特許第5747774号(P5747774)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5747774マイクロリアクターを用いたシリコーン樹脂の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5747774
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】マイクロリアクターを用いたシリコーン樹脂の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/06 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
   C08G77/06
【請求項の数】10
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2011-219370(P2011-219370)
(22)【出願日】2011年10月3日
(65)【公開番号】特開2013-79313(P2013-79313A)
(43)【公開日】2013年5月2日
【審査請求日】2013年11月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(72)【発明者】
【氏名】黒田 泰嘉
(72)【発明者】
【氏名】山本 謙児
(72)【発明者】
【氏名】廣神 宗直
【審査官】 山村 周平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−228701(JP,A)
【文献】 特開2002−138204(JP,A)
【文献】 特開2009−286645(JP,A)
【文献】 特開2006−188620(JP,A)
【文献】 特開2010−083981(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/030952(WO,A1)
【文献】 特開2002−161138(JP,A)
【文献】 米国特許第02676182(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00−77/62
C08L 83/00−83/16
B01J 19/00−19/32
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの流路を有し、各流路の断面積がそれぞれ10mm2以下であるマイクロリアクター装置を用いたシリコーン樹脂の製造方法であって、一方の流路より水ガラス水溶液(SiO2/Na2O水溶液)を、もう一方の流路より水と混合したときに酸を発生する下記一般式(1)で示される有機珪素封止化合物と、炭化水素系溶剤及び/又は極性水溶性有機化合物との混合物をマイクロリアクター中に導入し、酸触媒を用いずに、該マイクロリアクター中で混合しながら連続的に反応を行い、下記式(2)で表されるシリコーン樹脂を得ることを特徴とするシリコーン樹脂の製造方法。
13SiY・・・(1)
(式中、Yはハロゲン原子又は酸基であり、R1はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜18の非置換もしくは置換の、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基、アルキルシロキシ基、シリルアルキル基、アルキルシリルアルキル基、シリル基、又はシロキシ基である。)
(R13SiO1/2p(SiO4/2q・・・(2)
(式中、R1は上記と同じ。p、qは0.2≦p≦1.5、0<q≦1で、0.2≦p/q≦1.0を満たす正数である。)
【請求項2】
少なくとも2つの流路を有し、各流路の断面積がそれぞれ10mm2以下であるマイクロリアクター装置を用いたシリコーン樹脂の製造方法であって、一方の流路より水ガラス水溶液(SiO2/Na2O水溶液)を、もう一方の流路より水と混合したときに酸を発生する下記一般式(3)で示される有機珪素化合物と、炭化水素系溶剤及び/又は極性水溶性有機化合物との混合物をマイクロリアクター中に導入し、酸触媒を用いずに、該マイクロリアクター中で混合し連続的に反応を行い、続けて、上記で得られた反応物混合液を別のマイクロリアクターの一方の流路より、下記一般式(4)で示される有機珪素封止化合物と、炭化水素系溶剤及び/又は極性水溶性有機化合物との混合物を別のマイクロリアクターの更なる一方の流路より該マイクロリアクター中に導入し、混合しながら連続的に反応を行い、下記式(5)で表されるシリコーン樹脂を得ることを特徴とするシリコーン樹脂の製造方法。
24-mSiYm・・・(3)
(式中、Yはハロゲン原子又は酸基であり、R2はそれぞれ独立して、水素原子又は水酸基、アルコキシ基、アルコキシシリル基、炭素数1〜10の非置換もしくは置換のアルキル基、炭素数5〜10の非置換もしくは置換のシクロアルキル基、炭素数6〜10の非置換もしくは置換のアリール基、及び不飽和基,エポキシ基,アミノ基,メルカプト基もしくはハロゲン原子を有する基からなる群から選ばれる1種の基であり、mは2又は3である。)
13SiY2・・・(4)
(式中、Y2はハロゲン原子、水酸基、−OR7基又は−OSiR83基であり、R7及びR8はそれぞれ独立に水素原子又は一価の炭化水素基であり、R1はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜18の非置換もしくは置換の、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基、アルキルシロキシ基、シリルアルキル基、アルキルシリルアルキル基、シリル基、又はシロキシ基である。)
(R13SiO1/2a−(R22SiO2/2b−(R2SiO3/2c−(SiO4/2d
・・・(5)
(式中、R1、R2は上記と同じ、a、b、c及びdはそれぞれ0.2≦a≦1.5、0≦b、0≦c、0<b+c、0<d≦1、0.2≦a/d≦1.5、0≦b/d≦5、0≦c/d≦5を満たす正数である。)
【請求項3】
少なくとも2つの流路を有し、各流路の断面積がそれぞれ10mm2以下であるマイクロリアクター装置を用いたシリコーン樹脂の製造方法であって、一方の流路より水ガラス水溶液(SiO2/Na2O水溶液)を、もう一方の流路より水と混合したときに酸を発生する下記一般式(6)で示される有機珪素化合物及び下記一般式(4)で示される有機珪素封止化合物と、炭化水素系溶剤及び/又は極性水溶性有機化合物との混合物をマイクロリアクター中に導入し、酸触媒を用いずに、該マイクロリアクター中で混合し連続的に反応を行い、下記式(5)で表されるシリコーン樹脂を得ることを特徴とするシリコーン樹脂の製造方法。
13SiY2・・・(4)
(式中、Y2はハロゲン原子、水酸基、−OR7基又は−OSiR83基であり、R7及びR8はそれぞれ独立に水素原子又は一価の炭化水素基、R1はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜18の非置換もしくは置換の、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基、アルキルシロキシ基、シリルアルキル基、アルキルシリルアルキル基、シリル基、又はシロキシ基である。)
24-mSiY2m・・・(6)
(式中、Y2は前記と同じ、R2はそれぞれ独立して、水素原子又は水酸基、アルコキシ基、アルコキシシリル基、炭素数1〜10の非置換もしくは置換のアルキル基、炭素数5〜10の非置換もしくは置換のシクロアルキル基、炭素数6〜10の非置換もしくは置換のアリール基、及び不飽和基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基もしくはハロゲン原子を有する基からなる群から選ばれる1種の基であり、mは2又は3である。ただし、式(4)及び式(6)で示される有機珪素化合物混合物のY2の全部もしくは一部がハロゲン原子又は酸基である。)
(R13SiO1/2a−(R22SiO2/2b−(R2SiO3/2c−(SiO4/2d
・・・(5)
(式中、R1、R2は前記と同じ、a、b、c及びdはそれぞれ0.2≦a≦1.5、0≦b、0≦c、0<b+c、0<d≦1、0.2≦a/d≦1.5、0≦b/d≦5、0≦c/d≦5を満たす正数である。)
【請求項4】
前記マイクロリアクターが、断面積2mm2以下の流路を持つことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂の製造方法。
【請求項5】
前記マイクロリアクターが、直径3mm以下のプラスチック製チューブをチューブコネクターで結合して、流路としたものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂の製造方法。
【請求項6】
前記マイクロリアクターを反応段階に応じ単独又は多段に配置したことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記有機珪素封止化合物が、トリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、フェニルジメチルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン及びジフェニルメチルクロロシランから選ばれる1種以上である請求項1〜6のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記炭化水素系溶剤が、トルエン、キシレン、直鎖状炭化水素及び分岐状炭化水素から選ばれる1種以上である請求項1〜7のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂の製造方法。
【請求項9】
前記極性水溶性有機化合物が、炭素数1〜12のアルコールの1種以上である請求項1〜8のいずれか1項に記載のシリコーン樹脂の製造方法。
【請求項10】
前記アルコールが、イソプロパノール、メタノール及びエタノールから選ばれる1種以上である請求項9記載のシリコーン樹脂の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロリアクター装置を用いた水ガラスを出発原料とするシリコーン樹脂の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MQレジンと称される一群のオルガノポリシロキサンは公知である。製造方法としては、バッチ法が主であり(米国特許第2676182号明細書、米国特許第2814601号明細書、米国特許第5391673号明細書、特開昭63−256628号公報:特許文献1〜4)、一部、連続法も知られている(特開2001−192453号公報:特許文献5)。
【0003】
MQレジンは、シロキサン鎖の中にM単位(R3SiO1/2)(Rは一価の有機基、以下同じ)とQ単位(SiO2)を持つことが特徴で、一般にQ単位を含むものが溶剤不溶性である中で、トルエンのような溶剤に可溶なシリコーンレジンとして特徴付けられる。目的によって、D単位(R2SiO2/2)、T単位(RSiO3/2)を原料として併用し、構造中に入れることや、Rの一価の有機基を種々変化させ得ることは、前掲の文献に詳述されている。
【0004】
このようなMQレジンは、皮膜形成性や相溶性に優れ、シリコーン粘着剤、化粧品基材、液体射出成形材、離型剤等の主原料として、またシリコーンゴムの強度向上用成分として、広く使用されている。
【0005】
MQレジンの製法で出発Q単位材料が水ガラスの場合、バッチ式、連続法にかかわらず、これらの製造方法はいずれも、以下の工程を経て行われる。
水ガラスを水性媒体中、酸の存在下で重合してシリカヒドロゾルを形成し、このシリカヒドルゾルの進みすぎる重合を極性水溶性有機化合物で抑制する工程、更に、水と炭化水素系溶剤とからなる反応媒体中で、重合を抑制したシリカヒドロゾルを有機珪素封止化合物で封止してMQレジンを形成する工程、更に、反応混合物を、水性相とMQレジンを含む有機相とに分離させる工程、MQレジンが残留シラノール基を含有している場合、該シラノール基をアルカリ触媒の存在下で縮合するか、該シラノール基をシラザン類及びハロゲン化シラン類の1種以上と反応させることにより、残留シラノール基の量を減らす工程などが行われ、更に必要に応じ、有機相を分離する工程後、又は残留シラノールを低減する工程、あるいは残留シラノールを低減後に、更にMQレジンを含む有機相を濃縮する工程が行われる。
【0006】
しかしながら、バッチ式においては、バッチ毎にM単位とQ単位の比率が異なったり、残存シラノール量が異なったり、重合度が異なるなどのばらつきが発生する。このバッチ毎にばらついたMQレジンを用いたシリコーン粘着剤において、その粘着特性にばらつきが生じる場合がある。
【0007】
更に、バッチ式で酸触媒の添加を行わずにMQレジンの製造を行った場合、シリカヒドロゾル形成時にシラノール基の封鎖が十分に進行せず、シリカヒドロゾルの重合が進み、水にも炭化水素系溶剤にも不溶のシリカ単体となり、目的とするMQレジンが得られない。
【0008】
特許文献4記載のMQレジンを連続法で製造する方法では、バッチ式で行う製造工程と同様の工程を、酸触媒を用いて連続的に行うことにより、MQレジンが得られることが例示されているが、酸触媒を用いずに製造することについては触れられていない。
【0009】
更に、特許文献3においては、その流路径についても触れられておらず、流路径が大きな場合、酸触媒を用いない方法にて製造されたシリカヒドロゾルの封止は不安定であり、シリカヒドロゾルの重合が進み、水にも炭化水素系溶剤にも不溶のシリカ単体となり、目的とするMQレジンが得られない。
【0010】
また、近年環境問題が大きく取り上げられ、工業廃水の水質の管理が非常に重要になってきている。廃水への有機成分は、炭化水素系溶剤、未反応原料とその副生物がその主成分であり、これらの排出を最少とするプロセスが必要とされている。
【0011】
この場合、従来の水ガラス法の問題点は下記の通りである。
(i)廃水のBOD負荷が大きい。水と相溶性のよい極性水溶性有機化合物の使用が原因で極性水溶性有機化合物は水層に溜まり、極性水溶性有機化合物の回収コストも大きい。
(ii)M単位の配合が大過剰であり、原材料使用効率が悪い。
(iii)シロキサン収率が悪い。
(iv)反応が多段で、設備効率が悪い。
(v)配合M/Qと製品M/Qに差があり、製品のコントロールが難しい。
(vi)多量の酸を使用するため、ろ過に負担がかかり、中和後に生じる多量の中和塩の処理が必要である。
【0012】
上記問題点を大幅に改善した水ガラスを出発原料とするオルガノポリシロキサン(MQレジン)の製造方法が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第2676182号明細書
【特許文献2】米国特許第2814601号明細書
【特許文献3】米国特許第5391673号明細書
【特許文献4】特開昭63−256628号公報
【特許文献5】特開2001−192453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたもので、シリカヒドロゾル形成時に、酸触媒、及び場合により極性水溶性有機化合物を使用せず、有機珪素封止化合物でシリカヒドロゾルを封止することにより、廃棄物が少なく、効率よく、所定の構造を持つMQレジンを得る製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者らは、前記目的を達成すべく、鋭意研究検討した結果、マイクロリアクターを用いたシリコーン樹脂(MQレジン)の製造方法を発明するに至った。
即ち、シリコーン樹脂(MQレジン)の製造方法として、マイクロリアクターを用いることにより、酸触媒、及び場合により極性水溶性有機化合物を使用せず、廃棄物が少なく、効率よく、所定の構造を持つMQレジンが得られることを知見し、本発明をなすに至った。
【0016】
従って、本発明は、下記に示すマイクロリアクターを用いたシリコーン樹脂の製造方法を提供する。
〔1〕
少なくとも2つの流路を有し、各流路の断面積がそれぞれ10mm2以下であるマイクロリアクター装置を用いたシリコーン樹脂の製造方法であって、一方の流路より水ガラス水溶液(SiO2/Na2O水溶液)を、もう一方の流路より水と混合したときに酸を発生する下記一般式(1)で示される有機珪素封止化合物と、炭化水素系溶剤及び/又は極性水溶性有機化合物との混合物をマイクロリアクター中に導入し、酸触媒を用いずに、該マイクロリアクター中で混合しながら連続的に反応を行い、下記式(2)で表されるシリコーン樹脂を得ることを特徴とするシリコーン樹脂の製造方法。
13SiY・・・(1)
(式中、Yはハロゲン原子又は酸基であり、R1はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜18の非置換もしくは置換の、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基、アルキルシロキシ基、シリルアルキル基、アルキルシリルアルキル基、シリル基、又はシロキシ基である。)
(R13SiO1/2p(SiO4/2q・・・(2)
(式中、R1は上記と同じ。p、qは0.2≦p≦1.5、0<q≦1で、0.2≦p/q≦1.0を満たす正数である。)
〔2〕
少なくとも2つの流路を有し、各流路の断面積がそれぞれ10mm2以下であるマイクロリアクター装置を用いたシリコーン樹脂の製造方法であって、一方の流路より水ガラス水溶液(SiO2/Na2O水溶液)を、もう一方の流路より水と混合したときに酸を発生する下記一般式(3)で示される有機珪素化合物と、炭化水素系溶剤及び/又は極性水溶性有機化合物との混合物をマイクロリアクター中に導入し、酸触媒を用いずに、該マイクロリアクター中で混合し連続的に反応を行い、続けて、上記で得られた反応物混合液を別のマイクロリアクターの一方の流路より、下記一般式(4)で示される有機珪素封止化合物と、炭化水素系溶剤及び/又は極性水溶性有機化合物との混合物を別のマイクロリアクターの更なる一方の流路より該マイクロリアクター中に導入し、混合しながら連続的に反応を行い、下記式(5)で表されるシリコーン樹脂を得ることを特徴とするシリコーン樹脂の製造方法。
24-mSiYm・・・(3)
(式中、Yはハロゲン原子又は酸基であり、R2はそれぞれ独立して、水素原子又は水酸基、アルコキシ基、アルコキシシリル基、炭素数1〜10の非置換もしくは置換のアルキル基、炭素数5〜10の非置換もしくは置換のシクロアルキル基、炭素数6〜10の非置換もしくは置換のアリール基、及び不飽和基,エポキシ基,アミノ基,メルカプト基もしくはハロゲン原子を有する基からなる群から選ばれる1種の基であり、mは2又は3である。)
13SiY2・・・(4)
(式中、Y2はハロゲン原子、水酸基、−OR7基又は−OSiR83基であり、R7及びR8はそれぞれ独立に水素原子又は一価の炭化水素基であり、R1はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜18の非置換もしくは置換の、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基、アルキルシロキシ基、シリルアルキル基、アルキルシリルアルキル基、シリル基、又はシロキシ基である。)
(R13SiO1/2a−(R22SiO2/2b−(R2SiO3/2c−(SiO4/2d
・・・(5)
(式中、R1、R2は上記と同じ、a、b、c及びdはそれぞれ0.2≦a≦1.5、0≦b、0≦c、0<b+c、0<d≦1、0.2≦a/d≦1.5、0≦b/d≦5、0≦c/d≦5を満たす正数である。)
〔3〕
少なくとも2つの流路を有し、各流路の断面積がそれぞれ10mm2以下であるマイクロリアクター装置を用いたシリコーン樹脂の製造方法であって、一方の流路より水ガラス水溶液(SiO2/Na2O水溶液)を、もう一方の流路より水と混合したときに酸を発生する下記一般式(6)で示される有機珪素化合物及び下記一般式(4)で示される有機珪素封止化合物と、炭化水素系溶剤及び/又は極性水溶性有機化合物との混合物をマイクロリアクター中に導入し、酸触媒を用いずに、該マイクロリアクター中で混合し連続的に反応を行い、下記式(5)で表されるシリコーン樹脂を得ることを特徴とするシリコーン樹脂の製造方法。
13SiY2・・・(4)
(式中、Y2はハロゲン原子、水酸基、−OR7基又は−OSiR83基であり、R7及びR8はそれぞれ独立に水素原子又は一価の炭化水素基、R1はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜18の非置換もしくは置換の、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基、シクロアルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基、アルキルシロキシ基、シリルアルキル基、アルキルシリルアルキル基、シリル基、又はシロキシ基である。)
24-mSiY2m・・・(6)
(式中、Y2は前記と同じ、R2はそれぞれ独立して、水素原子又は水酸基、アルコキシ基、アルコキシシリル基、炭素数1〜10の非置換もしくは置換のアルキル基、炭素数5〜10の非置換もしくは置換のシクロアルキル基、炭素数6〜10の非置換もしくは置換のアリール基、及び不飽和基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基もしくはハロゲン原子を有する基からなる群から選ばれる1種の基であり、mは2又は3である。ただし、式(4)及び式(6)で示される有機珪素化合物混合物のY2の全部もしくは一部がハロゲン原子又は酸基である。)
(R13SiO1/2a−(R22SiO2/2b−(R2SiO3/2c−(SiO4/2d
・・・(5)
(式中、R1、R2は前記と同じ、a、b、c及びdはそれぞれ0.2≦a≦1.5、0≦b、0≦c、0<b+c、0<d≦1、0.2≦a/d≦1.5、0≦b/d≦5、0≦c/d≦5を満たす正数である。)
〔4〕
前記マイクロリアクターが、断面積2mm2以下の流路を持つことを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載のシリコーン樹脂の製造方法。
〔5〕
前記マイクロリアクターが、直径3mm以下のプラスチック製チューブをチューブコネクターで結合して、流路としたものであることを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のシリコーン樹脂の製造方法。
〔6〕
前記マイクロリアクターを反応段階に応じ単独又は多段に配置したことを特徴とする〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のシリコーン樹脂の製造方法。
〔7〕
前記有機珪素封止化合物が、トリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、フェニルジメチルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン及びジフェニルメチルクロロシランから選ばれる1種以上である〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のシリコーン樹脂の製造方法。
〔8〕
前記炭化水素系溶剤が、トルエン、キシレン、直鎖状炭化水素及び分岐状炭化水素から選ばれる1種以上である〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載のシリコーン樹脂の製造方法。
〔9〕
前記極性水溶性有機化合物が、炭素数1〜12のアルコールの1種以上である〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載のシリコーン樹脂の製造方法。
〔10〕
前記アルコールが、イソプロパノール、メタノール及びエタノールから選ばれる1種以上である〔9〕記載のシリコーン樹脂の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明のシリコーン樹脂の製造方法を用いると、設定したとおりの原料配合比で均一な反応が可能であり、酸触媒を用いず、廃棄物が少なく、効率よく所定の構造を有するMQレジン等のシリコーン樹脂を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】マイクロリアクターによるMQレジンの製造方法概念図である。
図2】本発明の実施例1で得られたMQレジンのGPCチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、シリコーン樹脂を製造する製造方法において、マイクロリアクターを用いて、不溶物となるシリカ単体の副生なしに、酸触媒を用いずにシリコーン樹脂、特にオルガノポリシロキサン(MQレジン)を製造することを特徴とするものである。
【0020】
本発明は、マイクロリアクターを用いて、水ガラスの酸中和及びオルガノシリル化を同時に行う。本発明者らは、水ガラスの酸処理工程において生成するシラノール基の縮合反応による分子量変化やゲル化等についての防止方法を詳細に検討した結果、水ガラスからシリカヒドロゾルを形成するのに酸触媒を用いて行うのではなく、マイクロリアクターを用いて、オルガノシリル化剤と水ガラスを直接反応させることにより、生成したシラノール基の縮合反応を抑制し、不溶物の生成を防止できることを見出した。
【0021】
具体的には、水ガラスからシリカヒドロゾルを形成する際に、酸触媒を添加せず、水と混合したときに酸を発生する有機珪素封止化合物を用い、該有機珪素封止化合物が水と混合したときに発生する酸により系を酸性とし、シリカヒドロゾルを形成する。この場合、有機珪素封止化合物がすでに系中に存在しているため、直ちにシラノール基の封止がなされる。
【0022】
マイクロリアクターを用いて上記反応を行うと、均一な反応が可能であり、温度制御が容易であり、精密な混合が制御可能であるといった点から、常に設定したとおりの原料配合比で均一な反応が可能であり、任意の有機珪素封止化合物と水ガラスの割合で不溶物を伴わずに、目的とするMQレジン等のシリコーン樹脂が得られる。
【0023】
なお、バッチ式においては、水ガラス及び有機珪素封止化合物のいずれかが大過剰な状態でオルガノシリル化が行われるため、酸触媒を用いずにオルガノシリル化を行うと、シラノール基の縮合及び封止が制御できず、不溶物を生じてしまい、MQレジンが効率よく得られず、一部得られたMQレジンも、混合時の初期と末期ではその配合比が異なり、均一なものとならない。
【0024】
マイクロリアクターやマイクロミキサー、これらを使用したマイクロリアクションシステムは、3ミリメートル未満の範囲のチャネル寸法もしくは3ミリリットル未満の範囲の容積を有する極めて小型化された管状の反応器であり、かつそれ自体は公知である(例えば:国際公開第2006/030952号パンフレット)。
なお、本発明においては、これらを総称して「マイクロリアクター」という。
【0025】
反応原料溶液を導入するための少なくとも2つの導入用微小流路及びこれら少なくとも2つの導入用微小流路が接合してなる反応用微小流路を有し、そこで合流する反応原料溶液間の化学反応、例えば、所定の物質の生産を目的とした反応原料間の合成反応、もしくは検査を目的とした試薬と被検体との反応を行わせるためのマイクロリアクターは、流路断面積が微小であることから、反応原料や試薬、検体の体積が少量で十分である。
【0026】
更に、流路を流れる際の接触面積(単位体積当たりの表面積)が大きくなるので反応性が高く、精密な混合が制御可能であり、熱交換効率が極めて高く、温度制御を迅速に行うことが容易であるため、反応生成物の立体化学、幾何異性、及び位置異性に対して高い選択性が得られ、反応の効率化、均一化が可能である等のメリットがある。また、生産量を増大する際、同じ装置を複数台並べることにより同一条件での再現が容易である。
【0027】
次に、本発明のシリコーン樹脂(MQレジン)の製造方法について、更に具体的に説明する。
本発明の製造方法は、マイクロリアクターに接続された一方の流路より水ガラス水溶液を、もう一方の流路より水と混合したときに酸を発生する有機珪素封止化合物と炭化水素系溶剤及び/又は極性水溶性有機化合物との混合物をマイクロリアクター中に導入し、混合しながら連続的に反応を行い、MQレジンを得る。
【0028】
本発明のシリコーン樹脂(MQレジン)の製造方法における原料物質は、Q単位を与える水ガラスと、M単位を与える有機珪素封止化合物(以下、オルガノシリル化剤ともいう)である。
【0029】
この場合、Q単位を与える水ガラスは、水ガラス又は珪酸ソーダの名で広く使用されているものでよい。水ガラスは水で希釈され、SiO2/Na2O含有量の違いにより1号、2号、3号がJIS規格品としてある。また固形状でも提供されている。更に、水ガラスは、水で希釈して濃度を下げると重合度が低下することが知られている。材料の安定性や反応の確実性と安定性を考え、本発明においては、水溶液として反応を開始させるが、希釈しすぎると溶剤の廃水移行量や廃棄物の増量、不均一系での反応上の問題が起こるので、市販されている水ガラス溶液を原液で使用する、又は水で希釈してSiO2濃度を5〜30質量%、好ましくは10〜30質量%、更に好ましくは20〜40質量%の範囲内に調整して使用するのが好ましい。上記濃度が5質量%未満でも特に問題はないが、収率や廃棄物処理の点から経済的に不利である。
【0030】
本発明で使用される、水と混合したときに酸を発生するオルガノシリル化剤は、下記一般式(1)で示される化合物を用いるものである。
13SiY・・・(1)
【0031】
上記式中、R1はそれぞれ独立に水素原子、又は炭素原子数1〜18、特に1〜8の非置換もしくは置換の、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、シクロヘキセニル基等のシクロアルケニル基、エチニル基等のアルキニル基、シクロアルキニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ヘテロアリール基、アルキルシリル基、アルキルシロキシ基、シリルアルキル基、アルキルシリルアルキル基、シリル基、又はシロキシ基であり、また、置換基としてはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基等の水素原子の一部又は全部を置換したアクリロキシ基、メタクリロキシ基、グリシジル基等が挙げられる。
Yは、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子又はカルボキシル基等の酸基である。
【0032】
上記式(1)で示されるオルガノシリル化剤の代表的な例としては、トリメチルクロロシラン、トリメチルブロモシラン、トリエチルクロロシラン、トリエチルブロモシラン、トリプロピルクロロシラン、フェニルジメチルクロロシラン、トリフェニルフルオロシラン、トリフェニルクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、3−アクリロキシプロピルジメチルクロロシラン、3−メタクリロキシプロピルジメチルクロロシラン、グリシジルジメチルクロロシラン、トリメチルシリルカルボン酸などが挙げられる。
上記オルガノシリル化剤としては、合成の容易さ、あるいは入手の容易さから、特に、トリメチルクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン、フェニルジメチルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン、ジフェニルメチルクロロシランが好ましい。
上記オルガノシリル化剤は、1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0033】
本発明で使用されるオルガノシリル化剤の量は、シリル化反応での所望の反応率により変わり得るが、水ガラス中の珪酸原子の使用モル数に対して、通常20〜150モル%、特に40〜120モル%、とりわけ60〜120モル%となる範囲である。オルガノシリル化剤の量が20モル%未満であると、反応中にシロキシシラノール基の縮合反応により不溶性成分が生成する傾向がある。150モル%を超えると反応に寄与しない成分が発生し、経済的に不利となる。
【0034】
本発明において、有機珪素封止化合物とともに供給される炭化水素系溶剤としては、所望のMQレジン生成物が可溶であり、極性水溶性有機化合物が比較的不溶である炭化水素系溶剤が適当であり、具体的には、トルエン、キシレン及び直鎖状又は分岐状炭化水素、例えば、ヘプタン、オクタン、イソドデカン並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0035】
本発明で用いるのに適当な炭化水素系溶剤の量は、用いる極性水溶性有機化合物の種類、オルガノシリル化剤の濃度、オルガノシリル化剤の種類やシリル化率等により異なるため、一概に限定されるものではない。
従って、本炭化水素系溶剤の総量も特に限定されるものではないが、好ましくは本発明により生成したシリコーン樹脂100質量部に対して炭化水素系溶剤の総量が25〜1,900質量部、好ましくは50〜400質量部、特に50〜150質量部が望ましい。炭化水素系溶剤の総量が25質量部未満では、オルガノシリル化時に不溶物が生成する可能性がある。1,900質量部を超えても、製造上特に問題はないが、多量に用いた場合、得られた反応液を濃縮する場合や、廃棄物やリサイクルの点からも経済的に不利である。
【0036】
本発明において使用される極性水溶性有機化合物としては、アルコール類、グリコール類、ケトン類並びにこれらの混合物が例示でき、具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノールなどの有機アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類が挙げられる。好ましくは炭素数1〜12のアルコールであり、特に好ましくはイソプロパノール、メタノール、エタノールである。
上記極性水溶性有機化合物は、1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
本発明において水ガラスを封止するオルガノシリル化剤に加える極性水溶性有機化合物の量は、水ガラスの使用量やpH、用いる極性水溶性有機化合物の種類、オルガノシリル化剤の濃度、オルガノシリル化剤の種類やシリル化率等により異なるため、一概に限定されるものではない。
従って、極性水溶性有機化合物の総量も特に限定されるものではないが、好ましくは本発明により得られるシリコーン樹脂100質量部に対して極性水溶性有機化合物の総量が0〜1,900質量部、好ましくは0〜400質量部、更に好ましくは0〜150質量部で行われるのが望ましい。オルガノシリル化剤の種類やシリル化率によっては、極性水溶性有機化合物の総量が0質量部であってもオルガノシリル化時に不溶物が生成しない。オルガノシリル化率が20〜50モル%と低い場合、オルガノシリル化反応時に反応生成物が析出してしまう場合があり、この場合は極性水溶性有機化合物を加えることが好ましい。また極性水溶性有機化合物の総量が1,900質量部を超える量であっても、製造上特に問題はないが、多量に用いた場合、廃棄物やリサイクルの点からも経済的に不利である。
【0038】
本発明の製造方法において、水ガラスのオルガノシリル化の温度は特に限定されるものではないが、一般的には0〜100℃、特に0〜20℃が好ましい。0℃未満であると反応速度が低下する場合があり、また100℃を超えると、水ガラスを酸処理して生成したシロキシシラノールの縮合反応が、シリル化反応よりも促進され、分子量変化が多少進行することがある。
【0039】
本発明に用いるマイクロリアクターとしては、断面積が10mm2以下である流路を持つものを使用し、流路の断面積として、好ましくは5mm2以下であり、より好ましくは2mm2以下である。断面積が10mm2を超える場合、水ガラスとオルガノシリル化剤の接触が十分に行われず、オルガノシリル化が不十分なものとなる。なお、上記断面積は、0.1mm2以上であることが好ましい。
【0040】
また、反応用流路の長さとしては、上記2液が接触した時点から反応が開始されるため、導入用流路長は反応に影響がなく、適宜な長さを持てばよい。反応用流路長としては、オルガノシリル化剤にもよるが、数mmから数十m、具体的には1cm以下から10mを超えるものまで適宜使用できる。好ましくは、反応が完結する長さとして、10cm〜3mが選ばれる。
流速、流量は液の濃度、粘度、流路径により異なり規定できないため、反応が可能な流量、流速を適宜選択すればよい。
【0041】
本発明に用いるマイクロリアクターとしては、断面積が10mm2以下である流路を少なくとも2つ有していれば、市販のものを用いてもよいし、チューブ径が3mm以下のプラスチック製チューブを結合して流路を作製してもよい。最も簡便な形状としては、プラスチック製チューブをY字型あるいはT字型チューブコネクターで結合して作製した流路が挙げられるが、必ずしもY字型あるいはT字型に限定されるわけではない。
【0042】
本発明で使用し得るプラスチックチューブではなく、所定の形状を持った市販のマイクロリアクター反応流路としては、柴田科学株式会社や、株式会社フジキンSIGMA−ALDRICHなどから販売されており、任意の流路径や流路形状を適宜選択して使用できる。
【0043】
本発明におけるマイクロリアクターとしては、オルガノシリル化を行う単独でもよく、複数個のマイクロリアクターを連結した多段式でもよい。好ましくは多段式であり、オルガノシリル化を行いMQレジンを形成する工程以降の、反応混合物を水性相とMQレジンを含む有機相とに分離させる工程や、MQレジンが残留シラノール基を含有している場合、該シラノール基をアルカリ触媒の存在下で縮合するか、該シラノール基をシラザン類及びハロゲン化シラン類の1種以上と反応させることにより、残留シラノール基の量を減らす工程などを連続して行うことが好ましい。オルガノシリル化工程単独では反応液が一定量溜まるまで工程が中断することとなり生産効率的に不利である。
【0044】
本発明における、液流量及び系内圧力は、マイクロリアクターの流路径によるため、特に特定されるものではなく、流路径が詰まる、あるいは圧力により流路が外れることがなきよう、適宜設定すればよい。
流路径が詰まる主たる要因としては、ポンプの脈動が挙げられる。ポンプが脈動することにより、流路内への水ガラス及びオルガノシリル化剤の供給が不均一となり、生成した水ガラスのシラノール基の縮合反応の進行がばらつき、不溶物を生じる場合があるので、均一な送液を行う必要がある。脈動の起きないポンプは市販されているものを用いるとよい。
【0045】
得られたMQレジン混合物を、水性相とMQレジンを含む有機相とに分離させる工程は、静置後二層に分かれるので、これを分離して有機層を得ることができる。
【0046】
更に、得られたMQレジンにシラノール基が残存する場合、該シラノール基をアルカリ触媒の存在下で縮合するか、該シラノール基をシラザン類及びハロゲン化シラン類の1種以上と反応させることにより、残留シラノール基の量を減らしてもよい。
ここで、アルカリ触媒としては、トリエタノールアミンなどのアミン類、NaOHやKOHなどの無機塩、アンモニア水など、また、シラザン類、ハロゲン化シラン類としては、ヘキサメチルジシラザン、トリメチルクロロシラン、トリフェニルクロロシラン等が挙げられる。
【0047】
更に必要に応じ、MQレジンを含む有機相を濃縮することができる。
【0048】
上記方法により得られたMQレジンは、下記式(2)で示されるものである。
(R13SiO1/2p(SiO4/2q・・・(2)
(式中、R1は上記と同じであり、pは0.2≦p≦1.5、好ましくは0.4≦p≦1.0、qは0<q≦1で、p/qは0.2≦p/q≦1.0、好ましくは0.4≦p/q≦0.9を満たす正数である。)
【0049】
更に、本発明のシリコーン樹脂の製造方法では、上記製法で得られるMQレジンに、下記式(7)で表されるD単位及び/又は下記式(8)で表されるT単位源を導入したMDQレジンやMTQレジン、MDTQレジンを調製することも可能である。
22SiO2/2・・・(7)
2SiO3/2・・・(8)
(式中、R2はそれぞれ独立して、水素原子又は水酸基、アルコキシ基、アルコキシシリル基、炭素数1〜10の非置換もしくは置換のアルキル基、炭素数5〜10の非置換もしくは置換のシクロアルキル基、炭素数6〜10の非置換もしくは置換のアリール基、及び不飽和基,エポキシ基,アミノ基,メルカプト基もしくはハロゲン原子を有する基からなる群から選ばれる1種の基である。)
【0050】
上記式(7)及び(8)で表される単位を与えるオルガノシリル化剤としては、下記一般式(3)で示される有機珪素化合物を用いることができる。
24-mSiYm・・・(3)
(式中、Y及びR2は前記の通りであり、mは2又は3である。)
【0051】
上記式中、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜8のアルコキシ基が挙げられる。また、アルコキシシリル基としては、上記炭素数1〜8のアルコキシ基を有するトリアルコキシシリル基、ジアルコキシアルキルシリル基、アルコキシジアルキルシリル基が例示でき(なお、アルキル基の炭素数は1〜8が好ましい)、具体的にはトリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基が挙げられる。
【0052】
2の炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。また、R2の炭素数1〜10の置換アルキル基としては、前記炭素数1〜10のアルキル基に、フッ素、塩素、臭素などのハロゲン原子等の置換基を有するアルキル基が挙げられる。
【0053】
2の炭素数5〜10のシクロアルキル基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−メチルシクロヘキシル基などが挙げられる。また、R2の炭素数5〜10の置換シクロアルキル基としては、前記炭素数5〜10のシクロアルキル基に、フッ素、塩素、臭素などのハロゲン原子等の置換基を有するシクロアルキル基が挙げられる。
【0054】
2の炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル基、トリル基などが挙げられる。また、R2の炭素数6〜10の置換アリール基としては、前記炭素数6〜10のアリール基に、フッ素、塩素、臭素などのハロゲン原子等の置換基を有するアリール基が挙げられる。
【0055】
2の不飽和基(不飽和基としては炭素数2〜6のアルケニル基が好ましい)、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基もしくはハロゲン基を有する基としては特に限定されないが、容易かつ安価に入手又は製造できる点で、下記式(9)〜(16)で示される基から選ばれる一価の有機基が好ましい。
【0056】
【化1】

(式(9)〜(16)中、R3は水素原子又はメチル基であり、R4は炭素数1〜15の二価の有機基であり、R5は炭素数1〜10のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基又は炭素数1〜10のアシル基である。)
【0057】
上記式中、R4の具体例としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、置換プロピレン基、置換ブチレン基、置換ヘキシレン基、ペンタメチレン基、ヘプタメチレン基、ノナメチレン基、デカメチレン基、エチルエチレン基、2−メチルテトラメチレン基、3−メチルテトラメチレン基などの直鎖状又は分岐状の炭素数1〜10のアルキレン基及び置換アルキレン基、炭素数6〜10のアリーレン基及び置換アリーレン基、式:−CH2CHR6−(OCH2CHR6m−(mは1〜4の整数、R6はH又はCH3)のように例示されたアルキレン基における炭素鎖が任意の位置で酸素原子により中断された炭素数4〜15のオキシアルキレン基等の基などが挙げられる。なお、上記各置換基としては、フッ素、塩素等のハロゲン原子が挙げられる。
【0058】
また、R5の炭素数1〜10のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、i−ペンチル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基などが挙げられる。R5の炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル基、トリル基などが挙げられる。R5の炭素数1〜10のアシル基としては、ホルミル基、アセチル基などが挙げられる。
【0059】
シリコーン樹脂にD単位及び/又はT単位を導入する場合、その製造方法としては、上述したマイクロリアクターの一方の流路より水ガラス水溶液を、もう一方の流路より上記式(3)で示される化合物、即ちD単位を構成するためのR22SiY2及び/又はT単位を構成するためのR2SiY3(R2及びYは上記と同じ)と炭化水素系溶剤及び/又は極性水溶性有機化合物との混合物を上記マイクロリアクターに導入し、混合しながら連続的に反応を行い、DTQレジン(DQレジン、TQレジン又はDTQレジン)を得る。
【0060】
ここで、使用される上記式(3)で示される化合物の量は、水ガラス中の珪酸原子のモル数に対して、0.01〜500モル%、特に0.01〜150モル%となる範囲で用いることが好ましい。式(3)で示される化合物が少なすぎる場合は、MQレジンとなるだけであり、多すぎると得られるMDTQレジンがオイル状となる場合がある。
【0061】
ここで、炭化水素系溶剤及び極性水溶性有機化合物の使用量としては、前述した通りである。また、この場合の反応温度も、前述した通りである。
【0062】
次に、流路出口より得られたDTQレジン混合液を、次のマイクロリアクターの一方の流路より導入し、もう一方の流路よりM単位を構成するための下記一般式(4)で示される有機珪素封止化合物と炭化水素系溶剤及び/又は極性水溶性有機化合物との混合物を上記マイクロリアクターに導入し、混合しながら連続的に反応を行い、MDTQレジン(MDQレジン、MTQレジン又はMDTQレジン)を得る。
【0063】
13SiY2・・・(4)
(式中、Y2はハロゲン原子、水酸基、−OR7基又は−OSiR83基であり、R7及びR8はそれぞれ独立に水素原子又は一価の炭化水素基を示し、R1は上記と同じである。)
【0064】
上記式中、R7及びR8の一価炭化水素基としては、炭素数1〜18、特に1〜8のものが挙げられ、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基などが挙げられる。
【0065】
式(4)で示される化合物として、具体的には、上記式(1)で示されるオルガノシリル化剤として例示した化合物と同様のものが例示できる。
なお、ここで使用される有機珪素封止化合物は、得られたDTQレジン混合液がすでに酸性溶液となっているため、水と混合したときに酸を発生するものでなくても構わない。
【0066】
ここで、使用される上記式(4)で示される有機珪素封止化合物の量は、水ガラス中の珪酸原子のモル数に加え、導入されたD単位、T単位のモル数に対して、20〜500モル%、特に40〜150モル%となる範囲で用いることが好ましい。有機珪素封止化合物が少なすぎると不溶物となり析出する場合があり、多すぎると経済的に不利となる。
【0067】
ここで、炭化水素系溶剤及び極性水溶性有機化合物の使用量としては、前述した通りである。また、この場合の反応温度も、前述した通りである。
【0068】
シリコーン樹脂にD単位及び/又はT単位を導入する別の製造方法としては、あらかじめ上記式(4)で示される有機珪素封止化合物と下記一般式(6)で示されるD単位原料及び/又はT単位原料とを混合しておき、この混合物と水ガラスとを反応させる方法がある。この場合は、上述したMQレジンの製造方法と同様に、一方の流路より水ガラス水溶液を、もう一方の流路より水と混合したときに酸を発生する、上記式(4)で示される有機珪素封止化合物及び下記一般式(6)で示される化合物、即ちD単位を構成するための原料及び/又はT単位を構成するための原料と、炭化水素系溶剤及び/又は極性水溶性有機化合物との混合物を上述したマイクロリアクターに導入し、混合しながら連続的に反応を行い、MDTQレジン(MDQレジン、MTQレジン又はMDTQレジン)を得る。この場合、上記式(4)で示される有機珪素封止化合物及び下記一般式(6)で示されるD単位原料及び/又はT単位原料は、必ずしも全てが水と混合したときに酸を発生する必要はなく、これら混合物中にシリカヒドロゾル形成に必要な酸の量が得られればよい。
【0069】
24-mSiY2m・・・(6)
(式中、R2、Y2、mは前記の通りであり、ただし、式(4)及び式(6)で示される有機珪素化合物混合物のY2の全部もしくは一部がハロゲン原子又は酸基である。)
【0070】
上記式(6)で示される化合物として、具体的には、上記式(3)で示されるオルガノシリル化剤として例示した化合物と同様のものが例示できる。
【0071】
ここで、使用される上記式(4)で示される有機珪素封止化合物の量は、水ガラス中の珪酸原子のモル数に加え、導入されたD単位、T単位のモル数に対して、20〜500モル%、特に40〜100モル%となる範囲で用いることが好ましい。有機珪素封止化合物が少なすぎると不溶物となり析出する場合があり、多すぎると経済的に不利となる。
【0072】
また、使用される上記式(6)で示される化合物の量は、水ガラス中の珪酸原子のモル数に加え、導入されたD単位、T単位のモル数に対して、20〜500モル%、特に40〜150モル%となる範囲で用いることが好ましい。上記化合物が少なすぎると不溶物が析出する場合があり、多すぎると得られるMDTQ/MDQ/MTQレジンがオイル状となる場合がある。
【0073】
ここで、炭化水素系溶剤及び極性水溶性有機化合物の使用量としては、前述した通りである。また、この場合の反応温度も、前述した通りである。
【0074】
この場合、シリカヒドロゾル形成に必要な酸はすでに系内に存在するため、有機珪素封止化合物によるオルガノシリル化はスムースに行われる。
【0075】
D単位及び/又はT単位を導入して得られるMDTQレジン(MDQレジン、MTQレジン又はMDTQレジン)は、下記式(5)で表される。
(R13SiO1/2a−(R22SiO2/2b−(R2SiO3/2c−(SiO4/2d
・・・(5)
(式中、R1、R2は前記の通りである。aは0.2≦a≦1.5、bは0≦b、0<b+c、0<d≦1、0.2≦a/d≦1.5、0≦b/d≦5、0≦c/d≦5を満たす正数である。)
【実施例】
【0076】
以下、実施例及び比較例を示して本発明について更に詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、下記例において、%は特に断りのない限り質量%を示す。
【0077】
[実施例1]
以下の装置を組み合わせることによりチューブ単体によるマイクロリアクターを構成した。ここで、図1はマイクロリアクターの概念図である。
ポンプ:ミニケミカルポンプNP−KX−220
チューブ:内径1.5mmポリテトラフルオロエチレン製チューブ
ジョイント:ポリプロピレン製Y型チューブコネクター
【0078】
以下の方法によりMQレジンを調製した。
(1)内径1.5mmのポリテトラフルオロエチレン製チューブをポリプロピレン製Y型チューブコネクターの3方に接続し、1.5mmチューブマイクロリアクターを作製した。
(2)水ガラス1号(SiO2含量38質量%)をイオン交換水を用いてSiO2含量25質量%に希釈した水ガラス溶液を、ポンプにて、9g/分の流量でマイクロリアクター内に送液した。水ガラス水溶液は常温で置いておいた。
(3)トリメチルクロロシラン(TMCS)/トルエン(Tol)/イソプロパノール(IPA)=33.3/66.7/0(質量比)混合物を、ポンプにて、10g/分の流量でマイクロリアクター内に送液し、オルガノシリル化を行った。このときのオルガノシリル化剤(M単位)の量は、水ガラス中の珪酸原子(Q単位)の使用モル数に対して、80モル%(M単位とQ単位の比、M/Q=0.8)であった。
(4)オルガノシリル化後の流れを、チューブを恒温水層に浸すことにより、60℃に加熱した。滞留時間は約30分であった。
(5)加熱後、チューブから得られた反応液を連続分離ユニットで、MQレジンを含有する有機相と水/イソプロパノール混合相とに分離した。
(6)連続生成後、1Lフラスコに有機相を導入し、600g溜まった時点で、有機相から水、ヘキサメチルジシロキサンなどの残留揮発性成分をストリッピング除去した。
(7)次にストリッピング済み有機相をろ過し、追加のトルエンでMQレジン固形分含量を60質量%固形分に調節した。
【0079】
得られたMQレジンは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ、溶媒:トルエン)を用いて生成を確認した。得られたMQレジンのポリスチレン換算数平均分子量は2,795、同重量平均分子量は4,793であった。不溶物の発生は、白色析出物の有無を目視観察、及びチューブの詰まりによる反応液の流出量を元に確認した。不溶物の生成は確認されなかった。条件を表1に、結果を表2に示す。
得られたMQレジンのGPCチャートを図2に示す。
【0080】
[実施例2〜17]
実施例1の装置を用いて、水ガラス濃度、水ガラス流量、トリメチルクロロシラン/トルエン/イソプロパノールの質量比、トリメチルクロロシラン/トルエン/イソプロパノール混合物の流量を変更した以外は実施例1と同様にMQレジンを得た。条件を表1に、結果を表2に示す。全てにおいて、不溶物を生成することなく、MQレジンが得られた。
【0081】
[実施例18〜23]
実施例1、6、8、10、12、17でポリテトラフルオロエチレン製チューブの内径を3mmとした以外は、同様にMQレジンを得た。条件及び結果を表3に示す。全てにおいて、不溶物を生成することなく、MQレジンが得られた。
【0082】
[実施例24〜29]
実施例1、6、8、10、12、17でマイクロリアクターとして柴田科学製T字型ミキサー(流路幅0.4mm×流路高さ0.4mm)を使用した以外は、同様にMQレジンを得た。条件及び結果を表4に示す。全てにおいて、不溶物を生成することなく、MQレジンが得られた。
【0083】
[実施例30]
実施例1の装置を用いてトリメチルクロロシランの代わりにフェニルトリメトキシシラン(FTMeOS)を用いた以外は実施例1と同様にしてTQレジンを作製した(1段目)。このときのフェニルトリメトキシシラン(T単位)の量は、水ガラス中の珪酸原子(Q単位)の使用モル数に対して、50モル%(T単位とQ単位の比、T/Q=0.5)であった。得られたTQレジン(TQレジン濃度29.2質量%)を60℃の恒温層に30分滞留した後、更に同じ1.5mmチューブマイクロリアクターの片方に繋ぎ、ポンプにて、10g/分の流量でマイクロリアクター内に送液した。もう一方よりトリメチルクロロシラン/トルエン/イソプロパノール=10/6.6/0(質量比)混合物を、ポンプにて、10g/分の流量で2段目のマイクロリアクター内に導入してオルガノシリル化を行った(2段目)。このときのトリメチルクロロシラン(M単位)の量は、水ガラス中の珪酸原子(Q単位)の使用モル数に加え、導入されたフェニルトリメトキシシラン(T単位)の使用モル数に対して、150モル%(M単位とQ単位及びT単位との比、M/TQ=1.5であった。その後、更に実施例1の(4)〜(7)の工程を行い、MTQレジンを得た。条件を表5に示す。
【0084】
[比較例1〜17]
実施例1〜17でポリテトラフルオロエチレン製チューブの内径を10mmとした以外は、同じ条件で行った。結果を表6に示す。MQレジンは一部得られたが、全ての場合において不溶物が生成した。
【0085】
[比較例18〜34]
1Lセパラブルフラスコに水ガラス溶液を実施例1〜17の各条件で投入した質量に相当する質量を投入し、攪拌羽により600rpmで攪拌しながら、上部より各条件での流量でトリメチルクロロシラン/トルエン/イソプロパノール混合物を投入し、オルガノシリル化を行った。結果を表7に示す。急激な発熱とともに不溶物が発生し、MQレジンは得られなかった。
【0086】
[比較例35〜38]
実施例1の装置を用いて、水ガラス濃度、水ガラス流量、トリメチルクロロシラン/トルエン/イソプロパノールの質量比、トリメチルクロロシラン/トルエン/イソプロパノール混合物の流量を変更して、オルガノシリル化剤(M単位)と水ガラス中の珪酸原子(Q単位)のモル比(M/Q)を0.05とした。条件を表8に、結果を表9に示す。不溶物が生成し、MQレジンは得られなかった。
【0087】
【表1】
【0088】
【表2】
【0089】
【表3】
【0090】
【表4】
【0091】
【表5】
【0092】
【表6】
【0093】
【表7】
【0094】
【表8】
【0095】
【表9】
【0096】
以上のことから、マイクロリアクターを用いることにより、酸触媒を用いることなくMQレジンの製造が可能であることが確認された。
【0097】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
図1
図2