雰囲気の相対湿度を10%以上20%未満に調節した。
DMF溶媒を用いて、ポリマー合成例1で得られたPSQ5033を溶解し、及びPSQ5033:100質量部に対して合成例7で得られた化合物(4−1−3)を1質量部、カルステッド触媒を0.05質量部溶解し、紡糸用溶液においてPSQ5033が53質量%となるように紡糸用溶液を調製した。この溶液を用いて実施例8と同様に紡糸を行い,さらに100℃24時間、150℃2時間、200℃3時間熱処理を行い,繊維径2.78±0.426μmの不織布を得た。このものは,多孔質繊維にはなっていなかったが、繊維の融着は認められなかった。また、繊維を指に巻き付けても、形状が崩れなかった。
この不織布を実施例1と同様に、耐熱試験、耐溶剤試験を行なった結果、変化は認められなかった。実施例12で得られた不織布の繊維の側面を写した電子顕微鏡写真を
図7として添付する。
なお、本実施例は、本発明が多孔質繊維または繊維集合体の製造方法を対象とする場合において、以下の実施例13〜18に対して相対湿度が20%未満の場合には多孔質にならないことを示すものであり、繊維または繊維集合体自体を対象とする本発明から排除されるものではない。
【0077】
[実施例13]
実施例12と同様にして,相対湿度を20−30%に調節した以外は、実施例12と同様に紡糸、熱処理を行い、繊維径3.08±0.314μmの多孔質繊維の不織布を得た。繊維の融着は認められなかった。また、繊維を指に巻き付けても、形状が崩れなかった。この不織布を実施例1と同様に、耐熱試験、耐溶剤試験を行なった結果、変化は認められなかった。実施例13で得られた不織布の繊維の側面を写した電子顕微鏡写真を
図8として添付する。
【0078】
[実施例14]
紡糸雰囲気の相対湿度を30−40%に変更した以外は、実施例12と同様に紡糸、熱処理を行い、繊維径3.89±0.454μmの多孔質繊維の不織布を得た。繊維の融着は認められなかった。また、繊維を指に巻き付けても、形状が崩れなかった。この不織布を実施例1と同様に、耐熱試験、耐溶剤試験を行なった結果、変化は認められなかった。実施例14で得られた不織布の繊維の側面を写した電子顕微鏡写真を
図9として添付する。
【0079】
[実施例15]
紡糸雰囲気の相対湿度を50−60%に変更した以外は、実施例12と同様に紡糸、熱処理を行い、繊維径3.96±0.122μmの多孔質繊維の不織布を得た。繊維の融着は認められなかった。また、繊維を指に巻き付けても、形状が崩れなかった。
この不織布を実施例1と同様に、耐熱試験、耐溶剤試験を行なった結果、変化は認められなかった。実施例15で得られた不織布の電子顕微鏡写真を
図10及び
図11として添付する。
図10は繊維の側面を写した写真である。
図11は繊維の断面を写した写真である。
【0080】
[実施例16]
紡糸雰囲気に置いた乾燥シリカゲルを取り去り、代わりに水100mlを入れたシャーレを置き、相対湿度を60−70%に調節した以外は、実施例12と同様に紡糸、熱処理を行い、繊維径4.82±0.964μmの多孔質繊維の不織布を得た。繊維の融着は認められなかった。また、繊維を指に巻き付けても、形状が崩れなかった。
この不織布を実施例1と同様に、耐熱試験、耐溶剤試験を行なった結果、変化は認められなかった。実施例16で得られた不織布の電子顕微鏡写真を
図12及び
図13として添付する。
図12は繊維の側面を写した写真である。
図13は繊維の断面を写した写真である。
【0081】
[実施例17]
紡糸雰囲気に霧吹きで水を霧状に噴きかけながら相対湿度を70−80%に調節した以外は、実施例15と同様に紡糸、熱処理を行い、繊維径5.58±0.631μmの多孔質繊維の不織布を得た。繊維の融着は認められなかった。また、繊維を指に巻き付けても、形状が崩れなかった。
この不織布を実施例1と同様に、耐熱試験、耐溶剤試験を行なった結果、変化は認められなかった。実施例17で得られた不織布の電子顕微鏡写真を
図14及び
図15として添付する。
図14は繊維の側面を写した写真である。
図15は繊維の断面を写した写真である。
【0082】
[実施例18]
実施例15と同様に相対湿度を50−60%に調節し、凝固浴に液体窒素を用いた湿式紡糸を行なった以外は、実施例14と同様に紡糸、熱処理を行い、繊維径3.58±0.512μmの多孔質繊維の不織布を得た。繊維の融着は認められなかった。また、繊維を指に巻き付けても、形状が崩れなかった。
この不織布を実施例1と同様に、耐熱試験、耐溶剤試験を行なった結果、変化は認められなかった。実施例18で得られた不織布の電子顕微鏡写真を
図16及び
図17として添付する。
図16は繊維の側面を写した写真である。
図17は繊維の断面を写した写真である。
上記実施例12〜18の条件及び結果を表4〜5に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
【表4】
【0087】
【表5】