特許第5750080号(P5750080)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5750080
(24)【登録日】2015年5月22日
(45)【発行日】2015年7月15日
(54)【発明の名称】紫外光照射ユニット及びその実装方法
(51)【国際特許分類】
   G07D 7/12 20060101AFI20150625BHJP
【FI】
   G07D7/12
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-94142(P2012-94142)
(22)【出願日】2012年4月17日
(65)【公開番号】特開2013-222346(P2013-222346A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2014年4月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】510192019
【氏名又は名称】株式会社ヴィーネックス
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(74)【代理人】
【識別番号】100152571
【弁理士】
【氏名又は名称】新宅 将人
(74)【代理人】
【識別番号】100168767
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 淳一
(72)【発明者】
【氏名】日口 慎介
【審査官】 大谷 謙仁
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−112301(JP,A)
【文献】 特開2010−266931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
実装基板上に実装される紫外光照射ユニットであって、
光を外部に照射するための開口部と、この開口部につながる凹部空間とが形成されたパッケージと、
前記凹部空間の底部に固定され、紫外領域の光を発光する紫外光LED素子と、
前記凹部空間の底部及びその近傍に配置され、前記紫外光LED素子を覆う透明樹脂と、
前記パッケージ上面の前記開口部を除く部位において、接着剤により、前記凹部空間を密閉するように前記パッケージに接着された紫外光透過フィルタとを備え、
前記透明樹脂の表面と前記紫外光透過フィルタの前記透明樹脂に対向する対向面との間には所定の間隔が隔てられており、
前記紫外光透過フィルタは、ガラスに多層膜を蒸着したものであって、該蒸着面側が前記対向面である、紫外光照射ユニット。
【請求項2】
実装基板上に実装される紫外光照射ユニットであって、
光を外部に照射するための開口部と、この開口部につながる凹部空間とが形成されたパッケージと、
前記凹部空間の底部に固定され、紫外領域の光を発光する紫外光LED素子と、
前記凹部空間の底部及びその近傍に配置され、前記紫外光LED素子を覆う透明樹脂と、
前記パッケージ上面の前記開口部を除く部位において、接着剤により、前記凹部空間を密閉するように前記パッケージに接着された紫外光透過フィルタとを備え、
前記透明樹脂の表面と前記紫外光透過フィルタの前記透明樹脂に対向する対向面との間には所定の間隔が隔てられており、
前記紫外光透過フィルタが、385nmより長い波長の紫外光及び可視光をカットする特性を持つ、紫外光照射ユニット。
【請求項3】
実装基板上に実装される紫外光照射ユニットであって、
光を外部に照射するための開口部と、この開口部につながる凹部空間とが形成されたパッケージと、
前記凹部空間の底部に固定され、紫外領域の光を発光する紫外光LED素子と、
前記凹部空間の底部及びその近傍に配置され、前記紫外光LED素子を覆う透明樹脂と、
前記パッケージ上面の前記開口部を除く部位において、接着剤により、前記凹部空間を密閉するように前記パッケージに接着された紫外光透過フィルタとを備え、
前記透明樹脂の表面と前記紫外光透過フィルタの前記透明樹脂に対向する対向面との間には所定の間隔が隔てられており、
前記紫外光透過フィルタの前記透明樹脂に対向する対向面の中心部から前記対向面に垂直に作成した仮想線が、前記紫外光LED素子又はその近傍を通る、紫外光照射ユニット。
【請求項4】
前記紫外光透過フィルタの周辺寸法が前記パッケージの周辺寸法とほぼ同じ大きさである請求項1から請求項3の何れかに記載の紫外光照射ユニット。
【請求項5】
前記透明樹脂の表面と前記紫外光透過フィルタの前記対向面との「所定の間隔」は、0.2mm〜2mmである、請求項1から請求項4の何れかに記載の紫外光照射ユニット。
【請求項6】
紫外光照射ユニットの実装方法であって、
光を外部に照射するための開口部と、この開口部につながる凹部空間とが形成されたパッケージと、前記凹部空間の底部に固定され、紫外領域の光を発光する紫外光LED素子と、前記凹部空間の底部及びその近傍に配置され、前記紫外光LED素子を覆う透明樹脂とを含む紫外光照射ユニット本体を実装基板に実装する工程と、
前記装着された紫外光照射ユニット本体のパッケージ上面の前記開口部を除く部位に接着剤を塗布する工程と、
該接着剤により、前記透明樹脂の表面と所定の間隔を隔てて、前記凹部空間を密閉するように、紫外光透過フィルタを、前記パッケージに接着する工程とを有する、紫外光照射ユニットの実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有価証券、紙幣、クレジットカード等の紙葉類の鑑別を行うための光学ラインセンサ装置に装備される紫外光照射ユニット及びその実装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近の印刷技術や複写技術の目覚ましい性能向上に伴い、紙葉類の偽造がますます精巧になってきており、これらを的確に判別して排除することが社会秩序を維持するために重要視されている。特にATMや紙幣処理機など紙幣を取り扱う機器において、より高速で高性能な真偽判定目的の鑑別システムが強く求められてきている。
これら紙葉類の鑑別方法として、光学ラインセンサ装置によるパターン識別が、以前より用いられてきている。
【0003】
光学ラインセンサ装置には、縮小レンズ、ミラー、CCDを組み合わせた縮小光学ラインセンサ装置と、セルフォック(登録商標)レンズなどの等倍光学系を用いた密着型光学ラインセンサ装置とがある。縮小光学系はシステム単価が安く、解像度を容易に調整できること、焦点深度が深いなどの長所がある反面、センサの容積が大きくなることやホコリや異物によるトラブルが多い欠点がある。そこで、最近はメンテナンスの容易な密着型の光学ラインセンサ装置が広く使われてきている。
【0004】
一方、紙葉類には、偽造防止を目的として、紫外光照射によって蛍光を発するインク、繊維、スレッドなどが真偽判定の目印として、所定の部位に埋め込まれているものが多くなっている。
そこでATMや紙幣処理機など紙葉類を取り扱う機器においては、その機器に搭載される鑑別システムとして、紫外光を光源とした光学ラインセンサ装置を設置することが望まれるようになってきている。
【0005】
紫外光を照射する光学ラインセンサ装置の光源として冷陰極管、ハロゲンランプ、紫外光LED光源等が使用可能であるが、特に最近は可視光成分が少なく、輝度が向上した窒化ガリウム系の紫外光LED光源が好んで使用されている。光学ラインセンサ装置の受光部(紙葉類から発生した蛍光などを含む可視光を受光する素子)を構成するラインセンサとしては、ラインCCD素子、センサ部を内蔵したセンサIC、アモルファスシリコン素子などが用いられる。
【0006】
下記特許文献1では、紫外光を照射する光学ラインセンサ装置が開示されている。紫外光LED光源により、紫外光を発光させて対象紙葉類に照射することで、対象紙葉類に含まれるインクなどの蛍光成分が紫外光に励起されて可視光及び赤外光の蛍光を発し、これを受光部において検出して画像データとし、これをもとに真偽判別を実施するものである。
【0007】
また、下記特許文献2では、蛍光の読み取り精度を向上させるために、紫外光LED光源から照射される光のうち紫外成分(例えば300〜400nm程度)を選択的に透過させ、他の波長成分をカットする(以下、フィルタ性能における「カット」とは100%遮断することだけではなく、数%程度は透過することを含む)紫外光透過フィルタを備えた光学ラインセンサ装置が開示されている。
【0008】
以下、紫外光LED光源と、紫外光透過フィルタと、紫外光LED光源が実装される実装基板を組み合わせた構成を「紫外光照射ユニット」という。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−266931号公報
【特許文献2】特開2004−265104号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
紙葉類に印刷されている番号や模様などのインクから紫外光照射に基づいて発光される蛍光出力は極めて微弱であり、光学ラインセンサ装置において、十分な検出精度を確保できない場合がある。
例えば、紫外光LED光源の発光には、微弱な紫外光の長波長成分や可視光成分(波長385nm〜700nmの成分で、以下「蛍光阻害成分」という)が含まれている場合がある。この蛍光阻害成分のため、光学ラインセンサ装置の受光部で検出される信号出力が紙葉類に印刷されている番号や模様などのインクから発光される赤や緑の蛍光を覆ってしまうという現象がある。
【0011】
よって、蛍光検出精度を上げるには、紫外光透過フィルタとして、特許文献2記載の、紫外光LED光源から照射される光のうち紫外光成分(300〜400nm程度)を選択的に透過させるフィルタでは不十分で、385nm程度以上の紫外光及び可視光をカットする必要がある。
また、このような紫外光透過フィルタとして、多層膜干渉波フィルタが耐環境性や経済的な理由からよく用いられるが、光線の入射角が傾くと、カット波長がずれて蛍光阻害成分が漏れ、紫外光の透過率も減少する特性を持っている。紫外光透過フィルタに対する紫外光LED光源の照射光の入射角が傾くと、蛍光出力に対する蛍光阻害成分の割合が増えることになり、蛍光検出性能が低下してしまう。従って、蛍光検出性能を高めるためには、紫外光LED光源からの照射紫外光LED光源面(LED光源を含み照射方向に垂直な面)に対して紫外光透過フィルタをできるだけ平行に設置しなければならない。
【0012】
しかしながら、特許文献2では、導光体から出射する紫外光に対して紫外光透過フィルタを斜めに配置しているために、紫外光透過フィルタの必要面積が大きいにもかかわらず蛍光阻害成分の漏れを完全に防止することは困難である。
また、紫外光LED光源に対して紫外光透過フィルタを平行に設置しようとすれば構造は複雑にならざるを得ない。
【0013】
そこで本発明は、蛍光阻害成分ができるだけ漏れないように、高精度でばらつきの少ない蛍光検出を実現するとともに、コスト低減に寄与することができる紫外光照射ユニット、及びその実装基板への実装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の紫外光照射ユニットは、光を外部に照射するための開口部とこの開口部につながる凹部空間とが形成されたパッケージと、凹部空間の底部に固定され、紫外領域の光を発光する紫外光LED素子と、凹部空間の底部及びその近傍に配置され、紫外光LED素子を覆う透明樹脂と、パッケージ上面の開口部を除く部位において、接着剤により、凹部空間を密閉するようにパッケージに接着された紫外光透過フィルタと備えるものであり、透明樹脂の表面と紫外光透過フィルタの透明樹脂に対向する対向面との間には所定の間隔が隔てられている。
【0015】
この構成によれば、紫外光透過フィルタをパッケージに直接接着することにより、紫外光透過フィルタをパッケージの外部に配置する場合と比べて、高価な紫外光透過フィルタの面積を小さくすることができ、製造コストを低減することができる。また紫外光透過フィルタは、凹部空間を密閉するようにパッケージに接着されているため、紫外光LED素子から紫外光透過フィルタを通らないで漏れる蛍光阻害成分を減らすことができる。また紫外光LED素子は凹部空間の底部に固定され、紫外光LED素子からの照射光は、凹部空間の壁で反射しながら開口部から出射されるので、接着剤内で屈折して光路が変化することがない。またパッケージ上面の開口部を除く部位において接着剤を使用しているので、使用する接着剤の量を減らすことができる。また透明樹脂の表面と紫外光透過フィルタの透明樹脂に対向する対向面との間には所定の間隔が隔てられていることにより、凹部空間の容積が確保でき、紫外光照射ユニットの実装時に凹部空間内の空気などの気体が過度に膨張することを防ぐという効果もある。
【0016】
紫外光透過フィルタの周辺寸法は、パッケージの周辺寸法とほぼ同じ大きさであることが好ましい。これにより、紫外光照射ユニットの実装時に紫外光透過フィルタの位置決めを容易に行い、浮きや位置ずれを抑えることができる。よって、蛍光検出性能のばらつきを抑えるとともに、紫外光透過フィルタの大きさを最小限に抑えることができる。
紫外光透過フィルタは、ガラスに多層膜を蒸着したものであれば、該蒸着面側が対向面となるように設置することが好ましい。これにより、紫外光がガラス内で屈折してから多層膜干渉波フィルタに入射することによる、蛍光阻害成分の漏れを減らすことができる。
【0017】
紫外光透過フィルタは、385nmより長い波長の紫外光及び可視光をカットする特性を持つフィルタであることが好ましい。紫外光透過フィルタを波長385nm以上の紫外光及び可視光をカットする特性とすることで、蛍光阻害成分を最適にカットし、蛍光阻害成分の漏れを減らすことができる。
紫外光透過フィルタの透明樹脂に対向する対向面の中心部から、対向面に垂直に作成した仮想線が紫外光LED素子又はその近傍を通るように紫外光透過フィルタを設置すれば、紫外光LED素子から紫外光透過フィルタを通って出射する紫外光の透過量を最大にすることができるとともに、蛍光阻害成分が紫外光透過フィルタを通って漏れ出るのを防ぐことができる。
【0018】
また本発明の紫外光照射ユニットの実装方法は、(1)光を外部に照射するための開口部と、この開口部につながる凹部空間とが形成されたパッケージと、凹部空間の底部に固定され、紫外領域の光を発光する紫外光LED素子と、凹部空間の底部及びその近傍に配置され、紫外光LED素子を覆う透明樹脂とを含む紫外光LED光源本体を実装基板に実装する工程と、(2)装着された紫外光LED光源本体のパッケージ上面の開口部を除く部位に接着剤を塗布する工程と、(3)該接着剤により、透明樹脂の表面と所定の間隔を隔てて、凹部空間を密閉するように、紫外光透過フィルタを、パッケージに接着する工程とを有する実装方法である。
【0019】
この紫外光照射ユニットの実装方法によれば、紫外光LED光源を実装基板に実装する工程の後、接着剤を塗布する工程と、紫外光透過フィルタを紫外光LED光源上に接着する工程とを行う。紫外光LED光源を実装基板に実装する工程で、半田のリフロー時などに温度上昇が起こるが、紫外光透過フィルタ接着部をこの高温にさらすことを防止することができる。よって、紫外光透過フィルタ接着部の変質を防ぐとともに、紫外光LED光源と紫外光透過フィルタ間の凹部空間に存在する空気の過度な熱膨張による紫外光透過フィルタ接着部の変形を防ぐことができる。したがって、紫外光透過フィルタの接着強度の低下や、紫外光透過フィルタの浮きや位置ずれが起こるのを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】紙葉類の蛍光画像を検出することのできる光学ラインセンサ装置を概略的に示す断面図である。
図2】本発明の紫外光照射ユニット3を組み込んだライン光源ユニット9の分解構成を示す斜視図である。
図3】紫外光LED光源の内部構成を概略的に示す断面図である。
図4】実装基板に実装された紫外光照射ユニット3を示す断面図である。
図5】紫外光透過フィルタに対して紫外光LED光源の照射光が垂直に入射した場合(実線)と斜めに入射した場合(破線)について、紫外光透過フィルタの透過光スペクトルを測定したグラフである。
図6】本発明の紫外光照射ユニットの実装方法を説明するための工程図である。
図7】紫外光照射ユニット3におけるパッケージ7と紫外光透過フィルタ2の接着状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態の紫外光照射ユニットについて、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、紙葉類の蛍光画像を検出することのできる光学ラインセンサ装置を示す断面図である。原稿面19は同図のx−y平面に平行に設定され、原稿の走向方向はx方向に設定されている。
【0022】
この光学ラインセンサ装置は、原稿に紫外光を照明するための本発明の紫外光照射ユニット3を組み込んだライン光源ユニット9と、原稿から発生した蛍光を受光ユニット14に導くためのレンズアレイ16と、これらをごみの進入や障害から保護するとともに原稿を滞りなく走行させるための保護ガラス15とを備えている。また、レンズアレイ16と受光素子ユニット14の間には、蛍光検出精度を上げるための紫外光カットフィルタ18が設置されている。レンズアレイ16は、原稿の等倍の像を受光ユニット14の受光面に結ぶ光学系であり、その光軸は原稿面19に垂直、すなわちz方向に平行である。レンズアレイ16の2つの焦点は受光ユニット14の受光面と焦点面17とに設定されている。
【0023】
これらのライン光源ユニット9、レンズアレイ16、受光ユニット14、保護ガラス15及び紫外光カットフィルタ18は、長軸方向(図1のy方向)に長く形成されており、原稿に正対するように、原稿面19と平行に設置されている。またその長軸方向の幅は、原稿の横幅を含むように設定されている。
ライン光源ユニット9から、焦点面17に斜めに紫外光が照射され、原稿面19を走行する原稿から発生した蛍光はレンズアレイ16、紫外光カットフィルタ18を通って、受光ユニット14に結像し、光電変換により光出力として原稿の蛍光画像が読み取られる。受光ユニット14の受光素子には、ラインCCD素子、センサ部を内蔵したセンサIC、又はアモルファスシリコン素子などが用いられる。
【0024】
図2は、本発明の紫外光照射ユニット3を組み込んだライン光源ユニット9の分解構成を示す斜視図である。ライン光源ユニット9は、y方向に長手状に延びる透明な導光体11、導光体11の底面と両側面を覆うカバー部材12、及びカバー部材12に取り付けられる紫外光照射ユニット3から構成される。紫外光照射ユニット3は、実装基板10に実装された紫外光LED光源1と、紫外光透過フィルタ2とを含む構成である。
【0025】
カバー部材12の底面には貫通孔13が開いており、実装基板10に実装された紫外光照射ユニット3がこの貫通孔13を貫通するように、実装基板10をカバー部材12の底面に取り付けている。
紫外光照射ユニット3の形状はパッケージ7の形状に依存する。パッケージ7の形状は限定されないが、図2に示すような立方体あるいは直方体であっても良く、この他、円柱体、多角柱体であってもよい。しかしいかなる形であっても、その一面には光を外部に照射するための開口部と、この開口部につながる凹部空間8とが形成されている。
【0026】
図3は、紫外光LED光源1の断面構成を示す図である。紫外光LED光源1は、光を外部に照射するための開口部が形成されたパッケージ7内側の底部に、例えば波長300nm以上の紫外領域の光を発光する紫外光LED素子4が固定され、紫外光LED素子4は透明樹脂6で覆われている。透明樹脂6には、紫外光劣化の少ないシリコーン樹脂がよく用いられる。透明樹脂6は、パッケージ7からはみ出さないようにパッケージ7の高さより低い位置まで充填されている。また、パッケージ7は紫外光LED素子4を駆動させるための電源端子(図示せず)を備え、これらはワイヤーボンディング等によって紫外光LED素子4に接続されている。パッケージ7上部の開口部を除く部分は平らな形状をしており、紫外光透過フィルタを平行に設置するには適した形状となっている。
【0027】
図4は、実装基板10に実装された紫外光照射ユニット3を示す断面図である。紫外光照射ユニット3は、紫外光LED光源1の上部に紫外光透過フィルタ2を接着剤5によって固定した構成となっている。
紫外光照射ユニット3は、開口部につながる凹部空間8が形成された断面凹形状のパッケージ7と、凹部空間8の底部に固定され、紫外領域の光を発光する紫外光LED素子4と、凹部空間8の底部及びその近傍に配置され、紫外光LED素子4を覆う透明樹脂6と、パッケージ7の上面の開口部を除く部位において、接着剤5により、凹部空間8を密閉するようにパッケージに接着された紫外光透過フィルタ2と備え、透明樹脂6の表面と紫外光透過フィルタ2の透明樹脂6に対向する対向面2bとの間には所定の間隔Lが隔てられている。紫外光LED光源1は、紫外光LED素子4、透明樹脂6及びパッケージ7を含んで構成されている。
【0028】
紫外光LED光源1における紫外光LED素子4が発光する紫外光は、波長が短くて発光強度が強いほど大きい蛍光出力を与えるが、窒化ガリウム系では前述した蛍光阻害成分をできるだけ含まない350nm〜380nmの波長範囲にピークを持つ紫外光LED素子が実用的で望ましい。例えば、日亜化学工業(株)製の表面実装タイプの紫外光LED素子を用いることができる。
【0029】
実装基板10は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などで形成された薄い絶縁版であり、実装基板上に銅箔からなる配線パターン(図示せず)が形成されている。紫外光LED光源1の電源端子を実装基板の配線パターンと接続することにより、紫外光LED光源1を実装基板10に設置し固定することができるとともに、所定の駆動電源(図示せず)から実装基板10の配線パターンを通して紫外光LED光源1に電力を供給してその発光を駆動・制御することができる。
【0030】
紫外光透過フィルタ2は、パッケージ7への取り付けに適したフィルム状もしくは板状であることが必要である。紫外光透過フィルタ2としては、色ガラスフィルタ、多層膜干渉波フィルタなどがあるが、経済的で耐環境性が高く、鋭敏な波長カット特性により蛍光阻害成分を効率良くカットできる多層膜干渉波フィルタが望ましい。例えば、硼珪酸ガラス板等のガラス表面に酸化珪素と酸化タンタルの多層膜を蒸着することで得られる多層膜干渉波フィルタを用いることができる。この多層膜の光透過特性としては、紫外光LED光源1から照射される紫外光のうち、蛍光阻害成分の波長域(好ましくは385nmより長い波長の紫外光及び可視光、具体的には385nm〜700nmの波長成分)をできるだけカットする特性を有することが望ましい。
【0031】
接着剤5の材料としては、紫外光に対する耐性があり、かつ、紫外光透過フィルタ2とパッケージ7との接着性が良いものを選定しなければならない。例えば、紫外光透過フィルタ2の実装基板として前述したガラス、パッケージ7として酸化アルミニウム・セラミックス焼結体を用いる場合、熱硬化性シリコーン系接着剤を好的に用いることができる。なお熱硬化性シリコーン系接着剤以外でも、要求性能を満足するものであれば使用可能である。
【0032】
紫外光透過フィルタ2は、図4に示すように、紫外光LED素子4に正対して配置されることが望ましい。すなわち、紫外光透過フィルタ2の透明樹脂6に対向する対向面2bの中心部から、対向面2bに垂直に作成した仮想線Cが紫外光LED素子4又はその近傍を通ることが好ましい。この配置により、紫外光LED素子4から正面方向に出射した光は紫外光透過フィルタ2の対向面2bにほぼ垂直に侵入することができる。
【0033】
図5は、紫外光透過フィルタに対して紫外光LED光源の照射光が垂直に入射した場合(実線)と斜めに入射した場合(破線)について、紫外光透過フィルタの透過光スペクトルを測定したグラフである。紫外光透過フィルタは、前述したようにガラス表面に多層膜干渉波フィルタを形成することによって製造したものである。光が紫外光透過フィルタの表面斜めに、たとえば30度で入射した場合(図5の破線)は、図5の“A”に示すように、蛍光阻害成分の波長域の透過率が上昇し、蛍光阻害成分が大量に漏れてしまうことがわかる。また図5の“B”に示すように、紫外光の透過率が下がり、紫外光量が減衰することがわかる。
【0034】
図4において、紫外光透過フィルタ2の対向面2bと透明樹脂6の表面との間の隙間を“L”で示している。この隙間Lの範囲は、0.2mm〜2mmであることが好ましく、より好ましくは0.2mm〜0.6mmである。2mmより大きいと、パッケージ7の背が高くなり、カバー部材12の底面の厚みが大きくなりライン光源ユニット9全体の低背化が図れない。0.2mmより小さいと、紫外光透過フィルタ2の対向面2bと透明樹脂6の表面との間の凹部空間8の容積を確保できなくなり、後述する紫外光照射ユニットの実装工程において、接着剤5硬化させるときに、凹部空間8内の空気の熱膨張を抑えることができなくなる。したがって、接着剤5の熱硬化時の空気の熱膨張に基づくフィルタの浮きや位置ずれが発生するおそれがある。
【0035】
接着材5の塗布場所としては、紫外光LED光源1のパッケージ7上面の開口部を除く部分とする。紫外光透過フィルタ2には塗布しないほうが良い。塗布量も、接着剤5がパッケージ7の凹部空間8に入らないように、適性量にすべきである。接着剤5がパッケージ7の凹部空間8に入り込むと、紫外光LED素子4から出射した紫外光が接着剤5に入射して屈折されるため、紫外光透過フィルタに対して垂直入射の条件が満たされない光が増えるため、図5の“A”に示したように蛍光阻害成分の波長域の透過率が上昇し、蛍光阻害成分がパッケージ7の外部に多量に漏れるおそれがある。
【0036】
以上のように、紫外光透過フィルタ2を、紫外光LED素子4に正対するように配置し、紫外光透過フィルタ2を紫外光LED光源1のパッケージ7の開口部を除く部分で接着することで、紫外光LED素子4から出射した紫外光は、図4の破線で示すように、透明樹脂6を抜け、隙間L、紫外光透過フィルタ2を通って紫外光透過フィルタ2にほぼ垂直に進入し、紫外光透過フィルタ2の表面から出射される。したがって、透明樹脂6を抜けた紫外光は蛍光阻害成分が効率的にカットされる。
【0037】
また、紫外光透過フィルタ2としてガラス面に多層膜を蒸着した多層膜干渉波フィルタを用いた場合には、その蒸着面を紫外光LED光源1側とすることが望ましい。これは、その蒸着面を反対に設置すると、紫外光がガラス内で屈折してから多層膜干渉波フィルタに入射するために蛍光阻害成分の漏れが多くなるためである。
次に本発明における、紫外光照射ユニットのリフロー実装方法について、図6を参照しながら詳細に説明する。
【0038】
まず、図6(a)に示すように、紫外光LED光源1を実装基板10へ実装する。表面実装タイプの紫外光LED光源1を使用する場合、実装は、無鉛半田でのリフロー実装により行うことができる。紫外光LED光源1が複数ある場合でも、実装基板上に同時に実装が可能である。この際、紫外光LED光源1の周囲温度は、半田を溶融させるために最大260℃まで上昇するが、紫外光透過フィルタ2は未実装状態であるため、紫外光透過フィルタ2の接着不良、浮き、位置ずれへの影響はない。
【0039】
次に、図6(b)に示すように、紫外光LED光源1のパッケージ7の開口部を除く部分に接着剤5を塗布する。接着剤5の塗布の対象を紫外光透過フィルタ2でなく、紫外光LED光源1のパッケージ5上に直接行うことで、接着剤5が紫外光LED1の開口部に入るのを防ぐことができる。この際前述したように、接着材5の塗布場所をパッケージ7上面の開口部を除く部分とし、塗布量も適正な塗布量とすることにより、紫外光LED素子4から出射した紫外光のうち蛍光阻害成分がパッケージ7の外部に漏れることを防ぐことができる。
【0040】
次に、図6(c)に示すように、紫外光LED光源1上に塗布された接着剤5上に紫外光透過フィルタ2を浮きや位置ずれがないよう載置して、凹部空間8を密閉する。紫外光LED光源が複数ある場合は、図6(b)の接着剤の塗布と図6(c)の紫外光透過フィルタの設置を、紫外光LED光源の個数分繰り返すことになる。
接着剤5として熱硬化性シリコーン接着剤を使用した場合、紫外光透過フィルタを設置後、図6(c)の状態でオーブン等により接着剤を硬化させる必要がある。硬化条件の一例として、110℃で90分放置により接着剤5を硬化させることができる。これにより、紫外光照射ユニット製造時の紫外光透過フィルタ2周辺の温度は、紫外光LED光源1を実装基板上に実装する時(図6(a))の温度(260℃)よりも低い温度とすることができる。例えば熱硬化性シリコーン接着剤を用いるなら、それを硬化させるのに必要な温度(110℃)で済む。
【0041】
また、前述したように、紫外光透過フィルタ2の対向面2bと透明樹脂6の表面との間に隙間Lを設けていることにより、紫外光透過フィルタ2の対向面2bと透明樹脂6の表面との間の凹部空間8の容積を確保している。
従って、前述のように低い温度で硬化させ、かつ凹部空間8の容積を確保することで、空気の熱膨張を極力抑えることができる。したがって、接着剤5の熱硬化時の空気の熱膨張に基づくフィルタの浮きや位置ずれを抑えることができる。
【0042】
なお、熱硬化性接着剤を使用する場合、接着剤が硬化するまでに、接着剤の状態の変化などにより、紫外光透過フィルタ2の浮きやずれが発生することがある。しかしながら、紫外光透過フィルタ2の周辺寸法をパッケージ7の接着面の周辺寸法とほぼ同じ大きさにすることによって、浮きや位置ずれを容易に抑えることができる。この理由を、図7を参照しながら説明すると、紫外光透過フィルタ2の周辺寸法とパッケージ7の周辺寸法をほぼ同じ大きさにした場合には、接着剤5がフィルタ端面2aとパッケージ端面7aの両者にまたがって塗布された状態となり、両者間の表面張力によって、パッケージ7と紫外光透過フィルタ2のずれが自動的に修正されると考えられる。すなわち、紫外光透過フィルタ2の好ましい縦・横の寸法は、それぞれパッケージ7の接着面の縦・横の寸法±0.3mmの範囲内である。
【0043】
以上の説明では、紫外光照射ユニットついて、特定の形状の図が用いられているが、これらは本発明を限定するものではない。本発明の範囲内で、容易に考えられる種々の変更は可能である。
【符号の説明】
【0044】
1:紫外光LED光源、2:紫外光透過フィルタ、2a:フィルタ端面、2b:対向面、3:紫外光照射ユニット、4:紫外光LED素子、5:接着剤、6:透明樹脂、7:パッケージ、8:凹部空間、9:ライン光源ユニット、10:実装基板、11:導光体、12:カバー部材、13:貫通孔、14:受光ユニット、15:保護ガラス、16:レンズアレイ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7