【実施例】
【0033】
図9(a),(b)は、本発明に係る基準電圧発生回路を説明するための構成図で、
図9(a)は、エンハンスメント状態の遷移を示し、
図9(b)は、ディプレッション状態の遷移を示している。
不揮発性記憶素子は、エンハンスメント状態とディプレッション状態にすることができるNMOSタイプの素子であり、それぞれの状態にするバイアス条件は、FNトンネリング(ファウラ−ノルドハイム トンネリング)を使用した場合、
図9(a),(b)のようになる。このようなバイアス条件を印可すると経時的に状態が遷移する。
【0034】
つまり、本発明の基準電圧発生回路は、各々の回路素子の特性の相違に基づいて発生する基準電圧の製造バラツキを無くすようにした基準電圧発生回路であり、少なくとも1個以上のディプレッション型MOSトランジスタと、流れる電流がディプレッション型MOSトランジスタに流れる電流と同じ電流又は関連する電流である少なくとも1個以上のエンハンスメント型MOSトランジスタとを備え、各MOSトランジスタは不揮発性記憶素子である。
【0035】
図9(b)に示したVPPは、不揮発性記憶素子がFNトンネリングをするために必要な電圧で、通常は10V以上である。不揮発性記憶素子の書き込み動作は、コントロールゲート端子にVPPを印加し、ソース端子を0Vに接地し、ドレイン端子をフローティング状態にする。すると、FNトンネリングによりフローティングゲートに電子が注入され、不揮発性記憶素子の閾値が上がる。このようにフローティングゲートに電子が注入している場合は電流が流れないエンハンスメント状態になる。
【0036】
一方、不揮発性記憶素子の消去動作は、コントロールゲート端子を0Vに接地し、ソース端子にVPPを印加し、ドレイン端子をフローティングと状態にする。すると、FNトンネリングによりフローティングゲートから電子が放出され、不揮発性記憶素子の閾値が下がる。このようにフローティングゲートから電子が放出されている場合は電流が流れるディプレッション状態になる。
【0037】
つまり、ディプレッション型MOSトランジスタは、不揮発性記憶素子の消去動作によりなされ、エンハンスメント型MOSトランジスタは、不揮発性記憶素子の書き込み動作によりなされる。
図10は、本発明に係る基準電圧発生回路の実際の回路例を示す構成図である。
図10における基準電圧VREFを出力している状態でのスイッチ(SW)の状態は、以下のようになる。
【0038】
SW1:VDD
SW2:VSS
SW3,SW4:OPEN
SW5,SW6,SW7,SW8:SHORT(接続)
SW9,SW10:任意(どちらでもOK、
図10ではVSS)
この状態でM1がディプレッション状態、M2がエンハンスメント状態のとき、基準電圧VREFが生成される。つまり、本発明の基準電圧発生回路は、各MOSトランジスタの各端子を所望の電位に設定するスイッチ部を備えている。
【0039】
上述した
図7(a),(b)に示した第1の調整方法による調整シーケンスは、以下に説明する
図11乃至
図22に示す<調整シーケンス(1)>乃至<調整シーケンス(4)>のとおりである。
<調整シーケンス(1)>
図11は、
図10に示した本発明に係る基準電圧発生回路の実際の回路例におけるエンハンスメント状態に遷移させる状態を示す図である。
不揮発性記憶素子M2をエンハンスメント状態(閾値を所望の基準電圧VREFよりも大きく)にする。このエンハンスメント状態でのSWの状態は、以下のようになる。
SW1:VDD
SW2:VSS
SW3:OPEN
SW4:SHORT
SW5,SW6,SW7,SW8:OPEN
SW9:任意(
図11ではVSS)
SW10:VPP
【0040】
図12は、
図10に示した本発明に係る基準電圧発生回路の実際の回路例における基準電圧VREFを確認する状態を示す図である。この確認状態でのSWの状態は、以下のようになる。
SW1:VDD
SW2:VSS
SW3:OPEN
SW4:OPEN
SW5,SW6:OPEN
SW7,SW8:SHORT
SW9:任意(
図12ではVSS)
SW10:任意(
図12ではVSS)
【0041】
図13は、
図11における書き込み時間に対するM2の閾値の関係を示す図である。上述した
図11の状態では、M2の閾値が
図13のように経時的に変化して徐々に増加する。書き込み時間を任意に調整することでM2の閾値Vthを所望の基準電圧VREFより大きな値にする(確認は
図12のように、外部から調整用電流Irefを印可して、VREFをモニタする)。
【0042】
<調整シーケンス(2)>
図14は、
図10に示した本発明に係る基準電圧発生回路の実際の回路例における所望のエンハンスメント状態に遷移させる状態(M2はディプレッション状態となっている)を示す図である。
不揮発性記憶素子M2を一旦ディプレッション状態にすることで閾値を徐々に下げ、不揮発性記憶素子M2を所望のエンハンスメント状態(閾値を所望の基準電圧VREFと同じに)にすることで所望の基準電圧VREFが出力されるように調整する。
図12のように、外部から調整用電流Irefを印可して、VREFをモニタして確認しながら実施する。VREFが所望の電圧より下がりすぎた場合は、<調整シーケンス(1)>に戻る。このエンハンスメント状態でのSWの状態は、以下のようになる。
SW1:VDD
SW2:VPP
SW3:OPEN
SW4:SHORT
SW5,SW6,SW7,SW8:OPEN
SW9:任意(
図14ではVSS)
SW10:VSS
【0043】
図15は、
図14における書き込み時間に対するM2の閾値の関係を示す図である。
図14の状態では、M2の閾値が
図15のように経時的に変化して徐々に減少する。書き込み時間(消去時間)を任意に調整することでM2の閾値Vthを所望の基準電圧VREF値にする。
図16は、調整時間に対する基準電圧VREFの遷移状態を示す図である。上述した<調整シーケンス(1)>及び<調整シーケンス(2)>の基準電圧VREFの遷移状態を示している。これで外部から調整用電流Irefを使ったときのVREFの調整は終了する。
【0044】
<調整シーケンス(3)>
図17は、
図10に示した本発明に係る基準電圧発生回路の実際の回路例におけるエンハンスメント状態に遷移させる状態を示す図である。
不揮発性記憶素子M1を一旦エンハンスメント状態にする。このとき所望のエンハンスメント状態にあるM2は接続しない。このエンハンスメント状態でのSWの状態は、以下のようになる。
SW1:VSS
SW2:VSS(任意でもよい)
SW3:SHORT
SW4:OPEN
SW5,SW6,SW7,SW8:OPEN
SW9:VPP
SW10:任意(
図17ではVSS)
【0045】
図18は、
図17における書き込み時間に対するM1の閾値の関係を示す図である。
図17の状態では、M1の閾値が
図18のように経時的に変化して徐々に増加する。書き込み時間を任意に調整することでM1の閾値Vthを一旦エンハンスメント状態にする。
<調整シーケンス(4)>
図19は、
図10に示した本発明に係る基準電圧発生回路の実際の回路例における所望のエンハンスメント状態に遷移させる状態を示す図である。
不揮発性記憶素子M1を所望のディプレッション状態にすることで所望の基準電圧VREFが出力されるように調整する。このエンハンスメント状態でのSWの状態は、以下のようになる。
SW1:VPP
SW2:VSS
SW3:SHORT
SW4:OPEN
SW5,SW6,SW7,SW8:OPEN
SW9:VSS
SW10:任意(
図19ではVSS)
【0046】
図20は、
図10に示した本発明に係る基準電圧発生回路の実際の回路例における基準電圧VREFを確認する状態を示す図である。この確認状態でのSWの状態は、以下のようになる。
SW1:VDD
SW2:VSS
SW3:OPEN
SW4:OPEN
SW5,SW6:SHORT
SW7,SW8:SHORT
SW9:任意(
図20ではVSS)
SW10:任意(
図20ではVSS)
【0047】
図20のように、所望のエンハンスメント状態にあるM2も接続し、VREFをモニタして確認しながら実施する。VREFが所望の電圧より上がりすぎた場合は、上述した<調整シーケンス(3)>に戻る。
図21は、
図19における書き込み時間に対するM1の閾値の関係を示す図である。
図19の状態では、M1の閾値が
図21のように経時的に変化して徐々に減少する。書き込み時間(消去時間)を調整することで、所望の基準電圧VREF値が出力されるように、M1の閾値Vthを調整する。これはM1に流れる電流が外部から印可した調整用電流Irefと同じ電流になるように調整しているここと同じである。
【0048】
図22は、調整時間に対する基準電圧VREFの遷移状態を示す図である。上述した<調整シーケンス(3)>及び<調整シーケンス(4)>の基準電圧VREFの遷移状態を示している。これでVREFの調整は終了する。
また、上述した
図8(a),(b)に示した第2の調整方法による調整シーケンスは、以下に説明する<調整シーケンス(1)>乃至<調整シーケンス(4)>のとおりである。
【0049】
<調整シーケンス(1)>
図23は、
図10に示した本発明に係る基準電圧発生回路の実際の回路例におけるエンハンスメント状態に遷移させる状態を示す図である。不揮発性記憶素子M1を一旦エンハンスメント状態にする。このエンハンスメント状態でのSWの状態は、以下のようになる。
SW1:VSS
SW2:VSS
SW3:SHORT
SW4:OPEN
SW5,SW6,SW7,SW8:OPEN
SW9:VPP
SW10:任意(
図23ではVSS)
【0050】
図24は、
図23における書き込み時間に対するM1の閾値の関係を示す図である。
図23の状態では、M1の閾値が
図24のように経時的に変化して徐々に増加する。書き込み時間を調整することでM1の閾値Vthを一旦エンハンスメント状態にする。
<調整シーケンス(2)>
図25は、
図10に示した本発明に係る基準電圧発生回路の実際の回路例における所望のエンハンスメント状態に遷移させる状態を示す図である。
不揮発性記憶素子M1を所望のディプレッション状態にすることで所望の基準電流IREFが流れるように調整する。IREFをモニタして確認しながら実施する。IREFが所望の電流より大きくなった場合は、上述した<調整シーケンス(1)>に戻る。このディプレッション状態でのSWの状態は、以下のようになる。
SW1:VPP
SW2:VSS
SW3:SHORT
SW4:OPEN
SW5,SW6,SW7,SW8:OPEN
SW9:VSS
SW10:任意(
図25ではVSS)
【0051】
図26は、
図10に示した本発明に係る基準電圧発生回路の実際の回路例における基準電流IREFを確認する状態を示す図である。この確認状態でのSWの状態は、以下のようになる。
SW1:VDD
SW2:VSS
SW3:OPEN
SW4:OPEN
SW5,SW6:SHORT
SW7,SW8:OEPN
SW9:任意(
図26ではVSS)
SW10:任意(
図26ではVSS)
【0052】
図27は、
図25における書き込み時間に対するM1の閾値の関係を示す図である。
図25の状態では、M1の閾値が
図27のように経時的に変化して徐々に増加する。書き込み時間(消去時間)を調整することでM1の閾値Vthを、所望の基準電流Irefが出力されるように調整する。
図28は、調整時間に対する基準電流IREFの遷移状態を示す図である。上述した<調整シーケンス(1)>及び<調整シーケンス(2)>の基準電流IREFの遷移状態を示している。これでIREFの調整は終了する。
【0053】
<調整シーケンス(3)>
図29は、
図10に示した本発明に係る基準電圧発生回路の実際の回路例におけるエンハンスメント状態に遷移させる状態を示す図である。
不揮発性記憶素子M2をエンハンスメント状態(閾値を基準電圧VREFよりも大きく)にする。このエンハンスメント状態でのSWの状態は、以下のようになる。
SW1:VDD
SW2:VSS
SW3:OPEN
SW4:SHORT
SW5,SW6,SW7,SW8:OPEN
SW9:任意(
図29ではVSS)
SW10:VPP
【0054】
図30は、
図10に示した本発明に係る基準電圧発生回路の実際の回路例における基準電圧VREFを確認する状態を示す図である。この確認状態でのSWの状態は、以下のようになる。
SW1:VDD
SW2:VSS
SW3:OPEN
SW4:OPEN
SW5,SW6:OPEN
SW7,SW8:SHORT
SW9:任意(
図30ではVSS)
SW10:任意(
図30ではVSS)
【0055】
図31は、
図29における書き込み時間に対するM2の閾値の関係を示す図である。
図29の状態では、M2の閾値が
図31のように経時的に変化して徐々に増加する。書き込み時間を調整することでM2の閾値Vthを所望の基準電圧VREFより大きな値にする(確認は
図30)。
【0056】
<調整シーケンス(4)>
図32は、
図10に示した本発明に係る基準電圧発生回路の実際の回路例における所望のエンハンスメント状態に遷移させる状態(M2はディプレッション状態となっている)を示す図である。
不揮発性記憶素子M2を所望のエンハンスメント状態にすることで所望の基準電圧VREFが出力されるように調整する。(
図20のように)所望のディプレッション状態にあるM1も接続し、VREFをモニタして確認しながら実施する。
VREFが所望の電圧より下がりすぎた場合は、上述した<調整シーケンス(3)>に戻る。このエンハンスメント状態でのSWの状態は、以下のようになる。
SW1:VDD
SW2:VPP
SW3:OPEN
SW4:SHORT
SW5,SW6,SW7,SW8:OPEN
SW9:任意(
図32ではVSS)
SW10:VSS
【0057】
図33は、
図32における書き込み時間に対するM2の閾値の関係を示す図である。
図32の状態では、M2の閾値が
図33のように経時的に変化して徐々に減少する。書き込み時間(消去時間)を調整することでM2の閾値Vthを所望の基準電圧VREF値にする。
図34は、調整時間に対する基準電圧VREFの遷移状態を示す図である。上述した<調整シーケンス(3)>及び<調整シーケンス(4)>の基準電圧VREFの遷移状態を示している。これでVREFの調整は終了する。
図35は、本発明に係る基準電圧発生方法を説明するためのフローチャートを示す図である。本発明の基準電圧発生方法は、各々の回路素子の特性の相違に基づいて発生する基準電圧の製造バラツキを無くすようにした基準電圧方法である。
少なくとも1個以上のディプレッション型MOSトランジスタと、流れる電流がディプレッション型MOSトランジスタに流れる電流と同じ電流又は関連する電流である少なくとも1個以上のエンハンスメント型MOSトランジスタとを備え、各MOSトランジスタが不揮発性記憶素子である。
【0058】
まず、複数の不揮発性記憶素子の各々に流れる電流が、互いに同じ又は関連する電流である複数の不揮発性記憶素子のうち少なくとも1個に対してエンハンスメント状態にするステップ(S1)と、次に、複数の不揮発性記憶素子のうち少なくとも1個に対してディプレッション状態にするステップ(S2)と、次に、基準電圧を発生するステップ(S3)とを有する。
【0059】
図36は、本発明に係る他の基準電圧発生方法を説明するためのフローチャートを示す図である。本発明の他の基準電圧発生方法は、各々の回路素子の特性の相違に基づいて発生する基準電圧の製造バラツキを無くすようにした基準電圧方法である。
少なくとも1個以上のディプレッション型MOSトランジスタと、流れる電流がディプレッション型MOSトランジスタに流れる電流と同じ電流又は関連する電流である少なくとも1個以上のエンハンスメント型MOSトランジスタとを備え、各MOSトランジスタが不揮発性記憶素子である。
【0060】
まず、複数の不揮発性記憶素子の各々に流れる電流が互いに同じ又は関連する電流である複数の不揮発性記憶素子のうち少なくとも1個に対して書き込み動作を行うステップ(S11)と、次に、複数の不揮発性記憶素子のうち少なくとも1個に対して消去動作を行うステップ(S12)と、次に、基準電圧を発生するステップ(S13)とを有する。
生成される基準電圧VREFは、ディプレッションMOS及びエンハンスメントMOSを使用した回路と同じである。しかしながら、生成される基準電圧の調整は、不揮発性記憶素子により任意に調整することができる。また、同じ不揮発性記憶素子を使うため、プロセス的なばらつきも抑制できる。
【0061】
本発明は、FNトンネリング(ファウラ−ノルドハイム トンネリング)を使用した不揮発性記憶素子を例にしたが、他の方法(CHE:チャネルホットエレクトロン注入)などで閾値を変動させる不揮発性記憶素子でもよい。
また、本発明の例では、特許文献1に記載の回路構成を例としたが、特許文献3や特許文献4などの、少なくとも1個以上のディプレッション型MOSトランジスタと少なくとも1個以上のエンハンスメント型MOSトランジスタとを有し、一方のトランジスタに流れる電流と同じ電流または関連する電流が他方のトランジスタに流れる回路構成であれば、同様に不揮発性記憶素子を使った基準電圧発生回路を構成できることは明らかである。