(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748699
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】材料層を堆積するための装置および方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/205 20060101AFI20150625BHJP
C23C 16/458 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
H01L21/205
C23C16/458
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-89225(P2012-89225)
(22)【出願日】2012年4月10日
(65)【公開番号】特開2012-227527(P2012-227527A)
(43)【公開日】2012年11月15日
【審査請求日】2012年6月14日
(31)【優先権主張番号】10 2011 007 632.8
(32)【優先日】2011年4月18日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】599119503
【氏名又は名称】ジルトロニック アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Siltronic AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲオルク・ブレニンガー
(72)【発明者】
【氏名】アロイス・アイグナー
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン・ハーガー
【審査官】
山本 雄一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−066432(JP,A)
【文献】
特開2002−141294(JP,A)
【文献】
特開2003−218039(JP,A)
【文献】
特開2008−235830(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
H01L 21/31
C23C 16/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスガスから発生する材料層を基板ウェハ上に堆積するための装置であって、
上方ドームと下方ドームと側壁とによって画定されるリアクタチャンバと、
材料層の堆積の際に基板ウェハを保持するためのサセプタと、
サセプタを取囲む予熱リングと、
ライナーとを備え、その上に、予熱リングが、均一幅の隙間が予熱リングとサセプタとの間に存在するように中央位置に支持され、さらに
ライナーと予熱リングとの間に作用するスペーサを備え、前記スペーサは、予熱リングを中央位置に保ち、かつ予熱リングとライナーとの間に距離Δを発生し、
摺動ボールはスペーサを形成し、摺動ボールは予熱リングの端縁領域にわたって分散し、予熱リングおよびライナー中に部分的に埋込まれる、装置。
【請求項2】
隙間は0.1mm以上2mm以下の均一な幅を有する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
予熱リングの外側横方向境界と、前記予熱リングの外側横方向境界とは反対にあるライナーの内側横方向境界との間の距離は0.1mm以上1.9mm以下である、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
スペーサに隣接する領域における予熱リングとライナーとの間の距離Δは0.01mm以上2mm以下である、請求項1から3のいずれかに記載の装置。
【請求項5】
プロセスガスから発生する材料層を基板ウェハ上に堆積するための方法であって、
請求項1から4のいずれかに記載の装置においてサセプタによって保持される基板ウェハに、予熱リング上にわたってプロセスガスを向けるステップを備える、方法。
【請求項6】
基板ウェハは、堆積の間、予熱リングとサセプタとの間に隙間が存在する中央位置に保持され、前記隙間は0.1mm以上2mm以下の均一な幅を有する、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
発明は、プロセスガスから発生する材料層を基板ウェハ上に堆積するための装置と、当該装置を用いる方法とに関する。
【0002】
発明は、たとえば、ケイ素などの半導体材料から構成される基板ウェハ上にエピタキシャル層を堆積するための装置などの、化学気相成長(CVD)によって材料層を堆積するための装置に特に関する。
【背景技術】
【0003】
プロセスガスから発生する材料層を基板ウェハ上に堆積するための装置の基本的構成は公知であり、たとえば特許文献1の記載から明らかである。したがって、そのような装置は、上方ドーム、下方ドーム、および側壁によって画定されるリアクタチャンバを備える。放射熱システムはリアクタチャンバの上方および下方に配置され、材料膜の堆積の際に十分な熱を生成して、これにより基板ウェハ上に向けられたプロセスガスが活性化され、プロセスガスの構成成分から生じる材料層が基板ウェハの表面上に形成する。基板ウェハは予熱リングによって取囲まれるサセプタによって保持される。予熱リングは、リアクタチャンバの側壁の一部であるライナーの上にある。これは、基板ウェハに向けられるプロセスガスの加熱を支える機能を有する。側壁には、プロセスガスを供給しかつそこから生じる排ガスを排出するための供給および出口開口が一体化される。
【0004】
特許文献2は、ケイ素から構成される半導体ウェハ上にエピタキシャル膜を堆積するために用いられる装置を論じる。当該装置は上述の基本的構成を有し、さらに、リアクタチャンバの側壁に一体化されるさらなる供給および出口開口を有する。さらなる供給および出口開口は、サセプタの下に存在するリアクタチャンバのその容積中にパージガスを供給し、かつ当該容積からパージガスを排出する役割を果たす。特許文献2の記載に従うと、気体化合物は、成長するエピタキシャル層まで、プリヒートリングとサセプタとの間の隙間を通ることができ、半導体ウェハの端縁領域のエピタキシャル層の抵抗率を変えることができる。この「オートドープ」効果を防止するため、特許文献2は隙間を覆うことを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第WO2007/050309号A1パンフレット
【特許文献2】特開2006−049503号A2公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の発明者らは、特許文献1に記載のまたは特許文献2に記載のような装置のように原則的に構成される装置を用いる場合の問題を考慮する必要があることを見出した。
【0007】
これは、基板ウェハの直径にわたって考慮すると、ケイ素から構成される、エピタキシャルに堆積された層の抵抗率の径方向プロファイルが著しく非対称になる可能性があるからである。理想的には、プロファイルは対称であるかまたは少なくともほぼ対称である。
【0008】
さらに、堆積された材料層を粒子が比較的高程度まで汚染することを予期すべきである。
【0009】
したがって、目的は、記載の問題を回避する解決策を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
目的は、プロセスガスから発生する材料層を基板ウェハ上に堆積するための装置であって、
上方ドームと下方ドームと側壁によって画定されるリアクタチャンバと、
材料層の堆積の際に基板ウェハを保持するためのサセプタと、
サセプタを取囲む予熱リングと、
ライナーとを備え、その上に、予熱リングが、均一幅の隙間が予熱リングとサセプタとの間に存在するように中央位置で支持され、さらに
ライナーと予熱リングとの間に作用するスペーサを備え、当該スペーサは、予熱リングを中央位置に保ち、かつ予熱リングとライナーとの間に距離Δを発生する、装置によって達成される。
【0011】
サセプタおよび基板ウェハは、基板ウェハ上への材料層の堆積の際にそれらの中心の周りに回転される。この回転運動を受けない予熱リングは、この間、中央位置に留まるべきである。発明者らは、記載の問題が、予熱リングが、堆積プロセスの開始時に取る中央位置を、当該プロセスの間に無制御の態様で離れることによって解決されることを見出した。この理由は、予熱リングとライナーとの材料の異なる熱膨張特性に帰することができる、熱膨張による予熱リングとライナーとの間の径方向の相対的な移動である。
【0012】
ライナー上の予熱リングの変位は、第1に、予熱リングが中央位置に留まる場合にそうであるような、予熱リングとサセプタとの間の隙間の幅が均一なままでなくなるという効果を有する。隙間の幅は堆積プロセスの間にサセプタの周縁に沿って変動し始める。「オートドープ」効果は、隙間が広がると強まる。なぜなら、これらの場所では、より多くのガスが、成長する材料層まで隙間を通ることができるからである。
【0013】
ライナー上の予熱リングの変位は、第2に、摩擦によって粒子が生じて、堆積された材料層まで通り、これを汚染するという効果を有する。予熱リングの変位は、予熱リングとサセプタとが互いに触れて、これが粒子形成の強さを増すという効果すら有し得る。この理由のため、予熱リングとサセプタとの間の隙間が少なくとも2mmの幅を確実に有するように留意する。しかしながら、そのような隙間の幅は、記載の「オートドープ」効果を促進する。
【0014】
記載の問題を回避するため、請求される装置は、ライナーと予熱リングとの間に作用するスペーサを有し、当該スペーサはその熱膨張とは独立してかつライナーの熱膨張とは独立して予熱リングを中央位置に保つとともに、予熱リングとライナーとの間の距離Δを発生する。このように、予熱リングとライナーとの間の直接接触は完全にまたはほぼ完全に防止される。接触がないために、材料膜の堆積の間の熱膨張による予熱リングとライナーとの間の径方向の相対的な移動はもはや粒子の形成に寄与しなくなる。
【0015】
装置のサセプタおよび予熱リングは好ましくは、特許文献1にそれらに好適と記載される材料、特に好ましくは炭化ケイ素からなる。予熱リングは好ましくは、特許文献1にそれに好適と記載される形態を有する。
【0016】
装置の上方および下方ドームならびにライナーも、IR放射を透過する材料、好ましくは石英からなる。
【0017】
発明の1つの実施形態に従うと、スペーサは、予熱リングおよびライナーを好適に形作ることによって形成される。そのように形作ることは、たとえば、ライナーの溝に位置するようになる楔形状の突起を有する予熱リングに存在することができ、突起の開口角度は溝の開口角度よりも大きい。
【0018】
発明の1つの好ましい実施形態に従うと、スペーサは、中央位置におよびライナー上方に特定の距離をあけて予熱リングを固定する摺動ボールによって形成される。この実施形態の実施例に基づき、図を参照して、以下により詳細に発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】発明に従う特徴を具備するリアクタチャンバを示す図である。
【
図2】サセプタ、予熱リング、およびライナーの平面図である。
【
図4】実施例および比較例に基づいた、シリコンウェハ上にエピタキシャルに堆積されるケイ素の層の抵抗率の径方向プロファイルを示す図である。
【
図5】エピタキシャルに堆積されたケイ素の層を有するシリコンウェハに対して行なわれた粒子測定の結果を示す図である。
【
図6】エピタキシャルに堆積されたケイ素の層を有するシリコンウェハに対して行なわれた粒子測定の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、プロセスガスから発生する材料層を基板ウェハ上に堆積するための装置の典型的な構成を有し、かつ発明に従う特徴を備えるリアクタチャンバを示す。図示される構成は、上方ドーム1、下方ドーム2、および側壁3を含む。基板ウェハ4は、予熱リング6によって取囲まれるサセプタ5によって保持される。予熱リング6は、リアクタチャンバの側壁3の一部であるライナー7上にある。予熱リングの端縁領域にわたって分散される摺動ボール8は予熱リング6とライナー7との間のスペーサとして機能する。摺動ボールは好ましくは炭化ケイ素からなり、その数は好ましくは3個から8個、特に好ましくは4個である。
【0021】
図2は、サセプタ5、予熱リング6、およびライナー7の平面図と、さらに予熱リング6の周上に分散された4個の摺動ボール8の位置とを示す。
【0022】
図3から明らかなように、摺動ボール8は、予熱リング6とライナー7とに部分的に埋込まれる。各々の場合、摺動ボール8は径方向に延在する細長い穴9の中に存在し、その結果、予熱リング6はそれ自身の熱膨張とは独立してかつライナー7の熱膨張とは独立して、中央位置に保たれるとともに、下方に配置されるライナー7とは接触しない。
【0023】
摺動ボール8に隣接する領域における予熱リング6とライナー7との間の距離Δは好ましくは0.01mm以上2mm以下である。距離がより小さい場合、摩擦によって生じる粒子の可能性が増大する。距離がより大きくなれば、サセプタより下の容積からのガスが「オートドープ」を引き起こすおよび/またはリアクタ壁上に付着する可能性が増大する。
【0024】
「オートドープ」効果を妨げるため、予熱リング6とサセプタ5との間の隙間Dは、好ましくは0.1mm以上2mm以下、特に好ましくは1mm以下の均一な幅を有する。隙間Dが0.1mmよりも小さい場合、熱膨張により予熱リング6がサセプタ5に触れる可能性がある。隙間Dが2mmよりも大きければ、顕著な「オートドープ」効果を予期すべきである。
【0025】
予熱リング6の外側横方向境界と、−当該境界とは反対にある−ライナー7の内側横方向境界との間の距離dは好ましくは0.1mm以上1.9mm以下である。隙間がより小さいと、熱膨張によりライナー7と予熱リング6とが互いに触れる可能性が増大する。
【実施例】
【0026】
実施例および比較例:
発明の有利な効果は、堆積された層の抵抗率の径方向プロファイルまたは堆積された層上に検出される粒子の数などの性質を、ケイ素から構成されるエピタキシャルに堆積された層を設けた、ケイ素から構成される半導体ウェハの場合において比較すれば明らかである。
【0027】
図4は、実施例および比較例に基づいた、シリコンウェハ上にエピタキシャルに堆積されたケイ素の層の抵抗率の径方向プロファイルを示す。各々の場合、図示は、5個の測定点の径方向位置Pと、シリコンウェハの直径に沿った関連の抵抗率Rとを示す。丸で描かれた測定点は、発明に従うスペーサを有しない装置において被覆された、比較例に従うシリコンウェハを表わす。抵抗率の径方向プロファイルは明確な非対称を呈し、シリコンウェハの中心領域と比較してシリコンウェハの端縁領域で大きく低下している。これに対し、菱形で描かれる測定点が示すように、実施例に従う半導体ウェハのエピタキシャルに堆積された層の抵抗率の径方向プロファイルはほぼ対称であり、ほぼ均一であった。実施例に従うシリコンウェハは、発明に従うスペーサを備える装置において、比較例に従うシリコンウェハと同じプロセス条件下で被覆された。
【0028】
図5および
図6は、ケイ素から構成されるエピタキシャルに堆積された層を有するシリコンウェハに対して行なわれた粒子測定の結果を示す。図示は、比較例および実施例に従って被覆された25枚のシリコンウェハに対する、各々の場合の、散乱光測定によって検出された粒子の位置を組合わせて示すマップを示す。実施例に従うシリコンウェハ(
図6)が粒子で汚染された程度はかなり低く、比較例に従うシリコンウェハ(
図5)のように、予熱リングに隣接する端縁領域における粒子の蓄積を呈さなかった。
【符号の説明】
【0029】
1 上方ドーム、2 下方ドーム、3 側壁、4 基板ウェハ、5 サセプタ、6 予熱リング、7 ライナー、8 摺動ボール、9 細長い穴。