(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明による重合性組成物溶液の最良の形態について説明する。本発明の重合性組成物溶液は、重合性組成物と有機溶媒を含有する。また、該重合性組成物中の90質量%以上が一般式(1)で表される重合性化合物から選ばれる1種又は2種類以上の重合性化合物から構成される。
【0014】
(式中、R
1及びR
2はそれぞれ独立して水素原子、ハロゲノ基、シアノ基、炭素原子数1〜8のアルキル基又はP−Sp−基(式中、Pは重合性官能基を表し、Spは炭素原子数0〜18のスペーサー基を表すが、Pが分子内に複数存在する場合には同一であっても異なっていてもよく、Spが分子内に複数存在する場合には同一であっても異なっていてもよい。)を表し、該アルキル基中の1個又は非隣接の2個以上の−CH2−はそれぞれ独立して−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−によって置換されていてもよく、該アルキル基中の1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子によって置換されていてもよいが、少なくとも一方はP−Sp−基を表し、
A
1及びA
2はそれぞれ独立して、
(a) 1,4−シクロヘキシレン基(この基中に存在する1個の−CH
2−又は隣接していない2個以上の−CH
2−は−O−又は−S−に置き換えられてもよい。)及び
(b) 1,4−フェニレン基(この基中に存在する1個の−CH=又は隣接していない2個以上の−CH=は−N=に置き換えられてもよい。)
(c) 1,4−シクロヘキセニレン基、2,4−シクロペンタジエン−2,5−ジイル基、チオフェン−2,5−ジイル基、フラン−2,5−ジイル基、ピペリジン−2,5−ジイル基、ナフタレン−2,6−ジイル基、ナフタレン−1,4−ジイル基、ナフタレン−1,5−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基及びデカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基
からなる群より選ばれる基を表し、上記の基(a)、基(b)又は基(c)はそれぞれ独立してシアノ基、フッ素原子、塩素原子又は炭素原子数1〜4のアルキル基で置換されていても良く、
Z
1及びZ
2はそれぞれ独立して、単結合、−CH
2CH
2−、−(CH
2)
4−、−OCH
2−、−CH
2O−、−OCF
2−、−CF
2O−、−COO−、−OCO−、−C≡C−、又は−C≡C−COO−、−OCO−C≡C−、を表し、
m及びnはそれぞれ独立して0、1、2、3又は4を表すが、m+nは4以下である。また、mが2〜4であり、A
1及びZ
1が複数存在する場合にはそれぞれ同一であっても異なっていてもよく、nが2〜4であり、A
2及びZ
2が複数存在する場合にはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。)
Pで表される重合性官能基としては、ビニル基、ビニルエーテル基アクリル基、(メタ)アクリル基、グリシジル基、オキセタニル基、マレイミド基、チオール基が好ましく、生産性の観点から、ビニルエーテル基、アクリル基、(メタ)アクリル基、グリシジル基が特に好ましい。
【0015】
また、Spは炭素原子数0〜18のスペーサー基を表し、具体的には、単結合又はアルキレン基(該アルキレン基は1つ以上のハロゲン原子又はCNにより置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH
2基又は隣接していない2つ以上のCH
2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、−O−、−S−、−NH−、−N(CH
3)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−SCO−、−COS−又は−C≡C−により置き換えられていても良い。)を表す。
【0016】
本発明における重合性組成物において、保存安定性に優れる重合性組成物溶液を得るには、一般式(1)で表される重合性化合物を90質量%以上含有することが好ましく、91質量%以上含有することがより好ましく、93質量%以上含有することがさらに好ましく、95質量%以上含有することが特に好ましい。また、一般式式(1)で表される重合性化合物の含有量の上限値は特に限定されず、100質量%含有することも好ましい。
【0017】
本発明における重合性組成物において、一般式(1)で表される重合性化合物のうち、R
1及びR
2がともにP−Sp−基である、下記一般式(1−1)で表される重合性化合物を含有することが好ましい。
【0019】
(A
1、A
2、Z
1、Z
2、m
1、n
1、P、Spは、それぞれ、上記一般式(1)で定義されたA
1、A
2、Z
1、Z
2、m、n、P、Spと同一のものを表す。)
当該重合性官能基を2つ持つ化合物は、重合後に架橋構造を採るため、良好に配向した光学異方体を得るために、1種または2種用いることが好ましい。
【0020】
また、一般式(1−1)で表される化合物のうち、A
1、A
2の各環構造には、メチル基以外の置換基を有さないことがその他の化合物との相溶性の点で好ましい。
【0021】
一般式(1−1)で表される化合物の例示化合物としては、以下に示されるが、これらに限定される訳ではない。
【0030】
(式中、p及びqはそれぞれ独立して1〜18の整数を表し、R
3は水素原子、又はメチル基を示す。)これらの化合物は、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。
【0031】
一般式(1−1)で表される化合物の合計含有量は、溶液とした場合の保存安定性の観点から、重合性組成物全体の含有量の内、30〜90質量%含有することが好ましく、35〜85質量%含有することがより好ましく、40〜80質量%含有することが特に好ましい。
【0032】
本発明における重合性組成物において、一般式(1)で表される重合性化合物のうち、R
1がP−Sp−基である、下記一般式(1−2)で表される重合性化合物を含有することが好ましい。
【0034】
(A
1、A
2、Z
1、Z
2、m
2、n
2、P、Spは、それぞれ、上記一般式(1)で定義されたA
1、A
2、Z
1、Z
2、m、n、P、Spと同一のものを表し、
R
4及びR
5は、何れか一方が水素原子を表し、もう一方がメチル基を表し、
R
22は、水素原子、ハロゲノ基、シアノ基、炭素原子数1〜8のアルキル基を表し、該アルキル基中の1個又は非隣接の2個以上の−CH
2−はそれぞれ独立して−CH=CH−、−C≡C−、−O−、−CO−、−COO−又は−OCO−によって置換されていてもよく、該アルキル基中の1個又は2個以上の水素原子はフッ素原子又は塩素原子によって置換されていてもよい)
当該重合性官能基を1つ持つ化合物は、溶液とした場合の相溶性の観点から、1種または2種用いることが好ましい。
【0035】
また、一般式(1−2)で表される化合物のうち、A
1、A
2の各環構造には、メチル基以外の置換基を有さないことがその他の化合物との相溶性の点で好ましい。
【0036】
特に、上記一般式(1−1)及び、一般式(1−2)で表される化合物のうち、A
1、A
2の各環構造には、メチル基以外の置換基を有さない場合、両者の化合物の主骨格部分が同一構造を有するため互いの相溶性に優れ、溶液とした場合の保存安定性が向上するため好ましい。
【0037】
一般式(1−2)で表される化合物の例示化合物としては、以下に示されるが、これらに限定される訳ではない。
【0049】
(式中、tは1〜18の整数を表し、rは1〜18の整数を表し、sは0〜18の整数を表し、R
6は水素原子、又はメチル基を示す。)これらの液晶化合物は、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。
【0050】
一般式(1−2)で表される化合物の合計含有量は、溶液とした場合の相溶性の観点から、重合性組成物全体の含有量の内、0〜70質量%含有することが好ましく、10〜60質量%含有することがより好ましく、20〜60質量%含有することが特に好ましい。
【0051】
また、一般式(1)で表される重合性化合物は、具体的には式(1−3)で表される化合物であることが好ましい。
【0053】
(R
13、R
23、A
1、A
2、m
3、n
3は、それぞれ、上記一般式(1)で定義されたR
1、R
2、A
1、A
2、m、nと同一のものを表し、R
7及びR
8は、何れか一方が水素原子を表し、もう一方がメチル基を表す。)このように、メチル基を有する環構造を連結する連結基として−COO−、−OCO−を有する重合性化合物を1種又は2種以上含有することにより、溶液とした場合の保存安定性に優れ、また、溶液を基材上に塗布し、乾燥工程により有機溶媒を除去した状態においても、固形物の析出が観察されず、長時間にわたり液晶状態を維持することができる。
さらに、一般式(1−3)で表される化合物のうち、A
1、A
2の各環構造には、置換基を有さないことが、その他の化合物との相溶性の点で好ましい。
【0054】
また、本発明における重合性組成物において、上記一般式(1)に示す重合性化合物以外の重合性化合物を含有することができる。具体的には、一般式(2)
【0056】
(式中、Pは重合性官能基を表し、
Spは炭素原子数0〜18のスペーサー基を表し、
m
4は0又は1を表し、MGはメソゲン基又はメソゲン性支持基を表し、
R
9は、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数1〜18のアルキル基、又は、一般式(2−a)
【0058】
(式中、Pは反応性官能基を表し、Spは炭素原子数0〜18のスペーサー基を表し、m
5は0又は1を表す。)を表し、該アルキル基は1つ以上のハロゲン原子又はCNにより置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH
2基又は隣接していない2つ以上のCH
2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、−O−、−S−、−NH−、−N(CH
3)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−SCO−、−COS−又は−C≡C−により置き換えられていても良い。)で表される化合物が挙げられる。
【0059】
より具体的には、一般式(2)において、Spがアルキレン基を表し、(該アルキレン基は1つ以上のハロゲン原子又はCNにより置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH
2基又は隣接していない2つ以上のCH
2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、−O−、−S−、−NH−、−N(CH
3)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−SCO−、−COS−又は−C≡C−により置き換えられていても良い。)
MGが一般式(2−b)
【0061】
(式中、A1、A2及びA3はそれぞれ独立的に、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、テトラヒドロチオピラン−2,5−ジイル基、1,4−ビシクロ(2,2,2)オクチレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピラジン−2,5−ジイル基、チオフェン−2,5−ジイル基−、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基、フェナントレン−2,7−ジイル基、9,10−ジヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a−オクタヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基、1,4−ナフチレン基、ベンゾ[1,2−b:4,5−b‘]ジチオフェン−2,6−ジイル基、ベンゾ[1,2−b:4,5−b‘]ジセレノフェン−2,6−ジイル基、[1]ベンゾチエノ[3,2−b]チオフェン−2,7−ジイル基、[1]ベンゾセレノフェノ[3,2−b]セレノフェン−2,7−ジイル基、又はフルオレン−2,7−ジイル基を表し、置換基として1個以上のF、Cl、CF
3、OCF
3、CN基、炭素原子数2〜8のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、アルカノイルオキシ基、炭素原子数2〜8のアルケニル基、アルケニルオキシ基、アルケノイル基又はアルケノイルオキシ基を有していても良く、
Z0、Z1、Z2及びZ3はそれぞれ独立して、−COO−、−OCO−、−CH
2 CH
2−、−OCH
2−、−CH
2O−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−CH
2CH
2COO−、−CH
2CH
2OCO−、−COOCH
2CH
2−、−OCOCH
2CH
2−、−CONH−、−NHCO−、炭素数2〜10のハロゲン原子を有してもよいアルキル基又は単結合を表し、
n
4は0、1又は2を表す。)で表される化合物が挙げられる。
【0062】
重合性官能基は、ビニル基、ビニルエーテル基アクリル基、(メタ)アクリル基、グリシジル基、オキセタニル基、マレイミド基、チオール基が好ましく、生産性の観点から、ビニルエーテル基、アクリル基、(メタ)アクリル基、グリシジル基が特に好ましい。
【0063】
さらに、一般式(2)で表される化合物のうち、MGの各環構造には、置換基を有さないことが、その他の化合物との相溶性の点で好ましい。
【0066】
(式中、Z
4は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数1〜18の炭化水素基を表し、
Z
5は水素原子又はメチル基を表し、uは0又は1を表し、
B、C及びDはそれぞれ独立的に、1,4−フェニレン基、隣接しないCH基が窒素で置換された1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1つ又は隣接しない2つのCH
2基が酸素又は硫黄原子で置換された1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、1,4−ビシクロ(2,2,2)オクチレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピラジン−2,5−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基、1,4−ナフチレン基を表すが、これらの基は炭素原子数2〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、シアノ基又はハロゲン原子で一つ以上置換されていても良く、
Y
3及びY
4はそれぞれ独立的に単結合、−CH
2CH
2−、−CH
2O−、−OCH
2−、−COO−、−OCO−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(CH
2)
4−、−CH
2CH
2CH
2O−、−OCH
2CH
2CH
2−、−CH=CHCH
2CH
2−、−CH
2CH
2CH=CH−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−CH
2CH
2COO−、−CH
2CH
2OCO−、−COOCH
2CH
2−又は−OCOCH
2CH
2-を表し、Y
5は単結合、−O−、−COO−、−OCO−又は−CH=CHCOO−を表す。)で表される化合物、
及び、一般式(2−2)
【0068】
(式中、Z
6は水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数1〜18の炭化水素基を表し、
Z
7は水素原子又はメチル基を表し、
W
3は単結合、−O−、−COO−又は−OCO−を表し、
vは1〜18の整数を表し、
wは0又は1を表し、
E、F及びGはそれぞれ独立的に、1,4−フェニレン基、隣接しないCH基が窒素原子で置換された1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1つ又は隣接しない2つのCH
2基が酸素原子又は硫黄原子で置換された1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、1,4−ビシクロ(2,2,2)オクチレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピラジン−2,5−ジイル基、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基、1,4−ナフチレン基を表すが、これらの基は炭素原子数2〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、シアノ基又はハロゲン原子で一つ以上置換されていても良く、
Y
6及びY
7はそれぞれ独立的に単結合、−CH
2CH
2−、−CH
2O−、−OCH
2−、−COO−、−OCO−、−C≡C−、−CH=CH−、−CF=CF−、−(CH
2)
4−、−CH
2CH
2CH
2O−、−OCH
2CH
2CH
2−、−CH=CHCH
2CH
2−、−CH
2CH
2CH=CH−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−CH
2CH
2COO−、−CH
2CH
2OCO−、−COOCH
2CH
2−又はーOCOCH
2CH
2-を表し、
Y
8は単結合、−O−、−COO−、−OCO−又は−CH=CHCOO−を表す。)で表される化合物、
及び、一般式(2−3)
【0070】
(式中、yは0又は1を表し、
W
1及びW
2はそれぞれ独立的に単結合、−O−、−COO−又は−OCO−を表し、
Y
1及びY
2はそれぞれ独立的に単結合、−C≡C−COO−、−OCO−C≡C−、−COO−又は−OCO−を表し、
x及びzはそれぞれ独立的に0〜18の整数を表し、
R
10は水素原子、又はメチル基を表し
R
20、R
21、R
24〜R
33は、それぞれ、水素原子、炭素原子数2〜7のアルキル基、アルコキシ基、アルカノイル基、シアノ基、又はハロゲン原子から選択される。)で表される化合物が好ましい。
【0071】
例示化合物としては、以下に示されるが、これらに限定される訳ではない。
【0082】
(式中、e及びfはそれぞれ独立して1〜18の整数を表し、R
34は水素原子又はメチル基を表し、R
35は水素原子、ハロゲン原子、炭素数2〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、シアノ基を示す。これらの基が炭素数2〜6のアルキル基、あるいは炭素数1〜6のアルコキシ基の場合、全部が未置換であるか、あるいは1つまたは2つ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい。)これらの化合物は、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできる。
【0083】
一般式(2)で表される化合物の合計含有量は、溶液とした場合の相溶性の観点から、重合性組成物全体の含有量の内、0〜10質量%含有することが好ましい。
【0084】
本発明の重合性組成物溶液において、上記一般式(1)に示す重合性化合物以外の液晶性を示してもよく、非液晶性であってもよい、重合性キラル化合物を含有することもできる。
本発明に使用する重合性キラル化合物としては、重合性官能基を1つ以上有することが好ましい。このような化合物としては、例えば、特開平11−193287号公報、特開2001−158788号公報、特表2006−52669号公報、特開2007−269639号公報、特開2007−269640号公報、2009−84178号公報等に記載されているような、イソソルビド、イソマンニット、グルコシド等のキラルな糖類を含み、かつ、1,4−フェニレン基1,4−シクロヘキレン基等の剛直な部位と、ビニル基、アクリロイル基、(メタ)アクリロイル基、また、マレイミド基といった重合性官能基を有する重合性キラル化合物、特開平8−239666号公報に記載されているような、テルペノイド誘導体からなる重合性キラル化合物、NATURE VOL35 467〜469ページ(1995年11月30日発行)、NATURE VOL392 476〜479ページ(1998年4月2日発行)等に記載されているような、メソゲン基とキラル部位を有するスペーサーからなる重合性キラル化合物、あるいは特表2004−504285号公報、特開2007−248945号公報に記載されているような、ビナフチル基を含む重合性キラル化合物が挙げられる。中でも、らせんねじれ力(HTP)の大きなキラル化合物が、本発明の重合性液晶組成物に好ましい。
重合性キラル化合物の配合量は、化合物の螺旋誘起力によって適宜調整することが必要であるが、重合性組成物の内、0〜10質量%含有することが好ましい。
重合性キラル化合物の一般式の一例として、一般式(3−1)〜(3−4)を挙げることができるが、下記の一般式に限定されるわけではない。
【0086】
式中、Sp
3a、及び、Sp
3bはそれぞれ独立して炭素原子数0〜18のアルキレン基を表し、該アルキレン基は1つ以上のハロゲン原子、CN基、又は重合性官能基を有する炭素原子数1〜8のアルキル基により置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH
2基又は隣接していない2つ以上のCH
2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、−O−、−S−、−NH−、−N(CH
3)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−SCO−、−COS−又は−C≡C−により置き換えられていても良く、
A1、A2、A3、A4、及びA5はそれぞれ独立して、1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、テトラヒドロチオピラン−2,5−ジイル基、1,4−ビシクロ(2,2,2)オクチレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピラジン−2,5−ジイル基、チオフェン−2,5−ジイル基−、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基、フェナントレン−2,7−ジイル基、9,10−ジヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a−オクタヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基、1,4−ナフチレン基、ベンゾ[1,2−b:4,5−b‘]ジチオフェン−2,6−ジイル基、ベンゾ[1,2−b:4,5−b‘]ジセレノフェン−2,6−ジイル基、[1]ベンゾチエノ[3,2−b]チオフェン−2,7−ジイル基、[1]ベンゾセレノフェノ[3,2−b]セレノフェン−2,7−ジイル基、又はフルオレン−2,7−ジイル基を表し、n、l及びkはそれぞれ独立して、0又は1を表し、0≦n+l+k≦3となり、
Z0、Z1、Z2、Z3、Z4、Z5、及び、Z6はそれぞれ独立して、−COO−、−OCO−、−CH
2 CH
2−、−OCH
2−、−CH
2O−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−CH
2CH
2COO−、−CH
2CH
2OCO−、−COOCH
2CH
2−、−OCOCH
2CH
2−、−CONH−、−NHCO−、炭素数2〜10のハロゲン原子を有してもよいアルキル基又は単結合を表し、
n5、及び、m5はそれぞれ独立して0又は1を表し、
R
3a及びR
3bは、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数1〜18のアルキル基を表すが、該アルキル基は1つ以上のハロゲン原子又はCNにより置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH
2基又は隣接していない2つ以上のCH
2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、−O−、−S−、−NH−、−N(CH
3)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−SCO−、−COS−又は−C≡C−により置き換えられていても良く、
あるいはR
3a及びR
3bは一般式(3−a)
【0088】
(式中、P
3aは重合性官能基を表し、Sp
3aはSp
1と同じ意味を表す。)
P
5aは、下記の式(P−1)から式(P−20)で表される重合性基から選ばれる置換基を表すのが好ましい。
【0090】
これらの重合性官能基のうち、重合性および保存安定性を高める観点から、式(P−1)又は式(P−2)、(P−7)、(P−12)、(P−13)が好ましく、式(P−1)、(P−7)、(P−12)がより好ましい。
【0091】
重合性キラル化合物の具体的例としては、化合物(3−5)〜(3−25)の化合物を挙げることができるが、下記の化合物に限定されるものではない。
【0096】
式中、m、n、k、lはそれぞれ独立して1〜18の整数を表し、R
1〜R
4はそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、カルボキシル基、シアノ基を示す。これらの基が炭素数1〜6のアルキル基、あるいは炭素数1〜6のアルコキシ基の場合、全部が未置換であるか、あるいは1つまたは2つ以上のハロゲン原子により置換されていてもよい。
本発明の重合性組成物溶液において、上記一般式(1)に示す重合性化合物以外の液晶性を示してもよく、非液晶性であってもよい、重合性ディスコチック化合物を含有することもできる。
本発明に使用する重合性ディスコチック化合物としては、重合性官能基を1つ以上有することが好ましい。このような化合物としては、例えば、特開平7−281028号公報、特開平7−287120号公報、特開平7−333431号公報、特開兵8−27284号公報に記載されているような重合性化合物が挙げられる。
重合性ディスコチック化合物の配合量は、化合物によって適宜調整することが必要であるが、重合性組成物の内、0〜10質量%含有することが好ましい。
重合性ディスコチック化合物の一般式の一例として、一般式(4−1)〜(4−3)を挙げることができるが、下記の一般式に限定されるわけではない。
【0098】
式中、Sp
4は炭素原子数0〜18のアルキレン基を表し、該アルキレン基は1つ以上のハロゲン原子、CN基、又は重合性官能基を有する炭素原子数1〜8のアルキル基により置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH
2基又は隣接していない2つ以上のCH
2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、−O−、−S−、−NH−、−N(CH
3)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−SCO−、−COS−又は−C≡C−により置き換えられていても良く、
A
4は1,4−フェニレン基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキセニル基、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル基、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル基、テトラヒドロチオピラン−2,5−ジイル基、1,4−ビシクロ(2,2,2)オクチレン基、デカヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、ピリジン−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基、ピラジン−2,5−ジイル基、チオフェン−2,5−ジイル基−、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、2,6−ナフチレン基、フェナントレン−2,7−ジイル基、9,10−ジヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基、1,2,3,4,4a,9,10a−オクタヒドロフェナントレン−2,7−ジイル基、1,4−ナフチレン基、ベンゾ[1,2−b:4,5−b‘]ジチオフェン−2,6−ジイル基、ベンゾ[1,2−b:4,5−b‘]ジセレノフェン−2,6−ジイル基、[1]ベンゾチエノ[3,2−b]チオフェン−2,7−ジイル基、[1]ベンゾセレノフェノ[3,2−b]セレノフェン−2,7−ジイル基、又はフルオレン−2,7−ジイル基を表し、
n5は0又は1を表し、
Z
4aは、−CO−、−CH
2 CH
2−、−CH
2O−、−CH=CH−、−CH=CHCOO−、−CH
2CH
2COO−、−CH
2CH
2OCO−、−COCH
2CH
2−、炭素数2〜10のハロゲン原子を有してもよいアルキル基又は単結合を表し、
Z
4bは−COO−、−OCO−、−OCH
2−、−CH
2O−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=CHCOO−、−OCOCH=CH−、−CH
2CH
2COO−、−CH
2CH
2OCO−、−COOCH
2CH
2−、−OCOCH
2CH
2−、−CONH−、−NHCO−、−OCOO−、炭素数2〜10のハロゲン原子を有してもよいアルキル基又は単結合を表し、
R
4は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基又は炭素原子数1〜18のアルキル基を表すが、該アルキル基は1つ以上のハロゲン原子又はCNにより置換されていても良く、この基中に存在する1つのCH
2基又は隣接していない2つ以上のCH
2基はそれぞれ相互に独立して、酸素原子が相互に直接結合しない形で、−O−、−S−、−NH−、−N(CH
3)−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCOO−、−SCO−、−COS−又は−C≡C−により置き換えられていても良く、
あるいはR
4は一般式(4−a)
【0100】
(式中、P
4aは重合性官能基を表し、Sp
3aはSp
1と同じ意味を表す。)
P
4aは、下記の式(P−1)から式(P−20)で表される重合性基から選ばれる置換基を表すのが好ましい。
【0102】
これらの重合性官能基のうち、重合性および保存安定性を高める観点から、式(P−1)又は式(P−2)、(P−7)、(P−12)、(P−13)が好ましく、式(P−1)、(P−7)、(P−12)がより好ましい。
重合性ディスコチック化合物の具体的例としては、化合物(4−4)〜(4−8)の化合物を挙げることができるが、下記の化合物に限定されるものではない。
【0106】
式中、nは1〜18の整数を表す。
(有機溶媒)
本発明の重合性組成物溶液に用いる有機溶媒としては特に限定はないが、重合性化合物が良好な溶解性を示す溶媒が好ましく、100℃以下の温度で乾燥できる溶媒であることが好ましい。そのような溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、クメン、メシチレン等の芳香族系炭化水素、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン等のケトン系溶剤、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン、アニソール等のエーテル系溶剤、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、等のアミド系溶剤、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、クロロベンゼン等が挙げられる。これらは、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもできるが、ケトン系溶剤、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、芳香族炭化水素系溶剤のうちのいずれか1種類以上を用いることが好ましく、2種類混合して用いる場合、トルエンとプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートとを混合して用いることが溶液安定性の点から好ましい。
【0107】
重合性組成物溶液中の有機溶媒の比率は、本発明に用いられる重合性組成物が通常塗布により行われることから、塗布した状態を著しく損なわない限りは特に制限はないが、重合性組成物の固形分が10〜60質量%であることが好ましく、20〜50質量%であることがさらに好ましい。
(重合性開始剤)
本発明の重合性組成物溶液は、重合性開始剤を少なくとも1種類以上含有することが好ましい。重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましく、具体的には、BASF社の「イルガキュア651」、「イルガキュア184」、「イルガキュア907」、「イルガキュア127」、「イルガキュア369」、「イルガキュア379」、「イルガキュア819」、「イルガキュアOXE01」、「イルガキュアOXE02」、「ルシリンTPO」、「ダロキュア1173」やLAMBSON社の「エサキュア1001M」、「エサキュアKIP150」、「スピードキュアBEM」、「スピードキュアBMS」、「スピードキュアPBZ」、「ベンゾフェノン」等が挙げられる。
【0108】
光重合開始剤の使用量は重合性組成物に対して0.1〜10質量%が好ましく、0.5〜5質量%が特に好ましい。これらは、単独で使用することもできるし、2種類以上混合して使用することもでき、また、増感剤等を添加しても良い。
(界面活性剤)
本発明の重合性組成物溶液は、光学異方体とした場合の膜厚むらを低減させるために界面活性剤を少なくとも1種類以上含有することが好ましい。含有することができる界面活性剤としては、アルキルカルボン酸塩、アルキルリン酸塩、アルキルスルホン酸塩、フルオロアルキルカルボン酸塩、フルオロアルキルリン酸塩、フルオロアルキルスルホン酸塩、ポリオキシエチレン誘導体、フルオロアルキルエチレンオキシド誘導体、ポリエチレングリコール誘導体、アルキルアンモニウム塩、フルオロアルキルアンモニウム塩類、シリコーン誘導体等をあげることができ、特に含フッ素界面活性剤、シリコーン誘導体が好ましい。更に具体的には「MEGAFAC F−110」、「MEGAFACF−113」、「MEGAFAC F−120」、「MEGAFAC F−812」、「MEGAFAC F−142D」、「MEGAFAC F−144D」、「MEGAFAC F−150」、「MEGAFAC F−171」、「MEGAFACF−173」、「MEGAFAC F−177」、「MEGAFAC F−183」、「MEGAFAC F−195」、「MEGAFAC F−824」、「MEGAFAC F−833」、「MEGAFAC F−114」、「MEGAFAC F−410」、「MEGAFAC F−493」、「MEGAFAC F−494」、「MEGAFAC F−443」、「MEGAFAC F−444」、「MEGAFAC F−445」、「MEGAFAC F−446」、「MEGAFAC F−470」、「MEGAFAC F−471」、「MEGAFAC F−474」、「MEGAFAC F−475」、「MEGAFAC F−477」、「MEGAFAC F−478」、「MEGAFAC F−479」、「MEGAFAC F−480SF」、「MEGAFAC F−482」、「MEGAFAC F−483」、「MEGAFAC F−484」、「MEGAFAC F−486」、「MEGAFAC F−487」、「MEGAFAC F−489」、「MEGAFAC F−554」、「MEGAFAC F−172D」、「MEGAFAC F−178K」、「MEGAFAC F−178RM」、「MEGAFAC R−08」、「MEGAFAC R−30」、「MEGAFAC F−472SF」、「MEGAFAC BL−20」、「MEGAFAC R−61」、「MEGAFAC R−90」、「MEGAFAC ESM−1」、「MEGAFAC MCF−350SF」(以上、DIC株式会社製)、
「フタージェント100」、「フタージェント100C」、「フタージェント110」、「フタージェント150」、「フタージェント150CH」、「フタージェントA」、「フタージェント100A-K」、「フタージェント501」、「フタージェント300」、「フタージェント310」、「フタージェント320」、「フタージェント400SW」、「FTX-400P」、「フタージェント251」、「フタージェント215M」、「フタージェント212MH」、「フタージェント250」、「フタージェント222F」、「フタージェント212D」、「FTX-218」、「FTX-209F」、「FTX-213F」、「FTX-233F」、「フタージェント245F」、「FTX-208G」、「FTX-240G」、「FTX-206D」、「FTX-220D」、「FTX-230D」、「FTX-240D」、「FTX-207S」、「FTX-211S」、「FTX-220S」、「FTX-230S」、「FTX-750FM」、「FTX-730FM」、「FTX-730FL」、「FTX-710FS」、「FTX-710FM」、「FTX-710FL」、「FTX-750LL」、「FTX-730LS」、「FTX-730LM」、「FTX-730LL」、「FTX-710LL」(以上、ネオス社製)、
「BYK−300」、「BYK−302」、「BYK−306」、「BYK−307」、「BYK−310」、「BYK−315」、「BYK−320」、「BYK−322」、「BYK−323」、「BYK−325」、「BYK−330」、「BYK−331」、「BYK−333」、「BYK−337」、「BYK−340」、「BYK−344」、「BYK−370」、「BYK−375」、「BYK−377」、「BYK−350」、「BYK−352」、「BYK−354」、「BYK−355」、「BYK−356」、「BYK−358N」、「BYK−361N」、「BYK−357」、「BYK−390」、「BYK−392」、「BYK−UV3500」、「BYK−UV3510」、「BYK−UV3570」、「BYK−Silclean3700」(以上、ビックケミー・ジャパン社製)、
「TEGO Rad2100」、「TEGO Rad2200N」、「TEGO Rad2250」、「TEGO Rad2300」、「TEGO Rad2500」、「TEGO Rad2600」、「TEGO Rad2700」(以上、テゴ社製)、
「N215」、「N535」、「N605K」、「N935」(以上、ソルベイソレクシス社製)等の例をあげることができる。
【0109】
界面活性剤の添加量は重合性組成物に対して、0.01〜2質量%であることが好ましく、0.05〜0.5質量%であることがより好ましい。
g)(その他の成分)
本発明の重合性組成物溶液は、光学異方体とした場合の空気界面のチルト角を効果的に減じるために下記一般式(5)で表される繰り返し単位を有する重量平均分子量が100以上である化合物を少なくとも1種類以上含有することが好ましい。
【0111】
(式中、R
36、R
37、R
38及びR
39はそれぞれ独立的に水素原子、ハロゲン原子又は炭素原子数1〜20の炭化水素基を表し、該炭化水素基中の水素原子は1つ以上のハロゲン原子で置換されていても良い。)
該一般式(5)で表される好適な化合物として、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、パラフィン、流動パラフィン、塩素化ポリプロピレン、塩素化パラフィン、塩素化流動パラフィン等を挙げることができる。
【0112】
該一般式(5)で表される化合物の添加量は重合性組成物に対して、0.01〜1質量%であることが好ましく、0.05〜0.5質量%であることがより好ましい。
【0113】
本発明の重合性組成物溶液は、光学異方体とした場合の基材との密着性をより向上させるため、連鎖移動剤を添加することも好ましい。連鎖移動剤としては、チオール化合物が好ましく、モノチオール、ジチオール、トリチオール、テトラチオール化合物がより好ましく、トリチオール化合物が更により好ましい。具体的には下記一般式(6−1)〜(6−12)で表される化合物が好ましい。
【0116】
(式中、R
65は炭素原子数2〜18のアルキル基を表し、該アルキル基は直鎖であっても分岐鎖であっても良く、該アルキル基中の1つ以上のメチレン基は酸素原子、及び硫黄原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子、硫黄原子、−CO−、−OCO−、−COO−、又は−CH=CH−で置換されていてもよく、R
66は炭素原子数2〜18のアルキレン基を表し、該アルキレン基中の1つ以上のメチレン基は酸素原子、及び硫黄原子が相互に直接結合しないものとして、酸素原子、硫黄原子、−CO−、−OCO−、−COO−、又は−CH=CH−で置換されていてもよい。)
チオール化合物の添加量は重合性組成物に対して、0.5〜10質量%であることが好ましく、1.0〜5.0質量%であることがより好ましい。
【0117】
また、本発明の重合性組成物溶液の溶液安定性を高めるため、重合禁止剤、酸化防止剤等を添加することも好ましい。そのような化合物として、ヒドロキノン誘導体、ヒンダードフェノール系酸化防止剤等が挙げられ、より具体的には、p−メトキシフェノール、BASF社の「IRGANOX1010」、「IRGANOX1035」、「IRGANOX1076」、「IRGANOX1098」、「IRGANOX1135」、「IRGANOX1330」、「IRGANOX1425」、「IRGANOX1520」、「IRGANOX1726」、「IRGANOX245」、「IRGANOX259」、「IRGANOX3114」、「IRGANOX3790」、「IRGANOX5057」、「IRGANOX565」等々があげられる。
【0118】
重合禁止剤、酸化防止剤の添加量は重合性組成物に対して、0.01〜1.0質量%であることが好ましく、0.05〜0.5質量%であることがより好ましい。
【0119】
更に物性調整のため、重合性でない液晶化合物、あるいは液晶性のない重合性化合物等も必要に応じて添加することも可能である。これらの化合物の添加量は重合性組成物に対して、20質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更により好ましい。
(光学異方体の製造方法)
(光学異方体)
本発明の光学異方体は、基材、必要に応じて配向膜、及び、重合性組成物溶液の重合体を順次積層したものである。あるいは、基材、必要に応じて配向膜、及び、重合性組成物溶液の重合対を順次積層し、その上に必要に応じて配向膜、及び、前記又は前記と異なってもよい重合性組成物溶液を順次積層したものである。さらにその上に必要に応じて配向膜、及び、前記又は前記と異なってもよい重合性組成物溶液を順次積層することもできる。
【0120】
本発明の光学異方体に用いられる基材は、液晶デバイス、ディスプレイ、光学素子、光学部品、着色剤、セキュリティ用マーキング、レーザー発光用部材、及び、光学フィルムに通常使用する基材であって、本発明の重合性組成物溶液の塗布後の乾燥時における加熱に耐えうる耐熱性を有する材料であれば、特に制限はない。そのような基材としては、ガラス基材、金属基材、セラミックス基材やプラスチック基材等の有機材料が挙げられる。特に基材が有機材料の場合、セルロース誘導体、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアリレート、ポリエーテルサルホン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ナイロン又はポリスチレン等が挙げられる。中でもポリエステル、ポリスチレン、ポリオレフィン、セルロース誘導体、ポリアリレート、ポリカーボネート等のプラスチック基材が好ましい。
【0121】
本発明の重合性組成物溶液の塗布性や接着性向上のために、これらの基材の表面処理を行っても良い。表面処理として、オゾン処理、プラズマ処理、コロナ処理、シランカップリング処理などが挙げられる。また、光の透過率や反射率を調節するために、基材表面に有機薄膜、無機酸化物薄膜や金属薄膜等を蒸着など方法によって設ける、あるいは、光学的な付加価値をつけるために、基材がピックアップレンズ、ロッドレンズ、光ディスク、位相差フィルム、光拡散フィルム、カラーフィルター、等であっても良い。中でも付加価値がより高くなるピックアップレンズ、位相差フィルム、光拡散フィルム、カラーフィルターは好ましい。
【0122】
また、上記基材には、本発明の重合性組成物溶液を塗布乾燥した際に重合性組成物が配向するように、通常配向処理が施されている、あるいは配向膜が設けられていても良い。配向処理としては、延伸処理、ラビング処理、偏光紫外可視光照射処理、イオンビーム処理等が挙げられる。配向膜を用いる場合、配向膜は公知慣用のものが用いられる。そのような配向膜としては、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルホン、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、アクリル樹脂、クマリン化合物、カルコン化合物、シンナメート化合物、フルギド化合物、アントラキノン化合物、アゾ化合物、アリールエテン化合物等の化合物が挙げられる。ラビングにより配向処理する化合物は、配向処理、もしくは配向処理の後に加熱工程を入れることで材料の結晶化が促進されるものが好ましい。ラビング以外の配向処理を行う化合物の中では光配向材料を用いることが好ましい。
(塗布)
本発明の光学異方体を得るための塗布法としては、アプリケーター法、バーコーティング法、スピンコーティング法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット法、ダイコーティング法、キャップコーティング法、ディッピング等、公知慣用の方法を行うことができる。重合性組成物溶液を塗布後、乾燥させる。
(重合工程)
乾燥した重合性組成物の重合処理は、該重合性組成物中の一般式(1)で表される重合性化合物がプレーナー配向した状態で一般に紫外線等の光照射、あるいは加熱によって行われる。重合を光照射で行う場合は、具体的には390nm以下の紫外光を照射することが好ましく、250〜370nmの波長の光を照射することが最も好ましい。但し、390nm以下の紫外光により重合性組成物が分解などを引き起こす場合は、390nm以上の紫外光で重合処理を行ったほうが好ましい場合もある。この光は、拡散光で、かつ偏光していない光であることが好ましい。
(位相差膜)
本発明の位相差膜は、本発明の光学異方体と同様にして作成される。重合性組成物中の一般式(1)で表される重合性化合物がプレーナー配向した状態で重合した場合は、基材に対して面内に複屈折性を有する位相差膜が得られる。前記位相差膜は、ホモジニアス液晶フィルムとして使用することができる。重合性組成物中の一般式(1)で表される重合性化合物、及び、重合性キラル化合物がプレーナー配向した状態で重合した場合は、基材に対して面外に複屈折性を有する位相差膜が得られる。重合性ディスコチック化合物を含む重合性組成物中の一般式(1)で表される重合性化合物がプレーナー配向した状態で重合した場合は、基材に対して面内にも面外にも複屈折性を有する位相差膜が得られる。
【0123】
また、基材が位相差を有する場合には、基材の有する複屈折性、及び、本発明の位相差膜の複屈折性を加算した複屈折性を有する位相差膜が得られる。前記位相差膜は、基材の有する複屈折性と位相差膜の有する複屈折性が基材の面内で同じ方向の場合もあれば、異なる方向の場合もある。液晶デバイス、ディスプレイ、光学素子、光学部品、着色剤、セキュリティ用マーキング、レーザー発光用部材、光学フィルム、及び、補償フィルム等の用途に応じて、用途に適した形で適用される。
(位相差パターニング膜)
本発明の位相差パターニング膜は、本発明の光学異方体同様に、基材、配向膜、及び、重合性組成物溶液の重合体を順次積層したものであるが、重合工程において、部分的に異なる位相差が得られるようにパターニングされたものである。パターニングは、線状のパターニング、格子状のパターニング、円状のパターニング、多角形状のパターニング等、異なる方向の場合もある。液晶デバイス、ディスプレイ、光学素子、光学部品、着色剤、セキュリティ用マーキング、レーザー発光用部材、光学フィルム、及び、補償フィルム等の用途に応じて、適用される。
部分的に異なる位相差を得る方法としては、基材に配向膜を設け、配向処理する際に本発明の重合性組成物溶液を塗布乾燥した際に重合性組成物がパターニング配向するように処理する。そのような配向処理は、微細ラビング処理、フォトマスクを介しての偏光紫外可視光照射処理、微細形状加工処理等が挙げられる。配向膜は、公知慣用のものが用いられる。そのような配向膜としては、ポリイミド、ポリシロキサン、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルホン、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、アクリル樹脂、クマリン化合物、カルコン化合物、シンナメート化合物、フルギド化合物、アントラキノン化合物、アゾ化合物、アリールエテン化合物等の化合物が挙げられる。微細ラビングにより配向処理する化合物は、配向処理、もしくは配向処理の後に加熱工程を入れることで材料の結晶化が促進されるものが好ましい。ラビング以外の配向処理を行う化合物の中では光配向材料を用いることが好ましい。
【実施例】
【0124】
以下に本発明を合成例、実施例、及び、比較例によって説明するが、もとより本発明はこれらに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
(重合性組成物溶液(1)の調製)
式(A−1)で表される重合性化合物30部、式(A−2)で表される重合性化合物30部、式(B−1)で表される重合性化合物20部、式(B−2)で表される重合性化合物20部、イルガキュア907(D−1)4部、p−メトキシフェノール(E−1)0.1部、流動パラフィン(F−1)0.2部、メガファックF−554(F−2)0.1部をトルエン/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(60/40)混合溶媒(C−1)400部に混合し、50℃で1時間加熱した。その後、0.1μmのメンブランフィルターでろ過して本発明の重合性組成物溶液(1)を得た。
(重合性組成物溶液(2)〜(70)の調製)
本発明の重合性組成物溶液(1)の調製と同様にして本発明の重合性組成物溶液(2)〜(45)、(57)〜(70)及び、本発明ではない(46)〜(56)重合性組成物溶液を得た。表1〜表4に、本発明の重合性組成物溶液(1)〜(70)の具体的な組成を示す。
【0125】
【表1】
【0126】
【表2】
【0127】
【表3】
【0128】
【表4】
【0129】
【表5】
【0130】
【化56】
【0131】
【化57】
【0132】
トルエン/プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(60/40)(C−1)
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(C−2)
プロピレングリコールジアセテート(C−3)
プロピレングリコールモノメチルエーテル(C−4)
トルエン(C−5)
メチルイソブチルケトン(C−6)
アニソール(C−7)
イルガキュア907(D−1)
イルガキュアOXE01(D−2)
イルガキュア651(D−3)
p−メトキシフェノール(E−1)
流動パラフィン(F−1)
メガファックF−554(F−2)
テクノフロンN535(F−3)
【0133】
【化58】
【0134】
【化59】
【0135】
(実施例1)
調製した重合性組成物溶液を0℃で1週間保管した後の溶液状態を観察した。沈殿物は確認されず、調製した時点と同じ状態を維持していた。
【0136】
調整した重合性組成物溶液を、室温で、TAC(トリアセチルセルロース)フィルム上にバーコーター♯4で塗布した後、80℃で2分乾燥した。その後、室温で15分放置した後に、コンベア式の高圧水銀ランプを使用して、照度が500mJ/cm
2となるようにセットしてUV光を照射した(配向性1)。
【0137】
同様に、調整した重合性組成物溶液を、室温で、パイル生地の布でラビング処理したTACフィルム上にバーコーター♯4で塗布した後、80℃で2分乾燥した。その後、室温で15分放置した後に、コンベア式の高圧水銀ランプを使用して、照度が500mJ/cm
2となるようにセットしてUV光を照射した(配向性2)。
【0138】
配向膜用ポリイミド溶液を厚さ0.7mmのガラス基板にスピンコート法を用いて塗布し、100℃で10分乾燥した後、200℃で60分焼成することにより塗膜を得て、得られた塗膜をラビング処理して基材を得た。調整した重合性組成物溶液を、該基材にスピンコーターで塗布した後、80℃で2分乾燥した。その後、すぐに照度が500mJ/cm
2となるようにセットしてUV光を照射した(配向性3)。
【0139】
ガラス基板上にLIA−01(DIC株式会社製)をスピンコーターで塗布し、80℃で1分間乾燥し、乾燥膜厚15nmの塗膜に、超高圧水銀ランプに波長カットフィルター、バンドパスフィルター、及び、偏光フィルターを介して、波長365nm付近の可視紫外光(照射強度:20mW/cm
2)の直線偏光でかつ平行光を、基材に対して垂直方向から照射し(照射量:100mJ/cm
2)光配向膜を得た。調整した重合性組成物溶液を、得られた光配向膜にスピンコーターで塗布した後、80℃で2分乾燥した。その後、すぐに照度が500mJ/cm
2となるようにセットしてUV光を照射した(配向性4)。
【0140】
その結果、いずれの配向性試験においても良好な配向性を示す結果となった。得られた結果を表5に表す。
(溶液安定性)
○:沈殿物が全くなく、均一溶液のままである
×:沈殿物が一部確認される
(配向性)
○:目視で欠陥が全くなく、偏光顕微鏡観察でも欠陥が全くない
△:目視では欠陥がないが、偏光顕微鏡観察で全体的に無配向部分が存在している
×:目視で一部欠陥が生じており、偏光顕微鏡観察でも全体的に無配向部分が存在している
−:未確認
【0141】
【表6】
【0142】
【表7】
【0143】
【表8】
【0144】
【表9】
【0145】
(実施例2〜59、比較例1〜11)
実施例1と同様にして、実施例2〜59、比較例1〜11の発明の重合性組成物溶液の0℃で1週間保管した後の溶液状態を観察した。また、得られた重合性組成物溶液を用いて、配向性1〜配向性4について確認した。得られた結果を表5〜7に示している。
【0146】
その結果、本発明の重合性組成物溶液は、いずれも沈殿物は確認されず、調製した時点と同じ状態を維持していた。また、いずれの配向性試験においても良好な配向性を示す結果となり、本発明の重合性組成物溶液はいずれも溶液安定性に優れ、かつ、配向性も良好であることから、生産性に優れているといえる。
【0147】
一方、比較例1〜11の結果から、分子内に2−メチル−1,4−フェニレン基を有する重合性化合物を90質量%以上含有しない場合、溶液安定性、及び、配向性に優れる重合性組成物溶液は得られなかった。