特許第5747507号(P5747507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5747507ピペリジン骨格を有する単量体を用いた重合体の製造方法、及び成型体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747507
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】ピペリジン骨格を有する単量体を用いた重合体の製造方法、及び成型体
(51)【国際特許分類】
   C08F 220/18 20060101AFI20150625BHJP
   C08F 220/34 20060101ALI20150625BHJP
   H01L 31/042 20140101ALI20150625BHJP
【FI】
   C08F220/18
   C08F220/34
   H01L31/04 500
【請求項の数】9
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2010-547889(P2010-547889)
(86)(22)【出願日】2010年12月1日
(86)【国際出願番号】JP2010071430
(87)【国際公開番号】WO2011068110
(87)【国際公開日】20110609
【審査請求日】2013年11月7日
(31)【優先権主張番号】特願2009-273576(P2009-273576)
(32)【優先日】2009年12月1日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2010-1742(P2010-1742)
(32)【優先日】2010年1月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱レイヨン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】中谷 文紀
(72)【発明者】
【氏名】野田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】坂下 啓一
【審査官】 松元 洋
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−500307(JP,A)
【文献】 特開2008−127527(JP,A)
【文献】 特開2008−231307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 220/00 − 220/70
H01L 31/042
CA/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される単量体(a1)0.01〜35モル%及びメチルメタクリレートを主成分とする単量体(a2)65〜99.99モル%を含有する単量体混合物を、210℃以下の温度で重合する重合体の製造方法。
【化1】
(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基、Xは酸素原子、イミノ基、下記一般式(2)又は下記一般式(3)を表す。R及びRは水素原子、炭素数1〜8の直鎖型アルキル基、炭素数1〜8の分岐型アルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜8の脂環式炭化水素、又は置換基を有してもよいアリール基を表し、互いに同一でも異なってもよい。また、RとRとで環構造を形成してもよく、環構造は置換基を有してもよい。)
【化2】
(式(2)中、nは1〜10の整数を表す。R及びRは水素原子又はメチル基を表し、R及びRの少なくとも一方は水素原子である。)
【化3】
(式(3)中、nは1〜10の整数を表す。)
【請求項2】
メチルメタクリレートを主成分とする単量体(a2)単位からなる重合体、下記一般式(1)で表される単量体(a1)及びメチルメタクリレートを主成分とする単量体(a2)を含有し、単量体(a1)の含有率が0.01〜35モル%である混合物を、210℃以下の温度で重合する重合体の製造方法。
【化4】
(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基、Xは酸素原子、イミノ基、下記一般式(2)又は下記一般式(3)を表す。R及びRは水素原子、炭素数1〜8の直鎖型アルキル基、炭素数1〜8の分岐型アルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜8の脂環式炭化水素、又は置換基を有してもよいアリール基を表し、互いに同一でも異なってもよい。また、RとRとで環構造を形成してもよく、環構造は置換基を有してもよい。)
【化5】
(式(2)中、nは1〜10の整数を表す。R及びRは水素原子又はメチル基を表し、R及びRの少なくとも一方は水素原子である。)
【化6】
(式(3)中、nは1〜10の整数を表す。)
【請求項3】
下記一般式(1)で表される単量体(a1)及びメチルメタクリレートを主成分とする単量体(a2)を含有する単量体混合物を210℃以下の温度で重合した重合体と、メチルメタクリレートを主成分とする単量体(a2)と、を含有する混合物であって、単量体(a1)単位の含有率が0.01〜35モル%である該混合物を、210℃以下の温度で重合する重合体の製造方法。
【化7】
(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基、Xは酸素原子、イミノ基、下記一般式(2)又は下記一般式(3)を表す。R及びRは水素原子、炭素数1〜8の直鎖型アルキル基、炭素数1〜8の分岐型アルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜8の脂環式炭化水素、又は置換基を有してもよいアリール基を表し、互いに同一でも異なってもよい。また、RとRとで環構造を形成してもよく、環構造は置換基を有してもよい。)
【化8】
(式(2)中、nは1〜10の整数を表す。R及びRは水素原子又はメチル基を表し、R及びRの少なくとも一方は水素原子である。)
【化9】
(式(3)中、nは1〜10の整数を表す。)
【請求項4】
単量体混合物の重合がキャスト重合である請求項1に記載の重合体の製造方法。
【請求項5】
混合物の重合がキャスト重合である請求項2又は3に記載の重合体の製造方法。
【請求項6】
請求項4に記載の製造方法で得られた成型体。
【請求項7】
請求項5に記載の製造方法で得られた成型体。
【請求項8】
請求項6に記載の成型体を用いた、太陽光発電モジュール用トップカバー。
【請求項9】
請求項7に記載の成型体を用いた、太陽光発電モジュール用トップカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピペリジン骨格を有する単量体又はその重合体を含む混合物を重合して重合体を製造する方法、及びその方法で得られた成型体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、設備の維持費用低減や環境負荷低減の観点から、屋外等の過酷な環境下で用いられる高分子材料の耐候性向上が強く求められている。
【0003】
塗料として用いる高分子材料の耐候性向上を目的として、特許文献1では、ピペリジン骨格を有するヒンダードアミン型光安定剤(以下、「HALS」という。)の中でも、特に、窒素原子上が種々のOR基で置換されたもの(以下、「NOR−HALS」という。)を塗料成分中に添加することが提案されている。NOR−HALSは高分子材料の耐候性向上効果を有するものの、移行又は揮発によって高分子材料から徐々に失われ、その効果が経時的に低下するという課題を有する。
【0004】
この課題の解決を目的として、特許文献2では、分子内にビニル基を有する重合性のNOR−HALS(以下、「重合性NOR−HALS」という。)を共重合し、塗料成分中に添加することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平1−113368号公報
【特許文献2】特開平2−281009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2では、重合性NOR−HALSの共重合体を塗料成分中に添加することが提案されているが、重合性NOR−HALSの共重合体を成型体として用いることは示されていない。重合性NOR−HALSの共重合体を成型体として用い、成型体自体の耐候性を向上させることができれば、設備の維持費用低減や環境負荷低減の観点から有意義である。
【0007】
本発明者らが検討した結果、重合性NOR−HALSの共重合体を押出成型又は射出成型した場合、成型加工時の加熱によってニトロキサイド(−NO−)に結合しているRが解離し、得られる成型体が着色することが確認された。
【0008】
本発明の目的は、耐候性に優れ、その効果が経時的に低下せず、着色のない成型体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは鋭意検討した結果、ニトロキサイドに結合しているRを適切に選択し、適切な温度範囲で重合することにより、耐候性に優れ、その効果が経時的に低下せず、着色のない成型体が得られることを見出した。
【0010】
即ち本発明は、下記一般式(1)で表される単量体(a1)0.01〜35モル%及びメチルメタクリレートを主成分とする単量体(a2)65〜99.99モル%を含有する単量体混合物を、210℃以下の温度で重合する重合体の製造方法である。
【0011】
【化1】
【0012】
(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基、Xは酸素原子、イミノ基、下記一般式(2)又は下記一般式(3)を表す。R及びRは水素原子、炭素数1〜8の直鎖型アルキル基、炭素数1〜8の分岐型アルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜8の脂環式炭化水素、又は置換基を有してもよいアリール基を表し、互いに同一でも異なってもよい。また、RとRとで環構造を形成してもよく、環構造は置換基を有してもよい。)
【0013】
【化2】
【0014】
(式(2)中、nは1〜10の整数を表す。R及びRは水素原子又はメチル基を表し、R及びRの少なくとも一方は水素原子である。)
【0015】
【化3】
【0016】
(式(3)中、nは1〜10の整数を表す。)
【0017】
また本発明は、メチルメタクリレートを主成分とする単量体(a2)単位からなる重合体、上記一般式(1)で表される単量体(a1)及びメチルメタクリレートを主成分とする単量体(a2)を含有し、単量体(a1)の含有率が0.01〜35モル%である混合物を、210℃以下の温度で重合する重合体の製造方法である。
【0018】
また本発明は、上記一般式(1)で表される単量体(a1)及びメチルメタクリレートを主成分とする単量体(a2)を含有する単量体混合物を210℃以下の温度で重合した重合体と、メチルメタクリレートを主成分とする単量体(a2)とを含有し、単量体(a1)単位の含有率が0.01〜35モル%である混合物を、210℃以下の温度で重合する重合体の製造方法である。
【0019】
更に本発明は、上記各方法において単量体混合物の重合をキャスト重合で行なう場合、その方法で得られた成型体である。
【0020】
更に本発明は、上記の成型体を用いた、太陽光発電モジュール用トップカバーである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の製造方法によれば、耐候性に優れ、その効果が経時的に低下せず、着色のない成型体を得ることができる。本発明の成型体は、耐候性に優れ、その効果が経時的に低下せず、着色がなく、太陽光発電モジュール用トップカバーとして好適に用いられる。本発明の太陽光発電モジュール用トップカバーは、長期間の使用でも透過率が低下せず、太陽光発電モジュールの発電効率を低下させることがない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明で用いる単量体(a1)は、重合性NOR−HALSであり、下記一般式(1)で表される。
【0023】
【化4】
【0024】
(式(1)中、Rは水素原子又はメチル基、Xは酸素原子、イミノ基、下記一般式(2)又は下記一般式(3)を表す。R及びRは水素原子、炭素数1〜8の直鎖型アルキル基、炭素数1〜8の分岐型アルキル基、置換基を有してもよい炭素数6〜8の脂環式炭化水素、又は置換基を有してもよいアリール基を表し、互いに同一でも異なってもよい。また、RとRとで環構造を形成してもよく、環構造は置換基を有してもよい。)
【0025】
【化5】
【0026】
(式(2)中、nは1〜10の整数を表す。R及びRは水素原子又はメチル基を表し、R及びRの少なくとも一方は水素原子である。)
【0027】
【化6】
【0028】
(式(3)中、nは1〜10の整数を表す。)
【0029】
一般式(1)中、単量体(a1)の合成が容易であることから、Xは酸素原子であることが好ましい。また、成型体の耐候性が良好となることから、R及びRは炭素数1〜8の直鎖型アルキル基、又は炭素数1〜8の分岐型アルキル基であることが好ましい。
【0030】
単量体(a1)としては、例えば、1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−(メタ)アクリロイルオキシピペリジン、1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−(メタ)アクリルアミドピペリジン、1−プロピルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−(メタ)アクリロイルオキシピペリジン、1−プロピルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−(メタ)アクリルアミドピペリジン、1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−(メタ)アクリロイルオキシピペリジン、1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−(メタ)アクリルアミドピペリジン、1−メチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−(メタ)アクリロイルオキシピペリジン、1−メチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−(メタ)アクリルアミドピペリジン、1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−(2−(2−(メタ)アクリロイルオキシ)エトキシ)エトキシピペリジン、1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−(4−(2−(メタ)アクリロイルオキシ)エトキシ−1,4−ジオキソ)ブトキシピペリジンが挙げられる。
【0031】
これらの中では、得られる成型体の耐候性が良好となることから、1−メチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−(メタ)アクリロイルオキシピペリジン、1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−(メタ)アクリロイルオキシピペリジンが好ましい。
【0032】
単量体(a1)は1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
【0033】
尚、本発明において、(メタ)アクリルは、アクリル又はメタクリルを、(メタ)アクリロイルは、アクリロイル又はメタクリロイルを示す。
【0034】
単量体(a1)は、公知の方法により合成することができる。例えば、1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−メタクリロイルオキシピペリジン(以下、「単量体(a1−1)」という。)は、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンに、タングステン酸ナトリウム存在下、30%過酸化水素水による酸化を行ない、得られた4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシドに、無水酢酸を用いて、ヒドロキシル基のアセチル保護を行ない、オクタンを溶媒兼反応剤として、t−ブチルハイドロパーオキサイドにより反応させ、アセチル保護を脱保護した後に、メタクリロイルクロリドと反応させて合成することができる。
【0035】
また、単量体(a1−1)は、特表2008−519003号公報に記載の方法で合成することができる。具体的には、トリアセトンアミンを、タングステン酸ナトリウム二水和物の存在下、30%過酸化水素水溶液により酸化して、トリアセトンアミン−N−オキシドに変換した後、1−オクテン及びt−ブチルハイドロパーオキサイドにより反応させ、Ru担持木炭及び水素により還元して、得られた4−ヒドロキシ−1−(1−オクチルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンと、4−ヒドロキシ−1−(3−オクチルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンとの混合物を、メタクリロイルクロリドと反応させることで合成することができる。
【0036】
また、1−プロピルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−メタクリロイルオキシピペリジン(以下、「単量体(a1−2)」という。)は、特表2008−519003号公報に記載の方法に従い、1−オクテンの代わりにプロピレンを用いて合成することができる。
【0037】
また、1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−(2−(2−メタクリロイルオキシ)エトキシ)エトキシピペリジン(以下、「単量体(a1−3)」という。)は、2,2,6,6−テトラメチル−4−(2−(2−ヒドロキシエトキシ)エトキシピペリジン−N−オキシドに、無水酢酸を用いて、ヒドロキシル基のアセチル保護を行ない、オクタンを溶媒兼反応剤として、t−ブチルハイドロパーオキサイドにより反応させ、アセチル保護を脱保護した後に、メタクリロイルクロリドと反応させて合成することができる。
【0038】
また、1−オクチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−(4−(2−メタクリロイルオキシ)エトキシ−1,4−ジオキソ)ブトキシピペリジン(以下、「単量体(a1−4)」という。)は、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジンに、タングステン酸ナトリウム存在下、30%過酸化水素水による酸化を行ない、得られた4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシドに、無水酢酸を用いて、ヒドロキシル基のアセチル保護を行ない、オクタンを溶媒兼反応剤として、t−ブチルハイドロパーオキサイドにより反応させ、アセチル保護を脱保護した後に、無水コハク酸を付加させ、得られたカルボン酸と、2−ヒドロキシエチルメタクリレートとを、脱水縮合して合成することができる。
【0039】
また、1−メチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−メタクリロイルオキシピペリジン(以下、「単量体(a1−5)」という。)は、特表2009−541428号公報に記載の方法に従い、1−メチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンを合成した後、メタクリロイルクロリドと反応させて合成することができる。具体的には、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−N−オキシドを、塩化銅(I)の存在下、アセトン及び30%過酸化水素水溶液と反応させ、得られた1−メチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンを、メタクリロイルクロリドと反応させることで合成することができる。
【0040】
本発明で用いる単量体(a2)は、メチルメタクリレートを主成分とする。本発明では、全体に対して50質量%以上であることを「主成分」という。単量体(a2)は、メチルメタクリレートを50質量%以上含有し、75質量%以上含有することが好ましく、90質量%以上含有することがより好ましい。但し、単量体(a2)を100質量%とする。単量体(a2)がメチルメタクリレートを50質量%以上含有すれば、得られる成型体の外観、機械的強度及び耐候性が良好となる。
【0041】
単量体(a2)は、メチルメタクリレート以外の単量体を含有することができる。単量体(a2)は、メチルメタクリレート以外の単量体を50質量%以下含有し、25質量%以下含有することが好ましく、10質量%以下含有することがより好ましい。単量体(a2)が、メチルメタクリレート以外の単量体を50質量以下含有すれば、得られる成型体の外観、機械的強度及び耐候性が良好となる。
【0042】
単量体(a2)が含有するメチルメタクリレート以外の単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル単量体;ビニルトリメトキシシラン等の珪素含有単量体;無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル等のマレイン酸系単量体;フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル等のフマル酸系単量体;マレイミド、N−メチルマレイミド等のマレイミド系単量体;(メタ)アクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン等の架橋性単量体が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。これらの中では、得られる成型体の外観、機械的強度及び耐候性が良好となることから、スチレン等の芳香族ビニル単量体、シアン化ビニル単量体が好ましい。
【0043】
本発明の重合体は、以下の3種類の方法で製造することができる。
方法1:単量体(a1)0.01〜35モル%及び単量体(a2)65〜99.99モル%を含有する単量体混合物を、210℃以下の温度で重合する。
方法2:単量体(a2)単位からなる重合体、単量体(a1)及び単量体(a2)を含有し、単量体(a1)の含有率が0.01〜35モル%である混合物を、210℃以下の温度で重合する。
方法3:単量体(a1)及び単量体(a2)を含有する単量体混合物を210℃以下の温度で重合した重合体と、単量体(a2)とを含有し、単量体(a1)単位の含有率が0.01〜35モル%である混合物を、210℃以下の温度で重合する。
【0044】
以下、方法1について説明する。
【0045】
方法1で用いる単量体混合物は、単量体(a1)0.01〜35モル%及び単量体(a2)65〜99.99モル%を含有する。但し、単量体混合物を100モル%とする。単量体混合物は、単量体(a1)0.03〜1モル%及び単量体(a2)99〜99.97モル%を含有することが好ましい。単量体混合物中の単量体(a1)の含有率が0.01モル%以上であれば、耐候性の向上効果が充分に発現し、35モル%以下であれば、得られる成型体の外観及び機械的強度が良好となる。
【0046】
単量体混合物は210℃以下の温度で重合する。尚、本発明では、重合工程での最高処理温度を「重合温度」という。重合温度は、40〜210℃の範囲であることが好ましく、110〜210℃の範囲であることがより好ましく、110〜180℃の範囲であることが特に好ましい。また、第1段目を40〜90℃、第2段目を100〜140℃とする2段階の重合温度で重合することが特に好ましい。重合温度が210℃以下であれば、単量体(a1)のニトロキサイドに結合しているRが重合時に解離することなく、得られる成型体が着色することがない。また、重合温度が40℃以上であれば、用いた単量体の重合添加率が向上する。
【0047】
単量体混合物の重合方法としては、例えば、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、キャスト重合が挙げられる。これらの中では、成型体が直接得られることから、キャスト重合が好ましい。キャスト重合であれば、射出成型や押出成型等のように、成型体を製造する工程で再び熱をかける必要がなく、単量体(a1)を用いた成型体を、着色なく製造することができる。
【0048】
次に、方法2について説明する。
【0049】
方法2では、先ず、単量体(a2)単位からなる重合体と、別に用意した単量体(a1)及び単量体(a2)を混合して、混合物を得る。方法2で用いる重合体は、単量体(a2)を重合して得られる。単量体(a2)の重合方法は特に限定されるものではなく、公知の重合方法を用いることができる。
【0050】
混合物中の重合体と単量体(a1+a2)の比率は、重合体0.1〜80質量%及び単量体(a1+a2)20〜99.9質量%であることが好ましい。但し、混合物を100質量%とする。混合物は、重合体1〜50質量%及び単量体(a1+a2)50〜99質量%を含有することがより好ましい。混合物中の重合体の含有率が0.1〜80質量%の範囲であれば、混合物の粘度を作業性が良好となる範囲に調整することができる。更に、重合の進行に伴う成型体の体積収縮を抑制することができる。
【0051】
混合物は、単量体(a1)の含有率が0.01〜35モル%であり、その他の成分の含有率が65〜99.99モル%である。但し、混合物中の単量体の全モル数と重合体を構成している単量体単位の全モル数の合計を100モル%とする。混合物は、単量体(a1)0.03〜1モル%及びその他の成分99〜99.97モル%を含有することが好ましい。混合物中の単量体(a1)の含有率が0.01モル%以上であれば、耐候性の向上効果が充分に発現し、35モル%以下であれば、得られる成型体の外観及び機械的強度が良好となる。
【0052】
得られた混合物は、210℃以下の温度で重合する。重合温度の規定は、方法1で示した単量体混合物の重合温度と同様である。混合物の重合方法としては、例えば、溶液重合、懸濁重合、キャスト重合が挙げられる。これらの中では、成型体が直接得られることから、キャスト重合が好ましい。
【0053】
次に、方法3について説明する。
【0054】
方法3では、先ず、単量体(a1)及び単量体(a2)を含有する単量体混合物を210℃以下の温度で重合して得た重合体と、別に用意した単量体(a2)とを混合して、混合物を得る。
【0055】
単量体混合物は210℃以下の温度で重合する。重合温度の規定は、方法1で示した単量体混合物の重合温度と同様である。重合方法は特に限定されるものではない。
【0056】
混合物中の重合体と単量体(a2)の比率は、重合体0.1〜80質量%及び単量体(a2)20〜99.9質量%であることが好ましい。但し、混合物を100質量%とする。混合物は、重合体1〜50質量%及び単量体(a2)50〜99質量%を含有することがより好ましい。混合物中の重合体の含有率が0.1〜80質量%の範囲であれば、混合物の粘度を作業性が良好となる範囲に調整することができる。更に、重合の進行に伴う成型体の体積収縮を抑制することができる。
【0057】
混合物は、必要に応じて、単量体(a2)単位からなる重合体を含有することもできる。
【0058】
混合物は、単量体(a1)単位の含有率が0.01〜35モル%であり、その他の成分の含有率が65〜99.99モル%である。但し、混合物中の単量体の全モル数と重合体を構成している単量体単位の全モル数の合計を100モル%とする。混合物は、単量体(a1)単位0.03〜1モル%及びその他の成分99〜99.97モル%を含有することが好ましい。混合物中の単量体(a1)単位の含有率が0.01モル%以上であれば、耐候性の向上効果が充分に発現し、35モル%以下であれば、得られる成型体の外観及び機械的強度が良好となる。
【0059】
得られた混合物は、210℃以下の温度で重合する。重合温度の規定は、方法1で示した単量体混合物の重合温度と同様である。混合物の重合方法としては、例えば、溶液重合、懸濁重合、キャスト重合が挙げられる。これらの中では、成型体が直接得られることから、キャスト重合が好ましい。
【0060】
キャスト重合の方法について、具体的に記載する。キャスト重合は、単量体混合物に重合開始剤等を添加した後、型内で重合する。方法2及び3で記したように、単量体混合物に替えて、重合体と単量体の混合物を用いてもよい。
【0061】
型内でキャスト重合する際の重合方法としては、例えば、ラジカル重合、アニオン重合が挙げられ、ラジカル重合が好ましい。ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルカーボネート等の有機過酸化物;2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、2,2'−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス−2−メチルブチロニトリル等のアゾ系開始剤が挙げられる。ラジカル重合開始剤の中では、取り扱い性が優れることから、ベンゾイルパーオキサイド、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、t−ヘキシルパーオキシピバレートが好ましい。
【0062】
ラジカル重合開始剤の使用量は、単量体100モルに対して0.001〜1モルが好ましく、0.01〜1モルがより好ましい。
【0063】
キャスト重合する際には、得られる成型体の分子量を調節するため、メルカプタン等の連鎖移動剤を用いてもよい。また、キャスト重合は、酸素不存在雰囲気で行なうことが好ましい。
【0064】
キャスト重合の際には、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、抗菌剤、難燃剤、耐衝撃改質剤、光拡散剤、連鎖移動剤、充填剤、強化剤等の添加剤を配合してもよい。添加剤の配合量は用途により異なるが、全体に対して5質量%以下が好ましい。添加剤の配合量が5質量%以下であれば、得られる成型体のガラス転移温度の低下が小さく、成型体の耐熱性が良好になる。
【0065】
紫外線吸収剤及び光安定剤としては、以下のものが挙げられる。
2−(2'−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール類。例えば、5'メチル−誘導体(チバ・ジャパン(株)製 TV−P)、3',5'−ジ−t−ブチル−、5'−t−ブチル−、5'−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−、5−クロロ−3',5'−ジ−t−ブチル−、5−クロロ−3'−t−ブチル−5'−メチル、3'−s−ブチル−5'−t−ブチル、4'−オクトキシ−、3',5'−ジ−第三アミル−、3',5'−ビス(α,α−ジメチルベンジル)−、3'−t−ブチル−5'−2−(ω−ヒドロキシ−オクタ−(エチレンオキシ)−カルボニルエチル)−、3'−ドデシル−5'−メチル−、3'−t−ブチル−5'−(2−オクチルオキシカルボニル)−エチル、ドデシル化−5'−メチル−誘導体。
2−ヒドロキシ−ベンゾフェノン類。例えば、4−ヒドロキシ−、4−メトキシ−、4−オクトキシ−、4−デシルオキシ−、4−ドデシルオキシ−、4−ベンジルオキシ−、4,2',4'−トリヒドロキシ−、2'−ヒドロキシ−4,4'−ジメトキシ誘導体。
立体障害性アミン類。例えば、セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)((株)ADEKA製 LS770)、セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)(チバ・ジャパン(株)製 TV−292)、ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(チバ・ジャパン(株)製 TV−123)、2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジン(チバ・ジャパン(株)製 TV−152)、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジル)n−ブチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルマロネート、1−ヒドロキシエチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンとコハク酸との縮合生成物、N,N'−ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)ヘキサメチレンジアミンと4−第三オクチルアミノ−2,6−ジクロロ−s−トリアジンとの縮合生成物、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ニトリロトリアセテート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸、1,1'−(1,2−エタンジイル)−ビス(3,3,5,5−テトラメチルピペラジノン)。
ヒドロキシフェニル−s−トリアジン類。例えば、2,6−ビス−(2,4−ジメチルフェニル)−4−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−s−トリアジン、2,6−ビス−(2,4−ジメチルフェニル)−4−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−s−トリアジン、2,4−ビス−(2,4−ジヒドロキシフェニル)−6−(4−クロロフェニル)−s−トリアジン、2,4−ビス−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−6−(4−クロロフェニル)−s−トリアジン、2,4−ビス−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−6−フェニル−s−トリアジン、2,4−ビス−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−6−(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン、2,4−ビス−〔2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル〕−6−(4−ブロモフェニル)−s−トリアジン、2,4−ビス−〔2−ヒドロキシ−4−(2−アセトキシエトキシ)フェニル〕−6−(4−クロロフェニル)−s−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)−6−(2,4−ジメチルフェニル)−s−トリアジン。
その他、2−ヒドロキシ−ベンゾフェノン誘導体、ニッケル化合物、シュウ酸ジアミド類。
【0066】
酸化防止剤としては、以下のものが挙げられる。
アルキル化モノフェノール類。例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−t−ブチル−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−n−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−イソブチルフェノール、2,6−ジシクロペンチル−4−メチルフェノール、2−(α−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジメチルフェノール、2,6−ジオクタデシル−4−メチルフェノール、2,4,6−トリシクロヘキシルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシメチルフェノール。
アルキル化ハイドロキノン類。例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メトキシフェノール、2,5−ジ−t−ブチルハイドロキノン、2,5−ジ−第三アミルハイドロキノン、2,6−ジ−フェニル−4−オクタデシルオキシフェノール。
その他、ヒドロキシル化ジチオフェニルエーテル類、アルキリデンビスフェノール類、ベンジル化合物、アシルアミノフェノール類。
【0067】
型としては、例えば、強化ガラス、クロムメッキ板、ステンレス板等の板状体と、軟質塩化ビニル等のガスケットで構成したもの;相対して同一方向へ同一速度で走行する2枚のエンドレスベルトと、エンドレスベルトの相対する面側の両端部においてエンドレスベルトと同一速度で走行するガスケットで構成したものが挙げられる。
【0068】
キャスト重合の後、得られた成型体を型から取り出す際の温度(以下、「剥離温度」という。)は、70〜110℃の範囲が好ましい。剥離温度の下限値は、75℃以上がより好ましく、80℃以上が更に好ましい。剥離温度が70℃以上であれば、成型体を型から取り出す際に、表面に傷が付き難い。また、剥離温度が110℃以下であれば、成型体表面にスジ状の欠陥を生じることがない。
【0069】
成型体が板状物である場合、その厚さは0.5〜15mmの範囲内であることが好ましい。
【0070】
成型体は、数平均分子量が1000〜100万の重合体で構成されることが好ましく、数平均分子量が2000〜50万の重合体で構成されることがより好ましい。成型体を構成する重合体の数平均分子量が1000以上であれば、重合体の揮発が抑制される。
【0071】
本発明の成型体は高い耐候性を有することから、建材等、屋外で使用される物品として有用であり、特に太陽光発電モジュール用トップカバーとして有用である。
【0072】
太陽光発電モジュールの最表面(受光面側)を被うトップカバーに用いられる材料は、硝子板と透明樹脂板が主流である。トップカバーに透明樹脂板を用いた場合には、硝子板を用いた場合に比べてモジュールの軽量化が可能になるという利点がある。しかし、従来の透明樹脂板では、長期間の使用により樹脂が劣化し、透明性の低下による発電効率の低下が生じるという問題があった。本発明の成型体は高い耐候性を有することから、太陽光発電モジュール用トップカバーとして用いた場合、長期間の使用によっても樹脂が劣化することがなく、透明性の低下による発電効率の低下を生じることがない。本発明の太陽光発電モジュール用トップカバーは、公知の太陽電池に用いることができる。
【実施例】
【0073】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、実施例中の「部」及び「%」は、「質量部」及び「質量%」を表す。
【0074】
(1)単量体(a1)の同定
単量体(a1)の構造の確認には、H−NMR JNM−EX270(日本電子(株)製、商品名)を用いた。単量体(a1)を重水素化クロロホルムに溶解させ、ピークの積分強度及びピーク位置から、化合物を同定した。測定温度は25℃、積算回数は16回である。
【0075】
(2)重合転化率
単量体の重合転化率の確認には、H−NMR JNM−EX270(日本電子(株)製、商品名)を用いた。単量体(a1)とメチルメタクリレートとの共重合では、単量体と重合体由来のアルコキシル基の水素と、単量体由来のC−C二重結合の水素に帰属されるピークの積分比から重合転化率を計算した。
【0076】
(3)外観
成型体を目視で観察し、着色の有無を判断した。
【0077】
(4)ガラス転移温度(Tg)
Tgは、SIIナノテクノロジー社製、DSC6220(商品名)を使用した。測定は窒素雰囲気下、200℃で3分間メルトクエンチし、20℃から250℃まで、10℃/分で昇温した。
【0078】
(5)数平均分子量(Mn)及び分子量分布(PDI)
GPC(東ソー(株)製、HLC−8220(商品名)、カラム:TSK GUARD COLUMN SUPER HZ−L(4.6×35mm)、TSK−GEL SUPER HZM−N(6.0×150mm)×2直列接続、溶離液:クロロホルム、測定温度:40℃、流速:0.6mL/分)を用い、ポリメチルメタクリレートをスタンダードとして測定した。
【0079】
(6)耐候性試験(条件1)
成型体を40mm×40mmに切断し、表面を中性洗剤で洗浄後、メタルウェザー KU−R5N−A(ダイプラ・ウィンテス社製、商品名)により、照射強度80mw/cm、63℃で344時間、耐候性試験を行なった。耐候性試験前後の透過スペクトルを、分光光度計 MCPD−3000(大塚電子(株)製、商品名)により測定し、黄色度を測定した。測定値は、以下の式に従い、サンプルの厚さにより補正を行なった。
黄色度(補正値)=黄色度(測定値)/板厚(mm)
また、耐候性試験前後の黄色度(補正値)の差を求め、黄色度の「変位」とした。
【0080】
(7)耐候性試験(条件2)
成型体を30mm×30mmに切断し、表面を中性洗剤で洗浄後、メタルウェザー KW−R5TP−A(ダイプラ・ウィンテス社製、商品名)により、照射強度110mw/cm、65℃で16時間保持した後、照射強度0mw/cm、65℃で2時間保持し、その後、試験片表面を10秒間水洗し、照射強度0mw/cm、30℃で6時間保持し、試験片表面を10秒間水洗する工程を18回繰り返し、432時間の耐候性試験を行なった。耐候性試験前後の透過スペクトルを、分光光度計 MCPD−3000(大塚電子(株)製、商品名)により測定し、黄色度を測定した。測定値は、以下の式に従い、サンプルの厚さにより補正を行なった。
黄色度(補正値)=黄色度(測定値)×3/板厚(mm)
また、耐候性試験前後の黄色度(補正値)の差を求め、黄色度の「変位」とした。
【0081】
(合成例1)単量体(a1−1)の合成
テトラヒドロフラン(THF)200mL中、トリエチルアミン30.3g(300mmol)及び、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシド(TEMPOL)34.4g(200mmol)が溶解した溶液に、無水酢酸25.5g(250mmol)を0℃で添加した。25℃に昇温して12時間反応させた後、回転エバポレーターで濃縮した。残渣を氷水1リットルに投入し、析出した橙色固体を濾取して、4−アセチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシド33.8gを得た。
【0082】
4−アセチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシド21.4g(100mmol)を、オクタン200mLに溶解し、酸化モリブデン(VI)0.9g(6mmol)を加え、加熱還流して脱水した。共沸により脱水しつつ、t−ブチルハイドロパーオキサイド70%水溶液19.2g(150mmol)を9時間かけて滴下し、反応させた。室温まで冷却後、飽和重亜硫酸ナトリウム水溶液30mlを徐々に加え、未反応の過酸化物を失活させた。有機層を回転エバポレーターで濃縮した後、残渣をエタノール100mLに溶解させ、6.7g(150mmol)の水酸化カリウムを加えて、25℃で2時間反応させた。
【0083】
混合物を回転エバポレーターで濃縮し、残渣に水200mLを加え、総計200mLのジクロロメタンを用いて抽出した。有機層を回転エバポレーターで濃縮した後、ジクロロメタン20mL及びトリエチルアミン10mLに溶解させ、メタクリロイルクロリド10.5g(100mmol)を、0℃で添加し、1時間反応させた。混合物を回転エバポレーターで濃縮し、残渣に水200mLを加え、総計200mLの酢酸エチルを用いて抽出した。有機層を回転エバポレーターで濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=20/1 体積比)によって精製し、無色の液体を26.3g得た(収率74.4%)。
【0084】
H−NMRの測定により、生成物が単量体(a1−1)であることを確認した。
H−NMR(CDCl):δ(ppm):0.89(m、6H),1.17(m、10H),1.18(s、6H),1.21(s、6H),1.61(m、2H),1.85(m、2H),1.92(s、3H),3.60−3.93(m、1H),5.07(m、1H),5.53(s、1H),6.03(s、1H)
【0085】
単量体(a1−1)の構造を、下記式(4)に示す。
【化7】
【0086】
(式(4)中、Ocは下式(5)〜(7)の構造である。以下、下式(5)〜(7)を「Oc」と表す。)
【0087】
【化8】
【0088】
【化9】
【0089】
【化10】
【0090】
(合成例2)単量体(a1−2)の合成
ジクロロメタン100mL中、トリエチルアミン48.6g(480mmol)及び、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシド(TEMPOL)68.9g(400mmol)が溶解した溶液に、トリメチルシリルクロリド47.8g(440mmol)を0℃で添加した。25℃に昇温して2時間反応させた後、回転エバポレーターで濃縮した。残渣に水500mlを加え、総計500mlの酢酸エチルを用いて抽出した。有機層を回転エバポレーターで濃縮し、残渣をヘキサンに溶解し、再結晶により、4−トリメチルシリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシド96.2gを得た。
【0091】
切削屑状マグネシウム4.6g(190mmol)、脱水THF100ml、ヨウ素10mgを反応容器に入れ、容器内をアルゴンで置換した後、1−ブロモプロパン23.4g(190mmol)を、容器内の温度を55℃から65℃に保ちつつ滴下し、Grignard反応剤を調製した。
【0092】
別の反応容器中で、4−トリメチルシリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシド96.2g(394mmol)を、脱水THF100mlに溶解し、調製したGrignard反応剤を0℃で滴下した。3時間反応させた後、溶液を回転エバポレーターで濃縮した。残渣に500mlの水を加え、総計500mlの酢酸エチルで抽出し、有機層を回転エバポレーターで濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=20/1 体積比))によって精製し、1−(1−プロピル)オキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−トリメチルシリルオキシピペリジン38.5gを得た。
【0093】
1−(1−プロピル)オキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−トリメチルシリルオキシピペリジン38.5gをメタノール300mlに溶解し、炭酸カリウム0.14g(0.1mmol)を加えて3時間反応させた後、溶液を回転エバポレーターで濃縮した。残渣に水300mlを加え、総計300mlの酢酸エチルで抽出した。有機層を回転エバポレーターで濃縮し、残渣をジクロロメタン20ml、トリエチルアミン20mlに溶解し、メタクリロイルクロリド14.1g(135mmol)を0℃で滴下した。1時間反応させた後、析出したトリエチルアミン塩酸塩を濾別し、溶液を回転エバポレーターで濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=20/1 体積比)によって精製し、無色の液体を29.7g得た(収率26.2%)。
【0094】
H−NMRの測定により、生成物が単量体(a1−2)であることを確認した。
H−NMR(CDCl):δ(ppm):0.94(t、3H),1.21(s、12H),1.53(m、2H),1.61(m、2H),1.86(m、2H),1.92(s、3H),3.70(t、2H),5.07(m、1H),5.53(s、1H),6.06(s、1H)
【0095】
単量体(a1−2)の構造を、下記式(8)に示す。
【0096】
【化11】
【0097】
(合成例3)単量体(a1−3)の合成
THF100mL中、トリエチルアミン20.2g(200mmol)及び、2,2,6,6−テトラメチル−4−(2−(2−ヒドロキシ)エトキシ)エトキシピペリジン−N−オキシド26.0g(100mmol)が溶解した溶液に、無水酢酸12.3g(120mmol)を0℃で添加した。25℃に昇温して12時間反応させた後、回転エバポレーターで濃縮した。残渣に水500mlを加え、総計500mlの酢酸エチルを用いて抽出した。有機層を回転エバポレーターで濃縮した後、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=1/1 体積比)によって精製し、2,2,6,6−テトラメチル−4−(2−(2−アセチルオキシ)エトキシ)エトキシピペリジン−N−オキシド5.6g(22mmol)を得た。
【0098】
2,2,6,6−テトラメチル−4−(2−(2−アセチルオキシ)エトキシ)エトキシピペリジン−N−オキシド3.0g(10mmol)を、オクタン100mLに溶解し、酸化モリブデン(VI)0.07g(0.5mmol)を加え、加熱還流して脱水した。共沸により脱水しつつ、t−ブチルハイドロパーオキサイド70%水溶液12.8g(100mmol)を6時間かけて滴下し、反応させた。室温まで冷却後、飽和重亜硫酸ナトリウム水溶液20mlを徐々に加え、未反応の過酸化物を失活させた。有機層を回転エバポレーターで濃縮した後、残渣をエタノール15mLに溶解させ、0.6g(15mmol)の水酸化ナトリウムを加えて、25℃で2時間反応させた。
【0099】
混合物を回転エバポレーターで濃縮し、残渣に水100mLを加え、総計100mLのジクロロメタンを用いて抽出した。有機層を回転エバポレーターで濃縮した後、トリエチルアミン10mLに溶解させ、メタクリロイルクロリド1.1g(10mmol)を、0℃で添加し、1時間反応させた。混合物を回転エバポレーターで濃縮し、残渣に水50mLを加え、総計50mLの酢酸エチルを用いて抽出した。有機層を回転エバポレーターで濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=3/1 体積比)によって精製し、無色の液体を1.9g(3.1mmol)得た(収率3.1%)。
【0100】
H−NMRの測定により、生成物が単量体(a1−3)であることを確認した。
H−NMR(CDCl):δ(ppm):0.89(m、6H),1.14(s、12H),1.28(m、10H),1.35−1.47(m、2H),1.63−1.84(m、2H),1.95(s、3H),3.54−3.87(m、2H),3.61(m、4H),3.75(t、2H),4.30(t、2H),5.57(s、1H),6.14(s、1H)
【0101】
単量体(a1−3)の構造を、下記式(9)に示す。
【0102】
【化12】
【0103】
(合成例4)単量体(a1−4)の合成
合成例1に記載の方法で合成した4−アセチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシド6.4g(30mmol)を、オクタン100mLに溶解し、酸化モリブデン(VI)0.1g(0.7mmol)を加え、加熱還流して脱水した。共沸により脱水しつつ、t−ブチルハイドロパーオキサイド70%水溶液12.8g(100mmol)を6時間かけて滴下し、反応させた。室温まで冷却後、飽和重亜硫酸ナトリウム水溶液50mlを徐々に加え、未反応の過酸化物を失活させた。有機層を回転エバポレーターで濃縮した後、残渣をエタノール50mLに溶解させ、2.8g(50mmol)の水酸化カリウムを加えて、25℃で4時間反応させた。
【0104】
混合物を回転エバポレーターで濃縮し、残渣に水100mLを加え、総計100mLのジクロロメタンを用いて抽出した。有機層を回転エバポレーターで濃縮した。残渣に、テトラヒドロフラン20ml、トリエチルアミン4.0g(40mmol)、無水コハク酸3.0g(30mmol)を加え、70℃にて4時間撹拌を続けた。4時間後、回転エバポレーターで濃縮し、残渣に飽和塩化アンモニウム水溶液を100ml加え、総計100mlの酢酸エチルで抽出した。
【0105】
有機層を回転エバポレーターで濃縮し、残渣に2−ヒドロキシエチルメタクリレート3.9g(30mmol)、N,N'−ジメチル−4−アミノピリジン0.24g(2mmol)、ジクロロメタン5mlを加え、0℃において、N,N'−ジシクロヘキシルカルボジイミド6.2g(30mmol)をジクロロメタン20mlに溶解した溶液を滴下し、4時間反応させた。4時間後、析出した固体を濾別し、濾液を回転エバポレーターで濃縮した。残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=5/1 体積比)によって精製し、無色の液体を5.58g得た(収率56.1%)。
【0106】
H−NMRの測定により、生成物が単量体(a1−4)であることを確認した。
H−NMR(CDCl):δ(ppm):0.89(m、6H),1.15(s、6H),1.18(s、6H),1.29(m、10H),1.30−1.41(m、2H),1.59−1.82(m、2H),1.95(s、3H),2.62(m、4H),3.73(m、1H),4.35(s、4H),5.02(m、1H),5.60(s、1H),6.13(s、1H)
【0107】
単量体(a1−4)の構造を、下記式(10)に示す。
【0108】
【化13】
【0109】
(合成例5)単量体(a1−5)の合成
2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−N−オキシド17.8g(100mmol)をアセトン100mlに溶解し、30%過酸化水素水溶液34g(300mmol)を10分以上かけてゆっくり添加した。5℃まで冷却しながら、塩化銅(I)0.49g(5.0mol%)を添加し、反応混合物の温度を5℃から55℃の間に保持した。15分後、35%塩酸を0.5g添加し、反応混合物を室温において2時間撹拌した。2時間後、4mol/Lの重亜硫酸ナトリウム水溶液50ml、飽和炭酸水素カリウム水溶液100mlを加え、300mlの酢酸エチルで抽出した。有機層を回転エバポレーターで濃縮し、1−メチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンを得た。
【0110】
得られた1−メチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジンをジクロロメタン50ml、トリエチルアミン50mlに溶解し、メタクリロイルクロリド10.4g(100mmol)を0℃にてゆっくり添加した。徐々に室温まで昇温しつつ、1時間反応させた。1時間後、反応混合物を回転エバポレーターで濃縮し、残渣に水300mlを加え、酢酸エチル300mlで抽出した。有機層を回転エバポレーターで濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=10/1体積比)によって精製して、無色の液体を19.0g得た(収率74.3%)。
【0111】
H−NMRの測定により、生成物が単量体(a1−5)であることを確認した。
H−NMR(CDCl):δ(ppm):1.19(s、6H),1.23(s、6H),1.60(m、2H),1.87(m、2H),1.92(s、3H),3.62(s、3H),5.07(m、1H),5.53(s、1H),6.06(s、1H)
【0112】
単量体(a1−5)の構造を、下記式(11)に示す。
【0113】
【化14】
【0114】
(合成例6)単量体(a1−6)の合成
合成例1に記載の方法で合成した、4−アセチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシド4.3g(20mmol)をクメン200mlに溶解し、t−ブチルパーオキサイド11.7g(80mmol)をゆっくり添加した。30分間窒素バブリングした後、Heraeus社製UV理化学反応装置(System1)に移した。TQ150型のランプを用いて10分間光照射を行ない、反応させた。反応混合物を回転エバポレーターで濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=5/1体積比)によって精製して、1−クミルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−アセチルオキシピペリジン5.5gを得た(収率82.3%)。
【0115】
得られた1−クミルオキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−アセチルオキシピペリジンをメタノール30mlに溶解し、水酸化ナトリウム1.0g(25mmol)を加えて室温で40分間撹拌した。残渣に水100mlを加え、200mlの酢酸エチルで抽出した。有機層を回転エバポレーターで濃縮し、残渣を4mlのトリエチルアミンに溶解した。メタクリロイルクロリド1.9g(18mmol)を0℃にてゆっくり添加し、徐々に室温まで昇温しつつ、1時間反応させた。1時間後、反応混合物を回転エバポレーターで濃縮し、残渣に水100mlを加え、酢酸エチル200mlで抽出した。有機層を回転エバポレーターで濃縮し、残渣をカラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル=10/1体積比)によって精製して、無色の結晶を3.5g得た。(収率65.3%)
【0116】
H−NMRの測定により、生成物が単量体(a1−6)であることを確認した。
H−NMR(CDCl):δ(ppm):0.89(s、6H),1.21(s、6H),1.56(t、2H),1.61(s、6H),1.87(m、2H),1.91(s、3H),5.06(m、1H),5.52(s、1H),6.05(s、1H),7.20(t、1H),7.30(t、2H),7.47(d、2H)
【0117】
単量体(a1−6)の構造を、下記式(12)に示す。
【0118】
【化15】
【0119】
(製造例1)単量体(a1−1)とメチルメタクリレートの共重合体(b−1)
単量体(a1−1)17.7g(50mmol)、メチルメタクリレート(MMA)45.1g(450mmol)、オクチルメルカプタン0.6g、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.3gを、トルエン200mlに溶解し、75℃にて、窒素雰囲気下で4時間重合した。得られた重合体溶液をメタノールで再沈殿し、85℃で減圧乾燥し、重合体(b−1)を得た。重合体(b−1)は、Mn1.68万、PDI1.44であり、収量35.7gであった(収率56.9%)。
【0120】
(製造例2)単量体(a1−2)とMMAの共重合体(b−2)
単量体(a1−2)12.8g(50mmol)、MMA45.1g(450mmol)、オクチルメルカプタン0.6g、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.3gを、トルエン200mlに溶解し、75℃にて、窒素雰囲気下で4時間重合した。得られた重合体溶液をメタノールで再沈殿し、85℃で減圧乾燥し、重合体(b−2)を得た。重合体(b−2)は、Mn1.89万、PDI1.39であり、収量27.7gであった(収率47.9%)。
【0121】
(製造例3)単量体(a1−2)とMMAの共重合体(b−3)
単量体(a1−2)7.7g(30mmol)、MMA27.0g(270mmol)、オクチルメルカプタン0.6g、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.16gを、トルエン100mlに溶解し、75℃にて、窒素雰囲気下で4時間重合した。得られた重合体溶液をメタノールで再沈殿し、85℃で減圧乾燥し、重合体(b−3)を得た。重合体(b−3)は、Mn0.83万、PDI1.66であり、収量22.1gであった(収率63.8%)。
【0122】
(製造例4)単量体(a1−2)とMMAの共重合体(b−4)
単量体(a1−2)7.7g(30mmol)、MMA27.0g(270mmol)、オクチルメルカプタン1.5g、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル0.16gを、トルエン100mlに溶解し、75℃にて、窒素雰囲気下で4時間重合した。得られた重合体溶液をメタノールで再沈殿し、85℃で減圧乾燥し、重合体(b−4)を得た。重合体(b−4)は、Mn0.52万、PDI1.42であり、収量19.8gであった(収率57.1%)。
【0123】
(実施例1〜3)
MMA、単量体(a1)を、表1に記載の比率で混合して単量体混合物とした。単量体混合物中の単量体(a1)の含有率(モル%)を表1に示す。単量体混合物に、重合開始剤としてt−ヘキシルパーオキシピバレートを0.35部、離型剤としてスルホコハク酸ジ(2−エチルヘキシル)ナトリウム0.015部を添加した。この混合物を減圧脱気した後、ポリ塩化ビニル製ガスケットを介して1.2mmの間隔で相対する2枚の強化ガラス板で形成した型に注入した。
【0124】
型を80℃の温水中に30分間浸漬して第1段目の重合を行ない、130℃の空気加熱炉中で30分間熱処理して第2段目の重合を行なった。80℃に冷却した後、型枠を脱枠して板厚1.0±0.2mmの成型体(1)〜(3)を得た。
【0125】
成型体(1)〜(3)の重合転化率、外観、耐候性試験(条件1)による黄色度を表1に示す。尚、実施例3は、耐候性試験を実施していない。
【0126】
(比較例1〜5)
単量体(a1)を用いず、表1に示したHALSを用いたこと以外は、実施例1と同様にして、成型体(4)〜(8)を得た。成型体(4)〜(8)の重合転化率、外観、耐候性試験(条件1)による黄色度を表1に示す。
【0127】
【表1】
【0128】
表1中の略号:
LA−87:2,2,6,6−テトラメチル−4−メタクリロイルオキシピペリジン((株)ADEKA製 LA−87)
LA−82:1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−メタクリロイルオキシピペリジン((株)ADEKA製 LA−82)
LS770:セバシン酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)((株)ADEKA製 LS770)
TV−292:セバシン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)(チバ・ジャパン(株)製 TV−292)
*LS−770、TV−292は、ピペリジン骨格を有するヒンダードアミン構造(以下、「HALS部位」という。)を分子内に2つ持つため、HALS部位として0.10モル%添加されている。
【0129】
(実施例4〜25、比較例6〜11)
表2及び表3に示した各原料を用い、強化ガラス板の間隔を3.6mmとし、t−ヘキシルパーオキシピバレートの量を0.19部とする以外は、実施例1と同様にして、板厚3.0±0.2mmの成型体(9)〜(36)を得た。
【0130】
成型体(9)〜(36)の重合転化率、外観、Tg、耐候性試験(条件2)による黄色度を表2及び表3に示す。尚、Tg及び耐候性試験の結果を示していない箇所は、未測定である。
【0131】
【表2】
【0132】
【表3】
【0133】
表2及び3中の略号:
PMMA:MMA重合体(三菱レイヨン(株)製、VHK000)
TV−123:ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(チバ・ジャパン(株)製 TV−123)
TV−152:2,4−ビス[N−ブチル−N−(1−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ]−6−(2−ヒドロキシエチルアミン)−1,3,5−トリアジン(チバ・ジャパン(株)製 TV−152)
TV−P:2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール(チバ・ジャパン(株)製 TV−P)
* TV−123,TV−152は、HALS部位を分子内に2つ持つため、HALS部位のモル数は添加モル数の2倍である。
** 成型体26は、着色に加えて、濁りが見られた(比較例9)。
【0134】
(実施例26〜29、比較例12〜18)
表4に示した各原料を用い、第2段目の重合温度を130℃×30分に替えて、表4に記載の重合温度×30分としたこと以外は、実施例4と同様にして、成型体を得た。
得られた成型体の透過スペクトルを、分光光度計 MCPD−3000(大塚電子(株)製、商品名)により測定し、黄色度を測定した。測定値は、以下の式に従い、サンプルの厚さにより補正を行なった。
黄色度(補正値)=黄色度(測定値)×3/板厚(mm)
成型体の外観、黄色度を表4に示す。
【0135】
(参考例1〜3)
表4に示した各原料を混合して混合体を得た。混合体に重合開始剤としてt−ヘキシルパーオキシピバレート0.35部を添加した。これを、ガラス性容器に投入し、減圧脱気した後、容器内を窒素置換し、80℃で2時間加熱して重合した。得られた重合体を適宜切断した後、小型射出成型機 CS−183−MMX(カスタム・サイエンティフィック・インスツルメンツ社製)に供給し、シリンダー温度260℃の条件で10分間保持した後、10mm×20mm×2mmの金型を用いて、金型温度60℃にて射出成型し、成型体を作製した。
得られた成型体の透過スペクトルを、実施例26と同様に測定し、黄色度(補正値)を求めた。参考例1〜3では、補正により、成型体の板厚3mm相当での黄色度を求めた。
射出成型で作成した成型体の外観、黄色度を表4に示す。
【0136】
【表4】
【0137】
表4中の略号:
PMMA:MMA重合体(三菱レイヨン(株)製、VHK000)
TV−123:ビス(1−オクチルオキシ−2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート(チバ・ジャパン(株)製 TV−123)
* TV−123は、HALS部位を分子内に2つ持つため、HALS部位として0.30モル%添加されている。
【0138】
(実施例30〜37)
表5に示した各原料を用い、実施例4と同様にして、板厚3.0±0.2mmの成型体(51)〜(58)を得た。
得られた成型体の透過スペクトルを、実施例26と同様に測定し、黄色度(補正値)を求めた。
成型体(51)〜(58)の重合転化率、外観、黄色度を表5に示す。
【0139】
【表5】
【0140】
表5中の略号:
PMMA:MMA重合体(三菱レイヨン(株)製、VHK000)
【0141】
表1〜5から明らかなように、本発明の製造方法で得られた成型体は、黄色度が低く、外観が良好であった。一方、210℃を超える温度で重合した成型体の中で、単量体(a1)を用いたものは、成型体の黄色度が高く、外観が不良であった(比較例12)。210℃を超える温度で射出成型して得た成型体の中で、単量体(a1)を用いたものは、成型体の黄色度が高く、外観が不良であった(参考例1、2)。本発明の単量体(a1)とは異なる構造の、単量体(a1−6)を用いた成型体は、重合温度が130℃であっても、成型体の黄色度が高く、外観が不良であった(比較例6)。
【0142】
表1〜3から明らかなように、本発明の製造方法で得られた成型体は、耐候性試験前後での黄色度の変位が小さく、良好な耐候性を示した。一方、単量体(a1)を用いなかったものは、耐侯性試験前後での黄色度の変位が大きく、耐侯性が不良であった(比較例1〜5、7、8、10、11)。
【0143】
表2から明らかなように、非重合性のNOR−HALSであるTV−123又はTV152を用いた成型体(比較例7、8、10)は、重合性NOR−HALSである単量体(a1)を用いた成型体のうち、HALS部位を同じモル量含有するもの(実施例5、6)に比べて、耐候性試験前後での黄色度の変位が大きく、耐候性が不良であった。
【0144】
表2から明らかなように、本発明の製造方法で得られた成型体(実施例7、14)は、非重合性のNOR−HALSであるTV123を含有する成型体(比較例9)に比べてTgの低下が少なく、耐熱性が良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明の製造方法は、重合性NOR−HALSの分解による着色を生じることなく、耐候性に優れ、その効果が経時的に低下しない成型体を製造することができる。本発明で製造される成型体は、建材等、屋外で使用される物品として有用であり、特に太陽光発電モジュール用トップカバーとして有用である。