【実施例】
【0057】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0058】
<実施例1>
(1)三成分連結反応によるトリアリールブテン骨格の構築
1−(4−メトキシフェニル)−2−フェニル−1−(4−ピバロイルオキシフェニル)−3−ブテン(4)
【0059】
【化31】
【0060】
アルゴン雰囲気下、塩化ハフニウム(39.2mg、0.122mmol)をアニソール(3、0.02mL)に懸濁し、氷冷下、4−(ピバロイルオキシ)ベンズアルデヒド(1、25mg、0.121mmol)とトリメチルシンナミルシラン(2、46.7mg、0.245mmol)とのアニソール溶液(0.22mL)をゆっくり滴下した。室温で一夜攪拌した後、反応混合物に飽和重曹水(5mL)を注いで激しく攪拌し、ジエチルエーテル(10mL)を加えて抽出した。さらにジエチルエーテル(10mL)で2回抽出し、有機層を集合して、飽和塩化ナトリウム水溶液(5mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、これを濃縮した。残渣を薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:塩化メチレン:ジエチルエーテル=4:1:1)で精製すると、無色の油状物として標題化合物(4、37.7mg)が得られた(収率75%、シン・アンチ混合物)。
【0061】
1H NMR(CDCl
3、テトラメチルシラン) δ(ppm):1.20及び1.26(s、9H)、3.59及び3.70(s、3H)、4.01(dd、1H、J=7.8、11.3Hz)、4.19(d、1H、11.3Hz)、4.7−4.9(m、2H)、5.8−5.9(m、1H)、6.6−7.3(m、13H).
赤外吸収スペクトル(液膜法)cm
−1:2974、1749、1610、1511、1462、1252、1203、1167、1120、1032、753、700.
質量スペクトル m/e:計算値(C
28H
30O
3+H)
+として415.23、実験値415.23.
【0062】
(2)環化反応によるテトラヒドロナフタレン骨格の構築
2−ヨード−7−メトキシ−3−フェニル−4−(4−ピバロイルオキシフェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン(5)
【0063】
【化32】
【0064】
ビス(ピリジン)ヨードニウム テトラフルオロボレート(65.8mg、0.177mmol)を塩化メチレン(3.4mL)に懸濁し、ドライアイスアセトン浴で−78℃に冷却した。これに1−(4−メトキシフェニル)−2−フェニル−1−(4−ピバロイルオキシフェニル)−3−ブテン(4、56.0mg、0.135mmol)の塩化メチレン(1.8mL)溶液を加え、さらに三臭化ホウ素ジエチルエーテル錯体(0.015mL、0.118mmol)を3回に分けて添加した。その後、−78℃で1時間攪拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液(5mL)を加えて反応を停止し、室温に戻した後、ジエチルエーテル(10mL)で3回抽出した。有機層を集合して飽和塩化ナトリウム水溶液(10mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。残渣を薄層クロマトグラフィー(トルエン)で精製すると、微黄色油状物として標題化合物(5、51.6mg)が得られた(収率71%)。
【0065】
1H NMR(CDCl
3、テトラメチルシラン) δ(ppm):1.32、1.35及び1.32(s、9H)、3.3(m、1H)、3.7−3.9(m、5H)、4.2(d、1H,J=10.6Hz)、4.7−4.8(m、1H)、6.6−7.2(m、12H).
赤外吸収スペクトル(液膜法)cm
−1:2972、1751、1610、1510、1503、1122、1031.
質量スペクトル m/e:計算値(C
28H
29IO
3+H)
+として541.12、実験値541.12.
【0066】
(3)脱ハロゲン化水素反応によるジヒドロナフタレン骨格の構築
7−メトキシ−3−フェニル−4−(4−ピバロイルオキシフェニル)−3,4−ジヒドロナフタレン(6)
【0067】
【化33】
【0068】
2−ヨード−7−メトキシ−3−フェニル−4−(4−ピバロイルオキシフェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン(5、39.4mg、0.0729mmol)をトルエン(1.5mL)に溶解し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU、0.035mL、0.234mmol)を加えて、80℃で15分加熱攪拌した。放冷後、氷冷下で飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)を加え、激しく攪拌し、次にジエチルエーテル(10mL)を加えて抽出した。さらにジエチルエーテル(10mL)で2回抽出し、有機層を集合して飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、これを濃縮した。残渣を薄層クロマトグラフィー(ベンゼン:ヘキサン=10:1)で精製すると、無色油状物として標題化合物(6、22.7mg)が得られた(収率75%)。
【0069】
1H NMR(CDCl
3、テトラメチルシラン) δ(ppm):1.34及び1.36(s、9H)、3.76及び3.80(s、3H)、3.84(dd、1H、J=4.2、7.5Hz)、4.17(d、1H、J=7.5Hz)、5.98(dd、1H、4.2、9.6Hz)、6.6−7.2(m、12H).
【0070】
(4)二重結合の転位反応
4−(4−ヒドロキシフェニル)−7−メトキシ−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(7)
【0071】
【化34】
【0072】
第三級ブトキシカリウム(40.3mg、0.359mmol)のジメチルスルホキシド(0.6mL)溶液に、7−メトキシ−3−フェニル−4−(4−ピバロイルオキシフェニル)−3,4−ジヒドロナフタレン(6、29.3mg、0.0710mmol)のジメチルスルホキシド(0.8mL)溶液を加え、室温で一昼夜攪拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)を加えよく攪拌した後、ジエチルエーテル(10mL)で3回抽出した。有機層を集合し、飽和塩化ナトリウム水溶液(10mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、これを濃縮した。残渣を薄層クロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=10:1)で精製すると、標題化合物(7、16.0mg)が得られた(収率69%)。
【0073】
1H NMR(CDCl
3、テトラメチルシラン) δ(ppm):2.91(ddd、2H)、2.75(ddd、2H)、3.79(s、3H)、6.6−7.2(m、12H).
【0074】
(5)脱メチル化反応
4−(4−ヒドロキシフェニル)−7−ヒドロキシ−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(8)
【0075】
【化35】
【0076】
反応容器中、上記工程(4)で得られた4−(4−ヒドロキシフェニル)−7−メトキシ−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(7、29.7mg、0.090mM)にジクロロメタン2.3mlを加え、反応系を0℃に冷却した。次いで臭素化硼素(BBr
3)5当量を含むヘプタン1M溶液0.45mlを加えた。1.5時間経過後、反応生成物の一部に対し、薄層クロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1)を行って、上記4−(4−ヒドロキシフェニル)−7−メトキシ−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレンに対応するスポットが検出されなくなったことを確認した後、NaHCO
3水溶液を加え、反応を終了させた。反応生成物をジクロロメタン及び酢酸エチルで抽出した後、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層を濃縮後、薄層クロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1)を行い、4−(4−ヒドロキシフェニル)−7−ヒドロキシ−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(8)27.9mgを得た。収率は定量的であった。
【0077】
1H NMR (CD
3OD) δ(ppm):7.23−7.07(m、5H、Ar)、6.93−6.86(m、2H、Ar)、6.79−6.66(m、4H、Ar)、6.57(dd、1H、J=2.4、8.4Hz、Ar)、3.03−2.92(m、2H、1−H)、2.87−2.76(m、2H、2−H).
【0078】
(6)側鎖導入反応
(i)4−[4−(2−ピロリジン−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−ピロリジン−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(9)
【0079】
【化36】
【0080】
反応容器に、60重量%水素化ナトリウム(NaH)含有オイル21.6mg(水素化ナトリウム6.0当量)を加え、これを石油エーテルで洗浄した後、乾燥させた。次に、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)0.9ml(0.1M)を投入し、0℃に保った。上記工程(5)で得られた、4−(4−ヒドロキシフェニル)−7−ヒドロキシ−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン29.0mg(0.090mM)を反応容器に加え、室温で15分維持した後、0℃に冷却し、1−(2−クロロエチル)−ピロリジン塩酸塩51.0mg(3.3当量)を加え、50℃で4時間反応させた後、反応系を0℃に冷却するとともに、塩化アンモニウム水溶液を加え、反応を終了させた。反応生成物をジクロロメタンで抽出し、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層を濃縮後、薄層クロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール:アンモニア水=80:1:1)を行い、さらに薄層クロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=9:1)で精製することにより、4−[4−(2−ピロリジン−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−ピロリジン−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン((9)、以下、ナフォリダイフェンBという場合がある。)25.2mgを得た。収率は55%であった。
【0081】
1H NMR(CDCl
3) δ(ppm):7.14−6.90(m、7H、Ar)、6.82−6.68(m、4H、Ar)、6.60(dd、1H、J=3.0、8.7Hz、Ar)、4.13(t、2H、J=6.0Hz、OCH
2)、4.09(t、2H、J=6.0Hz、OCH
2)、3.01−2.86(m、6H、1−H、NCH
2)、2.82−2.58(m、10H、2−H、ピロリジニル 2−H)、1.85−1.76(m、8H、ピロリジニル 3−H).
【0082】
(ii)4−[4−(2−モルフォリン−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−モルフォリン−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(10)
【0083】
【化37】
【0084】
1−(2−クロロエチル)−モルフォリン塩酸塩を使用するほかは上記(i)と同様にして、4−[4−(2−モルフォリン−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−モルフォリン−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン((10)、以下、ナフォリダイフェンDという場合がある。)94.3mgを得た。収率は79%であった。
【0085】
1H NMR(CDCl
3) δ(ppm):7.19−6.93(m、7H、Ar)、6.85−6.71(m、4H、Ar)、6.61(dd、1H、J=2.7、8.4Hz、Ar)、4.20−4.06(m、4H、OCH
2)、3.87−3.67(m、8H、モルフォリニル 3−H)、3.05−2.73(m、8H、1−H、2−H、NCH
2)、2.71−2.53(m、8H、モルフォリニル 2−H).
【0086】
(iii)4−[4−(2−ジメチルアミノ−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−ジメチルアミノ−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(11)
【0087】
【化38】
【0088】
2−ジメチルアミノエチルクロリド塩酸塩を使用するほかは上記(i)と同様にして、4−[4−(2−ジメチルアミノ−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−ジメチルアミノ−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン((11)、以下、ナフォリダイフェンAという場合がある。)95.9mgを得た。収率は92%であった。
【0089】
1H NMR(CDCl
3) δ(ppm):7.21−6.93(m、7H、Ar)、6.80−6.71(m、4H、Ar)、6.60(dd、1H、J=8.6、2.6Hz、Ar)、4.07(t、2H、J=5.7Hz、OCH
2)、4.03(t、2H、J=5.7Hz、OCH
2)、2.95−2.89(m、2H、1−H)、2.80−2.70(m、2H、2−H)、2.73(t、2H、J=5.7Hz、NCH
2)、2.72(t、2H、J=5.7Hz、NCH
2)、2.34(s、3H×4、NMe).
【0090】
(iv)4−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(12)
【0091】
【化39】
【0092】
1−(2−クロロエチル)ピペリジン塩酸塩を使用するほかは上記(i)と同様にして、4−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン((12)、以下、ナフォリダイフェンCという場合がある。)90.2mgを得た。収率は76%であった。
【0093】
1H NMR(CDCl
3) δ(ppm):7.12−6.93(m、7H、Ar)、6.78−6.70(m、4H、Ar)、6.58(dd、1H、J=8.5、2.4Hz、Ar)、4.11(t、2H、J=6.5Hz、OCH
2)、4.07(t、2H、J=5.5Hz、OCH
2)、2.95−2.89(m、2H、1−H)、2.80−2.72(m、6H、2−H、NCH
2×2)、2.57−2.42(m、2H×4、ピペリジニル 2’−H)、1.63−1.59(m、2H×4、ピペリジニル 3’−H)、1.49−1.39(m、2H×2、ピペリジニル 4’−H).
【0094】
(v)4−[4−(2−ジエチルアミノ−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−ジエチルアミノ−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(13)
【0095】
【化40】
【0096】
2−ジエチルアミノエチルクロリド塩酸塩を使用するほかは上記(i)と同様にして、4−[4−(2−ジエチルアミノ−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−ジエチルアミノ−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン((13)、以下、ナフォリダイフェンEという場合がある。)40mgを得た。収率は41%であった。
【0097】
1H NMR(CDCl
3) δ(ppm):7.13−6.93(m、7H、Ar)、6.78−6.70(m、4H、Ar)、6.58(dd、1H、J=8.6、2.6Hz、Ar)、4.05(t、2H、J=6.3Hz、OCH
2)、4.01(t、2H、J=6.3Hz、OCH
2)、2.96−2.84(m、6H、1−H、NCH
2×2)、2.79−2.75(m、2H、2−H)、2.64(q、2H×4、J=7.0Hz、NEt)、1.07(t、3H×4、J=7.0Hz、NEt).
【0098】
(vi)4−[4−(2−ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(14)
【0099】
【化41】
【0100】
N−(2−クロロエチル)−ヘキサヒドロ−1H−アゼピン塩酸塩を使用するほかは上記(i)と同様にして、4−[4−(2−ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン((14)、以下、ナフォリダイフェンFという場合がある。)46.0mgを得た。収率は59%であった。
【0101】
1H NMR(CDCl
3) δ(ppm):7.10−6.92(m、7H、Ar)、6.78−6.70(m、4H、Ar)、6.59(dd、1H、J=8.6、2.8Hz、Ar)、4.07(t、2H、J=4.5Hz、OCH
2)、4.03(t、2H、J=6.3Hz、OCH
2)、2.97−2.89(m、6H、1−H、NCH
2×2)、2.81−2.73(m、2H、2−H、アゼピニル 2’−H)、1.79−1.53(m、16H、アゼピニル 3’−H、4’−H).
【0102】
(vii)4−[4−(3−ジメチルアミノ−1−イル−プロポキシ)フェニル]−7−(3−ジメチルアミノ−1−イル−プロポキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(15)
【0103】
【化42】
【0104】
3−ジメチルアミノプロピルクロリド塩酸塩を使用するほかは上記(i)と同様にして、4−[4−(3−ジメチルアミノ−1−イル−プロポキシ)フェニル]−7−(3−ジメチルアミノ−1−イル−プロポキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン((15)、以下、ナフォリダイフェンGという場合がある。)103.9mgを得た。収率は86%であった。
【0105】
1H NMR(CDCl
3) δ(ppm):7.13−6.92(m、7H、Ar)、6.78−6.70(m、4H、Ar)、6.58(dd、1H、J=8.6、2.8Hz、Ar)、4.02(t、2H、J=6.3Hz、OCH
2)、3.98(t、2H、J=5.7Hz、OCH
2)、2.95−2.90(m、2H、1−H)、2.79−2.72(m、2H、2−H)、2.45(t、2H×2、J=7.5Hz、NCH
2)、2.26(s、3H×4、NMe)、2.07−1.88(m、2H×2、CH
2).
【0106】
<実施例2>
以下の実験は、本発明者が、文部科学省がん特定研究領域 化学療法基盤情報支援班に依頼した結果に基づく。
【0107】
4−[4−(2−ピロリジン−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−ピロリジン−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(以下、ナフォリダイフェンBという。)のプロテアソーム阻害活性を以下のように測定した。
【0108】
〔キモトリプシン様活性阻害試験〕
1)20Sプロテアソームに10μMの濃度に調製したナフォリダイフェンBを添加し、30℃で10分間インキュベートした。
2)上記試験系に20Sプロテアソーム切断配列を含む蛍光標識化したキモトリプシンを加え、30℃で1時間反応させた。
3)上記反応により遊離した蛍光物質(AMC)を360nm光で励起し460nm光で定量した。
4)ナフォリダイフェンBを添加しない試験系を(1)〜(3)と同様に測定し、ナフォリダイフェンBを用いた際の酵素活性を測定した。
5)ナフォリダイフェンBを含む段階的な希釈溶液を調整し、(1)〜(4)と同様な評価を行った後に50%阻害濃度(IC
50)を決定した。
6)阻害活性の陽性対照として既知のプロテアソーム阻害剤Clasto−Lactacystin β−Lactone(Lactacystin活性体)及びMGI32を(1)〜(5)の工程に付し評価した。
【0109】
〔カスパーゼ様活性阻害試験〕
1)20Sプロテアソームに10μMの濃度に調製したナフォリダイフェンBを添加し、30℃で10分間インキュベートした。
2)上記試験系に20Sプロテアソーム切断配列を含む蛍光標識化したカスパーゼを加え、30℃で1時間反応させた。
3)上記反応により遊離した蛍光物質(AMC)を360nm光で励起し460nm光で定量した。
4)ナフォリダイフェンBを添加しない試験系を(1)〜(3)と同様に測定し、ナフォリダイフェンBを用いた際の酵素活性を測定した。
5)ナフォリダイフェンBを含む段階的な希釈溶液を調整し、(1)〜(4)と同様な評価を行った後に50%阻害濃度(IC
50)を決定した。
6)阻害活性の陽性対照として既知のプロテアソーム阻害剤Clasto−Lactacystin β−Lactone(Lactacystin活性体)及びMGI32を(1)〜(5)の工程に付し評価した。
【0110】
〔トリプシン様活性阻害試験〕
1)20Sプロテアソームに10μMの濃度に調製したナフォリダイフェンBを添加し、30℃で10分間インキュベートした。
2)上記試験系に20Sプロテアソーム切断配列を含む蛍光標識化したトリプシンを加え、30℃で1時間反応させた。
3)上記反応により遊離した蛍光物質(AMC)を360nm光で励起し460nm光で定量した。
4)ナフォリダイフェンBを添加しない試験系を(1)〜(3)と同様に測定し、ナフォリダイフェンBを用いた際の酵素活性を測定した。
5)ナフォリダイフェンBを含む段階的な希釈溶液を調整し、(1)〜(4)と同様な評価を行った後に50%阻害濃度(IC
50)を決定した。
6)阻害活性の陽性対照として既知のプロテアソーム阻害剤Clasto−Lactacystin β−Lactone(Lactacystin活性体)及びMGI32を(1)〜(5)の工程に付し評価した。
【0111】
〔カテプシン様活性阻害試験〕
1)20Sプロテアソームに10μMの濃度に調製したナフォリダイフェンBを添加し、30℃で10分間インキュベートした。
2)上記試験系に20Sプロテアソーム切断配列を含む蛍光標識化したカテプシンBを加え、30℃で1時間反応させた。
3)上記反応により遊離した蛍光物質(AMC)を360nm光で励起し460nm光で定量した。
4)ナフォリダイフェンBを添加しない試験系を(1)〜(3)と同様に測定し、ナフォリダイフェンBを用いた際の酵素活性を測定した。
5)ナフォリダイフェンBを含む段階的な希釈溶液を調整し、(1)〜(4)と同様な評価を行った後に50%阻害濃度(IC
50)を決定した。
6)阻害活性の陽性対照として既知のプロテアソーム阻害剤Clasto−Lactacystin β−Lactone(Lactacystin活性体)及びMGI32を(1)〜(5)の工程に付し評価した。
【0112】
〔α−キモトリプシン様活性阻害試験〕
1)20Sプロテアソームに10μMの濃度に調製したナフォリダイフェンBを添加し、30℃で10分間インキュベートした。
2)上記試験系に20Sプロテアソーム切断配列を含む蛍光標識化したα−キモトリプシンを加え、30℃で1時間反応させた。
3)上記反応により遊離した蛍光物質(AMC)を360nm光で励起し460nm光で定量した。
4)ナフォリダイフェンBを添加しない試験系を(1)〜(3)と同様に測定し、ナフォリダイフェンBを用いた際の酵素活性を測定した。
5)ナフォリダイフェンBを含む段階的な希釈溶液を調整し、(1)〜(4)と同様な評価を行った後に50%阻害濃度(IC
50)を決定した。
6)阻害活性の陽性対照として既知のプロテアソーム阻害剤Clasto−Lactacystin β−Lactone(Lactacystin活性体)及びMGI32を(1)〜(5)の工程に付し評価した。
【0113】
結果を以下に示す。
[判定基準]
IC
50<0.1μM: +++(非常に強い活性)
IC
50=0.1〜1μM:++(強い活性)
IC
50=1〜10μM: +(比較的強い活性)
IC
50>10μM: ±(弱い活性、あるいは活性無し)
[結果]
・一次評価
【表1】
・二次評価
【表2】
【表3】
カテプシンBの阻害:(無)
α−キモトリプシンの阻害:(無)
[判定]
キモトリプシン様活性:(IC
50=4.6)
カスパーゼ様活性:(IC
50=2.5)
トリプシン様活性:(IC
50=8.6)
プロテアソーム選択性:(有)
評価はポジティブであり、ナフォリダイフェンBは、20Sプロテオソームキモトリプシン様活性、同カスパーゼ様活性、及び同トリプシン様活性のいずれに対しても阻害活性を示し、特に20Sプロテアソームカスパーゼ様活性のIC
50が比較的強い活性を示した。
【0114】
<実施例3>
実施例2と同様にして、4−[4−(2−モルフォリン−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−モルフォリン−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(以下、ナフォリダイフェンDという。)のプロテアソーム阻害活性を測定した。結果を以下に示す。
【0115】
[判定基準]
IC
50<0.1μM: +++(非常に強い活性)
IC
50=0.1〜1μM:++(強い活性)
IC
50=1〜10μM: +(比較的強い活性)
IC
50>10μM: ±(弱い活性、あるいは活性無し)
[結果]
・一次評価
【表4】
・二次評価
【表5】
【表6】
カテプシンBの阻害:(無)
α−キモトリプシンの阻害:(無)
[判定]
キモトリプシン様活性:(IC
50=6.8)
カスパーゼ様活性:(IC
50=4.6)
トリプシン様活性:(IC
50=4.1)
プロテアソーム選択性:(有)
評価はポジティブであり、ナフォリダイフェンDは、20Sプロテオソームキモトリプシン様活性、同カスパーゼ様活性、及び同トリプシン様活性のいずれに対しても阻害活性を示し、特に20Sプロテアソームトリプシン様活性のIC
50が比較的強い活性を示した。
【0116】
<参考例1>
実施例2と同様にして、4−[4−(2−ジメチルアミノ−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−ジメチルアミノ−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(以下、ナフォリダイフェンAという。)のプロテアソーム阻害活性を測定した。結果を以下に示す。なお、この参考例1では、キモトリプシン様活性阻害試験のみを行った。
【0117】
[判定基準]
IC
50<0.1μM: +++(非常に強い活性)
IC
50=0.1〜1μM:++(強い活性)
IC
50=1〜10μM: +(比較的強い活性)
IC
50>10μM: ±(弱い活性、あるいは活性無し)
[結果]
・一次評価
【表7】
[判定]
キモトリプシン様活性:(IC
50>10)
評価はネガティブであり、ナフォリダイフェンAは、20Sプロテオソームキモトリプシン様活性のIC
50が>10μMであった。
【0118】
<実施例4>
実施例2と同様にして、4−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(以下、ナフォリダイフェンCという。)のプロテアソーム阻害活性を測定した。結果を以下に示す。
【0119】
[判定基準]
IC
50<0.1μM: +++(非常に強い活性)
IC
50=0.1〜1μM:++(強い活性)
IC
50=1〜10μM: +(比較的強い活性)
IC
50>10μM: ±(弱い活性、あるいは活性無し)
[結果]
・一次評価
【表8】
・二次評価
【表9】
【表10】
カテプシンBの阻害:(無)
α−キモトリプシンの阻害:(無)
[判定]
キモトリプシン様活性:(IC
50=3.2)
カスパーゼ様活性:(IC
50=5.1)
トリプシン様活性:(IC
50>10)
プロテアソーム選択性:(有)
評価はポジティブであり、ナフォリダイフェンCは、20Sプロテオソームキモトリプシン様活性及び同カスパーゼ様活性に対して阻害活性を示し、特に20Sプロテアソームキモトリプシン様活性のIC
50が比較的強い活性を示した。
【0120】
<実施例5>
実施例2と同様にして、4−[4−(2−ジエチルアミノ−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−ジエチルアミノ−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(以下、ナフォリダイフェンEという。)のプロテアソーム阻害活性を測定した。結果を以下に示す。
【0121】
[判定基準]
IC
50<0.1μM: +++(非常に強い活性)
IC
50=0.1〜1μM:++(強い活性)
IC
50=1〜10μM: +(比較的強い活性)
IC
50>10μM: ±(弱い活性、あるいは活性無し)
[結果]
・一次評価
【表11】
・二次評価
【表12】
【表13】
カテプシンBの阻害:(無)
α−キモトリプシンの阻害:(無)
[判定]
キモトリプシン様活性:(IC
50=9.9)
カスパーゼ様活性:(IC
50>10)
トリプシン様活性:(IC
50>10)
プロテアソーム選択性:(有)
評価はポジティブであり、ナフォリダイフェンEは、20Sプロテオソームキモトリプシン様活性に対して阻害活性を示した。
【0122】
<実施例6>
実施例2と同様にして、4−[4−(2−ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(以下、ナフォリダイフェンFという。)のプロテアソーム阻害活性を測定した。結果を以下に示す。
【0123】
[判定基準]
IC
50<0.1μM: +++(非常に強い活性)
IC
50=0.1〜1μM:++(強い活性)
IC
50=1〜10μM: +(比較的強い活性)
IC
50>10μM: ±(弱い活性、あるいは活性無し)
[結果]
・一次評価
【表14】
・二次評価
【表15】
【表16】
カテプシンBの阻害:(無)
α−キモトリプシンの阻害:(無)
[判定]
キモトリプシン様活性:(IC
50=4.3)
カスパーゼ様活性:(IC
50=5.1)
トリプシン様活性:(IC
50>10)
プロテアソーム選択性:(有)
評価はポジティブであり、ナフォリダイフェンFは、20Sプロテオソームキモトリプシン様活性及び同カスパーゼ様活性に対して阻害活性を示し、特に20Sプロテアソームキモトリプシン様活性のIC
50が比較的強い活性を示した。
【0124】
<参考例2>
実施例2と同様にして、4−[4−(3−ジメチルアミノ−1−イル−プロポキシ)フェニル]−7−(3−ジメチルアミノ−1−イル−プロポキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(以下、ナフォリダイフェンGという。)のプロテアソーム阻害活性を測定した。結果を以下に示す。なお、この参考例2では、キモトリプシン様活性阻害試験のみを行った。
【0125】
[判定基準]
IC
50<0.1μM: +++(非常に強い活性)
IC
50=0.1〜1μM:++(強い活性)
IC
50=1〜10μM: +(比較的強い活性)
IC
50>10μM: ±(弱い活性、あるいは活性無し)
[結果]
・一次評価
【表17】
[判定]
キモトリプシン様活性:(IC
50>10)
評価はネガティブであり、ナフォリダイフェンGは、20Sプロテオソームキモトリプシン様活性のIC
50が>10μMであった。
【0126】
<参考例3>
実施例1で合成したナフォリダイフェンA〜Gについて、中枢神経系ガン細胞に対する増殖阻害活性を以下のように測定した。
【0127】
〔中枢神経系ガン細胞増殖阻害試験〕
中枢神経系ガン細胞6種(U251、SF−268、SF−295、SF−539、SNB−75、SNB−78)を96ウェルプレートに播き、翌日、サンプル溶液(10
−4、10
−5、10
−6、10
−7、10
−8Mの5濃度)を添加し、2日間培養後、細胞増殖をスルホローダミンBによる比色定量で測定した。披験物質を添加する直前の細胞数を基準として、有効濃度GI
50(陰性対照に比べて細胞増殖を50%抑制する濃度)をコンピューターにより算出した。阻害活性の比較対照としては、クエン酸タモキシフェン(TAM)を用いた。結果を以下の表18に示す。なお、表中の濃度単位はμMである。
【0128】
【表18】
【0129】
表18から分かるように、ナフォリダイフェンDを除く全てのナフォリダイフェン類で中枢神経系ガン細胞に対する強い増殖阻害活性(殺細胞活性)が見られた。特に、ナフォリダイフェンA、C、Gは、多種の細胞に対して総じて比較的良好な殺細胞活性(1.4〜1.9μM程度)を示すことが分かった。ナフォリダイフェンFは、U251、SF−295、SNB−78の各細胞株に対して第2順位の活性であった。
【0130】
<参考例4>
参考例3と同様にして、ナフォリダイフェンA〜Gについて、大腸ガン細胞5種(HCC2998、KM−12、HT−29、HCT−15、HCT−116)に対する増殖阻害活性を測定した。結果を以下の表19に示す。なお、表中の濃度単位はμMである。
【0131】
【表19】
【0132】
表19から分かるように、ナフォリダイフェンDを除く全てのナフォリダイフェン類で大腸ガン細胞に対する強い増殖阻害活性(殺細胞活性)が見られた。特に、ナフォリダイフェンFは総じて高活性であり、5種の大腸ガン細胞株全てに対して0.5〜1.5μM程度の有効濃度が観測された。また、HT−29細胞株及びHCT−116細胞株については、ナフォリダイフェンA、C、Gが比較的良好な殺細胞活性を示すことが分かった。
【0133】
<参考例5>
参考例3と同様にして、ナフォリダイフェンA〜Gについて、卵巣ガン細胞5種(OVCAR−3、OVCAR−4、OVCAR−5、OVCAR−8、SK−OV−3)に対する増殖阻害活性を測定した。結果を以下の表20に示す。なお、表中の濃度単位はμMである。
【0134】
【表20】
【0135】
表20から分かるように、ナフォリダイフェンDを除く全てのナフォリダイフェン類で卵巣ガン細胞に対する強い増殖阻害活性(殺細胞活性)が見られた。特に、ナフォリダイフェンF、Gは総じて高活性であり、5種の卵巣ガン細胞株全てに対して1.2〜1.9μM程度の有効濃度が観測された。また、OVCAR−4細胞株についてはナフォリダイフェンBが最も高い殺細胞活性を示し、OVCAR−5細胞株についてはナフォリダイフェンCが最も高い殺細胞活性を示すことが分かった。
【0136】
<参考例6>
参考例3と同様にして、ナフォリダイフェンA〜Gについて、胃ガン細胞6種(St−4、MKN1、MKN7、MKN28、MKN45、MKN74)に対する増殖阻害活性を測定した。結果を以下の表21に示す。なお、表中の濃度単位はμMである。
【0137】
【表21】
【0138】
表21から分かるように、ナフォリダイフェンDを除く全てのナフォリダイフェン類で卵巣ガン細胞に対する強い増殖阻害活性(殺細胞活性)が見られた。特に、ナフォリダイフェンF、Gは総じて高活性であり、6種の胃ガン細胞株全てに対して1.1〜1.8μM程度の有効濃度が観測された。また、St−4細胞株についてはナフォリダイフェンA、Gが最も高い殺細胞活性を示し、MKN1細胞株についてはナフォリダイフェンEが最も高い殺細胞活性を示すことが分かった。