【文献】
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【文献】
Inorg. Chem.,1997年,V36,P5962-5965
【文献】
J. Chem. Soc. (A),1968年,P2216-2223
【文献】
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【文献】
ANG H,CYCLIC PHOSPHINES AND ARSINES,AUSTRALIAN JOURNAL OF CHEMISTRY,1972年,V25,P493-498
【文献】
Journal of the Indian Chamical Society,1978年,Vol. LV, No. 12,P1251-1370
【文献】
CODELL M,HYDROLYSIS OF HEPTAFLUOROPROPYLPHOSHONOUS DIIODIDE 以下備考,JOURNAL OF CHEMICAL AND ENGINEERING DATA,1963年,V8 N3,P460,AND BISHEPTAFLUOROPROPYLPHOSPHINOUS LODIDE,FORMATION OF BISHEPTAFLUOROPROPYLPHOSPINE
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、均一合成のための遷移金属錯体の調製に適した安定な亜ホスフィン酸を調製することであった。
【0005】
驚くべきことに、亜ホスフィン酸を、リン原子上に2個以上のC原子を有するパーフルオロアルキル基を導入することによって酸形態で安定化させることができることが見出された。既知のビス(トリフルオロメチル)亜ホスフィン酸(CF
3)
2POHを単離することができるが、それは、低い安定性を有し、空気中で自然発火性であり、その錯体合成は、この酸の実際の適用を妨げる。低い安定性は、おそらく起こり得るジフルオロカルベンの脱離、即ちトリフルオロメチル化リン化合物についての文献中、例えばW. Mahler, Inorg. Chem. 2 (1963), 230中で知られているプロセスに起因する。
【0006】
対照的に、ビス(ペンタフルオロフェニル)亜ホスフィン酸は、D.D. Magnelli, G. Tesi, j.U. Lowe, W.E. McQuistion, Inorg. Chem. 1966, 5, 457-461中に誤って記載されているように、固体状態で、しかしまた専らホスフィン酸化物形態(C
6F
5)
2P(O)Hでクロロホルム、トルエンまたはジエチルエーテルの溶液中に存在し、亜ホスフィン酸(C
6F
5)
2POHの形態で存在しない。
【0007】
既知のビス(トリフルオロメチル)亜ホスフィン酸とは対照的に、式Iで表される亜ホスフィン酸を、以下で説明するように、工業的に入手可能な材料から出発して合成することができる。さらに、驚くべきことに、本発明の亜ホスフィン酸の塩が優れた特性を有し、特にイオン液体として用いることができることが見出された。
【0008】
式Iで表されるチオ亜ホスフィン酸を、以下に説明するように、亜ホスフィン酸塩化物から調製することができる。
イオン液体または液体塩は、有機陽イオンおよび一般的に無機または有機陰イオンからなるイオン種である。それらは、いかなる中性分子をも含まず、通常373K未満の融点を有する。
【0009】
イオン液体の特性、例えば融点、熱的および電気化学的安定性、粘性は、陰イオンの性質によって強く影響される。対照的に、極性および親水性または親油性を、陽イオン/陰イオン対の好適な選択によって変化させることができる。
【0010】
したがって、本発明は、式I
【化1】
で表される化合物または式II
【化2】
で表される対応する塩であって、
式中、
R
1およびR
2は、各々、互いに独立して2〜12個のC原子を有する直鎖状または分枝状パーフルオロアルキル基を表し、
Aは、OまたはSを表し、
Xは、nが整数1を表す場合には、H、1〜18個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基、3〜7個のC原子を有するシクロアルキル、2〜12個のC原子を有するアルケニル、2〜12個のC原子を有するアルキニル、アリール、アルキル−アリール、Si(R
0)
3またはSn(R
0)
3を表し、
Xは、nが整数0を表す場合には、H、ハロゲン、N(R
0)
2を表し、
Y
+は、nが整数1を表す場合には、アンモニウム、ホスホニウム、トリチリウム、グアニジニウム、少なくとも1個の窒素またはリン原子を含む複素環式陽イオン、Ag
+、Li
+、Na
+、K
+、Rb
+またはCs
+を表し、
R
0は、1〜8個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基を表す、
前記化合物または塩に関する。
【0011】
R
1およびR
2は、異なっていても同一であってもよい。R
1およびR
2は、特に好ましくは同一である。
Aは、好ましくはOを表す。
【0012】
2〜12個のC原子を有する直鎖状または分枝状パーフルオロアルキル基は、式C
mF
2m+1に合致し、式中m=2、3、4、5、6、7、8、9、10、11または12である。R
1およびR
2は、好ましくは、各々、互いに独立してペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピルまたは直鎖状もしくは分枝状ノナフルオロブチルもしくはパーフルオロヘキシルを表す。R
1およびR
2は、極めて特に好ましくはペンタフルオロエチルまたは直鎖状ノナフルオロブチルを表す。
【0013】
1〜4個、1〜6個、1〜8個、1〜12個、1〜18個または1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基は、式C
pH
2p+1に合致し、式中p=1、2、3もしくは4、または1、2、3、4、5もしくは6、または1、2、3、4、5、6、7もしくは8、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11もしくは12、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17もしくは18、または1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20であり、例えばメチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、i−ブチルまたはtert−ブチル、さらにまたペンチル、1−、2−もしくは3−メチルブチル、1,1−、1,2−もしくは2,2−ジメチルプロピル、1−エチルプロピルまたはヘキシル、さらにまたヘプチル、オクチル、さらにまたノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ヘプタデシルまたはオクタデシル、さらにまたノナデシルまたはエイコシルである。
【0014】
好ましくは2〜10個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルケニルは、例えばアリル、2−もしくは3−ブテニル、イソブテニル、sec−ブテニル、さらに4−ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル、オクテニルまたはデセニルである。
好ましくは3〜10個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキニルは、例えばプロパルギル、2−もしくは3−ブチニル、さらに4−ペンチニル、ヘキシニル、オクチニルまたはデシニルである。
【0015】
3〜7個のC原子を有するシクロアルキルは、3〜7個のC原子を有する非置換の飽和の、または部分的に不飽和のシクロアルキル基、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロヘキセニルまたはシクロヘプテニルを示し、その各々は、C
1〜C
6アルキル基によって置換されていてもよい。
【0016】
アリールは、例えば置換または非置換フェニル、ナフチルまたはアントリルを表す。アリールは、特に好ましくは非置換または置換フェニルを表す。
【0017】
置換フェニルは、C
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、NO
2、CN、F、Cl、Br、I、OH、フッ素化されていない、部分的にフッ素化された、またはパーフルオロ化されたC
1〜C
6アルコキシ、SCF
3、SO
2CF
3、COOH、C(O)OR’’、C(O)X’、C(O)NR’’
2、C(O)H、C(O)R’’、SO
2X’、SO
2NR’’
2またはSO
3Hによって置換されているフェニルを示し、ここで、X’は、F、ClまたはBrを示し、R’’は、定義したように、フッ素化されていない、部分的にフッ素化された、またはパーフルオロ化されたC
1〜C
6アルキルまたはC
3〜C
7シクロアルキル、例えばo−、m−またはp−メチルフェニル、o−、m−またはp−エチルフェニル、o−、m−またはp−プロピルフェニル、o−、m−またはp−イソプロピルフェニル、o−、m−またはp−tert−ブチルフェニル、o−、m−またはp−ニトロフェニル、o−、m−またはp−ヒドロキシフェニル、o−、m−またはp−メトキシフェニル、o−、m−またはp−エトキシフェニル、o−、m−、p−(トリフルオロメチル)フェニル、o−、m−、p−(トリフルオロメトキシ)フェニル、o−、m−、p−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニル、o−、m−またはp−フルオロフェニル、o−、m−またはp−クロロフェニル、o−、m−またはp−ブロモフェニル、o−、m−またはp−ヨードフェニル、さらに好ましくは2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジメチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジヒドロキシフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジフルオロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジクロロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジブロモフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジメトキシフェニル、5−フルオロ−2−メチルフェニル、3,4,5−トリメトキシフェニルまたは2,4,5−トリメチルフェニルを示す。アリールは、極めて特に好ましくは非置換フェニルである。
【0018】
フッ素化されていないC
1〜C
6アルコキシは、式OC
pH
2p+1で表されるアルコキシ基、式中p=1、2、3、4、5または6であり、例えばメトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシまたはヘキソキシに相当し、ここでアルコキシ基のアルキル基は、直鎖状または分枝状であり得る。パーフルオロ化されたアルコキシ基の場合において、前述の式のすべてのH原子は、Fによって相応に置き換えられている。Fによって部分的に置き換えられているアルコキシ基の場合においては、数個のみのHが、Fによって置き換えられている。
【0019】
アルキルアリールは、例えばベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、フェニルブチル、フェニルペンチルまたはフェニルヘキシル、特に好ましくはベンジルを示す。
R
0は、1〜8個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、s−ブチル、tert−ブチル、ヘキシルまたはオクチル、特に好ましくはメチルまたはブチルを表す。
ハロゲンは、Cl、BrまたはI、好ましくはClまたはBrを示す。
【0020】
式Iにおいて、Xは、n=1である場合には好ましくはHを表し、即ちA=Oである場合にはビス(パーフルオロアルキル)亜ホスフィン酸、またはA=Sである場合にはビス(パーフルオロアルキル)チオ亜ホスフィン酸を表す。
この亜ホスフィン酸の誘導体は、好ましくは、n=1である場合には、式Iで表され、式中Xが好ましくは1〜4個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基、フェニル、ベンジル、トリメチルシリルまたはトリブチルスタンニルを表す化合物である。
【0021】
A=Sについて、好ましいのは、式Iで表され、式中XがHを表し、n=1である化合物である。
式Iにおいて、Xは、n=0である場合には好ましくはHまたはハロゲンを表す。これは、式Iで表され、式中A=OまたはSである化合物、特に式Iで表され、式中A=Oである化合物に該当する。
【0022】
式IIにおいて、Y
+は、n=1である場合には金属陽イオン、例えばAg
+、Li
+、Na
+、K
+、Rb
+またはCs
+、あるいはアンモニウム、ホスホニウム、トリチリウム、グアニジニウムまたは少なくとも1個の窒素もしくはリン原子を含む複素環式陽イオンの群からの有機陽イオンのいずれかを表す。
【0023】
金属陽イオンの場合において、Y
+は、好ましくはAg
+、Li
+、Na
+またはK
+、特に好ましくはLi
+を表す。リチウム塩は、電気化学的用途のために、例えば電気化学電池における導電性塩として特に興味深い塩である。
【0024】
n=1である場合にアンモニウム、ホスホニウム、トリチリウム、グアニジニウムまたは少なくとも1個の窒素もしくはリン原子を含む複素環式陽イオンの群からの有機陽イオンを有する式IIで表される化合物を、特にイオン液体として用いる。
【0025】
アンモニウムについて好ましいのは、式(1)
[NR
4]
+ (1)
式中、
Rは、各々の場合において互いに独立して、
H、OR’、NR’
2、ただし式(1)中の最大で1つの置換基Rは、OR’、NR’
2であり、
1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の二重結合を有する直鎖状または分枝状アルケニル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の三重結合を有する直鎖状または分枝状アルキニル、
3〜7個のC原子を有し、1〜6個のC原子を有するアルキル基によって置換されていてもよい、飽和の、または部分的に不飽和のシクロアルキル、
1〜6個のC原子を有するアルキル基によって置換されていてもよいフェニルであって、
【0026】
ここで、1つまたは2つ以上のRが、ハロゲン、特に−Fおよび/または−Clによって部分的にもしくは完全に置換されていてもよく、または−OH、−OR’、−CN、−C(O)OH、−C(O)NR’
2、−SO
2NR’
2、−C(O)X’、−SO
2OH、−SO
2X’、−NO
2によって部分的に置換されていてもよく、またここで、R中のα位ではない1つまたは2つの隣接していない炭素原子は、−O−、−S−、−S(O)−、−SO
2−、−SO
2O−、−C(O)−、−C(O)O−、−N
+R’
2−、−P(O)R’O−、−C(O)NR’−、−SO
2NR’−、−OP(O)R’O−、−P(O)(NR’
2)NR’−、−PR’
2=N−または−P(O)R’−の群から選択される原子および/または原子団によって置き換えられていてもよく、ここでR’は、H、フッ素化されていない、部分的にフッ素化された、またはパーフルオロ化されたC
1〜C
6アルキル、1〜6個のC原子を有するアルキル
基によって置換されていてもよい、C
3〜C
7シクロアルキル
、非置換または置換フェニルであり得、X’は、ハロゲンであり得る、
で表されるアンモニウム陽イオンである。
【0027】
ホスホニウムについて好ましいのは、式(2)
[PR
34]
+ (2)
式中、
R
3は、各々の場合において互いに独立して、
H、OR’、NR’
2、
1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の二重結合を有する直鎖状または分枝状アルケニル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の三重結合を有する直鎖状または分枝状アルキニル、
3〜7個のC原子を有し、1〜6個のC原子を有するアルキル基によって置換されていてもよい、飽和の、または部分的に不飽和のシクロアルキル、
1〜6個のC原子を有するアルキル基によって置換されていてもよいフェニルであって、
【0028】
ここで、1つまたは2つ以上のR
3が、ハロゲン、特に−Fおよび/または−Clによって部分的にもしくは完全に置換されていてもよく、または−OH、−OR’、−CN、−C(O)OH、−C(O)NR’
2、−SO
2NR’
2、−C(O)X’、−SO
2OH、−SO
2X’、−NO
2によって部分的に置換されていてもよく、またここで、R
3中のα位ではない1つまたは2つの隣接していない炭素原子は、−O−、−S−、−S(O)−、−SO
2−、−SO
2O−、−C(O)−、−C(O)O−、−N
+R’
2−、−P(O)R’O−、−C(O)NR’−、−SO
2NR’−、−OP(O)R’O−、−P(O)(NR’
2)NR’−、−PR’
2=N−または−P(O)R’−の群から選択される原子および/または原子団によって置き換えられていてもよく、ここでR’は、H、フッ素化されていない、部分的にフッ素化された、またはパーフルオロ化されたC
1〜C
6アルキル、1〜6個のC原子を有するアルキル
基によって置換されていてもよい、C
3〜C
7シクロアルキル
、非置換または置換フェニルであり得、X’は、ハロゲンであり得る、
で表されるホスホニウム陽イオンである。
【0029】
グアニジニウムについて好ましいのは、式(3)
[C(NR
8R
9)(NR
10R
11)(NR
12R
13)]
+ (3)
式中、
R
8〜R
13は、各々、互いに独立して、
H、−CN、NR’
2、−OR’、
1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の二重結合を有する直鎖状または分枝状アルケニル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の三重結合を有する直鎖状または分枝状アルキニル、
3〜7個のC原子を有し、1〜6個のC原子を有するアルキル基によって置換されていてもよい、飽和の、または部分的に不飽和のシクロアルキル、
1〜6個のC原子を有するアルキル基によって置換されていてもよいフェニルであって、
【0030】
ここで、置換基R
8〜R
13の1つまたは2つ以上が、ハロゲン、特に−Fおよび/または−Clによって部分的にもしくは完全に置換されていてもよく、または−OH、−OR’、−CN、−C(O)OH、−C(O)NR’
2、−SO
2NR’
2、−C(O)X’、−SO
2OH、−SO
2X’、−NO
2によって部分的に置換されていてもよく、またここで、R
8〜R
13中のα位ではない1つまたは2つの隣接していない炭素原子は、−O−、−S−、−S(O)−、−SO
2−、−SO
2O−、−C(O)−、−C(O)O−、−N
+R’
2−、−P(O)R’O−、−C(O)NR’−、−SO
2NR’−、−OP(O)R’O−、−P(O)(NR’
2)NR’−、−PR’
2=N−または−P(O)R’−の群から選択される原子および/または原子団によって置き換えられていてもよく、ここでR’は、H、フッ素化されていない、部分的にフッ素化された、またはパーフルオロ化されたC
1〜C
6アルキル、1〜6個のC原子を有するアルキル
基によって置換されていてもよい、C
3〜C
7シクロアルキル
、非置換または置換フェニルであり、X’は、ハロゲンである、
で表されるグアニジニウム陽イオンである。
【0031】
少なくとも1個の窒素原子を含む複素環式陽イオンについて好ましいのは、式(4)
[HetN]
+ (4)
式中、
HetN
+は、以下の群
【化3】
【0032】
【化4】
から選択される複素環式陽イオンを示し、
【0033】
式中、置換基
R1’〜R4’は、各々、互いに独立して、
H、−CN、−OR’、−NR’
2、−P(O)R’
2、−P(O)(OR’)
2、−P(O)(NR’
2)
2、−C(O)R’、−C(O)OR’、
1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の二重結合を有する直鎖状または分枝状アルケニル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の三重結合を有する直鎖状または分枝状アルキニル、
3〜7個のC原子を有し、1〜6個のC原子を有するアルキル基によって置換されていてもよい、飽和の、または部分的に不飽和のシクロアルキル、
1〜6個のC原子を有するアルキル基、飽和の、部分的に、または完全に不飽和のヘテロアリール、ヘテロアリール−C
1〜C
6アルキルまたはアリール−C
1〜C
6アルキルによって置換されていてもよいフェニルを示し、
【0034】
ここで、置換基R
1’、R
2’、R
3’および/またはR
4’はまた、一緒に環系を形成してもよく、
ここで、1つまたは2つ以上の置換基R
1’〜R
4’は、ハロゲン、特に−Fおよび/または−Cl、または−OH、−OR’、−CN、−C(O)OH、−C(O)NR’
2、−SO
2NR’
2、−C(O)X’、−SO
2OH、−SO
2X’、−NO
2によって部分的に、または完全に置換されていてもよいが、ここでR
1’およびR
4’は、ハロゲンによって同時に完全に置換されていてはならず、ここで、置換基R
1’〜R
4’において、ヘテロ原子に結合していない1個または2個の隣接していない炭素原子は、−O−、−S−、−S(O)−、−SO
2−、−SO
2O−、−C(O)−、−C(O)O−、−N
+R’
2−、−P(O)R’O−、−C(O)NR’−、−SO
2NR’−、−OP(O)R’O−、−P(O)(NR’
2)NR’−、−PR’
2=N−または−P(O)R’−の群から選択される原子および/または原子団によって置き換えられていてもよく、ここで、R’=H、フッ素化されていない、部分的にフッ素化された、またはパーフルオロ化されたC
1〜C
6アルキル、
1〜6個のC原子を有するアルキル基によって置換されていてもよい、C
3〜C
7シクロアルキ
ル、非置換または置換フェニル
であり、X’=ハロゲンである、
で表される複素環式陽イオンである。
【0035】
好ましいのは、少なくとも1個のリン原子を含む複素環式陽イオンについて、式(5)
[HetP]
+ (5)
式中、
HetP
+は、以下の群
【化5】
から選択される複素環式陽イオンを示し、
【0036】
式中、
X
1は、Pを表し、
Y
1は、NまたはPを表し、
R
1’’、R
2’’およびR
3’’は、各々、互いに独立して、H、
1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の二重結合を有する直鎖状または分枝状アルケニル、
2〜20個のC原子および1つまたは2つ以上の三重結合を有する直鎖状または分枝状アルキニル、
3〜7個のC原子を有し、1〜6個のC原子を有するアルキル基によって置換されていてもよい、飽和の、または部分的に不飽和のシクロアルキル、
1〜6個のC原子を有するアルキル基、飽和の、部分的に、または完全に不飽和のヘテロアリール、ヘテロアリール−C
1〜C
6アルキルまたはアリール−C
1〜C
6アルキルによって置換されていてもよいフェニル
の意味を有し、および
ここで、1つまたは2つ以上の置換基R
1’’〜R
3’’は、ハロゲン、特に−Fおよび/または−Clによって部分的に、または完全に置換されていてもよい、
で表される複素環式陽イオンである。
【0037】
本発明の意味における完全に不飽和の置換基はまた、芳香族置換基を意味するものと解釈される。
【0038】
式(1)で表される化合物の置換基Rは、好ましくはH、1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基、特にC
1〜C
8アルキル基、C
1〜C
6アルキル基によって置換されていてもよい飽和の、もしくは部分的に不飽和のC
3〜C
7シクロアルキル基、または、C
1〜C
6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル、特に非置換フェニルである。Rは、極めて特に好ましくは1〜4個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基を表す。
【0039】
式(1)中の置換基Rは、同一であっても異なっていてもよい。特に好ましいのは、3つの置換基Rが同一であり、1つの置換基Rが異なる化合物、または4つすべての置換基が同一である化合物である。極めて特に好ましくは、3つの置換基Rが同一であり、1つの置換基Rが異なっている。
【0040】
式(2)で表される化合物の置換基R
3は、好ましくはH、1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基、特にC
1〜C
8アルキル基、C
1〜C
6アルキル基によって置換されていてもよい飽和の、もしくは部分的に不飽和のC
3〜C
7シクロアルキル基、特にシクロヘキシル、または、C
1〜C
6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル、特に非置換フェニルである。R
3は、極めて特に好ましくは1〜4個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基を表す。
【0041】
式(1)中の置換基R
3は、同一であっても異なっていてもよい。特に好ましいのは、3つの置換基R
3が同一であり、1つの置換基R
3が異なる化合物、または4つすべての置換基が同一である化合物である。極めて特に好ましくは、3つの置換基R
3が同一であり、1つの置換基R
3が異なっている。
【0042】
置換基RおよびR
3は、特に好ましくは、各々、互いに独立してメチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、i−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシルまたはテトラデシルである。
【0043】
式(3)で表される化合物の置換基R
8〜R
13は、好ましくは、各々、互いに独立してH、1〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基、特にC
1〜C
4アルキル基、およびC
1〜C
6アルキル基によって置換されていてもよい飽和の、または不飽和の、即ちまた芳香族のC
3〜C
7シクロアルキル基、特にフェニルである。
【0044】
式(3)で表されるグアニジニウム陽イオンの4つまでの置換基はまた、単環式、二環式または多環式陽イオンが形成するように対になって結合していてもよい。
【0045】
一般性を制限することなく、かかるグアニジニウム陽イオンの例は:
【化6】
であり、ここで置換基R
8〜R
10およびR
13は、上記で示した意味または特に好ましい意味を有することができる。
【0046】
所望により、上記で示したグアニジニウム陽イオンの炭素環または複素環はまた、C
1〜C
6アルキル、C
1〜C
6アルケニル、NO
2、CN、F、Cl、Br、I、OH、C
1〜C
6アルコキシ、SCF
3、SO
2CF
3、C(O)OH、C(O)OR’、SO
2NR’
2、SO
2X’またはSO
3Hによって置換されていてもよく、ここでXおよびR’は、上記で示した意味、置換もしくは非置換フェニルまたは非置換もしくは置換複素環を有する。
【0047】
上記で記載したグアニジニウム陽イオンについて、式で表される化合物中の置換基R
8およびR
9、R
10およびR
11ならびにR
12およびR
13は、同一であっても異なっていてもよい。R
8〜R
13は、特に好ましくは、各々、互いに独立してメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、i−ブチル、フェニルまたはシクロヘキシル、極めて特に好ましくはメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルまたはn−ブチルである。
【0048】
本発明に従って、式(4)で表される化合物の好適な置換基R
1’〜R
4’は、H以外に、好ましくは以下のものである:C
1〜C
20、特にC
1〜C
12アルキル基、およびC
1〜C
6アルキル基によって置換されていてもよい飽和の、もしくは部分的に不飽和のC
3〜C
7シクロアルキル基、好ましくはC
1〜C
6アルキル基によって置換されていてもよいシクロヘキシルまたはフェニル。
【0049】
置換基R
1’およびR
4’は、各々、互いに独立して、特に好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、i−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチル、デシル、シクロヘキシル、フェニルまたはベンジルである。それらは、極めて特に好ましくはメチル、エチル、n−ブチルまたはn−ヘキシルである。ピロリジニウム、ピペリジニウムまたはインドリニウム化合物において、2つの置換基R
1’およびR
4’は、好ましくは異なっている。
【0050】
置換基R
2’またはR
3’は、各々の場合において互いに独立して、特にH、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチル、i−ブチル、tert−ブチル、シクロヘキシル、フェニルまたはベンジルである。R
2’は、特に好ましくはH、メチル、エチル、イソプロピル、プロピル、ブチルまたはi−ブチルである。R
2’およびR
3’は、極めて特に好ましくはHである。
【0051】
本発明に従って、式(5)で表される化合物の好適な置換基R
1’’〜R
3’’は、H以外に、好ましくは以下のものである:C
1〜C
20、特にC
1〜C
12アルキル基、およびC
1〜C
6アルキル基によって置換されていてもよい飽和の、もしくは部分的に不飽和のC
3〜C
7シクロアルキル基、またはC
1〜C
6アルキル基によって置換されていてもよいフェニル。
【0052】
R
1’’は、特に好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチルまたはi−ブチルである。
R
2’’は、特に好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチルまたはi−ブチルである。
R
3’’は、特に好ましくはメチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、n−ブチルまたはi−ブチルである。
【0053】
複数の二重結合がまた存在してもよい2〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルケニルは、例えばエテニル、アリル、2−または3−ブテニル、イソブテニル、sec−ブテニル、さらに4−ペンテニル、イソペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、−C
9H
17、−C
10H
19〜−C
20H
39、好ましくはアリル、2−または3−ブテニル、イソブテニル、sec−ブテニル、さらに好ましくは4−ペンテニル、イソペンテニルまたはヘキセニルである。
【0054】
複数の三重結合がまた存在してもよい2〜20個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキニルは、例えばエチニル、1−または2−プロピニル、2−または3−ブチニル、さらに4−ペンチニル、3−ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、−C
9H
15、−C
10H
17〜−C
20H
37、好ましくはエチニル、1−または2−プロピニル、2−または3−ブチニル、4−ペンチニル、3−ペンチニルあるいはヘキシニルである。
【0055】
アリール−C
1〜C
6アルキルは、例えばベンジル、フェニルエチル、フェニルプロピル、フェニルブチル、フェニルペンチルまたはフェニルヘキシルを示し、ここでフェニル環およびまたアルキレン鎖は共に、上記のように、ハロゲン、特に−Fおよび/または−Clによって部分的に、もしくは完全に、または−OH、−OR’、−CN、−C(O)OH、−C(O)NR’
2、−SO
2NR’
2、−C(O)X、−SO
2OH、−SO
2X、−NO
2によって部分的に置換されていてもよい。R’およびXは、上記で示した意味を有する。
【0056】
したがって、3〜7個のC原子を有する非置換の飽和の、または部分的に不飽和のシクロアルキル基は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロペンテニル、シクロペンタ−1,3−ジエニル、シクロヘキセニル、シクロヘキサ−1,3−ジエニル、シクロヘキサ−1,4−ジエニル、フェニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタ−1,3−ジエニル、シクロヘプタ−1,4−ジエニルまたはシクロヘプタ−1,5−ジエニルであり、その各々は、C
1〜C
6アルキル基によって置換されていてもよい。
【0057】
置換基R、R
3、R
8〜R
13またはR
1’〜R
4’において、ヘテロ原子に対するα位において結合していない1個または2個の隣接していない炭素原子はまた、−O−、−S−、−S(O)−、−SO
2−、−SO
2O−、−C(O)−、−C(O)O−、−N
+R’
2−、−P(O)R’O−、−C(O)NR’−、−SO
2NR’−、−OP(O)R’O−、−P(O)(NR’
2)NR’−、−PR’
2=N−または−P(O)R’−の群から選択される原子および/または原子団によって置き換えられていてもよく、ここでR’=フッ素化されていない、部分的にフッ素化された、またはパーフルオロ化されたC
1〜C
6アルキル、C
1〜C
6アルキル基によって置換されていてもよいC
3〜C
7シクロアルキル、非置換または置換フェニルである。
【0058】
一般性を制限せずに、このようにして修飾された置換基R、R
3、R
8〜R
13およびR
1’〜R
4’の例は、以下のものである:
−OCH
3、−OCH(CH
3)
2、−CH
2OCH
3、−CH
2−CH
2−O−CH
3、−C
2H
4OCH(CH
3)
2、−C
2H
4SC
2H
5、−C
2H
4SCH(CH
3)
2、−S(O)CH
3、−SO
2CH
3、−SO
2C
6H
5、−SO
2C
3H
7、−SO
2CH(CH
3)
2、−SO
2CH
2CF
3、−CH
2SO
2CH
3、−O−C
4H
8−O−C
4H
9、−CF
3、−C
2F
5、−C
3F
7、−C
4F
9、−C(CF
3)
3、−CF
2SO
2CF
3、−C
2F
4N(C
2F
5)C
2F
5、−CHF
2、−CH
2CF
3、−C
2F
2H
3、−C
3FH
6、−CH
2C
3F
7、−C(CFH
2)
3、−CH
2C(O)OH、−CH
2C
6H
5、−C(O)C
6H
5またはP(O)(C
2H
5)
2。
【0059】
R’において、C
3〜C
7シクロアルキルは、例えば、好ましくはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロヘプチルである。
【0060】
R’において、置換フェニルは、フッ素化されていない、部分的にフッ素化された、またはパーフルオロ化されたC
1〜C
6アルキル、C
2〜C
6アルケニル、NO
2、CN、F、Cl、Br、I、OH、フッ素化されていない、部分的にフッ素化された、またはパーフルオロ化されたC
1〜C
6アルコキシ、SCF
3、SO
2CF
3、COOH、SO
2X’、SO
2NR’’
2またはSO
3Hによって置換されたフェニルを示し、ここでX’は、F、ClまたはBrを示し、R’’は、R’について定義したように、フッ素化されていない、部分的にフッ素化された、またはパーフルオロ化されたC
1〜C
6アルキルまたはC
3〜C
7シクロアルキル、例えばo−、m−またはp−メチルフェニル、o−、m−またはp−エチルフェニル、o−、m−またはp−プロピルフェニル、o−、m−またはp−イソプロピルフェニル、o−、m−またはp−tert−ブチルフェニル、o−、m−またはp−ニトロフェニル、o−、m−またはp−ヒドロキシフェニル、o−、m−またはp−メトキシフェニル、o−、m−またはp−エトキシフェニル、o−、m−、p−(トリフルオロメチル)フェニル、o−、m−、p−(トリフルオロメトキシ)フェニル、o−、m−、p−(トリフルオロメチルスルホニル)フェニル、o−、m−またはp−フルオロフェニル、o−、m−またはp−クロロフェニル、o−、m−またはp−ブロモフェニル、o−、m−またはp−ヨードフェニル、さらに好ましくは2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジメチルフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジヒドロキシフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジフルオロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジクロロフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジブロモフェニル、2,3−、2,4−、2,5−、2,6−、3,4−もしくは3,5−ジメトキシフェニル、5−フルオロ−2−メチルフェニル、3,4,5−トリメトキシフェニルまたは2,4,5−トリメチルフェニルを示す。
【0061】
R
1’〜R
4’またはR
1’’〜R
3’’において、ヘテロアリールは、5〜13個の環原子を有する飽和または不飽和の単環式または二環式の複素環式ラジカルを意味するものと解釈され、ここで1個、2個もしくは3個のNおよび/または1個もしくは2個のSもしくはO原子が存在してもよく、複素環式ラジカルは、C
1〜C
6アルキル、C
1〜C
6アルケニル、NO
2、CN、F、Cl、Br、I、OH、C
1〜C
6アルコキシ、SCF
3、SO
2CF
3、COOH、SO
2X’、SO
2NR’’
2またはSO
3Hによって単置換または多置換されていてもよく、ここでX’およびR’’は、上記に示した意味を有する。
【0062】
複素環式ラジカルは、好ましくは置換または非置換2−または3−フリル、2−または3−チエニル、1−、2−または3−ピロリル、1−、2−、4−または5−イミダゾリル、3−、4−または5−ピラゾリル、2−、4−または5−オキサゾリル、3−、4−または5−イソキサゾリル、2−、4−または5−チアゾリル、3−、4−または5−イソチアゾリル、2−、3−または4−ピリジル、2−、4−、5−または6−ピリミジニル、
【0063】
さらに好ましくは1,2,3−トリアゾール−1−、−4−もしくは−5−イル、1,2,4−トリアゾール−1−、−4−もしくは−5−イル、1−もしくは5−テトラゾリル、1,2,3−オキサジアゾール−4−もしくは−5−イル、1,2,4−オキサジアゾール−3−もしくは−5−イル、1,3,4−チアジアゾール−2−もしくは−5−イル、1,2,4−チアジアゾール−3−もしくは−5−イル、1,2,3−チアジアゾール−4−もしくは−5−イル、2−、3−、4−、5−もしくは6−2H−チオピラニル、2−、3−もしくは4−4H−チオピラニル、3−もしくは4−ピリダジニル、ピラジニル、2−、3−、4−、5−、6−もしくは7−ベンゾフリル、2−、3−、4−、5−、6−もしくは7−ベンゾチエニル、1−、2−、3−、4−、5−、6−もしくは7−1H−インドリル、1−、2−、4−もしくは5−ベンズイミダゾリル、1−、3−、4−、5−、6−もしくは7−ベンゾピラゾリル、2−、4−、5−、6−もしくは7−ベンゾキサゾリル、3−、4−、5−、6−もしくは7−ベンズイソキサゾリル、2−、4−、5−、6−もしくは7−ベンゾチアゾリル、2−、4−、5−、6−もしくは7−ベンズイソチアゾリル、4−、5−、6−もしくは7−ベンズ−2,1,3−オキサジアゾリル、1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−もしくは8−キノリニル、1−、3−、4−、5−、6−、7−もしくは8−イソキノリニル、1−、2−、3−、4−もしくは9−カルバゾリル、1−、2−、3−、4−、5−、6−、7−、8−もしくは9−アクリジニル、3−、4−、5−、6−、7−もしくは8−シンノリニル、2−、4−、5−、6−、7−もしくは8−キナゾリニルまたは1−、2−もしくは3−ピロリジニルである。
【0064】
ヘテロアリール−C
1〜C
6アルキルは、アリール−C
1〜C
6アルキルと同様に、例えばピリジニルメチル、ピリジニルエチル、ピリジニルプロピル、ピリジニルブチル、ピリジニルペンチル、ピリジニルヘキシルを意味するものと解釈され、ここで、上記の複素環は、さらにこのようにしてアルキレン鎖に結合していてもよい。
【0065】
HetN
+は、好ましくは
【化7】
であり、ここで、置換基R
1’〜R
4’は、各々、互いに独立して上記の意味を有する。
【0066】
HetN
+は、特に好ましくは上記で定義したようにイミダゾリウム、ピロリジニウム、モルホリニウムまたはピリジニウムであり、ここで置換基R
1’〜R
4’は、各々、互いに独立して上記に記載した意味を有する。HetN
+は、極めて特に好ましくはイミダゾリウムまたはピロリジニウムであり、ここで置換基R
1’〜R
4’は、各々、互いに独立して上記に記載した意味を有する。
【0067】
HetP
+は、特に好ましくは
【化8】
である。
【0068】
好ましい化合物は、以下のものである。
1−メチル−3−メチルイミダゾリウム[(C
2F
5)
2PO]
−、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム[(C
2F
5)
2PO]
−、
1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム[(C
2F
5)
2PO]
−、
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム[(C
2F
5)
2PO]
−、
1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム[(C
2F
5)
2PO]
−、
1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム[(C
2F
5)
2PO]
−、
【0069】
1−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチルイミダゾリウム[(C
2F
5)
2PO]
−、
1−メチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム[(C
2F
5)
2PO]
−、
1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム[(C
2F
5)
2PO]
−、
1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウム[(C
2F
5)
2PO]
−、
1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム[(C
2F
5)
2PO]
−、
N−ブチルピリジニウム[(C
2F
5)
2PO]
−、
N−エチル−3−メチルピリジニウム[(C
2F
5)
2PO]
−、
【0070】
N−ブチル−3−メチルピリジニウム[(C
2F
5)
2PO]
−、
N−(3−ヒドロキシプロピル)ピリジニウム[(C
2F
5)
2PO]
−、
N−ヘキシル−4−(ジメチルアミノ)ピリジニウム[(C
2F
5)
2PO]
−、
N−エチル−3−ヒドロキシメチルピリジニウム[(C
2F
5)
2PO]
−、
N,N−ジメチルピロリジニウム[(C
2F
5)
2PO]
−、
N−ブチル−N−メチルピロリジニウム[(C
2F
5)
2PO]
−、
N−(2−メトキシエチル)−N−メチルピロリジニウム[(C
2F
5)
2PO]
−、
テトラメチルアンモニウム[(C
2F
5)
2PO]
−、
【0071】
テトラブチルアンモニウム[(C
2F
5)
2PO]
−、
エチルジメチルプロピルアンモニウム[(C
2F
5)
2PO]
−、
トリヘキシル(テトラデシル)ホスホニウム[(C
2F
5)
2PO]
−、
N−(メトキシエチル)−N−メチルモルホリニウム[(C
2F
5)
2PO]
−、
1−メチル−3−メチルイミダゾリウム[(C
2F
5)
2PS]
−、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム[(C
2F
5)
2PS]
−、
1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム[(C
2F
5)
2PS]
−、
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム[(C
2F
5)
2PS]
−、
【0072】
1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム[(C
2F
5)
2PS]
−、
1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム[(C
2F
5)
2PS]
−、
1−メチル−3−メチルイミダゾリウム[(C
4F
9)
2PO]
−、
1−エチル−3−メチルイミダゾリウム[(C
4F
9)
2PO]
−、
1−プロピル−3−メチルイミダゾリウム[(C
4F
9)
2PO]
−、
1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム[(C
4F
9)
2PO]
−、
1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウム[(C
4F
9)
2PO]
−、
1−オクチル−3−メチルイミダゾリウム[(C
4F
9)
2PO]
−、
【0073】
1−(2−ヒドロキシエチル)−3−メチルイミダゾリウム[(C
4F
9)
2PO]
−、
1−メチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム[(C
4F
9)
2PO]
−、
1−エチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム[(C
4F
9)
2PO]
−、
1−プロピル−2,3−ジメチルイミダゾリウム[(C
4F
9)
2PO]
−、
1−ブチル−2,3−ジメチルイミダゾリウム[(C
4F
9)
2PO]
−、
N−ブチルピリジニウム[(C
4F
9)
2PO]
−、
N−エチル−3−メチルピリジニウム[(C
4F
9)
2PO]
−、
N−ブチル−3−メチルピリジニウム[(C
4F
9)
2PO]
−、
【0074】
N−(3−ヒドロキシプロピル)ピリジニウム[(C
4F
9)
2PO]
−、
N−ヘキシル−4−(ジメチルアミノ)ピリジニウム[(C
4F
9)
2PO]
−、
N−エチル−3−ヒドロキシメチルピリジニウム[(C
4F
9)
2PO]
−、
N,N−ジメチルピロリジニウム[(C
4F
9)
2PO]
−、
N−ブチル−N−メチルピロリジニウム[(C
4F
9)
2PO]
−、
N−(2−メトキシエチル)−N−メチルピロリジニウム[(C
4F
9)
2PO]
−。
【0075】
特徴の特定の組み合わせをまた、特許請求の範囲に開示する。
本発明は同様に、式Iで表される化合物および式IIで表される塩の調製方法であって、置換基が、請求項1に示した意味または好ましいと記載した意味を有する前記方法に関する。
【0076】
したがって、本発明はまた、式Iで表され、式中A=O、X=Hおよびn=1である化合物ならびに式IIで表され、式中Y
+=Ag
+、Li
+、Na
+、K
+、Rb
+、Cs
+または[NR
4]
+およびn=1である塩の調製方法であって、式R
1R
2R
FPで表されるトリス(パーフルオロアルキル)ホスフィンを、無機または有機塩基と反応させ、式IIで表される得られた塩を、ブレンステッド酸と反応させて、式Iで表され、式中R
1、R
2が請求項1に示した意味または上記の意味の1つを有し、R
Fが1〜12個のC原子を有する直鎖状もしくは分枝状パーフルオロアルキル基を表すか、またはR
1もしくはR
2と同様の好ましい意味を有するビス(パーフルオロアルキル)亜ホスフィン酸を得ることを特徴とする、前記方法に関する。
【0077】
式R
1R
2R
FPで表されるトリス(パーフルオロアルキル)ホスフィンに、好ましくはアルカリ加水分解を施す。
アルカリ加水分解を、塩基、特にNaOH、KOHまたはNH
4OHの水溶液の存在下で、有機溶媒、好ましくはジエチルエーテル中で行い、続いてブレンステッド酸、好ましくはHBrとの反応を行う。当該反応を、好ましくは室温にて行う。
【0078】
式R
1R
2R
FPで表されるトリス(パーフルオロアルキル)ホスフィンを、例えばWO 03/087113, Merck Patent GmbHに記載されているように、例えばトリス(パーフルオロアルキル)ジフルオロホスホラン[(R
1R
2R
F)PF
2]の還元によって合成することができる。
【0079】
本発明はさらにまた、上記のように、式Iで表され、式中A=O、X=Hおよびn=1である化合物ならびに式IIで表される塩の調製方法であって、式R
1R
2P(=O)Clで表される塩化ビス(パーフルオロアルキル)ホスフィニルを、水素化トリアルキルスズと、およびその後ブレンステッド酸と反応させ、得られたビス(パーフルオロアルキル)亜ホスフィン酸R
1R
2POHを、Me
2O、MeCN、MeOC(O)R’’’もしくはMe
2CO
3または塩KtZから選択される塩基と反応させて、式IIで表され、式中MeがAg、Li、Na、K、RbまたはCsから選択され、Ktが上記のようにアンモニウム、ホスホニウム、トリチリウム、グアニジニウムまたは少なくとも1個の窒素もしくはリン原子を含む複素環式陽イオンから選択され、R’’’が、1〜6個のC原子を有するアルキル基またはアリールに相当し、ここでアリールが上記で定義した通りであり、Zが陰イオンに相当する塩を得ることを特徴とする、前記方法に関する。
【0080】
上記の置換基を有する塩化ビス(パーフルオロアルキル)ホスフィニルR
1R
2P(=O)Clの合成は、例えば、対応するホスフィン酸とPCl
5との反応によって可能であり、これは、例えばL.M. Yagupolskii, N.V. Pavlenko, N.V. Ignatiev, G.I. Matuschecheva, V.Ya. Semenii, Zh. Obsh. Khim. (Russ.), 54 (1984), 2, 334-339に記載されている通りである。
好ましいのは、R’’’が1〜6個のC原子を有するアルキル基またはアリールに相当する、HCl、HBrまたはR’’’SO
3Hの群からのブレンステッド酸を用いることであり;特に好ましくは、HBrを用いる。
【0081】
好ましいのは、R’’’が1〜6個のC原子を有するアルキル基またはアリールに相当し、ここでアリールが上記で定義した通りである、水素化トリアルキルスズ(R’’’)
3SnH、例えば水素化トリメチルスズ、水素化トリエチルスズ、水素化トリプロピルスズ、水素化トリブチルスズ、水素化トリヘキシルスズ、水素化トリフェニルスズを用いることである。特に好ましくは、水素化トリブチルスズを用いる。
【0082】
しかし、この反応における水素化トリアルキルスズを、代替的にまた式(R’’’)
2SnH
2で表され、式中R’’’が各々の場合において、互いに独立して1〜6個のC原子を有するアルキル基またはアリールに相当し、ここでアリールが上記で定義した通りである水素化スズによって置き換えることができる。
【0083】
上記の式I
* R
1R
2POHで表される化合物の式IIで表される塩への変換を、ここで、無機陽イオンを有する塩を得るために、好ましくは塩基Me
2O、MeCN、MeOC(O)R’’’またはMe
2CO
3の存在下で行うことができ、ここでMeは、Ag、Li、Na、K、RbまたはCsから選択され、R’’’は、1〜6個のC原子を有するアルキル基またはアリールに相当し、ここでアリールは、上記で定義した通りである。好ましくは、MeをAg、Li、NaまたはKから選択する。
【0084】
当該反応を、例えば、過剰の塩基または酸R
1R
2POHを含有する、好ましくは1当量の塩基を含有する有機溶媒中で行う。
好適な溶媒は、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、トルエンまたは前記溶媒の混合物である。好ましくは、ジエチルエーテルを用いる。
好ましくは、当該反応を室温にて行う。
【0085】
上記の式I
** R
1R
2PSHで表される化合物の式IIで表される塩への変換を、上記に記載したものと同様にして行うことができる。
【0086】
上記のように、式I
* R
1R
2POHで表される化合物を式IIで表される塩に変換して有機陽イオンを含有する塩を得ることを、ここで好ましくは塩KtZの存在下で行うことができ、ここでKtは、上記のようにアンモニウム、ホスホニウム、トリチリウム、グアニジニウムまたは少なくとも1個の窒素もしくはリン原子を含む複素環式陽イオンから選択され、Zは陰イオンに相当する。
【0087】
当該反応を、例えば、過剰の塩または酸R
1R
2POHを含有する、好ましくは等量の試薬を含有する有機溶媒中で行う。
好適な溶媒は、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、クロロホルム、アセトニトリル、テトラヒドロフランまたは前記溶媒の混合物である。ジエチルエーテルまたはアセトニトリルを、好ましくは用いる。
好ましくは、当該反応を室温にて行う。
【0088】
しかし、上記のように、有機陽イオンを含有する式IIで表される塩を、無機陽イオンを含有する式IIで表される塩から調製することもまた、代替的に可能である。
【0089】
したがって、本発明はまた、上記のように式IIで表され、式中n=1であり、Y
+がアンモニウム、ホスホニウム、トリチリウム、グアニジニウムまたは少なくとも1個の窒素もしくはリン原子を含む複素環式陽イオンを表す化合物の調製方法であって、式IIで表され、式中n=1であり、Y
+がAg
+、Li
+、Na
+、K
+、Rb
+またはCs
+を表す塩を、塩KtZと反応させ、ここでKtが、アンモニウム、ホスホニウム、トリチリウム、グアニジニウムまたは少なくとも1個の窒素もしくはリン原子を含む複素環式陽イオンから選択され、Zが陰イオンに相当することを特徴とする、前記方法に関する。
【0090】
当該反応を、例えば有機溶媒中で行う。好適な溶媒は、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、アセトニトリル、ジクロロメタンまたは前記溶媒の混合物である。好ましくは、ジエチルエーテル、アセトニトリルまたはジクロロメタンを用いる。
当該反応を、好ましくは−30℃〜室温にて、特に好ましくは室温にて行う。
【0091】
陰イオンZは、好ましくはCl
−、Br
−、R
0COO
−、CF
3COO
−、[BF
4]
−、[PF
6]
−またはR’’SO
3−から選択され、ここでR
0は、請求項1に示した意味を有し、R’’は、フッ素化されていない、部分的にフッ素化されている、またはパーフルオロ化されている、1〜6個のC原子を有する直鎖状もしくは分枝状アルキル基または3〜7個のC原子を有するシクロアルキル基を示すか、あるいは非置換または置換フェニルを示す。
【0092】
上記のアルキル基、シクロアルキル基および置換フェニルの定義が、該当する。
極めて特に好ましくは、陰イオンCl
−、CH
3C(O)O
−、CF
3SO
3−、[BF
4]
−および[PF
6]
−を用いる。
【0093】
本発明はまた、式Iで表され、式中A=O、X=Clおよびn=0である化合物の調製方法であって、式R
1R
2P(=O)Clで表される塩化ビス(パーフルオロアルキル)ホスフィニルを水素化トリアルキルスズと、およびその後アリールテトラクロロホスホランと反応させ、ここでR
1およびR
2が上記の意味を有することを特徴とする、前記方法に関する。
【0094】
上記の置換基を含有する塩化ビス(パーフルオロアルキル)ホスフィニルR
1R
2P(=O)Clの合成を、上記で記載した。
好ましいのは、R’’’が1〜6個のC原子を有するアルキル基またはアリールに相当し、ここでアリールが上記で定義した通りである、水素化トリアルキルスズ(R’’’)
3SnH、例えば水素化トリメチルスズ、水素化トリエチルスズ、水素化トリプロピルスズ、水素化トリブチルスズ、水素化トリヘキシルスズ、水素化トリフェニルスズを用いることである。特に好ましくは、水素化トリブチルスズを用いる。
【0095】
しかし、この反応における水素化トリアルキルスズを、代替的にまた式(R’’’)
2SnH
2で表され、式中R’’’が各々の場合において、互いに独立して1〜6個のC原子を有するアルキル基またはアリールに相当し、ここでアリールが上記で定義した通りである水素化スズによって置き換えることができる。
【0096】
アリールテトラクロロホスホランを、例えばフェニルテトラクロロホスホラン、トリルテトラクロロホスホラン、三塩化1,2−フェニレンリンから選択する。特に、フェニルテトラクロロホスホランを用いる。
当該反応を、例えば過剰のアリールテトラクロロホスホランを含有する1,6−ジブロモヘキサン中で行う。
好ましくは、当該反応を室温にて行う。
【0097】
本発明はまた、式Iで表され、式中A=O、X=Clおよびn=0である化合物の調製方法であって、式R
1R
2R
FPで表されるトリス(パーフルオロアルキル)ホスフィンを無機または有機塩基と、その後塩素化剤と反応させ、ここでR
1、R
2は、請求項1に示した意味を有し、R
Fは、1〜12個のC原子を有する直鎖状または分枝状パーフルオロアルキル基を示すことを特徴とする、前記方法に関する。
【0098】
式R
1R
2R
FPで表されるトリス(パーフルオロアルキル)ホスフィンを、例えばWO 03/087113、Merck Patent GmbHに記載されているように、例えばトリス(パーフルオロアルキル)ジフルオロホスホラン[(R
1R
2R
F)PF
2]の還元によって合成することができる。
無機塩基は、例えばMeOH、Me
2OまたはMe
2CO
3であり、ここでMeは、Ag、Li、Na、K、RbまたはCsから選択される。Meは、好ましくはLi、NaまたはKから選択される。
【0099】
有機塩基は、例えば[NR
4]OHであり、ここでRは、式(1)について上記に示した意味の1つを有する。
塩素化剤は、例えばSOCl
2、SO
2Cl
2、C(O)ClC(O)Cl、PCl
3、PCl
5またはPhPCl
4である。特に好ましくは、PhPCl
4を用いる。Phは、フェニルを示す。
【0100】
塩基との反応を、例えば過剰の塩基を含有する有機溶媒中で行う。塩素化反応に適する溶媒は、1,2−ジメトキシエタン、ジグライム、トリグライム、1,2−ジブロモヘキサンまたは前記溶媒の混合物である。好ましくは、ジグライムまたは1,2−ジブロモヘキサンを用いる。
当該反応を、好ましくは−20℃〜室温にて、特に好ましくは0℃にて行う。
【0101】
本発明はまた、式Iで表され、式中A=S、X=Hおよびn=1である化合物の調製方法であって、式R
1R
2PClで表される塩化ビス(パーフルオロアルキル)亜ホスフィン酸を、式K’
2Sで表される硫化物と反応させ、ここでK’がLi、Na、K、Rb、Csまたは[NH
4]を示し、ここでR
1、R
2が請求項1に示した意味を有することを特徴とする、前記方法に関する。
【0102】
塩化ビス(パーフルオロアルキル)亜ホスフィン酸の合成を、本発明に従って上記のように行う。
式K’
2Sで表される硫化物は、商業的に入手可能であるかまたは既知の方法によって調製することができ、ここでK’は、述べた意味を有する。特に好ましくは、Na
2SまたはK
2Sを用い、極めて特に好ましくは、Na
2Sを用いる。
【0103】
当該反応を、例えば有機溶媒中で行う。好適な溶媒は、1,2−ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、アセトニトリル、ジクロロメタンまたは前記溶媒の混合物である。好ましくは、ジエチルエーテル、アセトニトリルまたはジクロロメタンを用い、極めて特に好ましくは、ジクロロメタンを用いる。
当該反応を、好ましくは−30℃〜室温にて、特に好ましくは室温にて行う。
【0104】
本発明はまた、上記の式Iで表される少なくとも1種の化合物を含む遷移金属錯体に関する。式Iで表され、好ましくは、式中A=Oである化合物を用い、即ち好ましくは、金属−Pおよび金属−O結合または金属−Pもしくは金属−O結合が形成する。一方で、式Iで表される化合物の位置は末端であり得、他方で、疑似キレート(quasi-chelate)が形成し得る。式Iで表され、式中n=1でありX=Hもしくは1〜18個のC原子を有するアルキルであるか、または式中n=0でありX=Hである化合物を、好ましくは金属錯体を生成するために用いる。式Iで表され、式中A=O、n=1およびX=Hもしくは1〜18個のC原子を有するアルキルであるか、または式中A=O、n=0およびX=Hである化合物を、特に好ましくは金属錯体を生成するために用いる。
【0105】
好ましい遷移金属錯体は、式III〜VIIに適合し、ここで式Iで表され、式中A=O、n=1およびX=Hである化合物を、好ましくは用いる。また、上記のように、これらの式III〜VIIを式Iで表される他の化合物に適用することは、当業者には既知である。
【0106】
したがって、好ましい遷移金属錯体は、式III〜VII
【化9】
【0107】
式中、
M
1およびM
2は、Pt、Pd、Rh、Ir、Ru、Ni、Co、Fe、Au、Os、Ti、Zr、V、Cr、Mn、Mo、W、Re、Y、Nd、Yb、Sm、TbまたはLaの群から選択される遷移金属であり、
Lは、陰イオン性、中性または陽イオン性に帯電した配位子であり、
R
1およびR
2は、各々、互いに独立して2〜12個のC原子を有する直鎖状または分枝状パーフルオロアルキル基を表し、式IVにおけるR
1/R
2は、R
1もしくはR
2を表し、または式IVにおけるR
2/R
1は、R
2もしくはR
1を表し、R
0は、1〜8個のC原子を有する直鎖状または分枝状アルキル基を表し、および
nは、M
1またはM
2の原子価を飽和させるのに必要な配位子の数を示し、
かつ
式中、
式VIIにおいて、合計n+mは、金属M
2の配位数に一致する、
で表される化合物である。
【0108】
式VIIにおいて、nはまた0に等しくてもよい。
M
1およびM
2は、好ましくはPt、Pd、Rh、RuおよびNi、極めて特に好ましくはPdおよびPtまたはPdもしくはPtから選択される。
【0109】
本発明の金属錯体のための配位子は、陰イオン性、中性または陽イオン性に帯電した配位子であり得、それは、金属錯体の分野における当業者には既知である。配位子Lの例は、好ましくはH、OH、Cl、=O、CO、CH
3CN、R
0COO、PR
03、亜ホスフィン酸、ホスフィニット、NR
03、ジアルキルエーテル、テトラヒドロフランおよびジオキサンを含む環状エーテル、二重結合、三重結合、アリール、シクロペンタジエニル、または複素環式配位子、例えば複素環式カルベン、または「ピンサー(pincer)型配位子」から選択され;Lは、極めて特に好ましくはClである。
【0110】
ピンサー型配位子は、例えばC.J. Moulton et al, J. Chem. Soc., Dalton Trans. 1976, 1020-1024, M. E. van der Boom, et al, Chem. Rev. 2003, 103, 1759-1792から既知であり、触媒の分野における当業者には既知である。ピンサー型錯体は、金属中心および当該金属中心に少なくとも1つの金属−炭素σ結合を介して結合している三座配位子からなる。例は、平面状アリール化合物である。
【0111】
置換基R
1、R
2、R
0は、上記に示した意味または上記に示した好ましい意味を有する。
式III、V、VIまたはVIIで表される単核錯体か、式IVで表される多核錯体かの錯体のタイプは、反応条件、金属陽イオンおよびまた選択した配位子に依存する。前記遷移金属錯体の混合物を生成し、用いることもまた、可能である。
【0112】
式III〜VIIで表される遷移金属錯体およびそれらの混合物は共に、均一系触媒作用に極めて適する。したがって、混合物は、式IIIで表される錯体と式IV、V、VIもしくはVIIで表される錯体との混合物、錯体IVと式V、VIもしくはVIIで表される錯体との混合物、式Vで表される錯体Vと式VIもしくはVIIで表される錯体との混合物、式VIおよびVIIの混合物、式III〜VIIで表される錯体の3成分の組み合わせまたは式III〜VIIで表される錯体の4成分の組み合わせである。
上記の式III〜VIIの置換基が同一であるかまたは異なる混合物もまた、有利であり得る。
【0113】
上記の本発明の式III、IV、V、VIまたはVIIで表される金属錯体およびそれらの混合物は、好ましくは以下の反応のために有利である:
ヘック反応、鈴木反応、シロキサンを用いた檜山反応、熊田−玉尾−コリュー反応、根岸反応、根岸−スティル反応、薗頭反応、C−Sカップリング反応、C−Nカップリング反応、C−Oカップリング反応、C−Bカップリング反応、C−Pカップリング反応、脱カルボキシル化ビアリールカップリング、ヒドロホルミル化もしくはC−H活性化、重合、または酸化および水素化反応。
【0114】
個々の反応タイプの詳細を、以下に示す:
ヘック反応:
【化10】
機構
1
・出発物質:2−クロロキノリン、R
1=CO
2t−Bu→触媒:POPd、POPd1、POPd2
1
・R
1=CO
2t−Bu→触媒:POPd
2
・R
1=C
6H
5、CO
2Bu→触媒:Pd(OAc)
2/カルベン
3
・R
1=Ph、CO
2n−Bu→触媒:PdHAP−1
4
・R
1=CO
2n−Bu→触媒:[Pd(C
3H
5)Cl]
2/tedicyp
5,6
・R
1=CO
2n−Bu、CO
2t−Bu→触媒:Pd
2(dba)
37
・R
1=CO
2n−Bu→触媒:Pd/カルベン錯体
8
・イオン液体中でのPd触媒
9
【0115】
塩基:K
2CO
3、Na
2CO
3、Cs
2CO
3、NaOAc、Cy
2NMe、Et
3N、t−BuOK、t−BuONa、DABCO。
溶媒:DMF、ジオキサン、DMA、NMP、トルエン。
温度:還流。
【0116】
1 J. P. Knowles, A. Whiting, Org. & Biomol. Chem., 2007, 5, 31-44.
2 C. Wolf, R. Lerebours, J. Org. Chem., 2003, 68, 7077-7084.
3 G. Y. Li, G. Zheng, A. F. Noonan, J. Org. Chem., 2001, 66, 8677-8681.
4 V. Calo, R. Del Sole, A. Nacci, E. Schingaro, F. Scordari, Eur. J. Org. Chem., 2000, 2000, 869-871.
5 K. Mori, K. Yamaguchi, T. Hara, T. Mizugaki, K. Ebitani, K. Kaneda, J. Am. Chem. Soc., 2002, 124, 11572-11573.
6 M. Feuerstein, H. Doucet, M. Santelli, J. Org. Chem., 2001, 66, 5923-5925.
7 M. Feuerstein, H. Doucet, M. Santelli, Synlett., 2001, 12, 1980-1982.
8 A. H. M. de Vries, J. M. C. A. Mulders, J. H. M. Mommers, H. J. W. Henderickx, J. G. de Vries, Org. Lett., 2003, 5, 3285-3288.
9 Ai-E Wang, Jian-Hua Xie, Li-Xin Wang, Qi-Lin Zhou, Tetrahedron, 2005, 61, 259-266.
10 R. Singh, M. Sharma, R. Mamgain, D. S. Rawat, J. Braz. Chem. Soc., 2008, 19, 357-379.
【0117】
鈴木反応:
【化11】
・室温における反応→触媒:Pd
2(dba)
3/P(t−Bu)
311
・室温における反応→触媒:[Cl
2Pd(COD)]/ピペラジン
12
・R=2−フルオロベンゼン→触媒:Pd(OAc)
2/ホスフィン配位子
13
・Ar=C
6F
5→触媒:Pd
2(dba)
3/P(t−Bu)
314
・Ar=C
6F
5+ジブロモチオフェン→Pd(PPh
3)
415
・Ar=Ph→触媒:POPd
16
・ニッケル触媒[Ni(cod)
2]/PCy
3(シクロヘキサン)
17
・ニッケル触媒[Ni(dppf)Cl
2]
18
・R=ベンジルホスフェート→触媒:Pd(OAc)
2/PPh
319
・総説記事、スティルおよびSi(OMe)
3と比較されたい
20
【0118】
11 A. F. Littke, C. Dai, G. C. Fu, J. Am. Chem. Soc., 2000, 122, 4020-4028.
12 S. Mohanty, D. Suresh, M. S. Balakrishna, J. T. Mague, Tetrahedron, 2008, 64, 240-247.
13 J. Kingston, J. Verkade, J. Org. Chem., 2007, 72, 2816-2822.
14 T. Korenaga, T. Kosaki, R. Fukumura, T. Ema, T. Sakai, Org. Lett., 2005, 7, 4915-4917.
15 K. Takimiya, N. Niihara, T. Otsubo, Synthesis, 2005, 10, 1589-1592.
16 G. Y. Li, J. Angew. Chem., 2001, 113, 1561-1564.
17 M. Tobisu, T. Shimasaki, N. Chatani, Angew. Chem., 2008, 120, 4944-4947.
18 A. F. Indolese, Tetrahedron Lett., 1997, 38, 3513-3516.
19 M. McLaughlin, Org. Lett., 2005, 7, 4875-4878.
20 C. J. Handy, A. S. Manoso, W. T. McElroy, W. M. Seganish, P. DeShong, Tetrahedron, 2005, 61, 12201-12225.
【0119】
【化12】
→パーフルオロアルキルトリフルオロボレートを用いた変法;触媒:Pd(OAc)
2/PPh
321
他の論文→
・触媒:[Pd(dppf)Cl
2]
22
・ビニルトリフルオロボレートおよびベンジル3,5−ビス(ベンジルオキシ)−4−ブロモベンゾエート→触媒:[Pd(dppf)Cl
2]
23
【0120】
【化13】
・触媒:Pd(OAc)
224
→総説
25
塩基:K
2CO
3、Na
2CO
3、Cs
2CO
3、CsF、KF、t−BuOK、t−BuONa、NaOH、KOH、K
3PO
4。
溶媒:ジオキサン、THF、MeOH、Me
2CHOH、DME、トルエン、DMF、DMA、NMP。
温度:RTから還流まで。
【0121】
21 H.-J. Frohn, N. Yu. Adonin, V. V. Bardin, V. F. Starichenko, Tetrahedron Lett., 2002, 43, 8111-8114.
22 G. W. Kabalka, G. Dong, B. Venkataiah, Tetrahedron Lett., 2004, 45, 5139-5141.
23 R. R. Carter, J. K. Wyatt, Tetrahedron Lett., 2006, 47, 6091-6094.
24 L. Joucla, G. Cusati, C. Pinel, L. Djakovitch, Tetrahedron Lett., 2008, 49, 4738-4741.
25 S. Darses, J.-P. Genet, Chem. Rev., 2008, 108, 288-325.
【0122】
シロキサンを用いた檜山反応:
【化14】
・水中でのハロゲン化アリールとの反応→触媒:POPd1
26
・出発物質:4−ハロキノリン→触媒POPd、POPd1、POPd2
27
・総説記事、スティルおよび鈴木と比較されたい
20
【0123】
塩基:TBAF、K
2CO
3、Na
2CO
3、Cs
2CO
3、NaOH、KOH、K
3PO
4。
溶媒:DMF、MeCN、i−PrOH、EtOAc、DMA、THF。
温度:還流。
26 C. Wolf, R. Lerebours, Org. Lett., 2004, 6, 1147-1150.
27 C. Wolf, R. Lerebours, E. H. Tanzini, Synthesis, 2003, 13, 2069-2073.
【0124】
熊田−玉尾−コリュー反応
【化15】
触媒:POPd、POPd1
28
28 G. Y. Li, J. Organomet. Chem., 2002, 653, 63-68.
【0125】
【化16】
・R=Me、イソプロピル、OMe;R’=Me、シクロヘキサン、OMe、R’’=Me、H、OMe;または2−MgBr−ターフェニル→触媒:POPd、Ni(COD)
2/(t−Bu)
2P(O)H
29
溶媒:THF、ジオキサン、Et
2O、DME。
温度:RTまたは還流
29 C. Wolf, H. Xu, J. Org. Chem., 2008, 73, 162-167.
【0126】
根岸反応
【化17】
・Ar=Ph、X=Cl→触媒:POPd、POPd2
37
・Ar=アルキル、アリール、アルケニル→触媒:Pd
2(dba)
3/PCyp
3(注:Cyp=シクロペンチル)
30
・R=2,4,6−イソプロピル、Ar=OMe→触媒Pd
2(dba)
3/ S−phos.またはRu−phos.など
31
溶媒:NMP、THF、トルエン、DME。
温度:室温から還流まで
30 J. Zhou, G. C. Fu, J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 12527-12530.
31 J. E. Milne, S. L. Buchwald, J. Am. Chem. Soc., 2004, 126, 13028-13032.
【0127】
根岸−スティル反応
【化18】
・出発物質:4−ハロキノリン→触媒:POPd、POPd1、POPd2
2、32
・スティルおよびヘック反応からのワンポット合成
33
塩基:R
3N。
溶媒:ジオキサン、DMF、THF。
温度:還流。
32 C. Wolf, R. Lerebours, J. Org. Chem., 2003, 68, 7551-7554.
33 P. von Zezschwitz, F. Petry, A. de Meijere, Chem. Eur. J., 2001, 7, 4035-4046.
【0128】
薗頭反応
【化19】
・種々の立体障害のホスフィン配位子の使用および動力学の計算
34
・水中での薗頭反応
35
・イオン液体中での薗頭反応
36
【0129】
塩基:アミン、ピロリジン、NaOH、KOH、K
2CO
3、Cs
2CO
3、Na
2CO
3。
溶媒:ジオキサン、DMF、1−n−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフルオロボレート。
温度:還流
【0130】
34 M. R. an der Heiden, H. Plenio, S. Immel, E. Burello, G. Rothenberg, H. C. J. Hoefsloot, Chem. Eur. J., 2008, 14, 2857-2866.
35 C. Wolf, R. Lerebours, Org. Biomol. Chem., 2004, 2, 2161.
36 J.-C. Hierso, J. Boudon, M. Picquet, P. Meunier, Chem. Eur. J., 2007, 13, 583-587.
【0131】
C−Sカップリング反応:
【化20】
・R’=t−Bu;→触媒:POPd
16
・R’=アルキル、Ph→触媒:POPd、POPd1
3、2、37
塩基:t−BuOK、t−BuONa、Cy
2NMe、Et
3N、K
2CO
3、Cs
2CO
3、Na
2CO
3。
溶媒:DMSO、ジオキサン、トルエン、DME。
温度:RTから還流まで。
37 G. Y. Li, J. Org. Chem., 2002, 67, 3643-3650.
【0132】
C−Nカップリング反応:
【化21】
・出発物質:4−ハロキノリン;R’=Ph→触媒:POPd、POPd1、POPd2
2、3、16
・室温にて銅触媒[CuI/N,N−ジエチルサリチルアミド]
38
38 A. Shafir, S. L. Buchwald, J. Am. Chem. Soc., 2006, 8742-8473.
【0133】
【化22】
・室温における反応→触媒:Pd(OAc)
2/ホスフィン配位子
39
39 Ch. V. Reddy, J. V. Kingston, J. G. Verkade, J. Org. Chem., 2008, 73, 3047-3062.
【0134】
【化23】
・室温における反応;R’=Me、R’’=Ph→触媒:Pd(OAc)
2/ホスフィン配位子
39
・80℃における反応、Ph→触媒:Pd(OAc)
2/ホスフィン配位子
39
・ニッケル触媒[trans−ハロアリールビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)]
40
・室温における反応→触媒:Pd(OAc)
2/ホスフィン配位子
39
40 C. Chen, L.-M. Yang, J. Org. Chem., 2007, 72, 6324-6327.
【0135】
【化24】
・室温における反応→触媒:Pd(OAc)
2/ホスフィン配位子
39
【化25】
・室温における反応→触媒:Pd(OAc)
2/ホスフィン配位子
39
塩基:t−BuOK、t−BuONa、R
3N、NaOH、KOH、K
2CO
3、Cs
2CO
3、Na
2CO
3。
溶媒:DMSO、ジオキサン、トルエン、DMF。
温度:RTから還流まで。
【0136】
C−Oカップリング反応:
【化26】
・引き続きクライゼン転位をを伴うC−Oカップリング→触媒:Cu/アミン配位子[1,10−フェナントロリン]
41
・第一および第二アルコールの場合におけるC−Oカップリング→触媒:Pd(OAc)
2/ホスフィン配位子[注:Strem社]
42
・アミノアルコールの場合におけるC−N対C−Oカップリング→銅触媒による合成における選択性[CuI/ジケトン]
43
【0137】
41 G. Nordmann, S. L. Buchwald, J. Am. Chem. Soc., 2003, 125, 4978-4979.
42 A. V. Vorogushin, X. Huang, S. L. Buchwald, J. Am. Chem. Soc., 2005, 127, 8146-8149.
43 A. Shafir, P. A. Lichtor, S. L.. Buchwald, J. Am. Chem. Soc., 2007, 129, 3490-3491.
【0138】
【化27】
−X=Br、Cl;R=t−Bu→触媒:Pd
2(dba)
3/P(t−Bu)
3または空気中で安定でないホスフィン配位子
44
塩基:t−BuOK、t−BuONa、NaOH、KOH、K
2CO
3、Cs
2CO
3、Na
2CO
3。
溶媒:DMSO、ジオキサン、トルエン、DMF、DME、o−キシレン。
温度:還流。
44 G. Mann, C. Incarvito, A. L. Rheingold, J. F. Hartwig, J. Am. Chem. Soc., 1999, 121, 3224-3225.
【0139】
C−Bカップリング反応:
【化28】
・出発物質:R
1R
2N−BH
2;R
1=R
2=iPr→触媒:(PPh
3)
2PdCl
245
45 L. Euzenat, D. Horhant, Y. Ribourdouille, C. Duriez, G. Alcaraz, M. Vaultier, Chem. Commun., 2003, 2280-2281.
【0140】
【化29】
・出発物質:ラクタム誘導体;鈴木反応における引き続きの反応
46
46 A. Ferrali, A. Guarna, F. Lo Galbo, E. G. Occhiato, Tetrahedron Lett., 2004, 45, 5271-5274.
【0141】
【化30】
・出発物質:ジエン→触媒:Pd
2(dba)
3/ホスフィン配位子
47
塩基:NaOH、KOH、K
2CO
3、Cs
2CO
3、Na
2CO
3、K
3PO
4、R
3N。
溶媒:ジオキサン、トルエン、DMF、DME。
温度:還流
47 N. F. Pelz, J. P. Morken, Org. Lett., 2006, 8, 4557-4559.
【0142】
C−Pカップリング反応:
【化31】
・出発物質:2,6−ジブロモピリジン→触媒:Pd(OAc)
248
・Ar
1=Ar
2=Ph→触媒:Pd(OAc)
2;マイクロ波
49
・Ar
1=2−(CF
3)C
6H
4→触媒:Pd(OAc)
2/ホスフィン配位子
50
塩基:R
3N、N−Me−ピペリジン、KOAc、NaOAc、DABCO、K
2CO
3、Cs
2CO
3、Na
2CO
3。
溶媒:トルエン、DMF、DMA、アセトニトリル、メタノール、NMP。
温度:還流
48 O. Herd, A. Hessler, M. Hingst, M. Tepper, O. Stelzer, J. Organomet. Chem., 1996, 522, 69-76.
49 A. Stadler, C. O. Kappe, Org. Lett., 2002, 4, 3541-3543.
50 C. Korff, G. Helmchen, Chem. Commun., 2004, 530-531.
【0143】
脱カルボキシル化ビアリールカップリング:
【化32】
・種々の複素環式芳香族カルボン酸の使用→触媒:Pd/P(t−Bu)
351
51 P. Forgione, M.-C. Brochu, M. St-Onge, K. H. Thesen, M. D. Bailey, F. Bilodeau, J. Am. Chem. Soc., 2006, 128, 11350-11351.
【0144】
【化33】
・触媒:Pd/P(t−Bu)
352
【0145】
C−H活性化にまさる利点は、カルボニル機能によって保証される位置選択性である。
【0146】
塩基:K
2CO
3、Cs
2CO
3、Na
2CO
3、K
3PO
4、R
3N。
溶媒:NMP、トルエン、DMF、DME。
温度:還流
52 O. Baudoin, Angew. Chem., 2007, 119, 1395-1397.
【0147】
ヒドロホルミル化:
【化34】
・触媒 Rh(I)/BISBI、BIPHEPHOS、XANTPHOS
53
・中間体の評価→Pt/Ph
2POH
54
・長鎖α−オレフィン>C
7;H
2O/有機溶媒二相系→触媒:ホスホネート/ホスフィン錯体
55
・エナミドの立体選択的ヒドロホルミル化→触媒:Rh(acac)(CO)
2/亜リン酸塩配位子
56
・種々の立体および電子特性を有する亜リン酸塩の調査(例:4−CF
3−C
6H
4);超臨界CO
2の使用→触媒:Rh/亜リン酸塩
57
・イオン液体中でのヒドロホルミル化
58
溶媒:トルエン、H
2O。
温度:60〜120℃
他の条件:20〜60barのCO
2/H
2
【0148】
53 B. Breit, Acc. Chem. Res., 2003, 36, 264-275.
54 P. W. N. M. van Leeuwen, C. F. Roobeek, J. H. G. Frijns, G. Orpen, Organometallics, 1990, 9, 1211-1222.
55 S. Bischoff, M. Kant, Ind. Eng. Chem. Res., 2000, 39, 4908-4913.
56 O. Saidi, J. Ruan, D. Vinci, X. Wu, J. Xiao, TetrahedronLett., 2008, 49, 3516-3519.
57 C. T. Estorach, A. Orej'on, A. M. Masdeu-Bult'o, Green Chemistry, 2008, 10, 545-552.
58 M. Haumann, A. Riisager, Chem. Rev., 2008, 108, 1474-1497.
【0149】
C−H活性化:
【化35】
・出発物質:ペンタフルオロベンゼン、2,3,5,6−テトラフルオロピリジン、1,3,5−トリフルオロベンゼンなど→触媒:Pd(OAc)
2/S−phos.
59[他の論文]
60、61
・C−H活性化から開始した金触媒による反応
62
塩基:K
2CO
3、Cs
2CO
3、Na
2CO
3、R
3N、KOt−Bu、NaOt−bu。
溶媒:トルエン、DMF、DME、DMA、i−PrOAc、EtOAc。
温度:還流。
【0150】
59 M. Lafrance, D. Shore, K. Fagnou, Org. Lett., 2006, 8, 5097-5100.
60 M. Lafrance, C. N. Rowley, T. K. Woo, K. Fagnou, J. Am. Chem. Soc., 2006, 128, 8754-8756.
61 L.-C. Campeau, M. Parisien, A. Jean, K. Fagnou, J. Am. Chem. Soc., 2006, 128, 581-590.
62 R. Skouta, C.-J. Li, Tetrahedron, 2008, 64, 4917-4938.
【0151】
文献中で用いられる触媒の構造:
【化36】
【0152】
本発明はまた、上記の式III、IV、V、VIおよびVIIで表される遷移金属錯体の調製方法であって、上記の、または好ましく記載した式Iで表され、特に好ましくは式中X=Hおよびn=1である化合物を、遷移金属、特に式中M
1、M
2およびLが上記で示した意味または好ましい意味の1つを有する化合物M
1L
2またはM
2L
2を含む前駆体化合物と反応させることを特徴とする、前記方法に関する。
【0153】
当該反応を、例えば有機溶媒中で行う。しかし、当該反応をまた、溶媒を用いずに行うことができる。好適な溶媒は、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、アセトニトリルまたはテトラヒドロフランである。好ましくは、ジエチルエーテルを用いる。
当該反応を、−30℃〜溶媒の沸点にて、好ましくは0℃〜室温にて、特に好ましくは室温にて行う。
当該反応を、好ましくは乾燥溶媒を用い、かつ不活性ガス条件下で、即ち、例えばアルゴンまたは窒素などの不活性ガス下で行う。
【0154】
本発明はまた、式III、IV、V、VIまたはVIIで表される錯体およびそれらの混合物の、表面処理のための、または対応する金属M
1もしくはM
2のナノ粒子製造のための触媒としての使用に関する。
【0155】
ナノ粒子を、式III、IV、V、VIもしくはVIIで表される錯体または式IIで表される塩の、溶媒中での、例えば有機溶媒もしくはイオン液体中での、または不活性液体もしくは気相中での、あるいは溶媒を用いずに還元、熱分解、光分解もしくは電気分解によって合成する(J. Kraemer et al., Ionische Fluessigkeiten als Templat fuer Nanosynthesen [Ionic Liquids as Template for Nanosyntheses], GIT Laboratory Journal, No. 4, 2008, 400〜403頁;E. Redel et al., First Correlation of Nanoparticles Size-Dependent Formation with Ionic Liquid Anion Molecular Volume, Inorganic Chemistry, 47, 2008, 14〜16頁)。
【0156】
さらに、上記の式IIで表され、式中Ag
+、Li
+、Na
+、K
+、Rb
+またはCs
+がY
+について除外される塩は、好ましくはイオン液体を生成する。
イオン液体の適用の領域は、例えば溶媒もしくは溶媒添加剤としての、相間移動触媒としての、抽出剤としての、熱移動媒体としての、界面活性物質としての、可塑剤としての、帯電防止剤としての、難燃剤としての、または導電性塩としての、または電気化学電池および光電気化学電池のための添加剤としての使用である。
【0157】
したがって、本発明はさらに、上記の式IIで表され、式中Ag
+、Li
+、Na
+、K
+、Rb
+またはCs
+がY
+について除外される塩の、溶媒もしくは溶媒添加剤としての、相間移動触媒としての、抽出剤としての、熱移動媒体としての、界面活性物質としての、可塑剤としての、帯電防止剤としての、難燃剤としての、または導電性塩としての、または電気化学電池および光電気化学電池のための添加剤としての使用に関する。
【0158】
溶媒として用いる場合において、これは、当業者には既知であるすべての種類の反応、例えば遷移金属または酵素触媒による反応、例えばヒドロホルミル化反応、オリゴマー化反応、エステル化または異性化反応などに適し、ここで前記列挙は限定的ではない。
【0159】
抽出剤として用いる場合には、イオン液体を、イオン液体におけるそれぞれの構成成分の可溶性に依存して、反応生成物を分離するために、しかしまた不純物を分離するために用いることができる。さらに、イオン液体はまた、複数の構成成分の分離における、例えば混合物の複数の構成成分の蒸留分離(distillative separation)における分離剤として作用し得る。
【0160】
他の可能な用途は、ポリマー材料における可塑剤としての、多数の材料または用途のための難燃剤としての、ならびに種々の電気化学電池および用途における、例えばガルバーニ電池における、コンデンサにおける、または燃料電池における導電性塩または添加剤としての使用である。
【0161】
イオン液体、即ちここでは、上記で定義した式IIで表される塩の適用の他の分野は、炭水化物含有固体、特にバイオポリマーおよびその誘導体または分解生成物のための溶媒としての使用である。さらに、式IIで表される好ましい塩には、例えば圧縮機、ポンプまたは油圧機械などの機械のための潤滑油、作動液として適し得るものもある。さらに、式IIで表される好ましい塩にはまた、例えばセンサーにおける電気光学電池に適し得るものもある。
【0162】
これ以上のコメントがなくても、当業者は、上記の記載を最も広い範囲において利用することが可能であると考えられる。したがって、好ましい態様および例は、単に記述による開示であると考えられるべきであって、いかなる意味においても決して限定するものではない。
【0163】
例:
例中に示さない限り、NMRスペクトルを、重水素ロックで5mmの
1H/BBブロードバンドプローブでBruker Avance 300分光計において20℃にて、重水素化溶媒中の溶液において測定した。種々の核の測定周波数は、以下の通りである:
1H:300.13MHz、
19F:282.41MHz、
31P:121.49MHzおよび
13C:75.47MHz。参照方法を、各々の試料またはデータセットについて別個に示す。
【0164】
例1:ビス(ペンタフルオロエチル)亜ホスフィン酸
【化37】
4.79g(16.5mmol)の(C
4H
9)
3SnHを、1,6−ジブロモヘキサンに溶解し、当該溶液から、15分間ガスを除去する(真空)。2.20g(6.9mmol)の塩化ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニル、(C
2F
5)
2P(O)Clを加える。当該溶液を、室温にて30分間撹拌し、揮発性生成物を、その後真空において除去する。残留物を、室温にてHBr雰囲気(7.3mmol)下で20分間撹拌し、次に、揮発性化合物を、動的真空条件下で除去する。異なる温度を有する3つのコールドトラップを、−30℃、−78℃および−196℃にて用いる。−78℃にて、着色されていない液体が得られ、それはビス(ペンタフルオロエチル)亜ホスフィン酸と同定される。当該化合物は、室温にて不活性ガス条件下で安定である。
【0166】
例2:塩化ビス(ペンタフルオロエチル)亜ホスフィン酸または同義的にビス(ペンタフルオロエチル)クロロホスフィン
方法A:
【化39】
2.5g(7.8mmol)の塩化ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニル(C
2F
5)
2P(O)Clを、1,6−ジブロモヘキサン中の4.9g(16.8mmol)の(C
4H
9)
3SnHの溶液に加える。反応混合物を室温にて1時間撹拌し、揮発性化合物を、次に真空において除去する。1.24g(5.0mmol)のC
6H
5PCl
4を加え、混合物を室温にて20分間撹拌する。揮発性化合物を、動的真空条件下で除去する。3つのコールドトラップを用いる:−30℃、−78℃および−196℃。−196℃におけるコールドトラップは、無色液体を含み、それは、塩化ビス(ペンタフルオロエチル)亜ホスフィン酸、(C
2F
5)
2PClと同定される。当該化合物は、室温にて不活性ガス条件下で安定である。
【0168】
方法B:
【化41】
1,2−ジメトキシエタン中の1.16g(3.0mmol)のトリス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン(C
2F
5)
3Pの溶液を、水中の、過剰量(6mmol)のKOH 1.5M溶液で処理する。混合物を室温にて30分間撹拌し、溶媒を真空において除去する。残留物を1,2−ジメトキシエタン中に吸収させ、過剰のPCl
3(6mmol)を加え、塩化ビス(ペンタフルオロエチル)亜ホスフィン酸(C
2F
5)
2PClが得られ、上記のように同定される。
【0169】
例3:エチルビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニット
【化42】
例2に従って得られる塩化ビス(ペンタフルオロエチル)亜ホスフィン酸(C
2F
5)
2PClを、ジエチルエーテル中のエタノールおよび4−ジメチルアミノピリジンの混合物に室温にて加える。沈殿した生成物である塩化4−ジメチルアミノピリジニウムを分離し、当該溶液は、エチルビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニット(C
2F
5)
2POC
2H
5を含む。
当該化合物を、慣用の方法によって単離する。
【0171】
例4:トリブチルスタンニルビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニット
【化44】
例1に従って得られる0.29g(1.0mmol)のビス(ペンタフルオロエチル)亜ホスフィン酸(C
2F
5)
2POHを、乾燥ジエチルエーテル10ml中の0.22g(0.8mmol)の水素化トリブチルスズ(n−C
4H
9)
3SnHの混合物に、−196℃にて濃縮する。反応混合物を、室温にて15分間撹拌し、溶媒をその後真空において除去する。残留物は、無色液体であるトリブチルスタンニルビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニットである。当該化合物は、室温にて不活性ガス条件下で安定である。
【0173】
例5:トリメチルシリルビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニット
【化46】
過剰量の塩化トリメチルシリル(CH
3)
3SiClを、例1または4の記載に従って得られるトリブチルスタンニルビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニットおよび塩化トリブチルスズの混合物に加え、トリメチルシリルビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニット(C
2F
5)
2POSi(CH
3)
3を得る。当該化合物を、慣用の方法によって単離する。
【0175】
例6:ビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン
【化48】
例2に従って得られる0.3g(1.0mmol)の塩化ビス(ペンタフルオロエチル)亜ホスフィン酸(C
2F
5)
2PClを、1,6−ジブロモヘキサン中の0.61g(2.0mmol)の水素化トリブチルスズ(n−C
4H
9)
3SnHの、脱気した溶液中に濃縮する。混合物を室温にて1時間撹拌し、揮発性化合物をその後動的真空条件下で除去する。3つのコールドトラップを用いる:−30℃、−78℃および−196℃。−196℃におけるコールドトラップは、無色液体であるビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン(C
2F
5)
2PHを含有する。当該化合物は、室温にて不活性ガス条件下で安定である。
【0177】
例7:ナトリウムビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニット
【化50】
1,2−ジメトキシエタン中の1.16g(3.0mmol)のトリス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン(C
2F
5)
3PHを、水中の、過剰量(6mmol)のNaOH 1.5M溶液で処理する。混合物を室温にて30分間撹拌し、溶媒をその後真空において除去し、無色残留物であるナトリウムビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニット(C
2F
5)
2PONaが得られる。
【0179】
例8:ビス(ペンタフルオロエチル)亜ホスフィン酸
【化52】
29mmolの1.5モルの水酸化ナトリウム水溶液を、ジエチルエーテル50mlの5.2g(13.3mmol)のトリス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン溶液に加え、混合物を、室温にて15分間撹拌する。水相を除去した後、50mlの1,6−ジブロモヘキサンを加え、すべての揮発性の構成成分を、一晩真空において除去する。反応混合物を、13mmolのHBrと反応させ、生成物を、反応混合物から分別凝縮(−30℃、−78℃および−196℃における3つのコールドトラップ)によって分離する。当該化合物は、室温にて不活性ガス条件下で安定である。
生成物を、NMR分光法によって評価する。スペクトルは、例2に示す値と一致する。
【0180】
例9:クロロビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィン
【化53】
4.8g(12.4mmol)のトリス(ペンタフルオロエチル)ホスフィンを、50mlのエーテル上に濃縮し、25mmolの1.5モルの水酸化ナトリウム溶液を、撹拌しながら加える。30分後、50mlの1,6−ジブロモヘキサンを、分離した有機相に加え、すべての揮発性の構成成分を、一晩真空において除去する。
【0181】
3.5g(12.6mmol)のPhPCl
4を、1,6−ジブロモヘキサンに溶解し、真空において脱気し、ホスフィニット溶液に0℃にて滴加する。混合物を10分間撹拌した後、生成物であるクロロビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィンを、分別凝縮(−196℃におけるコールドトラップ)によって反応混合物から分離する。当該化合物は、室温にて不活性ガス条件下で安定である。
【0182】
生成物を、NMR分光法によって評価する。スペクトルは、例1に示す値と一致する。
【0183】
例10:4−ペンテニルビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニット
【化54】
0.13g(1.5mmol)の4−ペンテン−1−オールを、先ず0.21g(1.5mmol)のK
2CO
3を含むCH
2Cl
2中に導入し、0.46g(1.5mmol)の塩化ビス(ペンタフルオロエチル)亜ホスフィン酸(C
2F
5)
2PClを濃縮する。混合物を室温にて20分間撹拌した後、沈殿物を濾別する。無色液体の生成物である、5−ペンテン−1−イルビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニットを、分別凝縮によって単離し、分光法によって評価する。
【0185】
例11:9−デセニルビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニット
【化56】
0.31g(1.9mmol)の9−デセン−1−オールを、先ず過剰量のK
2CO
3を含むCH
2Cl
2中に導入し、0.64g(2.1mmol)の塩化ビス(ペンタフルオロエチル)亜ホスフィン酸(C
2F
5)
2PClを濃縮する。混合物を室温にて30分間撹拌した後、沈殿物を濾別し、揮発性物質を真空において除去する。生成物である9−デセニルビス(ペンタフルオロエチル)ホスフィニットが、無色の油状液体として残留し、分光法によって評価する。
【0187】
例12:ビス(ペンタフルオロエチル)亜ホスフィン酸を有する白金錯体
【化58】
例1に従って得られる、0.286g(1mmol)のビス(ペンタフルオロエチル)亜ホスフィン酸および0.113g(0.4mmol)の二塩化白金の混合物を、室温にて3日間、5mlの乾燥ジエチルエーテル中で撹拌する。混合物は、黄色となる。ジエチルエーテルを除去した後、白金錯体を、固体として単離する。当該化合物は、室温にて不活性ガス条件下で安定である。
【0188】
【化59】
元素分析:
実測値 C 11.65%、H 0.23%、計算値 C 11.46%、H 0.24%。
【0189】
例13:ビス(ペンタフルオロエチル)亜ホスフィン酸のパラジウム錯体
【化60】
例1に従って得られる、0.858g(3mmol)のビス(ペンタフルオロエチル)亜ホスフィン酸および0.241g(1.36mmol)の塩化パラジウムの混合物を、室温にて5日間、25mlの乾燥ジエチルエーテル中で撹拌する。混合物は、黄色となる。ジエチルエーテルを除去した後、パラジウム錯体を、固体として単離する。
【0190】
【化61】
元素分析:
実測値 C 13.82%、H 0.20%、計算値 C 13.48%、H 0.20%。
【0191】
このパラジウム錯体は、溶液中に、HClの存在下で、対応するモノ−Pd錯体Iとの平衡状態で存在する。しかし、HClおよび溶媒の除去によって、常にジ−Pd錯体を得る。
平衡反応:
【化62】
【0192】
例14:鈴木カップリングを介したビフェニルの合成
【化63】
14a)1.57g(10mmol)のブロモベンゼンおよび4.15g(30mmol)のK
2CO
3を、テトラヒドロフラン20ml中の1.83g(15mmol)のフェニルボロン酸溶液に加える。混合物を室温にて15分間撹拌した後、例13に従って調製した0.21g(0.15mmol)の[{Pd[P(C
2F
5)
2O]
2H}
2(μ−Cl)
2]を加え、反応混合物を、還流下で3時間加熱する。冷却し、100mlの水を加えた後、反応混合物を、200mlのヘキサンで抽出する。有機相を水で洗浄し、MgSO
4を用いて乾燥する。濾過し、溶媒を除去した(真空において)後、0.99gのビフェニルを、白色固体として単離する。収率は、用いたブロモベンゼンを基準として64%である。
【0193】
生成物であるビフェニルを、分光法によって評価する。
【化64】
【0194】
14b)1.57g(10mmol)のブロモベンゼンおよび4.15g(30mmol)のK
2CO
3を、テトラヒドロフラン20ml中の1.83g(15mmol)のフェニルボロン酸溶液に加える。混合物を室温にて15分間撹拌した後、例13に従って調製した0.21g(0.15mmol)の[{Pd[P(C
2F
5)
2O]
2H}
2(μ−Cl)
2]を加え、反応混合物を、還流下で18時間加熱する。冷却し、100mlの水を加えた後、反応混合物を、200mlのヘキサンで抽出する。有機相を水で洗浄し、MgSO
4を用いて乾燥する。濾過し、溶媒を除去した(真空において)後、1.29gのビフェニルを、白色固体として単離する。収率は、用いたブロモベンゼンを基準として84%である。
生成物であるビフェニルを、分光法によって評価する。
NMRスペクトルは、例14a)において示した値と一致する。
【0195】
14c)
【化65】
(28mmol、1当量)のブロモベンゼンおよび9g(42mmol、1.5当量)のK
3PO
4を、イソプロパノール60ml中の5.13g(42mmol、1.5当量)のフェニルボロン酸溶液に加える。混合物を、室温にて45分間撹拌し、例13に従って調製した0.02g(14.03μmol、0.05mol%)の[{Pd[P(C
2F
5)
2O]
2H}
2(μ−Cl)
2]を、その後加え、反応混合物を、室温にて3時間撹拌する。100mlの水を加えた後、反応混合物を、200mlのヘキサンで抽出する。有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、MgSO
4を用いて乾燥する。濾過し、溶媒を除去した(真空において)後、3.16gのビフェニルを、白色固体として単離する。収率は、用いたブロモベンゼンの量を基準として73%である。
NMRスペクトルは、例14a)において示した値と一致する。
【0196】
例15:鈴木カップリングを介した2,4’−ジフルオロビフェニルの合成
【化66】
1.75g(10mmol)の1−ブロモ−4−フルオロベンゼンおよび4.15g(30mmol)のK
2CO
3を、テトラヒドロフラン20ml中の2.09g(15mmol)の4−フルオロフェニルボロン酸溶液に加える。混合物を室温にて15分間撹拌した後、例13に従って調製した0.21g(0.15mmol)の[{Pd[P(C
2F
5)
2O]
2H}
2(μ−Cl)
2]を加え、反応混合物を18時間沸騰させる。冷却し、100mlの水を加えた後、反応混合物を、200mlのヘキサンで抽出する。有機相を水で洗浄し、MgSO
4を用いて乾燥する。濾過し、溶媒を除去した(真空において)後、1.35gの2,4’−ジフルオロビフェニルを、白色固体として単離する。収率は、用いた1−ブロモ−4−フルオロベンゼンを基準として70%である。
生成物である2,4’−ジフルオロビフェニルを、分光法によって評価する。
【0198】
例16:ヘックカップリングを介しての(E)−3−(フェニル)アクリル酸ブチル;[(E)−ケイ皮酸ブチル]の合成
【化68】
0.38g(2.9mmol)のアクリル酸ブチルおよび0.30g(2.2mmol)のK
2CO
3を、ジメチルホルムアミド20ml中の0.32g(2.0mmol)のブロモベンゼン溶液に加える。混合物を室温にて5分間撹拌した後、例13に従って調製した0.08g(0.05mmol)の[{Pd[P(C
2F
5)
2O]
2H}
2(μ−Cl)
2]を加え、反応混合物を、還流下で20時間加熱する。冷却し、100mlの水を加えた後、反応混合物を、100mlのジエチルエーテルで抽出する。有機相を水で洗浄し、MgSO
4を用いて乾燥する。濾過し、溶媒を除去した(真空において)後、0.26gの(E)−3−(フェニル)アクリル酸ブチルを、無色油として単離する。収率は、用いたブロモベンゼンを基準として64%である。
生成物である(E)−3−(フェニル)アクリル酸ブチルを、分光法によって評価する。
【0200】
例17:ヘックカップリングを介しての2−フルオロ−3−(フェニル)アクリル酸ブチルの合成
【化70】
0.38g(2.9mmol、1.5当量)のアクリル酸ブチルおよび0.3g(2.2mmol、1.1当量)のK
2CO
3を、ジメチルホルムアミド20ml中の0.36g(2.0mmol、1.0当量)の1−ブロモ−2−フルオロベンゼン溶液に加える。混合物を、室温にて5分間撹拌する。例13に従って調製した0.08g(0.05mmol)の[{Pd[P(C
2F
5)
2O]
2H}
2(μ−Cl)
2]を、その後加え、反応混合物を、還流下で20時間加熱し、2−フルオロ−3−(フェニル)アクリル酸ブチルを得る。
【0202】
例18:鈴木カップリングを介した3−フルオロビフェニルの合成
【化72】
12.27g(70.2mmol、1当量)の1−ブロモ−3−フルオロベンゼンおよび44.7g(210.5mmol、3当量)のK
3PO
4を、イソプロパノール200ml中の12.83g(105.3mmol、1.5当量)のフェニルボロン酸溶液に加える。混合物を、室温にて4時間撹拌する。例13に従って調製した0.0021g(14.8μmol、0.0021mol%)の[{Pd[P(C
2F
5)
2O]
2H}
2(μ−Cl)
2]を、その後加え、反応混合物を、室温にて20時間撹拌し、3−フルオロビフェニルを定量的に得る。
【0203】
例19:ビス(ペンタフルオロエチル)チオ亜ホスフィン酸の合成
【化73】
0.04g(0.5mmol)のNa
2Sを、先ずジクロロメタン中に導入し、例2に従って得られる0.5mmolの塩化ビス(ペンタフルオロエチル)亜ホスフィン酸(C
2F
5)
2PClを濃縮する。混合物を20時間撹拌した後、揮発性物質を、真空において除去する。無色の沈殿物が残留し、それをジエチルエーテルに溶解し、1,6−ジブロモヘキサンを加える。揮発性の構成成分を、真空において除去する。過剰量のガス状HBrを、反応混合物に加え、生成物を、分別凝縮によって単離し、分光法によって評価する。