(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5749020
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】RF電力をプラズマチャンバに結合するための装置
(51)【国際特許分類】
H05H 1/46 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
H05H1/46 M
H05H1/46 R
【請求項の数】21
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2010-545239(P2010-545239)
(86)(22)【出願日】2009年1月31日
(65)【公表番号】特表2011-512007(P2011-512007A)
(43)【公表日】2011年4月14日
(86)【国際出願番号】US2009032776
(87)【国際公開番号】WO2010044895
(87)【国際公開日】20100422
【審査請求日】2012年1月30日
(31)【優先権主張番号】61/025,111
(32)【優先日】2008年1月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100109726
【弁理士】
【氏名又は名称】園田 吉隆
(74)【代理人】
【識別番号】100101199
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義教
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト, ジョン, エム.
(72)【発明者】
【氏名】スティムソン, ブラッドリー, オー.
【審査官】
鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−220368(JP,A)
【文献】
特開2001−274099(JP,A)
【文献】
特開2001−284271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00 −16/56
C23F 1/00 − 4/04
H01L 21/205
H01L 21/302
H01L 21/3065
H01L 21/31
H01L 21/365
H01L 21/461
H01L 21/469
H01L 21/86
H05H 1/00 − 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RF電力をプラズマチャンバに結合するための装置であって、
複数のRF接続点を備える電極を備えたプラズマチャンバと、
第1のRF電源を含む複数のRF電源であって、各RF電源が、前記RF接続点の1つにそれぞれ接続された出力端を有する、複数のRF電源と、
RF発振器と、
複数の位相シフタと、を備え、
各位相シフタが、前記RF発振器の出力端に接続された入力端を有し、
各RF電源は、各RF電源がその同期入力端で受領した信号に周波数および位相が同期された各RF電力信号をその出力端に生成するような同期入力端を有し、
前記第1のRF電源以外の各RF電源の前記同期入力端が、前記位相シフタの出力端の1つにそれぞれ接続され、
前記第1のRF電源の前記同期入力端が、前記RF発振器の前記出力端に接続され、
前記第1のRF電源が、その出力端に第1のRF電力信号を生成し、
前記第1のRF電源以外の各RF電源が、そのそれぞれの出力端に、前記第1のRF電力信号と同じ周波数、および前記第1のRF電力信号に対して相対的な、異なる非ゼロ位相オフセットを有するそれぞれのRF電力信号を生成する、装置。
【請求項2】
RF電力をプラズマチャンバに結合するための装置であって、
第1、第2、第3、第4のRF接続点を備える電極を備えたプラズマチャンバと、
第1、第2、第3、第4のRF電源と、当該RF電源のそれぞれは出力端を含み、そのそれぞれの出力端に、第1、第2、第3、第4のRF電力信号を生成し、
RF発振器と、
複数の位相シフタと、を備え、
各位相シフタが、前記RF発振器の出力端に接続された入力端を有し、
各RF電源は、各RF電源がその同期入力端で受領した信号に周波数および位相が同期された前記各RF電力信号をその出力端に生成するような同期入力端を有し、
前記第1のRF電源以外の各RF電源の前記同期入力端が、前記位相シフタの出力端の1つにそれぞれ接続され、
前記第1のRF電源の前記同期入力端が、前記RF発振器の前記出力端に接続され、
各RF電源が、それぞれの前記RF接続点に、それぞれのRF電力信号を供給するために接続される、それぞれの出力端を有し、
当該それぞれの第2、第3、第4のRF電力信号は、前記第1のRF電力信号と同じ周波数、および前記第1のRF電力信号に対して相対的な、異なる非ゼロ位相オフセットを有する、装置。
【請求項3】
RF電力をプラズマチャンバに結合するための装置であって、
複数のRF接続点を備える電極を備えたプラズマチャンバと、
第1のRF電源を含む複数のRF電源であって、各RF電源が、前記RF接続点の1つにそれぞれ接続された出力端を有する、複数のRF電源と、
RF発振器と、
複数の位相シフタと、を備え、
各位相シフタが、前記RF発振器の出力端に接続された入力端を有し、
各RF電源は、各RF電源がその同期入力端で受領した信号に周波数および位相が同期された各RF電力信号をその出力端に生成するような同期入力端を有し、
前記第1のRF電源以外の各RF電源の前記同期入力端が、前記位相シフタの出力端の1つにそれぞれ接続され、
前記第1のRF電源の前記同期入力端が、前記RF発振器の前記出力端に接続され、
前記第1のRF電源が、その出力端に第1のRF電力信号を生成し、
前記第1のRF電源以外の各RF電源が、そのそれぞれの出力端に、前記第1のRF電力信号と同じ周波数、および前記第1のRF電力信号に対して相対的な、調整可能な位相オフセットを有するそれぞれのRF電力信号を生成する、装置。
【請求項4】
前記RF接続点が、前記電極の2次元表面上に配置される、請求項1ないし3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記RF接続点が、前記電極の矩形表面上に配置される、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記RF接続点のそれぞれが、前記電極にそれぞれ対応する隅部の付近に位置する、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記RF接続点のそれぞれが、前記電極にそれぞれ対応する隅部に位置する、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記RF接続点のそれぞれが、前記電極の矩形表面の4つの隅部の付近に位置する、請求項5に記載の装置。
【請求項9】
前記RF接続点のそれぞれが、前記電極の矩形表面の4つの隅部に位置する、請求項5に記載の装置。
【請求項10】
前記非ゼロ位相オフセットのそれぞれが経時変化する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項11】
前記RF発振器の前記出力端と前記第1のRF電源の前記同期入力端との間に接続された位相シフタをさらに備える、請求項1ないし10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記電極が、マニホルド後壁と、シャワーヘッドと、前記シャワーヘッドを前記マニホルド後壁に接続するサスペンションとを備えるガス入口マニホルドであり、
前記RF接続点が、前記マニホルド後壁上にある、請求項1ないし11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
複数のインピーダンス整合回路網をさらに備え、
各インピーダンス整合回路網が、前記RF電源の1つにそれぞれ対応するRF電源の前記出力端と、前記RF接続点の1つにそれぞれ接続される、請求項1ないし12のいずれか一項に記載の装置。
【請求項14】
RF電力をプラズマチャンバに結合するための装置であって、
複数のRF接続点を備える電極を備えたプラズマチャンバと、
第1のRF電源を含む複数のRF電源と、を備え、
各RF電源が、それぞれの前記RF接続点に、それぞれのRF電力信号を供給するために接続される、それぞれの出力端を有し、それぞれのRF電力信号は同じ周波数を有し、
RF発振器と、
複数の位相シフタと、をさらに備え、
各位相シフタが、前記RF発振器の出力端に接続された入力端を有し、
各RF電源は、各RF電源がその同期入力端で受領した信号に周波数および位相が同期された前記各RF電力信号をその出力端に生成するような同期入力端を有し、
前記第1のRF電源以外の各RF電源の前記同期入力端が、前記位相シフタの出力端の1つにそれぞれ接続され、
前記第1のRF電源の前記同期入力端が、前記RF発振器の前記出力端に接続される、装置。
【請求項15】
前記RF発振器の前記出力端と前記第1のRF電源の前記同期入力端との間に接続された位相シフタをさらに備える、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
各位相シフタが異なる位相シフトを生成し、前記第1のRF電源以外の各RF電源が、そのそれぞれの出力端に、第1のRF電力信号と同じ周波数、および前記第1のRF電力信号に対して相対的な、異なる非ゼロ位相オフセットを有する前記第1のRF電源によって生成されたそれぞれのRF電力信号を生成する、請求項14または15に記載の装置。
【請求項17】
前記非ゼロ位相オフセットのそれぞれが経時変化する、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記電極が、マニホルド後壁と、シャワーヘッドと、前記シャワーヘッドを前記マニホルド後壁に接続するサスペンションとを備えるガス入口マニホルドであり、
前記RF接続点が、前記マニホルド後壁上にある、請求項14ないし17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
複数のインピーダンス整合回路網をさらに備え、
各インピーダンス整合回路網が、前記RF電源の1つにそれぞれ対応するRF電源の前記出力端と、前記RF接続点の1つにそれぞれ対応するRF接続点との間に接続される、請求項14ないし18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
RF接続点の数およびRF電源の数が、少なくとも4であり、
前記RF接続点が、前記電極の2次元表面上に配置される、請求項14ないし19のいずれか一項に記載の装置。
【請求項21】
前記RF接続点が、前記電極の矩形表面上に配置される、請求項14ないし20のいずれか一項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に、RF電力を、半導体、ディスプレイ、太陽電池、および固体発光デバイスなどの電子デバイスの製作に使用するプラズマチャンバの電極に結合することに関する。本発明は、より詳細には、チャンバ内で実施されるプラズマプロセスの均一性を、異なる位相オフセットを有するRF電力を電極上の異なる点に結合することにより改善することに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマチャンバは一般に、半導体、ディスプレイ、および太陽電池などの電子デバイスを製作するプロセスを実施するために使用される。そのようなプラズマ製作プロセスは、ワークピースの表面上への半導体層、導体層、もしくは誘電体層の化学気相成長、またはワークピース表面上にあるそのような層の選択された部分のエッチングを含む。
【0003】
プラズマ製作プロセスが、ワークピースの表面全体にわたって高い空間的均一性を伴って実施されることが重要である。例えば、堆積プロセスは、堆積された材料が、ワークピースの表面上のあらゆる位置で均一な厚さおよび品質を有するように実施されるべきである。同様に、エッチングプロセスは、材料をそのような位置全てにおいて均一な速度でエッチングすべきである。
【0004】
RF電力は、プラズマチャンバ内に配置された、またはプラズマチャンバに隣接する電極にRF電力源を結合することにより、プラズマチャンバ内のプラズマに容量結合することができる。RF電力が電極上の単一の点に結合される設計では、電極の任意の寸法がRF電力の約4分の1波長よりも大きい場合、プラズマ密度は、したがってワークピース上で実施されているプラズマ製作プロセスは、空間的不均一性をこうむる。
【発明の概要】
【0005】
したがって、そのような空間的均一性を改善する必要がある。
【0006】
一態様では、本発明は、異なる位相オフセットを有するRF電力を、プラズマチャンバの電極上の異なるRF接続点に結合する。別の態様では、本発明は、調整可能なそれぞれの位相オフセットを有するRF電力を、プラズマチャンバの電極上の異なるRF接続点に結合する。
【0007】
位相オフセットのそれぞれの値は、チャンバ内で実施されるプラズマプロセスの空間的均一性を最適化するように定めることができる。例えば、プラズマチャンバのワークピースと電極の間の領域内で、プラズマが、各前記位相オフセットがゼロであることにより生成されたであろうプラズマよりも低い空間的不均一性を有するように、それぞれの位相オフセットを定めることができる。あるいは、ワークピース上の材料の層を形成または変更するようにプラズマプロセスを実施する際、前記材料の層の物理的特性が、各前記位相オフセットがゼロであることにより生じたであろう前記材料の層の前記物理的特性よりも低い空間的不均一性を有するように、それぞれの位相オフセットを定めることができる。
【0008】
好ましくは、異なるRF接続点および対応する位相オフセットの数が、少なくとも4であり、RF接続点の位置が、電極の2つの直交次元(例えばX軸およびY軸)に沿って分配される。この特徴は、プラズマプロセスの空間的均一性の2空間次元での最適化を可能にし、それは特に、チャンバ内で処理されているワークピースが矩形であるときに有用である。
【0009】
好ましい一実施形態では、各RF接続点への電力が、それぞれに対応するRF電源によって供給され、その場合、各電源はその位相を、共通の基準RF発振器に同期させる。
【0010】
本特許明細書および特許請求の範囲全体を通じて、我々は、「RF接続点」という用語を、RF電力が電極に電気的に接続される電極上の位置という意味で使用している。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明によるプラズマチャンバの部分概略側断面図である。断面は、4つのRF接続点のうち2つを通る。
【
図2】
図1のプラズマチャンバに接続されたRF電源の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1および2は、本発明の一実施形態によるプラズマチャンバを示す。
【0013】
図1を参照すると、ワークピース10が、プラズマチャンバ内でサセプタ12上に支持されている。プラズマチャンバは、ワークピース上に半導体デバイス、ディスプレイ、太陽電池、または固体発光デバイスなどの電子デバイスを製作するために、ワークピースをプラズマプロセスステップにかけるものである。プラズマチャンバ内で処理されるワークピース10の例には、フラットパネルディスプレイがその上に製作される矩形のガラス基板、または集積回路がその上に製作される円形の半導体ウェーハがある。
【0014】
プラズマチャンバは、電気伝導性チャンバ壁14〜18、好ましくはアルミニウムを有し、それが、チャンバ内部にとって真空の囲壁となる。図示の実施形態では、チャンバ側壁14およびチャンバ底壁16が、一体型の壁として実施されている。チャンバ壁は上壁18も含む。チャンバ壁の全ての部分が、電気的に互いに接続され、電気的に接地される。
【0015】
ワークピースに対してプラズマプロセスを実施する際、1種または複数種のプロセスガスが、チャンバ内にガス入口マニホルド20〜26を通じて施与される。ガス入口マニホルドは、マニホルド後壁20、(ガス分配プレートまたは拡散器とも呼ばれる)シャワーヘッド22、およびサスペンション24を含み、その全てが、ガス入口マニホルドの内部26を構成する容積を共同して囲む。
【0016】
ガス入口導管28が、マニホルド後壁20の中心を通って延びる。図示していないガス源が、プロセスガスをガス入口導管の上端に供給する。プロセスガスは、ガス入口導管からガス入口マニホルドの内部26に流れ込み、次いで、シャワーヘッド22に開いた多数の開口を通じてプラズマチャンバ内に施与される。
【0017】
シャワーヘッドの重量が、サスペンション24によって支持され、サスペンション24は、ガス入口マニホルド後壁20によって支持され、ガス入口マニホルド後壁20は、チャンバ側壁14によって支持される。サスペンション24は、好ましくは、シャワーヘッドの温度が上昇および下降するときのシャワーヘッドの径方向の伸縮に対応するように可撓性である。サスペンション24は、ガス入口マニホルド後壁20に取り付けられた上端、およびシャワーヘッド22の周囲のリムに取り付けられた下端を有する。後者の取付けは、固定でも摺動でもよい。例えば、摺動取付けは、シャワーヘッドリムをサスペンションの下端上に載せることにより実施することができる。
【0018】
シャワーヘッドが、図示の実施形態のように矩形の場合、サスペンション24の垂直に延びる部分が、好ましくは、矩形のシャワーヘッド22の4辺にそれぞれ取り付けられた4枚の可撓性シートからなる。各シートは、矩形のシャワーヘッドの1辺と矩形の後壁20の対応する辺との間で垂直に延びる。
【0019】
ガス入口マニホルド20〜26は、RF電力をチャンバ内のプラズマに結合するための電極としても機能する。マニホルド後壁20、シャワーヘッド22、およびサスペンション24は電気伝導性であり、好ましくはアルミニウムである。誘電体ライナ19が、ガス入口マニホルドのRF給電された構成要素20〜24を、電気的に接地されたチャンバ壁14〜18から電気的かつ機械的に絶縁する。
【0020】
図2を参照すると、複数のRF電源41〜44のそれぞれの出力端が、それぞれに対応するインピーダンス整合回路網51〜54を通じて、マニホルド後壁20の裏面上のそれぞれに対応するRF接続点31〜34に接続されている。(
図2は、4つのRF電源、整合回路網、およびRF接続点を全て示す。
図1は、最初の2つのRF接続点31、32と交わる垂直面で得られた断面図であるため、それぞれにつき2つを示すにすぎない。)
【0021】
発明の概要において述べたように、我々は、「RF接続点」という用語は、RF電力が電極に接続される電極上の位置という意味で使用されている。
【0022】
図示の実施形態における電極は、ガス入口マニホルド20〜26であるが、本発明の範囲は、電極がガス分配機能を有しているかどうかに関わらず、任意の従来型のプラズマチャンバ電極上にあるRF接続点を含む。換言すれば、電極は、ガス入口マニホルドの一部である必要はなく、シャワーヘッドを含んでいる必要はない。
【0023】
さらに、誘電体であるチャンバ壁の一部に電極が隣接し、それにより、RF電力を電極からチャンバ内のプラズマに容量結合することができる場合、電極は、チャンバ壁14〜18の外側にあってもよい。電極は、チャンバ壁の内側にあっても外側にあってもよいため、本明細書では、チャンバ「内の」電極ではなく、チャンバ「の」電極と記載される。
【0024】
RF電力は、それぞれのRF電源41〜44の出力端から、マニホルド後壁20上のそれぞれのRF接続点31〜34に流れ、次いで、マニホルド後壁を通って、マニホルド後壁の4辺にある4つのサスペンション壁24に至り、次いで、4つのサスペンション壁を通って、シャワーヘッド22の4辺に至る。RF電力は、シャワーヘッドから、シャワーヘッドとサセプタの間のプラズマに結合される。
【0025】
本発明の新規な特徴は、RF電源41〜44のそれぞれがその出力端に、同じ周波数を有するが、RF電源ごとに異なる値に設定することのできる相対位相オフセットを有するRF信号を生成することである。
図2の実施形態では、これが次のように実施されている。各RF電源41〜44は、同期入力端があるタイプの従来型のRF電源を有する。各RF電源は、その同期入力端で受領した低電力RF信号に周波数および位相が同期された高電力RF信号をその出力端に生成する。
【0026】
基準発振器70が、プラズマチャンバ電極(ガス入口マニホルド20〜26)に供給したい周波数の低電力RF信号を生成する。基準発振器の出力端が、いくつかの従来型の位相シフタ61〜63のそれぞれの入力端に接続される。各位相シフタ61〜63は、その入力端で受領した信号に対して相対的に位相が所定の位相角だけシフトされた出力信号を生成する。各位相シフタ61〜63の出力端が、それぞれに対応するRF電源の同期入力端に接続される。
【0027】
位相シフタの数は、RF電源の数に等しくてよく、その場合、各RF電源の同期入力端が、対応する各位相シフタの出力端に接続される。より好ましくは、位相シフタの数は、RF電源の数よりも1つ少なく、その場合、1つのRF電源44の同期入力端が直接、基準発振器70の出力端に接続される。
【0028】
4つのRF電源41〜44からの電力に応答して電極(ガス入口マニホルド20〜26)により生成される電磁界の空間分布は、RF電源相互の相対的な位相オフセットによって決まるが、基準発振器70に対する4つのRF電源の絶対位相は重要ではない。したがって、1つのRF電源44が基準として機能することができ、それに対して、残りのRF電源41〜43の位相が相対する。これは、1つのRF電源44の同期入力端を、介在する位相シフタなしで直接、基準発振器70に接続することにより達成することができ、この場合、その電源44の出力端が、基準発振器と同相になる。
【0029】
各位相シフタ61〜63によって生成される位相シフトの値は、好ましくは、プラズマチャンバ内で実施される特定のプラズマ製作プロセスの空間的均一性を最適化するように、通常の実験によって調整すべきである。例えば、プラズマチャンバ内で、ワークピースの表面上に堆積された、またはワークピースの表面上でエッチングされた被膜の空間的均一性を、一連のワークピースについて測定することができ、その場合、位相シフタ61〜63ごとに異なる位相シフト値のセットが、各ワークピースについてテストされる。次いで、最良の空間的均一性を生み出すと実験で決定された位相シフト値を、ワークピースの生産製作中に、位相シフト値をそれ以上調整せずに使用することができる。
【0030】
より一般的には、位相オフセットのそれぞれの値は、チャンバ内で実施されるプラズマプロセスの空間的均一性を最適化するように定めることができる。例えば、プラズマチャンバのワークピースと電極の間の領域内で、プラズマが、各前記位相オフセットがゼロであることにより生成されたであろうプラズマよりも低い空間的不均一性を有するように、それぞれの位相オフセットを定めることができる。あるいは、ワークピース上の材料の層を形成または変更するようにプラズマプロセスを実施する際、前記材料の層の物理的特性が、各前記位相オフセットがゼロであることにより生じたであろう前記材料の層の前記物理的特性よりも低い空間的不均一性を有するように、それぞれの位相オフセットを定めることができる。
【0031】
2つ前の段落内で述べた初期実験の間は、調整可能な位相シフタが好都合であるが、最適な位相シフト値が決定された後の生産用プラズマチャンバ内では、固定の位相シフタを使用することができる。
【0032】
RF接続点が、図示の実施形態における矩形のガス入口マニホルド20〜26など、矩形の電極上にある場合、RF接続点が接続される電極の表面上のX軸およびY軸の両方に関して異なる位置を有する、少なくとも4つのRF接続点を含めることが大いに有利である。
図2の実施形態ではこれが、4つのRF接続点31〜34を電極の4つの隅部付近に(具体的にはマニホルド後壁20の4つの隅部付近に)配置することにより、達成されている。換言すれば、4つのRF接続点のそれぞれの位置が、幾何学的矩形の頂点を画定している。これにより、プラズマチャンバ内で実施されるプラズマ製作プロセスの空間的均一性をX軸およびY軸の両方に沿って最適化するように、RF電力の相対位相をX軸およびY軸の両方に沿って調整することが可能になる。(我々は、「X軸およびY軸」という用語を、電極の表面上の、任意の2つの直交する幾何学的次元という意味で使用している。)
【0033】
本発明の範囲は、4つを上回るいくつかのRF接続点、ならびに対応する追加の数のRF電源および位相シフタも企図する。これにより、プラズマ製作プロセスの空間的均一性に対するさらに詳細な制御が可能になるが、各位相シフタに最適な位相シフト値の実験的決定が複雑になる。
【0034】
図3は、電極の対角線上に対向する隅部、具体的にはマニホルド後壁20の裏面の対角線上に対向する隅部付近に、2つのRF接続点31、34だけを有する、一代替実施形態を示す。2つのRF接続点は、マニホルド後壁の裏面のX軸およびY軸の両方に沿って異なる位置を有するため、プラズマ製作プロセスの空間的均一性に対するいくらかの制御が、X軸およびY軸の両方に沿って可能である。しかし、この実施形態は、
図2の好ましい実施形態のように各軸に沿った空間的均一性を他方の軸と独立に制御することはできない。
【0035】
図2の実施形態と同様に、インピーダンス整合回路網51、54が、各RF接続点31、34とそのRF電力源との間に接続される。しかし、
図3は、異なる位相オフセットを有するRF電力を異なるRF接続点31、34にもたらす別の手段を示す。
図3の実施形態は、ただ1つの高電力RF電源44を有する。その出力が、RF接続点間でRF電力分割器80によって分割される。RF接続点間の位相オフセットは、RF電力分割器80とインピーダンス整合回路網の一方51の間に接続された位相シフタ65によって制御される。
【0036】
図3の実施形態の利点は、この実施形態に必要なRF構成要素がより少ないことであるが、
図2の実施形態はその他の点で有利である。
【0037】
図2の実施形態の一利点は、この実施形態が電力分割器を不要にすることである。対照的に、
図3の実施形態では、RF電力分割器80が、全てのRF接続点に供給される総RF電力を伝導しなければならない。RF電力分割器内でのいくらかの電力損失は不可避であり、そのことが、RF電源からプラズマチャンバへの電力伝達効率を不都合に低減させる。また、RF電力分割器は、RF波形にいくらかの歪みを導入することがあり、その結果、RF電源信号の望ましくない高調波が、インピーダンス整合回路網51、54、およびチャンバ内のプラズマに印加される恐れがある。
【0038】
図2の実施形態の別の利点は、位相シフタ61〜63が、プラズマの負荷インピーダンスから完全に絶縁されることである。各位相シフタの出力端は、その対応するRF電源41〜43の同期入力端に接続される。同期入力端は通常、標準的な入力インピーダンスを有しており、これは、RF電源の出力端に接続された負荷のインピーダンスによる影響を受けない。各位相シフタによって生成される位相シフト量は、各位相シフタが標準的な一貫した負荷インピーダンスを駆動するため、非常に正確かつ一貫したものとなり得る。
【0039】
対照的に、
図3の実施形態では、位相シフタ65の出力端が、インピーダンス整合回路網51の入力端に接続されている。インピーダンス整合回路網は一般に、プラズマ製作プロセスの実施中にプラズマチャンバ内のプラズマの動的な変化に応答してその入力インピーダンスの変化を完全になくすというわけではない。したがって、位相シフタによって生成される位相シフト量が一貫していないことがある。
【0040】
ガス入口マニホルド20〜26または他の電極によって生成される電磁界は、時間変動する可能性がある。位相シフタ61〜63はそれぞれ、その位相シフト量が従来型のプログラマブルコントローラ(図示せず)からのコマンドに応答して経時変化する、可変位相シフタとすることができる。その結果得られる、プラズマ製作プロセスの時間平均した空間的均一性は、どんな特定の瞬間の空間的均一性よりも優れたものであり得る。
【0041】
図2および3のどちらの実施形態でも、RF接続点31〜34の最適な位置は、2つの相反する考慮事項間のバランスがとれたところである。RF接続点間の電気インピーダンスを最大にするために、RF接続点をできるだけ互いに遠くに、したがってマニホルド後壁20の隅部の近くに配置することが望ましい。しかし、RF接続点がマニホルド後壁の縁部にあまりにも近すぎると、インピーダンス整合回路網51〜54に与えられる負荷インピーダンスが誘導性ではなく容量性になる。これにより、各インピーダンス整合回路網がインダクタを含まなければならず、インダクタの方がコンデンサよりも高価で物理的に嵩張り、また可変インダクタは可変コンデンサよりも実施が困難なため、これは望ましくない。
【0042】
本発明の範囲は、それらに限定されないが、図面に示していない次の更なる代替形態および変更形態を含む。
【0043】
各インピーダンス整合回路網51〜54の構成要素を、物理的に分散させることができる。例えば、各インピーダンス整合回路網は、そのそれぞれに対応するRF電源41〜44に物理的に隣接して取り付けられ、またはそのRF電源内に取り付けられた、1つまたは複数のリアクタンス(すなわちコンデンサおよびインダクタ)と、電極(例えばガス入口マニホルド20〜26)に物理的に隣接して取り付けられ、または直接その電極上に取り付けられた、1つまたは複数の更なるリアクタンスとを含むことができる。
【0044】
図示のガス入口マニホルド20〜26は、図示のプラズマチャンバが矩形のワークピース10の処理に適合されているため、矩形である。しかし、本発明は、円形のガス入口マニホルドまたは他の円形の電極を含む、円形のワークピースを処理するためのプラズマチャンバにも等しく適用可能である。
【0045】
図示のマニホルド後壁20およびシャワーヘッド22は、セグメントに分割されていないが、セグメントに分割することが望ましい場合がある。その場合、本明細書における「マニホルド後壁」および「電極」へのあらゆる言及は、全てのセグメントを一括して単一のマニホルド後壁または電極として包含する。
【0046】
本発明は主として、RF電力をプラズマに容量結合することに関するが、追加のRF電力をプラズマに、誘導コイルまたはマイクロ波導波管など、他の手段によって結合することができる。また、遠隔プラズマ源内で発生したプラズマが、ガス入口を通じてチャンバ内部に流れ込んでもよい。