特許第5747394号(P5747394)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5747394-プロテアソーム阻害剤 図000070
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747394
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】プロテアソーム阻害剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/138 20060101AFI20150625BHJP
   A61K 31/4025 20060101ALI20150625BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20150625BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20150625BHJP
   A61K 31/55 20060101ALI20150625BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20150625BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20150625BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20150625BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20150625BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20150625BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20150625BHJP
   C07C 217/54 20060101ALN20150625BHJP
   C07D 207/12 20060101ALN20150625BHJP
   C07D 295/08 20060101ALN20150625BHJP
   C07D 211/22 20060101ALN20150625BHJP
   C07D 233/04 20060101ALN20150625BHJP
【FI】
   A61K31/138
   A61K31/4025
   A61K31/5377
   A61K31/4545
   A61K31/55
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P25/28
   A61P25/16
   A61P29/00
   A61P37/02
   !C07C217/54
   !C07D207/12
   !C07D295/08
   !C07D211/22
   !C07D233/04
【請求項の数】1
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2014-84152(P2014-84152)
(22)【出願日】2014年4月16日
(62)【分割の表示】特願2009-532207(P2009-532207)の分割
【原出願日】2008年9月11日
(65)【公開番号】特開2014-167005(P2014-167005A)
(43)【公開日】2014年9月11日
【審査請求日】2014年4月25日
(31)【優先権主張番号】特願2007-235933(P2007-235933)
(32)【優先日】2007年9月11日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000125370
【氏名又は名称】学校法人東京理科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(72)【発明者】
【氏名】椎名 勇
【審査官】 長岡 真
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−117648(JP,A)
【文献】 米国特許第03274213(US,A)
【文献】 Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters, 2007.02.17, vol.17, p.2421-2424
【文献】 Cancer Research, 1996, vol.56, p.3954-3960
【文献】 Medical and Pediatric Oncology, 1978, vol.4, p.123-126
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
C07C
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(II),(III),(V)〜(VII)で表されるいずれかの化合物を有効成分として含有することを特徴とするプロテアソーム阻害剤。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規ジヒドロナフタレン化合物を有効成分として含有するプロテアソーム阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ラソフォキシフェン、ナフォキシジン等の化合物は、選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM;selective estrogen receptor modulator)として知られている。選択的エストロゲン受容体モジュレーターは、臓器あるいは組織によってエストロゲン作用を示したり抗エストロゲン作用を示したりする薬剤の総称である。該薬剤は、例えば、子宮、乳腺等に対しては抗エストロゲン作用を示す一方、閉経後骨粗鬆症や血清コレステロール、心血管系等に対してはエストロゲン作用を示す。これら薬剤としては、ラソフォキシフェン、ナフォキシジンの他にも、例えばタモキシフェン、ラロキシフェン等が知られている。
【0003】
この中でラソフォキシフェンは、閉経後骨粗鬆症の予防、治療薬剤として有望視され、現在、大規模な臨床試験が進められているものである。このラソフォキシフェン;シス−6−フェニル−5−〔4−(2−ピロリジン−1−イルエトキシフェニル〕−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−オールの化学構造は以下の式(30)で表される。
【0004】
【化1】
【0005】
しかし、このラソフォキシフェンは、テトラヒドロナフタレン骨格を有し、幾何異性体が存在するが、シス体のみが効力を有するため、その分離工程が必要であった。
【0006】
また、ナフォキシジンの化学構造は以下の式(31)で表される。
【0007】
【化2】
【0008】
このナフォキシジンは、1,2−ジヒドロナフタレン骨格を有し、2つの2重結合炭素に置換基が結合するため幾何異性体を有してはいないが、2つの水酸基の一方はメチル基により置換され、他方は1−ピロリジニルエチル基により置換されていることにより、位置異性が生じるため、生産効率が低いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2006−117648号公報
【特許文献2】米国特許第3274213号明細書
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Bioorganic & Medicinal Chemistry Letters,2007年2月17日,17,2421−2424
【非特許文献2】Cancer Research,1996年,56,3954−3960
【非特許文献3】Medical and Pediatric Oncology,1978年,4,123−126
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、ラソフォキフェンやナフォキシジンに比較し生産効率に優れた化学構造を有するジヒドロナフタレン化合物を新たに合成するとともに、該新規ジヒドロナフタレン化合物の新規な医薬用途を探索し、有用で新規な化合物を見出すとともに、該化合物を有効成分とする新規薬剤を提供しようとする点にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者等は、鋭意研究の結果、その生産工程において幾何異性や位置異性が生じず、生産効率の極めて高い新規ジヒドロナフタレン化合物を合成した。さらに、このジヒドロナフタレン化合物の新規作用を探索中、該化合物の中には、ラソフォキシフェンあるいはナフォキシジン類縁体の薬効として現在まで全く知られていない、プロテアソーム阻害作用を示すものが存在するとの知見を得た。
【0013】
ここで、細胞内の選択的タンパク分解系として重要な役割を果たしているものとして、ユビキチン−プロテアソームシステムがあり、該システムは、細胞周期、転写、シグナル伝達、アポトーシス、代謝、抗原提示等の様々な生命活動に関与していることが明らかになってきている。このプロテアソームは、ユビキチンが数個連なって付加された標的タンパク質をATP依存的に分解する作用を有し、トリプシン様、キモトリプシン様、及びカスパーゼ様の3種類の活性部位を有する。近年、プロテアソームのガン細胞内での働きを抑制することにより、ガン細胞内で異常タンパク質を蓄積させることによりガン細胞を死滅させる抗ガン剤の開発が行われており、アメリカにおいて、プロテアソーム阻害剤の一種であるBortezomib(Velcade;登録商標)が、難治性多発性骨髄腫治療薬として認可されている(2003年)。
そこで、上記ジヒドロナフタレン化合物についても同様に抗ガン作用を確認したところ、殆どの化合物が抗ガン作用を示すとの知見を得た。
【0014】
また、このようなプロテアソーム阻害剤は、ガンばかりでなく、種々の炎症あるいは免疫疾患の治療薬としても期待されているものである。
さらに、上記細胞内での異常タンパク質の蓄積は、アルツハイマー病、パーキンソン病、プリオン病等の様々な神経変性疾患の共通な発症機構としても提唱されており、このような神経変性疾患の原因解明あるいはその治療薬の開発研究においても、プロテアソーム阻害剤は有用である。
【0015】
すなわち、本発明者等によって合成された上記ジヒドロナフタレン化合物は、新規化合物であり、しかも、その構造上の特徴により合成に極めて有利であるとともに、既存のプロテアソーム阻害剤に類似構造のものが無く、リード化合物になりうると確信して、本発明を完成するに至ったものである。
【0016】
具体的に、本発明は以下に示されるとおりのものである。
(1) 以下の式(II),(III),(V)〜(VII)で表されるいずれかの化合物を有効成分として含有することを特徴とするプロテアソーム阻害剤。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【発明の効果】
【0017】
本発明の新規ジヒドロナフタレン化合物は、プロテアソーム阻害作用を示す。これに対して、従来のラソフォキシフェン類縁体あるいはナフォキシジン類縁体にはそのような作用についての報告はない。一方、従来のラソフォキシフェンには、幾何異性体としてシス、トランス体が存在し、このうちシス体のみが有効であるため、シス体を分離する必要があったが、本発明のジヒドロナフタレン化合物には幾何異性体が存在しないため、このような分離操作は必要が無い。また、ナフォキシジンには、上記式(31)から明らかなように、幾何異性体は存在しないが、ナフォキシジン骨格上の2つの水酸基はそれぞれ異なるアルキル基により置換されているため、その生産工程において位置異性が生じてしまい、生産効率が劣る。これに対して本発明のジヒドロナフタレン化合物は、ナフォキシジン骨格を有するが、その二つの水酸基は同じ側鎖部位により置換されているため、このような位置異性体を生じることがない。
【0018】
しかも、プロテアソーム阻害剤として知られている従来の化合物の生産手段には多工程を必要とするものが多く、このためやはり合成上の問題がある。これに対して、本発明のジヒドロナフタレン化合物は、異性体が存在せず合成が容易かつ効率的であるとともに、従来のプロテアソーム阻害剤においても類似する構造を有するものはない。したがって、本発明のジヒドロナフタレン化合物はプロテアソーム阻害剤としてそれ自体有用であるというばかりでなく、プロテアソーム阻害剤や抗ガン剤の新規開発のためのリード化合物となり得るものである。また、抗ガン剤としてばかりでなく、炎症あるいは免疫疾患に対する治療、あるいはアルツハイマー病、パーキンソン病、プリオン病等の様々な神経変性疾患についての研究開発に大いに資するものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本実施形態のジヒドロナフタレン化合物の製造法における各工程を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態においてプロテアソーム阻害剤及び/又は抗ガン剤として使用するジヒドロナフタレン化合物は、以下の式(I)で表される。
【0021】
【化8】
(但し、式中、2つの
【化9】
は同一の置換基を表し、R及びRは、水素原子、又はそれぞれ同一若しくは異なるアルキル基を表し、R及びRは、一緒になってそれらを有する窒素原子とともに、又はさらに酸素原子、硫黄原子、及び窒素原子のいずれか1種以上とともに、単環式複素環を形成してもよい。また、R、R、Rは、それぞれ水素原子、アルキル基、アシル基、脂環式基、芳香族基、ハロゲン原子、アシルオキシ基、シアノ基、及びニトロ基から選ばれた1種以上の置換基を表し、lは2〜5の整数、nは1〜4の整数、mは1〜5の整数、qは1〜3の整数をそれぞれ表す。)
【0022】
上記式(I)の化合物において、R及びRが形成する単環式複素環式基としては、5〜7員環が望ましく、例えばピロリジニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、モルフォリニル基、チオモルフォリニル基、ジアザシクロヘキシル基等が挙げられる。
【0023】
その化学構造上の特徴は、ラソフォキシフェンのような1,2,3,4テトラヒドロナフタリン環ではなく、1,2−ジヒドロナフタリン環を有し、該1,2位における2重結合の炭素原子にそれぞれフェニル基が置換しており、ラソフォキシフェンのような幾何異性体が存在せず、また、1,2−ジヒドロナフタレン環の7位、及び同1位のフェニル基はともに同一の側鎖部位により置換されている点にある。
また、従来、プロテアソーム阻害剤として知られている化合物の代表例として、Bortezomib、Lactacystin、Mg132等を挙げることができるが、これらはオリゴペプチド型の化合物でありしかも異性体が存在するものである。
【0024】
これに対して、本実施形態の式(I)で表されるジヒドロナフタレン化合物は、オリゴペプチド型とは全く化学構造を異にするほか、その製法において異性体分離手段を有せず製造できる。
本実施形態の式(I)で表される具体的化合物としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【0025】
【化10】
【0026】
【化11】
【0027】
【化12】
【0028】
【化13】
【0029】
【化14】
【0030】
【化15】
【0031】
【化16】
【0032】
これらの本実施形態の化合物(I)〜(VIII)は、いずれも文献未記載の新規化合物である。
【0033】
以下、この式(I)で表されるジヒドロナフタレン化合物の製法について、図1を参照して説明する。
【0034】
≪製造方法(図1)≫
<工程1〔3成分カップリング工程〕>
本実施形態においては、まず、以下の式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物、及び式(3)で表される化合物を原料化合物として用いて、1段階で、式(4)で表される化合物を合成する。
【0035】
【化17】
(但し、式中、Rは、水素原子、アルキル基、アシル基、脂環式基、又は芳香族基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、アシル基、脂環式基、芳香族基、ハロゲン原子、水酸基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基、シアノ基、及びニトロ基から選ばれた1種以上の置換基を表し、nは1〜4の整数を表す。)
【0036】
【化18】
(但し、式中、R’は、水素原子、アルキル基、アシル基、脂環式基、芳香族基、ハロゲン原子、水酸基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基、及びシアノ基から選ばれた1種以上の置換基を表し、Mは、珪素原子、ホウ素原子、スズ原子、亜鉛原子、又はマグネシウム原子を表し、Rは、水素原子、アルキル基、アシル基、脂環式基、芳香族基、ハロゲン原子、水酸基、アルキルオキシ基、アシルオキシ基、シアノ基、及びニトロ基から選ばれた1種以上の置換基を表し、mは1〜5の整数を表し、pは1〜4の整数を表す。)
【0037】
【化19】
(但し、式中、Rは、水素原子、アルキル基、アシル基、脂環式基、又は芳香族基を表し、Rは、水素原子、アルキル基、アシル基、脂環式基、芳香族基、ハロゲン原子、水酸基、アルキルオキシ基、及びアシルオキシ基から選ばれた1種以上の置換基を表し、qは1〜3の整数を表す。)
【0038】
【化20】
(但し、式中、R〜R、並びにn、m、及びqは、それぞれ上記と同様であり、波線はR配置又はS配置の結合を表す。)
【0039】
式(1)で表される化合物として好ましいものは、例えば、4−アセトキシベンズアルデヒド、4−ビバロイルオキシベンズアルデヒド、4−プロパノイルオキシベンズアルデヒド、4−エトキシカルボニルオキシベンズアルデヒド、4−ベンジルオキシカルボニルオキシベンズアルデヒド、4−シリルオキシベンズアルデヒド等が挙げられる。また、式(2)で表される化合物として好ましいものは、例えば、トリメチルシンナミルシラン、トリブチルシンナミルスズ、ジメチルシンナミルホウ素等が挙げられる。式(3)の化合物としては、例えば、メトキシベンゼン、エトキシベンゼン、ベンジルオキシベンゼン等が好ましい。
【0040】
この反応工程においては、例えば、HfCl等のルイス酸あるいはプロトン酸等の酸触媒、及び共触媒としてトリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(TMSOTf)等を使用する。共触媒としては、上記TMSOTfのほか、トリメチルシリルクロリド等も使用でき、ルイス酸としては上記のほか、Hf(OTf),TiCl,TiCl(OTf)等の第4属金属塩、AlCl,BCl,Sc(OTf)等の第3属金属塩、SnCl,Sn(OTf)等の第2属金属塩等が使用できる。またプロトン酸としては塩酸、硫酸、硝酸、臭化水素酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸等も使用可能である。これらは1種単独で使用してもよく、また2種以上併用してもよい。また、反応温度は、0〜40℃であり、室温でもよい。反応時間は1〜10時間である。
【0041】
<工程2〔環化反応工程〕>
次いで、上記工程で得られた異性体混合物を、N−クロロコハク酸イミド、N−ブロモコハク酸イミド、N−ヨードコハク酸イミド、I(Py)BF等のハロゲン化剤と、HBF、BF・OEt、CFSOH等の酸を用いて、ジエチルエーテル、塩化メチレン等の溶媒の存在下で、ハロゲン誘導炭素環形成反応を行い、式(5)で表される化合物の異性体混合物を得る。
【0042】
【化21】
(但し、式中、R〜R、並びにn、m、及びqは、それぞれ上記と同様である。また、Xはハロゲン原子であり、波線はR配置又はS配置の結合を表す。)
【0043】
この反応温度は−78℃〜室温である。
この異性体混合物は、上記式(5)で表される化合物の混合物であるが、具体的には以下の式(21)〜(24)で表される化合物のそれぞれのエナンチオマーを含む合計8種の化合物の混合物である。
【0044】
【化22】
【0045】
【化23】
【0046】
【化24】
【0047】
【化25】
(但し、式(21)〜(24)における、R〜R、X、n、m、及びqは、上記と同様である。)
【0048】
<工程3〔アシル基除去、ヨウ素除去工程〕>
上記工程で得られた異性体混合物は、それぞれの化合物を分離し、あるいは分離することなく、t−ブチラート、メチラート、エチラート等のアルコラート、あるいは該アルコラートとDBU、DBN、DABCO等のアミン系塩基を作用させて、脱ハロゲン化水素、二重結合の転位、及びR基脱離反応を行うことにより、式(7)の化合物が得られる。これらの反応は順次行ってもよいが、同時に行うこともできる。
これらの反応中、DBU等のアミン系塩基を用いる場合においては、下記式(25)で表される化合物を含む中間生成物が生成するが、本工程においてはこの中間生成物を特に分離しなくてもよく、1つの反応容器で上記複数の反応工程を進めることができる。反応温度は0〜80℃であり、好ましくは室温〜50℃である。
【0049】
【化26】
(但し、式中、R〜R、n、m、及びq、並びに波線は、上記と同様である。)
【0050】
【化27】
(但し、式中、R〜R、n、m、及びqは、上記と同様である。)
【0051】
<工程4〔鍵中間体の製造工程〕>
上記式(7)の化合物を、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等の溶媒中で、臭素化硼素(BBr)、AlBr、TMSI等のルイス酸あるいはチオール等の求核剤の存在下、反応温度−78℃〜室温で反応させ、ジヒドロナフタレン環の7位におけるRO−基のR基を除去して、式(8)の化合物を得る。
【0052】
【化28】
【0053】
<工程5〔側鎖導入工程〕>
上記工程で得られた式(8)の化合物をジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)等の溶媒中で、水素化ナトリウム等の塩基性化合物の存在下、以下の式(9)で表される化合物と反応温度0〜80℃で反応させ、式(I)で表される本発明のジヒドロナフタレン化合物を得る。得られる化合物は、上記鍵中間体の2つの水酸基が同じ置換又は非置換アミノアルキル基で置換された化合物である。
【0054】
【化29】
(但し、式中、R、Rは上記と同様であり、Xはハロゲンを表し、lは2〜5の整数を表す。)
【0055】
【化30】
(但し、式中、置換基等の定義は前述したとおりである。)
【0056】
本実施形態の式(I)で表される化合物のうち、少なくとも式(II),(III),(V)〜(VII)で表される化合物はプロテアソーム阻害作用を示し、本発明の式(I)で表される化合物のうち、少なくとも式(II),(IV)〜(VIII)で表される化合物は抗ガン作用を示す。本発明のようなジヒドロナフタレン化合物において、プロテアソーム阻害作用又は抗ガン作用が認められたのは本発明において初めてであり、上記合成の容易さ及び効率性を加味すれば、本発明の技術的意義は極めて高い。
【実施例】
【0057】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0058】
<実施例1>
(1)三成分連結反応によるトリアリールブテン骨格の構築
1−(4−メトキシフェニル)−2−フェニル−1−(4−ピバロイルオキシフェニル)−3−ブテン(4)
【0059】
【化31】
【0060】
アルゴン雰囲気下、塩化ハフニウム(39.2mg、0.122mmol)をアニソール(3、0.02mL)に懸濁し、氷冷下、4−(ピバロイルオキシ)ベンズアルデヒド(1、25mg、0.121mmol)とトリメチルシンナミルシラン(2、46.7mg、0.245mmol)とのアニソール溶液(0.22mL)をゆっくり滴下した。室温で一夜攪拌した後、反応混合物に飽和重曹水(5mL)を注いで激しく攪拌し、ジエチルエーテル(10mL)を加えて抽出した。さらにジエチルエーテル(10mL)で2回抽出し、有機層を集合して、飽和塩化ナトリウム水溶液(5mL)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した後、これを濃縮した。残渣を薄層クロマトグラフィー(ヘキサン:塩化メチレン:ジエチルエーテル=4:1:1)で精製すると、無色の油状物として標題化合物(4、37.7mg)が得られた(収率75%、シン・アンチ混合物)。
【0061】
H NMR(CDCl、テトラメチルシラン) δ(ppm):1.20及び1.26(s、9H)、3.59及び3.70(s、3H)、4.01(dd、1H、J=7.8、11.3Hz)、4.19(d、1H、11.3Hz)、4.7−4.9(m、2H)、5.8−5.9(m、1H)、6.6−7.3(m、13H).
赤外吸収スペクトル(液膜法)cm−1:2974、1749、1610、1511、1462、1252、1203、1167、1120、1032、753、700.
質量スペクトル m/e:計算値(C2830+H)として415.23、実験値415.23.
【0062】
(2)環化反応によるテトラヒドロナフタレン骨格の構築
2−ヨード−7−メトキシ−3−フェニル−4−(4−ピバロイルオキシフェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン(5)
【0063】
【化32】
【0064】
ビス(ピリジン)ヨードニウム テトラフルオロボレート(65.8mg、0.177mmol)を塩化メチレン(3.4mL)に懸濁し、ドライアイスアセトン浴で−78℃に冷却した。これに1−(4−メトキシフェニル)−2−フェニル−1−(4−ピバロイルオキシフェニル)−3−ブテン(4、56.0mg、0.135mmol)の塩化メチレン(1.8mL)溶液を加え、さらに三臭化ホウ素ジエチルエーテル錯体(0.015mL、0.118mmol)を3回に分けて添加した。その後、−78℃で1時間攪拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液(5mL)を加えて反応を停止し、室温に戻した後、ジエチルエーテル(10mL)で3回抽出した。有機層を集合して飽和塩化ナトリウム水溶液(10mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濃縮した。残渣を薄層クロマトグラフィー(トルエン)で精製すると、微黄色油状物として標題化合物(5、51.6mg)が得られた(収率71%)。
【0065】
H NMR(CDCl、テトラメチルシラン) δ(ppm):1.32、1.35及び1.32(s、9H)、3.3(m、1H)、3.7−3.9(m、5H)、4.2(d、1H,J=10.6Hz)、4.7−4.8(m、1H)、6.6−7.2(m、12H).
赤外吸収スペクトル(液膜法)cm−1:2972、1751、1610、1510、1503、1122、1031.
質量スペクトル m/e:計算値(C2829IO+H)として541.12、実験値541.12.
【0066】
(3)脱ハロゲン化水素反応によるジヒドロナフタレン骨格の構築
7−メトキシ−3−フェニル−4−(4−ピバロイルオキシフェニル)−3,4−ジヒドロナフタレン(6)
【0067】
【化33】
【0068】
2−ヨード−7−メトキシ−3−フェニル−4−(4−ピバロイルオキシフェニル)−1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン(5、39.4mg、0.0729mmol)をトルエン(1.5mL)に溶解し、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU、0.035mL、0.234mmol)を加えて、80℃で15分加熱攪拌した。放冷後、氷冷下で飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)を加え、激しく攪拌し、次にジエチルエーテル(10mL)を加えて抽出した。さらにジエチルエーテル(10mL)で2回抽出し、有機層を集合して飽和塩化ナトリウム水溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、これを濃縮した。残渣を薄層クロマトグラフィー(ベンゼン:ヘキサン=10:1)で精製すると、無色油状物として標題化合物(6、22.7mg)が得られた(収率75%)。
【0069】
H NMR(CDCl、テトラメチルシラン) δ(ppm):1.34及び1.36(s、9H)、3.76及び3.80(s、3H)、3.84(dd、1H、J=4.2、7.5Hz)、4.17(d、1H、J=7.5Hz)、5.98(dd、1H、4.2、9.6Hz)、6.6−7.2(m、12H).
【0070】
(4)二重結合の転位反応
4−(4−ヒドロキシフェニル)−7−メトキシ−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(7)
【0071】
【化34】
【0072】
第三級ブトキシカリウム(40.3mg、0.359mmol)のジメチルスルホキシド(0.6mL)溶液に、7−メトキシ−3−フェニル−4−(4−ピバロイルオキシフェニル)−3,4−ジヒドロナフタレン(6、29.3mg、0.0710mmol)のジメチルスルホキシド(0.8mL)溶液を加え、室温で一昼夜攪拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液(10mL)を加えよく攪拌した後、ジエチルエーテル(10mL)で3回抽出した。有機層を集合し、飽和塩化ナトリウム水溶液(10mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、これを濃縮した。残渣を薄層クロマトグラフィー(トルエン:酢酸エチル=10:1)で精製すると、標題化合物(7、16.0mg)が得られた(収率69%)。
【0073】
H NMR(CDCl、テトラメチルシラン) δ(ppm):2.91(ddd、2H)、2.75(ddd、2H)、3.79(s、3H)、6.6−7.2(m、12H).
【0074】
(5)脱メチル化反応
4−(4−ヒドロキシフェニル)−7−ヒドロキシ−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(8)
【0075】
【化35】
【0076】
反応容器中、上記工程(4)で得られた4−(4−ヒドロキシフェニル)−7−メトキシ−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(7、29.7mg、0.090mM)にジクロロメタン2.3mlを加え、反応系を0℃に冷却した。次いで臭素化硼素(BBr)5当量を含むヘプタン1M溶液0.45mlを加えた。1.5時間経過後、反応生成物の一部に対し、薄層クロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1)を行って、上記4−(4−ヒドロキシフェニル)−7−メトキシ−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレンに対応するスポットが検出されなくなったことを確認した後、NaHCO水溶液を加え、反応を終了させた。反応生成物をジクロロメタン及び酢酸エチルで抽出した後、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層を濃縮後、薄層クロマトグラフィー(n−ヘキサン:酢酸エチル=3:1)を行い、4−(4−ヒドロキシフェニル)−7−ヒドロキシ−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(8)27.9mgを得た。収率は定量的であった。
【0077】
H NMR (CDOD) δ(ppm):7.23−7.07(m、5H、Ar)、6.93−6.86(m、2H、Ar)、6.79−6.66(m、4H、Ar)、6.57(dd、1H、J=2.4、8.4Hz、Ar)、3.03−2.92(m、2H、1−H)、2.87−2.76(m、2H、2−H).
【0078】
(6)側鎖導入反応
(i)4−[4−(2−ピロリジン−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−ピロリジン−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(9)
【0079】
【化36】
【0080】
反応容器に、60重量%水素化ナトリウム(NaH)含有オイル21.6mg(水素化ナトリウム6.0当量)を加え、これを石油エーテルで洗浄した後、乾燥させた。次に、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)0.9ml(0.1M)を投入し、0℃に保った。上記工程(5)で得られた、4−(4−ヒドロキシフェニル)−7−ヒドロキシ−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン29.0mg(0.090mM)を反応容器に加え、室温で15分維持した後、0℃に冷却し、1−(2−クロロエチル)−ピロリジン塩酸塩51.0mg(3.3当量)を加え、50℃で4時間反応させた後、反応系を0℃に冷却するとともに、塩化アンモニウム水溶液を加え、反応を終了させた。反応生成物をジクロロメタンで抽出し、有機層を水及び飽和食塩水で洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。有機層を濃縮後、薄層クロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール:アンモニア水=80:1:1)を行い、さらに薄層クロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=9:1)で精製することにより、4−[4−(2−ピロリジン−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−ピロリジン−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン((9)、以下、ナフォリダイフェンBという場合がある。)25.2mgを得た。収率は55%であった。
【0081】
H NMR(CDCl) δ(ppm):7.14−6.90(m、7H、Ar)、6.82−6.68(m、4H、Ar)、6.60(dd、1H、J=3.0、8.7Hz、Ar)、4.13(t、2H、J=6.0Hz、OCH)、4.09(t、2H、J=6.0Hz、OCH)、3.01−2.86(m、6H、1−H、NCH)、2.82−2.58(m、10H、2−H、ピロリジニル 2−H)、1.85−1.76(m、8H、ピロリジニル 3−H).
【0082】
(ii)4−[4−(2−モルフォリン−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−モルフォリン−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(10)
【0083】
【化37】
【0084】
1−(2−クロロエチル)−モルフォリン塩酸塩を使用するほかは上記(i)と同様にして、4−[4−(2−モルフォリン−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−モルフォリン−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン((10)、以下、ナフォリダイフェンDという場合がある。)94.3mgを得た。収率は79%であった。
【0085】
H NMR(CDCl) δ(ppm):7.19−6.93(m、7H、Ar)、6.85−6.71(m、4H、Ar)、6.61(dd、1H、J=2.7、8.4Hz、Ar)、4.20−4.06(m、4H、OCH)、3.87−3.67(m、8H、モルフォリニル 3−H)、3.05−2.73(m、8H、1−H、2−H、NCH)、2.71−2.53(m、8H、モルフォリニル 2−H).
【0086】
(iii)4−[4−(2−ジメチルアミノ−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−ジメチルアミノ−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(11)
【0087】
【化38】
【0088】
2−ジメチルアミノエチルクロリド塩酸塩を使用するほかは上記(i)と同様にして、4−[4−(2−ジメチルアミノ−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−ジメチルアミノ−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン((11)、以下、ナフォリダイフェンAという場合がある。)95.9mgを得た。収率は92%であった。
【0089】
H NMR(CDCl) δ(ppm):7.21−6.93(m、7H、Ar)、6.80−6.71(m、4H、Ar)、6.60(dd、1H、J=8.6、2.6Hz、Ar)、4.07(t、2H、J=5.7Hz、OCH)、4.03(t、2H、J=5.7Hz、OCH)、2.95−2.89(m、2H、1−H)、2.80−2.70(m、2H、2−H)、2.73(t、2H、J=5.7Hz、NCH)、2.72(t、2H、J=5.7Hz、NCH)、2.34(s、3H×4、NMe).
【0090】
(iv)4−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(12)
【0091】
【化39】
【0092】
1−(2−クロロエチル)ピペリジン塩酸塩を使用するほかは上記(i)と同様にして、4−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン((12)、以下、ナフォリダイフェンCという場合がある。)90.2mgを得た。収率は76%であった。
【0093】
H NMR(CDCl) δ(ppm):7.12−6.93(m、7H、Ar)、6.78−6.70(m、4H、Ar)、6.58(dd、1H、J=8.5、2.4Hz、Ar)、4.11(t、2H、J=6.5Hz、OCH)、4.07(t、2H、J=5.5Hz、OCH)、2.95−2.89(m、2H、1−H)、2.80−2.72(m、6H、2−H、NCH×2)、2.57−2.42(m、2H×4、ピペリジニル 2’−H)、1.63−1.59(m、2H×4、ピペリジニル 3’−H)、1.49−1.39(m、2H×2、ピペリジニル 4’−H).
【0094】
(v)4−[4−(2−ジエチルアミノ−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−ジエチルアミノ−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(13)
【0095】
【化40】
【0096】
2−ジエチルアミノエチルクロリド塩酸塩を使用するほかは上記(i)と同様にして、4−[4−(2−ジエチルアミノ−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−ジエチルアミノ−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン((13)、以下、ナフォリダイフェンEという場合がある。)40mgを得た。収率は41%であった。
【0097】
H NMR(CDCl) δ(ppm):7.13−6.93(m、7H、Ar)、6.78−6.70(m、4H、Ar)、6.58(dd、1H、J=8.6、2.6Hz、Ar)、4.05(t、2H、J=6.3Hz、OCH)、4.01(t、2H、J=6.3Hz、OCH)、2.96−2.84(m、6H、1−H、NCH×2)、2.79−2.75(m、2H、2−H)、2.64(q、2H×4、J=7.0Hz、NEt)、1.07(t、3H×4、J=7.0Hz、NEt).
【0098】
(vi)4−[4−(2−ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(14)
【0099】
【化41】
【0100】
N−(2−クロロエチル)−ヘキサヒドロ−1H−アゼピン塩酸塩を使用するほかは上記(i)と同様にして、4−[4−(2−ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン((14)、以下、ナフォリダイフェンFという場合がある。)46.0mgを得た。収率は59%であった。
【0101】
H NMR(CDCl) δ(ppm):7.10−6.92(m、7H、Ar)、6.78−6.70(m、4H、Ar)、6.59(dd、1H、J=8.6、2.8Hz、Ar)、4.07(t、2H、J=4.5Hz、OCH)、4.03(t、2H、J=6.3Hz、OCH)、2.97−2.89(m、6H、1−H、NCH×2)、2.81−2.73(m、2H、2−H、アゼピニル 2’−H)、1.79−1.53(m、16H、アゼピニル 3’−H、4’−H).
【0102】
(vii)4−[4−(3−ジメチルアミノ−1−イル−プロポキシ)フェニル]−7−(3−ジメチルアミノ−1−イル−プロポキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(15)
【0103】
【化42】
【0104】
3−ジメチルアミノプロピルクロリド塩酸塩を使用するほかは上記(i)と同様にして、4−[4−(3−ジメチルアミノ−1−イル−プロポキシ)フェニル]−7−(3−ジメチルアミノ−1−イル−プロポキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン((15)、以下、ナフォリダイフェンGという場合がある。)103.9mgを得た。収率は86%であった。
【0105】
H NMR(CDCl) δ(ppm):7.13−6.92(m、7H、Ar)、6.78−6.70(m、4H、Ar)、6.58(dd、1H、J=8.6、2.8Hz、Ar)、4.02(t、2H、J=6.3Hz、OCH)、3.98(t、2H、J=5.7Hz、OCH)、2.95−2.90(m、2H、1−H)、2.79−2.72(m、2H、2−H)、2.45(t、2H×2、J=7.5Hz、NCH)、2.26(s、3H×4、NMe)、2.07−1.88(m、2H×2、CH).
【0106】
<実施例2>
以下の実験は、本発明者が、文部科学省がん特定研究領域 化学療法基盤情報支援班に依頼した結果に基づく。
【0107】
4−[4−(2−ピロリジン−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−ピロリジン−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(以下、ナフォリダイフェンBという。)のプロテアソーム阻害活性を以下のように測定した。
【0108】
〔キモトリプシン様活性阻害試験〕
1)20Sプロテアソームに10μMの濃度に調製したナフォリダイフェンBを添加し、30℃で10分間インキュベートした。
2)上記試験系に20Sプロテアソーム切断配列を含む蛍光標識化したキモトリプシンを加え、30℃で1時間反応させた。
3)上記反応により遊離した蛍光物質(AMC)を360nm光で励起し460nm光で定量した。
4)ナフォリダイフェンBを添加しない試験系を(1)〜(3)と同様に測定し、ナフォリダイフェンBを用いた際の酵素活性を測定した。
5)ナフォリダイフェンBを含む段階的な希釈溶液を調整し、(1)〜(4)と同様な評価を行った後に50%阻害濃度(IC50)を決定した。
6)阻害活性の陽性対照として既知のプロテアソーム阻害剤Clasto−Lactacystin β−Lactone(Lactacystin活性体)及びMGI32を(1)〜(5)の工程に付し評価した。
【0109】
〔カスパーゼ様活性阻害試験〕
1)20Sプロテアソームに10μMの濃度に調製したナフォリダイフェンBを添加し、30℃で10分間インキュベートした。
2)上記試験系に20Sプロテアソーム切断配列を含む蛍光標識化したカスパーゼを加え、30℃で1時間反応させた。
3)上記反応により遊離した蛍光物質(AMC)を360nm光で励起し460nm光で定量した。
4)ナフォリダイフェンBを添加しない試験系を(1)〜(3)と同様に測定し、ナフォリダイフェンBを用いた際の酵素活性を測定した。
5)ナフォリダイフェンBを含む段階的な希釈溶液を調整し、(1)〜(4)と同様な評価を行った後に50%阻害濃度(IC50)を決定した。
6)阻害活性の陽性対照として既知のプロテアソーム阻害剤Clasto−Lactacystin β−Lactone(Lactacystin活性体)及びMGI32を(1)〜(5)の工程に付し評価した。
【0110】
〔トリプシン様活性阻害試験〕
1)20Sプロテアソームに10μMの濃度に調製したナフォリダイフェンBを添加し、30℃で10分間インキュベートした。
2)上記試験系に20Sプロテアソーム切断配列を含む蛍光標識化したトリプシンを加え、30℃で1時間反応させた。
3)上記反応により遊離した蛍光物質(AMC)を360nm光で励起し460nm光で定量した。
4)ナフォリダイフェンBを添加しない試験系を(1)〜(3)と同様に測定し、ナフォリダイフェンBを用いた際の酵素活性を測定した。
5)ナフォリダイフェンBを含む段階的な希釈溶液を調整し、(1)〜(4)と同様な評価を行った後に50%阻害濃度(IC50)を決定した。
6)阻害活性の陽性対照として既知のプロテアソーム阻害剤Clasto−Lactacystin β−Lactone(Lactacystin活性体)及びMGI32を(1)〜(5)の工程に付し評価した。
【0111】
〔カテプシン様活性阻害試験〕
1)20Sプロテアソームに10μMの濃度に調製したナフォリダイフェンBを添加し、30℃で10分間インキュベートした。
2)上記試験系に20Sプロテアソーム切断配列を含む蛍光標識化したカテプシンBを加え、30℃で1時間反応させた。
3)上記反応により遊離した蛍光物質(AMC)を360nm光で励起し460nm光で定量した。
4)ナフォリダイフェンBを添加しない試験系を(1)〜(3)と同様に測定し、ナフォリダイフェンBを用いた際の酵素活性を測定した。
5)ナフォリダイフェンBを含む段階的な希釈溶液を調整し、(1)〜(4)と同様な評価を行った後に50%阻害濃度(IC50)を決定した。
6)阻害活性の陽性対照として既知のプロテアソーム阻害剤Clasto−Lactacystin β−Lactone(Lactacystin活性体)及びMGI32を(1)〜(5)の工程に付し評価した。
【0112】
〔α−キモトリプシン様活性阻害試験〕
1)20Sプロテアソームに10μMの濃度に調製したナフォリダイフェンBを添加し、30℃で10分間インキュベートした。
2)上記試験系に20Sプロテアソーム切断配列を含む蛍光標識化したα−キモトリプシンを加え、30℃で1時間反応させた。
3)上記反応により遊離した蛍光物質(AMC)を360nm光で励起し460nm光で定量した。
4)ナフォリダイフェンBを添加しない試験系を(1)〜(3)と同様に測定し、ナフォリダイフェンBを用いた際の酵素活性を測定した。
5)ナフォリダイフェンBを含む段階的な希釈溶液を調整し、(1)〜(4)と同様な評価を行った後に50%阻害濃度(IC50)を決定した。
6)阻害活性の陽性対照として既知のプロテアソーム阻害剤Clasto−Lactacystin β−Lactone(Lactacystin活性体)及びMGI32を(1)〜(5)の工程に付し評価した。
【0113】
結果を以下に示す。
[判定基準]
IC50<0.1μM: +++(非常に強い活性)
IC50=0.1〜1μM:++(強い活性)
IC50=1〜10μM: +(比較的強い活性)
IC50>10μM: ±(弱い活性、あるいは活性無し)
[結果]
・一次評価
【表1】
・二次評価
【表2】
【表3】
カテプシンBの阻害:(無)
α−キモトリプシンの阻害:(無)
[判定]
キモトリプシン様活性:(IC50=4.6)
カスパーゼ様活性:(IC50=2.5)
トリプシン様活性:(IC50=8.6)
プロテアソーム選択性:(有)
評価はポジティブであり、ナフォリダイフェンBは、20Sプロテオソームキモトリプシン様活性、同カスパーゼ様活性、及び同トリプシン様活性のいずれに対しても阻害活性を示し、特に20Sプロテアソームカスパーゼ様活性のIC50が比較的強い活性を示した。
【0114】
<実施例3>
実施例2と同様にして、4−[4−(2−モルフォリン−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−モルフォリン−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(以下、ナフォリダイフェンDという。)のプロテアソーム阻害活性を測定した。結果を以下に示す。
【0115】
[判定基準]
IC50<0.1μM: +++(非常に強い活性)
IC50=0.1〜1μM:++(強い活性)
IC50=1〜10μM: +(比較的強い活性)
IC50>10μM: ±(弱い活性、あるいは活性無し)
[結果]
・一次評価
【表4】
・二次評価
【表5】
【表6】
カテプシンBの阻害:(無)
α−キモトリプシンの阻害:(無)
[判定]
キモトリプシン様活性:(IC50=6.8)
カスパーゼ様活性:(IC50=4.6)
トリプシン様活性:(IC50=4.1)
プロテアソーム選択性:(有)
評価はポジティブであり、ナフォリダイフェンDは、20Sプロテオソームキモトリプシン様活性、同カスパーゼ様活性、及び同トリプシン様活性のいずれに対しても阻害活性を示し、特に20Sプロテアソームトリプシン様活性のIC50が比較的強い活性を示した。
【0116】
<参考例1>
実施例2と同様にして、4−[4−(2−ジメチルアミノ−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−ジメチルアミノ−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(以下、ナフォリダイフェンAという。)のプロテアソーム阻害活性を測定した。結果を以下に示す。なお、この参考例1では、キモトリプシン様活性阻害試験のみを行った。
【0117】
[判定基準]
IC50<0.1μM: +++(非常に強い活性)
IC50=0.1〜1μM:++(強い活性)
IC50=1〜10μM: +(比較的強い活性)
IC50>10μM: ±(弱い活性、あるいは活性無し)
[結果]
・一次評価
【表7】
[判定]
キモトリプシン様活性:(IC50>10)
評価はネガティブであり、ナフォリダイフェンAは、20Sプロテオソームキモトリプシン様活性のIC50が>10μMであった。
【0118】
<実施例4>
実施例2と同様にして、4−[4−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−ピペリジン−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(以下、ナフォリダイフェンCという。)のプロテアソーム阻害活性を測定した。結果を以下に示す。
【0119】
[判定基準]
IC50<0.1μM: +++(非常に強い活性)
IC50=0.1〜1μM:++(強い活性)
IC50=1〜10μM: +(比較的強い活性)
IC50>10μM: ±(弱い活性、あるいは活性無し)
[結果]
・一次評価
【表8】
・二次評価
【表9】
【表10】
カテプシンBの阻害:(無)
α−キモトリプシンの阻害:(無)
[判定]
キモトリプシン様活性:(IC50=3.2)
カスパーゼ様活性:(IC50=5.1)
トリプシン様活性:(IC50>10)
プロテアソーム選択性:(有)
評価はポジティブであり、ナフォリダイフェンCは、20Sプロテオソームキモトリプシン様活性及び同カスパーゼ様活性に対して阻害活性を示し、特に20Sプロテアソームキモトリプシン様活性のIC50が比較的強い活性を示した。
【0120】
<実施例5>
実施例2と同様にして、4−[4−(2−ジエチルアミノ−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−ジエチルアミノ−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(以下、ナフォリダイフェンEという。)のプロテアソーム阻害活性を測定した。結果を以下に示す。
【0121】
[判定基準]
IC50<0.1μM: +++(非常に強い活性)
IC50=0.1〜1μM:++(強い活性)
IC50=1〜10μM: +(比較的強い活性)
IC50>10μM: ±(弱い活性、あるいは活性無し)
[結果]
・一次評価
【表11】
・二次評価
【表12】
【表13】
カテプシンBの阻害:(無)
α−キモトリプシンの阻害:(無)
[判定]
キモトリプシン様活性:(IC50=9.9)
カスパーゼ様活性:(IC50>10)
トリプシン様活性:(IC50>10)
プロテアソーム選択性:(有)
評価はポジティブであり、ナフォリダイフェンEは、20Sプロテオソームキモトリプシン様活性に対して阻害活性を示した。
【0122】
<実施例6>
実施例2と同様にして、4−[4−(2−ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル−エトキシ)フェニル]−7−(2−ヘキサヒドロ−1H−アゼピン−1−イル−エトキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(以下、ナフォリダイフェンFという。)のプロテアソーム阻害活性を測定した。結果を以下に示す。
【0123】
[判定基準]
IC50<0.1μM: +++(非常に強い活性)
IC50=0.1〜1μM:++(強い活性)
IC50=1〜10μM: +(比較的強い活性)
IC50>10μM: ±(弱い活性、あるいは活性無し)
[結果]
・一次評価
【表14】
・二次評価
【表15】
【表16】
カテプシンBの阻害:(無)
α−キモトリプシンの阻害:(無)
[判定]
キモトリプシン様活性:(IC50=4.3)
カスパーゼ様活性:(IC50=5.1)
トリプシン様活性:(IC50>10)
プロテアソーム選択性:(有)
評価はポジティブであり、ナフォリダイフェンFは、20Sプロテオソームキモトリプシン様活性及び同カスパーゼ様活性に対して阻害活性を示し、特に20Sプロテアソームキモトリプシン様活性のIC50が比較的強い活性を示した。
【0124】
<参考例2>
実施例2と同様にして、4−[4−(3−ジメチルアミノ−1−イル−プロポキシ)フェニル]−7−(3−ジメチルアミノ−1−イル−プロポキシ)−3−フェニル−1,2−ジヒドロナフタレン(以下、ナフォリダイフェンGという。)のプロテアソーム阻害活性を測定した。結果を以下に示す。なお、この参考例2では、キモトリプシン様活性阻害試験のみを行った。
【0125】
[判定基準]
IC50<0.1μM: +++(非常に強い活性)
IC50=0.1〜1μM:++(強い活性)
IC50=1〜10μM: +(比較的強い活性)
IC50>10μM: ±(弱い活性、あるいは活性無し)
[結果]
・一次評価
【表17】
[判定]
キモトリプシン様活性:(IC50>10)
評価はネガティブであり、ナフォリダイフェンGは、20Sプロテオソームキモトリプシン様活性のIC50が>10μMであった。
【0126】
<参考例3>
実施例1で合成したナフォリダイフェンA〜Gについて、中枢神経系ガン細胞に対する増殖阻害活性を以下のように測定した。
【0127】
〔中枢神経系ガン細胞増殖阻害試験〕
中枢神経系ガン細胞6種(U251、SF−268、SF−295、SF−539、SNB−75、SNB−78)を96ウェルプレートに播き、翌日、サンプル溶液(10−4、10−5、10−6、10−7、10−8Mの5濃度)を添加し、2日間培養後、細胞増殖をスルホローダミンBによる比色定量で測定した。披験物質を添加する直前の細胞数を基準として、有効濃度GI50(陰性対照に比べて細胞増殖を50%抑制する濃度)をコンピューターにより算出した。阻害活性の比較対照としては、クエン酸タモキシフェン(TAM)を用いた。結果を以下の表18に示す。なお、表中の濃度単位はμMである。
【0128】
【表18】
【0129】
表18から分かるように、ナフォリダイフェンDを除く全てのナフォリダイフェン類で中枢神経系ガン細胞に対する強い増殖阻害活性(殺細胞活性)が見られた。特に、ナフォリダイフェンA、C、Gは、多種の細胞に対して総じて比較的良好な殺細胞活性(1.4〜1.9μM程度)を示すことが分かった。ナフォリダイフェンFは、U251、SF−295、SNB−78の各細胞株に対して第2順位の活性であった。
【0130】
<参考例4>
参考例3と同様にして、ナフォリダイフェンA〜Gについて、大腸ガン細胞5種(HCC2998、KM−12、HT−29、HCT−15、HCT−116)に対する増殖阻害活性を測定した。結果を以下の表19に示す。なお、表中の濃度単位はμMである。
【0131】
【表19】
【0132】
表19から分かるように、ナフォリダイフェンDを除く全てのナフォリダイフェン類で大腸ガン細胞に対する強い増殖阻害活性(殺細胞活性)が見られた。特に、ナフォリダイフェンFは総じて高活性であり、5種の大腸ガン細胞株全てに対して0.5〜1.5μM程度の有効濃度が観測された。また、HT−29細胞株及びHCT−116細胞株については、ナフォリダイフェンA、C、Gが比較的良好な殺細胞活性を示すことが分かった。
【0133】
<参考例5>
参考例3と同様にして、ナフォリダイフェンA〜Gについて、卵巣ガン細胞5種(OVCAR−3、OVCAR−4、OVCAR−5、OVCAR−8、SK−OV−3)に対する増殖阻害活性を測定した。結果を以下の表20に示す。なお、表中の濃度単位はμMである。
【0134】
【表20】
【0135】
表20から分かるように、ナフォリダイフェンDを除く全てのナフォリダイフェン類で卵巣ガン細胞に対する強い増殖阻害活性(殺細胞活性)が見られた。特に、ナフォリダイフェンF、Gは総じて高活性であり、5種の卵巣ガン細胞株全てに対して1.2〜1.9μM程度の有効濃度が観測された。また、OVCAR−4細胞株についてはナフォリダイフェンBが最も高い殺細胞活性を示し、OVCAR−5細胞株についてはナフォリダイフェンCが最も高い殺細胞活性を示すことが分かった。
【0136】
<参考例6>
参考例3と同様にして、ナフォリダイフェンA〜Gについて、胃ガン細胞6種(St−4、MKN1、MKN7、MKN28、MKN45、MKN74)に対する増殖阻害活性を測定した。結果を以下の表21に示す。なお、表中の濃度単位はμMである。
【0137】
【表21】
【0138】
表21から分かるように、ナフォリダイフェンDを除く全てのナフォリダイフェン類で卵巣ガン細胞に対する強い増殖阻害活性(殺細胞活性)が見られた。特に、ナフォリダイフェンF、Gは総じて高活性であり、6種の胃ガン細胞株全てに対して1.1〜1.8μM程度の有効濃度が観測された。また、St−4細胞株についてはナフォリダイフェンA、Gが最も高い殺細胞活性を示し、MKN1細胞株についてはナフォリダイフェンEが最も高い殺細胞活性を示すことが分かった。
図1