(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747693
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】フライトコンベア
(51)【国際特許分類】
B65G 19/22 20060101AFI20150625BHJP
B65G 19/10 20060101ALN20150625BHJP
【FI】
B65G19/22 Z
!B65G19/10
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-148813(P2011-148813)
(22)【出願日】2011年7月5日
(65)【公開番号】特開2013-14411(P2013-14411A)
(43)【公開日】2013年1月24日
【審査請求日】2013年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089222
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 康伸
(74)【代理人】
【識別番号】100134979
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 博
(74)【代理人】
【識別番号】100175400
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 伸
(72)【発明者】
【氏名】永元 良治
【審査官】
加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】
実公昭57−042890(JP,Y2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 19/00−19/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、該ケーシングに収められたチェーンと、該チェーンに取り付けられたフライトとを備えるフライトコンベアであって、
前記フライトに取り付けられたフライトシューと、
前記チェーンの蛇行を抑制するように前記フライトシューを案内するシューガイドと、
前記シューガイドを前記ケーシングに取り付ける取付金具と、を備え、
前記シューガイドおよび前記取付金具は、所定長さを有するユニットとして構成されており、
複数の前記ユニットが長さ方向に並んで前記ケーシングに取り付けられている
ことを特徴とするフライトコンベア。
【請求項2】
前記ユニットは、前記シューガイドおよび前記取付金具に加え、前記チェーンの浮き上がりを防止する浮上り防止ガイドから構成されている
ことを特徴とする請求項1記載のフライトコンベア。
【請求項3】
前記フライトシューは、前記チェーンの蛇行が抑制される程度に該チェーンの長手方向に所定間隔を空けて、前記フライトに取り付けられている
ことを特徴とする請求項1または2記載のフライトコンベア。
【請求項4】
前記フライトシューは、前記フライトに着脱容易に取り付けられている
ことを特徴とする請求項1、2または3記載のフライトコンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライトコンベアに関する。さらに詳しくは、精鉱を搬送する際に使用されるフライトコンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、銅精鉱には水分が10重量%程度含まれているため、銅精鉱を乾燥させて水分1重量%以下の乾燥精鉱とした後に、この乾燥精鉱を用いて熔錬が行われる(例えば、特許文献1)。
例えば、
図10に示すように、水分10重量%程度の銅精鉱はロータリースチームドライヤーなどの乾燥設備1に装入され、水分1重量%以下まで乾燥されて乾燥精鉱となる。乾燥精鉱はシュート2を通ってフライトコンベア3に装入され、フライトコンベア3によって流送設備4まで搬送される。そして、乾燥精鉱は流送設備4によって精鉱ビン5に流送され蓄積された後に、熔錬炉6に供給される。
ここで、流送設備4は乾燥精鉱を気流で搬送するため、流送設備4と接続されているフライトコンベア3はケーシングで囲まれた気密構造となっている。また、フライトコンベア3には、乾燥精鉱とともに、乾燥設備1からの水蒸気も装入される。そのため、フライトコンベア3はバグフィルター7と接続されており、ケーシング中に浮遊している乾燥精鉱の粉塵とともに水蒸気がバグフィルター7に吸引されるようになっている。そして、バグフィルター7に吸引された水蒸気は系外に排出され、乾燥精鉱の粉塵は再びフライトコンベア3に戻されるようになっている。
【0003】
図11に示すように、フライトコンベア3は、上記ケーシング110と、そのケーシング110に収められた2条のチェーン120,120と、その2条のチェーン120,120に架け渡された多数のフライト130とから構成されている。ケーシング110は、上面111と底面112と側壁113,113とからなる断面視四角形の筒状に構成されている。チェーン120は、
図11における上下に位置するチェーン120が1本の環状のチェーン120となっており、一対のスプロケット(図示せず)に巻き掛けられている。そして、一方のスプロケットが回転駆動することによりチェーン120が進行し、それにともなってフライト130が進行するようになっている。具体的には、ケーシング110の下方に位置するフライト130が、シュート2から流送設備4の方向へと進行し、シュート2を通って装入された乾燥精鉱をフライト130で押して流送設備4まで搬送するようになっている。そして、流送設備4まで進行したフライト130はケーシング110の上方を、流送設備4からシュート2の方向へと進行して循環されている。
【0004】
ところで、フライトコンベア3で乾燥精鉱を搬送する際には、フライト130が乾燥精鉱の抵抗により浮き上がり、それにつられてチェーン120も浮き上がる恐れがある。そのため、
図12に示すように、底面112上を進行するチェーン120の上方には浮上り防止ガイド150が設けられている。浮上り防止ガイド150はチェーン120の長手方向に長尺の板部材であり、側壁113に取り付けられたライナ114にL字金具140を介して取り付けられている。
この浮上り防止ガイド150がチェーン120の上方に設けられることにより、浮き上がったチェーン120を下方へ押さえることができ、チェーン120およびフライト130が浮き上がることを防止できる。
なお、ライナ114は、側壁113を肉厚にすることにより、チェーン120の側面が側壁113に接触してケーシング110に穴があくことを防止するために設けられている。
【0005】
フライトコンベア3に装入された乾燥精鉱の大部分は、フライト130に押されて流送設備4まで搬送されるが、乾燥精鉱の一部はチェーン120と側壁113との間の空間Sに漏れ出る。そして、ケーシング110は気密構造であるので、一度その空間Sに漏れ出た乾燥精鉱は、空間Sから排出され難く滞留してしまう。そうすると、空間Sに滞留した乾燥精鉱はケーシング110内の水蒸気を吸湿して底面112やライナ114に付着する。さらに、チェーン120が蛇行して側壁113に接近すると、その付着物がチェーン120の側面により押し固められ、非常に硬い固着物Xとなる。この固着物Xは居付きと称され、底面112とライナ114との入隅に断面視三角形に成長する。
【0006】
居付きXが発生した状態では、チェーン120が蛇行して側壁113に接近すると、チェーン120の側面が居付きXと接触するようになり、居付きXによりチェーン120が摩耗して強度が不足するという問題がある。そうすると、チェーン120の寿命が短くなり、チェーン120を交換するために頻繁に運転を停止する必要があるので、操業効率が悪くなり、また交換にかかる費用が高くなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9−53128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、チェーンの蛇行を抑制し、チェーンの寿命を長くできるフライトコンベアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明のフライトコンベアは、ケーシングと、該ケーシングに収められたチェーンと、該チェーンに取り付けられたフライトとを備えるフライトコンベアであって、前記フライトに
取り付けられたフライトシュー
と、前記チェーンの蛇行を抑制するように前記フライトシューを案内するシューガイド
と、前記シューガイドを前記ケーシングに取り付ける取付金具と、を備え、前記シューガイドおよび前記取付金具は、所定長さを有するユニットとして構成されており、複数の前記ユニットが長さ方向に並んで前記ケーシングに取り付けられていることを特徴とする。
第2発明のフライトコンベアは、第1発明において、前記ユニットは、前記シューガイドおよび前記取付金具に加え、前記チェーンの浮き上がりを防止する浮上り防止ガイドから構成されていることを特徴とする。
第3発明のフライトコンベアは、第1または第2発明において、前記フライトシューは、前記チェーンの蛇行が抑制される程度に該チェーンの長手方向に所定間隔を空けて、前記フライトに取り付けられていることを特徴とする。
第4発明のフライトコンベアは、第1、第2または第3発明において、前記フライトシューは、前記フライトに着脱容易に取り付けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1発明によれば、フライトシューがシューガイドに案内されることにより、チェーンの蛇行を抑制することができる。そのため、チェーンの側面がケーシングに発生した精鉱の居付きに接触し摩耗することを抑制でき、チェーンの寿命を長くできる。
また、シューガイドおよび取付金具がユニットとして構成されているので、シューガイドの交換等のメンテナンスが行いやすくなる。
第2発明によれば、浮上り防止ガイドにより、精鉱の抵抗により浮き上がるチェーンを下方へ押さえることができ、チェーンおよびフライトが浮き上がることを防止できる。
第3発明によれば、フライトシューの数を少なくすることで、シューガイドにフライトシューが接触する頻度が低くなり、シューガイドの摩耗を抑制できる。
第4発明によれば、フライトシューはフライトに着脱容易に取り付けられているので、フライトシューが摩耗した場合に、フライトシューを容易に交換できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るフライトコンベアの断面視部分拡大図である。
【
図3】
図1におけるIII-III線矢視図である。
【
図5】他の実施形態に係るフライトコンベアの断面視部分拡大図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るフライトコンベアの側面視断面図である。
【
図7】
図6におけるVII-VII線矢視断面図である。
【
図10】フライトコンベアが用いられる設備の概略図である。
【
図12】従来のフライトコンベアの断面視部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
図6および
図7に示すように、本発明の一実施形態に係るフライトコンベアAは、ケーシング10と、そのケーシング10に収められた2条のチェーン20,20と、その2条のチェーン20,20に架け渡された多数のフライト30とから構成されている。このフライトコンベアAは、例えば、ロータリースチームドライヤーなどの乾燥設備で乾燥された乾燥精鉱を、シュート2から装入し、流送設備4まで搬送するために用いられる。
【0013】
フライトコンベアAのケーシング10は、上面11と底面12と側壁13,13とからなる断面視四角形の気密な筒状に構成されている。チェーン20は環状となっており、一対のスプロケット70,70に巻き掛けられている。そして、一方のスプロケット70が回転駆動することによりチェーン20が進行し、それにともなってフライト30が進行するようになっている。具体的には、ケーシング10の下方に位置するフライト30が、シュート2から流送設備4の方向へと進行し、シュート2を通って装入された乾燥精鉱をフライト30で押して流送設備4まで搬送するようになっている。そして、流送設備4まで進行したフライト30はケーシング10の上方を、流送設備4からシュート2の方向へと進行して循環されている。
【0014】
図8および
図9に示すように、チェーン20は、複数のチェーンコマ21が連結ピン22で連結されて構成されている。チェーンコマ21の内側の側面には凹部23が形成されている。2条のチェーン20,20はフライト30の両側縁に配置されており、この凹部23にフライト30の両側縁下端部が挿入されることにより、チェーン20にフライト30が固定されている。
【0015】
チェーンコマ21の外側の側面には掻き板24が設けられている。掻き板24は、チェーンコマ21の外側の側面から突出した硬質のものであれば何でもよい。例えば、掻き板24を、チェーンコマ21の外側の側面に四角柱の鋼材を溶接し、さらにその表面に硬化肉盛をして形成してもよい。
また、掻き板24は、全てのチェーンコマ21に設けてもよいし、所定間隔ごとに一部のチェーンコマ21に設けてもよい。
【0016】
図7に示すように、ケーシング10の両方の側壁13,13には、それぞれ取付金具40を介して浮上り防止ガイド50およびシューガイド60が取り付けられている。
図1、
図2および
図3に示すように、取付金具40は側壁13に固定される固定板41と、浮上り防止ガイド50およびシューガイド60を固定するL字金具42と、固定板41とL字金具42とを接続する複数のリブ43とから構成されている。
【0017】
浮上り防止ガイド50は、チェーン20の長手方向に長尺の板部材であり、L字金具42の水平部に固定されている。浮上り防止ガイド50は、底面12上を進行するチェーン20の上方に設けられており、搬送する乾燥精鉱の抵抗により浮き上がるチェーン20を下方へ押さえることで、チェーン20およびフライト30が浮き上がることを防止している。
ここで、浮上り防止ガイド50は、その側縁とケーシング10の側壁13との間に隙間gが空けられるように設けられている。
【0018】
シューガイド60は、チェーン20の長手方向に長尺の板部材であり、L字金具42の垂直部に固定されている。フライト30の側縁にはフライトシュー61が取り付けられており、このフライトシュー61がシューガイド60に接触し、案内されることでチェーン20の蛇行を抑制している。
ここで、シューガイド60とフライトシュー61とのクリアランスは、側壁13とチェーン20との間の間隔よりも小さくなるように構成されている。このように構成するためには、ケーシング10の側壁13には、従来のフライトコンベアに設けられていたライナを設けない方が、側壁13とチェーン20との間の間隔を大きくできるので好ましい。もちろん、シューガイド60とフライトシュー61とのクリアランスを、側壁13とチェーン20との間の間隔よりも小さくなるように構成できるのであれば、側壁13にライナを設けてもよい。
【0019】
上記取付金具40、浮上り防止ガイド50およびシューガイド60は、所定の長さに形成され、一つのユニットuとして構成されている。このユニットuをケーシング10の側壁13に並べて取り付けることで、フライトコンベアAの全長に渡って浮上り防止ガイド50とシューガイド60とが設けられている。このようにユニットuとすることで、浮上り防止ガイド50やシューガイド60の交換等のメンテナンスが行いやすくなる。
なお、浮上り防止ガイド50は、その両端部が上方に曲げられており、ユニットuの継目においてチェーン20が引っ掛からないようになっている。シューガイド60も、その両端部が側壁13の方向に曲げられており、ユニットUの継目においてフライトシュー61が引っ掛からないようになっている。
【0020】
図4に示すように、フライトシュー61はステンレス鋼で平面視L字形に形成された部材であり、シューガイド60との対向面には耐摩耗溶射肉盛が施されたものである。また、フライトシュー61は、フライト30の側縁にボルト・ナットで取り付けられており、着脱容易となっている。そのため、フライトシュー61が摩耗した場合には、容易に交換できる。
【0021】
また、フライトシュー61は、全てのフライト30に取り付けてもよいし、所定間隔ごとに一部のフライト30に取り付けてもよい。フライトシュー61を設ける間隔は、チェーン20の蛇行を抑制できる範囲において設定することができる。例えば、フライト30の4枚に1枚にフライトシュー61を取り付けるとチェーン20の蛇行を抑制でき、フライト30の5枚に1枚にフライトシュー61を取り付けると2つのフライトシュー61の間のチェーン20が側壁13に接触するような場合には、フライト30の4枚に1枚にフライトシュー61を取り付けることが好ましい。
このように、フライトシュー61の数を少なくすることで、シューガイド60にフライトシュー61が接触する頻度が低くなり、シューガイド60の摩耗を抑制できる。また、フライトシュー61の取り付けにかかる費用を安価にできる。
【0022】
図1に示すように、フライトコンベアAに装入された乾燥精鉱Cの大部分は、フライト30に押されて搬送されるが、乾燥精鉱Cの一部はチェーン20と側壁13との間の空間Sに漏れ出る。空間Sに漏れ出た乾燥精鉱Cは余熱により水蒸気を排出し、乾燥精鉱Cがその水蒸気を再び吸湿すると側壁13に付着して居付きの原因となる。
ここで、浮上り防止ガイド50とケーシング10の側壁13との間に隙間gが空けられているので、空間Sに漏れ出た乾燥精鉱Cはこの隙間gから排出され、居付きXの発生を低減できる。しかし、それでも居付きXが発生する場合がある。
【0023】
しかし、上記のごとく、フライトシュー61がシューガイド60に案内されることにより、チェーン20の蛇行を抑制することができるため、ケーシング10に居付きXが発生したとしても、チェーン20の側面が居付きXに接触し摩耗することを抑制でき、チェーン20の寿命を長くできる。
そのため、チェーン20を交換するための運転の停止回数を少なくでき、操業効率が良く、また費用が安価となる。
【0024】
(その他の実施形態)
図5に示すように、上記実施形態に係るフライトコンベアAにおいて、浮上り防止ガイド50をケーシング10の側壁13に接するように設け、隙間gを空けないように構成してもよい。
この場合、空間Sに漏れ出た乾燥精鉱Cが排出されず、ケーシング10に居付きXが発生する。しかし、フライトシュー61がシューガイド60に案内されることにより、チェーン20の蛇行が抑制されるため、居付きXが大きく成長するまで、チェーン20の側面が居付きXに接触し摩耗することを抑制でき、チェーン20の寿命を長くできる。
【実施例】
【0025】
つぎに、実施例により、その効果を説明する。
(比較例)
図12に示す従来の構成のフライトコンベアで運用したところ、チェーン120が居付きXにより摩耗するため、3〜4カ月に1回の頻度でチェーン120の交換が必要であった。
【0026】
(実施例1)
図5に示す、隙間gを空けない本発明の構成のフライトコンベアで運用したところ、8カ月に1回の頻度でチェーンの交換が必要であった。
そのため、従来の構成のフライトコンベアに比べてチェーン20の寿命が2倍に長くなることが分かった。
【0027】
(実施例2)
図1に示す、隙間gを空けた本発明の構成のフライトコンベアで運用したところ、14カ月経過してもチェーン20の摩耗は使用に耐えられる程度であった。
そのため、従来の構成のフライトコンベアに比べてチェーン20の寿命が3倍以上に長くなることが分かった。
【符号の説明】
【0028】
10 ケーシング
13 側壁
20 チェーン
21 チェーンコマ
22 連結ピン
23 凹部
24 掻き板
30 フライト
40 取付金具
41 固定板
42 L字金具
43 リブ
50 浮上り防止ガイド
60 シューガイド
61 フライトシュー