(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5749191
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】ノンフライ即席麺用小麦粉組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 1/16 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
A23L1/16 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-28193(P2012-28193)
(22)【出願日】2012年2月13日
(65)【公開番号】特開2013-162768(P2013-162768A)
(43)【公開日】2013年8月22日
【審査請求日】2014年7月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】301049777
【氏名又は名称】日清製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修
(72)【発明者】
【氏名】利光 菜由
(72)【発明者】
【氏名】長井 孝雄
(72)【発明者】
【氏名】野呂 卓史
【審査官】
福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−000200(JP,A)
【文献】
特開平06−121649(JP,A)
【文献】
特開2005−328790(JP,A)
【文献】
特開2008−289454(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2009/0169707(US,A1)
【文献】
米国特許第04394397(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主としてソフト系小麦からなる原料小麦を常法により製粉して得られた小麦粉であり、平均粒径が10〜40μmの小麦粉で構成され、蛋白含量が4.5〜6.8質量%である小麦粉を、20〜80質量%含有するノンフライ即席麺用小麦粉組成物。
【請求項2】
前記小麦粉が、粒径が5〜55μmの小麦粉の割合が75質量%以上の粒度分布を有する小麦粉である請求項1記載のノンフライ即席麺用小麦粉組成物。
【請求項3】
ノンフライ即席中華麺用小麦粉組成物またはノンフライ即席うどん用小麦粉組成物である請求項1または2記載のノンフライ即席麺用小麦粉組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノンフライ即席中華麺およびノンフライ即席うどんなどを製造するのに好適なノンフライ即席麺用小麦粉組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ノンフライ即席麺としては、麺線間の結着がなく、調理時および喫食時に麺のほぐれが良く、均一な復元性が得られ、かつ食感の良好な麺が得られることが要望されている。
特許文献1には、原料を軟質小麦とし、粒径が45μm未満の大きさの粒が80質量%以上で、かつ10μm以上45μm未満の大きさの粒が60質量%以上である麺用小麦粉および該麺用小麦粉を20質量%以上含有する麺用小麦粉組成物が記載されており、該麺用小麦粉および麺用小麦粉組成物は、製麺適性に優れ、かつ特にうどんに加工した際に、特徴的で良好なモチモチ感を有するうどんが得られることが記載されている。
しかし、特許文献1には、上記の麺用小麦粉および麺用小麦粉組成物を即席麺の製造に用いることについては記載されておらず、またノンフライ即席麺の製造に用いた場合、麺のほぐれや復元性などにおいて改善の余地があるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−328790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、麺線間の結着を防止でき、調理時および喫食時に麺のほぐれが良く、均一な復元性が得られ、かつ食感の良好な麺を得ることができるノンフライ即席麺用小麦粉組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成すべく種々検討した結果、特定種の小麦由来の小麦粉であって、特定の平均粒径および特定の蛋白含量を有する小麦粉が、ノンフライ即席麺用小麦粉として著しく優れていることを知見した。
【0006】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、主としてソフト系小麦からなる原料小麦を常法により製粉して得られた小麦粉であり、平均粒径が10〜40μmの小麦粉で構成され、蛋白含量が4.5〜6.8質量%である小麦粉を、20〜80質量%含有するノンフライ即席麺用小麦粉組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のノンフライ即席麺用小麦粉組成物は、ノンフライ即席中華麺用小麦粉組成物またはノンフライ即席うどん用小麦粉組成物として特に好適なものであり、本発明のノンフライ即席麺用小麦粉組成物によれば、麺線間の結着を防止でき、調理時および喫食時に麺のほぐれが良く、均一な復元性が得られ、かつ食感の良好な麺を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に使用される原料小麦は、主としてソフト系小麦であり、このソフト系小麦の品種としては、ソフトレッドホイートおよびソフトホワイトホイートなどがある。
ソフトレッドホイートの例としては、日本産の普通小麦、米国産のソフトレッドウインター(SRW)などがあり、ソフトホワイトホイートの例としては、米国産のホワイトホイート(WW)、オーストラリア産のオーストラリアスタンダードホイート(ASW)などがある。
【0009】
本発明に使用される原料小麦は、上記のソフト系小麦を単品で使用しても、2種以上混合使用してもよい。これらのソフト系小麦は、原料小麦中、50質量%以上、特に80質量%以上使用することが好ましい。
これらのソフト系小麦以外に、原料小麦として、ハード系小麦、セミハード系小麦を目的に応じて適宜使用してもよい。
【0010】
本発明の小麦粉組成物を構成する小麦粉は、上記の主としてソフト系小麦からなる原料小麦を常法により製粉して得られた小麦粉を空気分級および/または篩い分けによる方法で分割し、平均粒径が10〜40μm、好ましくは平均粒径が15〜30μmの小麦粉である。
【0011】
本発明の小麦粉組成物を構成する小麦粉は、粒径が5〜55μmの小麦粉の割合が75質量%以上、好ましくは85質量%以上の粒度分布を有する小麦粉が好ましく、粒径が15〜40μmの小麦粉の割合が50質量%以上、好ましくは60質量%以上の粒度分布を有する小麦粉がより好ましい。
粒径が5μm未満の小麦粉の割合が多すぎると、歯ぬかりし、食感が悪くなる傾向があり、また粒径が55μm超の小麦粉の割合が多すぎると、ざらついた食感となる傾向がある。
【0012】
本発明の小麦粉組成物を構成する小麦粉は、蛋白含量が4.5〜6.8質量%、好ましくは蛋白含量が5〜6.8質量%の小麦粉である。
上記小麦粉の蛋白含量が4.5質量%未満であると、麺のほぐれ性および復元性が悪くなる傾向があり、また蛋白含量が6.8質量%超であると、生地形成性が悪く、麺のほぐれ性および復元性も悪くなる傾向がある。
【0013】
本発明の小麦粉組成物は、上記小麦粉を20〜80質量%含有していることが必要であり、40〜60質量%含有していることが好ましい。
上記小麦粉の含有量が20質量%未満であると、復元性が悪く、また上記小麦粉の含有量が80質量%超であると、製麺性およびほぐれ性が悪い。
【0014】
本発明の小麦粉組成物は、上記小麦粉以外の小麦粉(以下、その他の小麦粉という)として、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉などの市販の小麦粉を含有することができ、特に中力粉を含有することが好ましい。上記その他の小麦粉の含有量は、本発明の小麦粉組成物中、80質量%以下、好ましくは30〜70質量%である。
また、本発明の小麦粉組成物には、小麦粉以外に、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉、小麦澱粉、コーンスターチ、米澱粉などの澱粉を含有させることができ、これらのなかでも、タピオカ澱粉、馬鈴薯澱粉を含有させることが好ましい。これら澱粉の含有量は、本発明の小麦粉組成物中、80質量%以下、好ましくは5〜20質量%である。
【0015】
本発明の小麦粉組成物が用いられるノンフライ即席麺としては、ノンフライ即席中華麺やノンフライ即席うどんが挙げられる。
本発明のノンフライ即席麺用小麦粉組成物は、従来用いられていたノンフライ即席麺用小麦粉組成物と同様にして用いられる。すなわち、本発明の小麦粉組成物に、目的とするノンフライ即席麺の種類に応じて他の原料を適宜混合し、常法に従ってノンフライ即席麺を製造することができる。
【実施例】
【0016】
本発明を具体的に説明するために実施例および比較例を挙げるが、本発明は以下の実施例によって制限されるものではない。
【0017】
実施例1〜5および比較例1〜3
表1に示す配合の小麦粉組成物を用い、下記(製法)により、ノンフライ即席中華麺をそれぞれ製造した。
【0018】
【表1】
【0019】
表1の処理小麦粉は、平均粒径24μmで、粒径が5〜55μmの小麦粉の割合が85質量%、粒径が15〜40μmの小麦粉の割合が65質量%、蛋白含量6質量%の小麦粉である。
表1の中力粉は、日清製粉製の「特雀」である。
【0020】
(製法)
食塩1質量部、かんすい(オリエンタル酵母社製「赤かんすい」)0.4質量部を共に水35質量部に溶かした水溶液を調製し、これらの水溶液を、表1に示す配合の小麦粉組成物100質量部に添加し、常法によって10分間混捏して十分なグルテンを形成した生地を作製した。
次いで、上記生地を製麺ロールを用いて複合、圧延して厚さ1.2mmの麺帯にした後、18番角刃を用いて麺線に切り出した。
切り出した麺線を温度100℃の蒸気で2分30秒蒸熱処理した後、110℃の熱風で18分間乾燥してノンフライ即席中華麺をそれぞれ製造した。
【0021】
得られた各ノンフライ即席中華麺70gを入れた密封容器中に、450mlの沸騰水を注ぎ、4分間かけて復元し、これに濃縮スープを入れて麺をそれぞれ調製した。これらの麺について、調製時および喫食時の麺のほぐれおよび復元性を下記評価基準によりパネラー10人に評点させた。その結果(10人の平均値)を下記表2に示す。
【0022】
麺のほぐれの評価基準
5点 麺線の結着がなく、極めて良好。
4点 ほぼ麺線の結着がなく、良好。
3点 大部分はほぐれているが、一部に麺線の結着が残る。
2点 麺線の結着が多く、不良。
1点 麺線の大部分が結着し、極めて不良。
【0023】
復元性の評価基準
5点 十分可食状態で、極めて良好。
4点 ほぼ可食状態になっており、良好。
3点 大部分は可食状態であるが、一部に芯が残る。
2点 麺の表面は可食状態であるが、中心部には芯が残り、不良。
1点 麺の表面および中心部はまだ硬く、極めて不良。
【0024】
【表2】
【0025】
実施例6〜8および比較例4〜6
表3に示す配合の小麦粉組成物を用い、下記(製法)により、ノンフライ即席うどんをそれぞれ製造した。
【0026】
【表3】
【0027】
表3の処理小麦粉および中力粉は表1の処理小麦粉および中力粉と同じものである。
【0028】
(製法)
食塩1質量部を水35質量部に溶かした水溶液を調整し、表3に示す配合の小麦粉組成物100質量部に添加し、常法によって10分間混捏して十分なグルテンを形成した生地を作製した。
次いで、上記生地を製麺ロールを用いて複合、圧延して厚さ1.0mmの麺帯にした後、10番角刃を用いて麺線に切り出した。
切り出した麺線を温度100℃の蒸気で2分30秒蒸熱処理した後、110℃の熱風で18分間乾燥してノンフライ即席うどんをそれぞれ製造した。
【0029】
得られた各ノンフライ即席うどん70gを入れた密封容器中に、450mlの沸騰水を注ぎ、5分間かけて復元し、これに濃縮スープを入れて麺をそれぞれ調製した。これらの麺について、調製時および喫食時の麺のほぐれおよび復元性を実施例1の場合と同様に評価した。その結果(10人の平均値)を下記表4に示す。
【0030】
【表4】