特許第5747488号(P5747488)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747488
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】木質系ピッチ
(51)【国際特許分類】
   C08H 7/00 20110101AFI20150625BHJP
   C08H 8/00 20100101ALI20150625BHJP
【FI】
   C08H7/00
   C08H8/00
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-265488(P2010-265488)
(22)【出願日】2010年11月29日
(65)【公開番号】特開2012-116884(P2012-116884A)
(43)【公開日】2012年6月21日
【審査請求日】2013年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219576
【氏名又は名称】東海カーボン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【弁理士】
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勝喜
(72)【発明者】
【氏名】加藤 攻
(72)【発明者】
【氏名】松永 興哲
(72)【発明者】
【氏名】坂西 欣也
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第06100385(US,A)
【文献】 特開2005−168335(JP,A)
【文献】 特開2008−308530(JP,A)
【文献】 特開平03−126728(JP,A)
【文献】 特開昭57−131201(JP,A)
【文献】 米国特許第04618736(US,A)
【文献】 特開平04−126725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08H 7/00
8/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木質体を糖化処理した後の残渣、或いは木質体を糖化及び醗酵処理した後の残渣を、フェノール類及び水素供与性溶剤の存在下で加圧加熱し、低沸点成分を除去することによって得られる、軟化点が170〜230℃の木質系ピッチ。
【請求項2】
前記残渣が、木質体を生物的、化学的、又は機械的に分解したものである請求項1に記載の木質系ピッチ。
【請求項3】
前記フェノール類がフェノールであり、前記水素供与性溶剤がテトラリンである請求項1または2に記載の木質系ピッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、リグノセルロースなどを含む固形木質系原料の利用技術に関するものであり、より詳しくは前記固形木質系原料の可溶化技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境を改善する観点から、脱化石燃料が進められている。例えば、炭素材料(炭素繊維、活性炭、カーボンブラック、各種機能性炭素材料など)は、従来、石炭や石油の蒸留残渣(ピッチなど)から製造されているが、木質系原料を可溶化して、ピッチ代替物として使用することが試みられている。例えば、木質系原料を可溶化したものを用いて炭素繊維を製造する方法が知られており(特許文献1〜4など)、特許文献1では、木質系資源を高圧飽和水蒸気処理、アルコール系有機溶媒処理することによって得られるリグニンを水素添加分解し、熱溶融法により紡糸し、炭素化することによって炭素繊維を製造している。しかし水素添加分解を利用する方法は、エネルギー消費が大きく、望ましくない。
【0003】
特許文献2では、木質系物質をフェノール類と水との混合溶媒を蒸解液として加熱することにより、パルプと、ヘミセルロースが分解して単糖類として溶解している水層、及びリグニンが溶解している有機層の三成分に分離した後、該有機層を減圧濃縮して得られるリグニンを溶融紡糸し、リグニン繊維を製造している。しかしこの方法は、パルプの分離・精製操作が煩雑であり、水層部分の廃液処理が難しいので、実用的ではない。
【0004】
特許文献3では、木質材料からの脱リグニン処理で溶出したリグニンを酸性有機触媒で処理して得られるフェノール化リグニンを非酸化雰囲気下、加熱重質化することで炭素繊維紡糸用リグニンを調製している。しかしこの方法は、製造工程が煩雑であり、また炭素繊維の収率も低く、コストがかかる方法である。
【0005】
特許文献4には、リグノセルロース材料を爆砕前処理し、この処理物とフェノール化合物とを加熱下に溶解反応させることで可溶化物を製造している。しかしこの方法では、爆砕処理装置が膨大であり、生成物中に固形分が残存する。そのため紡糸が困難で、炭素繊維用原料として不適切である。
【0006】
また木質系原料は、炭素繊維の他、他の炭素材料(活性炭、カーボンブラック、各種機能性炭素材料など)の製造原料(ピッチもしくは重質油)としてもその使用が期待される。いずれの場合でも、木質系原料を安価に可溶化することが重要である。炭素繊維製造原料として使用する場合は、固形分が残存すると、紡糸工程でトラブルが発生する。また活性炭、カーボンブラック、各種機能性炭素材料などを製造する場合にも、固形分が残存すると、送液配管やバルブの目詰まりの原因となって工程トラブルが生じる。
【0007】
なお、上述の従来法では、高温・高圧・高エネルギー消費を必要とする水素添加分解法(特許文献1)を除くと、いずれも生成物(可溶化物またはピッチ)の熱安定性が低い欠点を持っている。特にピッチについては、熱安定性がその利用において重要であるが、熱安定性の低いピッチでは、例えば、溶融紡糸時にピッチの粘度上昇(軟化点上昇)により所望の繊維径を得られなくなるか、あるいは、ノズルの閉塞により紡糸そのものができなくなる。また、該ピッチを炭素材成形バインダーとして用いた場合には、骨材との混練の過程でピッチの粘度が増大することで、所望の成形ができなくなることが大きな問題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭62−110922号公報
【特許文献2】特開平01−239114号公報
【特許文献3】特開平01−306618号公報
【特許文献4】特開平04−126725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、リグノセルロースなどを含む固形木質系原料の可溶性(溶解性)を高め、且つ可溶化物またはその可溶化物から低沸点成分を除去後の木質系ピッチの熱安定性を高めることができる技術を確立することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、及びリグノセルロースから選択される少なくとも一種を含む固形木質系原料を、フェノール化合物で可溶化する際に、所定の溶媒を併用すれば、不溶物(固形分)を著しく低減できるとともに、さらに可溶化物またはその可溶化物から低沸点成分を除去後の木質系ピッチの熱変質を抑制できることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明に係る木質系可溶化物は、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、及びリグノセルロースから選択される少なくとも一種を含む固形木質系原料を、フェノール類(特にフェノール)及び水素供与性溶剤(特にテトラリン)の存在下で加圧加熱することにその要旨を有する。前記木質系原料は、木質体を生物的、化学的、又は機械的に分解したものであることが好ましく、例えば、木質体を水熱処理、糖化処理、醗酵の順に処理してエタノールを生成した後の残渣が挙げられる。前記フェノール類の量は、木質系原料100質量部に対して、20〜500質量部である。前記水素供与性溶剤の量は、木質系原料100質量部に対して、10〜300質量部である。前記加圧加熱では、例えば、ゲージ圧0.2〜10MPa、温度230〜430℃の条件にする。前記加圧加熱の後、得られた可溶化物をそのまま炭素材料の基本原料にしてもよく、或いは蒸留により溶媒や可溶化物中の低沸点成分を除去してから炭素材料の基本原料にしてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、フェノール類及び水素供与性溶剤の存在下で固形木質系原料を加圧加熱しているため、不溶物(固形分)を著しく低減でき、さらに可溶化物またはその可溶化物から低沸点成分を除去後の木質系ピッチの熱変質を抑えることで、炭素繊維をはじめ、各種炭素材料の基本原料となるこれらの木質系可溶化物又はピッチの熱安定性を、従来の方法に比べて著しく向上させ、製品の安定生産に寄与することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明では、固形木質系原料を後述する所定溶剤の存在下で加圧加熱することで、木質系可溶化物又は木質系ピッチを調製している。固形木質系原料を使用することによって、化石原料の依存度を下げることができる。また所定溶剤の存在下で加圧加熱することで、固形木質系原料を可溶化又はピッチ化することができ、固形分を著しく低減できるとともに、熱的に安定な可溶化物又はピッチを得ることができる。
【0014】
前記固形木質系原料としては、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、及びリグノセルロースから選択される少なくとも一種を含む固形原料である限り特に限定されず、植物(特に木材)由来の原料であればいずれも使用可能である。例えば、針葉樹と広葉樹とを網羅した間伐材、林地残材、製材残材、建築廃材、剪定枝葉、切り株、樹皮などの木質系廃材が廃棄物の有効利用の観点から固形木質系原料として望ましい。
【0015】
固形木質系原料は、好ましくは、生物的、化学的、又は機械的に分解されている。予め分解しておくことにより、加圧加熱による可溶化の処理効率を高めることができる。生物学的な分解としては、菌、微生物、酵素などによる分解が挙げられる。化学的な分解は、硫酸・アルカリ法であってもよいが、環境負荷を考慮すると、水熱処理或いは過熱水蒸気による加水分解が好ましい。また機械的な分解には、叩解、破砕、粉砕、摩砕、爆砕などが含まれ、この機械的分解は乾式及び湿式のいずれでもよい。
【0016】
これら生物的、化学的、又は機械的分解は、適宜組み合わせるのが望ましく、典型的には、機械的分解(粉砕など)をした後、必要に応じて水熱処理(加水分解処理)し、次いで生物学的に糖化処理(酵素法による糖化処理など)される。糖化処理物は、通常、濾過して液体成分と固形分とに分離される。液体成分(主成分は糖分)はエタノール発酵に供し、固形分は残渣(糖化残渣)として排出される。場合によっては、前記糖化処理物は、濾過せずそのまま後段に送り、微生物や菌(特に酵母)によってエタノール醗酵処理してもよい。この醗酵処理では、通常前記糖化処理物中の糖分だけがエタノールに変換され、固形分(糖化残渣)は変化しない。醗酵処理物も濾過により、液体成分(主成分はエタノール水溶液)と固形分(糖化残渣と基本的には同じ成分であるが、ここでは「発酵残渣」という)とに分離される。このように得られる糖化残渣又は醗酵残渣はいずれもリグニンを主成分としており、セルロース及びヘミセルロースを含有していても、そのまま固形木質系原料として使用できる。好ましい固形木質系原料は、糖化残渣又は醗酵残渣である。これら水熱処理、糖化処理、醗酵処理の詳細は、例えば、特開2005−168335号公報に詳述されている。
【0017】
そして本発明では、上記の様な固形木質系原料を所定溶剤の存在下で加圧加熱することで、可溶化している。この所定溶剤は、具体的には、フェノール類及び水素供与性溶剤の組み合わせ溶剤である。固形木質系原料をフェノール類に加圧加熱溶解しようとすると、固形分(不溶物)が発生する。この固形分は、熱分解で発生する不安定ラジカルが再結合したものであると想定され、水素供与性溶剤をフェノール類と共に用いれば、不安定なラジカルに水素を供与することでラジカルを安定化できるため、固形分を著しく低減できるものと考えられる。
【0018】
さらに、低沸点成分を除去後の木質系ピッチは紡糸温度領域で熱変質する。すなわち、木質系ピッチの軟化点が高くなり、紡糸が困難となる。軟化点の上昇は木質系ピッチ中の熱的に不安定なフェノール骨格を有した成分が熱重合を起こすためと考えている。水素供与性溶剤とフェノール類と共に用いれば、熱重合開始点となる不安定なフェノール骨格から酸素の引き抜きが起こり、得られる木質系ピッチの熱変質が抑制されるものと推察される。
【0019】
前記フェノール類は、フェノール骨格(ヒドロキシベンゼン骨格)を有する化合物を意味し、例えば、フェノール、クレゾールなどのモノヒドロキシベンゼン類;カテコールなどのジヒドロキシベンゼン類;ナフトールなどのヒドロキシベンゼン縮環物などが含まれる。好ましいフェノール類は、モノヒドロキシベンゼン類、特にフェノールである。
【0020】
前記水素供与性溶剤としては、縮環型芳香族性炭化水素類を部分的に水素化した化合物が使用でき、例えば、部分水素化ナフタレン類(テトラリンなど)などの2環型化合物;部分水素化アントラセン類(9,10−ジヒドロアントラセンなど)、部分水素化フェナントレン類(9,10−ジヒドロフェナントレンなど)などの3環型化合物、部分水素化フルオランテン(テトラヒドロフルオランテンなど)等の4環型化合物などが含まれる。またこの水素供与性溶剤として、アントラセン油、クレオソート油などの縮環型芳香族炭化水素類を含む混合物を水素化したものを使用することもできる。好ましい水素供与性溶剤は、前記2環型化合物を含む低沸点溶剤、特に部分水素化ナフタレン類を含む溶剤である。
【0021】
フェノール類及び水素供与性溶剤の使用量は、固形木質系原料を可溶化するのに十分な量であれば特に限定されないが、過剰に用いてもそれ以上の効果はなく、却って生産性が低下するため、適度な量を使用することが推奨される。固形木質系原料として糖化残渣又は醗酵残渣を使用する場合、フェノール類の量は、糖化残渣又は醗酵残渣100質量部に対して、例えば、20〜500質量部程度、好ましくは50〜400質量部程度、さらに好ましくは100〜300質量部程度である。フェノール類の量が20質量部を下回ると、固形原料に対する溶解力が著しく低下し、またフェノール類の量が500質量部を超えると、溶解に必要なフェノール類の量は十分であるが、溶媒回収に必要なエネルギー消費量が高くなり、コストアップに繋がる。また水素供与性溶剤の量は、糖化残渣又は醗酵残渣100質量部に対して、例えば、10〜300質量部程度、好ましくは30〜250質量部程度、さらに好ましくは50〜200質量部程度である。水素供与性溶剤の量が10質量部を下回ると、可溶化物およびピッチの熱変質が起こりやすくなり、固形分の増加ならびに熱安定性の低下を招く。また、水素供与性溶剤の量が300質量部を超えると、前記フェノールの場合と同様に、溶媒回収に必要なエネルギー消費量が高くなり、コストアップに繋がる。
【0022】
固形木質系原料を前記溶剤の存在下で加圧加熱して可溶化するとき、加熱温度は、230〜430℃程度、好ましくは260〜400℃程度、さらに好ましくは280〜380℃程度である。230℃を下回ると、可溶化が不十分であるため、固形分量が多くなり、また、430℃を超えると、環化重縮合反応が促進され、炭素前駆体としての固形分が多くなる。また、ゲージ圧は0.2〜10MPa程度である。このゲージ圧は、原料中の水分、熱分解で生成する低沸点成分、使用するフェノール類、水素供与性溶剤の所定温度での蒸気圧によって決まる。上記の圧力及び温度での処理時間(所定温度に達してからの保持時間)は、例えば、1〜120分程度、好ましくは5〜60分程度、さらに好ましくは10〜30分程度である。
【0023】
固形木質系原料を前記のようにして可溶化した後は、可溶化物をそのままバインダーやカーボンブラックの原料などにしてもよく、必要に応じて、この可溶化物を濃縮してバインダーピッチ、炭素繊維用ピッチ、各種成形品などにしてもよい。濃縮操作は、固形木質系原料に含まれる水分、可溶化で使用した溶剤(フェノール類、水素供与性溶剤など)、及び加圧加熱処理時に生じる低沸点の分解生成物(熱分解油及び熱分解により生成した水)など(これらを総称して低沸点成分という)を除去できればよく、減圧条件下で実施してもよく、常圧条件下で実施してもよい。
【0024】
なお可溶化物に残存する固形分量は、上記濃縮操作の前にろ過する方法で測定できる。すなわち所定溶剤中で固形木質系原料を加圧加熱処理した後、内容物をペーパーフィルター(保留粒子径1〜10μm程度)でろ過することで、固形分を分離し、その量を調べることができる。ろ過前の可溶化物に含まれる固形分量は、投入した固形木質系原料(105℃乾燥ベース)に対して、例えば、5質量%以下、好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。これらの固形分は、量が少ない場合には、ろ別せず可溶化物をそのまま炭素材料の基本原料にしてもよいが、必要に応じて、例えば炭素繊維のように微細加工する場合には、濾過して取り除いてもよい。
【0025】
木質系可溶化物を濃縮して木質系ピッチにする場合、その濃縮程度によって軟化点を制御することができる。溶融紡糸用炭素繊維の原料ピッチの軟化点は、通常170〜230℃程度である。
【0026】
また、木質系ピッチの熱安定性指標を、ここでは、280℃での減圧濃縮により軟化点を190〜210℃の範囲内に調整したピッチに対して、285℃にて60分間保持(熱処理)した前後の軟化点の差、即ちΔT(℃)=T2(℃)−T1(℃)で定義する。ここで、T1は前記285℃にて60分間保持する前の軟化点であり、T2は前記285℃にて60分間保持した後の軟化点である。このΔTは、好ましくは15℃以下、より好ましくは10℃以下である。
【0027】
上記木質系ピッチや木質系可溶化物から製造できる炭素材料としては、炭素繊維、成形活性炭、カーボンブラックなどが例示できる。炭素繊維は、例えば、木質系ピッチを溶融し、紡糸し、空気中で加熱(約200〜300℃程度)して不融化し、非酸化性雰囲気で加熱(約700〜900℃程度)して炭化することによって製造できる。成形活性炭は、例えば、木質系ピッチを木炭粉と混練、成形後、非酸化性雰囲気で炭化後、酸化性雰囲気、例えば、水蒸気や二酸化炭素気流中で賦活処理(約800〜1000℃程度)することによって製造できる。カーボンブラックは、例えば、ファーネス法では1300〜1700℃程度の高温ガス雰囲気中にノズルから液滴状の木質系可溶化物を連続的に噴霧、熱分解させることによって製造できる。
【0028】
炭素材料(炭素繊維、成形活性炭、カーボンブラック、各種炭素成形品など)の製造過程で、上記木質系ピッチ又は木質系可溶化物を用いると、固形分が著しく低減されると共に熱安定性が顕著に向上するため、送料時に配管、バルブやノズルなどが閉塞したり、成形加工中に粘度上昇(軟化点上昇など)により運転不能に陥ったりする虞がなく、安定して製造を続けることができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0030】
参考例1
杉の切り株と枝葉からなる直径5〜100cm程度の未利用木質系バイオマスを破砕機により3〜5cm角のチップに破砕した後、含水率が約20質量%になるまで自然乾燥した。さらに粉砕して、平均粒径約20μm、含水率約3質量%の粉末にした。この木粉100質量部に、アクレモニュウムセルラーゼ(明治製菓製、商品名:アクレモニュウムエンザイム)5質量部と水500質量部を加え、温度55℃で40時間糖化処理(糖化率は原料中のセルロース100質量%に対して35質量%)した後、濾過して液体成分(a)と固形分とに分離した。固形分はさらに水で洗浄し、洗浄液(b)と前記液体成分(a)を合わせてエタノール発酵に供した。固形分(糖化処理残渣)は自然乾燥してから粉状に砕いた後、さらに温度105℃で一夜乾燥して、木質系可溶化物及び木質系ピッチの原料となる糖化残渣を得た。糖化残渣の収量は、原料木粉の乾燥質量100質量%に対して82質量%であった。
【0031】
実施例1
参考例1で得られた杉の糖化残渣50gに対してフェノール75gとテトラリン75gを加えて350℃で1時間、ゲージ圧7MPaの条件で加熱した。得られた加熱処理液中の固形分は、投入した糖化残渣原料(105℃乾燥ベース)に対して2.9質量%であった。ペーパーフィルターで加熱処理液中の固形分を除去後、得られたろ液(可溶化物)を280℃で減圧濃縮することによって木質系ピッチを得た。得られた木質系ピッチの軟化点[T1]は190℃であった。さらに、この木質系ピッチを285℃にて60分間保持(熱処理)した後の軟化点[T2]は194℃であり、ΔT=4℃であった。
【0032】
実施例2
参考例1で得られた杉の糖化残渣50gに対してフェノール75gとテトラリン75gを加えて375℃で1時間、ゲージ圧7.5MPaの条件で加熱した。得られた加熱処理液中の固形分は、投入した糖化残渣原料(105℃乾燥ベース)に対して2.1質量%であった。
【0033】
比較例1
参考例1で得られた杉の糖化残渣50gに対してフェノール150gを加えて350℃で1時間、ゲージ圧7MPaの条件で加熱処理を実施した。得られた加熱処理液中の固形分は、投入した糖化残渣原料(105℃乾燥ベース)に対して8.5質量%であった。この可溶化物を実施例1と同様にろ過、濃縮して木質系ピッチを得た(軟化点[T1]210℃)。さらに、この木質系ピッチを実施例1と同様に、285℃にて60分間保持(熱処理)した後の軟化点[T2]は235℃であり、ΔT=25℃であった。
【0034】
比較例2
参考例1で得られた杉の糖化残渣50gに対してフェノール150gを加えて375℃で1時間、ゲージ圧7.4MPaの条件で加熱処理を実施した。得られた加熱処理液中の固形分は、投入した糖化残渣原料(105℃乾燥ベース)に対して12.1質量%であった。