特許第5748835号(P5748835)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5748835
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 3/24 20060101AFI20150625BHJP
   H01Q 21/20 20060101ALI20150625BHJP
   H01Q 9/16 20060101ALI20150625BHJP
【FI】
   H01Q3/24
   H01Q21/20
   H01Q9/16
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-272606(P2013-272606)
(22)【出願日】2013年12月27日
(65)【公開番号】特開2015-128211(P2015-128211A)
(43)【公開日】2015年7月9日
【審査請求日】2013年12月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000217653
【氏名又は名称】電気興業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100114591
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 英文
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100154298
【弁理士】
【氏名又は名称】角田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100161001
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 篤司
(72)【発明者】
【氏名】相澤 雅也
(72)【発明者】
【氏名】江頭 三郎
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 幸晃
(72)【発明者】
【氏名】吉井 保貴
(72)【発明者】
【氏名】足立 剛史
【審査官】 富澤 哲生
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−77025(JP,A)
【文献】 特許第5199035(JP,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0079347(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 3/00 − 3/46
H01Q 21/00 − 25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
FPUアンテナが配置された回転台の回転角度を制御して、該FPUアンテナを通信対象のアンテナの方向に向けるように構成されたFPUに併設されるアンテナ装置であって、
前記回転台の回転軸線を中心とする円周に沿って複数のアンテナ素子を所定間隔で配列させたアレーアンテナと、
記回転台の回転角度に基づいて、該回転角度に対応した方向のビーム指向性が実現されるように前記アレーアンテナの各アンテナ素子に対する給電、非給電を制御する給電制御手段と、
を備えることを特徴とするアンテナ装置。
【請求項2】
前記給電制御手段は、
前記回転台の回転角度に基づいて前記アレーアンテナのアンテナ素子の中から隣接する少なくとも2個の給電対象アンテナ素子を選択する素子選択手段と、
前記各給電対象アンテナ素子についての給電位相を調整する位相調整手段と、
を備えることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
【請求項3】
前記素子選択手段は、前記給電対象アンテナ素子をピンダイオードスイッチによって選択するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載のアンテナ装置。
【請求項4】
無指向性アンテナと、この無指向性アンテナと前記アレーアンテナとを切替えるアンテナ切替え手段とを更に備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアンテナ装置。
【請求項5】
前記アンテナ素子がダイポールアンテナ素子または双ループアンテナ素子であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のアンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FPUアンテナの回転方向に主ビームの方向を変化させることが可能なアンテナ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
テレビ放送の局外中継では、ヘリコプタ等の移動体に搭載された無線中継伝送装置であるFPU(FieldPickupUnit)のアンテナから音声、映像等の素材が電波によって基地局に向けて伝送される。基地局では、鉄塔や屋上に配置されたFPUのアンテナによって移動体からの電波が受信される。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−134915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記移動体と基地局間では、無指向性アンテナを用いた無線通信回線による業務通信も行われるが、通信距離が長くなった場合に、この無線通信回線が安定に成立しなくなることがある。
そこで、本発明は、通信距離が長い場合であっても移動体と基地局間での無線通信回線を安定に維持することができるアンテナ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、FPUアンテナが配置された回転台の回転角度を制御して、該FPUアンテナを通信対象のアンテナの方向に向けるように構成されたFPUに併設されるアンテナ装置であって、前記回転台の回転軸線を中心とする円周に沿って複数のアンテナ素子を所定間隔で配列させたアレーアンテナと、前記回転台の回転角度に基づいて、該回転角度に対応した方向のビーム指向性が実現されるように前記アレーアンテナの各アンテナ素子に対する給電、非給電を制御する給電制御手段と、を備えることによって上記の目的を達成している。
【0006】
前記給電制御手段には、例えば、前記回転台の回転角度に基づいて前記アレーアンテナのアンテナ素子の中から隣接する少なくとも2個の給電対象アンテナ素子を選択する素子選択手段と、前記各給電対象アンテナ素子についての給電位相を調整する位相調整手段と、が備えられる。
【0007】
前記素子選択手段は、前記給電対象アンテナ素子をピンダイオードスイッチによって選択するように構成することができる。
本発明は、無指向性アンテナと、この無指向性アンテナと前記アレーアンテナとを切替えるアンテナ切替手段とを更に備えることができる。
なお、前記アンテナ素子としては、ダイポールアンテナ素子や双ループアンテナ素子等を適用することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、FPUアンテナの回転角度に対応した方向のビーム指向性が実現されるので、送信時には不要輻射を抑制することができ、また、受信時には安定した受信電界を確保することができる。しかも、FPUのアンテナ回転台の回転軸線を中心とする円周に沿って複数のアンテナ素子を配列させたアレーアンテナを用い、このアレーアンテナの指向性をFPUアンテナの回転角度に基づいて制御するようにしているので、コンパクトかつ簡易に構成することができる。したがって、中継放送時における移動体と基地局間の業務通信に用いて有効である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係るアンテナ装置の一実施形態を示すブロック図である。
図2】本発明に係るアンテナ装置におけるアレーアンテナの構成を示す側面図である。
図3図2のA−A線による断面図である。
図4】指向性制御部の構成例を示すブロック図である。
図5】アレーアンテナの指向性を例示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1に本発明に係るアンテナ装置の一実施形態を示す。本実施形態に係るアンテナ装置ANは、地上の基地局に無線中継伝送装置として配置されたFPU(FieldPickupUnit)に併設して、この基地局と中継用移動体(ヘリコプタや車両等)との間の業務通信に使用するものであり、アレーアンテナ1、無指向性アンテナ3、給電・位相切替部5、指向性制御部7、無線機9及びリモコン装置13を備えている。
【0011】
図2に示すように、アレーアンテナ1は、鉄塔上に配置されたFPUのレドーム15の下方に配置されている。レドーム15内には、図示していないFPUのアンテナと、このFPUアンテナが配置されたFPU回転台17が配置されている。なお、FPU回転台17を回転駆動するための機構等は図示を省略している。
図3図2のA−A断面図を示す。この図3に示すように、アレーアンテナ1は、円筒状の反射板19と、この反射板19の外周面にブラケット21を介して取り付けられた8個のアンテナ素子1A〜1Hとを備えている。アンテナ素子1A〜1Hは、FPUアンテナ回転台17の回転軸線23を中心とする円周上に等角度間隔(本実施形態では45°間隔)で配列している。アンテナ素子1A〜1Hとしては、ダイポールアンテナ素子や双ループアンテナ素子等が使用される。なお、アンテナ素子1A〜1Hの周囲には円筒状のカバー25が配置されている。
【0012】
次に、給電・位相切替部5について説明する。図4に示すように、給電・位相切替部5は、分配・合成器27、切替ユニット29,31,33,35,37及び切替ユニット29´,31´,33´,35´,37´を備えている。
分配・合成器27は、ケーブル47を介して図1に示す指向性制御部7に接続されるとともに、切替ユニット29,29´に接続されている。
切替ユニット29にはピンダイオードスイッチD1,D2が、切替ユニット31にはピンダイオードスイッチD3,D4が、切替ユニット33にはピンダイオードスイッチD5,D6が、切替ユニット35にはピンダイオードスイッチD7,D8が、切替ユニット37にはピンダイオードスイッチD9,D10がそれぞれ設けられている。そして、切替ユニット29,31間には位相調整用の同軸ケーブル39,41が設けられている。同軸ケーブル39は通過する高周波信号に対しての位相量が0°となるようにその長さが設定され、また、同軸ケーブル41は同位相量が−110°となるようにその長さが設定されている。
【0013】
切替ユニット29´,31´,33´,35´,37´は、それぞれ切替ユニット29,31,33,35,37と同等の構成を有するので、それについての説明を省略する。
切替ユニット35はアレスタ43を介してアンテナ素子1A及びアンテナ素子1Cに接続され、また、切替ユニット37はアレスタ43を介してアンテナ素子1E及びアンテナ素子1Gに接続されている。
一方、切替ユニット35´はアレスタ43´を介してアンテナ素子1B及びアンテナ素子1Dに接続され、また、切替ユニット37´はアレスタ43´を介してアンテナ素子1F及びアンテナ素子1Hに接続されている。
【0014】
次に、本実施形態に係るアンテナ装置の動作について説明する。
図1において、FPU受信機4は図示していないFPUアンテナに接続され、また、回転制御部11はFPU回転台17に接続されている。
【0015】
FPU受信機4は、FPUアンテナによって受信される中継用移動体からの電波、つまり、中継用移動体の位置データ(GPSデータ)を含む電波と、音声、映像等の素材データを含む電波に基づいて、位置データ及び素材データを取得し、位置データを回転制御部11に出力する。回転制御部11は、上記位置データと予め知られるFPUアンテナの配置位置を示すデータとに基づいて、FPUアンテナから見た水平面における中継用移動体の方位を計算し、その方位に基づいてFPUアンテナが中継用移動体の方向に向くようにFPUアンテナ回転台17の回転角度を制御する。
これにより、FPUアンテナは、中継用移動体を追尾しながら該移動体から送信される音声、映像等の素材についての電波を継続して受信することになる。
【0016】
指向性制御部7は、上記移動体の方位を示すFPUアンテナ回転台17の回転角度を回転制御部11から入力し、該回転角度に対応した方向のビーム指向性を実現するための給電・位相制御信号を給電・位相切替部5にケーブル45を介して出力する。そこで、給電・位相切替部5は、アレーアンテナ1のアンテナ素子1A〜1Hの中から隣接する2個の給電対象アンテナ素子を選択するともに、その選択したアンテナ素子についての給電位相を調整する。
【0017】
すなわち、中継用移動体の方向を示すFPUアンテナ回転台17の回転角度が例えば図5に示す0°もしくはその近傍である場合には、指向性制御部7から図4のピンダイオードスイッチD2,D4,D5,D7,D1´,D3´,D5´,D7´をオン状態にする給電・位相制御信号が給電・位相切替部5に出力される。この場合、給電対象アンテナ素子としてアンテナ素子1A,1Bが選択され、かつ、該アンテナ素子1Aについての信号の位相量が同軸ケーブル41によって調整されるとともに、アンテナ素子1Bについての信号の位相量が同軸ケーブル39´によって調整される。この結果、アンテナ素子1A、1Bによって図5に実線で示したような合成指向性、つまり、FPUアンテナ回転台17の回転角度に対応した方向のビーム指向性が実現される。
【0018】
一方、中継用移動体の方向を示すFPUアンテナ回転台17の回転角度が例えば図5に示す22.5°もしくはその近傍である場合には、指向性制御部7から図4のピンダイオードスイッチD1,D3,D5,D7,D1´,D3´,D5´,D7´をオン状態にする給電・位相制御信号が給電・位相切替部5に出力される。この場合、給電対象アンテナ素子としてアンテナ素子1A,1Bが選択され、かつ、該アンテナ素子1Aについての信号の位相量が同軸ケーブル39によって調整されるとともに、アンテナ素子1Bについての信号の位相量が同軸ケーブル39´によって調整される。この結果、アンテナ素子1A、1Bによって図5に点線で示したような合成指向性、つまり、FPUアンテナ回転台17の回転角度に対応した方向のビーム指向性が実現される。
【0019】
このように、本実施形態では、指向性制御部7からの制御信号によるピンダイオードスイッチD1〜D10,D1´〜D10´のオンオフ制御によってアレーアンテナ1のアンテナ素子1A〜1Hの中から隣接する2個のアンテナ素子の組(1A,1B)、(1B,1C)、(1C,1D)、(1D,1E)、(1E,1F)、(1F,1G)、(1G,1H)、(1H,1A)の内のいずれかが選択され、かつ、各組のアンテナ素子に対する位相量が選択される。
【0020】
なお、指向性制御部7は、FPUアンテナ回転台17の複数の回転角度範囲に対応するピンダイオードスイッチD1〜D10,D1´〜D10´のオンオフ制御データを格納したメモリを内蔵し、FPUアンテナ回転台17の回転角度が含まれる角度範囲に対応したダイオードスイッチオンオフ制御データをこのメモリから読み出して、上記給電・位相切替部5に制御信号として出力する。なお、同軸ケーブル39,41による位相量は、シミュレーションによって決定することができる。
【0021】
アレーアンテナ1が送信アンテナとして使用されるときには、図1の無線機9から出力される高周波電力(例えば、400MHzの中心周波数を有する)が指向性制御部7及びケーブル47を介して給電・位相切替部5の分配・合成器27に供給される。したがって、ピンダイオードスイッチD1〜D10,D1´〜D10´のオンオフ制御によって選択されたアンテナ素子から業務通信用の電波が中継用移動体に向けて送信される。
一方、アレーアンテナ1が受信アンテナとして使用されるときには、上記選択されたアンテナ素子による受信信号(中継移動体からの業務通信信号)が給電・位相切替部5の分配・合成器27と指向性制御部7を介して無線機9に入力される。
【0022】
指向性制御部7は、次のような処理も実行する。すなわち、アレーアンテナ1による送受信が山陰や周囲の建物等によって阻害される方向は予め知られる。そこで、FPUアンテナ回転台17の回転角度が上記送受信の阻害を生じる方向の角度範囲になった場合に、アレーアンテナ1を無指向性アンテナ3に切替える処理を実行して、通信を安定に維持する。
なお、アレーアンテナ1と無指向性アンテナ3の切替えを手動/自動のいずれで行うかの指示をリモコン装置13によって行うことも可能である。
【0023】
一方、無線機9は、アレーアンテナ1で受信される中継用移動体からの位置データを含む電波から該位置データを取得して、このデータを回転制御部11に伝送する処理も実行する。回転制御部11は、FPU受信機4からの位置データが何らかの要因で途絶えるなどした場合に、モデム11aを介して取り込んだ無線機9からの位置データを代用する処理を実行し、これによって追尾動作が維持される。
【0024】
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の変形態様を含み得るものである。以下にその一例を示す。
(a)実施形態では、アンテナ素子の選択だけでなく位相量の選択も行っているが、単に、アンテナ素子の選択のみによっても実施可能である。
(b)本発明は、基地局だけではなく、中継用移動体にも適用することができる。もちろん、基地局と中継用移動体の双方に適用することも可能である。
(c)電気的な性能(指向性、利得等)を向上するために、アレーアンテナ1のアンテナ素子数を増加させることも可能である。その場合、位相量を規定するための同軸ケーブルの本数も必要に応じて増加される。
(d)位相量を移相器を用いて調整することも可能である。
(e)ピンダイオードスイッチに代えて同軸スイッチを使用することも可能である。
(f)実施形態では、給電対象アンテナ素子として隣接する2つのアンテナ素子を選択しているが、隣接する3つ以上のアンテナ素子を給電対象アンテナ素子として選択するように構成することも可能である。
【符号の説明】
【0025】
1 アレーアンテナ
1A〜1H アンテナ素子
3 無指向性アンテナ
4 FPU受信機
5 給電・位相切替部
7 指向性制御部
9 無線機
11 回転制御部
13 リモコン装置
15 レドーム
17 FPU回転台
19 反射板
21 ブラケット
23 回転軸線
25 カバー
27 分配・合成器
29,31,33,35,37 切替ユニット
29´,31´,33´,35´,37´ 切替ユニット
D1〜D10 ピンダイオードスイッチ
D1´〜D10´ ピンダイオードスイッチ
39,41,39´,41´ 同軸ケーブル
43,43´ アレスタ
45,47 ケーブル
図1
図2
図3
図4
図5