(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書において、「極性の高い溶媒」とは、溶解度パラメーターが9.3以上の溶媒のことを意味する。ここで、溶解度パラメーターとしては、例えば、浅原照三著「溶剤ハンドブック」(14版、講談社、1996年発行)に記載の値を用いることができる。該溶媒の例(各括弧内の値は、各溶媒の溶解度パラメーターの値を表す)としては、水(21)、メタノール(12.9)、エタノール(11.2)、2−プロパノール(11.5)、1−ブタノール(9.9)、tert−ブチルアルコール(10.5)、アセトニトリル(11.8)、1,2−エタンジオール(14.7)、N,N−ジメチルホルムアミド(11.5)、ジメチルスルホキシド(12.8)、酢酸(12.4)、ニトロベンゼン(11.1)、ニトロメタン(11.0)、1,2−ジクロロエタン(9.7)、ジクロロメタン(9.6)、クロロベンゼン(9.6)、ブロモベンゼン(9.9)、ジオキサン(9.8)、炭酸プロピレン(13.3)、ピリジン(10.4)、二硫化炭素(10.0)およびこれらの混合溶媒等が挙げられる。溶媒1と溶媒2との混合溶媒の場合の溶解度パラメーター(δ
m)は、「δ
m=δ
1×φ
1+δ
2×φ
2」により求めることが可能である(δ
1は溶媒1の溶解度パラメーター、φ
1は溶媒1の体積分率、δ
2は溶媒2の溶解度パラメーター、φ
2は溶媒2の体積分率を示す)。
極性の高い溶媒としては、極性の高い溶媒に溶解しない化合物からなる層の上に、本発明の化合物と極性の高い溶媒を含む溶液を塗布することにより積層構造体を作製する観点から、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトニトリル、1,2−エタンジオール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドが好ましく、メタノール、エタノール、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドが更に好ましく、メタノール、N,N−ジメチルホルムアミドが特に好ましい。
【0017】
本明細書において、「置換基を有していてもよい」とは、その直後に記載された基を構成する水素原子が、無置換の場合および水素原子の一部または全部が置換基によって置換されている場合の双方を含み、該置換基としては、ヒドロキシル基、ニトロ基、フッ素原子、炭素原子数1〜60のヒドロカルビル基、炭素原子数1〜60のヒドロカルビルオキシ基、炭素原子数1〜60のヒドロカルビルアミノ基および架橋基等の置換基が挙げられる。これらの置換基の中でも、本発明の化合物が簡便に合成できるので、炭素原子数1〜18のヒドロカルビル基、炭素原子数1〜18のヒドロカルビルオキシ基または架橋基が好ましく、炭素原子数1〜12のヒドロカルビル基または炭素原子数1〜12のヒドロカルビルオキシ基がより好ましく、炭素原子数1〜8のヒドロカルビル基または炭素原子数1〜8のヒドロカルビルオキシ基が更に好ましい。
【0018】
前記ヒドロカルビル基は、直鎖、分岐鎖および環状のいずれであってもよい。
ヒドロカルビル基としては、例えば、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ノルボルニル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、ターフェニリル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基、9−フェナントリル基、1-ピレニル基、クリセニル基、テトラセニル基およびコロニル基が挙げられ、
本発明の化合物が簡便に合成できるので、好ましくはメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、エイコサペンタエニル基、ドコサヘキサエニル基、2,2−ジフェニルビニル基、1,2,2−トリフェニルビニル基、2−フェニル−2−プロペニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、4−トリフルオロメチルフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−シアノフェニル基、2−ビフェニリル基、3−ビフェニリル基、4−ビフェニリル基、ターフェニリル基、3,5−ジフェニルフェニル基、3,4−ジフェニルフェニル基、ペンタフェニルフェニル基、4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、フルオレニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基または9−フェナントリル基であり、
より好ましくはメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基またはフェニル基であり、
更に好ましくはメチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基またはオクチル基である。
【0019】
前記ヒドロカルビルオキシ基は、直鎖、分岐鎖および環状のいずれであってもよい。
ヒドロカルビルオキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1−プロパノキシ基、2−プロパノキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、3,7−ジメチルオクチルオキシ基、シクロプロパノキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、1−アダマンチルオキシ基、2−アダマンチルオキシ基、ノルボルニルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ベンジロキシ基、α,α-ジメチルベンジロキシ基、2−フェネチルオキシ基、1−フェネチルオキシ基、フェノキシ基、アルコキシフェノキシ基、アルキルフェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基およびペンタフルオロフェニルオキシ基が挙げられ、
本発明の化合物が簡便に合成できるので、好ましくはメトキシ基、エトキシ基、1−プロパノキシ基、2−プロパノキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、デシルオキシ基、ドデシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基または3,7−ジメチルオクチルオキシ基であり、
より好ましくはメトキシ基、エトキシ基、1−プロパノキシ基、2−プロパノキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基またはオクチルオキシ基である。
【0020】
前記ヒドロカルビルアミノ基は、直鎖、分岐鎖および環状のいずれであってもよい。
ヒドロカルビルアミノ基としては、例えば、メチルアミノ基、エチルアミノ基、1−プロピルアミノ基、2−プロピルアミノ基、1−ブチルアミノ基、2−ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基、オクチルアミノ基、デシルアミノ基、ドデシルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、3,7−ジメチルオクチルアミノ基、シクロプロピルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基、1−アダマンチルアミノ基、2−アダマンチルアミノ基、ノルボルニルアミノ基、トリフルオロメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、α,α-ジメチルベンジルアミノ基、2−フェネチルアミノ基、1−フェネチルアミノ基、フェニルアミノ基、アルコキシフェニルアミノ基、アルキルフェニルアミノ基、1−ナフチルアミノ基、2−ナフチルアミノ基およびペンタフルオロフェニルアミノ基が挙げられ、
本発明の化合物が簡便に合成できるので、好ましくはメチルアミノ基、エチルアミノ基、1−プロピルアミノ基、2−プロピルアミノ基、1−ブチルアミノ基、2−ブチルアミノ基、イソブチルアミノ基、tert−ブチルアミノ基、ペンチルアミノ基、ヘキシルアミノ基またはオクチルアミノ基であり、
より好ましくはメチルアミノ基、エチルアミノ基、1−プロピルアミノ基、2−プロピルアミノ基、1−ブチルアミノ基または2−ブチルアミノ基である。
【0021】
前記架橋基とは、熱、光、熱重合開始剤または光重合開始剤の作用で重合反応を起こすことにより、2分子以上の分子間で結合を形成することができる置換基を表す。
架橋基としては、例えば、ビニル基、エチニル基、ブテニル基、アクリロイル基、アクリラート基、アクリルアミジル基、メタクリル基、メタクリラート基、メタクリルアミド基、エテニルオキシ基、エテニルアミノ基、ヒドロキシシリル基、小員環(例えばシクロプロパン、シクロブタン、ベンゾシクロブテン、エポキシド、オキセタン、ジケテン、チイラン、ラクトン、ラクタム等)の構造を有する官能基、シロキサン誘導体の構造を有する官能基が挙げられる。
また、上記の架橋基の他に、エステル結合またはアミド結合を形成可能な基の組み合わせなども利用できる。エステル結合またはアミド結合を形成可能な基の組み合わせとしては、例えば、エステル基とアミノ基の組み合わせ、エステル基とヒドロキシル基の組み合わせが挙げられる。
【0022】
本明細書において、「芳香族基」とは、芳香族炭化水素の環に接合する水素原子の1個以上を除いた原子団、芳香族複素環式化合物の環に接合する水素原子の1個以上を除いた原子団、および、芳香族炭化水素および芳香族複素環式化合物から選ばれる2個以上の化合物が直接または−NH−、−O−、−S−を介して結合した化合物における環に接合する水素原子の1個以上を除いた原子団を表す。
【0023】
本明細書において、「有機基」とは、炭素原子および水素原子を含む基を示し、例えば、上記の炭素原子数1〜60のヒドロカルビル基、炭素原子数1〜60のヒドロカルビルオキシ基、炭素原子数1〜60のヒドロカルビルアミノ基が挙げられる。
【0024】
本明細書において、「カチオンとキレートで相互作用できる構造」とは、酸素原子、窒素原子、リン原子および硫黄原子のうちから選ばれる2個以上の原子(1種類の原子であっても、2種類以上の原子であってもよい。)が、置換基を有してもよいカチオンと配位結合や静電相互作用を形成することができる構造を意味し、該カチオンとしては、例えば、金属カチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン、スルホキソニウムカチオンおよびヨードニウムカチオンが挙げられる。
【0025】
本明細書において「構成単位」とは、高分子化合物中に1個以上存在する単位を意味し、「繰り返し単位」(即ち、高分子化合物中に2個以上存在する単位)として高分子化合物中に存在していることが好ましい。
【0026】
本明細書において「低分子化合物」とは分子量2000未満の化合物を意味し、また、「高分子化合物」とは分子量2000以上の化合物を意味する。ここで、分子量は、化合物が多分散の場合は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算によって算出される重量平均分子量を意味する。
【0027】
本発明の「第一の化合物」は、前記式(1)で表される構造を含む化合物である。該化合物には、式(1)で表される構造を構成単位として含む高分子化合物、および、式(1)で表される構造を含む低分子化合物の双方が含まれる。また、後述する式(3)および式(4)で表される構造を含む化合物は、式(1)で表される構造を含む化合物の形態に含まれるものである。
【0028】
本発明の「第二の化合物」は、後述する式(5)で表される構造を含む化合物である。該化合物には、式(5)で表される構造を構成単位として含む高分子化合物、および、式(5)で表される構造を含む低分子化合物の双方が含まれる。
【0029】
本発明の「第三の化合物」とは、後述する式(7)で表される構造を含む化合物である。
【0030】
<第一の化合物>
本発明の第一の化合物は、前記式(1)の構造を含む。式(1)の構造は、2価の構造を示す。以下、式(1)について説明する。
【0032】
前記Ar
1、Ar
2、Ar
3およびAr
4は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい2価の芳香族基であり、互いに結合して環を形成してもよい。Ar
2が複数個ある場合、それらは同一であっても異なっていてもよく、Ar
4が複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0033】
環を形成しない場合の前記Ar
1、Ar
2、Ar
3およびAr
4としては、式1−1〜1−47で表される分子の環に接合する水素原子2個を除いた原子団が好ましい。
これらの中でも、Ar
1およびAr
2としては、本発明の化合物を用いた電界発光素子の発光効率がより優れるので、式1−1、1−2、1−10、1−12、1−16、1−20、1−22、1−23、1−26、1−27、1−28、1−35、1−42、1−43、1−44、1−45および1−46で表される分子からなる群から選ばれる分子の環に接合する水素原子2個を除いた原子団がより好ましく、
式1−1、1−10、1−22、1−23、1−26、1−27、1−28、1−35および1−44で表される分子からなる群から選ばれる分子の環に接合する水素原子2個を除いた原子団が更に好ましく、
式1−1または1−10で表される分子の環に接合する水素原子2個を除いた原子団が特に好ましい。
【0036】
環を形成する場合、前記Ar
1と前記Ar
2、Ar
1と前記Ar
3、Ar
1と前記Ar
4、Ar
2とAr
3、Ar
2とAr
4、Ar
3とAr
4が互いに結合して環を形成することが挙げられ、Ar
1とAr
2、Ar
1とAr
3、Ar
2とAr
3が互いに結合して環を形成することが好ましい。
環を形成する場合のAr
1、Ar
2、Ar
3およびAr
4としては、本発明の化合物を用いた電界発光素子の発光効率がより優れるので、前記式1−1〜1−15で表される分子の環に接合する水素原子2個を除いた原子団が好ましく、式1−1、1−2または1−6〜1−15で表される分子の環に接合する水素原子2個を除いた原子団がより好ましく、式1−1、1−2または1−10で表される分子の環に接合する水素原子2個を除いた原子団が更に好ましい。
【0037】
前記Ar
5は置換基を有していてもよい1価の芳香族基であり、Ar
5が複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0038】
前記Ar
5としては、前記式1−1〜1−47で表される分子の環に接合する水素原子1個を除いた原子団が好ましい。これらの中でも、Ar
5としては、本発明の化合物を用いた電界発光素子の発光効率がより優れるので、式1−1、1−2、1−10、1−12、1−16、1−20、1−22、1−23、1−26、1−27、1−28、1−35、1−42、1−43、1−44、1−45または1−46で表される分子の環に接合する水素原子1個を除いた原子団がより好ましく、式1−1、1−10、1−22、1−23、1−26、1−27、1−28、1−35または1−44で表される分子の環に接合する水素原子1個を除いた原子団が更に好ましく、式1−1または1−10で表される分子の環に接合する水素原子1個を除いた原子団が特に好ましい。
【0039】
前記pおよび前記qは、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
【0040】
前記pは、0〜4であることが好ましく、0〜2であることがより好ましく、0または1が更に好ましい。本発明の化合物を用いた電界発光素子の発光効率がより優れるためである。
【0041】
前記qは、0〜4であることが好ましく、0〜2であることがより好ましく、0または1が更に好ましい。本発明の化合物を用いた電界発光素子の発光効率がより優れるためである。
【0042】
前記R
1は、前記式(2)で表される1価の基を表し、R
1が複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0043】
前記R
2は、置換基を有していてもよい(1+n
1+n
4)価の芳香族基である。
【0044】
前記R
2としては、前記式1−1〜1−47で表される分子の環に接合する水素原子(1+n
1+n
4)個を除いた原子団が好ましい。これらの中でも、R
2としては、本発明の化合物を用いた電界発光素子の発光効率がより優れるので、式1−1、1−2、1−10、1−12、1−16、1−20、1−22、1−23、1−26、1−27、1−28、1−35、1−42、1−43、1−44、1−45または1−46で表される分子の環に接合する水素原子(1+n
1+n
4)個を除いた原子団がより好ましく、式1−1、1−10、1−22、1−23、1−26、1−27、1−28、1−35または1−44で表される分子の環に接合する水素原子(1+n
1+n
4)個を除いた原子団が更に好ましく、式1−1または1−10で表される分子の環に接合する水素原子(1+n
1+n
4)個を除いた原子団が特に好ましい。
【0045】
前記R
3は置換基を有していてもよい2価の有機基を表す。R
3が複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0046】
前記R
3としては、例えば、置換基を有していてもよいヒドロカルビレン基が挙げられ、炭素原子数は、1〜60の範囲であることが好ましい(該炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない)。ヒドロカルビレン基は、直鎖、分岐鎖および環状のいずれであってもよい。
R
3としては、本発明の化合物の合成の簡便さの観点から、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、2−エチルヘキシレン基、3,7−ジメチルオクチレン基、シクロプロピレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、α,α−ジメチレンベンジル基、1−フェネチレン基、2−フェネチレン基、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、オレイレン基、フェニレン基、トリレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、3,5−ジフェニルフェニレン基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基およびフェナントリレン基が好ましく、
メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、2−エチルヘキシレン基、3,7−ジメチルオクチレン基、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、フェニレン基、トリレン基およびビフェニレン基がより好ましく、
メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、ビニレン基、フェニレン基が更に好ましく、
エチレン基、プロピレン基、ブチレン基およびフェニレン基が特に好ましい。
【0047】
前記R
4は、カチオンとキレートで相互作用できる構造を含む2価の有機基を表し、R
4が複数個存在する場合、互いに結合して環を形成してもよい。R
4が複数個存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0048】
前記R
4としては、式(8)で表される構造を含むことが好ましい。式(8)で表される構造は、2価の構造を示す。
【0049】
【化7】
[式中、
Eは、2価の有機基を表し、
Aは、酸素原子、窒素原子、リン原子または硫黄原子を表し、
n
11は1以上の整数を表す。
Eが複数個存在する場合、それらは互いに同一であっても異なっていていてもよく、Aが複数個存在する場合、それらは互いに同一であっても異なっていていてもよい。]
【0050】
前記Eとしては、例えば、置換基を有していてもよいヒドロカルビレン基が挙げられ、炭素原子数は、1〜60の範囲であることが好ましい(該炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない)。ヒドロカルビレン基は、直鎖、分岐鎖および環状のいずれであってもよい。
Eとしては、本発明の化合物の合成の簡便さの観点から、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、2−エチルヘキシレン基、3,7−ジメチルオクチレン基、シクロプロピレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、α,α−ジメチレンベンジル基、1−フェネチレン基、2−フェネチレン基、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、オレイレン基、フェニレン基、トリレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、3,5−ジフェニルフェニレン基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基およびフェナントリレン基が好ましく、
メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、2−エチルヘキシレン基、3,7−ジメチルオクチレン基、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、フェニレン基、トリレン基およびビフェニレン基がより好ましく、
メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、ビニレン基およびフェニレン基が更に好ましく、
エチレン基、プロピレン基およびブチレン基が特に好ましい。
【0051】
前記Aは、酸素原子、窒素原子、リン原子または硫黄原子であり、本発明の化合物の安定性(特に、大気中での安定性)の観点から、酸素原子または窒素原子が好ましく、酸素原子がより好ましい。
【0052】
前記n
11は、1以上の整数を表し、本発明の化合物の合成の観点から、2〜8であることが好ましく、2〜6であることがより好ましく、2〜4であることが更に好ましく、3または4が特に好ましい。
【0053】
前記R
4としては、本発明の化合物の合成および安定性(特に、大気中での安定性)の観点から、酸素原子を2個以上有する2価の有機基であることが好ましく、例えば、式2−1〜2−27で表される化合物から水素原子2個を除いた有機基が挙げられる。これらの中でも、本発明の化合物の合成の観点から、式2−1〜2−8で表される化合物から水素原子2個を除いた有機基であることがより好ましく、式2−1〜2−4または2−6で表される化合物から水素原子2個を除いた有機基であることが更に好ましく、式2−3または2−4で表される化合物から水素原子2個を除いた有機基であることが特に好ましい。なお、式2−1〜2−27で表される化合物から水素原子2個を除いた有機基は、置換基を有していてもよい。
【0057】
前記R
5は、カチオンとキレートで相互作用できる構造を含む1価の有機基を表し、R
5が複数存在する場合、互いに結合して環を形成してもよい。R
5が複数個ある場合、それらは互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0058】
前記R
5としては、式(8’)で表される構造であることが好ましい。
【0059】
【化11】
[式中、
E’は、2価の有機基を表し、
A’は、酸素原子、窒素原子、リン原子または硫黄原子を表し、
B’は、水素原子または1価の有機基を表し、
n
11’は1以上の整数を表す。
E’が複数個存在する場合、それらは互いに同一であっても異なっていていてもよく、A’が複数個存在する場合、それらは互いに同一であっても異なっていていてもよい。]
【0060】
前記E’としては、例えば、置換基を有していてもよいヒドロカルビレン基が挙げられ、炭素原子数は、1〜60の範囲であることが好ましい(該炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない)。ヒドロカルビレン基は、直鎖、分岐鎖および環状のいずれであってもよい。
E’としては、本発明の化合物の合成の簡便さの観点から、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、2−エチルヘキシレン基、3,7−ジメチルオクチレン基、シクロプロピレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、α,α−ジメチレンベンジル基、1−フェネチレン基、2−フェネチレン基、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、オレイレン基、フェニレン基、トリレン基、ビフェニレン基、ターフェニレン基、3,5−ジフェニルフェニレン基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニレン基、ナフチレン基、アントリレン基およびフェナントリレン基が好ましく、
メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、2−エチルヘキシレン基、3,7−ジメチルオクチレン基、ビニレン基、プロペニレン基、ブテニレン基、フェニレン基、トリレン基およびビフェニレン基がより好ましく、
メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、ビニレン基およびフェニレン基が更に好ましく、
エチレン基、プロピレン基およびブチレン基が特に好ましい。
【0061】
前記A’は、酸素原子、窒素原子、リン原子または硫黄原子であり、本発明の化合物の安定性(特に、大気中での安定性)の観点から、酸素原子または窒素原子が好ましく、酸素原子がより好ましい。
【0062】
前記B’は、例えば、水素原子あるいは置換基を有していてもよいヒドロカルビル基が挙げられ、炭素原子数は、1〜60の範囲であることが好ましい(該炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない)。ヒドロカルビル基は、直鎖、分岐鎖および環状のいずれであってもよい。
B’としては、本発明の化合物の合成の簡便さの観点から、水素原子、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、2−ビフェニル基、3−ビフェニル基、4−ビフェニル基、ターフェニル基、3,5−ジフェニルフェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基または9−フェナントリル基であることが好ましく、
水素原子、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、2−ビフェニル基、3−ビフェニル基または4−ビフェニル基であることがより好ましく、
水素原子、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基またはフェニル基であることが更に好ましく、
水素原子またはメチル基であることが特に好ましい。
【0063】
前記n
11’は、1以上の整数を表し、本発明の化合物の合成の観点から、2〜8であることが好ましく、2〜6であることがより好ましく、2〜4であることが更に好ましく、3または4が特に好ましい。
【0064】
前記R
5としては、本発明の化合物の合成および安定性(特に、大気中での安定性)の観点から、酸素原子を2個以上有する1価の有機基であることが好ましく、例えば、式3−1〜3−27で表される化合物から水素原子1個を除いた有機基が挙げられる。これらの中でも、本発明の化合物の合成の観点から、式3−1〜3−8で表される化合物から水素原子1個を除いた有機基であることがより好ましく、式3−1〜3−4または3−6で表される化合物から水素原子1個を除いた有機基であることが更に好ましく、式3−3または3−4で表される化合物から水素原子1個を除いた有機基であることが特に好ましい。なお、式3−1〜3−27で表される化合物から水素原子1個を除いた有機基は、置換基を有していてもよい。
【0068】
前記Y
1で表されるアニオンを含む1価の基としては、例えば、−CO
2-、−SO
2-、−SO
3-、−O
-、−PO
32-および−BR
a3-が挙げられる。Y
1が複数個存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。これらの中でも、本発明の化合物の合成の観点から、−CO
2-または−SO
3-であることが好ましく、−CO
2-であることがより好ましい。
【0069】
前記R
aは、水素原子または1価の有機基を表し、複数個存在するR
aは互いに同一であっても異なっていてもよく、互いに結合して環を形成してもよい。
【0070】
前記R
aが環を形成しない場合、R
aとしては、例えば、水素原子および置換基を有していてもよいヒドロカルビル基が挙げられ、ヒドロカルビル基の炭素原子数は、1〜60の範囲であることが好ましい(該炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない。)。
【0071】
前記R
aが環を形成しない場合、本発明の化合物の合成の観点から、水素原子、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、2−ビフェニル基、3−ビフェニル基、4−ビフェニル基、ターフェニル基、3,5−ジフェニルフェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基または9−フェナントリル基であることが好ましく、
メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、2−ビフェニル基、3−ビフェニル基または4−ビフェニル基であることがより好ましく、
メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基またはフェニル基が更に好ましく、
メチル基またはフェニル基であることが特に好ましい。
【0072】
前記R
aが環を形成する場合、例えば、2つのR
aが置換基を有していてもよいヒドロカルビレン基を形成することが挙げられ、ヒドロカルビレン基の炭素原子数は、3〜60の範囲であることが好ましい(該炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない。)。
2つのR
aが環を形成したものとしては、本発明の化合物の合成の観点から、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、2−エチルヘキシレン基、3,7−ジメチルオクチレン基またはα,α−ジメチレンベンジル基であることが好ましく、
プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、2−エチルヘキシレン基または3,7−ジメチルオクチレン基であることがより好ましく、
プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基またはオクチレン基であることが更に好ましく、
プロピレン基またはブチレン基であることが特に好ましい。
【0073】
前記n
1は0以上の整数(例、0〜4)を表す。n
1は1または2であることが好ましい。
【0074】
前記n
2は0または1を表す。n
2は0であることが好ましい。
【0075】
前記n
3は0以上の整数(例、0〜4)を表す。n
3は0または1であることが好ましい。
【0076】
前記n
1および前記n
3に関して、n
1+n
3≧1であり、n
1が0のとき、n
3は1であることが好ましく、n
1が1のとき、n
3は0であることが好ましい。
【0077】
前記M
1で表されるカチオンとしては、例えば、金属カチオン、置換基を有していてもよいアンモニウムカチオン、置換基を有するホスホニウムカチオン、置換基を有するスルホニウムカチオン、置換基を有するスルホキソニウムカチオンおよび置換基を有するヨードニウムカチオンが挙げられる。M
1が複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0078】
前記M
1としては、本発明の化合物の電荷注入性または電荷輸送性が優れるので、Li
+、Na
+、K
+、Rb
+、Cs
+、(R
b)
4N
+、Be
2+、Mg
2+、Ca
2+、Sr
2+またはBa
2+であることが好ましく、Li
+、Na
+、K
+、Rb
+,Cs
+、(R
b)
4N
+、Mg
2+またはCa
2+であることがより好ましく、Li
+、Na
+、K
+、Rb
+、Cs
+または(R
b)
4N
+であることが更に好ましく、Li
+、Na
+、K
+またはCs
+であることが特に好ましい。
【0079】
前記R
bは、水素原子または1価の有機基を表す。R
bは互いに同一であっても異なっていてもよく、互いに結合して環を形成していてもよい。
【0080】
前記R
bが環を形成しない場合、R
bとしては、例えば、水素原子および置換基を有していてもよいヒドロカルビル基が挙げられ、ヒドロカルビル基の炭素原子数は、1〜60の範囲であることが好ましい(該炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない。)。
【0081】
前記R
bが環を形成しない場合、本発明の化合物の合成の観点から、水素原子、メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、2−ビフェニル基、3−ビフェニル基、4−ビフェニル基、ターフェニル基、3,5−ジフェニルフェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基または9−フェナントリル基であることが好ましく、
メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、2−ビフェニル基、3−ビフェニル基または4−ビフェニル基であることがより好ましく、
メチル基、エチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基またはフェニル基であることが更に好ましく、
メチル基または1−ブチル基であることが特に好ましい。
【0082】
前記R
bが環を形成する場合、例えば、2つのR
bが置換基を有していてもよいヒドロカルビレン基を形成することが挙げられ、ヒドロカルビレン基の炭素原子数は、3〜60の範囲であることが好ましい(該炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない。)。
2つのR
bが環を形成したものとしては、本発明の化合物の合成の観点から、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、2−エチルヘキシレン基、3,7−ジメチルオクチレン基またはα,α−ジメチレンベンジル基であることが好ましく、
プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、オクチレン基、デシレン基、ドデシレン基、2−エチルヘキシレン基または3,7−ジメチルオクチレン基であることがより好ましく、
プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基またはオクチレン基であることが更に好ましく、
プロピレン基またはブチレン基であることが特に好ましい。
【0083】
前記Z
1はアニオン、特にカウンターアニオンを表す。Z
1が複数個存在する場合、それらは同一であっても異なっていてもよい。
【0084】
前記Z
1としては、例えば、F
-、Cl
-、Br
-、I
-、OH
-、CH
3SO
3-、C
6H
5SO
3-、p−H
3CC
6H
4SO
3-、p−BrC
6H
4SO
3-、o−O
2NC
6H
4SO
3-、p−O
2NC
6H
4SO
3-、C
4H
9SO
3-、C
6H
5CH
2SO
3-、CH
3CO
2-、C
6H
5CO
2-、p−O
2NC
6H
4CO
2-、C
4H
9CO
2-、C
6H
5CH
2CO
2-、CF
3SO
3-、CF
3CO
2-、ClO
-、ClO
2-、ClO
3-、ClO
4-、SCN
-、CN
-、NO
3-、SO
42-、HSO
4-、PO
43-、HPO
42-、H
2PO
4-、BPh
4-、B[3,5−(CF
3)
2C
6H
3]
4-、B[N−Imidazolyl]
4-、BF
4-およびPF
6-が挙げられる。
これらの中でも、本発明の化合物の合成の観点から、CF
3SO
3-、CF
3CO
2-、BPh
4-、B[3,5−(CF
3)
2C
6H
3]
4-、B[N−Imidazolyl]
4-、BF
4-またはPF
6-が好ましく、
B[3,5−(CF
3)
2C
6H
3]
4-、B[N−Imidazolyl]
4-、BF
4-またはPF
6-であることがより好ましく、
B[N−Imidazolyl]
4-であることが更に好ましい。
【0085】
前記aは1以上の整数を表し、本発明の化合物の合成の観点から、1以上3以下であることが好ましい。
【0086】
前記bは0以上の整数を表し、本発明の化合物の合成の観点から、0以上2以下であることが好ましい。
【0087】
本発明の第一の化合物である、前記式(1)で表される構造を含む化合物であって低分子化合物であるものについて説明する。該低分子化合物としては、例えば、式4−1〜4−36で表される化合物が挙げられる。これらの中でも、本発明の低分子化合物の合成の観点から、式4−1、4−4、4−5、4−8、4−9、4−12、4−13、4−16、4−17、4−20、4−21、4−24、4−25、4−28、4−29、4−324−33または4−36で表される化合物であることが好ましく、式4−1、4−4、4−9、4−12、4−17、4−20、4−21、4−24、4−25または4−28で表される化合物であることがより好ましく、式4−1、4−4、4−9または4−12で表される化合物であることが更に好ましく、式4−9または4−12で表される化合物であることが特に好ましい。なお、式4−1〜4−36で表される化合物は置換基を有していてもよい。
【0089】
本発明の第一の化合物である、前記式(1)で表される構造を含む化合物としては、式(3)で表される構造を含む化合物であることが好ましい。積層構造体を用いた電界発光素子がより高性能になるため(特に、発光効率がより優れるため)である。式(3)で表される構造は、2価の構造を示す。
【0090】
【化16】
[式中、
pおよびM
1は、前記と同じ意味を表し、
n
5およびn
8は、それぞれ独立に、1以上の整数を表し、
n
6、n
7、n
9およびn
10は、それぞれ独立に、1〜4の整数を表し、n
6+n
7≦5かつn
9+n
10≦5である。]
【0091】
前記n
5およびn
8は、3または4であることが好ましい。積層構造体を用いた電界発光素子がより高性能になるため(特に、発光効率がより優れるため)である。
前記n
6、n
7、n
9およびn
10は、1または2であることが好ましい。積層構造体を用いた電界発光素子がより高性能になるため(特に、発光効率がより優れるため)である。
【0092】
本発明の第一の化合物である、前記式(3)で表される構造を含む化合物としては、本発明の化合物を用いた電界発光素子の発光効率がより優れるため、式(4)で表される構造を含む化合物であることが好ましい。式(4)で表される構造は、2価の構造を示す。
【0093】
【化17】
[式中、M
1およびn
5は、前記と同じ意味を表す。]
【0094】
本発明の第一の化合物である、前記式(4)で表される構造を含む化合物としては、本発明の化合物を用いた電界発光素子の発光効率がより優れるため、式(4’)で表される構造を含む化合物であることが好ましい。式(4’)で表される構造は、2価の構造を示す。
【0096】
本発明の第一の化合物であって高分子化合物であるものは、前記式(1)、(3)、(4)および(4’)で表される構造からなる群から選ばれる1つ以上の構造を構成単位として含んでいればよく、これら以外の他の構成単位を含んでいてもよい。該他の構成単位の構造としては、式(9)で表される構造が挙げられる。式(9)で表される構造は、2価の構造を示す。
【0098】
前記R
7は、置換基を有していてもよい2価の有機基(前記式(1)、(3)、(4)および(4’)で表される構成単位とは異なる。)であり、例えば、式7−1〜7−124で表される分子の環に接合する水素原子2個を除いた原子団が挙げられる。
これらの中でも、本発明の化合物の合成の観点から、式7−1、7−2、7−3、7−10、7−12、7−20、7−32、7−34、7−35、7−36、7−37、7−38、7−50、7−53、7−54、7−57、7−58、7−61、7−66、7−69、7−70、7−73、7−76、7−77、7−80、7−81、7−84、7−85、7−88、7−89、7−92、7−93、7−96、7−97、7−100、7−101、7−104、7−105、7−108、7−109、7−112、7−113、7−116、7−117、7−120、7−121または7−124で表される分子の環に接合する水素原子2個を除いた原子団であることが好ましく、
式7−1、7−2、7−10、7−32、7−35、7−38、7−58、7−61、7−76、7−85、7−88、7−97,7−100、7−109、7−112、7−121または7−124で表される分子の環に接合する水素原子2個を除いた原子団であることがより好ましく、
式7−1、7−10、7−32、7−35、7−58、7−61、7−76、7−85、7−88、7−109または7−112で表される分子の環に接合する水素原子2個を除いた原子団であることが更に好ましく、
式7−58、7−61、7−76、7−85または7−88で表される分子の環に接合する水素原子2個を除いた原子団が特に好ましい。なお、下記式において、M
1は前記と同じ意味を表す。
【0104】
本発明の第一の化合物であって高分子化合物であるものは、前記式(1)、(3)、(4)および(4’)で表される構造の構成単位の合計の、高分子化合物に含まれる全構成単位に対する割合は、通常0.1モル%以上100モル%以下の範囲であり、有機溶媒に対する溶解性の向上の観点から、0.1モル%以上80モル%以下の範囲であることが好ましく、0.1モル%以上65モル%以下の範囲であることがより好ましく、0.1モル%以上50モル%以下の範囲であることが更に好ましい。
本発明の第一の化合物であって高分子化合物であるものにおける、前記式(1)、(3)、(4)および(4’)で表される構造の構成単位以外の構成単位としては、前記式(9)で表される構成単位であることが好ましいが、それ以外の構成単位を含んでいてもよい。
【0105】
本発明の第一の化合物であって高分子化合物であるものの分子量は、有機溶媒に対する溶解性と成膜性が良好となるので、4×10
3以上2×10
6以下であることが好ましく、1×10
4以上1×10
6以下であることがより好ましく、1.5×10
4以上4×10
5以下であることが更に好ましい。ここで、本発明の第一の化合物の分子量は、その前駆物質である後述の本発明の第二の化合物の分子量と第二の化合物から第一の化合物への製造方法を勘案して、算出することができる。
【0106】
<第二の化合物>
本発明の「第二の化合物」は、式(5)で表される構造を含む化合物である。式(5)で表される構造は、2価の構造を示す。該化合物には、式(5)で表される構造を構成単位として含む高分子化合物、および、式(5)で表される構造を含む低分子化合物の双方が含まれる。以下、式(5)で表される構造について説明する。
【0107】
【化25】
[式中、
n
5は、1以上の整数を表し、R
6は、1価の有機基を表す。]
【0108】
前記R
6としては、例えば、置換基を有してもよいヒドロカルビル基が挙げられ、ヒドロカルビル基の炭素原子数は、1〜60の範囲であることが好ましい(該炭素原子数には、置換基の炭素原子数は含まれない。)。ヒドロカルビル基は、直鎖、分岐鎖および環状のいずれであってもよく、本発明の化合物が簡便に合成できるので、
メチル基、エチル基、ネオペンチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基、1−フェネチル基、2−フェネチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、オレイル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、2−ビフェニル基、3−ビフェニル基、4−ビフェニル基、ターフェニル基、3,5−ジフェニルフェニル基、4−(1,2,2−トリフェニルビニル)フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アントリル基、2−アントリル基または9−フェナントリル基であることが好ましく、
メチル基、エチル基、ネオペンチル基、1−プロピル基、2−プロピル基、1−ブチル基、2−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、2−エチルヘキシル基、3,7−ジメチルオクチル基、ベンジル基、1−アダマンチル基、2−アダマンチル基、ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、フェニル基、2−トリル基、4−トリル基、2−ビフェニル基、3−ビフェニル基または4−ビフェニル基であることがより好ましく、
メチル基、エチル基、ネオペンチル基、tert−ブチル基またはフェニル基であることが更に好ましく、
エチル基であることが特に好ましい。
【0109】
本発明の第二の化合物である、前記式(5)で表される構造を含む化合物としては、本発明の化合物の合成の観点から、式(5’)で表される構造を含む化合物であることが好ましい。式(5’)で表される構造は、2価の構造を示す。
【0111】
本発明の第二の化合物である、前記式(5’)で表される構造を含む化合物としては、本発明の化合物の合成の観点から、式(5’’)で表される構造を含む化合物であることが好ましい。式(5’’)で表される構造は、2価の構造を示す。
【0113】
また、本発明の第二の化合物であって高分子化合物であるものは、前記式(5)、(5’)および(5’’)で表される構造からなる群から選ばれる1つ以上の構造を構成単位として含んでいればよく、これら以外の他の構成単位を含んでいてもよい。該他の構成単位としては、式(10)で表される構造が挙げられる。式(10)で表される構造は、2価の構造を示す。
【0115】
前記R
8は、置換基を有していてもよい2価の有機基(前記式(5)、(5’)および(5’’)で表される構成単位とは異なる。)であり、例えば、式8−1〜8−124で表される分子の環に接合する水素原子2個を除いた原子団が挙げられる。
これらの中でも、前駆体である本発明の第二の化合物から得られる第一の化合物を用いた電界発光素子の発光効率がより優れるため、式8−1、8−2、8−3、8−10、8−12、8−20、8−32、8−34、8−35、8−36、8−37、8−38、8−51、8−55、8−59、8−71、8−76、8−78、8−82、8−86、8−102、8−106または8−110で表される分子の環に接合する水素原子2個を除いた原子団であることが好ましく、
式8−1、8−10、8−35、8−38、8−59、8−76、8−86または8−110で表される分子の環に接合する水素原子2個を除いた原子団であることがより好ましく、
式8−1、8−10、8−59、8−76、8−86または8−110で表される分子の環に接合する水素原子2個を除いた原子団であることが更に好ましく、
式8−1、8−10、8−59、8−86または8−110で表される分子の環に接合する水素原子2個を除いた原子団が特に好ましい。
【0119】
本発明の第二の化合物であって高分子化合物であるものは、前記式(5)、(5’)および(5’’)で表される構造の構成単位の合計の、高分子化合物に含まれる全構成単位に対する割合は、通常0.1モル%以上100モル%以下の範囲であり、有機溶媒に対する溶解性の向上の観点から、0.1モル%以上80モル%以下の範囲であることが好ましく、0.1モル%以上65モル%以下の範囲であることがより好ましく、0.1モル%以上50モル%以下の範囲であることが更に特に好ましい。
本発明の第二の化合物における、前記式(5)、(5’)および(5’’)で表される構造の構成単位以外の構成単位としては、前記式(10)で表される構成単位であることが好ましいが、それ以外の構成単位を含んでいてもよい。
【0120】
本発明の第二の化合物であって高分子化合物の場合であるものの分子量は、有機溶媒に対する溶解性と成膜性が良好となるので、4×10
3以上4×10
6以下であることが好ましく、1×10
4以上1×10
6以下であることがより好ましく、1.5×10
4以上4×10
5以下であることが更に好ましい。ここで、第二の化合物の分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、ポリスチレン換算によって算出される重量平均分子量を意味する。
【0121】
本発明の第二の化合物である式(6)で表される化合物は、前記式(5)、(5’)および(5’’)で表される構造を構成単位として含む高分子化合物の原料として、特に有用である。以下、式(6)で表される化合物について説明する。
【0122】
【化32】
[式中、
n
5およびR
6は、前記と同じ意味を表し、
Xは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、パラトルエンスルホナート基、トリフルオロメタンスルホナート基、メタンスルホナート基、ジヒドロキシボリル基またはジアルコキシボリル基を表し、2個存在するXは、互いに同一であっても異なっていてもよい。]
【0123】
前記Xとしては、本発明の第二の化合物であって高分子化合物であるものの合成の観点から、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子であることが好ましく、臭素原子またはヨウ素原子がより好ましく、臭素原子が更に好ましい。
【0124】
前記Xとしては、前記式(6)で表される化合物が簡便に合成できるので、ジヒドロキシボリル基またはジアルコキシボリル基も好ましい。ジアルコキシボリル基とは、ジヒドロキシボリル基の2つのヒドロキシル基とアルキル基が酸素原子を介することでホウ酸のエステル結合を形成した基を意味する。ジアルコキシボリル基としては、ピナコラートボリル基、1,3−プロパンジオレートボリル基またはジメトキシボリル基であることが好ましい。前記式(6)で表される化合物が熱力学的に安定となるためである。
【0125】
前記式(6)で表される化合物としては、本発明の化合物の合成の観点から、式(6’)で表される化合物であることが好ましい。
【0126】
【化33】
[式中、Xは、前記と同じ意味を表す。]
【0127】
前記式(6’)で表される化合物としては、本発明の化合物の合成の観点から、式(6’’)で表される化合物であることが好ましい。
【0129】
本発明の第二の化合物である、前記式(5)で表される構造を含む化合物であって低分子化合物であるものとしては、例えば、式9−1〜9−14で表される化合物が挙げられる。
これらの中でも、前駆体である本発明の第二の化合物から得られる第一の化合物を用いた電界発光素子の発光効率がより優れるため、式9−1、9−2、9−3、9−4、9−7、9−10、9−11、9−12または9−13で表される化合物であることが好ましく、式9−3、9−4、9−10、9−11または9−12で表される化合物であることがより好ましく、式9−3または9−12で表される化合物であることが更に好ましい。なお、式9−1〜9−14で表される化合物は置換基を有していてもよい。
【0131】
<第三の化合物>
本発明の第三の化合物である、式(7)で表される化合物は、前記式(6)、(6’)および(6’’)で表される本発明の第二の化合物であって高分子化合物であるものの原料として、特に有用である。以下、式(7)で表される化合物について説明する。
【0132】
【化36】
[式中、
R
6は、1価の有機基を表し、
Xは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、パラトルエンスルホナート基、トリフルオロメタンスルホナート基、メタンスルホナート基、ジヒドロキシボリル基またはジアルコキシボリル基を表し、2個存在するXは互いに同一であっても異なっていてもよい。]
R
6で表される1価の有機基は、前記と同じである。
【0133】
前記式(7)で表される化合物としては、本発明の化合物の合成の観点から、式(7’)で表される化合物であることが好ましい。
【0134】
【化37】
[式中、Xは、前記と同じ意味を表す。]
【0135】
前記式(7’)で表される化合物としては、本発明の化合物の合成の観点から、式(7’’)で表される化合物であることが好ましい。
【0137】
<本発明の化合物の製造方法>
次に、本発明の第一の化合物、第二の化合物および第三の化合物の製造方法について、以下に一例を挙げて説明する。
【0138】
まずは、本発明の第二の化合物の前駆物質として、本発明の第三の化合物を製造する。第三の化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、芳香環上にアルコキシ基とエステル基を併せて有する芳香族化合物にアミノ基を導入する。その後、アミノ基に対して、アリール基を導入した後、該アリール基に前記Xを導入する。その後、芳香環上のアルコキシ基をヒドロキシル基に、またエステル基をカルボキシル基に変換する。その後、該カルボキシル基をエステル化することで、第三の化合物を製造できる。
【0139】
次に、本発明の第一の化合物の前駆物質として、本発明の第二の化合物を製造する。
第二の化合物が、高分子化合物の場合、第三の化合物から一般的な有機合成反応(例えば、公知の縮合反応、求核置換反応、転位反応、Diels−Alder反応、芳香族求電子置換反応等)を用いて製造したものと、脱離基を複数個有する化合物とを公知の縮合反応を用いて連結される方法、または、上記の第三の化合物から一般的な有機合成反応を用いて製造したもの同士を公知の縮合反応を用いて連結させる方法等によって製造することができる。
第二の化合物が、低分子化合物の場合、第三の化合物から一般的な有機合成反応に用いられている反応を用いて製造することができる。例えば、公知の縮合反応、求核置換反応、転位反応、Diels−Alder反応、芳香族求電子置換反応等を用いることができる。
【0140】
本発明の第二の化合物であって高分子化合物であるものの製造は、上記の第三の化合物から一般的な有機合成反応(例えば、公知の縮合反応、求核置換反応、転位反応、Diels−Alder反応、芳香族求電子置換反応等)を用いて製造したものと、脱離基を複数個有する化合物とを公知の縮合反応を用いて連結される方法であることが好ましい。該縮合方法として、パラジウム触媒(Pd触媒)によるSuzukiカップリング反応により縮合する方法が挙げられる。他の縮合方法としては、例えば、Ni触媒存在下でGrignard試薬およびアリールハライドをKumada−Tamaoカップリング反応により縮合する方法、0価ニッケル錯体(Ni(0)錯体)により縮合する方法、FeCl
3等の酸化剤により縮合する方法および電気化学的に酸化的に縮合する方法等が挙げられる。
【0141】
前記Suzukiカップリング反応に用いる有機溶媒としては、用いる化合物によって異なるが、一般には、パラジウム触媒の劣化を抑制するために、十分に脱酸素処理を施したものを用いることが好ましく、不活性ガス雰囲気下で反応を進行させることが好ましい。
【0142】
最後に、本発明の第一の化合物を、前記第二の化合物より製造する。本発明の第一の化合物は、高分子化合物の場合と低分子化合物の場合のいずれの場合でも、その前駆物質である本発明の第二の化合物を加水分解することで製造できる。
【0143】
本発明の第一の化合物の製造は、例えば、金属水酸化物、アルキルアンモニウムヒドロキシド等を用いる加水分解反応が挙げられ、金属水酸化物を用いる加水分解反応を用いることが好ましい。加水分解反応が円滑に進行するためである。
【0144】
<組成物>
本発明の組成物は、本発明の第一の化合物と、それ以外の成分である正孔輸送材料、電子輸送材料および発光材料からなる群から選ばれる少なくとも1種類の材料とを含有するものである。該正孔輸送材料、該電子輸送材料および該発光材料としては、後述する本発明の第一の化合物以外の正孔輸送層を構成する材料、本発明の第一の化合物以外の電子輸送層を構成する材料、および、本発明の第一の化合物以外の発光層を構成する材料を好適に用いることができる。なお、本発明の組成物において、該正孔輸送材料、該電子輸送材料および該発光材料は、各々、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0145】
本発明の組成物中における本発明の第一の化合物の含有量は、本発明の第一の化合物、正孔輸送材料、電子輸送材料および発光材料の合計重量を100重量部としたときに、通常、0.0001〜95重量部であり、成膜性の観点からは、0.0001〜50重量部が好ましい。
【0146】
本発明の組成物は、本発明の第一の化合物と後述の溶媒とを含有するもの、本発明の第一の化合物とそれ以外の成分である正孔輸送材料、電子輸送材料および発光材料からなる群から選ばれる少なくとも1種類の材料および後述の溶媒とを含有するものも含まれる。
本発明の組成物中における溶媒の含有量は、特に限定されず、溶媒の種類、本発明の第一の化合物の成膜方法、および本発明の第一の化合物の分子量等に応じて決定してよいが、例えば、塗布法によって成膜を行う場合は、本発明の組成物中における溶媒の含有量は、溶媒以外の合計重量を100重量部としたとき、成膜性の観点から、1000〜1000000重量部であることが好ましい。
【0147】
<積層構造体>
本発明は、本発明の第一の化合物またはその組成物を含む積層構造体を提供する。
【0148】
本発明の積層構造体は、第一の電極および第二の電極と、該第一の電極と該第二の電極の間に設けられた発光層若しくは電荷分離層を有する。本発明の第一の化合物またはその組成物は、該発光層若しくは該電荷分離層に含まれるか、該発光層若しくは該電荷分離層と該第一の電極との間に設けられた層に含まれるか、または、該発光層若しくは該電荷分離層と該第二の電極との間に設けられた層に含まれる。
【0149】
前記積層構造体は、電界発光素子および光電変換素子等に用いることができる。積層構造体が電界発光素子に用いられる場合は、該積層構造体には発光層が設置されており、また、積層構造体が光電変換素子に用いられる場合は、該積層構造体には電荷分離層が設置されている。
【0150】
本発明に用いられる化合物は電荷の注入性または輸送性に優れるため、該化合物を含む層を電界発光素子に用いた場合、発光効率が高い素子が得られる。また、該化合物を含む層を光電変換素子に用いた場合、変換効率が高い素子が得られる。
【0151】
<電界発光素子>
本発明の積層構造体を用いた電界発光素子は、陽極、陰極、および、該陽極と該陰極との間に設置された発光層を有しており、さらに任意の層(陽極と発光層の間に設けられた層、および/または、陰極と発光層の間に設けられた層)を有していてもよい。本発明の第一の化合物は、該発光層若しくは該任意の層に含まれるか、または、該発光層および該任意の層の双方に含まれる。なお、該電界発光素子は、通常、基板を有している。
【0152】
本発明の電界発光素子の一態様としては、基板上に陽極が設けられ、その上に発光層が積層され、さらにその上に陰極が積層されたものが挙げられる。他の一態様としては、陰極を基板上に設け、その上に発光層が積層され、さらに上に陽極が積層されたものが挙げられる。該電界発光素子は、任意の保護膜、バッファー膜、反射層などの他の機能を有する層が設けられていてもよく、封止膜または封止基板が覆い被せられることで、外気と遮断された態様であることが好ましい。また、本発明の電界発光素子は、基板側から採光する所謂ボトムエミッションタイプ、基板と反対側から採光する所謂トップエミッションタイプ、または両面採光型のいずれのタイプであってもよい。
【0153】
本発明の第一の化合物を含む層は、前述の通り、電界発光素子における発光層、陽極と発光層の間の層、陰極と発光層の間の層等に用いることができ、該層は、発光層、電荷注入層、電荷輸送層等として機能させることができる。
【0154】
本発明の第一の化合物を含む層を形成する方法としては、例えば、本発明の第一の化合物のほかに溶媒を含む組成物(以下、溶液)を用いて成膜する方法が挙げられる。
【0155】
このような溶液からの成膜に用いる溶媒としては、前記溶解度パラメーターが9.3以上の「極性の高い溶媒」であることが好ましい。これは該溶媒に溶解しない化合物から成る層の上に、該化合物と該溶媒を含む溶液を塗布することで、積層構造体を作製する方法できるためである。極性の高い溶媒としては、具体的には、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−ブタノール、tert−ブチルアルコール、アセトニトリル、1,2−エタンジオール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸、ニトロベンゼン、ニトロメタン、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、ジオキサン、炭酸プロピレン、ピリジン、二硫化炭素およびこれらの混合溶媒等が挙げられ、これらの中でも、水、メタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトニトリル、1,2−エタンジオール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドまたはこれらの混合溶媒が好ましく、メタノール、エタノール、アセトニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドまたはこれらの混合溶媒が更に好ましく、メタノール、N,N−ジメチルホルムアミドまたはこれらの混合溶媒が特に好ましい。
【0156】
溶液からの成膜方法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、ノズルコート法等の塗布法が挙げられる。
【0157】
本発明の第一の化合物を含む層の膜厚としては、用いる化合物によって最適値が異なるため、駆動電圧と発光効率が適度な値となるように適宜選択すればよく、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であることが好ましい。電界発光素子の駆動電圧を低くする観点からは、1nm〜1μmであることが好ましく、2nm〜500nmであることがより好ましく、2nm〜200nmであることがさらに好ましい。
【0158】
本発明の電界発光素子は、陽極、陰極および発光層を有するが、前述のように、さらに任意の層を有していてもよい。例えば、陽極と発光層との間には正孔注入層、正孔輸送層のうちの1層以上を有することができる。正孔注入層が存在する場合は、発光層と正孔注入層との間に正孔輸送層を有することができる。
一方、陰極と発光層との間には電子注入層、電子輸送層のうちの1層以上を有することができる。電子注入層が存在する場合は、発光層と電子注入層との間に電子輸送層を有することができる。本発明の第一の化合物を含む層は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入層、電子輸送層に用いることができる。
【0159】
ここで、陽極とは、正孔注入層、正孔輸送層、発光層等に正孔を供給するものであり、陰極とは、電子注入層、電子輸送層、発光層等に電子を供給するものである。
発光層とは、電界を印加した際に、陽極側で発光層と隣接する層より正孔を受け取る機能、陰極側で発光層と隣接する層より電子を受け取る機能、受け取った電荷(正孔および電子)を電界の力で移動させる機能、および、正孔と電子の再結合を発光につなげる機能を有する層をいう。
正孔注入層および正孔輸送層とは、陽極から正孔を受け取る機能、正孔を輸送する機能、発光層へ正孔を供給する機能、陰極から注入された電子をブロックする機能のいずれかを有する層をいう。電子注入層および電子輸送層とは、陰極から電子を受け取る機能、電子を輸送する機能、陽極から注入された正孔をブロックする機能のいずれかを有する層をいう。なお、電子輸送層と正孔輸送層は、総称して電荷輸送層と呼ばれる。また、電子注入層と正孔注入層は、総称して電荷注入層と呼ばれる。
【0160】
即ち、本発明の電界発光素子は、例えば、下記の層構成(a)を有することができ、または、層構成(a)から、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層、電子注入層の1層以上を省略した層構成を有することができる。なお、符号「−」は各層が隣接して積層されていることを表す。
(a)陽極−正孔注入層−正孔輸送層−発光層−電子輸送層−電子注入層−陰極
該層構成(a)において、本発明の第一の化合物を含む層は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子輸送層および電子注入層からなる群から選ばれる1つ以上の層として用いることができる。
【0161】
前記層構成(a)において、本発明の第一の化合物を含む層を発光層として用いた場合のみ、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層および電子注入層の全てを省略した層構成(a’)を有することもできる。
(a’)陽極−発光層−陰極
【0162】
本発明の電界発光素子の層構成の好ましい具体例としては、下記のものが挙げられる。下記層構成において、本発明の第一の化合物を含む層は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層、電子注入層および電子輸送層からなる群から選ばれる1つ以上の層として用いることができる。
(b)陽極−正孔輸送層−発光層−陰極
(c)陽極−発光層−電子輸送層−陰極
(d)陽極−正孔輸送層−発光層−電子輸送層−陰極
【0163】
本発明において、電荷注入層(電子注入層、正孔注入層)を設けた電界発光素子としては、陰極に隣接して電子注入層を設けた電界発光素子、陽極に隣接して正孔注入層を設けた電界発光素子が挙げられる。具体的には、例えば、以下の(e)〜(p)の構造が例示される。
(e)陽極−正孔注入層−発光層−陰極
(f)陽極−発光層−電子注入層−陰極
(g)陽極−正孔注入層−発光層−電子注入層−陰極
(h)陽極−正孔注入層−正孔輸送層−発光層−陰極
(i)陽極−正孔輸送層−発光層−電子注入層−陰極
(j)陽極−正孔注入層−正孔輸送層−発光層−電子注入層−陰極
(k)陽極−正孔注入層−発光層−電子輸送層−陰極
(l)陽極−発光層−電子輸送層−電子注入層−陰極
(m)陽極−正孔注入層−発光層−電子輸送層−電子注入層−陰極
(n)陽極−正孔注入層−正孔輸送層−発光層−電子輸送層−陰極
(o)陽極−正孔輸送層−発光層−電子輸送層−電子注入層−陰極
(p)陽極−正孔注入層−正孔輸送層−発光層−電子輸送層−電子注入層−陰極
【0164】
本発明の第一の化合物を含む層は、電子注入層および/または電子輸送層、であることが好ましい。
【0165】
本発明の電界発光素子は、さらに電極との密着性向上や電極からの電荷(即ち正孔または電子)の注入の改善のために、電極に隣接して絶縁層を設けてもよく、また、界面の密着性向上や混合の防止等のために電荷輸送層(正孔輸送層および電子輸送層)または発光層の界面に薄いバッファー層を挿入してもよい。積層する層の順番や数、および、各層の厚さについては、電界発光素子の発光効率や素子寿命を勘案して適宜用いることができる。
【0166】
次に、本発明の電界発光素子を構成する各層の材料および作製方法について、より具体的に説明する。
【0167】
<基板>
本発明の電界発光素子を構成する基板は、通常電極を形成し、有機物の層を形成する際に変化しないものであればよく、例えば、ガラス、プラスチック、高分子フィルム、金属フィルム、シリコン基板、これらを積層したものなどが用いられる。該基板としては、市販のものが入手可能であり、または公知の方法により製造することができる。
本発明の電界発光素子がディスプレイ装置の画素を構成する場合には、当該基板上に画素駆動用の回路が設けられていてもよいし、当該駆動回路上に平坦化膜が設けられていてもよい。平坦化膜が設けられる場合には、該平坦化膜の中心線平均粗さ(Ra)が「Ra<10nm」を満たすことが好ましい。Raは、日本工業規格JISのJIS−B0601−2001に基づいて、JIS−B0651からJIS−B0656およびJIS−B0671−1等を参考に計測できる。
【0168】
<陽極>
本発明の電界発光素子を構成する陽極は、正孔注入層、正孔輸送層、発光層等で用いられる有機半導体材料への正孔供給の観点から、かかる陽極の発光層側表面の仕事関数が4.0eV以上であることが好ましい。陽極の材料には、金属、合金、金属酸化物、金属硫化物などの電気伝導性化合物、または、これらの混合物等を用いる事ができる。具体的には、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化モリブデン等の導電性金属酸化物、または、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの導電性金属酸化物と金属との混合物等が挙げられる。
該陽極は、これら材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。多層構造である場合は、仕事関数が4.0eV以上である材料を発光層側の最表面層に用いることがより好ましい。
【0169】
前記陽極の作製方法としては、特に限定されず公知の方法が利用でき、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法等が挙げられる。
【0170】
前記陽極の膜厚は、通常10nm〜10μmであり、好ましくは40nm〜500nmである。また、短絡等の電気的接続の不良を防止する観点から、陽極の発光層側表面の中心線平均粗さ(Ra)は「Ra<10nm」を満たす事が望ましく、より好ましくは「Ra<5nm」である。
【0171】
前記陽極は、前記方法にて作製された後に、UVオゾン、シランカップリング剤、2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタンなどの電子受容性化合物を含む溶液などで表面処理を施される場合がある。表面処理によって該陽極に接する有機層との電気的接続が改善されるためである。
【0172】
本発明の電界発光素子において、陽極を光反射電極として用いる場合には、かかる陽極が、高光反射性金属からなる光反射層と4.0eV以上の仕事関数を有する材料を含む高仕事関数材料層を組み合わせた多層構造であることが好ましい。
該陽極の具体的な構成例としては、以下が例示される。十分な光反射率を得る為に、Al、Ag、Al合金、Ag合金、Cr合金等の高光反射性金属層の膜厚は50nm以上である事が好ましく、より好ましくは80nm以上である。ITO、IZO、MoO
3などの高仕事関数材料層の膜厚は通常、5nm〜500nmの範囲である。
(i) Ag−MoO
3
(ii) (Ag-Pd-Cu合金)−(ITOおよび/またはIZO)
(iii) (Al-Nd合金)−(ITOおよび/またはIZO)
(iV) (Mo-Cr合金)−(ITOおよび/またはIZO)
(V) (Ag-Pd-Cu合金)−(ITOおよび/またはIZO)−MoO
3
【0173】
<正孔注入層>
本発明の電界発光素子において、本発明に用いられる化合物以外の正孔注入層を構成する材料としては、例えば、カルバゾール誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、スターバースト型アミン、フタロシアニン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、有機シラン誘導体、および、これらを含む重合体が挙げられる。
また、酸化バナジウム、酸化タンタル、酸化タングステン、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム等の導電性金属酸化物、ポリアニリン、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子およびオリゴマー、ポリ(3、4−エチレンジオキシチオフェン)・ポリスチレンスルフォン酸、ポリピロール等の有機導電性材料およびこれらを含む重合体、アモルファスカーボンを挙げることができる。
さらに、テトラシアノキノジメタン誘導体(例えば2,3,5,6−テトラフルオロ−7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン)、1,4−ナフトキノン誘導体、ジフェノキノン誘導体、ポリニトロ化合物等のアクセプター性有機化合物、オクタデシルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤等も好適に使用できる。
前記材料は、単一の成分であっても複数の成分からなる組成物であってもよい。また、前記正孔注入層は、前記材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0174】
正孔注入層の作製方法としては、公知の種々の方法が利用できる。無機化合物材料の場合は、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が挙げられ、低分子有機材料の場合は、真空蒸着法、レーザー転写や熱転写等の転写法、溶液からの成膜による方法(後述の高分子バインダーとの混合溶液を用いてもよい)等が挙げられる。また、高分子有機材料では、溶液からの成膜による方法が挙げられる。
【0175】
正孔注入材料が、アリールアミン誘導体、トリフェニルジアミン誘導体等の低分子化合物の場合には、真空蒸着法を用いて正孔注入層を作製する事ができる。
【0176】
また、前記低分子正孔注入材料と高分子化合物バインダーとを分散させた混合溶液を用いて正孔注入層を成膜する事もできる。混合する高分子化合物バインダーとしては、電荷輸送を極度に阻害しないものが好ましく、また可視光に対する吸収が強くないものが好適に用いられる。具体的には、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、ポリアニリン若しくはその誘導体、ポリチオフェン若しくはその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)若しくはその誘導体、ポリ(2,5−チエニレンビニレン)若しくはその誘導体、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリシロキサン等が挙げられる。
【0177】
溶液からの成膜に用いる溶媒としては、前記正孔注入材料を溶解させるものであれば特に制限はない。該溶媒としては、例えば、水、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン等の含塩素溶媒、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセルソルブアセテート等のエステル溶媒等が挙げられる。
【0178】
溶液からの成膜方法としては、溶液からのスピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スリットコート法、キャピラリーコート法、スプレーコート法、ノズルコート法などのコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェット印刷法等の印刷法等の塗布法を用いることができる。パターン形成が容易であるという点で、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、反転印刷法、インクジェット印刷法等の印刷法またはノズルコート法が好ましい。
【0179】
正孔注入層に続いて、正孔輸送層、発光層などの化合物層を作製する場合、特に、両方の層を塗布法によって作製する場合には、先に塗布した層が後から塗布する層の溶液に含まれる溶媒に溶解して積層構造を作製できない場合がある。この場合には、下層を溶媒不溶にする方法を用いることができる。溶媒不溶にする方法としては、高分子化合物に架橋基を付け、架橋させて不溶化する方法、芳香族ビスアジドに代表される芳香環を有する架橋基を持った低分子化合物を架橋剤として混合し、架橋させて不溶化する方法、アクリレート基に代表される芳香環を有しない架橋基を持った低分子化合物を架橋剤として混合し、架橋させて不溶化する方法、下層を紫外光に感光させて架橋させ、上層の製造に用いる有機溶媒に対して不溶化する方法、下層を加熱して架橋させ、上層の製造に用いる有機溶媒に対して不溶化する方法などが挙げられる。下層を加熱する場合の加熱の温度は通常100℃〜300℃程度であり、時間は通常1分〜1時間程度である。
また、架橋以外で下層を溶解させずに積層するその他の方法として、隣り合った層の製造に異なる極性の溶液を用いる方法があり、例えば、下層に、水、アルコール、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロジノンに代表される親水性溶媒には可溶であり、かつ、キシレン、トルエンなどの親油性溶媒には不溶な高分子化合物を用い、上層に親油性溶媒に可溶の高分子化合物を用いて、塗布しても下層が溶解しないようにする方法などがある。
【0180】
正孔注入層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、電界発光素子の駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、厚すぎると、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該正孔注入層の膜厚としては、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは10nm〜100nmである。
【0181】
<正孔輸送層>
本発明の電界発光素子において、本発明の第一の化合物以外の正孔輸送層を構成する材料としては、例えば、カルバゾール誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾール)誘導体、有機シラン誘導体、およびこれらの構造を含む重合体が挙げられる。また、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子およびオリゴマー、ポリピロール等の有機導電性材料も挙げることができる。
前記材料は、単一の成分であっても複数の成分からなる組成物であってもよい。また、前記正孔輸送層は、前記材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0182】
具体的には、特開昭63−70257号公報、特開昭63−175860号公報、特開平2−135359号公報、特開平2−135361号公報、特開平2−209988号公報、特開平3−37992号公報、特開平3−152184号公報、特開平5−263073号公報、特開平6−1972号公報、WO2005/52027、特開2006−295203号公報等に開示される化合物が正孔輸送層の材料として使用できる。中でも、繰り返し単位として2価の芳香族アミン残基を含む重合体が、好適に用いられる。
【0183】
繰り返し単位として2価の芳香族アミンを含む重合体は、さらに他の繰り返し単位を有していてもよい。他の繰り返し単位としては、フェニレン基、フルオレンジイル基等のアリーレン基等が挙げられる。また、該重合体としては、架橋基を繰り返し単位として含んでいるものがより好ましい。
【0184】
正孔輸送層の作製方法としては、正孔注入層の作製と同様の方法が挙げられる。溶液からの成膜方法としては、前述のスピンコート法、キャスティング法、バーコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法等の塗布法および印刷法が挙げられ、昇華性化合物材料を用いる場合には、真空蒸着法、転写法等が挙げられる。溶液からの成膜に用いる溶媒の例としては、前述の正孔注入層の成膜方法で例示したものと同様の溶媒が挙げられる。
【0185】
正孔輸送層に続いて、発光層などの化合物層を塗布法にて作製する際に、下層が後から塗布する層の溶液に含まれる溶媒に溶解する場合は、前述の正孔注入層の成膜方法で例示したものと同様の方法が挙げられる。
【0186】
正孔輸送層の膜厚は、用いる材料によって最適値が異なり、電界発光素子の駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、厚すぎると、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該正孔輸送層の膜厚としては、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜100nmである。
【0187】
<発光層>
本発明の電界発光素子における発光層が、高分子化合物を含む場合、該高分子化合物材料としては、ポリフルオレン誘導体、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリジアルキルフルオレン、ポリフルオレンベンゾチアジアゾール、ポリアルキルチオフェン等の共役高分子化合物を好適に用いることができる。
【0188】
本発明の電界発光素子における発光層は、非共役高分子化合物と前記有機色素や前記金属錯体などの発光性化合物との組成物から構成されてもよい。非共役高分子化合物としては、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリエステル、ポリスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリブタジエン、ポリ(N−ビニルカルバゾール)、炭化水素樹脂、ケトン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリアミド、エチルセルロース、酢酸ビニル、ABS樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等が挙げられる。前記の非共役高分子化合物は、側鎖に、カルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三級アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリディン化合物、ポルフィリン化合物および有機シラン誘導体からなる群から選ばれる1つ以上の誘導体もしくは化合物で表される構造を有していてもよい。
【0189】
本発明の電界発光素子における発光層が、低分子化合物を含む場合、該低分子化合物としては、ルブレン、ペリレン、9,10−ジフェニルアントラセン、テトラフェニルブタジエン、ナイルレッド、クマリン6、カルバゾール、キナクリドン等の低分子色素化合物、ナフタレン誘導体、アントラセン若しくはその誘導体、ペリレン若しくはその誘導体、ポリメチン系、キサンテン系、クマリン系、シアニン系、インジゴ系などの色素類、8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、フタロシアニン若しくはその誘導体の金属錯体、芳香族アミン、テトラフェニルシクロペンタジエン若しくはその誘導体、または、テトラフェニルブタジエン若しくはその誘導体等が挙げられる。
【0190】
本発明の電界発光素子における発光層が燐光を発光する金属錯体を含む場合、該金属錯体としては、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム、チエニルピリジン配位子含有イリジウム錯体、フェニルキノリン配位子含有イリジウム錯体、トリアザシクロノナン骨格含有テルビウム錯体等が挙げられる。
【0191】
前記発光層に用いられる高分子化合物の具体例としては、例えば、WO97/09394、WO98/27136、WO99/54385、WO00/22027、WO01/19834、GB2340304A、GB2348316、US573636、US5741921、US5777070、EP0707020、特開平9−111233号公報、特開平10−324870号公報、特開平2000−80167号公報、特開2001−123156号公報、特開2004−168999号公報、特開2007−162009号公報、「有機EL素子の開発と構成材料(シーエムシー出版、2006年発行)」等に開示されているポリフルオレン、その誘導体および共重合体、ポリアリーレン、その誘導体および共重合体、ポリアリーレンビニレン、その誘導体および共重合体、芳香族アミン、その誘導体および共重合体が挙げられる。また、前記発光層に用いられる低分子化合物の具体例としては、例えば、特開昭57−51781号公報、「有機薄膜仕事関数データ集[第2版](シーエムシー出版、2006年発行)」、「有機EL素子の開発と構成材料(シーエムシー出版、2006年発行)」等に記載されている化合物が挙げられる。
高分子化合物および低分子化合物は、単成分であっても複数の成分からなる組成物であってもよい。また、前記発光層は、高分子化合物および低分子化合物の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0192】
前記発光層の成膜方法としては、正孔注入層の成膜と同様の方法が挙げられる。溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、バーコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法等の前記塗布法および印刷法が挙げられ、昇華性化合物材料を用いる場合には、真空蒸着法、転写法などが挙げられる。溶液からの成膜に用いる溶媒の例としては、正孔注入層の成膜方法で列記した溶媒が挙げられる。
【0193】
前記発光層に続いて、電子輸送層などの化合物層を塗布法にて成膜する際に、下層が後から塗布する層の溶液に含まれる溶媒に溶解する場合は、正孔注入層の成膜方法での例示と同様の方法で下層を溶媒不溶にすることができる。
【0194】
前記発光層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、電界発光素子の駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発生しないような厚さが必要であり、また、厚すぎると素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、発光層の膜厚としては、例えば5nm〜1μmであり、好ましくは10nm〜500nmであり、さらに好ましくは30nm〜200nmである。
【0195】
<電子輸送層>
本発明の電界発光素子において、本発明の第一の化合物以外の電子輸送層を構成する材料としては、公知のものが使用でき、例えば、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、8−キノリノール誘導体の金属錯体、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、8−ヒドロキシキノリン若しくはその誘導体の金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体などが挙げられる。
これらのうち、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、8−ヒドロキシキノリン誘導体若しくはその金属錯体、ポリキノリン若しくはその誘導体、ポリキノキサリン若しくはその誘導体、ポリフルオレン若しくはその誘導体が好ましい。
前記材料は、単一成分であっても複数の成分からなる組成物であってもよい。また、電子輸送層は、前記材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0196】
電子輸送層の作製方法としては、正孔注入層の作製と同様の方法が挙げられる。溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、バーコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法等の前記塗布法および印刷法が挙げられ、昇華性化合物材料を用いる場合には、真空蒸着法、転写法などが挙げられる。
溶液からの成膜に用いる溶媒の例としては、前述の正孔注入層の成膜方法で例示した溶媒と同様のものが挙げられる。
【0197】
電子輸送層に続いて、電子注入層などの化合物層を塗布法にて作製する際に、下層が後から塗布する層の溶液に含まれる溶媒に溶解する場合は、前述の正孔注入層の成膜方法で例示したものと同様の方法が挙げられる。
【0198】
電子輸送層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、電界発光素子の駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発しないような厚さが必要であり、厚すぎると、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該電子輸送層の膜厚としては、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜100nmである。
【0199】
<電子注入層>
本発明の電界発光素子において、本発明の第一の化合物以外の電子注入層を構成する材料としては、公知のものが使用でき、例えば、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、フルオレノン誘導体、ベンゾキノン若しくはその誘導体、ナフトキノン若しくはその誘導体、アントラキノン若しくはその誘導体、テトラシアノアンスラキノジメタン若しくはその誘導体、フルオレノン誘導体、ジフェニルジシアノエチレン若しくはその誘導体、ジフェノキノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、8−キノリノール誘導体の金属錯体、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体などが挙げられる。
前記材料は、単成分であっても複数の成分からなる組成物であってもよい。また、前記電子注入層は、前記材料の1種または2種以上からなる単層構造であってもよいし、同一組成または異種組成の複数層からなる多層構造であってもよい。
【0200】
電子注入層の作製方法に制限はなく、正孔注入層の作製方法と同様の方法が挙げられる。溶液からの成膜方法としては、スピンコート法、キャスティング法、バーコート法、スリットコート法、スプレーコート法、ノズルコート法、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法等の塗布法および印刷法が挙げられ、昇華性化合物材料を用いる場合には、真空蒸着法、転写法などが挙げられる。
溶液からの成膜に用いる溶媒の例としては、前述の正孔注入層の成膜方法で例示した溶媒と同様のものが挙げられる。
【0201】
電子注入層の膜厚としては、用いる材料によって最適値が異なり、電界発光素子の駆動電圧と発光効率が適度な値となるように選択すればよいが、少なくともピンホールが発しないような厚さが必要であり、厚すぎると、素子の駆動電圧が高くなり好ましくない。従って、該電子注入層の膜厚としては、例えば1nm〜1μmであり、好ましくは2nm〜500nmであり、さらに好ましくは5nm〜100nmである。
【0202】
<陰極>
本発明の電界発光素子において、陰極は、発光層、電子輸送層または電子注入層に隣接して、これらの層へ電子を供給する機能を有するものである。該陰極は、単一の材料または複数の材料からなる単層構造であってもよいし、複数層からなる多層構造であってもよい。多層構造である場合、第1陰極層およびカバー陰極層の2層構造、または、第1陰極層、第2陰極層およびカバー陰極層の3層構造が好ましい。ここで、第1陰極層は、陰極の中で最も発光層側にある層をいい、カバー陰極層は2層構造の場合は第1陰極層を、3層構造の場合は第1陰極層と第2陰極層を覆う層をいう。電子供給能の観点からは、第1陰極層の材料の仕事関数が3.5eV以下であることが好ましい。また、仕事関数が3.5eV以下の金属の酸化物、フッ化物、炭酸化物、複合酸化物等も第1陰極層材料として好適に用いることができる。カバー陰極層の材料には、抵抗率が低く、水分への耐腐食性が高い金属、金属酸化物等が好適に用いられる。
【0203】
前記第1陰極層材料の具体例としては、アルカリ金属およびアルカリ土類金属、前記金属を1種類以上含む合金、前記金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物、複合酸化物およびこれらの混合物からなる群より選択される1つ以上の材料等が挙げられる。
アルカリ金属の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等が挙げられる。アルカリ金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物および複合酸化物の例としては、酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ルビジウム、酸化セシウム、フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化ルビジウム、フッ化セシウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、モリブデン酸カリウム、チタン酸カリウム、タングステン酸カリウム、モリブデン酸セシウム等が挙げられる。
アルカリ土類金属の例としては、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等が挙げられる。アルカリ土類金属の酸化物、ハロゲン化物、炭酸化物、複合酸化物の例としては、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸化バリウム、モリブデン酸バリウム、タングステン酸バリウム等が挙げられる。
アルカリ金属およびアルカリ土類金属からなる群より選択される金属を1種類以上含む合金の例としては、Li−Al合金、Mg−Ag合金、Al−Ba合金、Mg−Ba合金、Ba−Ag合金、Ca−Bi−Pb−Sn合金等が挙げられる。
第2陰極層の材料としては、第1陰極層の材料と同様の材料が例示される。なお、第1陰極層材料として例示した材料と前記電子注入層を構成する材料として例示した材料との組成物も、第1陰極層として使用することができる。
【0204】
前記カバー陰極層材料の具体例としては、金、銀、銅、アルミニウム、クロム、スズ、鉛、ニッケル、チタン等の低抵抗金属、および、これらを含む合金、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化モリブデン等の導電性金属酸化物が挙げられ、さらに、該導電性金属酸化物と金属との混合物、グラフェン、フラーレン、カーボンナノチューブ等の導電性炭素等も挙げられる。
【0205】
陰極が多層構造である場合の具体例としては、Mg/Al、Ca/Al、Ba/Al、NaF/Al、KF/Al、RbF/Al、CsF/Al、Na
2CO
3/Al、K
2CO
3/Al、Cs
2CO
3/Al等の2層構造(第1陰極層/カバー陰極層)、LiF/Ca/Al、NaF/Ca/Al、KF/Ca/Al、RbF/Ca/Al、CsF/Ca/Al、Ba/Al/Ag、KF/Al/Ag、KF/Ca/Ag、K
2CO
3/Ca/Ag等の3層構造(第1陰極層/第2陰極層/カバー陰極層)が挙げられる。ここで、符号「/」は各層が隣接している事を表す。なお、第2陰極層の材料が第1陰極層の材料に対して還元作用を有することが好ましい。
ここで、材料間の還元作用の有無および程度は、例えば、化合物間の結合解離エネルギー(D
0)から見積もることができる。即ち、第2陰極層を構成する材料による、第1陰極層を構成する材料に対する還元反応において、結合解離エネルギーが正であるような組み合わせである場合、第2陰極層の材料が第1陰極層の材料に対して還元作用を有する。結合解離エネルギーは、「電気化学便覧第5版(丸善、2000年発行)」、「熱力学データベースMALT(科学技術社、1992年発行)」等で参照できる。
【0206】
陰極の作製方法は、公知の種々の方法が利用でき、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が挙げられる。
金属、金属の酸化物、フッ化物、炭酸化物を陰極として用いる場合は、真空蒸着法が多用され、高沸点の金属酸化物、金属複合酸化物、インジウムスズ(ITO)に代表される導電性金属酸化物等を陰極として用いる場合は、スパッタリング法、イオンプレーティング法が多用される。
異種材料との組成物を成膜する場合には、共蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等が多用される。特に、低分子有機物、および、金属、金属の酸化物、フッ化物若しくは炭酸化物との組成物を成膜する場合には、共蒸着法が好ましい。
【0207】
陰極の膜厚は用いる材料、層構造によって最適値が異なり、電界発光素子の駆動電圧、発光効率、素子寿命が適度な値となるよう選択すればよい。通常、第1陰極層の膜厚は0.5nm〜20nmの範囲であり、カバー陰極層の膜厚は10nm〜1μmの範囲である。例えば、第1陰極層にBaまたはCaを、カバー陰極層にAlを用いる場合、BaまたはCaの膜厚は2nm〜10nmであり、Alの膜厚は10nm〜500nmであることが好ましく、第1陰極層にNaFまたはKF、カバー陰極層にAlを用いる場合、NaFまたはKFの膜厚は1nm〜8nmであり、Alの膜厚は10nm〜500nmであることが好ましい。
【0208】
本発明の電界発光素子において、陰極を光透過性電極として用いる場合、カバー陰極層の可視光透過率は40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましい。該可視光透過率は、カバー陰極層材料として酸化インジウムスズ(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化モリブデン等の透明導電性金属酸化物を用いることで達成される。また、該可視光透過率は、金、銀、銅、アルミニウム、クロム、スズ、鉛等の低抵抗金属およびこれらを含む合金を用いたカバー陰極層の膜厚を30nm以下にすることでも達成される。例えば、第1陰極層にBaを5nm、カバー陰極層にAgを15nm、とした陰極構造では、50%以上の可視光透過率が達成される。
【0209】
また、前記可視光透過率を向上させる事を目的として、前記カバー陰極層上に反射防止層を設ける事もできる。該反射防止層に用いることができる材料としては、屈折率が1.8〜3.0程度であることが好ましく、例えば、ZnS,ZnSe,WO
3等が挙げられる。反射防止層の膜厚は材料の組み合せによって異なるが、通常10nm〜150nmの範囲である。例えば、陰極として、第1陰極層としてBaを5nm、カバー陰極層としてAgを15nmとした陰極構造に、さらに反射防止層としてWO
3を21nm積層させると、可視光透過率は10%程度改善される。
【0210】
<絶縁層>
本発明の電界発光素子が、任意に有しうる膜厚5nm以下の絶縁層は、電極との密着性向上、電極からの電荷(即ち正孔または電子)注入改善、隣接層との混合防止などの機能を有するものである。絶縁層の材料としては、例えば、金属フッ化物、金属酸化物、有機絶縁材料(ポリメチルメタクリレート等)が挙げられる。膜厚5nm以下の絶縁層が設けられた電界発光素子としては、陰極に隣接して膜厚5nm以下の絶縁層を設けたもの、および、陽極に隣接して膜厚5nm以下の絶縁層を設けたものが挙げられる。
【0211】
本発明の電界発光素子は、例えば、基板上に各層を順次積層することによる製造することができる。具体的には、基板上に陽極を設け、その上に正孔注入層、正孔輸送層等の層を必要に応じて設け、その上に発光層を設け、その上に電子輸送層、電子注入層等の層を必要に応じて設け、さらにその上に、陰極を積層することにより製造することができる。
【0212】
本発明の電界発光素子を用いてディスプレイ装置を製造することができる。該ディスプレイ装置は、電界発光素子を1画素単位として備える。画素単位の配列の態様は、特に限定されず、テレビ等のディスプレイ装置で通常採られる配列とすることができ、多数の画素が共通の基板上に配列された態様とすることができる。本発明の装置において、基板上に配列される画素は、必要に応じて、バンクで規定される画素領域内に形成することができる。
【0213】
前記装置はさらに、必要に応じて、発光層等を挟んで基板と反対側に、封止部材を有していてもよい。また、必要に応じて、カラーフィルターまたは蛍光変換フィルター等のフィルター、画素の駆動に必要な回路および配線等、ディスプレイ装置を構成するための任意の構成要素を有していてもよい。
【0214】
<光電変換素子>
本発明の積層構造体を用いた光電変換素子は、陰極、陽極、および、該陰極と該陽極との間に設置された電荷分離層を有しており、さらに任意の層(陰極と電荷分離層の間に設けられた層、および/または、陽極と電荷分離層の間に設けられた層)を有していてもよい。
発明の第一の化合物は、該電荷分離層若しくは該任意の層に含まれるか、または、該電荷分離層および該任意の層の双方に含まれる。
【0215】
本発明の光電変換素子の電荷分離層には、電子供与性化合物と電子受容性化合物とが含まれている。電子供与性化合物としては、共役高分子化合物があげられ、具体的には、チオフェンジイル基を含む高分子化合物、フルオレンジイル基を含む高分子化合物等があげられる。また、電子受容性化合物としては、フラーレンおよびフラーレン誘導体等があげられる。
【0216】
本発明の光電変換素子は、通常支持基板上に作製される。該支持基板としては有機光電変換素子としての特性を阻害しなければ材質は特に制限されないが、ガラス基板やフレキシブルなフィルム基板やプラスチック基板も用いることができる。
【0217】
本発明の光電変換素子は、公知の方法、例えば、「Synth.Met.,102,982(1999)」に記載の方法や「Science,270,1789(1995)」に記載の方法により製造することができる。
【実施例】
【0218】
以下、本発明をさらに詳細に説明するために実施例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0219】
合成した化合物の構造分析はVarian社製、300MHzNMRスペクトロメータ−を用いて
1H−NMR解析にて行った。この際、試料を可溶な重溶媒に溶解させて行った。
【0220】
<合成例1>化合物(A−1)の合成
反応容器内を窒素ガス雰囲気下とした後、2,7−ジブロモ−9−フルオレノン(92.0g、272mmol)およびジエチルエーテル(3.7L)を混合して0℃に冷却し、1mol/Lのヨウ化メチルマグネシウム・ジエチルエーテル溶液(0.545L、545mmol)を滴下し、3時間撹拌した。得られた反応混合物に塩化アンモニウム水溶液を加えて水層を除去し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥して減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的とする化合物(A−1)(92.81g、262mmol、収率96%)を得た。
【0221】
1H NMR(400MHz,CDCl
3,rt):δ(ppm)=1.71(1H),2.02(3H),7.45−7.68(4H),7.68(2H).
【0222】
【化39】
【0223】
<合成例2>化合物(B−1)の合成
反応容器内を窒素ガス雰囲気下とした後、化合物(A−1)(83.0g、234mmol)、p−トルエンスルホン酸一水和物(4.49g、23.6mmol)およびクロロホルム(2.5L)を混合して1時間還流し、得られた反応混合物に塩化アンモニウム水溶液を加えて水層を除去した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥して減圧濃縮し、目的とする化合物(B−1)(73.6g、219mmol、収率93%)を得た。
【0224】
1H NMR(400MHz,CDCl
3,rt):δ(ppm)=6.10(2H),7.48−7.53(4H),7.83(2H).
【0225】
【化40】
【0226】
<合成例3>化合物(C−1)の合成
反応容器内を窒素ガス雰囲気下とした後、化合物(B−1)(70.0g、208mmol)、サリチル酸エチル(104g、625mmol)、メルカプト酢酸(4.20g、45.6mmol)およびメタンスルホン酸(1214g)を混合して70℃で8時間撹拌し、得られた反応混合物を氷水に滴下して析出した固体をろ過で回収し、メタノールで洗浄した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的とする化合物(C−1)(52.14g、104mmol、収率50%)を得た。
【0227】
1H NMR(400MHz,CDCl
3,rt):δ(ppm)=1.44(3H),1.84(1H),4.44(2H),6.76(2H),7.29(2H),7.48(2H),7.60(2H),7.88(1H),10.8(1H).
【0228】
【化41】
【0229】
<合成例4>化合物(D−1)の合成
反応容器内を窒素ガス雰囲気下とした後、化合物(C−1)(41.2g、82.0mmol)、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]−エチル−p−トルエンスルホネート(75.8g、238mmol)、ジメチルホルムアミド(214g)、炭酸カリウム(54.4g、394mmol)および1,4,7,10,13,16−ヘキサオキサシクロオクタデカン(「18−クラウン−6」と呼ばれることがある。)(4.68g、18mmol)を混合して105℃で2時間撹拌し、得られた反応混合物を水に加え酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的とする化合物(D−1)(40.2g、62.0mmol、収率76%)を得た。
【0230】
1H NMR(400MHz,CDCl
3,rt):δ(ppm)=1.37(3H),1.84(3H),3.36(3H),3.53(2H),3.58−3.79(6H),3.73(2H),4.12(2H),4.34(2H),6.80(1H),6.90(1H),7.28(2H),7.48(2H),7.58(2H),7.70(1H).
【0231】
【化42】
【0232】
<合成例5>化合物(E−1)の合成
反応容器内を窒素ガス雰囲気下とした後、化合物(D−1)(28.4g、43.8mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(24.30g、95.7mol)、1分子のジクロロメタンを伴う[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド(0.35g、0.4mmol)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(0.24g、0.4mmol)、酢酸カリウム(25.60g、260mmol)および1,4−ジオキサン(480mL)を混合して120℃で17時間撹拌し、得られた反応混合物をろ過して酢酸エチルで洗浄した。得られたろ液を減圧濃縮してシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、次いで、再結晶で精製して目的とする化合物(E−1)(18.22g、24.5mmol、収率56%)を得た。
【0233】
1H NMR(400MHz,CDCl
3,rt):δ(ppm)=1.30−1.47(27H),1.88(3H),3.35(3H),3.53(2H),3.60−3.69(4H),3.73(2H),3.84(2H),4.10(2H),4.34(2H),6.74(1H),6.87(1H),7.58(2H),7.72−7.89(5H).
【0234】
【化43】
【0235】
<合成例6>化合物(A−2)の合成
反応容器内を窒素ガス雰囲気下とした後、2,7−ジブロモ−9−フルオレノン(82.3g、244mmol)およびテトラヒドロフラン(3.8L)を混合して0℃に冷却し、1mol/Lの臭化イソブチルマグネシウム・テトラヒドロフラン溶液(0.475L、475mmol)を滴下して1時間撹拌した。得られた反応混合物に塩化アンモニウム水溶液を加えて水層を除去し、得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥して減圧濃縮した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的とする化合物(A−2)(51.9g、131mmol、収率54%)を得た。
【0236】
1H NMR(400MHz,CDCl
3,rt):δ(ppm)=0.60(6H),1.17(1H),2.04(1H),2.09(2H),7.43−7.51(4H),7.62(2H).
【0237】
【化44】
【0238】
<合成例7>化合物(B−2)の合成
反応容器内を窒素ガス雰囲気下とした後、化合物(A−2)(49.6g、125mmol)、メタントルエンスルホン酸(99.1g、1032mmol)およびクロロホルム(0.51L)を混合して1時間還流し、得られた反応混合物に塩化アンモニウム水溶液を加えて水層を除去した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥して減圧濃縮し、目的とする化合物(B−2)(36.4g、96.3mmol、収率77%)を得た。
【0239】
1H NMR(400MHz,CDCl
3,rt):δ(ppm)=1.27(6H),3.41(1H),6.60(1H),7.45−7.60(4H),7.80(1H),7.97(1H).
【0240】
【化45】
【0241】
<合成例8>化合物(C−2)の合成
反応容器内を窒素ガス雰囲気下とした後、化合物(B−2)(36.4g、96.3mmol)、サリチル酸エチル(32.0g、193mmol)、メルカプト酢酸(1.86g、20.2mmol)およびメタンスルホン酸(465g)を混合して70℃で6時間撹拌し、得られた反応混合物を氷水に滴下して析出した固体をろ過で回収し、メタノールで洗浄した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的とする化合物(C−2)(39.6g、72.8mmol、収率75.6%)を得た。
【0242】
1H NMR(400MHz,CDCl
3,rt):δ(ppm)=0.53(6H),0.98(1H),1.44(3H),2.41(2H),4.44(2H),6.74(1H),6.80(1H),7.30(2H),7.47(2H),7.60(2H),7.84(1H),10.8(1H).
【0243】
【化46】
【0244】
<合成例9>化合物(D−2)の合成
反応容器内を窒素ガス雰囲気下とした後、化合物(C−2)(39.6g、72.8mmol)、2−[2−(2−メトキシエトキシ)エトキシ]−エチル−p−トルエンスルホネート(67.1g、210mmol)、ジメチルホルムアミド(198g)、炭酸カリウム(48.2g、349mmol)および1,4,7,10,13,16−ヘキサオキサシクロオクタデカン(「18−クラウン−6」と呼ばれることがある。)(3.82g、14.5mmol)を混合して105℃で1時間撹拌し、得られた反応混合物を水に加え酢酸エチルで抽出した。得られた有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧濃縮して得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、目的とする化合物(D−2)(47.4g、68.6mmol、収率94%)を得た。
【0245】
1H NMR(400MHz,CDCl
3,rt):δ(ppm)=0.51(2H),1.00(1H),1.38(3H),2.44(2H),3.36(3H),3.53(2H),3.58−3.73(6H),3.72(2H),4.13(2H),4.34(2H),6.75(1H),6.85(1H),7.32(2H),7.48(2H),7.58(2H),7.70(1H).
【0246】
【化47】
【0247】
<合成例10>化合物(E−2)の合成
反応容器内を窒素ガス雰囲気下とした後、化合物(D−2)(18.0g、26.1mmol)、ビス(ピナコラト)ジボロン(14.7g、57.4mol)、1分子のジクロロメタンを伴う[1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(II)ジクロリド(0.21g、0.26mmol)、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン(0.14g、0.26mmol)、酢酸カリウム(15.4g、156mmol)および1,4−ジオキサン(290mL)を混合して120℃で24時間撹拌し、得られた反応混合物をろ過して酢酸エチルで洗浄した。得られたろ液を減圧濃縮してシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、次いで、再結晶で精製して目的とする化合物(E−2)(11.6g、14.8mmol、収率57%)を得た。
【0248】
1H NMR(400MHz,CDCl
3,rt):δ(ppm)=0.44(6H),0.99(1H),1.30−1.43(27H),2.55(2H),3.35(3H),3.53(2H),3.60−3.69(4H),3.74(2H),3.85(2H),4.08(2H),4.34(2H),6.70(1H),6.79(1H),7.56(2H),7.75−7.83(5H).
【0249】
【化48】
【0250】
<合成例11>化合物(F)の合成
化合物(F)を、「Tetrahedron、2008、64、2772−2782」に記載の方法に従って合成した。
【0251】
1H NMR(400MHz,CDCl
3,rt):δ(ppm)=3.45(2H),3.83(3H),3.89(3H),6.82(2H),7.16(1H).
【0252】
【化49】
【0253】
<合成例12>化合物(G)の合成
反応容器内を窒素ガス雰囲気下とした後、化合物(F)(14.2g、78.3mmol)、ブロモベンゼン(36.9g、23.5mol)、パラジウムジアセテート(0.878g、3.91mmol)、トリターシャリーブチルフォスフィン(2.38g、11.7mmol)、酢酸セシウム(63.7g、196mmol)およびトルエン(142mL)を混合して48時間還流しつつ撹拌し、得られた反応混合物をジクロロメタンで希釈し、ろ過し、洗浄した。得られたろ液を減圧濃縮してシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し、次いで、再結晶で精製して目的とする化合物(G)(18.7g、56.1mmol、収率72%)を得た。
【0254】
1H NMR(400MHz,CDCl
3,rt):δ(ppm)=3.83(3H),3.90(3H),6.85(1H),7.02−7.04(6H),7.21−7.25(5H),7.57(1H).
【0255】
【化50】
【0256】
<合成例13>化合物(H)の合成
反応容器内を窒素ガス雰囲気下とした後、化合物(G)(8.81g、26.4mmol)、N-ブロモスクシンイミド(9.54g、53.6mol)およびクロロホルム(340mL)を混合して1時間室温下で撹拌し、得られた反応混合物に5wt%チオ硫酸ナトリウム水溶液(40mL)を添加した。分液洗浄した後、硫酸ナトリウムを用いて乾燥し、減圧濃縮して化合物(H)(13.9g)を粗生成物として得た。
また同様に、反応容器内を窒素ガス雰囲気下とした後、化合物(G)(9.49g、28.5mmol)、N-ブロモスクシンイミド(10.3g、58.1mol)およびクロロホルム(390mL)を混合して1時間室温下で撹拌し、得られた反応混合物に5wt%チオ硫酸ナトリウム水溶液(40mL)を添加した。分液洗浄した後、硫酸ナトリウムを用いて乾燥し、減圧濃縮して化合物(H)(15.0g)を粗生成物として得た。
得られた粗生成物(合計28.9g)を、ヘキサン(600mL)に分散させ撹拌ろ過したところ、目的とする化合物(H)(26.0g、52.9mmol、収率94%)を得た。
【0257】
1H NMR(400MHz,CDCl
3,rt):δ(ppm)=3.84(3H),3.90(3H),6.87−7.52(11H).
【0258】
【化51】
【0259】
<合成例14>化合物(I)の合成
反応容器内を窒素ガス雰囲気下とした後、化合物(H)(24.3g、49.5mmol)、ボロントリブロマイド1mol/Lジクロロメタン溶液(149ml)およびクロロホルム(366mL)を混合して24時間室温下で撹拌し、得られた反応混合物を水で希釈し、分液洗浄した後、硫酸ナトリウムを用いて乾燥し、減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、目的とする化合物(I)(11.5g、24.8mmol、収率49%)を得た。
【0260】
1H NMR(400MHz,CDCl
3,rt):δ(ppm)=6.88−7.61(12H),10.3(1H).
【0261】
【化52】
【0262】
<実施例1>化合物(J)の合成
化合物(I)(10.2g、22.0mmol)、エタノール(1500mL)および濃硫酸(12.7mL)を混合して、4Åモレキュラーシーブ存在下で72時間、100℃で撹拌し、得られた反応混合物に硫酸ナトリウム(500g)添加した後、ろ過し、洗浄した。その後、約200mLまで減圧濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、目的とする化合物(J)(9.20g、18.7mmol、収率85%)を得た。
【0263】
1H NMR(400MHz,CDCl
3,rt):δ(ppm)=1.36(3H),4.38(2H),6.87(4H),6.92(1H),7.20−7.33(5H),7.58(1H),10.8(1H).
【0264】
【化53】
【0265】
<実施例2>化合物(K)の合成
化合物(J)(9.20g、18.7mmol)、3,6,9−トリオキサデシルp−トルエンスルホナート(8.95g、28.1mmol)、炭酸カリウム(5.18g、37.5mmol)およびN,N−ジメチルホルムアミド(184g)を混合して24時間、80℃で撹拌し、得られた反応混合物を酢酸エチルで希釈した後、分液洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥させた。得られた溶液をろ過した後、得られたろ液を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、目的とする化合物(K)(11.5g、18.0mmol、収率96%)を得た。
【0266】
1H NMR(400MHz,CDCl
3,rt):δ(ppm)=1.34(3H),3.38(3H),3.55(2H),3.65(4H),3.69(2H),3.76(2H),4.18(2H),4.30(2H),6.89(5H),7.11(1H),7.31(4H),7.48(1H).
【0267】
【化54】
【0268】
<実施例3>高分子化合物(L−1)の合成
化合物(D−1)(331mg、0.510mmol)、化合物(E−1)(362mg、0.488mmol)、化合物(K)(20.8mg、0.0327mmol)、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ製、商品名Aliquot336)(5.50mg、0.0136mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム(1.30mg、1.85μmol)、17.5wt%炭酸ナトリウム水溶液(10mL)およびトルエン(20mL)をフラスコに入れて、105℃で7時間半攪拌した。
その後、そこに、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム(1.30mg、1.85μmol)、17.5wt%炭酸ナトリウム水溶液(1.5mL)およびフェニルボロン酸(39.9mg、0.326mmol)を加えて6時間攪拌した。その後、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム三水和物(0.490g)および水(10mL)を添加して、80℃で2時間攪拌し、得られた混合物をメタノールに滴下し析出物をろ過で回収して乾燥した。得られた固体をクロロホルムに溶解させ、アルミナおよびシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、溶出液を濃縮・乾燥させた。得られた濃縮物をトルエンに溶解させて、メタノールに滴下し析出物をろ過で回収して乾燥し、高分子化合物(L−1)を342mg得た。高分子化合物(L−1)のポリスチレン換算の重量平均分子量は3.3×10
4であった。高分子化合物(L−1)は、単量体の仕込み比から、以下の構成単位およびモル比率を有する高分子化合物と推定される。
【0269】
【化55】
【0270】
<実施例4>高分子化合物(M−1)の合成
高分子化合物(L−1)(150mg)、水酸化セシウム1水和物(103mg、0.612mmol)、テトラヒドロフラン(20mL)、メタノール(10mL)および水(1.2mL)をフラスコに入れて、65℃で攪拌した。2時間後、メタノール(20mL)を追加して更に2時間攪拌した。得られた溶液を濃縮し、乾燥した後、メタノールに溶解させて2−プロパノールに滴下し析出物をろ過で回収して乾燥し、高分子化合物(M−1)を142mg得た。高分子化合物(M−1)は、以下の構成単位およびモル比率を有する高分子化合物と推定される。
【0271】
【化56】
【0272】
<実施例5>高分子化合物(L−2)の合成
化合物(D−2)(439mg、0.560mmol)、化合物(E−2)(484mg、0.704mmol)、化合物(K)(61.2mg、0.0960mmol)、トリオクチルメチルアンモニウムクロライド(アルドリッチ製、商品名Aliquot336)(8.10mg、0.0200mmol)、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム(1.68mg、2.39μmol)、17.5wt%炭酸ナトリウム水溶液(10mL)およびトルエン(20mL)をフラスコに入れて、105℃で攪拌した。2時間後に化合物(E−2)(55mg)を加え、更に2時間攪拌後に化合物(E−2)(50mg)を加え、更に1時間攪拌後に化合物(E−2)(20mg)を加え、更に1時間攪拌後に化合物(E−2)(15mg)を加えて、1時間攪拌した。
その後、そこに、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム(1.68mg、2.39μmol)、17.5wt%炭酸ナトリウム水溶液(2.3mL)およびフェニルボロン酸(39.0mg、0.320mmol)を加えて6時間攪拌した。その後、ジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム三水和物(0.720g)および水(14mL)を添加して、80℃で2時間攪拌し、得られた混合物をメタノールに滴下し析出物をろ過で回収して乾燥した。得られた固体をクロロホルムに溶解させ、アルミナおよびシリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、溶出液を濃縮・乾燥させた。得られた濃縮物をトルエンに溶解させて、メタノールに滴下し析出物をろ過で回収して乾燥し、高分子化合物(L−2)を392mg得た。高分子化合物(L−2)のポリスチレン換算の重量平均分子量は3.9×10
4であった。高分子化合物(L−2)は、単量体の仕込み比から、以下の構成単位およびモル比率を有する高分子化合物と推定される。
【0273】
【化57】
【0274】
<実施例6>高分子化合物(M−2)の合成
高分子化合物(L−2)(200mg)、水酸化セシウム1水和物(126mg、0.751mmol)、テトラヒドロフラン(4.0mL)、メタノール(6.0mL)および水(0.3mL)をフラスコに入れて、65℃で攪拌した。4時間後、得られた溶液を濃縮し、次いで、水洗し、高分子化合物(M−2)を211mg得た。高分子化合物(M−2)は、以下の構成単位およびモル比率を有する高分子化合物と推定される。
【0275】
【化58】
【0276】
<実施例7>高分子化合物(M−3)の合成
高分子化合物(L−2)(150mg)、水酸化リチウム1水和物(59.1mg、0.751mmol)、テトラヒドロフラン(10mL)、メタノール(10mL)および水(0.3mL)をフラスコに入れて、65℃で攪拌した。4時間後、得られた溶液を濃縮し、乾燥した後、メタノールに溶解させて2−プロパノールに滴下し析出物をろ過で回収して乾燥し、高分子化合物(M−3)を136mg得た。高分子化合物(M−3)は、以下の構成単位およびモル比率を有する高分子化合物と推定される。
【0277】
【化59】
【0278】
<実施例8>
高分子化合物(M−1)を、0.32wt%メタノール溶液になるようにメタノールを加え撹拌したところ、高分子化合物(M−1)は完全に溶解した。
【0279】
<実施例9>
高分子化合物(M−2)を、0.32wt%メタノール溶液になるようにメタノールを加え撹拌したところ、高分子化合物(M−2)は完全に溶解した。
【0280】
<実施例10>
高分子化合物(M−3)を、0.32wt%メタノール溶液になるようにメタノールを加え撹拌したところ、高分子化合物(M−3)は完全に溶解した。
【0281】
<実施例11>化合物(N)の合成
反応容器内をアルゴンガス雰囲気下とした後、化合物(K)(638mg)、メタノール(20mL)、水酸化セシウム一水和物(168mg)および水(1.20mL)を混合して69℃で2時間撹拌した。得られた反応混合物を濃縮して乾燥し、化合物(N)を624mg得た。
【0282】
1H NMR(300MHz,CD
3OD,rt):δ(ppm)=3.35(3H),3.52−3.57(2H),3.59−3.67(4H),3.68−3.73(2H),3.80−3.87(2H),4.12−4.21(2H),6.88−6.94(4H),6.96−7.02(2H),7.10(1H),7.30−7.38(4H).
【0283】
【化60】
【0284】
<実施例12>
化合物(N)を、0.32wt%メタノール溶液になるようにメタノールを加え撹拌したところ、化合物(N)は完全に溶解した。結果を表1に示す。
【0285】
<比較例1>
化合物(O)を、「非特許文献1」に記載の方法に従って合成した。化合物(O)を、0.32wt%メタノール溶液になるようにメタノールを加え撹拌したところ、化合物(O)は完全に溶解しなかった。結果を表1に示す。
【0286】
【化61】
【0287】
【表1】
【0288】
表1より、化合物(N)のメタノールへの溶解度は、化合物(O)のそれよりも高いことが分かった。
【0289】
よって、本発明の第一の化合物は、極性の高い溶媒であるメタノールに対する溶解度が高い。
【0290】
<実施例13>電界発光素子1の作製
ガラス基板表面に成膜パターニングされたITO陽極(膜厚:45nm)上に、正孔注入材料溶液を塗布し、スピンコート法によって膜厚が60nmになるように正孔注入層を成膜した。
【0291】
正孔注入層を成膜した基板を窒素ガス雰囲気下で、200℃で10分加熱した後、室温まで自然冷却させ、正孔注入層が形成された基板を得た。
【0292】
ここで正孔注入材料溶液としては、スタルクヴイテック(株)製、PEDOT:PSS溶液(ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)・ポリスチレンスルホン酸、製品名:Baytron)を用いた。
【0293】
次に、正孔輸送性高分子材料とキシレンとを混合し、0.7重量%の正孔輸送性高分子材料を含む正孔輸送層形成用組成物を得た。
【0294】
ここで、正孔輸送性高分子材料は、以下の方法で合成した。
【0295】
反応容器内を不活性ガス雰囲気下とした後、2,7−ジブロモ−9,9−ジ(オクチル)フルオレン(1.4g)、2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジ(オクチル)フルオレン(6.4g)、N,N−ビス(4−ブロモフェニル)−N’,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−1,4−フェニレンジアミン(4.1g)、ビス(4−ブロモフェニル)ベンゾシクロブテンアミン(0.6g)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(1.7g)、酢酸パラジウム(4.5mg)、トリ(2−メトキシフェニル)ホスフィン(0.03g)およびトルエン(100mL)を混合し、得られた混合物を、100℃で2時間加熱攪拌した。その後、そこにフェニルボロン酸(0.06g)を添加し、得られた混合物を10時間撹拌した。その後、放冷し、水層を除去し、そこにジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液を添加し攪拌した後、水層を除去し、得られた有機層を水、酢酸水で洗浄した。得られた有機層をメタノールに注いで固体を沈殿させた後、沈殿した固体を濾取し、再度トルエンに溶解させ、シリカゲルおよびアルミナのカラムに通液した。その後、固体を含む溶出トルエン溶液を回収し、それをメタノールに注いで固体を沈殿させた。沈殿した固体を濾取後、50℃で真空乾燥し、正孔輸送性高分子材料12.1gを得た。正孔輸送性高分子材料のポリスチレン換算の重量平均分子量は3.0×10
5であった。
【0296】
正孔輸送性高分子材料は、下記式:
【0297】
【化62】
で表される構造単位と、下記式:
【0298】
【化63】
で表される構造単位と、下記式:
【0299】
【化64】
で表される構造単位を62.5:30:7.5のモル比(原料の仕込量からの理論値)を有する共重合体である。
【0300】
上記で得た正孔注入層が形成された基板の正孔注入層の上に、正孔輸送層形成用組成物を塗布し、スピンコート法によって膜厚が20nmになるように正孔輸送層を成膜した。この正孔輸送層を成膜した基板を窒素ガス雰囲気下で、180℃で60分間加熱することで正孔輸送層を不溶化させた後、室温まで自然冷却させ、正孔輸送層が形成された基板を得た。
【0301】
次に、発光高分子材料とキシレンとを混合し、1.4重量%の発光高分子材料を含む発光層形成用組成物を得た。
【0302】
ここで、発光高分子材料は、以下の方法で合成した。
反応容器内を不活性ガス雰囲気下とした後、2,7−ジブロモ−9,9−ジ(オクチル)フルオレン(9.0g)、N,N’−ビス(4−ブロモフェニル)−N,N’−ビス(4−tert−ブチル−2,6−ジメチルフェニル)1,4−フェニレンジアミン(1.3g)、2,7−ビス(4,4,5,5−テトラメチル−1,3,2−ジオキサボロラン−2−イル)−9,9−ジ(4−ヘキシルフェニル)フルオレン(13.4g)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(43.0g)、酢酸パラジウム(8mg)、トリ(2−メトキシフェニル)ホスフィン(0.05g)およびトルエン(200mL)を混合し、得られた混合物を、90℃で8時間加熱攪拌した。その後、そこにフェニルボロン酸(0.22g)を添加し、得られた混合物を14時間撹拌した。その後、放冷し、水層を除去し、そこにジエチルジチオカルバミン酸ナトリウム水溶液を添加し撹拌した後、水層を除去し、得られた有機層を水、酢酸水で洗浄した。得られた有機層をメタノールに注いで固体を沈殿させた後、沈殿した固体を濾取し、再度トルエンに溶解させ、シリカゲルおよびアルミナのカラムに通液した。その後、固体を含む溶出トルエン溶液を回収し、それをメタノールに注いで固体を沈殿させた。沈殿した固体を濾取後、50℃で真空乾燥し、発光高分子材料(12.5g)を得た。発光高分子材料のポリスチレン換算の重量平均分子量は3.1×10
5であった。
【0303】
発光高分子材料は、下記式:
【0304】
【化65】
で表される構造単位と、下記式:
【0305】
【化66】
で表される構造単位と、下記式:
【0306】
【化67】
で表される構造単位と、を50:45:5のモル比(原料の仕込量からの理論値)を有する共重合体である。
【0307】
上記で得た正孔輸送層が形成された基板の正孔輸送層の上に、発光層形成用組成物を塗布し、スピンコート法によって膜厚が80nmになるように発光層を成膜した。この発光層を成膜した基板を窒素ガス雰囲気下で、130℃で10分間加熱し、室温まで自然冷却させ、発光層が形成された基板を得た。
【0308】
メタノールと化合物(M−1)とを混合し、化合物(M−1)の含有割合が0.25重量%の組成物を得た。
【0309】
上記で得た発光層が形成された基板の発光層の上に、前記組成物を塗布し、スピンコート法によって膜厚10nmになるように電子注入層を成膜した。この電子注入層を成膜した基板を窒素ガス雰囲気下で、130℃で15分間加熱し、室温まで自然冷却させ、電子注入層が形成された基板を得た。
【0310】
上記で得た電子注入層が形成された基板を真空装置内に挿入し、真空蒸着法によってAlを80nm成膜することで陰極を形成し、積層構造体1を作製した。
【0311】
上記で得た積層構造体1を真空装置より取り出し、窒素ガス雰囲気下で、封止ガラスと2液混合型エポキシ樹脂にて封止し、電界発光素子1を作製した。
【0312】
<実施例14>電界発光素子2の作製
化合物(M−1)の代わりに、化合物(M−2)を用いたこと以外は、実施例13と同様にして、電界発光素子2を作製した。
【0313】
<実施例15>電界発光素子3の作製
化合物(M−1)の代わりに、化合物(M−3)を用いたこと以外は、実施例13と同様にして、電界発光素子3を作製した。
【0314】
<比較例2>電界発光素子4の作製
化合物(M−1)を含む層を形成しなかったこと以外は、実施例13と同様にして、電界発光素子4を作製した。
【0315】
上記で得られた電界発光素子1〜4に、10Vの順方向電圧を印加し、発光輝度と発光効率を測定した。結果を表1に示す。
【0316】
【表2】
【0317】
表2より、本発明の化合物を含む電界発光素子は、本発明の化合物を含まない電界発光素子に比べ、発光効率が顕著に優れる。