特許第5748226号(P5748226)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748226
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】ポリオルガノシロキサンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 77/08 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
   C08G77/08
【請求項の数】20
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2012-200887(P2012-200887)
(22)【出願日】2012年9月12日
(65)【公開番号】特開2014-55234(P2014-55234A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2014年8月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085545
【弁理士】
【氏名又は名称】松井 光夫
(72)【発明者】
【氏名】楠木 貴行
(72)【発明者】
【氏名】柏木 努
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特表2006−508216(JP,A)
【文献】 特表2010−506982(JP,A)
【文献】 特開2002−069304(JP,A)
【文献】 特開2005−276688(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/148114(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/00−77/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオルガノシロキサンの製造方法であって、
分子中に少なくとも1個のケイ素原子に結合する−OX基(Xは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基である)と少なくとも1個のケイ素原子に結合するRで示される基(Rは水素原子、又は、酸素原子、ハロゲン原子、窒素原子又は硫黄原子を含んでいてよい炭素数1〜18の一価炭化水素基)とを有し、単量体、二量体、又は、直鎖状、分岐鎖状、または分岐構造を有する直鎖状であるオリゴマー又はポリマーである有機ケイ素化合物の1種以上を、触媒(C)存在下で縮合反応する工程を含み、
前記触媒(C)が、(C1)周期表第2族元素の水酸化物、周期表第2族元素の水酸化物の水和物、及び周期表第2族元素の酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種を(C2)シランカップリング剤で表面処理したものであることを特徴とし、前記(C2)シランカップリング剤がアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物であり、前記触媒(C)は前記(C1)成分100質量部に対して前記(C2)シランカップリング剤0.001〜100質量部で処理したものである、前記製造方法。
【請求項2】
前記触媒(C)の量が、縮合反応に付する有機ケイ素化合物の合計モル量に対する(C1)成分のモル量が0.0001〜20mol%となる量である、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
(A)分子中に少なくとも1個のシラノール基を有する有機ケイ素化合物の少なくとも1種と、
(B1)分子中に少なくとも1個のケイ素原子に結合する−OX基(Xは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基である)を有する有機ケイ素化合物の少なくとも1種を、
前記触媒(C)の存在下で反応させる工程を含む、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
(B2)分子中に少なくとも1個のケイ素原子に結合する−OX’基(X’は、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基である)を有する有機ケイ素化合物の1種以上を、
前記触媒(C)の存在下で反応させる工程を含む、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項5】
分子中に少なくとも1個のシラノール基と、少なくとも1個のケイ素原子に結合する−OX’基(X’は、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基である)とを有する有機ケイ素化合物の1種以上を、
前記触媒(C)の存在下で反応させる工程を含む、請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項6】
前記(A)成分が、下記一般式(1)
(RSiO(4−a−b)/2(OH)) (1)
(Rは、互いに独立に、水素原子、又は、酸素原子、ハロゲン原子、窒素原子又は硫黄原子を含んでいてよい炭素数1〜18の一価炭化水素基であり、a及びbは、括弧内に示される単位毎に独立に、aは0〜3の整数であり、bは0〜4の整数であり、但し、0≦a+b≦4であり、nは1〜10000の整数であり、但し、該ポリオルガノシロキサンは1分子中に少なくとも1個の−OH基を有する)で表され、
前記(B1)成分が、下記一般式(2)
(RSiO(4−a−b―c)/2(OH)(OR) (2)
(Rは、互いに独立に、水素原子、又は、酸素原子、ハロゲン原子、窒素原子又は硫黄原子を含んでいてよい炭素数1〜18の一価炭化水素基であり、Rは、互いに独立に、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基であり、a、b、及びcは、括弧内に示される単位毎に独立に、aは0〜3の整数であり、bは0〜4の整数であり、cは0〜4の整数であり、但し、0≦a+b+c≦4であり、nは1〜10000の整数であり、但し、該有機ケイ素化合物は1分子中に少なくとも1個の−OH基または−OR基を有する)で表される、請求項3記載の製造方法。
【請求項7】
前記(B2)成分が、下記一般式(3)
(RSiO(4−a−c)/2(OR) (3)
(Rは、互いに独立に、水素原子、又は、酸素原子、ハロゲン原子、窒素原子又は硫黄原子を含んでいてよい炭素数1〜18の一価炭化水素基であり、Rは、互いに独立に、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基であり、a及びcは、括弧内に示される単位毎に独立に、aは0〜3の整数であり、cは0〜4の整数であり、但し、0≦a+c≦4であり、nは1〜10000の整数であり、但し、該有機ケイ素化合物は1分子中に少なくとも1個の−OR基を有する)で表される、請求項4記載の製造方法。
【請求項8】
有機ケイ素化合物が、下記一般式(4)
(RSiO(4−a−b―c)/2(OH)(OR) (4)
(Rは、互いに独立に、水素原子、又は、酸素原子、ハロゲン原子、窒素原子又は硫黄原子を含んでいてよい炭素数1〜18の一価炭化水素基であり、Rは、互いに独立に、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基であり、a、b、及びcは、括弧内に示される単位毎に独立に、aは0〜3の整数であり、bは0〜4の整数であり、cは0〜4の整数であり、但し、0≦a+b+c≦4であり、nは1〜10000の整数であり、但し、該有機ケイ素化合物は1分子中に少なくとも1個の−OH基及び少なくとも1個の−OR基を有する)で表される、請求項5記載の製造方法。
【請求項9】
前記(A)成分が下記式(I)で表される有機ケイ素化合物であり、
【化1】
(式中、R’は−OH又はRであり、mはn−1であり、R及びnは上記の通りである)
前記(B1)成分が下記式(II)または(III)で表される有機ケイ素化合物である
【化2】
(式中、R'’は−OH、−OR又はRであり、mはn−1であり、R、R及びnは上記の通りである)
【化3】
(式中、R'’は−OH、−OR又はRであり、mはn−1であり、R、R及びnは上記の通りである)
請求項6記載の製造方法。
【請求項10】
前記(B2)成分が下記式(IV)で表される有機ケイ素化合物である、
【化4】
(式中、R'''は−OR又はRであり、mはn−1であり、R、R及びnは上記の通りである)
請求項7記載の製造方法。
【請求項11】
前記有機ケイ素化合物が下記式(V)または(VI)で表される
【化5】
(式中、R'’は−OH、−OR又はRであり、少なくとも1個のR'’は−OHであり、mはn−1であり、R、R及びnは上記の通りである)
【化6】
(式中、R'’は−OH、−OR又はRであり、少なくとも1個のR'’は−ORであり、mはn−1であり、R、R及びnは上記の通りである)
請求項8記載の製造方法。
【請求項12】
nが1〜1000の整数である、請求項9〜11のいずれか1項記載の製造方法
【請求項13】
がメチル基である、請求項6〜12のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項14】
がメチル基、フェニル基、ビニル基、又は3−グリシジルオキシプロピル基である、請求項6〜13のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項15】
前記(C2)シランカップリング剤が、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、又は3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランである、請求項1〜14のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項16】
Xが水素原子またはメチル基である、請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法
【請求項17】
X’がメチル基である、請求項4または5記載の製造方法。
【請求項18】
縮合反応を(D)少なくとも1種の溶媒の存在下で行う、請求項1〜17のいずれか1項記載の製造方法。
【請求項19】
溶媒が、炭化水素類、芳香族炭化水素類、水、アルコール類、アルコールエステル類、ケトン類、エーテル類、エステル類、シアン化炭化水素類、アミン類、アミド類、ハロゲン化炭化水素類、及び含硫黄化合物類から選択される少なくとも1種である、請求項18記載の製造方法。
【請求項20】
縮合反応の前に、(C1)周期表第2族元素の水酸化物、周期表第2族元素の水酸化物の水和物、及び周期表第2族元素の酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種を(C2)シランカップリング剤で表面処理する工程を含む、請求項1〜19のいずれか1項記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリオルガノシロキサンの製造方法に関する。詳細には、シラノール基(−SiOH)及び/又はアルコキシシリル基(−SiOR)を有する有機ケイ素化合物の1種以上を互いに縮合させてポリオルガノシロキサンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光透過性、耐熱性、ガス透過性、化学的安定性などに優れる材料としてポリオルガノシロキサンが注目されている。ポリオルガノシロキサンは、その製造工程においてシロキサンモノマーの種類、仕込み組成、反応条件などを変えることにより、様々な性質を有したポリオルガノシロキサンを製造することができるため、様々な分野で実用化されている。
【0003】
ポリオルガノシロキサンの一般的な製造方法としては、クロロシラン及び/又はアルコキシシランを、有機溶媒中、酸もしくは塩基触媒の存在下で化学量論的量の水に接触させて加水分解及び縮合反応する製造方法がある。しかし、該製造方法はしばしば、生成したポリオルガノシロキサン中に有意量のシラノール基が残存するため、貯蔵中にシラノール基同士が縮合して増粘する等、保存安定性に問題を来す。また、ポリマー中に不安定なシラノール基を残すことは、長期の使用においてクラッキングの発生や接着性の低下の原因になるおそれがある。さらには、加水分解及び縮合反応によって得られるポリオルガノシロキサンの構造はランダム構造となるため、所望の特性を満たすポリオルガノシロキサンが必ずしも得られるとは限らない。
【0004】
他の一般的な製造方法として、触媒存在下で、シラノール基(−SiOH)を有する有機ケイ素化合物同士を縮合させる方法、シラノール基(−SiOH)を有する有機ケイ素化合物とアルコキシシリル基(−SiOR)を有する有機ケイ素化合物を縮合させる方法、またはアルコキシシリル基(−SiOR)を有する有機ケイ素化合物同士を縮合させる方法が挙げられる(Rはアルキル基、アルコキシアルキル基などを表す)。これらの縮合反応では、生成するポリオルガノシロキサン中に残存するシラノール基の量が少ない。しかし、縮合反応を進行させるために、硫酸、及び塩酸などの強酸類、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及びテトラメチルアンモニア水酸化物などの強塩基類、もしくはルイス酸など、概して化学的に激しい触媒を用いる必要がある。これらの触媒を用いると、縮合反応中にシロキサン結合(Si−O−Si)の切断および再配列が起こるため、得られるポリオルガノシロキサンはランダム構造を有したものになってしまう。
【0005】
特許文献1には、ナトリウムまたはカリウムの硼酸塩または燐酸塩を触媒として用い、該触媒の存在下でシラノール基含有シロキサンを縮合させてオルガノシリコーン縮合生成物を製造する方法が記載されている。特許文献2には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、塩化物、酸化物あるいは塩基性金属塩から選ばれる少なくとも1種の触媒の存在下に、シラノール基含有シロキサンを反応させてポリオルガノシロキサンを製造する方法が記載されている。特許文献3には、プロトン性溶媒が存在するとマグネシウムおよびカルシウムの水酸化物であってもシラノール基含有シロキサンとアルコキシシランの縮合反応を触媒することができることが記載されている。特許文献4には、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム及びそれらの混合物から選ばれる触媒の存在下で、シラノール基及び/又はアルコキシシリル基を有するケイ素含有化合物を反応させて、オルガノシリコーン縮合物を製造する方法が記載されている。
【0006】
上記特許文献1〜4に記載の方法では、ポリオルガノシロキサン鎖の再配列が最小限に留められるため、構造が制御されたポリオルガノシロキサンを得ることができる。また、触媒が固体触媒であるため、得られたポリオルガノシロキサンから濾過により容易に触媒を除去することが可能であるという利点を有する。これらの利点は、特に、使用する材料に精密な制御を必要とする分野や残留不純物が許容されない分野、例えば光学材料や電子材料、医療材料などの分野において有利とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2−235933号公報
【特許文献2】特開平3−197486号公報
【特許文献3】特表2006−508216号公報
【特許文献4】特表2010−506982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1〜4に記載の製造方法は、特に反応速度の観点において未だ満足できるものでない。反応速度の向上、即ち触媒の高活性化は、反応に用いるオルガノシロキサンが温度に敏感な場合に必要であり、反応温度を下げること、及び反応時間を短縮することが要求される。また、反応速度を上げることは生産工程の短縮、必要触媒量の低減など、製造コストの点でも重要である。したがって、より高い活性を有する触媒システムの開発が望まれている。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み成されたものであり、シラノール基(−SiOH)及び/又はアルコキシシリル基(−SiOR)を有する有機ケイ素化合物の1種以上を互いに縮合させてポリオルガノシロキサンを製造する方法において、高い活性を示し、反応時間を短縮できる触媒を提供すること、及び、該触媒を使用したポリオルガノシロキサンの製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、周期表第2族元素の水酸化物、前記水酸化物の水和物、及び周期表第2族元素の酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種を、シランカップリング剤で表面処理して得られたものを触媒として使用することにより、ポリオルガノシロキサンの製造工程において、生成物中の残留不純物量を増加することなく縮合反応時間を短縮できることを見出し、本発明を成すに至った。
【0011】
即ち、本発明は、ポリオルガノシロキサンの製造方法であって、
分子中に少なくとも1個のケイ素原子に結合する−OX基(Xは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基である)と少なくとも1個のケイ素原子に結合するRで示される基(Rは水素原子、又は、酸素原子、ハロゲン原子、窒素原子又は硫黄原子を含んでいてよい炭素数1〜18の一価炭化水素基)とを有し、単量体、二量体、又は、直鎖状、分岐鎖状、または分岐構造を有する直鎖状であるオリゴマー又はポリマーである有機ケイ素化合物の1種以上を、触媒(C)存在下で縮合反応する工程を含み、
前記触媒(C)が、(C1)周期表第2族元素の水酸化物、周期表第2族元素の水酸化物の水和物、及び周期表第2族元素の酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種を(C2)シランカップリング剤で表面処理したものであることを特徴とし、前記(C2)シランカップリング剤がアルコキシ基を有する有機ケイ素化合物であり、前記触媒(C)は前記(C1)成分100質量部に対して前記(C2)シランカップリング剤0.001〜100質量部で処理したものである、前記製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の製造方法は、シラノール基及び/又はアルコキシシリル基を有する有機ケイ素化合物の1種以上を互いに縮合反応させる工程を含むポリオルガノシロキサンの製造方法において、縮合反応時間を短縮することができ、所望とするポリオルガノシロキサンを効率的に製造することができる。更に、本発明の方法で得られる生成物は残留不純物量が少ないため、特に、使用する材料に精密な制御を必要とする分野や残留不純物が許容されない分野、例えば光学材料や電子材料、医療材料などの分野において有利に使用される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明は、縮合反応に使用する触媒(C)が、(C1)周期表第2族元素の水酸化物、周期表第2族元素の水酸化物の水和物、及び周期表第2族元素の酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種を(C2)シランカップリング剤で表面処理したものであることを特徴とする。以下、触媒(C)について説明する。
【0015】
(C1)成分は、周期表第2族元素の水酸化物、周期表第2族元素の水酸化物の水和物、及び周期表第2族元素の酸化物からなる群より選ばれる少なくとも1種(以下、第2族元素の化合物と称す)である。第2族元素の化合物は、シラノール基(−SiOH)及び/又はアルコキシシリル基(−SiOR)を有する有機ケイ素化合物の縮合反応を進行することができる触媒機能を有する化合物であればよい。例えば、水酸化ラジウム、水酸化バリウム、水酸化ストロンチウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化ベリリウム、水酸化バリウム八水和物、水酸化バリウム一水和物、水酸化ストロンチウム八水和物、酸化バリウム、酸化ストロンチウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化ベリリウムなどが挙げられる。中でも、水酸化バリウム八水和物、水酸化バリウム一水和物、水酸化バリウム、酸化バリウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、及び水酸化ストロンチウム八水和物が好ましく、特には、水酸化バリウム八水和物、及び水酸化ストロンチウム八水和物が好ましい。
【0016】
本発明は、上記(C1)第2族元素の化合物を(C2)シランカップリング剤で表面処理して得られたものを触媒として使用する事を特徴とする。上記第2族元素の化合物の表面をシランカップリング剤で処理することによって、触媒同士の凝集が抑制されるため、反応系中に触媒が均一に分散することができ、触媒としての有効表面積が大きくなる。その結果、縮合反応速度を向上することができる。即ち、触媒の高活性化を達成することができる。
【0017】
(C2)シランカップリング剤は、シランカップリング剤として従来公知のものを使用することができる。特には、触媒の分散性の観点から、縮合反応に付する有機ケイ素化合物、特にはアルコキシ基を含有する有機ケイ素化合物に類似した構造を有するものが望ましい。該シランカップリング剤としては、例えば、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロ−プロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメトキシ−1,3,5−トリメチルトリシロキサン、1,1,5,5−テトラメトキシ−1,3,5−トリメチルトリシロキサン−3−オール、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジスチリルジメトキシシラン、ジペンタフルオロフェニルジメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザンなどが挙げられる。中でも、ビニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0018】
本発明の製造方法は、縮合反応の前に(C1)第2族元素の化合物を(C2)シランカップリング剤で表面処理する工程を含むことができる。(C2)シランカップリング剤により(C1)第2族元素の化合物の表面を処理する方法は、従来公知の方法に従えばよい。例えば、湿式法や乾式法などを用いることができる。(C1)第2族元素の化合物と(C2)シランカップリング剤との混合割合は特に限定されるものではないが、触媒活性を損なわないためには、(C1)第2族元素の化合物100質量部に対して(C2)シランカップリング剤0.001〜100質量部、好ましくは0.01〜10質量部で処理することが好ましい。尚、本発明の製造方法で使用する触媒(C)は、第2族元素の化合物の表面を予めシランカップリング剤で処理されたものであってよく、市販品であってよい。
【0019】
本発明の製造方法で使用する触媒の量は、縮合反応に付する有機ケイ素化合物の合計モル量に対する(C1)第2族元素の化合物のモル量が(即ち、シランカップリング剤で表面処理されていない化合物の量として)、0.0001〜20mol%となる量、好ましくは0.01〜10mol%となる量、より好ましくは0.1〜1.0mol%となる量がよい。(C1)第2族元素の化合物の量が上記範囲内であれば、縮合反応において十分な触媒効果を得ることができ、また、反応後に濾過により触媒を除去する工程において、濾紙が目詰まりすることなく目的の縮合物を効率良く得ることができるため好ましい。
【0020】
本発明は、上記触媒(C)の存在下で、分子中に少なくとも1個の−OX基(Xは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基である)を有する有機ケイ素化合物の1種以上を縮合反応する工程を含むポリオルガノシロキサンの製造方法を提供する。
【0021】
上記製造方法の第一の態様は、
(A)分子中に少なくとも1個のシラノール基を有する有機ケイ素化合物の少なくとも1種と、
(B1)分子中に少なくとも1個の−OX基(Xは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基である)を有する有機ケイ素化合物の少なくとも1種を、
前記触媒(C)の存在下で反応させる工程を含む、ポリオルガノシロキサンの製造方法である。
【0022】
上記製造方法の第二の態様は、
(B2)分子中に少なくとも1個の−OX’基(X’は、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基である)を有する有機ケイ素化合物の1種以上を、
前記触媒(C)の存在下で反応させる工程を含む、ポリオルガノシロキサンの製造方法である。
【0023】
上記製造方法の第三の態様は、
分子中に少なくとも1個のシラノール基と、少なくとも1個の−OX’基(X’は、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基である)とを有する有機ケイ素化合物の1種以上を、
前記触媒(C)の存在下で反応させる工程を含む、ポリオルガノシロキサンの製造方法である。
以下、各態様について説明する。
【0024】
[第一の態様]
第一の態様において、(A)成分は、分子中に少なくとも1個のシラノール基を有する有機ケイ素化合物の少なくとも1種であり、(B1)成分は、分子中に少なくとも1個の−OX基(Xは、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基である)を有する有機ケイ素化合物の少なくとも1種である。有機ケイ素化合物は、単量体、二量体、オリゴマー、ポリマーのいずれであっても良い。また、有機ケイ素化合物がオリゴマー又はポリマーである場合、その構造は、直鎖状、分岐鎖状、分岐構造を有する直鎖状のいずれであってもよい。好ましくは直鎖状である。高分子量の縮合体を得ることを目的とする場合には、シラノール基及び−OX基を各々の分子中に2個以上有するものが好ましい。尚、(B1)成分のXが水素である場合、(A)成分と(B1)成分は同じ化合物であってもよい。
【0025】
(A)成分は、下記一般式(1)で表されることができる。
(RSiO(4−a−b)/2(OH)) (1)
上記式(1)において、Rは、互いに独立に、水素原子、又は、酸素原子、ハロゲン原子、窒素原子又は硫黄原子を含んでいてよい炭素数1〜18の一価炭化水素基であり、a及びbは、括弧内に示される単位毎に独立に、aは0〜3の整数であり、bは0〜4の整数であり、但し、0≦a+b≦4であり、より好ましくは2≦a+b≦4である。nは1〜10000の整数であり、但し、該ポリオルガノシロキサンは1分子中に少なくとも1個の−OH基を有する。
【0026】
(B1)成分は、下記一般式(2)で表されることができる。
(RSiO(4−a−b―c)/2(OH)(OR) (2)
上記式(2)において、Rは、互いに独立に、水素原子、又は、酸素原子、ハロゲン原子、窒素原子又は硫黄原子を含んでいてよい炭素数1〜18の一価炭化水素基であり、Rは、互いに独立に、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基であり、a、b、及びcは、括弧内に示される単位毎に独立に、aは0〜3の整数であり、bは0〜4の整数であり、cは0〜4の整数であり、但し、0≦a+b+c≦4であり、より好ましくは2≦a+b+c≦4である。nは1〜10000の整数であり、但し、該有機ケイ素化合物は1分子中に少なくとも1個の−OH基または−OR基を有する。
【0027】
上記式(1)及び(2)中、Rは、互いに独立に、水素原子、又は、酸素原子、ハロゲン原子、窒素原子又は硫黄原子を含んでいてよい炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の一価炭化水素基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基;これらの基の炭素原子に結合する水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子またはシアノ基で置換したもの、例えば、トリフルオロプロピル基、クロロプロピル基等のハロゲン化一価炭化水素基;β−シアノエチル基、γ−シアノプロピル基等のシアノアルキル基;3−メタクリルオキシプロピル基、3−グリシジルオキシプロピル基、3−グリシジルオキシプロピルメチル基、3−メルカプトプロピル基、及び3−アミノプロピル基が例示される。中でもメチル基、フェニル基、ビニル基、3−グリシジルオキシプロピル基が好ましい。
【0028】
上記式(2)中、Rは、互いに独立に、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜8のアルコキシアルキル基である。例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びオクチル基等のアルキル基;メトキシメチル基、メトキシエチル基、及びエトキシメチル基等のアルコキシアルキル基が挙げられる。中でもメチル基であることが好ましい。
【0029】
上記式(1)及び(2)中、nは1〜10000の整数であり、好ましくは1〜1000の整数である。上記の通り、式(1)及び(2)で表される有機ケイ素化合物は単量体(n=1)、二量体(n=2)、オリゴマー(n=3〜100)、及びポリマー(n=100〜10000)のいずれであっても良い。特に好ましくは、単量体(n=1)または二量体(n=2)である。
【0030】
(A)成分は、特に好ましくは下記式(I)で表される有機ケイ素化合物である。
【化1】
上記式中、R’は−OH又はRであり、mはn−1であり、R及びnは上記の通りである。
【0031】
上記式(I)で表される有機ケイ素化合物としては、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1,3−ジオール、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチルトリシロキサン−1,5−ジオール、1,1,3,5,5−ペンタメチルトリシロキサン−1,3,5−トリオール、3−グリシジルオキシプロピルメチルシラントリオール、3−メタクリルオキシプロピルシラントリオール、3−アミノプロピルシラントリオール、3−メルカプトプロピルシラントリオール、3−クロロプロピルシラントリオール、珪酸、フェニルメチルシランジオール、ジフェニルシランジオール、ジスチリルシランジオール、ジペンタフルオロフェニルシランジオールなどが挙げられる。中でも、入手の容易さからジフェニルシランジオールが好ましい。
【0032】
(B1)成分は、特に好ましくは下記式(II)または(III)で表される有機ケイ素化合物である。
【化2】
上記式中、R'’は−OH、−OR又はRであり、好ましくは、R'’は−OR又はRであり、mはn−1であり、R、R及びnは上記の通りである。
【化3】
上記式中、R'’は−OH、−OR又はRであり、好ましくは、R'’は−OH又はRであり、mはn−1であり、R、R及びnは上記の通りである。
【0033】
上記式(II)で表される有機ケイ素化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロ−プロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、1,1,5,5−テトラメトキシ−1,3,5−トリメチルトリシロキサン−3−オール、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジスチリルジメトキシシラン、ジペンタフルオロフェニルジメトキシシランなどが挙げられる。反応性の観点から、テトラメトキシシランおよびトリメトキシシラン類が好ましい。また、上記式(III)で表される有機ケイ素化合物としては、上記式(I)で表される有機ケイ素化合物と同じ化合物、及び3−メトキシ−1,3,5−トリメチルトリシロキサン−1,1,5,5−テトラオール等が挙げられる。
【0034】
(A)成分と(B)成分の配合比率は、目的とするポリオルガノシロキサンの構造に応じて適宜調整すればよい。特には、(A)成分中に含まれるシラノール基の個数と、(B)成分中に含まれる−OX基の個数が等しくなるような割合であるのがよい。即ち、((A)成分中のシラノール基の個数)/((B)成分中の−OX基の個数)の比が0.5〜1.5、特には0.8〜1.2、さらに特には0.9〜1.1となる量で反応させることが好ましい。例えば、(A)成分としてジフェニルシランジオールを用い、(B)成分としてビニルトリメトキシシランを用いる場合、(A)成分と(B)成分のモル比が3:2であることが好ましい。
【0035】
[第二の態様]
第二の態様において(B2)成分は、分子中に少なくとも1個の−OX’基(X’は、互いに独立に、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基である)を有する有機ケイ素化合物の1種以上である。有機ケイ素化合物は、単量体、二量体、オリゴマー、ポリマーのいずれであっても良い。また、有機ケイ素化合物がオリゴマー又はポリマーである場合は、直鎖状、分岐鎖状、分岐構造を有する直鎖状のいずれであってもよい。好ましくは直鎖状である。高分子量の縮合体を得ることを目的とする場合には、−OX’基を分子中に2個以上有するものが好ましい。
【0036】
(B2)成分は、下記一般式(3)で表されることができる。
(RSiO(4−a−c)/2(OR) (3)
上記式(3)において、Rは、互いに独立に、水素原子、又は、酸素原子、ハロゲン原子、窒素原子又は硫黄原子を含んでいてよい炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、上記式(1)及び(2)のために列挙したものが挙げられる。Rは、互いに独立に、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜8のアルコキシアルキル基であり、上記式(2)のために列挙したものが挙げられる。
【0037】
上記式(3)において、a及びcは、括弧内に示される単位毎に独立に、aは0〜3の整数であり、cは0〜4の整数であり、但し、0≦a+c≦4、より好ましくは2≦a+c≦4である。但し、該有機ケイ素化合物は1分子中に少なくとも1個の−OR基を有する。
【0038】
上記式(3)において、nは1〜10000の整数であり、好ましくは1〜1000の整数である。上記の通り、式(3)で表される有機ケイ素化合物は単量体(n=1)、二量体(n=2)、オリゴマー(n=3〜100)、及びポリマー(n=100〜10000)のいずれであっても良い。特に好ましくは、単量体(n=1)または二量体(n=2)である。
【0039】
(B2)成分は、特に好ましくは下記式(IV)で表される有機ケイ素化合物である。
【化4】
上記式中、R'''は−OR又はRであり、mはn−1であり、R、R及びnは上記の通りである。
【0040】
上記式(IV)で表される有機ケイ素化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、トリメトキシシラン、トリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、3,3,3−トリフルオロ−プロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、3−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジスチリルジメトキシシラン、ジペンタフルオロフェニルジメトキシシランなどが挙げられる。反応性の観点から、テトラメトキシシランおよびトリメトキシシラン類が好ましい。
【0041】
2種類以上の有機ケイ素化合物を互いに縮合反応させる場合、各成分の配合比率は、目的とするポリオルガノシロキサンの構造に応じて適宜調整すればよい。特には、各成分中に含まれる−OX’基の個数が等しくなるような割合であるのがよい。例えば2種類を反応させるのであれば(一方の有機ケイ素化合物中の−OX’基の個数)/(他方の有機ケイ素化合物中の−OX’基の個数)の比が0.5〜1.5、特には0.8〜1.2、さらに特には0.9〜1.1となる量で反応させることが好ましい。
【0042】
[第三の態様]
第三の態様は、分子中に少なくとも1個のシラノール基と、少なくとも1個の−OX’基(X’は、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数2〜10のアルコキシアルキル基である)とを有する有機ケイ素化合物の1種以上を互いに縮合反応させる工程を含む、ポリオルガノシロキサンの製造方法である。有機ケイ素化合物は、単量体、二量体、オリゴマー、ポリマーのいずれであっても良い。また、有機ケイ素化合物がオリゴマー又はポリマーである場合は、直鎖状、分岐鎖状、分岐構造を有する直鎖状のいずれであってもよい。好ましくは直鎖状である。
【0043】
上記有機ケイ素化合物は、下記一般式(4)で表されることができる。
(RSiO(4−a−b―c)/2(OH)(OR) (4)
上記式(4)において、Rは、互いに独立に、水素原子、又は、酸素原子、ハロゲン原子、窒素原子又は硫黄原子を含んでいてよい炭素数1〜18、好ましくは炭素数1〜10の一価炭化水素基であり、上記式(1)及び(2)のために列挙したものが挙げられる。Rは、互いに独立に、炭素数1〜10、好ましくは炭素数1〜8のアルキル基、または炭素数2〜10、好ましくは炭素数2〜8のアルコキシアルキル基であり、上記式(2)のために列挙したものが挙げられる。
【0044】
上記式(4)において、a、b、及びcは、括弧内に示される単位毎に独立に、aは0〜3の整数であり、bは0〜4の整数であり、cは0〜4の整数であり、但し、0≦a+b+c≦4であり、より好ましくは2≦a+b+c≦4である。但し、該有機ケイ素化合物は1分子中に少なくとも1個の−OH基及び少なくとも1個の−OR基を有する。
【0045】
上記式(4)において、nは1〜10000の整数であり、好ましくは1〜1000の整数である。上記の通り、式(4)で表される有機ケイ素化合物は単量体(n=1)、二量体(n=2)、オリゴマー(n=3〜100)、及びポリマー(n=100〜10000)のいずれであっても良い。特に好ましくは、単量体(n=1)または二量体(n=2)である。
【0046】
上記有機ケイ素化合物は、特に好ましくは下記式(V)または(VI)で表される。
【化5】
上記式中、R'’は−OH、−OR又はRであり、少なくとも1個のR'’は−OHであり、mはn−1であり、R、R及びnは上記の通りである。
【化6】
上記式中、R'’は−OH、−OR又はRであり、少なくとも1個のR'’は−ORであり、mはn−1であり、R、R及びnは上記の通りである。
【0047】
上記式(V)または(VI)で表される有機ケイ素化合物としては、1,1,5,5−テトラメトキシ−1,3,5−トリメチルトリシロキサン−3−オール、3−メトキシ−1,3,5−トリメチルトリシロキサン−1,1,5,5−テトラオール、1,3−ジメトキシ−1,3−ジメチルジシロキサン−1,3−ジオール、1,3,5−トリメトキシ−1,3,5−トリメチルトリシロキサン−1,5−ジオール、3−メトキシ−1,1,5,5−テトラメチルトリシロキサン−1,3,5−トリオール、メトキシメチルシランジオール、ジメトキシシランジオール等が挙げられる。
【0048】
2種類以上の有機ケイ素化合物を互いに縮合反応させる場合、各成分の配合比率は、目的とするポリオルガノシロキサンの構造に応じて適宜調整すればよい。特には、高分子量の縮合物を得るためには、各成分中に含まれるシラノール基及び−OX’基の合計個数が等しくなるような割合であるのがよい。例えば、2種類を反応させるのであれば(一方の有機ケイ素化合物中のシラノール基及び−OX’基の合計個数)/(他方の有機ケイ素化合物中のシラノール基及び−OX’基の合計個数)の比が0.5〜1.5、特には0.8〜1.2、さらに特には0.9〜1.1となる量で反応させることが好ましい。
【0049】
本発明における縮合反応は(D)少なくとも1種の溶媒の存在下で行うことができる。溶媒は、縮合反応の速度および反応率を調整するため、あるいは生成する縮合物の希釈剤として用いられる。該溶媒は、非極性溶媒及び極性溶媒から選ばれる1種以上であればよい。非極性溶媒としては、例えば、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタンなどの炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。極性溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのアルコール類;アルコールエステル類;アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテルなどのエーテル類;酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチルなどのエステル類;アセトニトリルなどのシアン化炭化水素類;アミン類;アセトアミドなどのアミド類;塩化メチレン、クロロホルム、ヘキサフロロメタキシレンなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルスルホキシドなどの含硫黄化合物類が挙げられる。溶媒の使用量は特に限定されるものではなく、適宜調整すればよい。通常、縮合反応に付する有機ケイ素化合物の濃度が5〜97重量%、好ましくは20〜80重量%となる量であるのがよい。尚、本発明の製造方法における縮合反応は無溶剤系で行うこともできる。
【0050】
本発明における縮合反応は、縮合反応の進行を妨げるものでなければ、その他の成分を使用しても良い。例えば、固体触媒の分散性を高める目的で中性界面活性剤を添加することができる。また、上記一般式(1)〜(4)におけるRが反応性を有する場合には、反応抑制剤を添加してもよい。これらの成分は1種単独で用いても、2種以上を併用しても良い。また、添加量は、本発明の効果を妨げない範囲で適宜調整すればよい。
【0051】
本発明における縮合反応は、加熱条件下で行っても良い。反応温度の好ましい範囲は0〜150℃であり、より好ましくは60〜100℃である。
【0052】
本発明の製造方法はさらに、縮合反応終了後に触媒を濾過する工程を含むのが好ましい。本発明の製造方法では、該工程により、触媒を反応生成物から容易に除去することができる。濾過には、得られた反応生成物の粘度を調節する目的で、上述した(D)溶媒を使用してもよい。
【0053】
本発明の製造方法はさらに、反応生成物から未反応モノマーを除去する目的で、水洗、減圧ストリップ、活性炭処理など公知の方法により精製を行う工程を含んでいてもよい。
【0054】
本発明の製造方法は、得られる生成物中の残留不純物量を増加することなく、縮合反応時間を短縮することができる。従って、所望とするポリオルガノシロキサンを効率的に製造することができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、実施例中の部はいずれも質量部を意味する。
【0056】
下記実施例に示した重量平均分子量(Mw)はポリスチレンを標準物質としたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した値である。以下に測定条件を示す。
[GPC測定条件]
展開溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.6mL/min
カラム:TSK Guardcolumn SuperH−L
TSKgel SuperH4000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH3000(6.0mmI.D.×15cm×1)
TSKgel SuperH2000(6.0mmI.D.×15cm×2)
(いずれも東ソー社製)
カラム温度:40℃
試料注入量:20μL (試料濃度:0.5wt%−テトラヒドロフラン溶液)
検出器:示差屈折率計(RI)
【0057】
実施例及び比較例において使用した化合物の構造を以下に示す。
(1)ジフェニルシランジオール(DPS)
【化7】
(2)1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1,3−ジオール(TDS)
【化8】
(3)トリメトキシビニルシラン(TVS)
【化9】
(4)トリメトキシメチルシラン(TMS)
【化10】
(5)3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GTS)
【化11】
【0058】
[調製例1]
触媒の調製
Ba(OH)・8HO 100質量部にシランカップリング剤(トリメトキシビニルシラン:TVS)0.1質量部を加え、ヘンシェルミキサーによって良く攪拌混合した後、室温にて24時間風乾を行い、シランカップリング剤(TVS)で表面処理したBa(OH)・8HOを得た。
【0059】
[調製例2]
触媒の調製
Ba(OH)・8HO 100質量部にシランカップリング剤(トリメトキシメチルシラン:TMS)0.1質量部を加え、ヘンシェルミキサーによって良く攪拌混合した後、室温にて24時間風乾を行い、シランカップリング剤(TMS)で表面処理したBa(OH)・8HOを得た。
【0060】
[実施例1]
ジフェニルシランジオール(DPS)(259.57g、1.2mol)、及びトリメトキシビニルシラン(TVS)(118.59g、0.8mol)を混合し、攪拌しながら80℃で10分加熱した。その後、調製例1で得た、シランカップリング剤(TVS)で表面処理したBa(OH)・8HOを、Ba(OH)・8HOの量として0.02mol加え、80℃でメタノールを除去しながら4時間反応を行った。
【0061】
[実施例2]
ジフェニルシランジオール(DPS)(259.57g、1.2mol)、トリメトキシビニルシラン(TVS)(118.59g、0.8mol)、およびキシレン(20wt%となる量)を混合し、攪拌しながら80℃で10分加熱した。その後、調製例1で得た、シランカップリング剤(TVS)で表面処理したBa(OH)・8HOを、Ba(OH)・8HOの量として0.02mol加え、80℃でメタノールを除去しながら4時間反応を行った。
【0062】
[実施例3]
ジフェニルシランジオール(DPS)(259.57g、1.2mol)、トリメトキシビニルシラン(TVS)(118.59g、0.8mol)、およびメタノール(5wt%となる量)を混合し、攪拌しながら80℃で10分加熱した。その後、調製例1で得た、シランカップリング剤(TVS)で表面処理したBa(OH)・8HOを、Ba(OH)・8HOの量として0.02mol加え、80℃でメタノールを除去しながら4時間反応を行った。
【0063】
[実施例4]
ジフェニルシランジオール(DPS)(259.57g、1.2mol)、トリメトキシビニルシラン(TVS)(118.59g、0.8mol)、および水(3wt%となる量)を混合し、攪拌しながら80℃で10分加熱した。その後、調製例1で得た、シランカップリング剤(TVS)で表面処理したBa(OH)・8HOを、Ba(OH)・8HOの量として0.02mol加え、80℃でメタノールを除去しながら4時間反応を行った。
【0064】
[実施例5]
ジフェニルシランジオール(DPS)(259.57g、1.2mol)、及びトリメトキシビニルシラン(TVS)(118.59g、0.8mol)を混合し、攪拌しながら80℃で10分加熱した。その後、調製例2で得た、シランカップリング剤(TMS)で表面処理したBa(OH)・8HOを、Ba(OH)・8HOの量として0.02mol加え、80℃でメタノールを除去しながら4時間反応を行った。
【0065】
[比較例1]
触媒をシランカップリング剤で表面処理していないBa(OH)・8HO 0.02molにした他は実施例1と同じ組成及び方法にて反応を行った。
【0066】
[比較例2]
触媒をシランカップリング剤で表面処理していないBa(OH)・8HO 0.04molにした他は実施例1と同じ組成及び方法にて反応を行った。
【0067】
上記実施例1〜5、比較例1及び2について、以下の方法に従い、反応速度の評価及び残留触媒量の測定を行った。結果を表1に示す。
【0068】
[反応速度の評価]
反応中、反応液の様子を観察し、反応液が白濁から透明になるまでの時間、即ち、固体粉末状であるDPSモノマーが全て反応するまでの時間を目視により記録した。その後さらに熟成し、反応1時間後と反応4時間後に生成した縮合物(ポリマー)のサンプリングを行い、GPCにより重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0069】
[残留触媒量の測定]
各反応終了後、脱溶媒を行い、続いて0.45μm孔径の濾紙を用いて濾過することで触媒を除去した。生成したポリオルガノシロキサンを同量のキシレンに溶解し、試料溶液を調製した後、試料溶液の10倍質量のイオン交換水を加えて浸盪することで、該試料溶液中に残留している触媒を水で抽出した。該抽出水を用い、原子吸光法によりポリオルガノシロキサン中の残留触媒量を測定した。
【0070】
【表1】
【0071】
[調製例3]
触媒の調製
Ba(OH)・HO 100質量部にシランカップリング剤(トリメトキシビニルシラン:TVS)0.1質量部を加え、ヘンシェルミキサーによって良く攪拌混合した後、室温にて24時間風乾を行い、シランカップリング剤(TVS)で表面処理したBa(OH)・HOを得た。
【0072】
[実施例6]
ジフェニルシランジオール(DPS)(259.57g、1.2mol)、及びトリメトキシビニルシラン(TVS)(118.59g、0.8mol)を混合し、攪拌しながら80℃で10分加熱した。その後、調製例3で得た、シランカップリング剤(TVS)で表面処理したBa(OH)・HOを、Ba(OH)・HOの量として0.02mol加え、80℃でメタノールを除去しながら4時間反応を行った。
【0073】
[比較例3]
触媒をシランカップリング剤で表面処理していないBa(OH)・HO 0.02molにした他は実施例6と同じ組成及び方法にて反応を行った。
【0074】
[比較例4]
触媒をシランカップリング剤で表面処理していないBa(OH)・HO 0.05molにした他は実施例6と同じ組成及び方法にて反応を行った。
【0075】
実施例6、比較例3、及び比較例4について、上記と同じ方法で反応速度の評価及び残留触媒量の測定を行った。結果を表2に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
[調製例4]
触媒の調製
Ba(OH)100質量部にシランカップリング剤(トリメトキシビニルシラン:TVS)0.1質量部を加え、ヘンシェルミキサーによって良く攪拌混合した後、室温にて24時間風乾を行い、シランカップリング剤(TVS)で表面処理したBa(OH)を得た。
【0078】
[実施例7]
ジフェニルシランジオール(DPS)(259.57g、1.2mol)、及びトリメトキシビニルシラン(TVS)(118.59g、0.8mol)を混合し、攪拌しながら80℃で10分加熱した。その後、調製例4で得た、シランカップリング剤(TVS)で表面処理したBa(OH)を、Ba(OH)の量として0.02mol加え、80℃でメタノールを除去しながら4時間反応を行った。
【0079】
[比較例5]
触媒をシランカップリング剤で表面処理していないBa(OH) 0.02molにした他は実施例7と同じ組成及び方法にて反応を行った。
【0080】
実施例7及び比較例5について、上記と同じ方法で反応速度の評価及び残留触媒量の測定を行った。結果を表3に示す。
【0081】
【表3】
【0082】
[調製例5]
触媒の調製
BaO 100質量部にシランカップリング剤(トリメトキシビニルシラン:TVS)0.1質量部を加え、ヘンシェルミキサーによって良く攪拌混合した後、室温にて24時間風乾を行い、シランカップリング剤(TVS)で表面処理したBaOを得た。
【0083】
[実施例8]
ジフェニルシランジオール(DPS)(259.57g、1.2mol)、及びトリメトキシビニルシラン(TVS)(118.59g、0.8mol)を混合し、攪拌しながら80℃で10分加熱した。その後、調製例5で得た、シランカップリング剤(TVS)で表面処理したBaOを、BaOの量として0.02mol加え、80℃でメタノールを除去しながら4時間反応を行った。
【0084】
[比較例6]
触媒をシランカップリング剤で表面処理していないBaO 0.02molにした他は実施例8と同じ組成及び方法にて反応を行った。
【0085】
実施例8及び比較例6について、上記と同じ方法で反応速度の評価及び残留触媒量の測定を行った。結果を表4に示す。
【0086】
【表4】
【0087】
[調製例6]
触媒の調製
Ca(OH)100質量部にシランカップリング剤(トリメトキシビニルシラン:TVS)0.1質量部を加え、ヘンシェルミキサーによって良く攪拌混合した後、室温にて24時間風乾を行い、シランカップリング剤(TVS)で表面処理したCa(OH)を得た。
【0088】
[調製例7]
Ca(OH)100質量部にシランカップリング剤(トリメトキシメチルシラン:TMS)0.1質量部を加え、ヘンシェルミキサーによって良く攪拌混合した後、室温にて24時間風乾を行い、シランカップリング剤(TMS)で表面処理したCa(OH)を得た。
【0089】
[実施例9]
ジフェニルシランジオール(DPS)(259.57g、1.2mol)、及びトリメトキシビニルシラン(TVS)(118.59g、0.8mol)、およびメタノール(5wt%となる量)を混合し、攪拌しながら80℃で10分加熱した。その後、調製例6で得た、シランカップリング剤(TVS)で表面処理したCa(OH)を、Ca(OH)の量として0.02mol加え、80℃でメタノールを除去しながら4時間反応を行った。
【0090】
[実施例10]
ジフェニルシランジオール(DPS)(259.57g、1.2mol)、及びトリメトキシビニルシラン(TVS)(118.59g、0.8mol)、およびメタノール(5wt%となる量)を混合し、攪拌しながら80℃で10分加熱した。その後、調製例7で得た、シランカップリング剤(TMS)で表面処理したCa(OH)を、Ca(OH)の量として0.02mol加え、80℃でメタノールを除去しながら4時間反応を行った。
【0091】
[比較例7]
触媒をシランカップリング剤で表面処理していないCa(OH) 0.02molにした他は、実施例9及び10と同じ組成及び方法にて反応を行った。
【0092】
実施例9、実施例10及び比較例7について、上記と同じ方法で反応速度の評価及び残留触媒量の測定を行った。結果を表5に示す。
【0093】
【表5】
【0094】
[調製例8]
触媒の調製
Sr(OH)・8HO 100質量部にシランカップリング剤(トリメトキシビニルシラン:TVS)0.1質量部を加え、ヘンシェルミキサーによって良く攪拌混合した後、室温にて24時間風乾を行い、シランカップリング剤(TVS)で表面処理したSr(OH)・8HOを得た。
【0095】
[実施例11]
ジフェニルシランジオール(DPS)(259.57g、1.2mol)、及びトリメトキシビニルシラン(TVS)(118.59g、0.8mol)を混合し、攪拌しながら80℃で10分加熱した。その後、調製例8で得た、シランカップリング剤(TVS)で表面処理したSr(OH)・8HOを、Sr(OH)・8HOの量として0.02mol加え、80℃でメタノールを除去しながら4時間反応を行った。
【0096】
[比較例8]
触媒をシランカップリング剤で表面処理していないSr(OH)・8HO 0.02molにした他は実施例11と同じ組成及び方法にて反応を行った。
【0097】
[比較例9]
触媒をシランカップリング剤で表面処理していないSr(OH)・8HO 0.05molにした他は、実施例11と同じ組成及び方法にて反応を行った。
【0098】
実施例11、比較例8及び比較例9について、上記と同じ方法で反応速度の評価及び残留触媒量の測定を行った。結果を表6に示す。
【0099】
【表6】
【0100】
[調製例9]
触媒の調製
Sr(OH)100質量部にシランカップリング剤(トリメトキシビニルシラン:TVS)0.1質量部を加え、ヘンシェルミキサーによって良く攪拌混合した後、室温にて24時間風乾を行い、シランカップリング剤(TVS)で表面処理したSr(OH)を得た。
【0101】
[実施例12]
ジフェニルシランジオール(DPS)(259.57g、1.2mol)、及びトリメトキシビニルシラン(TVS)(118.59g、0.8mol)を混合し、攪拌しながら80℃で10分加熱した。その後、調製例9で得た、シランカップリング剤(TVS)で表面処理したSr(OH)を、Sr(OH)の量として0.02mol加え、80℃でメタノールを除去しながら4時間反応を行った。
【0102】
[比較例10]
触媒をシランカップリング剤で表面処理していないSr(OH) 0.02molにした他は実施例12と同じ組成及び方法にて反応を行った。
【0103】
[比較例11]
触媒をシランカップリング剤で表面処理していないSr(OH) 0.06molにした他は実施例12と同じ組成及び方法にて反応を行った。
【0104】
実施例12、比較例10及び比較例11について、上記と同じ方法で反応速度の評価及び残留触媒量の測定を行った。結果を表7に示す。
【0105】
【表7】
【0106】
[調製例10]
触媒の調製
Ba(OH)・8HO 100質量部にシランカップリング剤(3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン:GTS)0.1質量部を加え、ヘンシェルミキサーによって良く攪拌混合した後、室温にて24時間風乾を行い、シランカップリング剤(GTS)で表面処理したBa(OH)・8HOを得た。
【0107】
[実施例13]
ジフェニルシランジオール(DPS)(259.57g、1.2mol)と3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GTS)(189.07g、0.8mol)を混合し、攪拌しながら80℃で10分加熱した。その後、調製例10で得た、シランカップリング剤(GTS)で表面処理したBa(OH)・8HOを、Ba(OH)・8HOの量として0.02mol加え、80℃でメタノールを除去しながら4時間反応を行った。
【0108】
[比較例12]
触媒をシランカップリング剤で表面処理していないBa(OH)・8HO 0.02molにした他は実施例13と同じ組成及び方法にて反応を行った。
【0109】
実施例13及び比較例12について、上記と同じ方法で反応速度の評価及び残留触媒量の測定を行った。結果を表8に示す。
【0110】
【表8】
【0111】
[調製例11]
触媒の調製
Ba(OH)100質量部にシランカップリング剤(3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン:GTS)0.1質量部を加え、ヘンシェルミキサーによって良く攪拌混合した後、室温にて24時間風乾を行い、シランカップリング剤(GTS)で表面処理したBa(OH)を得た。
【0112】
[実施例14]
ジフェニルシランジオール(DPS)(259.57g、1.2mol)と3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GTS)(189.07g、0.8mol)を混合し、攪拌しながら80℃で10分加熱した。その後、調製例11で得た、シランカップリング剤(GTS)で表面処理したBa(OH)を、Ba(OH)の量として0.02mol加え、80℃でメタノールを除去しながら4時間反応を行った。
【0113】
[比較例13]
触媒をシランカップリング剤で表面処理していないBa(OH) 0.02molにした他は実施例14と同じ組成及び方法にて反応を行った。
【0114】
[比較例14]
触媒をシランカップリング剤で表面処理していないBa(OH) 0.06molにした他は実施例14と同じ組成及び方法にて反応を行った。
【0115】
実施例14、比較例13及び比較例14について、上記と同じ方法で反応速度の評価及び残留触媒量の測定を行った。結果を表9に示す。
【0116】
【表9】
【0117】
[調製例12]
触媒の調製
Sr(OH)・8HO 100質量部にシランカップリング剤(3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン:GTS)0.1質量部を加え、ヘンシェルミキサーによって良く攪拌混合した後、室温にて24時間風乾を行い、シランカップリング剤(GTS)で表面処理したSr(OH)・8HOを得た。
【0118】
[実施例15]
ジフェニルシランジオール(DPS)(259.57g、1.2mol)と3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GTS)(189.07g、0.8mol)を混合し、攪拌しながら80℃で10分加熱した。その後、調製例12で得た、シランカップリング剤(GTS)で表面処理したSr(OH)・8HOを、Sr(OH)・8HOの量として0.02mol加え、80℃でメタノールを除去しながら4時間反応を行った。
【0119】
[比較例15]
触媒をシランカップリング剤で表面処理していないSr(OH)・8HO 0.02molにした他は実施例15と同じ組成及び方法にて反応を行った。
【0120】
実施例15及び比較例15について、上記と同じ方法で反応速度の評価及び残留触媒量の測定を行った。結果を表10に示す。
【0121】
【表10】
【0122】
[調製例13]
触媒の調製
Sr(OH)100質量部にシランカップリング剤(3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン:GTS)0.1質量部を加え、ヘンシェルミキサーによって良く攪拌混合した後、室温にて24時間風乾を行い、シランカップリング剤(GTS)で表面処理したSr(OH)を得た。
【0123】
[実施例16]
ジフェニルシランジオール(DPS)(259.57g、1.2mol)と3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GTS)(189.07g、0.8mol)を混合し、攪拌しながら80℃で10分加熱した。その後、調製例13で得た、シランカップリング剤(GTS)で表面処理したSr(OH)を、Sr(OH)の量として0.02mol加え、80℃でメタノールを除去しながら4時間反応を行った。
【0124】
[比較例16]
触媒をシランカップリング剤で表面処理していないSr(OH) 0.02molにした他は実施例16と同じ組成及び方法にて反応を行った。
【0125】
実施例16及び比較例16について、上記と同じ方法で反応速度の評価及び残留触媒量の測定を行った。結果を表11に示す。
【0126】
【表11】
【0127】
[実施例17]
1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1,3−ジオール(TDS)(199.60g、1.2mol)、トリメトキシビニルシラン(TVS)(118.59g、0.8mol)、およびキシレン(79.55g、20wt%となる量)を混合し、攪拌しながら40℃で10分加熱した。その後、調製例1で得た、シランカップリング剤(TVS)で表面処理したBa(OH)・8HOを、Ba(OH)・8HOの量として0.02mol加え、40℃で1時間反応を行った。
【0128】
[実施例18]
1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1,3−ジオール(TDS)(199.60g、1.2mol)とトリメトキシビニルシラン(TVS)(118.59g、0.8mol)およびキシレン(79.55g、20wt%)を混合し、攪拌しながら40℃で10分加熱した。その後、調製例4で得た、シランカップリング剤(TVS)で表面処理したBa(OH)を、Ba(OH)の量として0.02mol加え、40℃で1時間反応を行った。
【0129】
[実施例19]
1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン−1,3−ジオール(TDS)(199.60g、1.2mol)とトリメトキシビニルシラン(TVS)(118.59g、0.8mol)およびキシレン(79.55g、20wt%)を混合し、攪拌しながら40℃で10分加熱した。その後、調製例9で得た、シランカップリング剤(TVS)で表面処理したSr(OH)を、Sr(OH)の量として0.02mol加え、40℃で1時間反応を行った。
【0130】
[比較例17]
触媒をシランカップリング剤で表面処理していないBa(OH)・8HO 0.02molにした他は実施例17と同じ組成及び方法にて反応を行った。
【0131】
[比較例18]
触媒をシランカップリング剤で表面処理していないBa(OH) 0.02molにした他は実施例18と同じ組成及び方法にて反応を行った。
【0132】
[比較例19]
触媒をシランカップリング剤で表面処理していないBa(OH) 0.05molにした他は実施例18と同じ組成及び方法にて反応を行った。
【0133】
[比較例20]
触媒をシランカップリング剤で表面処理していないSr(OH) 0.02molにした他は実施例19と同じ組成及び方法にて反応を行った。
【0134】
上記実施例17〜19及び比較例17〜20について、以下の方法に従い、反応速度の評価及び残留触媒量の測定を行った。結果を表12〜14に示す。
【0135】
[反応速度の評価]
反応中、反応液の様子を観察し、反応液が白濁から透明になるまでの時間、即ち、固体粉末状であるTDSモノマーが全て反応するまでの時間を目視により記録した。その後さらに熟成し、反応20分後と反応1時間後に生成した縮合物(ポリマー)のサンプリングを行い、GPCにより重量平均分子量(Mw)を測定した。
【0136】
[残留触媒量の測定]
各反応終了後、脱溶媒を行い、続いて0.45μm孔径の濾紙を用いて濾過することで触媒を除去した。生成したポリオルガノシロキサンを同量のキシレンに溶解し、試料溶液を調製した後、試料溶液の10倍質量のイオン交換水を加えて浸盪することで、該試料溶液中に残留している触媒を水で抽出した。該抽出水を用い、原子吸光法によりポリオルガノシロキサン中の残留触媒量を測定した。
【0137】
【表12】
【0138】
【表13】
【0139】
【表14】
【0140】
表1〜14に示される通り、表面処理していない第2族元素の化合物を使用する従来公知の方法では、反応速度が遅い(比較例1、比較例3、比較例5〜8、比較例10、比較例12〜13、比較例15〜18、及び比較例20)。また、表面処理していない第2族元素の化合物を使用する方法において、反応速度を上げるために触媒量を増やすと、生成物中の残留触媒量が増加するため好ましくない(比較例2、比較例4、比較例9、比較例11、比較例14、及び比較例19)。これに対し、シランカップリング剤により表面処理した第2族元素の化合物を触媒とする本発明の製造方法は、生成物中の残留触媒量を増加することなく、反応速度を速くすることができる(実施例1〜19)。
【産業上の利用可能性】
【0141】
本発明の製造方法は、シラノール基及び/又はアルコキシシリル基を有する有機ケイ素化合物の1種以上を互いに縮合反応させる工程を含むポリオルガノシロキサンの製造方法において、縮合反応時間を短縮することができ、所望とするポリオルガノシロキサンを効率的に製造することができる。更に、本発明の方法で得られる生成物は残留不純物量が少ないため、特に、使用する材料に精密な制御を必要とする分野や残留不純物が許容されない分野、例えば光学材料や電子材料、医療材料などの分野において有利に使用される。