特許第5748061号(P5748061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5748061-光配向性を有する熱硬化膜形成組成物 図000013
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748061
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】光配向性を有する熱硬化膜形成組成物
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/00 20060101AFI20150625BHJP
   C09D 133/02 20060101ALI20150625BHJP
   C09D 133/14 20060101ALI20150625BHJP
   C09D 133/06 20060101ALI20150625BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   C09D133/00
   C09D133/02
   C09D133/14
   C09D133/06
   C09D7/12
【請求項の数】12
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2011-523655(P2011-523655)
(86)(22)【出願日】2010年7月20日
(86)【国際出願番号】JP2010062170
(87)【国際公開番号】WO2011010635
(87)【国際公開日】20110127
【審査請求日】2013年7月8日
(31)【優先権主張番号】特願2009-170140(P2009-170140)
(32)【優先日】2009年7月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104385
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100163360
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 知篤
(72)【発明者】
【氏名】畑中 真
(72)【発明者】
【氏名】安達 勲
【審査官】 増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−294726(JP,A)
【文献】 特開2000−063684(JP,A)
【文献】 特開2009−138042(JP,A)
【文献】 特開平11−072907(JP,A)
【文献】 特開2007−094271(JP,A)
【文献】 特開2002−287129(JP,A)
【文献】 特開2001−235625(JP,A)
【文献】 特開2008−231163(JP,A)
【文献】 特表2006−511686(JP,A)
【文献】 特開2002−317155(JP,A)
【文献】 特開昭60−038412(JP,A)
【文献】 特開平07−316242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 133/00
C09D 7/12
C09D 133/02
C09D 133/06
C09D 133/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)成分である光二量化部位のシンナモイル基及び熱架橋部位を有するアクリル共重合体と、(B)成分である炭素原子数2乃至5のアルキルエステル基及び炭素原子数2乃至5のヒドロキシアルキルエステル基のうちの少なくとも一方と、カルボキシル基及びフェノール性ヒドロキシ基のうちの少なくとも一方とを有するアクリル重合体と、(C)成分である前記(A)成分のアクリル共重合体の熱架橋部位並びに前記(B)成分のアクリル重合体のカルボキシル基及び/又はフェノール性ヒドロキシ基と結合する架橋剤とを含有する光配向性を有する熱硬化膜形成組成物。
【請求項2】
(A)成分が、光二量化部位のシンナモイル基を有するモノマー及び熱架橋部位を有するモノマーを含むモノマーの重合反応により得られるアクリル共重合体である請求項1に記載の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物。
【請求項3】
(A)成分の熱架橋部位がヒドロキシ基である請求項1又は請求項2に記載の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物。
【請求項4】
(B)成分が、炭素原子数2乃至5のアルキルエステル基を有するモノマー及び炭素原子数2乃至5のヒドロキシアルキルエステル基を有するモノマーのうちの少なくとも一方と、カルボキシル基を有するモノマー及びフェノール性ヒドロキシ基を有するモノマーのうちの少なくとも一方との重合反応により得られるアクリル共重合体である請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物。
【請求項5】
(C)成分の架橋剤がメチロール基またはアルコキシメチロール基を有する架橋剤である請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物。
【請求項6】
更に、(D)成分として酸または熱酸発生剤を含有する、請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物。
【請求項7】
更に、(E)成分として増感剤を含有する、請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載
の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物。
【請求項8】
(A)成分と(B)成分の合計量の100質量部に基づいて、1乃至40質量部の(C)成分を含有する、請求項1乃至請求項のいずれか一項に記載の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物。
【請求項9】
(A)成分と(B)成分との合計量の100質量部に基づいて、0.01乃至5質量部の(D)成分を含有する、請求項乃至請求項のいずれか一項に記載の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物。
【請求項10】
(A)成分と(B)成分との合計量の100質量部に基づいて、0.1乃至20質量部の(E)成分を含有する、請求項乃至請求項に記載の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物。
【請求項11】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物から形成される液晶配向層。
【請求項12】
請求項1乃至請求項10のいずれか一項に記載の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物から形成される液晶配向層をその上の位相差層とともに備えた光デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光配向性を有する熱硬化膜形成組成物及びそれから形成される硬化膜に関する。より詳しくは、本発明は、高い透明性、液晶配向能、高い溶剤耐性並びに耐熱性を有する硬化膜を形成することができる熱硬化膜形成組成物及びその硬化膜に関する。本発明の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物は、特に液晶ディスプレイにおける内蔵位相差層を形成するための重合性液晶配向機能を兼ね備えたカラーフィルタオーバーコート剤に好適である。
【背景技術】
【0002】
一般に、液晶表示素子、有機EL(electroluminescence)素子、固体撮像素子などの光デバイスでは、素子表面が製造工程中に溶剤や熱にさらされるのを防ぐために保護膜が設けられる。この保護膜は、保護する基板との密着性が高く、且つ溶剤耐性が高い点だけでなく、耐熱性等の性能も優れていることが要求される。
加えて、この様な保護膜を、カラー液晶表示装置や固体撮像素子に用いられるカラーフィルタの保護膜として使用する場合には、カラーフィルタを透過する光の透過率を維持するために、高い透明性を有する膜であることが必要とされる。
【0003】
一方、近年液晶ディスプレイのセル内に位相差材を導入することで低コスト化、軽量化が検討されており、このような位相差材としては重合性液晶溶液を塗布し配向させた後に、光硬化させた材料が一般に用いられている。この位相差材を配向させるためには下層膜がラビング処理または偏光UV照射の後、配向性を有する材料である必要がある。そのためカラーフィルタのオーバーコート上に液晶配向層を成膜した後、位相差材が形成されている(図1(a)参照)。仮にこの液晶配向層とカラーフィルタのオーバーコートを兼ね備えた膜(図1(b)参照)を形成できれば、コストの低減、プロセス数の削減等、大きな利点が得られることから、液晶配向層とオーバーコートを兼ね備えた材料が強く望まれている。
【0004】
一般にカラーフィルタのオーバーコートには、透明性の高いアクリル樹脂が用いられる。そしてこのアクリル樹脂の溶解にはプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコール系溶媒、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル系溶媒、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン等のケトン系溶媒がハンドリング性、塗布性の観点から広く用いられている。また斯かるアクリル樹脂は熱硬化又は光硬化させることにより耐熱性及び耐溶剤性を高める手法がとられている(特許文献1、2)。しかしながら、従来の熱硬化性もしくは光硬化性のアクリル樹脂は適当な透明性及び溶剤耐性を有するものの、この種のアクリル樹脂からなるオーバーコートをラビング処理あるいは偏光UV照射しても十分な配向性を示すことはできなかった。
【0005】
一方、液晶配向層には溶剤可溶性ポリイミド又はポリアミック酸からなる材料が通常用いられている。これらの材料はポストベークにより完全にイミド化し、耐溶剤性が付与され、ラビング処理により十分な配向性を示すものになることが報告されている(特許文献3)。
【0006】
また、側鎖にシンナモイル基及びカルコン基等の光二量化部位を有するアクリル樹脂に偏光UV照射することにより十分な液晶配向性を示すことが報告されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−103937号公報
【特許文献2】特開2000−119472号公報
【特許文献3】特開2005−037920号公報
【特許文献4】特開平9−118717号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献3に記載の液晶配向層を、カラーフィルタのオーバーコート材として用いるには透明性が低いという問題があった。また、ポリイミド及びポリアミック酸はN−メチルピロリドン、γ−ブチロラクトン等の溶剤に可溶であるが、グリコール系溶剤、エステル系溶剤及びケトン系溶剤に対する溶解性が低く、そのような溶剤が用いられるオーバーコート作製ラインへの適用は難しい。
【0009】
また、光を照射して液晶配向性を付与する技術において、液晶配向層に通常の偏光UV露光量(例えば100mJ/cm)を照射したのでは、光二量化反応率が低く十分に架橋されないため、耐溶剤性及び耐熱性が低いものとなる。そのため、前記液晶配向層上に位相差材層を形成するために重合性液晶を塗布した際に、該液晶配向層が溶解し、十分な配向性を示すことは出来なかった。また、光二量化反応率を高くするために露光量を1J/cm以上に増大させると、重合性液晶の配向性は向上するが、露光時間が大変長くなるため実用的な方法とはいえない。さらに、従来の液晶配向層に用いられる材料は、架橋化部位として光二量化部位しか有しない材料であったため、架橋部位の数が全体として少なく、作られる液晶配向層は充分な耐熱性を持つものとはならない。そのため、位相差材の形成後に200℃以上で行われる表示素子の製造工程の際、液晶配向層が大きく収縮することも懸念される。
【0010】
本発明は、上記の事情に基づいてなされたものであり、その解決しようとする課題は、硬化膜形成後には高い溶剤耐性、重合性液晶に対する優れた光配向能、十分な耐熱性、並びに高い透明性を示し、しかも硬化膜形成時においては、カラーフィルタのオーバーコートの作製において適用可能なグリコール系溶剤、ケトン系溶剤又は乳酸エステル系溶剤に溶解できる材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意研究を行った結果、本発明を見出すに至った。
すなわち、第1観点として、(A)成分である光二量化部位及び熱架橋部位を有するアクリル共重合体と、(B)成分である炭素原子数2乃至5のアルキルエステル基及び炭素原子数2乃至5のヒドロキシアルキルエステル基のうち少なくとも一方と、カルボキシル基及びフェノール性ヒドロキシ基のうち少なくとも一方とを有するアクリル重合体と、(C)成分である架橋剤とを含有する光配向性を有する熱硬化膜形成組成物に関する。
第2観点として、(A)成分が、光二量化部位を有するモノマー及び熱架橋部位を有するモノマーを含むモノマーの重合反応により得られるアクリル共重合体である第1観点に記載の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物に関する。
第3観点として、(A)成分の光二量化部位がシンナモイル基である第1観点又は第2観点に記載の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物に関する。
第4観点として、(A)成分の熱架橋部位がヒドロキシ基である第1観点乃至第3観点のいずれか一項に記載の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物に関する。
第5観点として、(B)成分が、炭素原子数2乃至5のアルキルエステル基を有するモノマー及び炭素原子数2乃至5のヒドロキシアルキルエステル基を有するモノマーのうちの少なくとも一方と、カルボキシル基を有するモノマー及びフェノール性ヒドロキシ基を有するモノマーのうちの少なくとも一方との重合反応により得られるアクリル共重合体である第1観点乃至第4観点のいずれか一項に記載の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物に関する。
第6観点として、(C)成分の架橋剤がメチロール基またはアルコキシメチロール基を有する架橋剤である第1観点乃至第5観点のいずれか一項に記載の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物に関する。
第7観点として、更に、(D)成分として酸または熱酸発生剤を含有する、第1観点乃至第6観点のいずれか一項に記載の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物に関する。
第8観点として、更に、(E)成分として増感剤を含有する、第1観点乃至第7観点のいずれか一項に記載の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物に関する。
第9観点として、(A)成分と(B)成分との合計量の100質量部に基づいて、1乃至40質量部の(C)成分を含有する、第1観点乃至第8観点のいずれか一項に記載の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物に関する。
第10観点として(A)成分と(B)成分との合計量の100質量部に基づいて、0.01乃至5質量部の(D)成分を含有する、第7観点乃至第9観点のいずれか一項に記載の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物に関する。
第11観点として(A)成分と(C)成分との合計量の100質量部に基づいて、0.1乃至20質量部の(E)成分を含有する、第8観点乃至第10観点のいずれか一項に記載の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物に関する。
第12観点として、第1観点乃至第11観点のいずれか一項に記載の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物から形成される液晶配向層に関する。
第13観点として、第1観点乃至第11観点のいずれか一項に記載の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物から形成される液晶配向層をその上の位相差層とともに備えた光デバイスに関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物は、高い透明性、高い溶剤耐性、高い耐熱性に加えて、光照射による液晶配向能(光配向性)を有する硬化膜を形成できるため、光配向性の液晶配向膜及びオーバーコートの形成材料として用いることができる。特に、ディスプレイのセル内に位相差材を形成するための重合性液晶を配向させる層とカラーフィルタのオーバーコート層との両者の特性を兼ね備えた「重合性液晶配向層」を一度に形成することが可能となり、製造工程の簡略化及びプロセス数低減による低コスト化等を実現できる。
【0013】
さらに本発明の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物は、グリコール系溶剤、ケトン系溶剤及び乳酸エステル系溶剤に可溶であることから、これら溶剤を主として使用するカラーフィルタのオーバーコート作製ラインに好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】従来技術により液晶配向膜を形成した液晶セル(a)と、本発明の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物を用いて、配向性を有するカラーフィルタ(CF)オーバーコートを形成した液晶セル(b)とを対比して示すモデル図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、前述の透明性、溶剤耐性、耐熱性に加えて、光照射による液晶配向能(光配向性)の性能向上を図った点に特徴がある。すなわち、本発明は(A)成分の光二量化部位及び熱架橋部位を有するアクリル共重合体と、(B)成分である炭素原子数2乃至5のアルキルエステル基及び炭素原子数2乃至5のヒドロキシアルキルエステル基のうちの少なくとも一方と、カルボキシル基及びフェノール性ヒドロキシ基のうちの少なくとも一方とを有するアクリル重合体と、(C)成分の架橋剤とを含有する、光配向性を有する熱硬化膜形成組成物に関する。更には、(A)成分、(B)成分、(C)成分に加えて、(D)成分として酸または熱酸発生剤、(E)成分として増感剤をも含有することのできる光配向性を有する熱硬化膜形成組成物に関する。ここで、光配向性を有する熱硬化膜とは、直線偏向光を照射することにより光学的異方性が誘起される、加熱により硬化した膜をいう。
【0016】
以下、各成分の詳細を説明する。
<(A)成分>
(A)成分は光二量化部位及び熱架橋部位を有するアクリル共重合体である。
本発明において、アクリル共重合体としてはアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等の不飽和二重結合を有するモノマーを重合して得られる共重合体が適用されうる。
(A)成分の光二量化部位及び熱架橋部位を有するアクリル共重合体(以下、特定共重合体ともいう)は、斯かる構造を有するアクリル共重合体であればよく、アクリル共重合体を構成する高分子の主鎖の骨格及び側鎖の種類などについて特に限定されない。
【0017】
光二量化部位とは、光照射により二量体を形成する部位であり、その具体例としてはシンナモイル基、カルコン基、クマリン基、アントラセン基等を有する構造が挙げられる。これらのうち可視光領域での高い透明性及び光二量化反応性を示すシンナモイル基を有する構造が好ましい。特に好ましいシンナモイル基の部分構造を下記式[A1]又は式[A2]に示す。
【化1】
(式[A1]中、Xは水素原子、炭素原子数1乃至18のアルキル基、フェニル基又はビフェニル基を表す。その際、フェニル基及びビフェニル基はハロゲン原子及びシアノ基のいずれかによって置換されていてもよい。
式[A2]中、Xは水素原子、シアノ基、炭素原子数1乃至18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基またシクロヘキシル基を表す。その際、炭素原子数1乃至18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基、シクロヘキシル基は、共有結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合、尿素結合を介して結合してもよい。
、R、R、及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、又はシアノ基を表す。)
【0018】
熱架橋部位とは、加熱により架橋剤と結合する部位であり、その具体例としてはヒドロキシ基、カルボキシル基、グリシジル基が挙げられる。
【0019】
(A)成分の特定共重合体は、重量平均分子量が3,000乃至200,000であることが好ましく、4,000乃至150,000であることがより好ましく、5,000乃至100,000であることがさらになお好ましい。重量平均分子量が200,000を超えて過大なものであると、溶剤に対する溶解性が低下しハンドリング性が低下する場合があり、重量平均分子量が3,000未満で過小なものであると、熱硬化時に硬化不足になり溶剤耐性及び耐熱性が低下する場合がある。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準試料としてポリスチレンを用いて得られる値である。
【0020】
上述のように、(A)成分の光二量化部位及び熱架橋部位を有するアクリル共重合体の合成方法としては、光二量化部位を有するモノマーと、熱架橋部位を有するモノマーとを共重合させる方法が簡便である。
【0021】
光二量化部位を有するモノマーとしては、例えば、シンナモイル基、カルコン基、クマリン基又はアントラセン基等を有するモノマーが挙げられる。これらのうち可視光領域での透明性及び光二量化反応性の良好なシンナモイル基を有するモノマーが特に好ましい。
特に、上記式[A1]又は式[A2]で表される、シンナモイル基の部分構造を有するモノマーがより好ましい。そのようなモノマーの具体例を、下記式[A3]又は式[A4]に示す。
【化2】
(式[A3]及び[A4]中、Xは水素原子、炭素原子数1乃至18のアルキル基、フェニル基又はビフェニル基を表す。その際、フェニル基及びビフェニル基はハロゲン原子及びシアノ基のいずれかによって置換されていてもよい。Xは水素原子、シアノ基、炭素原子数1乃至18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基又はシクロヘキシル基を表す。その際、炭素原子数1乃至18のアルキル基、フェニル基、ビフェニル基及びシクロヘキシル基は、共有結合、エーテル結合、エステル結合、アミド結合又は尿素結合を介して結合してもよい。X及びXはそれぞれ独立に単結合、炭素原子数1乃至20のアルキレン基、芳香族環基、又は、脂肪族環基を表す。X及びXは重合性基を表す。
、R、R、及びRはそれぞれ独立に水素原子、炭素原子数1乃至4のアルキル基、炭素原子数1乃至4のアルコキシ基、ハロゲン原子、トリフルオロメチル基、又はシアノ基を表す。)
【0022】
ここで、前記炭素原子数1乃至20のアルキレン基は分岐状でも直鎖状でもよい。また、前記重合性基の具体例としては、例えばアクリロイル基、メタクリロイル基、スチレン基、マレイミド基、アクリルアミド基及びメタクリルアミド基等が挙げられる。
【0023】
熱架橋部位を有するモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルアクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピルメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、カプロラクトン2−(アクリロイルオキシ)エチルエステル、カプロラクトン2−(メタクリロイルオキシ)エチルエステル、ポリ(エチレングリコール)エチルエーテルアクリレート、ポリ(エチレングリコール)エチルエーテルメタクリレート、5−アクリロイルオキシ−6−ヒドロキシノルボルネン−2−カルボキシリック−6−ラクトン、5−メタクリロイルオキシ−6−ヒドロキシノルボルネン−2−カルボキシリック−6−ラクトン等のヒドロキシ基を有するモノマー、及び、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、モノ−(2−(アクリロイルオキシ)エチル)フタレート、モノ−(2−(メタクリロイルオキシ)エチル)フタレート、N−(カルボキシフェニル)マレイミド、N−(カルボキシフェニル)メタクリルアミド、N−(カルボキシフェニル)アクリルアミド等のカルボキシル基を有するモノマー、及び、ヒドロキシスチレン、N−(ヒドロキシフェニル)メタクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)アクリルアミド、N−(ヒドロキシフェニル)マレイミド及び、N−(ヒドロキシフェニル)マレイミド等のフェノール性水酸基を有するモノマー、及びグリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート等のグリシジル基を有するモノマー等が挙げられる。
【0024】
また、本発明においては、特定共重合体を得る際に、光二量化部位及び熱架橋部位(以下、特定官能基ともいう)を有するモノマーの他に、該モノマーと共重合可能な特定官能基を有さないモノマーを併用することができる。
【0025】
そのようなモノマーの具体例としては、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物及びビニル化合物等が挙げられる。
【0026】
以下、前記モノマーの具体例を挙げるが、これらに限定されるものではない。
前記アクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、ナフチルアクリレート、アントリルアクリレート、アントリルメチルアクリレート、フェニルアクリレート、グリシジルアクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレート、2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート、2−アミノエチルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、3−メトキシブチルアクリレート、2−メチル−2−アダマンチルアクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルアクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルアクリレート、及び、8−エチル−8−トリシクロデシルアクリレート等が挙げられる。
【0027】
前記メタクリル酸エステル化合物としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、ナフチルメタクリレート、アントリルメタクリレート、アントリルメチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、2−メトキシエチルメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、2−アミノメチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、2−メチル−2−アダマンチルメタクリレート、γ−ブチロラクトンメタクリレート、2−プロピル−2−アダマンチルメタクリレート、8−メチル−8−トリシクロデシルメタクリレート、及び、8−エチル−8−トリシクロデシルメタクリレート等が挙げられる。
【0028】
前記マレイミド化合物としては、例えば、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、及びN−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
【0029】
前記スチレン化合物としては、例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン等が挙げられる。
【0030】
前記ビニル化合物としては、例えば、メチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、ビニルナフタレン、ビニルカルバゾール、アリルグリシジルエーテル、3−エテニル−7−オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、及び、1,7−オクタジエンモノエポキサイド等が挙げられる。
【0031】
特定共重合体を得るために用いる各モノマーの使用量は、全モノマーの合計量に基づいて、25乃至90モル%の光二量化部位を有するモノマー、10乃至75モル%の熱架橋部位を有するモノマー、0乃至65モル%の特定官能基を有さないモノマーであることが好ましい。光二量化部位を有するモノマーの含有量が25モル%より少ないと、高感度かつ良好な液晶配向性を付与し難い。熱架橋部位を有するモノマーの含有量が10モル%よりも少ないと、充分な耐熱性を付与し難く、高感度かつ良好な液晶配向性を維持し難い。
【0032】
本発明に用いる特定共重合体を得る方法は特に限定されないが、例えば、特定官能基を有するモノマーと所望により特定官能基を有さないモノマーと重合開始剤等とを共存させた溶剤中において、50乃至110℃の温度下で重合反応により得られる。その際、用いられる溶剤は、特定官能基を有するモノマー、所望により用いられる特定官能基を有さないモノマー及び重合開始剤等を溶解するものであれば特に限定されない。具体例としては、後述する<溶剤>に記載する。
前記方法により得られる特定共重合体は、通常、溶剤に溶解した溶液の状態である。
【0033】
また、上記方法で得られた特定共重合体の溶液を、攪拌中のジエチルエーテルや水等に投入して再沈殿させ、生成した沈殿物を濾過・洗浄した後に、常圧又は減圧下で、常温乾燥又は加熱乾燥し、特定共重合体の粉体とすることができる。前記操作により、特定共重合体と共存する重合開始剤及び未反応のモノマーを除去することができ、その結果、精製した特定共重合体の粉体が得られる。一度の操作で充分に精製できない場合は、得られた粉体を溶剤に再溶解させ、上記の操作を繰り返し行えば良い。
【0034】
本発明においては、特定共重合体は粉体形態で、あるいは精製した粉末を後述する溶剤に再溶解した溶液形態で用いてもよい。
【0035】
また、本発明においては、(A)成分の特定共重合体は、複数種の特定共重合体の混合物であってもよい。
【0036】
<(B)成分>
(B)成分は炭素原子数2乃至5のアルキルエステル基及び炭素原子数2乃至5のヒドロキシアルキルエステル基のうちの少なくとも一方と、カルボキシル基及びフェノール性ヒドロキシ基のうちの少なくとも一方とを有するアクリル重合体である。
本発明において、アクリル重合体としてはアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン等の不飽和二重結合を有するモノマーを重合して得られる重合体が適用されうる。
(B)成分の炭素原子数2乃至5のアルキルエステル基及び炭素原子数2乃至5のヒドロキシアルキルエステル基のうち少なくとも一方と、カルボキシル基及びフェノール性ヒドロキシ基のうち少なくとも一方とを有するアクリル重合体は、斯かる構造を有するアクリル重合体であればよく、アクリル重合体を構成する高分子の主鎖の骨格及び側鎖の種類などについて特に限定されない。
【0037】
炭素原子数2乃至5のアルキルエステル基及び炭素原子数2乃至5のヒドロキシアルキルエステル基のうち少なくとも一方を有する構造単位として、好ましい構造単位は下記式[B1]で表される。
カルボキシル基及びフェノール性ヒドロキシ基のうち少なくとも一方を有する構造単位として、好ましい構造単位は下記式[B2]で表される。
【化3】
(式[B1]及び[B2]中、R及びRはそれぞれ独立に水素原子又はメチル基を表し、Yは炭素原子数1乃至4のアルキル基又は炭素原子数1乃至3のヒドロキシアルキル基を表し、Yはカルボキシル基又はフェノール性ヒドロキシ基を表す。)
【0038】
(B)成分のアクリル重合体は、重量平均分子量が3,000乃至200,000であることが好ましく、4,000乃至150,000であることがより好ましく、5,000乃至100,000であることがさらになお好ましい。重量平均分子量が200,000を超えて過大なものであると、溶剤に対する溶解性が低下しハンドリング性が低下する場合があり、重量平均分子量が3,000未満で過小なものであると、熱硬化時に硬化不足になり溶剤耐性及び耐熱性が低下する場合がある。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準試料としてポリスチレンを用いて得られる値である。
【0039】
上述のように、(B)成分のアクリル重合体の合成方法としては、炭素原子数2乃至5のアルキルエステル基及び炭素原子数1乃至4のヒドロキシアルキルエステル基のうち少なくとも一方を有するモノマー(以下、b1モノマー)と、カルボキシル基及びフェノール性ヒドロキシ基のうち少なくとも一方を有するモノマー(以下、b2モノマー)とを共重合させる方法が簡便である。
【0040】
炭素原子数2乃至5のアルキルエステル基を有するモノマーとしては、例えば、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルメタクリレート、エチルアクリレート、プロピルメタクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルメタクリレート、ブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレートが挙げられる。
炭素原子数2乃至5のヒドロキシアルキルエステル基を有するモノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートが挙げられる。
【0041】
カルボキシル基を有するモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、ビニル安息香酸が挙げられる。
フェノール性ヒドロキシ基を有するモノマーとしては、例えば、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、o−ヒドロキシスチレンが挙げられる。
【0042】
また、本発明においては、(B)成分のアクリル重合体を得る際に、本発明の効果を損なわない限りb1モノマー及びb2モノマーの他に、該モノマーと共重合可能なb1モノマー及びb2モノマー以外のモノマーを併用することができる。
【0043】
そのようなモノマーとしては、アクリル酸エステル化合物、メタクリル酸エステル化合物、マレイミド化合物、アクリルアミド化合物、アクリロニトリル、マレイン酸無水物、スチレン化合物及びビニル化合物等が挙げられる。
【0044】
前記モノマーの具体例は、限定されるものではないが、特定共重合体に用いることのできる、b1モノマー及びb2モノマー以外のモノマーである。
【0045】
(B)成分のアクリル重合体を得るために用いるb1モノマー及びb2モノマーの使用量は、(B)成分のアクリル重合体を得るために用いる全モノマーの合計量に基づいて、b1モノマーが2乃至95モル%、b2モノマーが5乃至98モル%であることが好ましい。
b2モノマーとしてカルボキシル基のみを有するモノマーを用いる場合、b1モノマーが60乃至95モル%、b2モノマーが5乃至40モル%であることが好ましい。
他方、b2モノマーとしてフェノール性ヒドロキシ基のみを有するモノマーを用いる場合、b1モノマーが2乃至80モル%、b2モノマーが20乃至98モル%であることが好ましい。b2モノマーが過小の場合は液晶配向性が不充分となり易く、過大の場合は(A)成分のアクリル共重合体との相溶性が低下し易い。
【0046】
本発明に用いる(B)成分のアクリル重合体を得る方法は特に限定されないが、例えば、b1モノマーとb2モノマーと所望によりb1モノマー及びb2モノマー以外のモノマーと重合開始剤等とを共存させた溶剤中において、50乃至110℃の温度下で重合反応により得られる。その際、用いられる溶剤は、b1モノマーとb2モノマー、所望により用いられるb1モノマー及びb2モノマー以外のモノマー及び重合開始剤等を溶解するものであれば特に限定されない。具体例としては、後述する<溶剤>に記載する。
前記方法により得られる(B)成分のアクリル重合体は、通常、溶剤に溶解した溶液の状態である。
【0047】
また、上記方法で得られた(B)成分のアクリル重合体の溶液を、攪拌中のジエチルエーテルや水等に投入して再沈殿させ、生成した沈殿物を濾過・洗浄した後に、常圧又は減圧下で、常温乾燥又は加熱乾燥し、(B)成分のアクリル重合体の粉体とすることができる。前記操作により、(B)成分のアクリル重合体と共存する重合開始剤及び未反応のモノマーを除去することができ、その結果、精製した(B)成分のアクリル重合体の粉体が得られる。一度の操作で充分に精製できない場合は、得られた粉体を溶剤に再溶解させ、上記の操作を繰り返し行えば良い。
【0048】
本発明においては、(B)成分のアクリル重合体は粉体形態で、あるいは精製した粉末を後述する溶剤に再溶解した溶液形態で用いてもよい。
【0049】
また、本発明においては、(B)成分のアクリル重合体は、複数種の(B)成分のアクリル重合体の混合物であってもよい。
【0050】
<(C)成分>
本発明の(C)成分は、(A)成分である特定共重合体の熱架橋部位及び(B)成分に含まれるカルボキシル基及び/又はフェノール性ヒドロキシ基部位と結合する架橋剤である。架橋剤としては、エポキシ化合物、メチロール化合物、及びイソシアナート化合物等の化合物が挙げられるが、好ましくはメチロール化合物である。
【0051】
メチロール化合物の具体例としては、アルコキシメチル化グリコールウリル、アルコキシメチル化ベンゾグアナミン及びアルコキシメチル化メラミン等の化合物が挙げられる。
アルコキシメチル化グリコールウリルの具体例としては、例えば、1,3,4,6−テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6−テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6−テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3−テトラキス(ブトキシメチル)尿素、1,1,3,3−テトラキス(メトキシメチル)尿素、1,3−ビス(ヒドロキシメチル)−4,5−ジヒドロキシ−2−イミダゾリノン、及び1,3−ビス(メトキシメチル)−4,5−ジメトキシ−2−イミダゾリノン等が挙げられる。市販品として、日本サイテックインダストリーズ(株)(旧三井サイテック(株))製グリコールウリル化合物(商品名:サイメル[登録商標]1170、パウダーリンク[登録商標]1174)等の化合物、メチル化尿素樹脂(商品名:UFR[登録商標]65)、ブチル化尿素樹脂(商品名:UFR[登録商標]300、U−VAN10S60、U−VAN10R、U−VAN11HV)、DIC(株)(旧大日本インキ化学工業(株))製尿素/ホルムアルデヒド系樹脂(高縮合型、商品名:ベッカミン[登録商標]J−300S、同P−955、同N)等が挙げられる。
アルコキシメチル化ベンゾグアナミンの具体例としてはテトラメトキシメチルベンゾグアナミン等が挙げられる。市販品として、日本サイテックインダストリーズ(株)(旧三井サイテック(株))製(商品名:サイメル[登録商標]1123)、(株)三和ケミカル製(商品名:ニカラック[登録商標]BX−4000、同BX−37、同BL−60、同BX−55H)等が挙げられる。
アルコキシメチル化メラミンの具体例としては、例えば、ヘキサメトキシメチルメラミン等が挙げられる。市販品として、日本サイテックインダストリーズ(株)(旧三井サイテック(株))製メトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名:サイメル[登録商標]300、同301、同303、同350)、ブトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名:マイコート[登録商標]506、同508)、(株)三和ケミカル製メトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名:ニカラック[登録商標]MW−30、同MW−22、同MW−11、同MS−001、同MX−002、同MX−730、同MX−750、同MX−035)、ブトキシメチルタイプメラミン化合物(商品名:ニカラック[登録商標]MX−45、同MX−410、同MX−302)等が挙げられる。
【0052】
また、このようなアミノ基の水素原子がメチロール基またはアルコキシメチル基で置換されたメラミン化合物、尿素化合物、グリコールウリル化合物及びベンゾグアナミン化合物を縮合させて得られる化合物であってもよい。例えば、米国特許第6323310号に記載されているメラミン化合物及びベンゾグアナミン化合物から製造される高分子量の化合物が挙げられる。前記メラミン化合物の市販品としては商品名サイメル[登録商標]303(日本サイテックインダストリーズ(株)(旧三井サイテック(株))製)等が挙げられ、前記ベンゾグアナミン化合物の市販品としては商品名サイメル[登録商標]1123(日本サイテックインダストリーズ(株)(旧三井サイテック(株))製)等が挙げられる。
【0053】
さらに、(C)成分としては、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−エトキシメチルアクリルアミド、N−ブトキシメチルメタクリルアミド等のヒドロキシメチル基またはアルコキシメチル基で置換されたアクリルアミド化合物またはメタクリルアミド化合物を使用して製造されるポリマーも用いることができる。
【0054】
そのようなポリマーとしては、例えば、ポリ(N−ブトキシメチルアクリルアミド)、N−ブトキシメチルアクリルアミドとスチレンとの共重合体、N−ヒドロキシメチルメタクリルアミドとメチルメタクリレートとの共重合体、N−エトキシメチルメタクリルアミドとベンジルメタクリレートとの共重合体、及びN−ブトキシメチルアクリルアミドとベンジルメタクリレートと2−ヒドロキシプロピルメタクリレートとの共重合体等が挙げられる。このようなポリマーの重量平均分子量は、1,000から500,000であり、好ましくは、2,000から200,000であり、より好ましくは3,000から150,000であり、更に好ましくは3,000から50,000である。なお、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準試料としてポリスチレンを用いて得られる値である。
【0055】
これらの架橋剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0056】
本発明の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物における(C)成分の架橋剤の含有量は、(A)成分の特定共重合体と(B)成分のアクリル重合体との合計量の100質量部に基づいて1乃至40質量部であることが好ましく、より好ましくは5乃至30質量部である。架橋剤の含有量が過小である場合には、光配向性を有する熱硬化膜形成組成物から得られる硬化膜の溶剤耐性及び耐熱性が低下し、光配向時の感度が低下する。他方、架橋剤の含有量が過大である場合には光配向性及び保存安定性が低下することがある。
【0057】
<(D)成分>
本発明においては(D)成分として酸または熱酸発生剤を含有しても良い。この(D)成分は、本発明の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物の熱硬化反応を促進させることにおいて有効である。
【0058】
(D)成分としては、スルホン酸基含有化合物、塩酸またはその塩、及びプリベークまたはポストベーク時に熱分解して酸を発生する化合物、すなわち温度80℃から250℃で熱分解して酸を発生する化合物であれば特に限定されるものではない。そのような化合物としては、例えば、塩酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸、オクタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−フェノールスルホン酸、2−ナフタレンスルホン酸、メシチレンスルホン酸、p−キシレン−2−スルホン酸、m−キシレン−2−スルホン酸、4−エチルベンゼンスルホン酸、1H,1H,2H,2H−パーフルオロオクタンスルホン酸、パーフルオロ(2−エトキシエタン)スルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ノナフルオロブタン−1−スルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等のスルホン酸またはその水和物や塩等が挙げられる。熱により酸を発生する化合物としては、例えば、ビス(トシルオキシ)エタン、ビス(トシルオキシ)プロパン、ビス(トシルオキシ)ブタン、p−ニトロベンジルトシレート、o−ニトロベンジルトシレート、1,2,3−フェニレントリス(メチルスルホネート)、p−トルエンスルホン酸ピリジニウム塩、p−トルエンスルホン酸モルフォニウム塩、p−トルエンスルホン酸エチルエステル、p−トルエンスルホン酸プロピルエステル、p−トルエンスルホン酸ブチルエステル、p−トルエンスルホン酸イソブチルエステル、p−トルエンスルホン酸メチルエステル、p−トルエンスルホン酸フェネチルエステル、シアノメチルp−トルエンスルホネート、2,2,2−トリフルオロエチルp−トルエンスルホネート、2−ヒドロキシブチルp−トシレート、N−エチル−4−トルエンスルホンアミド、
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
等が挙げられる。
【0059】
本発明の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物における(D)成分の含有量は、(A)成分の特定共重合体と(B)成分のアクリル重合体との合計量の100質量部に対して、好ましくは0.01乃至5質量部、より好ましくは0.05乃至3質量部、更に好ましくは0.1乃至1質量部である。(D)成分の含有量を0.01質量部以上とすることで、充分な熱硬化性及び溶剤耐性を付与することができ、さらに光照射に対する高い感度をも付与することができる。しかし、5質量部より多い場合、組成物の保存安定性が低下する場合がある。
【0060】
<(E)成分>
本発明においては(E)成分として増感剤を含有しても良い。この(E)成分は、本発明の熱硬化膜形成後の光二量化反応を促進させることにおいて有効である。
【0061】
(E)成分の増感剤としてはベンゾフェノン、アントラセン、アントラキノン、チオキサントン等及びその誘導体、又はニトロフェニル化合物等が挙げられる。これらのうち、ベンゾフェノン誘導体及びニトロフェニル化合物が好ましい。好ましい化合物の具体例としてN,N−ジエチルアミノベンゾフェノン、2−ニトロフルオレン、2−ニトロフルオレノン、5−ニトロアセナフテン、4−ニトロビフェニル等があげられる。特に、ベンゾフェノンの誘導体であるN,N−ジエチルアミノベンゾフェノンが好ましい。
【0062】
これらの増感剤は上記のものに限定されるものではない。また、増感剤は単独で又は2種以上の化合物を組み合わせて併用することが可能である。
【0063】
本発明の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物における(E)成分の増感剤の含有量は、(A)成分の特定共重合体と(B)成分のアクリル重合体との合計量の100質量部に対して0.1乃至20質量部であることが好ましく、より好ましくは0.2乃至10質量部である。この割合が過小である場合には、増感剤としての効果を充分に得られない場合があり、過大である場合には透過率の低下及び塗膜の荒れが生じることがある。
【0064】
<溶剤>
本発明の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物は、主として溶剤に溶解した溶液状態で用いられる。その際に使用する溶剤は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分、必要に応じて(D)成分、(E)成分及び/又は、後述するその他添加剤を溶解できればよく、その種類及び構造などは特に限定されるものでない。
【0065】
溶剤の具体例としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−ブタノン、3−メチル−2−ペンタノン、2−ペンタノン、2-ヘプタノン、γ−ブチロラクトン、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、及びN−メチルピロリドン等が挙げられる。
【0066】
これらの溶剤は、1種単独で又は2種以上の組合せで使用することができる。これら溶剤のうち、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、プロピレングリコールプロピルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、乳酸エチル、乳酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチルはカラーフィルタのオーバーコートの作製ラインで適用可能であり、成膜性が良好で、安全性が高いためより好ましい。
【0067】
<その他添加剤>
更に、本発明の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、シランカップリング剤、界面活性剤、レオロジー調整剤、顔料、染料、保存安定剤、消泡剤、酸化防止剤等を含有することができる。
【0068】
<光配向性を有する熱硬化膜形成組成物>
本発明の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物は、(A)成分の特定共重合体と、(B)成分のアクリル重合体と、(C)成分の架橋剤とを含有し、所望により(D)成分の酸または熱酸発生剤、(E)成分の増感剤、更にその他添加剤のうち一種以上を含有することができる組成物である。そして、通常は、それらが溶剤に溶解した溶液として用いられる。
【0069】
(A)成分と(B)成分の配合比は5:95乃至60:40が好ましい。(B)成分の含有量が過大の場合は液晶配向性が低下し易く、過小の場合は(A)成分との相溶性が低下し、形成される塗膜の白化を引き起こし易い。
【0070】
本発明の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物の好ましい例は、以下のとおりである。
[1]:(A)成分と(B)成分の配合比が5:95乃至60:40であり、(A)成分と(B)成分との合計量の100質量部に基づいて、1乃至40質量部の(C)成分を含有する光配向性を有する熱硬化膜形成組成物。
[2]:(A)成分と(B)成分との合計量の100質量部に基づいて、1乃至40質量部の(C)成分、溶剤を含有する光配向性を有する熱硬化膜形成組成物。
[3]:(A)成分と(B)成分との合計量の100質量部に基づいて、1乃至40質量部の(C)成分、0.01乃至5質量部の(D)成分、溶剤を含有する光配向性を有する熱硬化膜形成組成物。
[4]:(A)成分と(B)成分との合計量の100質量部に基づいて、1乃至40質量部の(C)成分、0.01乃至5質量部の(D)成分、0.1乃至20質量部の(E)成分、溶剤を含有する光配向性を有する熱硬化膜形成組成物。
【0071】
本発明の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物を溶液として用いる場合の配合割合、調製方法等を以下に詳述する。
本発明の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物における固形分の割合は、各成分が均一に溶剤に溶解している限り、特に限定されるものではないが、1乃至80質量%であり、好ましくは3乃至60質量%であり、より好ましくは5乃至40質量%である。ここで、固形分とは、光配向性を有する熱硬化膜形成組成物の全成分から溶剤を除いたものをいう。
【0072】
本発明の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物の調製方法は、特に限定されない。調製法としては、例えば、溶剤に溶解した(A)成分と溶剤に溶解した(B)成分とを混合し、この溶液に(C)成分、さらには(D)成分、(E)成分を所定の割合で混合し、均一な溶液とする方法、或いは、この調製法の適当な段階において、必要に応じてその他添加剤を更に添加して混合する方法が挙げられる。
【0073】
本発明の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物の調製においては、溶剤中の重合反応によって得られる特定共重合体の溶液をそのまま使用することができる。この場合、光二量化部位を有するモノマーと熱架橋性部位を有するモノマーとを共重合させて得られる(A)成分の溶液と、炭素原子数2乃至5のアルキルエステル基を有するモノマー及びヒドロキシアルキルエステル基を有するモノマーのうち少なくとも一方と、カルボキシル基を有するモノマー及びフェノール性ヒドロキシ基を有するモノマーのうち少なくとも一方とを共重合させて得られる(B)成分の溶液とを混合し、これに前記と同様に(C)成分、(D)成分、(E)成分などを入れて均一な溶液とする。この際に、濃度調整を目的としてさらに溶剤を追加投入してもよい。このとき、(A)成分の生成過程で用いられる溶剤と、(B)成分の生成過程で用いられる溶剤と、光配向性を有する熱硬化膜形成組成物の濃度調整に用いられる溶剤とは同一であってもよく、また異なってもよい。
【0074】
而して、調製された光配向性を有する熱硬化膜形成組成物の溶液は、孔径が0.2μm程度のフィルタなどを用いて濾過した後、使用することが好ましい。
【0075】
<塗膜、硬化膜及び液晶配向層>
本発明の一態様として、光配向性を有する熱硬化膜形成組成物の溶液を基板(例えば、シリコン/二酸化シリコン被覆基板、シリコンナイトライド基板、金属、例えば、アルミニウム、モリブデン、クロムなどが被覆された基板、ガラス基板、石英基板、ITO基板等)やフィルム(例えば、トリアセチルセルロースフィルム、ポリエステルフィルム、アクリルフィルム等の樹脂フィルム)等の上に、回転塗布、流し塗布、ロール塗布、スリット塗布、スリットに続いた回転塗布、インクジェット塗布、印刷などによって塗布し、その後、ホットプレート又はオーブン等で予備乾燥(プリベーク)することにより、塗膜を形成することができる。その後、この塗膜を加熱処理(ポストベーク)することにより、硬化膜が形成される。
【0076】
プリベークの条件としては、例えば、温度70℃乃至160℃、時間0.3乃至60分間の範囲の中から適宜選択された加熱温度及び加熱時間が採用される。加熱温度及び加熱時間は、好ましくは80℃乃至140℃、0.5乃至10分間である。
【0077】
ポストベークとしては、例えば、温度140℃乃至250℃の範囲の中から選択された加熱温度にて、ホットプレート上の場合には5乃至30分間、オーブン中の場合には30乃至90分間処理するという方法が採られる。
【0078】
本発明の光配向性を有する熱硬化性組成物を用いて形成される硬化膜の膜厚は、例えば0.1乃至30μmであり、使用する基板の段差や光学的、電気的性質を考慮し適宜選択することができる。
【0079】
上記のような条件のもとで、本発明の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物を用いて形成される塗膜を硬化させることにより、基盤の段差を十分にカバーすることが可能であり、高透明性を有する硬化膜を形成することができる。
【0080】
このようにして形成した光配向性を有する熱硬化膜は偏光UV照射を行うことで液晶材配向層、即ち、液晶性を有する化合物を配向させる層として機能させることができる。
偏光UVの照射方法としては、通常150乃至450nmの波長の紫外光が用いられ、室温または加熱した状態で垂直または斜め方向から直線偏光を照射することによって行われる。
【0081】
本発明の光配向性を有する熱硬化膜組成物から形成された液晶配向層は耐溶剤性及び耐熱性を有しているため、液晶配向層上に、位相差材料を塗布した後、液晶の相転移温度まで加熱することで位相差材料を液晶状態とし、それを光硬化させ、光学異方性を有する層を形成することができる。
【0082】
位相差材料としては、例えば、重合性基を有する液晶モノマー及びそれを含有する組成物等が用いられる。そして、液晶配向層を形成する基材がフィルムである場合には、光学異方性フィルムとして有用である。このような位相差材料は水平配向、コレステリック配向、垂直配向、ハイブリッド配向等の配向性を有するものがあり、それぞれ必要とされる位相差に応じて使い分けることが出来る。
【0083】
また、上記のようにして形成された液晶配向層を有する2枚の基板を、スペーサーを介して液晶配向層が向かい合うように張り合わせた後、それらの基板の間に、液晶を注入して、液晶が配向した液晶表示素子とすることもできる。
【0084】
そのため、本発明の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物は、各種光学異方性フィルム、液晶表示素子に好適に用いることができる。
【0085】
また、本発明の光配向性を有する熱硬化膜形成組成物は薄膜トランジスタ(TFT)型液晶表示素子、有機EL素子等の各種ディスプレイにおける保護膜、絶縁膜等の硬化膜を形成する材料としても有用であり、特に、カラーフィルタのオーバーコート材、TFT型液晶素子の層間絶縁膜、有機EL素子の絶縁膜等を形成する材料としても好適である。
【実施例】
【0086】
以下、実施例を挙げて、本発明を更に詳しく説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものでない。
【0087】
[実施例で用いる略記号]
以下の実施例で用いる略記号の意味は、次のとおりである。
<アクリル重合体原料>
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
MMA:メチルメタクリレート
MAA:メタクリル酸
CHMI:N−シクロヘキシルマレイミド
CIN:4−(6−メタクリルオキシヘキシル−1−オキシ)ケイ皮酸メチルエステル
AIBN:α、α’−アゾビスイソブチロニトリル
<架橋剤>
HMM:ヘキサメトキシメチルメラミン
TMGU:1,3,4,6−テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル
<酸または熱酸発生剤>
PTSA:p-トルエンスルホン酸一水和物
<増感剤>
DEAB:N,N’−ジエチルアミノベンゾフェノン
NF:4−ニトロフルオレン
<溶剤>
CHN:シクロヘキサノン
PM:プロピレングリコールモノメチルエーテル
PMA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0088】
以下の合成例に従い得られたアクリル共重合体の数平均分子量及び重量平均分子量は、日本分光(株)製GPC装置(Shodex[登録商標]カラムKF803L及びKF804L)を用い、溶出溶媒テトラヒドロフランを流量1ml/分でカラム中に(カラム温度40℃)流して溶離させるという条件で測定した。なお、下記の数平均分子量(以下、Mnと称す。)及び重量平均分子量(以下、Mwと称す。)は、ポリスチレン換算値にて表した。
【0089】
<合成例1>
CIN 40.0g、HEMA 10.0g、重合触媒としてAIBN 1.2gをCHN 133.5gに溶解し85℃にて20時間反応させることにより特定共重合体溶液(固形分濃度27質量%)を得た(P1)。得られた特定共重合体のMnは7,080、Mwは14,030であった。
【0090】
<合成例2>
CIN 48.0g、MMA 12.0g、重合触媒としてAIBN 1.3gをCHN 166.8gに溶解し80℃にて20時間反応させることにより特定共重合体溶液(固形分濃度27質量%)を得た(P2)。得られた特定共重合体のMnは8,700、Mwは18,000であった。
【0091】
<合成例3>
MAA 2.5g、MMA 9.2g、HEMA 5.0g、重合触媒としてAIBN 0.2gをPM 50.7gに溶解し70℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度25質量%)を得た(P3)。得られたアクリル共重合体のMnは19,600、Mwは45,200であった。
【0092】
<合成例4>
MAA 3.5g、MMA 7.0g、HEMA 7.0g、重合触媒としてAIBN 0.5gをPM 53.9gに溶解し75℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度25質量%)を得た(P4)。得られたのMnは10,300、Mwは24,600であった。
【0093】
<合成例5>
MMA 9.0g、HEMA 6.0g、重合触媒としてAIBN 0.2gをPM 45.5gに溶解し70℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度25質量%)を得た(P5)。得られたアクリル共重合体のMnは18,100、Mwは47,100であった。
【0094】
<合成例6>
CHMI 17.8g、MAA 9.8g、MMA 12.8g、HEMA 9.8g、重合触媒としてAIBN 2.8gをPMA 116gに溶解し85℃にて20時間反応させることによりアクリル共重合体溶液(固形分濃度30質量%)を得た(P6)。得られたアクリル共重合体のMnは7,200、Mwは15,200であった。
【0095】
<合成例7>
CIN 40.0g、MAA 10.0g、重合触媒としてAIBN 1.2gをCHN 133.5gに溶解し80℃にて20時間反応させることにより特定共重合体溶液(固形分濃度27質量%)を得た(P7)。得られた特定共重合体のMnは7,240、Mwは15,350であった。
【0096】
<実施例1乃至7及び比較例1乃至4>
表1に示す組成にて実施例1乃至7及び比較例1乃至4の各組成物を調製し、それぞれについて、溶剤耐性、配向性、耐熱性及び透過率の評価を行った。
【表1】
【0097】
[溶剤耐性の評価]
実施例1乃至実施例7並びに比較例1乃至比較例4の各組成物をシリコンウエハーにスピンコーターを用いて塗布した後、温度110℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚1.1μmの塗膜を形成した。膜厚はFILMETRICS社製 F20を用いて測定した。この塗膜を温度230℃で30分間熱風循環式オーブン中でポストベークを行い、膜厚1.0μmの硬化膜を形成した。
この硬化膜をCHN又はNMP中に60秒間浸漬させた後、それぞれ温度100℃にて60秒間乾燥し、膜厚を測定した。CHN又はNMP浸漬後の膜厚変化がないものを○、浸漬後に膜厚の減少が見られたものを×とした。
【0098】
[配向感度の評価]
実施例1乃至実施例7並びに比較例1乃至比較例4の各組成物をITO基板上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度110℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い膜厚1.1μmの塗膜を形成した。膜厚はFILMETRICS社製 F20を用いて測定した。この塗膜を温度230℃で30分間熱風循環式オーブン中でポストベークを行い硬化膜を形成した。
この硬化膜に313nmの直線偏光を垂直に照射した。この基板上に液晶モノマーからなる位相差材料溶液をスピンコーターを用いて塗布した後、80℃で60秒間ホットプレート上においてプリベークを行い膜厚1.4μmの塗膜を形成した。この基板を窒素雰囲気下1000mJ/cmで露光した。作製した基板を偏向板に挟み、配向性を示すのに必要な偏光UVの露光量を配向感度とした。200mJ/cm以上で配向しないものは「配向せず」とした。
【0099】
[耐熱性の評価]
実施例1乃至実施例7並びに比較例1乃至比較例4の各組成物をシリコンウエハーにスピンコーターを用いて塗布した後、温度110℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚1.1μmの塗膜を形成した。膜厚はFILMETRICS社製 F20を用いて測定した。この塗膜を温度230℃で30分熱風循環式オーブン中でポストベークを行い膜厚1.0μmの硬化膜を形成した。この硬化膜に313nmの直線偏光50mJ/cmを垂直に照射した。この硬化膜をさらに温度230℃で3時間熱風循環式オーブン中で焼成し、ポストベーク後の膜圧に対する残膜率を測定した。
【0100】
[光透過率(透明性)の評価]
実施例1乃至実施例7並びに比較例1乃至比較例4の各組成物を石英基板上にスピンコーターを用いて塗布した後、温度110℃で120秒間ホットプレート上においてプリベークを行い、膜厚1.0μmの塗膜を形成した。膜厚はFILMETRICS社製 F20を用いて測定した。この塗膜を温度230℃で30分間熱風循環式オーブン中でポストベークを行い硬化膜を形成した。
この硬化膜を紫外線可視分光光度計((株)島津製作所製SHIMADSU UV−2550型番)を用いて波長400nmの光に対する透過率を測定した。
【0101】
[評価の結果]
以上の評価を行った結果を、次の表2に示す。
【表2】
【0102】
実施例1乃至7は、耐熱性、透明性が高く、CHN、NMPのいずれに対しても耐性がみられた。またいずれも少ない露光量で配向性を示した。
【0103】
比較例1では十分な溶剤耐性が得られず配向感度も大きく低下した。比較例2、3では十分な溶剤耐性、透明性、耐熱性が得られるものの200mJ/cmの露光量でも全く配向性を示さなかった。比較例4では十分な溶剤耐性、耐熱性、透過率が得られず、配向感度も大きく低下した。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明による光配向性を有する熱硬化膜形成組成物は、光学異方性フィルムや液晶表示素子の液晶配向層の材料として非常に有用であり、更に、薄膜トランジスタ(TFT)型液晶表示素子、有機EL素子等の各種ディスプレイにおける保護膜、絶縁膜等の硬化膜を形成する材料、特に、TFT型液晶素子の層間絶縁膜、カラーフィルタのオーバーコート、有機EL素子の絶縁膜等を形成する材料としても好適である。
図1