特許第5748717号(P5748717)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748717
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】両面研磨方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/28 20120101AFI20150625BHJP
   B24B 37/08 20120101ALI20150625BHJP
【FI】
   B24B37/04 U
   B24B37/04 F
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-196642(P2012-196642)
(22)【出願日】2012年9月6日
(65)【公開番号】特開2014-50913(P2014-50913A)
(43)【公開日】2014年3月20日
【審査請求日】2014年8月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390004581
【氏名又は名称】三益半導体工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591037498
【氏名又は名称】長野電子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 正直
(72)【発明者】
【氏名】青木 一晃
(72)【発明者】
【氏名】安田 太一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 勇章
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 雄大
(72)【発明者】
【氏名】浅井 一将
(72)【発明者】
【氏名】古川 大輔
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−025322(JP,A)
【文献】 特開2010−050193(JP,A)
【文献】 特開2011−240460(JP,A)
【文献】 米国特許第6454635(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00 − 37/34
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハを保持するための保持孔と、該保持孔の内周に沿って配置され、前記保持されるウェーハの周縁部に接する内周面を有するリング状の樹脂インサートとを有するキャリアに前記ウェーハを保持し、前記キャリアを研磨布が貼付された上下の定盤で挟み込み、前記ウェーハの両面を同時に研磨する両面研磨方法であって、
前記樹脂インサートの内周面における凹凸の最大高低差を前記内周面の平面度と定義し、前記内周面における上端部と下端部を結んだ直線とキャリア主面に垂直な直線とが成す角度を前記内周面の垂直度と定義したとき、前記平面度を100μm以下に、前記垂直度を5°以下に維持しながら前記ウェーハの両面を研磨することを特徴とする両面研磨方法。
【請求項2】
前記ウェーハの両面を研磨した後、前記樹脂インサートの内周面を研削加工又は切削加工することによって、前記平面度及び前記垂直度を維持することを特徴とする請求項1に記載の両面研磨方法。
【請求項3】
前記平面度を25μm以下に、前記垂直度を2°以下に維持しながら前記ウェーハの両面を研磨することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の両面研磨方法。
【請求項4】
複数の前記キャリアを前記上下の定盤で挟み込み、1度に複数のウェーハの両面を研磨することを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の両面研磨方法。
【請求項5】
前記複数のキャリアのそれぞれの前記樹脂インサート間の内径の差を0.5mm以内に維持しながら前記ウェーハの両面を研磨することを特徴とする請求項4に記載の両面研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両面研磨用のキャリアを用いてウェーハの両面を同時に研磨する両面研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ウェーハの両面をポリッシング等で同時に研磨する際、両面研磨装置用のキャリアによってウェーハを保持している。
図8は、従来から用いられている一般的な両面研磨装置によるウェーハの両面研磨を説明する概略図である。図8に示すように、両面研磨装置101のキャリア102はウェーハWを保持するための保持孔104を備えている。キャリア102はウェーハWより薄い厚みに形成されている。
【0003】
この保持孔104にウェーハWが挿入されて保持され、上定盤105と下定盤106の対向面に設けられた研磨布107でウェーハWの上下面が挟み込まれる。
キャリア102は、サンギヤ108とインターナルギヤ109とに噛合され、サンギヤ108の駆動回転によって自転公転される。そして、研磨面に研磨剤を供給しながら上定盤105と下定盤106とを互いに逆回転させることにより、上下定盤105、106に貼付された研磨布107でウェーハWの両面を同時に研磨する。
【0004】
このようなウェーハWの両面研磨工程で使用しているキャリア102は金属製のものが主流である。このため、ウェーハWの周縁部を金属製のキャリア102によるダメージから保護するために樹脂インサート103がキャリア102の保持孔104の内周部に沿って取り付けられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−25322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように樹脂インサートを有したキャリアを用いて両面研磨を繰り返し行っていくと、ウェーハの外周にダレが発生するなど平坦度が悪化し易くなるという問題がある。
そこで、本発明者等がこの原因について調査したところ、キャリアの使用時間の経過とともに樹脂インサートの内周面に形成された微少な凹凸が摩耗により次第に大きくなり、これが平坦度を悪化させる原因となっていることが判明した。
【0007】
本発明は前述のような問題に鑑みてなされたもので、キャリアの樹脂インサートの内周面の形状変化による、特に外周ダレのようなウェーハの平坦度の悪化を抑制できる両面研磨方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明によれば、ウェーハを保持するための保持孔と、該保持孔の内周に沿って配置され、前記保持されるウェーハの周縁部に接する内周面を有するリング状の樹脂インサートとを有するキャリアに前記ウェーハを保持し、前記キャリアを研磨布が貼付された上下の定盤で挟み込み、前記ウェーハの両面を同時に研磨する両面研磨方法であって、前記樹脂インサートの内周面における凹凸の最大高低差を前記内周面の平面度と定義し、前記内周面における上端部と下端部を結んだ直線とキャリア主面に垂直な直線とが成す角度を前記内周面の垂直度と定義したとき、前記平面度を100μm以下に、前記垂直度を5°以下に維持しながら前記ウェーハの両面を研磨することを特徴とする両面研磨方法が提供される。
【0009】
このような両面研磨方法であれば、キャリアの樹脂インサートの内周面の形状変化によるウェーハの平坦度の悪化を抑制できる。
【0010】
このとき、前記ウェーハの両面を研磨した後、前記樹脂インサートの内周面を研削加工又は切削加工することによって、前記平面度及び前記垂直度を維持することができる。
このようにすれば、平面度及び垂直度を上記範囲内に容易に維持できる。
【0011】
またこのとき、前記平面度を25μm以下に、前記垂直度を2°以下に維持しながら前記ウェーハの両面を研磨することが好ましい。
このようにすれば、キャリアの樹脂インサートの内周面の形状変化によるウェーハの平坦度の悪化を確実に抑制できる。
【0012】
またこのとき、複数の前記キャリアを前記上下の定盤で挟み込み、1度に複数のウェーハの両面を研磨することができる。
このようにすれば、1バッチ内で複数のウェーハを同時に研磨でき、工程時間を短縮できる。
【0013】
またこのとき、前記複数のキャリアのそれぞれの前記樹脂インサート間の内径の差を0.5mm以内に維持しながら前記ウェーハの両面を研磨することが好ましい。
このようにすれば、1バッチ内で複数のウェーハを同時に研磨する際、樹脂インサート間の内径の差が大きくなることによって各ウェーハの研磨速度に差が生じることを抑制でき、これによりウェーハの仕上がり厚さのバラツキ、ひいては平坦度の悪化を抑制できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、ウェーハの両面研磨においてキャリアの樹脂インサートの内周面における平面度を100μm以下に、垂直度を5°以下に維持しながらウェーハの両面を研磨するので、キャリアの樹脂インサートの内周面の形状変化によるウェーハの平坦度の悪化を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の両面研磨方法によるウェーハの研磨を説明する概略図である。
図2】本発明の両面研磨方法における樹脂インサートの内周面の平面度及び垂直度を説明する説明図である。
図3】実施例1、比較例におけるキャリア使用時間と平面度の関係を示す図である。
図4】実施例1、比較例におけるキャリア使用時間と垂直度の関係を示す図である。
図5】実施例1、比較例におけるESFQRmaxと平面度の関係を示す図である。
図6】実施例1、比較例におけるESFQRmaxと垂直度の関係を示す図である。
図7】実施例2における樹脂インサート間の内径の差と仕上がり厚さの関係を示す図である。
図8】従来の両面研磨装置によるウェーハの両面研磨を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明について実施の形態を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記したように、樹脂インサートを有するキャリアを用いたウェーハの両面研磨において、キャリアの使用時間の経過とともに樹脂インサートの内周面はウェーハの周縁部と接触することにより摩耗し、樹脂インサートの内周面に形成された凹凸が次第に大きくなり、ウェーハの外周にダレが発生するなど研磨されたウェーハの平坦度が悪化し易くなるという問題がある。
【0017】
そこで、本発明者等はこの問題を解決すべく鋭意検討を重ねた。その結果、発明者等は以下のことに想到し、本発明を完成させた。
まず、樹脂インサートの内周面の凹凸の状態を評価するために、内周面における凹凸の最大高低差を内周面の平面度と定義し、内周面における上端部と下端部を結んだ直線とキャリア主面に垂直な直線とが成す角度を内周面の垂直度と定義した。この平面度が100μm以下、垂直度が5°以下に維持された状態で両面研磨を行うことにより、研磨されたウェーハの平坦度の悪化を抑制できる。樹脂インサートの内周面の平面度及び垂直度を維持するためには内周面が平坦になるように加工すれば良い。
【0018】
更に、発明者等は、複数のキャリア(複数の樹脂インサート)を用いて1バッチ内で複数のウェーハの両面を同時に研磨する際に以下のような問題を生じることを知見した。上記の内周面の加工を繰り返し行っていくと、それぞれの樹脂インサート間の内径の差が大きくなる傾向がある。これにより研磨速度がキャリア毎に変化し、同一バッチ内で研磨されたウェーハ間の仕上がり厚さのバラツキが増加する。両面研磨ではウェーハの仕上がり厚さとキャリアの厚さの差であるギャップにウェーハの平坦度が左右されるため、仕上がり厚さのバラツキが増加することで、平坦度が悪化してしまう。
上記内径の差を所定の範囲内に維持することによって仕上がり厚さのバラツキ、ひいては平坦度の悪化を更に抑制できる。
【0019】
以下、本発明の両面研磨方法について図1を参照しながら詳細に説明する。
図1に示すように、両面研磨装置1のキャリア2はウェーハWを保持するための保持孔4を備えている。キャリア2はウェーハWより薄い厚みに形成されている。
キャリア2には、保持孔4の内周に沿ってリング状の樹脂インサート3が配置されている。樹脂インサート3の内周面はウェーハの周縁部に接し、キャリア2によるダメージからウェーハを保護する。
【0020】
この保持孔4内にウェーハWが挿入されて保持され、上定盤5と下定盤6の対向面に設けられた研磨布7でウェーハWの上下面が挟み込まれる。
キャリア2は、サンギヤ8とインターナルギヤ9とに噛合され、サンギヤ8の駆動回転によって自転公転される。
【0021】
本発明の両面研磨方法はこのような両面研磨装置を用いてウェーハの両面を同時に研磨する方法である。
まず、樹脂インサート3の内周面の平面度及び垂直度を測定する。この測定は、例えば2次元変位計を用いて行うことができる。そして、平面度が100μm以下、垂直度が5°以下となっているか検査する。
【0022】
ここで、平面度及び垂直度について図2(A)及び(B)を参照しながら説明する。
図2(A)に示すように、樹脂インサート3の内周面10には微少な凹凸が存在する。本発明における「内周面の平面度」とは、内周面10の最も凹んだ部分aと突き出した部分bの高低差、すなわち凹凸の最大高低差(t)のことを言う。
また、図2(B)に示すように、本発明における「内周面の垂直度」とは、内周面10における上端部と下端部を結んだ直線cとキャリア主面に垂直な直線dとが成す角度(θ)のことを言う。
【0023】
上記検査の結果が、平面度が100μmを超える、又は垂直度が5°を超える場合には、平面度が100μm以下、垂直度が5°以下となるように樹脂インサート3の内周面を加工する。この加工は、例えばNCフライス盤等の加工装置を用いた研削加工、又は、切削加工によって行うことができる。
【0024】
次に、内周面10の平面度が100μm以下、垂直度が5°以下に維持された樹脂インサート3を有するキャリア2の保持孔4にウェーハWを保持する。このウェーハWを保持したキャリア2を上定盤5と下定盤6の間に配置する。
その後、上定盤5及び下定盤6にそれぞれ貼付された研磨布7でウェーハWの上下研磨面を挟み込み、研磨面に研磨剤を供給しながら上定盤5と下定盤6とを互いに逆回転させることにより、研磨布7でウェーハWの両面を同時に研磨する。
【0025】
このとき、その他の研磨条件は従来の両面研磨方法と同様とすることができる。
ウェーハWの研磨後、次のウェーハWの研磨前に内周面の平面度及び垂直度を測定・検査し、常に平面度を100μm以下に、垂直度を5°以下に維持しながら研磨を行う。
このような本発明の両面研磨方法であれば、従来樹脂インサート3の内周面10の摩耗による形状変化によって発生している、ウェーハの外周ダレなどの平坦度の悪化を抑制できる。すなわち、ESFQRmaxの悪化が抑制されたウェーハを得ることができる。
【0026】
上記では、平面度及び垂直度の測定と内周面の加工をウェーハWの研磨前、或いはウェーハWの研磨後に毎回実施する態様について記載したが、本発明はこれに限定されない。
この平面度及び垂直度の測定と内周面の加工を実施するタイミングを定期的に行うようにすることもできる。例えば、キャリア(樹脂インサート)の使用時間と内周面の平面度及び垂直度の時変化の関係を予め調査しておくことで、内周面の加工が必要となるキャリアの使用時間を算出し、このキャリアの使用時間を上記タイミングとすることができる。
【0027】
維持する平面度及び垂直度は、上記したように、それぞれ100μm以下及び5°以下であれば良く、特に平面度を25μm以下に、垂直度を2°以下に維持することが好ましい。このようにすれば、研磨されたウェーハの平坦度の悪化を確実に抑制できる。
【0028】
また、両面研磨の1バッチにおいて、それぞれにウェーハWを保持した複数のキャリア2を上下定盤5、6で挟み込み、1度に複数のウェーハの両面を研磨することもできる。
このようにすれば、研磨工程時間を短縮でき、生産性を向上できる。
この際、複数のキャリアのそれぞれの樹脂インサート3間の内径の差を0.5mm以内に維持しながらウェーハWの両面を研磨することが好ましい。
ここで、「内径」とは、変位計を用いて樹脂インサートの内周面に沿って円周状に変位を測定することで得られた円形を最小二乗中心法でフィッティングし、得られる近似円の直径のことを言う。
【0029】
「内径の差」とは、両面研磨の1バッチで同時に使用される複数のキャリアの樹脂インサートにおける上記内径の最大と最小の差のことを言う。
このように樹脂インサート間の内径の差を管理することで、同一バッチ内で研磨されたウェーハの仕上がり厚さを均一化でき、ウェーハの平坦度のバラツキを低減できる。
【0030】
尚、本発明の両面研磨方法では、1つのキャリアに複数の保持孔及び樹脂インサートを有するタイプの両面研磨装置を用いることもできる。この場合にも上記と同様に、各保持孔に配置される樹脂インサート間の内径の差を0.5mm以内に維持しながら研磨するのが好ましい。
【実施例】
【0031】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
(実施例1、比較例)
直径300mmのシリコンウェーハを両面研磨した。この際、それぞれが1枚のウェーハを保持する5枚のキャリアを有した両面研磨装置(DSP−20B 不二越機械工業社製)を用い、1バッチに5枚のウェーハを同時に研磨した。研磨布は発泡ウレタン製のものを用い、研磨剤としてコロダイルシリカを含有したアルカリ性溶液のものを用いた。
【0033】
まず、全てのキャリアの樹脂インサート内周面の平面度を25μm以下、及び垂直度を2°以下になるように切削加工した。加工後、全てのキャリアの樹脂インサートの内周面の平面度及び垂直度、内径をキーエンス社製の2次元変位計を用いて形状測定することで検査した。その結果、全ての樹脂インサートの内周面の平面度は12.91μmから22.73μmの範囲内であり、垂直度は0.86°から1.9°の範囲内であった。また、樹脂インサートの内径の最小値は301.069mm、最大値は301.510mmであり、内径の差は0.441mmであった。
【0034】
これらキャリアを用いて、連続して両面研磨を31,000分間繰り返し、内周面の平面度及び垂直度、及び研磨されたウェーハのESFQRmaxを測定した。ESFQRmaxの測定にはWafer Sight(KLA−Tencor社製)を用いた。
【0035】
平面度の測定結果を図3に、垂直度の測定結果を図4に示す。
図3、4に示すように、キャリアの使用時間の経過とともに、平面度及び垂直度が共に悪化していることが分かった。また、キャリアの使用時間が10,000分以内において、平面度及び垂直度はそれぞれ100μm以下、5°以下に維持されていおり(実施例1)、キャリアの使用時間10,000分経過直前の樹脂インサートの内周面の平面度と垂直度の測定結果は、5枚のキャリアの平均で平面度が83.74μmから93.27μm、垂直度が4.6°から4.9°の範囲内であった。
【0036】
また、キャリアの使用時間が10,000分を超えると内周面の平面度が100μmを超え、かつ垂直度が5°を超えている(比較例)。
以上から、上記した研磨条件では、樹脂インサート内周面の平面度を100μm以下、垂直度を5°以下に維持するため、キャリアの使用時間10,000分を上限とし、定期的に樹脂インサートの内周面の加工を行えば良いことが分かった。
【0037】
ESFQRmaxの結果を図5図6に示す。図5図6に示すように、平面度が100μm以下、垂直度が5°以下に維持された状態で良好なESFQRmaxの結果が得られていることが分かった。研磨開始から11バッチまでの両面研磨後の全てのウェーハの平坦度を測定したところ、ESFQRmaxの平均値が0.050μm(N=55)となり、良好な値であった。また、キャリアの使用時間が10,000分に到達する間のESFQRmaxの平均値は0.048μm(N=2,000)であり、樹脂インサートを加工した直後のキャリアを用いて11バッチの両面研磨を実施した時のウェーハの平坦度とほぼ同じ良好な値が得られた。
【0038】
一方、キャリアの使用時間が10,000分を超えた後のESFQRmaxの平均値は0.090μm(N=20)であり、実施例1の結果の0.048μmと比べ大幅に悪化してしまった。
以上のことから、本発明の両面研磨方法では樹脂インサートの内周面における平面度を100μm以下に、垂直度を5°以下に維持しながらウェーハの両面を研磨するので、キャリアの樹脂インサートの内周面の形状変化によるウェーハの平坦度の悪化を抑制できることが確認できた。
【0039】
(実施例2)
実施例1と同様の条件でシリコンウェーハの両面研磨を行い、同一バッチ内における樹脂インサート間の内径の差とウェーハの仕上がり厚さのバラツキを測定した。両面研磨は厚さが791.2μmから791.3μmの範囲のウェーハを用いて行った。ウェーハの厚さ測定にはWafer Sight(KLA−Tencor社製)を用いた。
結果を図7に示す。図7に示すように内径差が0.5mm以下のとき、ウェーハの仕上がり厚さのバラツキの平均値は0.107μmと良好であった。また、内径差が0.5mm以下である4点の結果について、いずれの場合もウェーハの仕上がり厚さのバラツキに大きな違いは見られず、すなわち、内径差の違いによる仕上がり厚さのバラツキの悪化は無かった。
【0040】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0041】
1…両面研磨装置、 2…キャリア、 3…樹脂インサート、 4…保持孔、
5…上定盤、 6…下定盤、 7…研磨布、 8…サンギヤ、
9…インターナルギヤ、 10…内周面。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8