(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C面を主面とするサファイア基板上にn型窒化物半導体層とp型窒化物半導体層とをこの順で積層して複数個の矩形状の発光素子部を縦横方向に整列配置し、前記サファイア基板のA面と前記主面との交線に平行な方向に沿って分割する横分割領域の幅が、前記A面と前記主面との交線に垂直な方向に沿って分割する縦分割領域の幅よりも狭く、前記発光素子部のn側電極が前記縦分割領域側の少なくとも一方側に配置された半導体ウエハを分割して発光素子とする発光素子の製造方法であって、
前記半導体ウエハを製造するウエハ製造工程と、
前記製造した半導体ウエハを分割するウエハ分割工程と、を含み、
前記ウエハ分割工程において、
前記サファイア基板の内部にレーザ光の集光点を合わせて照射して、多光子吸収により前記サファイア基板の内部に溶解領域または変質領域を形成するステルスレーザ加工によって、前記縦分割領域の幅方向の中央線から幅方向の一方側に所定の距離をシフトした線位置において、前記縦分割領域の延伸方向に延伸し、前記サファイア基板の厚さ方向に所定の高さを有する帯状の前記溶解領域または前記変質領域を内部割断溝として形成し、
前記内部割断溝を割断起点として前記半導体ウエハを分割することを特徴とする発光素子の製造方法。
前記サファイア基板上に複数の凸部が形成されており、すべての凸部において、前記凸部の頂部が平面視において同一形状で、かつ同一方向を向いた多角形であり、前記多角形について前記縦横方向における横方向を向いた鋭角が、左側を向いているときは、前記中央線の右側に前記線位置をシフトし、右側を向いているときは、前記中央線の左側に前記線位置をシフトすることを特徴とする請求項1に記載の発光素子の製造方法。
前記発光素子部のn側電極は、両側の前記縦分割領域のうち、少なくとも前記n側電極が前記線位置に近くなる側に配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の発光素子の製造方法。
前記発光素子部が平面視において長方形であり、前記長方形の短辺が前記縦分割領域と平行に形成されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか一項に記載の発光素子の製造方法。
前記内部割断溝は、前記レーザ光の集光点の前記サファイア基板の厚さ方向における位置を、順次複数段階にシフトして前記レーザ光を照射して形成することを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れか一項に記載の発光素子の製造方法。
前記内部割断溝の延伸方向に沿って、前記半導体ウエハの上下をブロックで挟持し、前記ブロックからはみ出た前記半導体ウエハの端部の前記サファイア基板の裏面側に、前記内部割断溝の延伸方向と平行に延伸するブレードを用いて衝撃を加えることによって前記半導体ウエハを割断するブレイキング工程において、
前記ブロックの、前記サファイア基板の主面に平行な面内であって前記延伸方向に垂直な方向である幅方向において、前記内部割断溝の線位置が平面視において中央になるように前記ブロックで前記半導体ウエハを挟持することを特徴とする請求項1ないし請求項7の何れか一項に記載の発光素子の製造方法。
前記内部割断溝の延伸方向に平行に延伸する2個のブロックを互いに離間して配置するとともに、前記サファイア基板の主面側を下向きとして、前記内部割断溝の線位置を前記2個のブロックの離間した空間の中央となるように前記半導体ウエハを前記2個のブロック上に載置し、前記内部割断溝の線位置において、前記サファイア基板の裏面側からブレードを用いて加重をかけることで前記半導体ウエハを分割することを特徴とする請求項1ないし請求項7の何れか一項に記載の発光素子の製造方法。
前記半導体ウエハの両面に、柔軟性のあるシートを貼り合せてから、前記ブレードを用いた分割を行うことを特徴とする請求項8または請求項9に記載の発光素子の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の技術においては、以下の問題がある。
C面を主面とするサファイア基板上にGaN系半導体を積層した半導体ウエハを分割する場合、基板の主面に対して斜め方向に存在するR面等のサファイアの結晶性の影響により、割断狙い位置である一方の面側の割断起点と、他方の面側の割断される位置である割断位置とにずれが生じる。すなわち、半導体ウエハを分割する際、サファイア基板は、所定の結晶方向においては、分割領域の割断起点から半導体ウエハの厚み方向に対して半導体ウエハの断面視で斜め方向に割れる。このずれが発光素子の特性や発光素子の取り個数に影響する。
【0009】
しかし前記した従来の技術では、発光素子の取り個数を増大させるためや、発光素子の機械的強度を劣化させないために所定の分割領域の幅を狭くしたものであり、前記のずれについては考慮されていない。そのため、分割の際のずれによって割断位置が発光素子に近くなりすぎることで、発光素子の外観が不良になり、また、ずれによって発光素子部の活性層に損傷が起き、これにより、発光素子の出力低下やリークが発生するという問題がある。
【0010】
一方、発光素子は、基板の厚さが厚い方が、基板内を進行する光が基板から外部に取り出されるまでに、基板の上下界面で反射する回数が低減される。このため、基板内で吸収される光量が低減され、結果として、発光素子の光取り出し効率が向上することが知られている。また、高膜厚な窒化物半導体をチップ化する際に、チップの機械的な強度を確保するために基板を厚肉化することが望まれていた。しかしながら、基板を厚くすると、前記した分割領域の割断基点と割断位置とのずれの問題が一層大きくなる。
【0011】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、半導体ウエハの分割時の割断による発光素子への悪影響を低減することができる発光素子の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記した課題を解決するために、本発明に係る発光素子の製造方法は、C面を主面とするサファイア基板上にn型窒化物半導体層とp型窒化物半導体層とをこの順で積層して複数個の矩形状の発光素子部を縦横方向に整列配置し、前記サファイア基板のA面と前記主面との交線に平行な方向に沿って分割する横分割領域の幅が、前記A面と前記主面との交線に垂直な方向に沿って分割する縦分割領域の幅よりも狭く、前記発光素子部のn側電極が前記縦分割領域側の少なくとも一方側に配置された半導体ウエハを分割して発光素子とする発光素子の製造方法であって、前記半導体ウエハを製造するウエハ製造工程と、前記製造した半導体ウエハを分割するウエハ分割工程と、を含み、前記ウエハ分割工程において、前記サファイア基板の内部にレーザ光の集光点を合わせて照射して、多光子吸収により前記サファイア基板の内部に溶解領域または変質領域を形成するステルスレーザ加工によって、前記縦分割領域の幅方向の中央線から幅方向の一方側に所定の距離をシフトした線位置において、前記縦分割領域の延伸方向に延伸し、前記サファイア基板の厚さ方向に所定の高さを有する帯状の前記溶解領域または前記変質領域を内部割断溝として形成し、前記内部割断溝を割断起点として前記半導体ウエハを分割することを特徴とする。
【0013】
かかる製造方法によれば、ウエハ製造工程で製造された半導体ウエハにおいて、横分割領域の幅が縦分割領域の幅よりも狭いことで、発光素子の取り個数、あるいは、活性層領域の面積の増大を図るものである。ここで、縦分割領域は、サファイア基板の裏面側に設定された割断起点から主面側における割断位置にかけて斜めに割れることを考慮した幅を確保する必要がある。そこで、サファイア基板の割断起点を中央線から所定の距離をシフトした線位置にシフトして、主面側の割断位置を中央線に寄るようにする。さらに、サファイア基板の内部に、割断起点の線位置に沿って、サファイア基板の厚さ方向に所定の高さを有する帯状の内部割断溝を形成することで、内部割断溝を形成した部分では、主面に垂直に割断されるため、斜めに割れることにより割断位置の割断起点からずれる量が低減される。また、n側電極を縦分割領域側に配置するため、結果として縦分割領域側に配置される活性層領域が減少する。このため、発光素子部が受けるダメージが低減される。
【0014】
本発明に係る発光素子の製造方法は、前記サファイア基板上に複数の凸部が形成されており、すべての凸部において、前記凸部の頂部が平面視において同一形状で、かつ同一方向を向いた多角形であり、前記多角形について前記縦横方向における横方向を向いた鋭角が、左側を向いているときは、前記中央線の右側に前記線位置をシフトし、右側を向いているときは、前記中央線の左側に前記線位置をシフトすることを特徴とする。
【0015】
かかる製造方法によれば、凸部における多角形の頂部の向きに対応して、中央線の左右の何れかに割断起点の線位置を決定する。
【0016】
本発明に係る発光素子の製造方法は、前記発光素子部のn側電極が、両側の前記縦分割領域のうち、少なくとも前記n側電極が前記線位置に近くなる側に配置されていることが好ましい。
【0017】
かかる製造方法によれば、割断による発光素子部の損傷がより生じやすい側に、損傷による発光出力への影響の少ないn側電極が配置されるため、発光素子部としてのダメージが低減される。
【0018】
本発明に係る発光素子の製造方法は、前記発光素子部が平面視において長方形であり、前記長方形の短辺が前記縦分割領域と平行に形成されていることを特徴とする。
【0019】
かかる製造方法によれば、割断による発光素子部の損傷がより生じやすい縦分割領域側に発光素子部の長方形の短辺があるため、縦分割領域の割断による個々の発光素子部におけるダメージが低減される。また、幅を広く確保する必要のある縦分割領域を短辺側とすることによって縦分割領域の本数が減るため、半導体ウエハあたりの発光素子の取り個数、あるいは、個々の発光素子の活性層領域の面積が増大する。
【0020】
本発明に係る発光素子の製造方法は、前記レーザ光の照射は、前記サファイア基板の裏面側から入射し、前記内部割断溝は、前記サファイア基板の厚さ方向において、前記主面から70μm以上離れた位置に形成することが好ましい。
【0021】
かかる製造方法によれば、半導体層に及ぶレーザ光の照射量を少なくし、半導体層に対する損傷を低減しつつ内部割断溝を形成する。
【0022】
本発明に係る発光素子の製造方法は、前記内部割断溝は、前記レーザ光の集光点の前記サファイア基板の厚さ方向における位置を、順次複数段階にシフトして前記レーザ光を照射して形成することを特徴とする。
【0023】
かかる製造方法によれば、厚さ方向に、幅の狭い内部割断溝を積み重ねるようにして幅広の内部割断溝を形成する。これによって、レーザ光の照射強度を強くすることなく、従って、半導体層に対する損傷を大きくすることなく、厚さ方向に幅広の内部割断溝が形成される。
【0024】
本発明に係る発光素子の製造方法は、前記半導体ウエハの前記縦分割領域および前記横分割領域の主面側において、
前記n型窒化物半導体層及び前記p型窒化物半導体層の、平面視において前記割断起点から分割したときの前記サファイア基板の主面における割断位置を含む領域に、前記サファイア基板を露出させた割断溝である主面割断溝を形成することが好ましい。
【0025】
かかる製造方法によれば、主面割断溝のサファイア基板の露出面が割断位置となる。このとき、割断位置の半導体層が除去されているため、割断による割れが半導体層に及ぶことなく半導体ウエハが割断される。
【0026】
本発明に係る発光素子の製造方法は、前記内部割断溝の延伸方向に沿って、前記半導体ウエハの上下をブロックで挟持し、前記ブロックからはみ出た前記半導体ウエハの端部の前記サファイア基板の裏面側に、前記内部割断溝の延伸方向と平行に延伸するブレードを用いて衝撃を加えることによって前記半導体ウエハを割断するブレイキング工程において、前記ブロックの、前記サファイア基板の主面に平行な面内であって前記延伸方向に垂直な方向である幅方向において、前記内部割断溝の線位置が平面視において中央になるように前記ブロックで前記半導体ウエハを挟持することを特徴とする。
【0027】
かかる製造方法によれば、半導体ウエハの端部にブレードを用いて加えられた衝撃は、下側のブロックの一辺を支点とするてこの原理で、上下をブロックで挟まれた内部割断溝に作用して、半導体ウエハが割断される。
【0028】
本発明に係る発光素子の製造方法は、前記内部割断溝の延伸方向に平行に延伸する2個のブロックを互いに離間して配置するとともに、前記サファイア基板の主面側を下向きとして、前記内部割断溝の線位置を前記2個のブロックの離間した空間の中央となるように前記半導体ウエハを前記2個のブロック上に載置し、前記内部割断溝の線位置において、前記サファイア基板の裏面側からブレードを用いて加重をかけることで前記半導体ウエハを分割することを特徴とする。
【0029】
かかる製造方法によれば、半導体ウエハは、下側に離間して配置された2個のブロックと、サファイア基板の裏面側のブレードにより、断面視で3点で支持される。そして、ブレードに加重をかけることにより、下側の2個のブロックのそれぞれの一辺を支点として、中央部から折れ曲がるようにして半導体ウエハが割断される。
【0030】
本発明に係る発光素子の製造方法は、前記半導体ウエハの両面に、柔軟性のあるシートを貼り合せてから、前記ブレードを用いた分割を行うことが好ましい。
【0031】
かかる製造方法によれば、半導体ウエハの両面に貼り合せた柔軟性のあるシートによって、ブレードを用いたブレイキングの際に、分割されるチップの浮きやチップ飛び、シート自体の破れを防止する。
【0032】
本発明に係る発光素子の製造方法は、前記サファイア基板の厚さは160μm以上とすることが好ましい。
【0033】
かかる製造方法によれば、基板の厚さが厚い発光素子が製造される。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係る発光素子の製造方法によれば、割断による発光素子部への損傷を低減しつつ、基板の厚い発光素子を、ウエハあたりの取り個数を増加、あるいは、発光素子あたりの活性層領域の面積を増加させることができる。
【0035】
また、本発明に係る発光素子の製造方法によれば、サファイア基板に凸部を形成するため、製造された発光素子の外部への光取り出し効率が向上する。また、半導体ウエハの試し割りをすることなく、割断起点をシフトする方向を決定できるため、無駄なく発光素子を分割することができる。
【0036】
また、本発明に係る発光素子の製造方法によれば、割断による発光素子部へのダメージを低減するため、発光出力の良好な発光素子を製造することができる。
また、本発明に係る発光素子の製造方法によれば、縦分割領域の割断による個々の発光素子部におけるダメージが低減されるため、発光出力の良好な発光素子を製造することができる。また、半導体ウエハあたりの発光素子の取り個数、あるいは、個々の発光素子の活性層領域の面積が増大するため、発光素子の製造コストが低減でき、あるいは、発光出力の高い発光素子を製造することができる。
【0037】
また、本発明に係る発光素子の製造方法によれば、レーザ光の窒化物半導体層への照射量を少なくし、半導体層に対する損傷を低減するため、発光出力の良好な発光素子を製造することができる。
【0038】
また、本発明に係る発光素子の製造方法によれば、半導体層に対する損傷を大きくすることなく、厚さ方向に幅広の内部割断溝を形成することができるため、基板が厚く発光出力が良好な発光素子を製造することができる。
【0039】
また、本発明に係る発光素子の製造方法によれば、割断による割れが半導体層に及ぼすことなく半導体ウエハを割断するため、発光出力の良好な発光素子を製造することができる。
【0040】
また、本発明に係る発光素子の製造方法によれば、てこの原理で割断起点に強く力を作用させて半導体ウエハを割断するため、基板の厚さが厚い場合でも良好に割断することができる。
また、本発明に係る発光素子の製造方法によれば、3点支持された形で半導体ウエハを割断するため、精度よく半導体ウエハを割断することができる。
【0041】
また、本発明に係る発光素子の製造方法によれば、ブレードを用いたブレイキングの際に、分割されるチップの浮きやチップ飛びおよびシート自体の破れが防止されるため、良好な歩留まりで発光素子を製造することができる。
【0042】
また、本発明に係る発光素子の製造方法によれば、基板の厚さが厚い発光素子が製造されるため、機械的な強度が高く、また外部への光取り出し効率の高い発光素子を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施形態に係る発光素子の製造方法について、図面を参照しながら説明する。なお、各図面が示す部材のサイズや位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。さらに以下の説明において、同一の名称、符号については、原則として同一もしくは同質の部材を示しており、詳細な説明を適宜省略する。
なお、各図面は原則として、紙面上、オリエンテーションフラット(以下、適宜、オリフラという)(A面)を下または手前とする(ただし
図3(a)は、濃色部分がA面である)。また、本実施形態において方向を説明する場合は、紙面に対してオリフラを下または手前にしたときに、紙面に対して左側を「左」、紙面に対して右側を「右」とする。
【0045】
<半導体発光素子の製造方法>
図1(a)、(b)に示すように、発光素子3の製造方法は、C面を主面(表面)とするサファイア基板1上に窒化ガリウム(GaN)系半導体(窒化物半導体)を積層して複数個の矩形状の発光素子部2を縦横方向に整列配置した半導体ウエハ100を、割断起点42、51(
図4参照)をサファイア基板1の−C面(裏面)側に設けて、分割して発光素子(半導体チップ)3を製造する方法である。
【0046】
図2に示すように、本発明の実施形態における発光素子3の製造方法は、半導体ウエハ100を製造するウエハ製造工程S1と、半導体ウエハ100を個々の発光素子3のチップに分割するウエハ分割工程S2と、を含むものである。ここで、縦横方向とは、サファイア基板1の主面内(平面視)でみて、サファイア基板1のA面とC面との交線に対して、垂直な方向を縦方向、平行な方向を横方向とする。また、
図1に示すように、A面をオリエンテーションフラット1cとするサファイア基板1を例にとるとわかりやすいので、実施の形態ではオリエンテーションフラット1cも交えて説明する。
【0047】
各工程について説明する前に、半導体ウエハ100の構成について説明する。
【0048】
[半導体ウエハ]
図1(a)に示すように、半導体ウエハ100は、サファイア基板1上に、縦横方向に整列配置された平面視で長方形の複数個の発光素子部2と、サファイア基板1のオリフラ1cであるA面と主面であるC面との交線に平行な方向に沿って分割する横分割領域5と、A面とC面との交線に垂直な方向に沿って分割する縦分割領域4と、を備える(縦分割領域4、横分割領域5は、以下、適宜、分割領域4、5という)。
【0049】
(サファイア基板)
図3(a)、(b)に示すように、サファイア基板1は、所定のサファイア結晶構造を持つサファイア結晶10の集合体でできており、C面を主面とする。このサファイア基板1は、サファイアの結晶性により割れやすい方向(裂開方向)がある。
図3(b)の矢印は、サファイア基板1の割れやすい方向を示しており、例えば、
図3(b)の太線に沿って割れが生じやすい。
【0050】
そして、A面(11−20)に垂直な方向がこの割れやすい方向であり、この方向、すなわち、結晶方位<11−20>に沿って縦分割領域4を形成する。一方、A面(11−20)に平行(M面(1−100)に垂直)な方向が割れにくい方向であり、この方向、すなわち、結晶方位<1−100>に沿って横分割領域5を形成する。なお、結晶方位<1−100>方向に対して、結晶方位<11−20>方向の方が、すなわち、縦分割領域4に沿った方向の方が、半導体ウエハ100を分割した際にチッピングが発生しやすい。
【0051】
また、結晶方位<1−100>方向と平行に直線的に切り欠かれたオリエンテーションフラット(オリフラ)1cが設けられている。通常、A面をオリフラ面として結晶方位<1−100>方向と平行に設けることから、このオリフラ1cを指標にして縦分割領域4と横分割領域5とを決定する。
【0052】
ここで、サファイア基板1上には、
図5(a)および
図6(a)に示すように、複数の凸部11が形成されていることが好ましい。
半導体ウエハ100において、C面を主面とし、A面をオリフラ1cとしたサファイア基板1を用いると、マスクパターンの形状、エッチング条件(エッチャントの種類、エッチング時間等)によって、主面1a上に所定形状の凸部11を形成することができる。
【0053】
平坦なサファイア基板1を有する半導体発光素子の場合、半導体層中を横方向に伝搬している光は伝搬している間に半導体層や電極に一部が吸収され、半導体層から出るまでに減衰する。しかし、凸部11を設けると、凸部11による光の散乱・回折効果により、サファイア基板1の上方または下方への光束が多くなり、発光素子の発光面を正面から観察したときの輝度(=正面輝度)を高めることができる。また、凸部11による光の散乱・回折効果により、半導体層中を横方向に伝播する光を減らし、伝播中の吸収ロスを低減して発光の総量を高めることができる。しかも、サファイア基板1の主面1a上に凸部11を形成しても、半導体層には凸部11による結晶欠陥が殆ど成長しないので、前記の高い外部量子効率を安定に確保できる。
【0054】
そして凸部11は、すべての凸部11において、上部が平面視で同一形状、かつ頂部11aの鋭角の一つが同一方向を向いた多角形の形状をしている。多角形としては、例えば三角形、五角形、好ましくは正三角形を挙げることができる。なお、凸部11を多角形にするとは、凸部11の上面である頂部11aの平面視の形状が多角形にすることをいい、凸部11の底面形状は円形や多角形であってもよい。また、凸部11の断面形状については、台形であることが好ましい。このような断面形状とすることにより、光の散乱および回折効率を高めることができる。なお、凸部11の平面形状および断面形状は、幾何学的に完全な多角形または台形である必要はなく、加工上の理由等から角が丸みを帯びていてもよい。
【0055】
そして、この多角形の頂部11aの一つの鋭角の向きが、A面とC面との交線に平行な方向と一致する傾向があり、さらに、頂部11aのその鋭角が左右のどちらかを向く傾向がある。そして、後記するように、この多角形の鋭角の向きに対応して、中央線41の左右の何れかに割断起点42の線位置を決定することができる。なお、製造上は凸部11の大きさ、および、相互の間隔は10μm以下とするのがよい。さらに5μm以下とすることで、散乱面が増えるため好ましい。
【0056】
サファイア基板1上に凸部11を形成する方法は、特に限定されず、当該分野で公知の方法によって形成することができる。例えば、適当な形状のマスクパターンを用いて、後記するようなドライエッチングまたはウェットエッチング等のエッチングを行なう方法が挙げられる。中でも、ウェットエッチングが好ましい。この場合のエッチャントは、例えば、硫酸とリン酸との混酸、KOH、NaOH、リン酸、ピロ硫酸カリウム等が挙げられる。
【0057】
凸部11の形状は、例えば、用いるマスクパターンの形状、エッチング方法および条件を適宜調整して制御することができる。この際のマスクパターンの材料および形状は、例えば、絶縁膜(レジスト、SiO
2等)によって形成することができ、円形、楕円形、三角形または四角形等の多角形状の繰り返しパターン等が挙げられる。このようなマスクパターンの形成は、フォトリソグラフィおよびエッチング工程等の公知の方法により実現することができる。
【0058】
マスクパターンの形成のためのエッチング方法は、例えば、ドライエッチングまたはウェットエッチング等、当該分野で公知の方法を利用することができる。例えば、ドライエッチングとしては、反応性イオンエッチング、反応性イオンビームエッチング、イオンミリング、集束イオンビームエッチング、ECR(電子サイクロトロン共鳴)エッチング等が挙げられる。ウェットエッチングのエッチャントは、前記したものと同様のものを例示することができる。
【0059】
(発光素子部)
図1(a)に示すように、発光素子部2は、サファイア基板1上にGaN系半導体を積層してサファイア基板1の縦横方向に複数個を整列配置したものである。発光素子部2の形状は、上面視で矩形状からなるものであり、ここでは長方形であって、この長方形の短辺が縦分割領域4と平行に形成されている。このような構成とすれば、縦分割領域4側に発光素子部2の長方形の短辺があるため、縦分割領域4の割断による発光素子部2の発光層、すなわち活性層24(
図10A(a)参照)を有する領域である活性層領域26(
図4参照)の損傷が低減され、割断による発光出力への影響(割断影響)が低減する。また、横分割領域5の幅を狭めるため、その分、発光素子部2を大きくする場合には、長方形の長辺が縦分割領域4と平行に形成された場合と比べ、活性層領域26(
図4参照)の面積を大きくすることができる。また、発光素子部2を縦方向に詰めて配置する場合には、発光素子3の取り個数の増大を図ることができる。ただし、半導体ウエハ100のサイズや、発光素子部2のサイズおよび数等によっては、長方形の短辺が縦分割領域4と平行に形成されていてもよく、また、後記するように、発光素子部2の形状は、平面視で正方形であってもよい。
【0060】
また、
図4に示すように、発光素子部2のn側電極21は、縦分割領域4側の少なくとも一方側に配置されている。縦分割領域4は、ウエハを分割する際にチッピングが発生しやすいことから、縦分割領域4に接する発光素子部2の両側の活性層領域26を損傷させやすい。しかし、n側電極21が存在する領域は活性層24(
図10A(a)参照)が存在しないため、縦分割領域4側にn側電極21を配置することで縦分割領域4側における活性層領域26の範囲が減少し、活性層24(
図10A(a)参照)の損傷が低減される。
【0061】
ここで、n側電極21は、両側の縦分割領域4のうち、少なくとも縦分割領域4の幅方向の中央線41から幅方向の一方側に所定の距離をシフトした割断起点42の線位置に近くなる側に配置されていることが好ましい。本実施形態では、縦分割領域4における割断起点42をサファイア基板1の裏面側に設定し、割断位置43をサファイア基板1の主面側に設定する。従って、サファイア基板1の主面(表面)側の割断位置43は、平面視において、割断起点42よりも中央線41の方向にシフトすることになる。
【0062】
また、本実施形態では、サファイア基板1の裏面側から、割断起点42の線位置に沿って、多光子吸収されるレーザ光を照射して、サファイア基板1の厚さ方向において、少なくとも裏面側の内部に、主面であるC面に対して略垂直に割断溝(内部割断溝7、
図7(b)参照)を形成する。このため、サファイア基板1の内部に割断溝を形成しない部分のみ斜めに割断されることになる。なお、レーザ照射、割断溝の詳細については、後記する。
【0063】
縦分割領域4では、割断起点42をシフトした側の発光素子部2の活性層24(
図10A(a)参照)の方が、平面視で割断起点42の線位置からの距離が近くなるため、割断起点42の線位置に沿ってサファイア基板1の裏面側から照射される前記したレーザ光により、変質などの損傷(割断影響)をより受けやすくなる。発光素子部2のn側電極21が存在する縦辺は、n側電極21が存在する分だけ活性層領域26が少ないため、両側の縦分割領域4のうち、縦分割領域4の幅方向の中央線41から幅方向の一方側に所定の距離をシフトした割断起点42の線位置に近くなる側にn側電極21を配置することで、活性層領域26への損傷がより低減され、割断影響の範囲を低減することができる。なお、n側電極21は、前記した線位置に近くなる側にのみ配置されていてもよく、縦分割領域4の両側に配置されていてもよい。
【0064】
(分割領域)
図1(a)に示すように、分割領域4、5は、半導体ウエハ100から発光素子部2を分割するための領域であり、平面視で、サファイア基板1のオリフラ1cであるA面と、主面であるC面との交線と平行な方向に沿って分割する横分割領域5と、このA面とC面との交線に垂直な方向に沿って分割する縦分割領域4と、からなる。この分割領域4、5においては、横分割領域5の幅βが、縦分割領域4の幅αよりも狭く設定されている。このように、チッピングが発生しにくく、主面に対して略垂直に割断できる横分割領域5の幅βを狭くすることで、発光素子3の取り個数、あるいは、活性層領域26(
図4参照)の面積の増大を図ることができる。また、縦分割領域4の幅αを狭くすることがないため、発光素子部2の損傷を低減することができる。分割領域4、5の幅α,βは、半導体ウエハ100や発光素子部2のサイズやサファイア基板1の厚さ等により異なるが、例えば、縦分割領域4で15〜70μm、横分割領域5で10〜60μmである。
【0065】
ここで、
図7を参照して、本実施形態における縦分割領域4における割断の様子について説明する。
前記したように、縦分割領域4においては
図7(a)に示すように、サファイア基板1は、サファイア基板1の裏面(−C面)1bの割断起点42から主面(表面、C面)1aの割断位置43にかけて斜めに割断される。そのため、サファイア基板1の厚さが厚くなると、縦分割領域4の幅α(
図1(a)参照)を広く確保することが必要となる。
【0066】
そこで、本実施形態においては、
図7(b)に示すように、縦分割領域4の延伸方向からみた断面視において、サファイア基板1の主面1aに対して略垂直な方向に延伸する内部割断溝7を、サファイア基板1の内部に形成し、内部割断溝7が形成されない上下の厚さ部分についてのみ斜めに割断することとした。これによって、サファイア基板1の厚さ方向において、内部割断溝7が形成された部分は、主面1aに対して略垂直に割断されるため、割断起点42と割断位置43とのずれが低減され、その分だけ縦分割領域4の幅を狭くすることができる。また、内部割断溝7の形成により、実質的に衝撃または加重を加えるブレイキングで割断すべきサファイア基板1の厚さが減少するため、容易に、かつ安定した精度で割断することができる。
【0067】
内部割断溝7は、サファイア基板1の内部にレーザ光の照射を行って、割断起点42の線位置に沿って、溶解領域または変質領域として加工するステルスレーザ加工によって形成する。このような加工を行うためのレーザ光は、サファイア基板1に対して透明であるが、集光レンズを用いてレーザ光を集光させ高エネルギー密度状態とした集光点において、多光子吸収により、サファイア基板1の内部を溶解または変質させる。このようなレーザ光としては、パルスレーザを発生するレーザ、多光子吸収を起こさせることができる連続波レーザ等、種々のものを用いることができる。中でも、フェムト秒レーザ、ピコ秒レーザ、ナノ秒レーザ等のパルスレーザを発生させるものが好ましい。また、その波長は特に限定されるものではなく、例えば、Nd:YAGレーザ、Nd:YVO
4レーザ、Nd:YLFレーザ、チタンサファイアレーザ等による種々のものを利用することができる。
【0068】
ここで、レーザ光の照射は、半導体層20(
図10A(a)参照)での吸収を考慮して、半導体ウエハ100の裏面1b側から行ない、かつ、半導体層20(
図10A(a)参照)、すなわち、サファイア基板1の主面1aから所定の距離γ
1以上離れた位置に行う。このようにして、半導体層20、特に活性層24(
図10A(a)参照)へのレーザ光の照射を回避することによって、半導体層20の変質による発光効率の低下を最小限にとどめることができる。前記した距離γ
1は、半導体層20への影響を回避するとともに、サファイア基板1が斜めに割断されることにより縦分割領域4の幅が広くなり過ぎないように、70μm程度とすることが好ましい。
【0069】
また、内部割断溝7は、サファイア基板1の裏面1bにできる限り近いところまで形成することが好ましく、裏面1bまでの距離γ
2は、例えば、10〜60μm程度とすることができる。
【0070】
次に、
図8および表1を参照して、分割領域4、5の幅および発光素子部2の配置等と、活性層領域26の面積および割断影響範囲について説明する。
ここでは、表計算ソフトにおいて、多数の碁盤目状の正方形からなるセル上に、
図8(a)〜(d)の形態の発光素子部2を作図し、セルを距離または面積の単位として、セル数を計測することで、分割領域4、5の幅および発光素子部2の配置等と、活性層領域26の面積および割断影響範囲について考察した。
【0071】
図8(a)は、縦分割領域4の幅と横分割領域5の幅が同じで、かつ発光素子部2を縦長(長辺が縦分割領域4と平行)にしたものである。
図8(b)は、横分割領域5の幅を狭め、かつ発光素子部2を縦長(長辺が縦分割領域4と平行)にしたものである。
図8(c)は、横分割領域5の幅を狭め、かつ発光素子部2を横長(長辺が横分割領域5と平行)にし、さらにn側電極21を、両側の縦分割領域4のうち、n側電極21が割断起点42の線位置に近くなる側と反対の側にのみ配置したものである。
図8(d)は、横分割領域5の幅を狭め、かつ発光素子部2を横長(長辺が横分割領域5と平行)にし、さらにn側電極21を、両側の縦分割領域4のうち、n側電極21が割断起点42の線位置に近くなる側にのみ配置したものである。なお、
図8(a)〜(d)において、割断起点42は半導体ウエハ100の裏面に、割断位置43は表面(C面)にあるものとする。また、割断影響範囲は、前記した内部割断溝7(
図7(b)参照)を形成する際のレーザ光照射の影響が大きく、発光素子部2の縦辺が割断起点42の線位置に近くなる側のほうが割断の影響をより受けやすいことから、この側について考察した。
【0073】
表1に示すように、
図8(a)に比べ、
図8(b)〜(d)のように横分割領域5の幅を狭くした方が、半導体ウエハの単位面積当たりに形成できる活性層領域26の面積を大きくすることができる。また、
図8(a)〜(d)のように縦分割領域4の幅が同一であれば、割断起点42から活性層領域26までの平面視における距離は同じである。そして、
図8(a)に比べ、
図8(b)は、活性層領域26の面積が増えたため、割断影響範囲はやや大きくなっているが、
図8(c)のように、縦分割領域4側を短辺とすれば割断影響範囲を小さくできる。また、
図8(d)のように、n側電極21を割断起点42の線位置に近くなる側にのみ配置すれば、n側電極21が存在する分、割断起点42の線位置に近い活性層領域26が減少するため、割断影響範囲をさらに小さくすることができる。
【0074】
次に、
図2に示した発光素子3の製造方法の各工程について説明する。
【0075】
<ウエハ製造工程>
ウエハ製造工程S1は、半導体ウエハ100を製造する工程である。
図1に示した半導体ウエハ100の製造は、従来公知の方法に従い、例えば、オリフラ1cが設けられたサファイア基板1の片面(C面)に、フォトリソグラフィ、真空蒸着等を用いてGaN系半導体を積層して複数個の矩形状の発光素子部2を縦横方向に整列配置することにより行なう。
【0076】
発光素子部2は、例えば、
図10A(a)に示すように、サファイア基板1の主面1a上に、n型半導体層23、活性層24およびp型半導体層25を順次積層した半導体層20を形成し、半導体層20の上面の一部の領域について、p型半導体層25、活性層24およびn型半導体層23の一部をエッチングにより除去してn型半導体層23を露出させ、この露出面にパッド電極であるn側電極21(
図4参照)を形成する。また、p型半導体層25および活性層24が除去されなかった領域である活性層領域26(
図4参照)には、p型半導体層25の上面の略全面を覆う全面電極(不図示)および全面電極の上面の一部にパッド電極であるp側電極22(
図4参照)を形成する。
【0077】
そして、同時に形成した発光素子部2の間には、発光素子部2を分割するための分割領域4、5が確保されるが、横分割領域の幅βが縦分割領域4の幅αよりも狭くなるように、分割領域4、5の幅を適宜調整する。
【0078】
<ウエハ分割工程>
図2に示したウエハ分割工程S2は、ウエハ製造工程S1で製造した半導体ウエハ100を分割する工程である。ここで、
図9を参照して、本実施形態におけるウエハ分割工程S2の詳細な手順について説明する。
【0079】
図9に示すように、ウエハ分割工程S2(
図2参照)は、主面割断溝形成工程S10と、基板裏面研磨工程S11と、第1シート貼り合せ工程S12と、内部割断溝形成工程S13と、第2シート貼り合せ工程S14と、ブレイキング工程S15と、シート剥離工程S16と、を含んで構成される。
続いて、
図10Aから
図10Fを参照(適宜
図9参照)して、ウエハ分割工程S2(
図2参照)について詳細に説明する。
【0080】
主面割断溝形成工程S10は、
図10A(a)および
図10A(b)に示すように、半導体ウエハ100の半導体層20を積層した面であるサファイア基板1の主面1a側の、分割領域4、5(
図1(a)参照)内に、主面割断溝6を形成する工程である。本実施形態では、主面割断溝6は、
図10A(a)に示しように、n型半導体層23を露出させる工程と、
図10A(b)に示したように、サファイア基板1を露出させる工程との、2段階の工程から成る。
【0081】
なお、
図10A(a)および
図10A(b)では、縦分割領域4の形成の様子について示すが、横分割領域5(
図1(a)参照)についても、横分割領域5の幅が、縦分割領域4の幅より狭いこと以外は同様である。また、
図10A(c)〜
図10Fにおいても、特に断らない限りは同様である。さらにまた、
図10A〜
図10Fにおいては、n側電極21、p側電極22(
図4参照)などや、半導体層20の詳細な構成の図示は適宜省略している。
【0082】
図10A(a)に示した第1段階の工程では、縦分割領域4に沿って、n型半導体層23を露出させる。この第1段階の工程で形成される主面割断溝6の底面6aは、n型半導体層23の露出面である。これによって、半導体ウエハ100を割断する際に、割れ目が活性層24に及ぶことを防止でき、安定した品質で発光素子3(
図1(b)参照)をチップ化することができる。
【0083】
主面割断溝形成工程S10の第1段階の工程は、前記したウエハ製造工程S1(
図2参照)において、n側電極21(
図1(a)参照)を形成するためのn型半導体層23を露出させるエッチング工程で、縦分割領域4も露出させることで、同時に行うことができる。なお、横分割領域5(
図1(a)参照)についても同様である。
【0084】
図10A(b)に示した第2段階の工程では、縦分割領域4に沿って、縦分割領域4の範囲内で、サファイア基板1を露出させる。この第2段階の工程で形成される主面割断溝6の2段目の底面6bは、サファイア基板1の露出面である。このとき、平面視で、少なくとも割断位置43の線位置を含む領域のサファイア基板1を露出させることが好ましく、割断起点42の線位置と割断位置43の線位置とを含む領域のサファイア基板1を露出させることがさらに好ましい。
これによって、半導体ウエハ100を割断する際に、割れ目が半導体層20に及ぶことを防止でき、n型半導体層23まで露出させた場合よりも、さらに安定した品質で発光素子3(
図1(b)参照)をチップ化することができる。
【0085】
主面割断溝形成工程S10の第2段階の工程では、前記した第1段階の工程に続いて、フォトリソグラフィで2段目の主面割断溝6の形成領域以外をマスクし、エッチングして主面割断溝6を形成することができる。
なお、主面割断溝6の形成は、2段階に行うことに限定されず、n側電極21(
図4参照)を形成するためのエッチング工程とは別の工程として、分割領域4,5以外をマスクして、エッチング法によりサファイア基板1を露出させるようにしてもよい。
【0086】
なお、主面割断溝6は、エッチング法による形成に限定されず、ダイサーやスクライバを用いて形成してもよい。
また、主面割断溝6は、前記した第1段階の工程であるn型半導体層23を露出する工程のみ行って形成するようにしてもよい。
【0087】
基板裏面研磨工程S11は、
図10A(c)に示すように、所定の厚さになるまでサファイア基板1の裏面1bを研磨する工程である。サファイア基板1の厚さは、光取り出し効率と、ウエハ分割工程S2(
図2参照)において加工に要する時間とから適宜に決めることができ、例えば、160〜240μm程度とすることができる。
なお、ウエハ製造工程S1(
図2参照)で用いたサファイア基板1の厚さが所定の厚さである場合は、基板裏面研磨工程S11を省略してもよい。
【0088】
第1シート貼り合せ工程S12は、
図10B(a)に示すように、半導体ウエハ100の半導体層20を積層した側の面に、第1シート36を貼り合せる工程である。第1シート36は、ブレイキング工程S15において、半導体層20をブレイキングの衝撃から保護するとともに、ブレイキング工程S15の途中において、割断された半導体ウエハ100がバラバラにならないように半導体ウエハ100を保持するための粘着性を有するシートである。
【0089】
第1シート36としては、例えば、厚さ100μm程度のポリオレフィンの基材に、UV(紫外線)硬化型の粘着剤層を設けたUVシートを用いることができ、例えば、日東電工社製のUVシートUE111−AJを挙げることができる。
【0090】
このような、UVシートは、粘着剤層によってシートの基材と半導体ウエハ100とを貼り合せて、半導体ウエハ100を保持および保護する。そして、ブレイキング工程S15が完了後に、UVシートに紫外線を照射することにより、粘着剤層が硬化して粘着性を喪失するため、容易にシートを剥離して割断されたチップを取り出すことができる。
なお、第1シート36は、紫外線硬化型のUVシートのほか、熱硬化型のシートなどを用いることもできる。
【0091】
また、第1シート36は、柔軟性を有することが好ましい。後記する第2シート37(
図10D(a)参照)とともに、柔軟性のあるシートで半導体ウエハ100の両面を挟み込むことにより、ブレイキング工程S15において、ブレード35によって強い加重衝撃を加えても、分割されるチップのチップ浮きやチップ飛び、シートの破れを防止することができる。
【0092】
内部割断溝形成工程S13は、
図10B(b)〜
図10B(d)に示すように、縦分割領域4の割断起点42および横分割領域5の割断起点51(
図4参照)に沿ったレーザ光30の照射により、サファイア基板1の内部に前記した内部割断溝7を形成する工程である。
【0093】
図10B(b)に示すように、レーザ光30を集光レンズ31によって集光し、サファイア基板1の内部に集光点30aが位置するように、サファイア基板1の裏面1b側から照射する。ここで、レーザ光30の照射の影響を受けて半導体層20が変質しないように、レーザ光30の集光点30aを、サファイア基板1の厚さ方向において、半導体層20から所定の距離γ
1以上離した位置に設定する。そして、
図1(a)に示した縦分割領域4の割断起点42の線位置および横分割領域5の割断起点51の線位置に沿って、分割領域4、5ごとに、順次レーザ光30を走査する。
【0094】
なお、レーザ光30の走査は、半導体ウエハ100を、例えば、XYステージに載置して、X方向(サファイア基板1の主面内の横方向)あるいはY方向(同縦方向)に半導体ウエハ100を移動させて行うことができる。また、半導体ウエハ100を固定してレーザ光30を移動させるようにしてもよい。
【0095】
ここで、1回のレーザ光30の照射により、サファイア基板1の内部に形成される内部割断溝7
1の厚さ方向の高さは、レーザ光30の出力にもよるが、20〜40μm程度とすることが好ましい。これにより、サファイア基板1を必要以上に溶解または変質させることがなく、半導体層20への影響を低減することができる。
【0096】
そして、
図10B(c)に示すように、集光レンズ31の位置を調整して、レーザ光30の集光点30aの位置を、例えば、20μmだけサファイア基板1の厚さ方向において、裏面1b側にシフトするように設定する。そして、2回目のレーザ光照射により、1回目のレーザ光照射による内部割断溝7
1の裏面1b側の端部に積層するように、内部割断溝7
2が形成される。
【0097】
このレーザ光走査を複数段繰り返すことにより、
図10B(d)に示すように、サファイア基板1の所定の厚さの範囲に、内部割断溝7を形成することができる。
例えば、サファイア基板1の厚さを240μm、1回のレーザ光照射により形成される内部割断溝7
1、7
2などの高さを20μm、距離γ
1を70μm、距離γ
2を10μmとすると、形成すべき内部割断溝7の高さは160μmである。従って、8段階のレーザ光照射を行うことで、この内部割断溝7を形成することができる。
このように、厚さ方向に集光点30aの位置をシフトさせながら、レーザ光照射を多段階に行うことにより、厚いサファイア基板1であっても適切な高さの内部割断溝7を形成することができる。
【0098】
なお、集光点30aの位置は、集光レンズ31の位置を固定し、例えば、半導体ウエハ100をXYZステージに載置して、半導体ウエハ100をZ方向(サファイア基板1の厚さ方向)にシフトさせるようにしてもよい。
【0099】
ここで、
図10Cを参照して、縦分割領域4の割断起点42の線位置に沿って形成される内部割断溝7について詳細に説明する。なお、
図10Cは、縦分割領域4の割断起点42の線位置に沿って形成される内部割断溝7の延伸方向に垂直な面、すなわちA面に平行な面による断面図である。
【0100】
図10C(a)に示すように(
図10B(d)も参照)、内部割断溝7は、各縦分割領域4内のサファイア基板1の内部に扁平な帯状に形成される。このとき、半導体ウエハ100は、
図10C(b)に示すように、分割予定線8に沿って割断される。すなわち、サファイア基板1の厚さ方向において、内部割断溝7が形成された部分は主面1aに略垂直に、それ以外は斜めに割断される。
【0101】
そこで、内部割断溝7の半導体層20側の端部(
図10C(b)において下端部)から、サファイア基板1の主面1aにおける斜め割れを考慮して、割断起点42は、縦分割領域4の幅方向の中央線41に対して、右側にシフトした位置に設定されている。なお、斜め割れの方向が反対の場合は、左側にシフトして設定する。
【0102】
図10C(b)に示した例では、平面視で、割断起点42の線位置と割断位置43の線位置とは、中央線41を挟んで対称な位置となるように設定しているが、これに限定されるものではない。但し、割断位置43が、主面割断溝6のサファイア基板1の露出面である底面6b内に位置するように、割断起点42を設定することが好ましい。これによって、割断による半導体層20への割れなどの影響を低減することができる。また、割断起点42の線位置は、縦分割領域4内に位置することが好ましい。これによって、レーザ光照射による半導体層20の変質などの影響を低減することができる。
【0103】
ここで、縦分割領域4におけるサファイア基板1の斜め割れの方向について
図5および
図6を参照して説明する。
半導体ウエハ100を分割する際、
図5(b)および
図6(b)に示すように、縦分割領域4の割断起点42から、半導体ウエハ100の厚さ方向について、断面視で斜め方向に割れる。この斜め方向は、C面を主面1aとし、オリフラ1c(
図1参照)をA面とするサファイア基板1において、オリフラ1cを正面にした場合、割断起点42を下にしたときに、傾斜面が左上を向く場合を「右斜め」(
図6(b)参照)、傾斜面が右上を向く場合を「左斜め」(
図5(b)参照)とする。
【0104】
この斜め方向は、サファイア基板1の試し割りにより確認することができる。また、前記したサファイア基板1上に形成された、凸部11における頂部11aの多角形の鋭角の向きによって確認することもできる。この凸部11における頂部11aの多角形の鋭角の向きと、割れにおける斜め方向の関係について、
図5、6を参照して説明する。
図5(a)、
図6(a)に示すように、凸部11は、すべての凸部11において、頂部11aが平面視で同一形状で、かつ頂部11aの多角形(三角形)の鋭角が同一方向を向いている。
【0105】
そして、例えば、オリフラ面を手前にしたときに、
図5(a)に示すように頂部11aの多角形の鋭角の一つが、平面視で左を向いている場合には、
図5(b)に示すように左斜めに割れが生じ、
図6(a)に示すように頂部11aの多角形の鋭角の一つが、平面視で右を向いている場合には、
図6(b)に示すように右斜めに割れが生じる。このような頂部11aの多角形の鋭角の向きと、割れにおける斜め方向との関係について予め確認しておけば、頂部11aの多角形の鋭角の向きによって、割断起点42の線位置を決定することができるため、線位置の決定が容易となる。さらには、
図4に示すように、n側電極21について、発光素子部2の両側の縦分割領域4のうち、n側電極21を割断起点42の線位置に近くなる側にのみ配置する場合、頂部11aの多角形の鋭角の向きによって、n側電極21の配置を決定することができる。なお、凸部11における頂部11aの多角形の鋭角の向きと、割れにおける斜め方向の関係については、基板メーカーに予め確認しておくこともできる。
【0106】
そして、
図5(a)、(b)に示すように、多角形の頂部11aの鋭角の一つが縦横方向のうちの横方向において、すなわち、オリフラ面を手前にして左側を向いているときは、左斜めに割れが生じるため、中央線41の右側に割断起点42の線位置をシフトさせ、
図6(a)、(b)に示すように、右側を向いているときは、右斜めに割れが生じるため、中央線41の左側に割断起点42の線位置をシフトさせる。このように、多角形の頂部11aの鋭角の向きに対応して、前記中央線41の左右のいずれかに割断起点42の線位置を決定することができる。
【0107】
なお、横分割領域5の割断起点51(
図1(a)参照)の線位置に沿って割断する際は、サファイア基板1の主面1aに対して、略垂直に割ることができる。このため、横分割領域5の割断起点51(
図1(a)参照)の線位置は、横分割領域5(
図1(a)参照)の幅方向の略中央に設定され、割断起点51(
図1(a)参照)の線位置に沿って内部割断溝7を形成することになる。
また、サファイア基板1の厚さ方向において、内部割断溝7の形成範囲を示す距離γ
1および距離γ
2については、縦分割領域4に形成される内部割断溝7と同様である。
【0108】
なお、サファイア基板1は、横分割領域5(
図1(a)参照)については裂開性がなく、工程の作業中に不用意に割れることがないため、縦分割領域4よりも先に、横分割領域5(
図1(a)参照)において内部割断溝7を形成することが好ましい。
【0109】
第2シート貼り合せ工程S14は、
図10D(a)に示すように、半導体ウエハ100の裏面側、すなわちサファイア基板1の裏面1bに、ブレイキング工程S15において、サファイア基板1を衝撃から保護するための第2シート37を貼り合せるための工程である。
【0110】
第2シート37としては、第1シート36と同様のUVシートを用いることができる。また、第2シート37は、粘着性はなくてもよく、例えば、厚さ30μm程度のPET(ポリエチレンテレフタレート)などのセパレータを用いることもできる。
【0111】
ブレイキング工程S15は、
図10D(b)に示すように、半導体ウエハ100にブレード35で衝撃を加え、主面割断溝6および内部割断溝7に沿って、個々の発光素子3(
図1(b)参照)のチップに分割する工程である。
【0112】
本実施形態では、
図10D(b)に示したように、半導体ウエハ100の半導体層20を積層した側を下向きにして、平面視で、半導体ウエハ100の割断起点42の線位置が略中心になるように、上側受けブロック32および下側受けブロック33で半導体上は00を挟み込む。そして、ブレード35を用いて、上側受けブロック32および下側受けブロック33からはみ出した発光素子3の端部を、サファイア基板1の裏面1b側から、第2シート37を介して衝撃を加える。これにより、下側受けブロック33の上面のブレード35側の辺を支点33aとして、てこの原理により、上側受けブロック32および下側受けブロック33で挟まれた内部割断溝7に大きな力が作用し、サファイア基板1が分割予定線8に沿って割断される。この衝撃を加える方式によるブレイキング方法は、特にサファイア基板1のようにへき開性がなく硬度の高い基板を割断するのに適した方法である。
【0113】
なお、上側受けブロック32および下側受けブロック33の半導体ウエハ100を挟み込む面の形状および大きさは同じであることが好ましい。また、この面の幅は、
図10D(b)に示した断面視で、割断起点42の線位置の左右両側について、それぞれ発光素子3の幅の半分程度まで挟み込むことが好ましい。また、上側受けブロック32、下側受けブロック33およびブレード35の、
図10D(b)における紙面の奥行き方向の長さは、半導体ウエハ100の奥行き方向の長さ(平面視で円形の場合は、その直径を指す)と同じか、それ以上の長さとすることが好ましい。
【0114】
上側受けブロック32および下側受けブロック33としては、例えば、セラミック製やSUS(ステンレス鋼)製のブロックを用いることができる。
【0115】
また、ブレイキング工程S15では、まず、縦方向の複数の縦分割領域4について、左右何れかの端から順次に分割し、その後、複数の横分割領域5について、上下何れかの端から順次に分割する。なお、横分割領域5について、先に分割するようにしてもよい。
【0116】
なお、横方向の分割についても縦方向と同様に、割断する割断起点51の線位置が略中心になるように、割断起点51の線位置を、上側受けブロック32および下側受けブロック33で挟み、割断済みの半導体ウエハ100の端部にブレード35を用いて衝撃を加えて割断する。
【0117】
このように、ブレイキング工程S15において、すべての分割領域4,5(
図1(a)参照)について割断が終了すると、
図10E(a)に示すように、第1シート36(および第2シート37)によって保持された状態で、分割予定線8に沿って割れが生じ、発光素子3が個々のチップに分割される。
【0118】
シート剥離工程S16は、分割された発光素子3を保持する第1シート36および第2シート37を剥離し、発光素子3を個々のチップとして取り出す工程である。
第1シート36および第2シート37として、UVシートを用いた場合は、第1シート36および第2シート37に紫外線を照射して、粘着剤層を硬化させる。これにより、粘着剤層の粘着性がなくなり、
図10E(b)に示すように、半導体ウエハ100から容易に剥離することができる。そして、分割予定線8に沿って分割された個々の発光素子3のチップを取り出すことができる。
【0119】
<ブレイキング工程の変形例>
次に、
図10Fを参照して、ブレイキング工程S15の変形例について説明する。
図10Fに示した変形例では、半導体ウエハ100の半導体層20を積層した側を下向きにして、半導体ウエハ100の下側に、2個のブロック34を設置する。2個のブロック34は、割断対象となる割断起点42の線位置を中心として、左右にそれぞれ発光素子3のチップ幅の半分程度離間して配置する。そして、ブレード35Aを用いて、半導体ウエハ100の裏面、すなわち、サファイア基板1の裏面1b側から、割断起点42の線位置に第2シート37を介して加重を加える。これにより、割断対象の内部割断溝7に力が作用し、2個のブロック34の上面の割断起点42の線位置に近い辺を支点34aとして折れ曲がり、サファイア基板1が分割予定線8に沿って割断される。すなわち、3点支持方式によるブレイキング方法である。
【0120】
なお、本変形例のブロック34としては、
図10D(b)に示した実施形態における上側受けブロック32および下側受けブロック33と同様のブロックを用いることができる。
【0121】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することができる。
例えば、他の実施形態として、発光素子部が正方形である半導体ウエハについても適用することができる。
【0122】
<他の実施形態>
他の実施形態における発光素子の製造方法は、C面を主面とするサファイア基板上にGaN系半導体を積層して複数個の正方形の発光素子部を縦横方向に整列配置した半導体ウエハを、割断起点をサファイア基板の裏面側に設けて、分割して発光素子を製造する方法であって、ウエハ製造工程と、ウエハ分割工程と、を含むものである。
【0123】
図11に示すように、半導体ウエハ100Aは、サファイア基板上に、縦横方向に整列配置された平面視で正方形の複数個の発光素子部2Aと、サファイア基板のA面と平行の方向に沿って分割する横分割領域5と、A面と垂直の方向に沿って分割する縦分割領域4と、を備える。
【0124】
また、発光素子部2Aのn側電極21Aは、ここでは、縦分割領域4側にそれぞれ3個ずつ設けられている。ただし、発光素子部2Aのn側電極21Aは、縦分割領域4側の少なくとも一方側に配置されていればよい。一方側にのみn側電極21Aを配置する場合は、両側の縦分割領域4のうち、縦分割領域4の幅方向の中央線41から幅方向の一方側に所定の距離をシフトした割断起点42の線位置に近くなる側にのみ配置されていることが好ましい。
その他、ウエハ製造工程、ウエハ分割工程につては、前記した発光素子の製造方法と同様である。
【0125】
<その他>
発光素子部2、2Aのn側電極21、21Aの個数は特に限定されるものではなく、1個でもよく、2個以上であってもよい。
さらに、本発明を行うにあたり、前記各工程に悪影響を与えない範囲において、前記各工程の間あるいは前後に、前記した工程以外の工程を含めてもよい。例えば、サファイア基板を洗浄する基板洗浄工程や、ごみ等の不要物を除去する不要物除去工程や、発光素子の切断面を研磨等する仕上げ工程等を含めてもよい。
【実施例】
【0126】
次に、本発明における実施形態の製造方法により作製した発光素子およびその製造方法について説明する。
【0127】
まず、サファイア基板に活性層を含むGaN系半導体層とn側電極およびp側電極を形成した半導体ウエハについて、サファイア基板の裏面を研磨して、基板の厚さが85〜240μmとなるようにする。なお、発光素子部のダイスサイズ(チップサイズ)は、表2に示す3種類について作製する。平面視のサイズは、サイズ1が230μm×230μm、サイズ2が500μm×290μm、サイズ3が750μm×550μmである。
【0128】
次に、半導体層を積層した側の面にUVシート(日東電工社製UE111−AJ)を貼り合せる。
【0129】
次に、半導体ウエハのUVシートを貼り合せた面を下向きにステルスレーザ加工装置に載置し、サファイア基板の裏面側からフェムト秒レーザを照射し、サファイア基板の内部に割断溝を形成する。ダイス(チップ)サイズとサファイア基板の厚さに応じて、表2の左端の欄に記載した段数でレーザ光照射を行う。また、1段目の照射位置は、サファイア基板の半導体層を積層した面から70μm離れた位置とし、1段当りの割断溝の、基板の厚さ方向の高さは20μmである。
【0130】
ステルスレーザ加工による割断溝の形成後、サファイア基板の裏面側にUVシートを貼り合せ、
図10D(b)に示した衝撃方式によるブレイキング方法によりチップに分割する。
【0131】
UVシートを剥離し、個々に分割されたチップをリードフレームに実装し、樹脂で封止してLED(発光ダイオード)を作製する。
【0132】
作製したLEDについて、発光出力を測定し、各サイズについてサファイア基板の厚さが85μmの場合の発光出力を100[%]としたときの、各厚さにおける出力比を計算する。その結果を表2に示す。また、各サイズについて、サファイア基板の厚さと出力比との関係を
図12に示す。
【0133】
【表2】
【0134】
表2および
図12に示すように、サファイア基板の厚さが140μm以上で高い出力を得ることができ、160μm〜180μmで特に高い出力を得ることができる。