【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0057】
[実施例1](フッ化マグネシウムコロイドの作製)
塩化マグネシウム6水和物(MgCl
2・6H
2O)406.6gを純水2000g(室温:25℃)に溶解し、塩化マグネシウム水溶液を作製した。ついで、この溶液に、フッ化アンモニウム(NH
4F)148.2gを純水2000g(室温:25℃)に溶解させたフッ化アンモニウム水溶液を撹拌しながら加え、フッ化マグネシウム粒子を生成させた。
次いで、このフッ化マグネシウム粒子を含む溶液に限外濾過洗浄を行って、この溶液中の不純物イオンを除去し、次いで濃縮し、フッ化マグネシウム(MgF
2)粒子を2質量%含むフッ化マグネシウムコロイドを作製した。
このフッ化マグネシウムコロイドの分散粒子径は30nm、フッ化マグネシウム(MgF
2)粒子の結晶子径は8nmであった。
【0058】
(ガーネット構造の蛍光体前駆体溶液の作製)
蛍光体粒子の前駆体として、希土類アルミネート系蛍光体前駆体溶液を作製した。
ここでは、ガーネット構造の蛍光体としてYAG:Ce蛍光体を選び、このYAG:Ce蛍光体の前駆体としてAl、Y、Ceのグリオキシル酸水溶液(グリオキシル酸錯体水溶液)を作製した。なお、このYAG:Ce蛍光体の前駆体では、発光イオンであるCeイオンの濃度はYイオンに対し8モル%とした。
【0059】
まず、炭酸水素アンモニウム(NH
4HCO
3)72.03gを純水1000gに溶解して炭酸水素アンモニウム水溶液を作製した。
次いで、硝酸アルミニウム9水和物(Al(NO
3)
3・9H
2O:分子量375.13)61.91g、硝酸イットリウム6水和物(Y(NO
3)
3・6H
2O:分子量383.01)34.89g、及び硝酸セリウム6水和物(Ce(NO
3)
3・6H
2O:分子量434.23)3.44gを純水1000g(室温:25℃)に溶解させ、硝酸塩水溶液を作製した。
【0060】
次いで、上記の炭酸水素アンモニウム水溶液に上記の硝酸塩水溶液を加え、Al,Y,Ceのヒドロキシ炭酸塩の沈殿物を作製し、この沈殿物を限外濾過装置を用いて洗浄して、不純物イオンを除去し、次いで、真空濾過装置にて固液分離し、得られたケーキを120℃にて24時間、乾燥処理を行い、Al,Y,Ceヒドロキシ炭酸塩の乾燥粉体を得た。次いで、この乾燥粉体33.9g(YAG:Ceに換算して20g)を、グリオキシル酸58.6gを含むグリオキシル酸水溶液466.1gに添加し、その後、室温(25℃)にて24時間撹拌し、Al,Y,Ceのグリオキシル酸水溶液を作製した。
【0061】
(複合波長変換粉体の作製)
上記のフッ化マグネシウムコロイド200gをAl、Y、Ceのグリオキシル酸水溶液150gに投入し、撹拌して混合し、2流体ノズル方式のスプレードライヤーにて乾燥後、得られた粉体を大気雰囲気中、550℃にて2時間熱処理を行った。
さらに、5%水素―95%窒素雰囲気中、1200℃にて5時間熱処理を行い、実施例1の複合波長変換粉体を作製した。この粉体を走査型電子顕微鏡(SEM)によって粒子径の観察を行ったところ 1μm〜8μmの範囲に分布していた。この複合波長変換粉体の走査型電子顕微鏡(SEM)像を
図2に示す。
【0062】
(複合波長変換粉体含有樹脂組成物の作製及び評価)
上記の複合波長変換粉体と、シリコーン樹脂 SCR−1011(2液タイプ:信越化学工業(株)社製)との質量比が30:70となるように、上記の複合波長変換粉体及びシリコーン樹脂を秤量した後、メノウ乳鉢にて混練した。
次いで、この混練物を透明ガラス基板上にアプリケータにて塗布し、次いで、130℃にて60分加熱して硬化させ、この透明ガラス基板上に厚み100μmの発光強度測定用の実施例1の波長変換膜を形成した。
【0063】
一方、比較用の発光強度測定用の波長変換膜として、市販のYAG:Ce蛍光体 P46−Y3(化成オプト(株)社製(旧社名))を用いた他は実施例1の波長変換膜と同様にして、透明ガラス基板上に厚み100μmの発光強度測定用の比較用の波長変換膜を形成した。
【0064】
次いで、実施例1及び比較用各々の波長変換膜の発光スペクトルの量子効率を、量子効率測定システム QE2100(大塚電子(株)社製)を用いて、透過法により測定した。ここでは、波長変換膜の後方(ガラス基板側)から励起光を入射して、波長変換膜の前方の発光スペクトルを積分球により集光し、460nm励起光に対する560nm発光スペクトルの量子効率を測定した。実施例1の波長変換膜における前方への発光量子効率の値は、0.53であった。比較用の波長変換膜では、発光量子効率は0であり、波長変換膜における前方への発光は認められなかった。実施例1の波長変換膜の発光スペクトルを
図3に示す。
【0065】
[実施例2](フッ化カルシウムコロイドの作製)
塩化カルシウム2水和物(CaCl
2・2H
2O)376.6gを純水9624g(室温:25℃)に溶解し、塩化カルシウム水溶液を作製した。ついで、この溶液に、フッ化アンモニウム(NH
4F)190gを純水9810g(室温:25℃)に溶解させたフッ化アンモニウム水溶液を撹拌しながら加え、フッ化カルシウム粒子を生成させた。
次いで、このフッ化カルシウム粒子を含む溶液に限外濾過洗浄を行って、この溶液中の不純物イオンを除去し、次いで濃縮し、フッ化カルシウム(CaF
2)粒子を2質量%含むフッ化カルシウムコロイドを作製した。
このフッ化カルシウムコロイドの分散粒子径は80nm、フッ化カルシウム(CaF
2)粒子の結晶子径は20nmであった。
【0066】
(ガーネット構造の蛍光体前駆体溶液の作製)
実施例1に準じて、蛍光体粒子の前駆体として、Al、Y、Ceのグリオキシル酸水溶液を作製した。
【0067】
(複合波長変換粉体の作製)
上記のフッ化カルシウムコロイド200gをAl、Y、Ceのグリオキシル酸水溶液42.9gに投入し、撹拌して混合し、2流体ノズル方式のスプレードライヤーにて乾燥後、得られた粉体を大気雰囲気中、600℃にて2時間熱処理を行った。
さらに、5%水素―95%窒素雰囲気中、1300℃にて5時間熱処理を行い、実施例2の複合波長変換粉体を作製した。この粉体を走査型電子顕微鏡(SEM)によって粒子径の観察を行ったところ 1μm〜8μmの範囲に分布していた。
【0068】
(複合波長変換粉体含有樹脂組成物の作製及び評価)
実施例2の複合波長変換粉体を用いて、実施例1に準じて、実施例2の発光強度測定用の波長変換膜を形成した。
そして、実施例2の波長変換膜の発光スペクトルを、実施例1に準じて測定した。
測定の結果、実施例2の波長変換膜における前方への発光量子効率の値は、0.57であった。
【0069】
[実施例3](複合波長変換粉体の作製)
実施例2に準じて作製したフッ化カルシウムコロイド200gを実施例2に準じて作製したAl、Y、Ceのグリオキシル酸水溶液66.7gに投入し、撹拌して混合し、2流体ノズル方式のスプレードライヤーにて乾燥後、得られた粉体を大気雰囲気中、600℃にて2時間熱処理を行った。
さらに、5%水素―95%窒素雰囲気中、1300℃にて5時間熱処理を行い、実施例3の複合波長変換粉体を作製した。この粉体を走査型電子顕微鏡(SEM)によって粒子径の観察を行ったところ 1μm〜8μmの範囲に分布していた。
【0070】
(複合波長変換粉体含有樹脂組成物の作製及び評価)
実施例3の複合波長変換粉体を用いて、実施例1に準じて、実施例3の発光強度測定用の波長変換膜を形成した。
そして、実施例3の波長変換膜の発光スペクトルを、実施例1に準じて測定した。
測定の結果、実施例3の波長変換膜における前方への発光量子効率の値は、0.49であった。
【0071】
[実施例4](複合波長変換粉体の作製)
実施例2に準じて作製したフッ化カルシウムコロイド200gを実施例2に準じて作製したAl、Y、Ceのグリオキシル酸水溶液100gに投入し、撹拌して混合し、2流体ノズル方式のスプレードライヤーにて乾燥後、得られた粉体を大気雰囲気中、600℃にて2時間熱処理を行った。
さらに、5%水素―95%窒素雰囲気中、1300℃にて5時間熱処理を行い、実施例4の複合波長変換粉体を作製した。この粉体を走査型電子顕微鏡(SEM)によって粒子径の観察を行ったところ 1μm〜8μmの範囲に分布していた。
【0072】
(複合波長変換粉体含有樹脂組成物の作製及び評価)
実施例4の複合波長変換粉体を用いて、実施例1に準じて、実施例4の発光強度測定用の波長変換膜を形成した。
そして、実施例4の波長変換膜の発光スペクトルを、実施例1に準じて測定した。
測定の結果、実施例4の波長変換膜における前方への発光量子効率の値は、0.45であった。
【0073】
[実施例5](複合波長変換粉体の作製)
実施例1に準じて作製したフッ化カルシウムコロイド40gと実施例2に準じて作製したフッ化カルシウムコロイド160gを混合したコロイド溶液を、実施例2のAl、Y、Ceのグリオキシル酸水溶液100gに投入し、撹拌して混合し、2流体ノズル方式のスプレードライヤーにて乾燥後、得られた粉体を大気雰囲気中、550℃にて2時間熱処理を行った。
さらに、5%水素―95%窒素雰囲気中、1200℃にて5時間熱処理を行い、実施例5の複合波長変換粉体を作製した。この粉体を走査型電子顕微鏡(SEM)によって粒子径の観察を行ったところ 1μm〜8μmの範囲に分布していた。
【0074】
(複合波長変換粉体含有樹脂組成物の作製及び評価)
実施例5の複合波長変換粉体を用いて、実施例1に準じて、実施例5の発光強度測定用の波長変換膜を形成した。
そして、実施例5の波長変換膜の発光スペクトルを、実施例1に準じて測定した。
測定の結果、実施例5の波長変換膜における前方への発光量子効率の値は、0.48であった。
【0075】
[実施例6](複合波長変換粉体の作製)
実施例1の硝酸イットリウム6水和物(Y(NO
3)
3・6H
2O:分子量383.01)34.89gの替わりに、硝酸テルビウム6水和物(Tb(NO
3)
3・6H
2O:分子量453.03)41.27gを用いた他は、実施例1に準じて実施例6のAl、Tb、Ceのグリオキシル酸水溶液を作製した。
【0076】
次いで、実施例2に準じて作製したフッ化カルシウムコロイド200gを、上記のAl、Tb、Ceのグリオキシル酸水溶液42.9gに投入し、撹拌して混合し、2流体ノズル方式のスプレードライヤーにて乾燥後、得られた粉体を大気雰囲気中、600℃にて2時間熱処理を行った。
さらに、5%水素―95%窒素雰囲気中、1300℃にて5時間熱処理を行い、実施例6の複合波長変換粉体を作製した。この粉体を走査型電子顕微鏡(SEM)によって粒子径の観察を行ったところ 1μm〜8μmの範囲に分布していた。
【0077】
(複合波長変換粉体含有樹脂組成物の作製及び評価)
実施例6の複合波長変換粉体を用いて、実施例1に準じて、実施例6の発光強度測定用の波長変換膜を形成した。
そして、実施例6の波長変換膜の発光スペクトルを、実施例1に準じて測定した。
測定の結果、実施例6の波長変換膜における前方への発光量子効率の値は、0.42であった。
【0078】
[第2の実施形態]
図4は、本発明の第2の実施形態のフェースアップ型の発光装置を示す断面図であり、図において、符号1は発光装置であり、基板2と、この基板2の表面(一主面)に搭載された発光素子3と、発光素子3を被覆してなる透光性部材4と、透光性部材4の周囲を囲むように形成された枠体5と、枠体5を固定する基体6と、基体6の上面から外方へ突出するように設けられた電気駆動配線7とを備えている。
【0079】
基板2は、発光素子3を搭載することのできるものであればよく、例えば、アルミナ基板、炭化ケイ素基板、表面が絶縁性被膜にて被覆された金属基板等が挙げられる。
発光素子3は、放射するエネルギーのピーク波長が紫外線から赤外線までの波長帯域にあるものでよいが、白色光や種々の色の光を視感性よく放出させるためには、300nm以上かつ500nm以下の波長帯域の光、すなわち近紫外線から青色光までの波長帯域の光であることが好ましい。このような発光素子としては、例えば、GaN系の窒化物化合物半導体を用いたp型層−発光層−n型層の積層構造からなる発光素子が好適に用いられる。
【0080】
この発光素子3は、p型層上とn型層上にAu、Ag等からなる金属電極を有しており、これらの金属電極は、Au−Sn、Sn−Ag、Sn−Ag−Cu、Sn−Pb等の半田バンプやAuまたはAg等の金属バンプを介してボンディングワイヤ8により基体6の電気駆動配線7に電気的に接続されている。
【0081】
透光性部材4は、透明性部材11中に複合波長変換粒子12が含有されている。
透明性部材11としては、紫外線領域から赤外領域の光に対して透過率の高いシリコーン樹脂(屈折率:1.41〜1.53)、エポキシ樹脂(屈折率:1.52〜1.58)等の透明性を有する樹脂、低融点ガラス(屈折率:1.5〜1.6)、ゾル−ゲルガラス(屈折率:1.45〜1.55)等の透明性を有するガラスが好適に用いられる。
この透明性部材11については、基板2、発光素子3、基体6及び電気駆動配線7との熱膨張係数等を考慮して適宜選択すればよく、特に限定させるものではないが、含有する複合波長変換粒子12との屈折率差が0.1以下となるように考慮して選択する必要がある。
【0082】
複合波長変換粒子12は、
図5に示すように、平均粒子径が500nm以下、好ましくは20nm以上かつ300nm以下でありかつ屈折率が1.6以上の蛍光体粒子21と、紫外線や可視光線に対して透明な平均粒子径が500nm以下、好ましくは300nm以下または励起波長の長さ以下の無機粒子22とにより構成されている。
【0083】
蛍光体粒子21としては、300nm−400nmの波長帯域の紫外線、または400nm−500nmの波長帯域の可視光線により励起され、350nm−400nmの波長帯域の紫外線、400−700nmの波長帯域の可視光線、または700nmを超える波長帯域の赤外線を発光する蛍光体を含む粒子である。
このような蛍光体粒子としては、例えば、ガーネット系蛍光体、シリケート系蛍光体、アルカリ土類アルミン酸塩系蛍光体、硫化物蛍光体、酸ハロゲン化物蛍光体、リン酸塩蛍光体、化合物半導体蛍光体等が挙げられる。
【0084】
ここで、ガーネット系蛍光体としては、一般式:A
3D
5O
12(ただし、Aは3価の金属元素、Dは3価の金属元素)、または一般式:E
3G
2H
5O
12(ただし、Eは2価の金属元素、Gは3価の金属元素、Hは4価の金属元素)で表され、天然鉱物のザクロ石(Garnet)の有する結晶構造と同一またはほぼ同一のガーネット構造である複合酸化物を母材として、この母材中に希土類イオン、遷移金属イオン等の発光イオンをドープさせた蛍光体が挙げられる。
上記のA〜Hの各元素としては、例えば、AはY、Sc、Bi等の3価の金属元素または希土類金属元素、DはAl、Ga、Sc等の3価の金属元素、Eはアルカリ土類金属または2価の遷移金属元素、GはY、Sc等の3価の遷移金属元素または希土類金属元素、HはSi、Ge等の4価の遷移金属元素が好ましい。
【0085】
シリケート系蛍光体としては、一般式:RSi
2O
5(ただし、RはY,GdおよびLuの群から選択される1種または2種以上)、一般式:R
2SiO
4(ただし、RはZn,Mg,Ca,Sr,Mn,Baおよび希土類元素の群から選択される1種または2種以上)、CaMgSi
3O
6、または一般式:(R
1、R
2)ZrSi
3O
9(ただし、R
1及びR
2はZn,Mg,Ca,Sr,Baおよび希土類元素の群から選択される1種または2種以上)であらわされるシリケート系複合酸化物を母材として、この母材中に希土類イオン、遷移金属イオン等の発光イオンをドープさせた蛍光体が挙げられる。
【0086】
アルカリ土類アルミン酸塩系蛍光体としては、一般式:RAl
2O
4(ただし、RはZn、Mg、Ca、SrおよびBaの群から選択される1種または2種以上)であらわされるアルミネート(アルミン酸塩)系複合酸化物を母材として、この母材中に希土類イオン、遷移金属イオン等の発光イオンをドープさせた蛍光体を挙げることができる。
【0087】
硫化物蛍光体としては、一般式:M
2SiS
4で表されるチオシリケート、一般式:MAl
2S
4で表されるチオアルミネート、一般式:MGa
2S
4で表されるチオガレート(ただし、Mはアルカリ土類元素)、あるいは、酸硫化物としてY
2O
2S等のチオイットレートが挙げられる。
また、これらの硫化物蛍光体の母材中に希土類イオン、遷移金属イオン等の発光イオンをドープさせた蛍光体も挙げられる。
【0088】
酸ハロゲン化物蛍光体としては、一般式:M
5SiO
4X
6、M
5Si
4O
10X
2、M
2LiSiO
4X(ただし、Mはアルカリ土類金属イオン、Xはハロゲンイオン)で表されるハロシリケート等の母材中に、希土類イオン、遷移金属イオン等の発光イオンをドープさせた蛍光体が挙げられる。
【0089】
リン酸塩蛍光体としては、一般式:MP
2O
6、M
5(PO
4)
3X
3(ただし、Mはアルカリ土類金属イオン、Xはハロゲンイオン)あるいはNa
3Sc
2(PO
4)
3等の母材中に、希土類イオン、遷移金属イオン等の発光イオンをドープさせた蛍光体が挙げられる。
化合物半導体蛍光体としては、CdS、ZnSe、ZnTe、CdSe等のナノ粒子蛍光体が挙げられる。
【0090】
ここで、アルカリ土類金属元素とは、周期表2族元素であるCa、Sr、Ba、Raの4元素のことであり、上記の4元素の群から選択される1種または2種以上を主成分とすることが好ましい。
また、希土類元素とは、ランタン系列であるLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの15元素のことであり、上記の15元素の群から選択される1種または2種以上を主成分とすることが好ましい。
【0091】
これらの蛍光体は、1種のみを単独で用いてもよく、複数種の蛍光体を混合して用いてもよい。また、異なる波長の蛍光を発する蛍光体粒子21を複数種混合して用いてもよい。
これらの蛍光体粒子の中でも、ガーネット構造の蛍光体、例えば、Ceを添加したイットリウムアルミニウムガーネット(YAG:Ce)、Ceを添加したテルビウムアルミニウムガーネット(TAG:Ce)、Ceを添加したカルシウムスカンジウムシリケートガーネット(Ca
3Sc
2Si
3O
12:Ce)等が好ましい。
【0092】
このような蛍光体粒子は、通常の固相法、ゾルゲル法、共沈法、均一沈殿法、ソルボサーマル法、燃焼法、錯体重合法等により合成することができる。
【0093】
このような蛍光体粒子の平均粒子径は、500nm以下であることが好ましく、より好ましくは20nm以上かつ300nm以下である。
ここで、蛍光体粒子の平均粒子径を上記の範囲とした理由は、この蛍光体粒子の屈折率が1.6〜2.0の範囲にあるので、蛍光体粒子の平均粒子径が500nmを超えると、マトリクスとの屈折率差によりミー(Mei)散乱が生じ、その結果、蛍光体粒子による励起光の後方散乱が大きくなり、この蛍光体粒子を樹脂中に分散させて樹脂組成物とした場合の発光効率が低下するので好ましくない。なお、蛍光体粒子の平均粒子径が20nm未満では、蛍光体粒子の光の吸収効率が低下するので好ましくない。
以上により、蛍光体粒子の平均粒子径のより好ましい範囲は、20nm以上かつ300nm以下である。
【0094】
無機粒子22としては、紫外線や可視光線に対して透明であり、屈折率が1.38〜1.45、かつ粒径が200nm以下の無機ナノ粒子が好ましく、例えば、フッ化マグネシウム微粒子(屈折率:1.38)、フッ化カルシウム微粒子(屈折率:1.43)、フッ化ストロンチウム微粒子(屈折率:1.44)、非晶質シリカ(屈折率:1.44)等から選択される1種または2種以上を含有していることが好ましく、特に、フッ化マグネシウム微粒子(屈折率:1.38)またはフッ化カルシウム微粒子(屈折率:1.43)を含有していることが好ましい。
【0095】
ここで、無機粒子22を構成する材料として、フッ化マグネシウム微粒子またはフッ化カルシウム微粒子を用いた理由は、屈折率が低く、かつ、耐熱性及び耐化学性等の耐久性に優れているからである。
これらフッ化マグネシウム微粒子またはフッ化カルシウム微粒子は、フッ化ストロンチウム(屈折率:1.44)あるいは非晶質シリカ(屈折率:1.45)を併用して用いることができる。
【0096】
この複合波長変換粒子12では、フッ化マグネシウム微粒子またはフッ化カルシウム微粒子を含有する無機粒子22と、屈折率が1.6以上の蛍光体粒子21とを含有することにより、粒子全体の屈折率を所望の屈折率、例えば、1.6以下に制御することができる。
この複合波長変換粒子12の屈折率は、フッ化マグネシウム微粒子またはフッ化カルシウム微粒子と、蛍光体粒子との比率、すなわち、フッ化マグネシウム微粒子またはフッ化カルシウム微粒子の質量と蛍光体粒子の質量との比率を変えることにより制御することができる。
なお、含有させる蛍光体粒子の屈折率や量によっても異なるが、例えば、粒子全体の屈折率を1.6以下とするためには、無機粒子22の屈折率を1.45以下とすることが、より多くの蛍光体粒子21を含有させることができるので好ましい。
【0097】
この無機粒子22の平均粒子径は、500nm以下であることが好ましく、より好ましくは、300nm以下、または励起波長の長さ以下である。
ここで、平均粒子径が500nmを超えると、無機粒子22、例えば、フッ化マグネシウム微粒子またはフッ化カルシウム微粒子と、蛍光体粒子21との屈折率差によりミー(Mei)散乱が生じ、励起光の利用効率が低下するので好ましくない。
【0098】
このフッ化マグネシウム微粒子またはフッ化カルシウム微粒子は、公知の方法を用いて作製することができる。例えば、フッ化アンモニウム水溶液と、塩化マグネシウム水溶液もしくは塩化カルシウム水溶液とを混合することにより、フッ化マグネシウム微粒子やフッ化カルシウム微粒子をコロイド状で生成させることができる。したがって、フッ化マグネシウム微粒子やフッ化カルシウム微粒子を、簡単な装置を用いて簡単に作製することができる。
【0099】
この複合波長変換粒子12中の蛍光体粒子21の屈折率は1.6−1.9の範囲にあり、一方、無機粒子22の屈折率は1.38−1.45の範囲にあり、かつ、各々の粒子径は励起波長よりも小さいので、この複合波長変換粒子12の平均屈折率は、有効媒質近似を用いて以下の式(1)により算出することができる。
N
2=φ
aN
a2+φ
bN
b2 ・・・・・・・式(1)
ただし、N:複合波長変換粒子の平均屈折率
φ
a:蛍光体粒子の体積分率
N
a:蛍光体粒子の屈折率
φ
b:透明性無機ナノ粒子の体積分率
N
b:透明性無機ナノ粒子の屈折率
【0100】
この複合波長変換粒子12の屈折率は、上記式(1)で示されるように、蛍光体の種類、無機粒子の種類、および重量比率によって求めることができる。
ここで、複合波長変換粒子12の屈折率は、透光性部材4を構成する透明性部材11との屈折率差が0.1以下となる複合波長変換粒子12を用いることが好ましい。これにより、複合波長変換粒子12と透明性部材11との屈折率差による複合波長変換粒子12と透明性部材11との界面における光散乱による光損失を大幅に抑制することができる。
【0101】
この複合波長変換粒子12は、無機粒子22として、例えば、フッ化マグネシウム微粒子またはフッ化カルシウム微粒子を用いた場合、次のようにして作製することができる。
例えば、平均粒子径が500nm以下のフッ化マグネシウム微粒子またはフッ化カルシウム微粒子と、上記の蛍光体粒子の前駆体とを混合して、この前駆体をフッ化マグネシウム微粒子またはフッ化カルシウム微粒子の間に均一に分散させ、得られた混合物を蛍光体粒子が生成し結晶化する温度以上の温度範囲で熱処理を行い、フッ化マグネシウム微粒子またはフッ化カルシウム微粒子の間に蛍光体粒子を生成させ、次いで、フッ化マグネシウムまたはフッ化カルシウムの融点未満の温度にて熱処理または熱還元処理を行うことにより得ることができる。
なお、熱処理温度または熱還元処理温度がフッ化マグネシウムまたはフッ化カルシウムの融点以上では、蛍光体粒子、フッ化マグネシウム微粒子またはフッ化カルシウム微粒子、が共に粒成長して粗大化するので好ましくない。
【0102】
図6は、本実施形態の複合波長変換粒子12の一例を示す走査型電子顕微鏡(SEM)像であり、
図7は、この複合波長変換粒子を4倍に拡大した走査型電子顕微鏡(SEM)像である。
ここでは、無機粒子22としてフッ化マグネシウム微粒子を60質量%、屈折率が1.6以上の蛍光体粒子21としてCe添加イットリウムアルミニウムガーネット(YAG:Ceの組成がY
2.76Ce
0.24Al
5O
12、Ceの濃度が8モル%)微粒子を40質量%含有する複合波長変換粒子をSEMを用いて観察した。
図6及び
図7によれば、フッ化マグネシウム微粒子及びCe添加イットリウムアルミニウムガーネット(YAG:Ce)微粒子が密に集合して、球状の集合体を形成していることが分かる。
【0103】
この透光性部材4中の複合波長変換粒子12の分散分布状態については、特に制限を設けるものではないが、発光素子3の上部及びその周囲の領域における複合波長変換粒子12の濃度が高い方が好ましく、この領域における複合波長変換粒子12の濃度は、10質量%以上かつ60質量%以下が特に好ましい。その理由は、発光素子3から発せられる様々な方向の励起光を効率よく複合波長変換粒子12に含有される蛍光体粒子21に吸収させるためである。なお、含有させる複合波長変換粒子12の粒子径については0.5μm以上かつ30μm以下が好ましい。
【0104】
この透光性部材4は、透明性部材11の前駆体と複合波長変換粒子12とを含む塗料を、ディスペンサー等の注入器で発光素子3を覆うように充填した後、加熱または紫外線等を照射することにより、硬化させる等の方法により、容易に形成することができる。
【0105】
枠体5は、内周面5aが発光素子3の光および発光素子3の光により励起され発する蛍光体粒子21からの蛍光を効率よく反射する光反射面とされている。
この構成により、発光素子3の周囲および蛍光体粒子21を含有する複合波長変換粒子12の周囲に、それらを取り囲むように光反射面が形成されることになるので、発光素子3および複合波長変換粒子12に含有される蛍光体粒子21から発せられた光は、発光装置1の上方、すなわち光出力面9の方向に効率よく反射されるとともに、後述する基体6による光の吸収や透過が効果的に抑制される。したがって、放射光強度や輝度を著しく向上させることができる。
【0106】
この光反射面とされる内周面5aには、発光装置1の使用環境下における水分、酸素、硫化水素ガス等による反射率低下を抑制する目的で、その表面に、紫外線領域から赤外領域にわたり透過率の優れる低融点ガラス、ゾルゲルガラス等の無機材や、シリコーン樹脂やエポキシ樹脂等の有機樹脂を被着させることが好ましい。その結果、光反射面とされる内周面5aの耐腐食性、耐薬品性、耐候性を向上させることができる。
【0107】
この光反射面とされる内周面5aは、光出力面9方向に向かうに伴って外側に広がるようにテーパー状に傾斜していることが好ましい。これにより、発光素子3および複合波長変換粒子12に含有される蛍光体粒子21からの光を効率よく発光装置1の上方、すなわち光出力面9方向に反射することができる。
【0108】
この光反射面とされる内周面5aの平均粗さ(Ra)は、0.2μm以上かつ5μm以下とすることが好ましい。
ここで、内周面5aの平均粗さ(Ra)を上記の範囲とした理由は、この範囲が、発光素子3から発せられる光を高反射率で反射させて発光装置1の上方に向けて発光することができるからである。
【0109】
ここで、内周面5aの平均粗さ(Ra)が5μmを超えると、発光素子3から発せられる光の内周面5aにおける反射率が低下するとともに、反射した光が透光性部材4の内部で乱反射することにより、発光装置1の上方に向けて輝度の高い光を発光することができず、したがって、発光装置1の内部における光損失が大きくなり、光出力面9の外方へ所望の角度でかつ高効率で光を出射することができなくなるので、好ましくない。 一方、内周面5aの平均粗さ(Ra)が0.2μmを下回ると、内周面5aの表面が平坦になることから、発光素子3から発せられる光の内周面5aにおける反射率が高くなるものの、このような内周面5aを効率よくかつ安定して形成することは、通常の方法では困難であり、しかも、製造コストが高くなる虞があるので、好ましくない。
【0110】
この内周面5aの平均粗さ(Ra)が上記の範囲となるように加工する方法としては、切削研磨加工の他、化学研磨加工、電解研磨加工等が好適に用いられる。
なお、内周面5aの断面形状は、
図4に示す平坦面(断面直線状)の他、曲面(断面円弧状)等であってもよい。特に、断面形状を曲面(断面円弧状)とした場合、発光素子3から発せられる光が内周面5aにより反射されて発光装置1の上方に向けて径の小さい輝度の高い光を発光させることができるので、好ましい。
【0111】
基体6は、その上面に発光素子3が搭載された基板2(以下、発光素子付き基板2とも称する)を搭載するもので、酸化アルミニウム質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、ガラス等のセラミックス、またはエポキシ樹脂等の有機樹脂からなる絶縁体であり、発光素子付き基板2を支持する支持部材として機能する。
この基体6の上面に搭載される発光素子付き基板2の数については特に制限を設けるものではない。発光装置1の使用目的に応じて、複数の発光素子付き基板2を搭載することができる。
【0112】
この基体6がセラミックスからなる場合は、発光装置1の内外を電気的に接続する目的で、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、マンガン(Mn)、モリブデンマンガン合金(Mo−Mn)、銅(Cu)等の金属からなる電気駆動配線7が形成される。そして、発光素子3に形成された片側の電極部と電気駆動配線7の一端とを半田等の導電性部材により電気的に接続し、また、もう一方の発光素子3に形成された電極部と電気駆動配線7のもう一端とを半田等の導電性部材によって電気的に接続することにより、外部の電気回路基板(図示略)と発光素子3とを電気的に接続することができる。
【0113】
また、この基体6は、上面の発光素子2から発する光および発光素子の光により励起され発する蛍光体からの蛍光が基体8へ透過するのを抑制するとともに、基体8の上方に効率よく反射させることを目的として、電気駆動線7が電気的に短絡しないようにアルミニウム(Al)、銀(Ag)、金(Au)、白金(Pt)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、銀合金(Ag−Cu−Au、Ag−Nd−Cu、Ag−Zn−Pd、Au等)の金属反射層が蒸着法やメッキ法により基体8の上面に形成されていることが好ましい。また、同様の目的で、金属ロウ材、半田や樹脂接合剤で取着された枠体6の内周面にも金属反射面5が形成されていることが好ましい。
【0114】
なお、電気駆動配線7は、周知のメタライズ法やメッキ法等を用いて形成されており、基体6の露出する表面に厚み0.5〜9μmのNi層、あるいは厚み0.5〜5μmのAu層等の耐食性に優れる金属層が被着されているのがよい。これにより、電気駆動配線7が酸化腐食するのを有効に防止することができるとともに、半田等の導電性部材による発光素子3の電極(図示略)との接合を強固にすることができる。
【0115】
本実施形態の発光装置1では、発光素子3から出射された光は透光性部材4に直接入射する。ここでは、粒子径が500nm以下の蛍光体粒子21と、紫外線や可視光線に透明で屈折率が1.38〜1.45かつ粒子径が500nm以下の無機粒子22とからなる複合波長変換粒子12の屈折率と、透光性部材4を構成する透明性部材11の屈折率との差(屈折率差)が小さいので、透光性部材4内における発光素子3の励起光および蛍光体による蛍光ともに後方光散乱が小さくなる。同様に、蛍光体粒子21による出力面とは反対方向の蛍光体粒子21についても、複合波長変換粒子12と透明性部材11との界面における光散乱が抑制される。したがって、これらの光についても、内周面5aで反射したのち、効率よく光出力面9から取り出すことができる。
【0116】
以上説明したように、本実施形態の発光装置1によれば、基板2の上面に搭載された発光素子3と、発光素子3を被覆し埋め込む透光性部材4とを備えたので、発光素子3から放射される光のうち、透光性部材4内の複合波長変換粒子12の界面において反射・散乱する光の量を低減することができ、より多くの1次放射光を複合波長変換粒子12内部に入射させることができる。また、同様に、複合波長変換粒子12から放射される2次放射光についても、透光性部材4内の複合波長変換粒子12による反射・散乱を低減することができる。したがって、発光素子3が放射する1次放射光により励起される蛍光体粒子21による光の利用効率を向上させることができ、蛍光体粒子21から発生する2次放射光の量を増加させることにより発光の光出力を向上させることができる。
【0117】
また、本実施形態の発光装置1を複数個、例えば、格子状、千鳥状、放射状、円環状、多角形状等の形状に配列させたものを光源として用いることにより、面発光の照明装置とすることができる。このような照明装置では、長期間にわたり安定した放射光強度かつ放射光角度(配光分布)で光を照射することができる。よって、照射面における色むらや照度分布の偏りの小さい照明装置を提供することができる。
【0118】
[第3の実施形態]
図8は、本発明の第2の実施形態のフリップチップ型の発光装置を示す断面図であり、本実施形態の発光装置31が第1の実施形態の発光装置1と異なる点は、第1の実施形態の発光装置1では、基板2の表面に搭載された発光素子3を透光性部材4により被覆したのに対し、本実施形態の発光装置31では、基板2の表面に発光素子3を搭載するとともに、この基板2の裏面(他の一主面)を透光性部材4にて被覆し、さらに、発光素子3の電極(図示略)を電気駆動配線7に直接、電気的に接続した点である。
本実施形態の発光装置31においては、上記以外の点については、第2の実施形態の発光装置1と全く同様であるから説明を省略する。
【0119】
本実施形態の発光装置31では、発光素子3から出射された光は、基板2を透過して透光性部材4に入射する。ここでは、第2の実施形態の発光装置1と同様、複合波長変換粒子12の屈折率と、透光性部材4を構成する透明性部材11の屈折率との差(屈折率差)が小さいので、透光性部材4内における発光素子3の励起光および蛍光体による蛍光ともに後方光散乱が小さくなる。同様に、蛍光体粒子21による出力面とは反対方向の蛍光体粒子21についても、複合波長変換粒子12と透明性部材11との界面における光散乱が抑制される。したがって、これらの光についても、内周面5aで反射したのち、効率よく光出力面9から取り出すことができる。
【0120】
本実施形態の発光装置31においても、第2の実施形態の発光装置1と同様の効果を奏することができる。