特許第5748384号(P5748384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5748384多孔質SiC基板を有する発光ダイオードおよび製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748384
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】多孔質SiC基板を有する発光ダイオードおよび製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/48 20100101AFI20150625BHJP
【FI】
   H01L33/00 400
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2006-533962(P2006-533962)
(86)(22)【出願日】2004年9月21日
(65)【公表番号】特表2007-507895(P2007-507895A)
(43)【公表日】2007年3月29日
(86)【国際出願番号】US2004031050
(87)【国際公開番号】WO2005034254
(87)【国際公開日】20050414
【審査請求日】2007年9月19日
【審判番号】不服2013-16358(P2013-16358/J1)
【審判請求日】2013年8月23日
(31)【優先権主張番号】10/676,953
(32)【優先日】2003年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592054856
【氏名又は名称】クリー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CREE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ティン リ
(72)【発明者】
【氏名】ジェームズ イベットソン
(72)【発明者】
【氏名】ブレンド ケラー
【合議体】
【審判長】 小松 徹三
【審判官】 鈴木 肇
【審判官】 吉野 公夫
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第02/061847(WO,A2)
【文献】 特開平06−104463(JP,A)
【文献】 特開2002−270515(JP,A)
【文献】 特開平11−026808(JP,A)
【文献】 特開平10−312990(JP,A)
【文献】 特開平06−275866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 33/00-33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
SiCからなる半導体基板の表面に形成される発光領域とは反対側の面に、多孔質層を形成する方法であって、
電解液を用意するステップと、
前記電解液を前記半導体基板の前記反対側の面と接触させるステップと、
前記電解液を加熱するステップと、
前記電解液と前記半導体基板との間に電圧を印加して前記電解液と前記半導体基板との間に0.1〜100mA/cmの電流を流し、前記半導体基板の表面であって、前記電解液と接触している前記反対側の面に多孔質層を形成するステップとを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記電圧の印加中に前記電解液に紫外(UV)照射を行うステップをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電圧は、2〜3ボルトであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記電圧は、500〜1,500秒間印加されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記電解液は、40〜90℃に加熱されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記多孔質層は、深さがほぼ3ミクロンであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記電圧は、定電流駆動密度を供給するように変化することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー省(NETL)契約第DE−FC26−00NT40985号の下に政府の支援で行われた。政府は、この発明に関してある権利を有する。
【0002】
本発明は、半導体をベースにした光発光体(light emitter)に関し、より詳細には、基板に形成された発光領域を備える発光ダイオードに関する。
【背景技術】
【0003】
発光ダイオード(LED)は、電気エネルギーを光に変換する重要な部類の固体デバイスであり、一般に、反対にドープされた2つの層の間にサンドイッチ状に挟まれた半導体材料の活性層を備える。このドープされた層の間にバイアスが加えられたとき、正孔と電子が活性層に注入され、そこで再結合して光を生成する。光は、活性層から、そしてLEDのすべての表面から全方向に発せられる。
【0004】
高い降伏電界、広いバンドギャップ(GaNでは室温で3.36eV)、大きな伝導帯オフセット、および高い飽和電子ドリフト速度を含む固有の材料特性の組合せのために、III族窒化物をベースにした材料系で形成されたLEDに対する最近の関心は大きい。ドープされた活性層は、一般に、シリコン(Si)、炭化ケイ素(SiC)、およびサファイア(Al)などの様々な材料で作ることができる基板に形成される。SiCウェーハが好ましいことが多い。というのは、SiCウェーハは、III族窒化物に非常に近い結晶格子整合を有し、より高品質のIII族窒化物膜をもたらすからである。また、SiCは、非常に高い熱伝導率を有し、その結果、SiC上のIII族窒化物デバイスの総出力パワー(power)はウェーハの熱抵抗で制限されなくなる(サファイアまたはSi上に形成された一部のデバイスの場合のように)。また、半絶縁性SiCウェーハを利用できることは、商用デバイスを可能にするデバイス分離および低減した寄生キャパシタンスについての能力を与える。SiC基板は、North Carolina、DurhamのCree Inc.から入手可能であり、それを製造する方法は、特許文献1、2および3だけでなく科学文献にも発表されている。
【0005】
【特許文献1】米国特許第RE34,861号
【特許文献2】米国特許第4,946,547号
【特許文献3】米国特許第5,200,022号
【非特許文献1】Windisch et al., “Impact of Texture-Enhanced Transmission on High-Efficiency Surface Textured Light Emitting Diodes,” Appl. Phys. Lett., Vol. 79, No. 15, Oct. 2001, p. 2316〜2317
【非特許文献2】Schnitzer et al., “30% External Quantum Efficiency From Surface Textured, Thin Film Light Emitting Diodes,” Appl. Phys. Lett., Vol. 64, No. 16, Oct. 1993, p. 2174〜2176
【非特許文献3】Windisch et al., “Light Extraction Mechanisms in High-Efficiency Surface Textured Light Emitting Diodes,” IEEE Journal on Selected Topics in Quantum Electronics, Vol. 8, No. 2, March/April 2002, p. 248〜255
【非特許文献4】Streubel et al., “High Brightness AlGaNInP Light Emitting Diodes, IEEE Journal on Selected Topics in Quantum Electronics,” Vol. 8, No. March/April 2002
【非特許文献5】Shor et al., “Direct Observation of Porous SiC Formed by Anodization in HF,” Appl. Phys. Lett., Vol. 62, No. 22, May 1993, p. 2636〜2638
【非特許文献6】Mimura et al., “Blue Electroluminescence From Porous Silicon Carbide,” Appl. Phys. Lett., Vol. 65, No. 26, Dec. 1994, p. 3350〜3352
【非特許文献7】Zangooie et al., “Surface, Pore Morphology, and Optical Properties of 4H-SiC,” Journal of Electrochemical Society, Vol. 148, No. 6, p. G297〜G302
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
LEDから光を効率的に取り出すことは、高効率LEDの製造において重大な課題である。ただ1つの外部結合表面を有する従来のLEDでは、外部量子効率は、LED発光領域からの基板を通過する光の内部全反射(TIR)によって制限される。TIRは、LEDの半導体と周囲環境との間の屈折率の大きな差によって引き起こされることがある。エポキシのような周囲材料の屈折率(ほぼ1.5)に比べてSiCの屈折率(ほぼ2.7)が高いために、SiC基板を有するLEDは光取出し効率が比較的低い。この差により、活性領域からの光線がSiC基板からエポキシ中に伝播し最終的にLEDパッケージから出て行く逃出し円錐(escape cone)が小さくなる。
【0007】
TIRを減少させ、全体的な光取出しを改善するために様々な方法が開発されており、より一般的なものの1つは表面テクスチャ化(surface texturing)である。表面テクスチャ化は、逃出し円錐を見出す多数の機会を光子に与える様々な表面を設けることによって、光の逃出し確率(escape probability)を増加させる。逃出し円錐を見出さなかった光は、引き続きTIRを受け、そして様々な角度のテクスチャ表面で反射し、遂には逃出し円錐を見出す。表面テクスチャ化の利点は、いくつかの論文で述べられている(非特許文献1、2、3、および4を参照)。
【0008】
SiCに有用な粗面を生成することは困難であることが分かっており、そしてこの困難はSiCの化学的に不活性な性質によっていると信じられている。したがって、SiC基板上の発光領域で形成されたLEDは、光取出しを高めるための有用な粗面をSiC基板に備えることができない。SiC基板の裏面は、有用な水準の粗さを実現しようとしてラッピングされたことがあるが、これらの試みは限られた成功しか収めず、十分に高い光取出しを有するLEDにはつながらなかった。
【0009】
UV照射を受けるHF中で材料を陽極酸化することによって、n型6H−SiCに多孔質SiCが生成されている(非特許文献5参照)。また、発光層として多孔質SiCを有する青色発光ダイオードが実証された(非特許文献6参照)。また、電子顕微鏡および分光偏光解析法を使用して、多孔質SiCの微細構造および光学特性が研究されている(非特許文献7参照)。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、SiCからなる半導体基板の表面に形成される発光領域とは反対側の面に、多孔質層を形成する方法を提供しようとする。多孔質層は、基板を通過するLED光の取出しを改善するように配置されている。
【0012】
本発明による、SiCからなる半導体基板の表面に形成される発光領域とは反対側の面に、多孔質層を形成する方法は、電解液を用意すること、およびその電解液を半導体基板の反対側の面と接触させることを含む。電解液は加熱され、電解液と半導体基板との間に電圧を印加されて電解液と半導体基板の間に0.1〜100mA/cmの電流が流れるようになり、半導体基板の表面であって、電解液と接触している反対側の面に多孔質層が形成される。
【0014】
本発明による発光ダイオード(LED)パッケージは、1つまたは複数の表面に多孔質層を有する基板、および多孔質層を有しない基板の表面に形成された発光領域を有するLEDを備える。本パッケージは、さらに金属層を備え、当該基板が前記LEDの主発光面になるようにLEDが金属層にフリップチップで取り付けられている。発光領域にバイアスを加えて発光領域が全方向に光を発するようにするために、少なくともの2つのコンタクトが含まれている。多孔質層は、基板を通過する発光領域光の光取出しを高める。
【0015】
本発明のこれらおよび他のさらなる特徴および利点は、添付の図面と共に参照されるとき、以下の詳細な説明から当業者には明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
多孔質層を形成するための装置および方法
図1は、半導体材料12の表面に多孔質層を形成するための本発明による装置10の一実施形態を示しており、装置10は、好ましくは炭化ケイ素(SiC)の表面に多孔質層を形成するために使用される。装置10は、様々な濃度の様々な溶液を含むことができるHFベースの電解液16を保持するカップ状液溜め/容器14を備える。電解液16の適切な溶液は、エタノール(COH)および水を含み、エタノールは10から50%の濃度範囲にある。もう1つの適切な溶液は、バッファHFベースの電解液を含み、バッファHFベースの電解液は、ある期間にわたって比較的一定のPh値を可能とし、かつ比較的揮発性が低く処理が比較的危険でない溶液を可能にする。好ましいバッファHFベースの電解液は、フッ化アンモニウム(NHF)および水を含み、NHFは、単位体積当たり20%などの様々な濃度を有する。
【0017】
半導体12は、液溜め14の底面17に近接して配置され、液溜め14の底は、HFベースの溶液が液溜め14から外に出ることができるようにする開口/穴18を有する。開口18のまわりで底面の外縁近くの、半導体12と液溜め底面17との間に水密シールが設けられている。このシールは、好ましくはOリング20で実現されるが、ガスケットまたはシリコーンのような封止剤などの他の封止部品を使用することができる。
【0018】
液溜め14がHFベースの電解液16で満たされるときに、電解液の一部は穴18を通り抜けて、容器14と半導体12の間のスペースを満たす。Oリング20は、電解液16を半導体12の上面に接触した状態で保ち、電解液16がOリング20を通り過ぎて漏れるのを防止する。
【0019】
また、装置10は、容器12の上から電解液16の中に浸された陰極22を備える。陰極22は、電荷を電解液16に導くとともに電解液16と反応または溶解しない、多くの異なる材料で作ることができる。陰極22の好ましい材料は、白金(Pt)である。
【0020】
第1の導体24は、負端子の電気信号が陰極22に伝わるように電源25の負端子と陰極22の間に結合されている。第2の導体26は、正端子の電気信号が半導体12中に伝わるように電源25の正端子と半導体12の間に結合されている。電源25は、正および負端子からバイアスを供給し、そのバイアスは陰極22および半導体材料12に伝えられる。それから、バイアスによって、電流が陰極22と半導体材料12の間を流れるようになる。液溜め開口18は、電流が陰極22と半導体12との間を流れ、その電流は電解液16と接触している半導体表面の大部分を通って半導体12中に流れ込むように十分に大きくなければならない。
【0021】
第2の導体26は、電流が半導体を通って流れ、陰極22と第2の導体26との間だけを流れないことを保証するために、電解液16と接触しない位置で半導体12に結合されるべきである。多くの異なる電源を装置10で使用することができ、好ましい電源は、予め設定された一定電流または一定電圧を供給することができるコンピュータ制御インタフェースを有する精密電流電圧ソースメータ(source meter)である。Keithley Instruments Inc.により供給されているKeithley2400ソースメータのような市販電源を使用することができる。
【0022】
電源25に多くの異なる電流限界を設定することができるが、電流限界が余りにも高く設定されると、多孔質層形成プロセスを制御し難いことがあり、また、電流限界が余りにも低く設定されるとプロセスに時間がかかる。電流限界の適切な範囲は、0.1〜100ミリアンペア/cmである。また、電源は多くの異なる電圧に設定することができ、適切な電圧は2〜3ボルトである。細孔形成プロセスのより適切な制御を可能にするために、電圧上限は5ボルトに設定することができる。電源25は、好ましくは、0.1から100mA/cmの範囲などの、定電流駆動密度を供給し、電圧が設定された電圧上限より低くとどまっている状態で、電圧がその電流を満たすように変化することを許容する。
【0023】
多孔質層の形成中に電解液16を加熱することによって、LEDの基板として使用されたとき、電解液加熱なしで形成された多孔質層を備えた基板を有するLEDに比べて、優れた光取出し特性を有する半導体表面が得られる。電解液を加熱するために、市販の浸漬加熱器(immersion heater)28または市販のホットプレートのような多くの異なる加熱機構を使用することができる。多孔質層形成プロセス中に電解液を様々な温度に加熱することができ、適切な温度範囲は40から90℃である。
【0024】
本発明による、半導体の表面に多孔質層を形成する装置の別の実施形態では、電解液16を細孔形成プロセス中にUV光を照射することがあり、適切なUV光源(ランプ)が広帯域UV照射を行う。ランプは、電解液の上に下向きに配置され、照射を行う。あるいはステアリングミラー(steering miror)を電解液16の上に配置し、ランプ光を電解液に向かって下方に変えることができる。
【0025】
図2は、本発明による、半導体材料の表面に多孔質層を形成するための方法30の一実施形態の流れ図を示している。方法30は、形成プロセスで装置10を使用することができるが、他の細孔形成装置を使用することができる。ステップ32で、HFベースの電解液またはバッファHFベースの電解液とすることができる、電解液16として上で説明したHFベースの電解液が用意される。ステップ34で、電解液が加熱され、加熱のための適切な方法は浸漬加熱器またはホットプレートである。ステップ36で、電解液が通り抜けて半導体に接触するための穴を有する液溜めに電解液を供給することなどによって、電解液を半導体材料と接触させる。電解液の全ては液溜めから出さないようにしながら、電解液を半導体と接触した状態に維持するために、封止剤または他の保持手段が設けられる。上で説明したように、半導体は液溜め穴に近接して配置することができ、穴のまわりの液溜めと半導体の間にOリングを備えることができる。
【0026】
ステップ38で、電解液と半導体との間にバイアスが加えられ、これによって、電解液と半導体との間を電流が流れるようになる。電流は、電解液と接触している半導体の表面に多孔質層を形成し、バイアスは、細孔が半導体中の所望の深さに達するまで加えられる。多孔質になる半導体材料の体積は、電解液を通して加えられた時間積分(time integrated)電流に比例する。すなわち、細孔を有する半導体材料の全体積は、電解液を通して材料に加えられた全電荷に比例する。電解液を流れる0.1から100mA/cmの電流密度を使用すると、バイアスを加える一般的な時間は500〜1,500秒の範囲にあるが、バイアスは、もっと多い時間またはもっと少ない時間にわたって加えられることができる。これによって、一般に、深さがほぼ3ミクロンである多孔質層が形成される。
【0027】
ステップ40で、形成時間の終りに電解液および半導体からバイアスが取り除かれ、ステップ42で、半導体は電解液との接触から外される。方法40が完了した後で、半導体を使用し、LEDの一部としてさらに処理することができる。半導体は、基板としての役割を果たすことができ、LED発光領域は多孔質層と反対側の半導体の表面に形成される。本発明による方法の一実施形態では、多孔質層は、あとでLEDの基板として使用することができるSiCに形成される。
【0028】
本方法30は、また、多孔質層の形成中にUV照射電解液を可能にする随意のステップ44を含むことができる。
【0029】
発光ダイオード
図3は、本発明によるLEDパッケージ50の一実施形態を示し、このパッケージ50は、基板54を通過するLED光の光取出しを改善する多孔質層55を有する基板54を備えたLED52を含む。基板54は、様々な材料で作ることができ、また多くの異なる厚さであることができ、適切な材料は125〜500ミクロンの厚さ範囲のSiCである。LED52は、金属有機化学気相成長法(MOCVD)のような既知のプロセスを使用して基板54に形成された標準的な発光領域56を備える。従来LEDの動作の詳細は知られており、簡単に述べるだけにする。LEDの発光領域56は、反対にドープされた2つの層の間にサンドイッチ状に挟まれた活性層を備えることができ、これらの層は標準的な厚さを有する。活性層は、反対にドープされたこれらの層の間にバイアスが加えられたとき、全方向に光を発する。発光領域の層は、III族窒化物ベースの材料系のような多くの異なる半導体材料系で作ることができる。LED52は、フリップチップの向きでパッケージ50に配置され、基板54がLEDの主発光面である。
【0030】
LED52は、第1および第2の金属層58a、58bにフリップチップで取り付けられている。第1のコンタクト60は、第1の金属層58aと発光領域56内の反対にドープされた2つの層の一方との間に結合され、第2のコンタクト62は、第2の金属層58bと発光領域の他方のドープされた層との間に結合されている。バイアスは、第1および第2の金属層58a、58bを通してコンタクト60、62に加えることができ、そしてそのバイアスは、コンタクト60、62を通して発光領域内の反対にドープされた2つの層に伝えられ、活性層が光を発するようにする。
【0031】
電荷を伝えるのに十分に導電性である基板を有する他のLED実施形態では、基板コンタクト64を、反対にドープされた層のうちの一方にバイアスを加えるために使用することができる。他方のドープされた層は、金属層58a、58bとLEDの間に配置されたコンタクト60、62のうちの一方に接触される。コンタクト64および金属層58a、58bのうちの一方を通してLEDにバイアスが加えられ、そしてこのバイアスは、金属層58a、58bのうちの他方から、金属層58からコンタクト64に延びている導電線(図示されない)を通して、基板コンタクト64に伝えることができる。
【0032】
また、発光領域から金属層58a、58bに向けて発せられた光が反射され、LEDパッケージ50の総発光に寄与するように、金属層58a、58bの上面は、反射性とすることができる。LED52およびそれのコンタクトは、透明な保護材料66の中に入れることができ、この透明保護材料66は、一般に、LED52および金属層58a、58bの上面を覆う透明エポキシである。
【0033】
あるいは、LED52は「金属カップ」の水平ベース(horizontal base)に取り付けることができ、この水平ベースは、一般に、発光領域の反対にドープされた層のコンタクト間にバイアスを加えるための導電経路(図示されない)を有している。金属カップの上面は、発光領域からの光がLEDパッケージの発光に寄与するように、その光を反射するために反射性とすることができる。
【0034】
基板54は、LED52のフリップチップ配置においてLED52の最上位で主発光面である多孔質層55を備える。多孔質層55は、LED52の発光を強めるように配置されている。従来LEDの効率は、活性層で生成された光のすべてを発することができないことで制限されている。フリップチップ配置されたLEDが発光しているとき、光は多くの異なる角度で主発光基板表面に達する。一般的な基板半導体材料は、周囲の空気または封入エポキシに比べて高い屈折率を有している。高屈折率を有する領域から低屈折率の領域に伝わる、(表面垂線方向に対して)特定の臨界角以内の光は、低屈折率領域を横切ることができる。臨界角を超えて表面に達した光は横切ることができず、内部全反射(TIR)を受ける。LEDの場合、TIR光は、吸収されるまでLED内で反射され続けることがある。この現象のために従来LEDで生成された光の大部分は放出されず、LEDの効率を低下させる。
【0035】
多孔質層55は、そうでなければ内部全反射(TIR)でLED52の中に捕獲される光が、基板から逃げ出して発光に寄与することができるようにする様々な表面を設けることによって、LED52の光取出しを改善する。多孔質層内の変化は、TIR光が臨界角以内で基板表面に達して放出される機会を増加させる。多孔質層を通って基板を逃げ出さない光に対しては、多孔質層内の変化のために様々な角度で光が反射され、次の通過で光が逃げ出す機会が増加する。
【0036】
光取出しを高める多孔質層の能力は、その深さが増すにつれて最初は増加する。しかし、深さの増加が光取出しを改善せず、実際にはこれを減少させることがある点に達する。SiCで作られた、図2について上で説明した方法30を使用して形成された多孔質層を有する基板54の場合には、適切な多孔質層深さはほぼ3ミクロンである。異なる電解液を使用する異なる多孔質層形成プロセスにとっては、適切な多孔質層深さが異なりうる。
【0037】
図4は、標準的なLEDパッケージの性能と本発明による多孔質層を有するLEDパッケージの性能とを比較する表80である。表80は、LEDに加えられた電流82に対するLEDの光出力線束84をプロットしている。第1のプロット86は、標準的なLEDのものであり、電流82が増すにつれて光出力線束84が増すことを示している。第2のプロット88は本発明による多孔質層を有するLEDのものであり、これも、電流82が増すにつれて出力線束84が増すことを示している。しかし、標準的なLEDと同じ電流での多孔質層LEDの出力線束は、一般により大きく、特に、LEDに加えられる電流がほぼ50mAを超えて増加するときにより大きい。
【0038】
多くの異なる型のLEDで、本発明による多孔質層を使用して光取出しを増加させることができる。図5は、本発明によるLEDパッケージ100のもう1つの実施形態を示し、このパッケージ100は、半導体発光領域106がその表面の1つに形成された基板104を備えるLED102を含んでいる。発光領域106は、図3の発光領域56と同様である。LED102は、発光領域106内の反対にドープされた層に接触するコンタクト110、112を有する第1および第2の金属層108a、108bに取り付けられている。金属層108a、108bに加えられたバイアスは、コンタクト110、112を通して反対にドープされた層に加えることができる。LED102は、基板の底面がLED102の主発光面であるようにフリップチップで取り付けられている。また、LED102は、保護用透明エポキシ114中に入れることができる。
【0039】
LED102の発光面(基板104の表面)は平らでなく、代わりに鋸歯状(sawtooth)パターン105を有している。鋸歯状パターン105は、エッチングのような既知のプロセスを使用して基板104に形成され、多孔質層116がその鋸歯状パターン105内に形成される。多孔質層は、上で説明し、図1および2で示した装置10および方法30を使用して形成することができる。鋸歯状パターン105は、TIR光がLEDから逃げ出すことができるようにする様々な表面を設けることによって、光取出しを高める。多孔質層116は、鋸歯状パターン105と組み合わさって、多孔質層を有する平らな基板表面に比べてより高い程度の光取出しさえも実現することができる。
【0040】
図6は、基板134および発光領域136を備えるフリップチップ取り付けされたLED132を同じく有する、本発明によるLEDパッケージ130のもう1つの実施形態を示している。LED132は、発光領域136にバイアスを加えるためのコンタクト140、142で金属層138a、138bに取り付けられている。また、LED132は、保護用透明エポキシ139中に入れられている。基板134の発光面は、溝(trench)パターン135を有し、各溝は垂直側壁144および水平底面146を有する。基板134に溝パターン135を形成した後で、溝パターンの上に多孔質層148が形成される。溝パターン135と多孔質層148の組合せは、LED132からの光取出し向上を実現する。
【0041】
図7は、基板164および発光領域166を備えるフリップチップ取り付けされたLED162を同じく有する、本発明によるLEDパッケージ160のさらにもう1つの実施形態を示している。LED162は、発光領域166にバイアスを加えるための2つのコンタクト170、172で金属層168a、168bに取り付けられている。また、LED162は、保護用透明エポキシ169中に入れられている。基板164の発光面は、図6の溝パターン135に似た柱(post)パターン165を有している。各柱は垂直側壁174を有するが、柱間の底面176はV字状である。基板164に柱パターン165を形成した後に多孔質層178が形成され、柱パターン165と多孔質層178の組合せが、LED162からの光取出し向上を実現する。
【0042】
本発明は、本発明の特定の好ましい構成を参照して相当に詳細に説明したが、他の型が可能である。上で説明したLEDパッケージの実施形態のそれぞれは、金属層の代わりに金属カップのように、異なった部品を有することができる。本発明によるLEDパッケージの異なる実施形態は、LEDの異なる位置に多孔質層を有することができる。また、基板は、上で説明したもの以外の多くの異なるパターンを有することができる。したがって、本発明の精神および範囲は、上で説明した本発明の好ましい型に限定されるべきでない。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】半導体の表面に多孔質層を形成するための、本発明による装置の実施形態を示す断面図である。
図2】半導体の表面に多孔質層を形成するための、本発明による方法の実施形態を示す流れ図である。
図3】多孔質層を備えた基板を有する、本発明に従ったLEDの一実施形態を示す断面図である。
図4】従来LEDと比較した、本発明によるLEDの改善された光取出しを示す表である。
図5】鋸歯状パターンを備えた基板を有する、本発明によるLEDのもう1つの実施形態を示す断面図である。
図6】溝パターンを備えた基板を有する、本発明によるLEDのもう1つの実施形態を示す断面図である。
図7】柱パターンを備えた基板を有する、本発明によるLEDのさらにもう1つの実施形態を示す断面図である。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7