【実施例】
【0036】
次に、本発明の実施例について説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、この例に制限されるものではない。すなわち、本発明の技術思想の範囲内で、明細書全体から把握できる発明及び実施例以外の態様あるいは変形を全て包含するものである。
【0037】
(実施例1)
まず、銅(Cu:純度4N)原料20kgをカーボン製坩堝に入れ、坩堝内を窒素ガス雰囲気にし、1250°Cまで加熱した。この高温の加熱は、ダミーバーとCu−Ga合金溶湯を溶着させるためである。
次に、添加元素であるGa(純度:4N)をGa濃度が15at%の組成比となるように調整して、加熱坩堝に導入した。坩堝の加熱には、抵抗加熱装置(グラファイトエレメント)を使用した。溶解坩堝の形状は、140mmφ×400mmφであり、鋳型の材質はグラファイト製で、鋳造塊の形状は、65mmw×12mmtの板とし、連続鋳造した。
【0038】
原料が溶解した後、溶湯温度を1080°Cになるまで下げ、溶湯温度と鋳型温度が安定した時点で、引抜きを開始する。鋳型の前端には、ダミーバーが挿入されているので、このダミーバーを引出すことにより、凝固した鋳片引出される。
引抜きパターンは、0.5秒駆動、2.5秒停止の繰り返しで行い、周波数を変化させ、引抜き速度を50mm/minとした。引抜き速度(mm/min)と冷却速度(°C/min)は比例関係にあり、引抜き速度(mm/min)を上げると冷却速度も上昇する。この結果、350°C/minの冷却速度となった。
【0039】
得られた鋳造片は、CuにGaが固溶(α相)した組織を有し、酸素濃度は10wtppm未満となり、微細なデンドライト組織が形成された。二次デンドライトアーム間隔は37μmとなり、二次デンドライトの長さは38μmで、幅は24μmとなった。
なお、デンドライトの二次アームの間隔と寸法は、ランダムに選んだ5本のデンドライトから、それぞれ5点計測した平均値である。したがって、デンドライト本数5×計測に選択した二次アーム数=25個の平均値となる。以下、同様である。
二次デンドライトアーム間には、Ga濃度が高い相(偏析相、異相)が観察された。これは二次デンドライトアーム間に挟まれた構造となるため、デンドライト組織が微細となって形成されているため、この偏析相(異相)も均一に分散していた。
【0040】
この結果を表1に示す。次に、この鋳造片をターゲット形状に機械加工し、さらに研磨し、該研磨面を、塩化第二鉄を含む塩酸溶液でエッチングした表面の顕微鏡写真を
図2に示す。この結果、Ga相(偏析相)が均一に分散した鋳造組織を得ることができた。このように酸素量が少なく、Ga相(偏析相)が均一に分散した鋳造組織を持つCu−Ga合金ターゲットを用いてスパッタリングすることにより、パーティクルの発生が少なく、均質なCu−Ga系合金膜を得ることができた。
【0041】
【表1】
【0042】
(実施例2)
まず、銅(Cu:純度4N)原料20kgをカーボン製坩堝に入れ、坩堝内を窒素ガス雰囲気にし、1250°Cまで加熱した。この高温の加熱は、ダミーバーとCu−Ga合金溶湯を溶着させるためである。
次に、添加元素であるGa(純度:4N)をGa濃度が15at%の組成比となるように調整して、加熱坩堝に導入した。坩堝の加熱には、抵抗加熱装置(グラファイトエレメント)を使用した。溶解坩堝の形状は、140mmφ×400mmφであり、鋳型の材質はグラファイト製で、鋳造塊の形状は、65mmw×12mmtの板とし、連続鋳造した。
【0043】
原料が溶解した後、溶湯温度を1080°Cになるまで下げ、溶湯温度と鋳型温度が安定した時点で、引抜きを開始する。鋳型の前端には、ダミーバーが挿入されているので、このダミーバーを引出すことにより、凝固した鋳片引出される。
引抜きパターンは、0.5秒駆動、2.5秒停止の繰り返しで行い、周波数を変化させ、引抜き速度を90mm/minとした。引抜き速度(mm/min)と冷却速度(°C/min)は比例関係にあり、引抜き速度(mm/min)を上げると冷却速度も上昇する。この結果、650°C/minの冷却速度となった。
【0044】
得られた鋳造片は、CuにGaが固溶(α相)した組織を有し、酸素濃度は10wtppm未満であった。鋳造組織に一次デンドライトアームと二次デンドライトアームからなる微細なデンドライト組織が形成された。二次デンドライトアーム間隔は28μmとなり、二次デンドライトの長さは33μmで、幅は19μmとなった。
二次デンドライトアーム間には、Ga濃度が高い相(偏析相、異相)が観察された。これは二次デンドライトアーム間に挟まれた構造となるため、デンドライト組織が微細となって形成されているため、この偏析相(異相)も均一に分散していた。
【0045】
この結果を表1に示す。次にこの鋳造片をターゲット形状に機械加工し、さらに研磨し、該研磨面を、塩化第二鉄を含む塩酸溶液でエッチングした表面の顕微鏡写真を
図2に示す。また、FE−EPMAの面分析結果を
図3の上図に示す。この図に示すように、Ga相(偏析相)が均一に分散した鋳造組織を得ることができた。
このように酸素量が少なく、Ga相(偏析相)が均一に分散した鋳造組織を持つCu−Ga合金ターゲットを用いてスパッタリングすることにより、パーティクルの発生が少なく、均質なCu−Ga系合金膜を得ることができた。
【0046】
(実施例3)
まず、銅(Cu:純度4N)原料20kgをカーボン製坩堝に入れ、坩堝内を窒素ガス雰囲気にし、1250°Cまで加熱した。この高温の加熱は、ダミーバーとCu−Ga合金溶湯を溶着させるためである。
次に、添加元素であるGa(純度:4N)をGa濃度が20at%の組成比となるように調整して、加熱坩堝に導入した。坩堝の加熱には、抵抗加熱装置(グラファイトエレメント)を使用した。溶解坩堝の形状は、140mmφ×400mmφであり、鋳型の材質はグラファイト製で、鋳造塊の形状は、65mmw×12mmtの板とし、連続鋳造した。
【0047】
原料が溶解した後、溶湯温度を1080°Cになるまで下げ、溶湯温度と鋳型温度が安定した時点で、引抜きを開始する。鋳型の前端には、ダミーバーが挿入されているので、このダミーバーを引出すことにより、凝固した鋳片引出される。
引抜きパターンは、0.5秒駆動、2.5秒停止の繰り返しで行い、周波数を変化させ、引抜き速度を50mm/minとした。引抜き速度(mm/min)と冷却速度(°C/min)は比例関係にあり、引抜き速度(mm/min)を上げると冷却速度も上昇する。この結果、350°C/minの冷却速度となった。
【0048】
得られた鋳造片は、CuにGaが固溶(α相)した組織を有し、酸素濃度は10wtppm未満となり、微細なデンドライト組織が形成された。二次デンドライトアーム間隔は48μmとなり、二次デンドライトの長さは45μmで、幅は25μmとなった。
二次デンドライトアーム間には、Ga濃度が高い相(偏析相、異相)が観察された。これは二次デンドライトアーム間に挟まれた構造となるため、デンドライト組織が微細となって形成されているため、この偏析相(異相)も均一に分散していた。
【0049】
この結果を表1に示す。次にこの鋳造片をターゲット形状に機械加工し、さらに研磨し、該研磨面を、塩化第二鉄を含む塩酸溶液でエッチングした表面の顕微鏡写真を
図2に示す。この結果、Ga相(偏析相)が均一に分散した鋳造組織を得ることができた。このように酸素量が少なく、Ga相(偏析相)が均一に分散した鋳造組織を持つCu−Ga合金ターゲットを用いてスパッタリングすることにより、パーティクルの発生が少なく、均質なCu−Ga系合金膜を得ることができた。
【0050】
(実施例4)
まず、銅(Cu:純度4N)原料20kgをカーボン製坩堝に入れ、坩堝内を窒素ガス雰囲気にし、1250°Cまで加熱した。この高温の加熱は、ダミーバーとCu−Ga合金溶湯を溶着させるためである。
次に、添加元素であるGa(純度:4N)をGa濃度が20at%の組成比となるように調整して、加熱坩堝に導入した。坩堝の加熱には、抵抗加熱装置(グラファイトエレメント)を使用した。溶解坩堝の形状は、140mmφ×400mmφであり、鋳型の材質はグラファイト製で、鋳造塊の形状は、65mmw×12mmtの板とし、連続鋳造した。
【0051】
原料が溶解した後、溶湯温度を1080°Cになるまで下げ、溶湯温度と鋳型温度が安定した時点で、引抜きを開始する。鋳型の前端には、ダミーバーが挿入されているので、このダミーバーを引出すことにより、凝固した鋳片引出される。
引抜きパターンは、0.5秒駆動、2.5秒停止の繰り返しで行い、周波数を変化させ、引抜き速度を90mm/minとした。引抜き速度(mm/min)と冷却速度(°C/min)は比例関係にあり、引抜き速度(mm/min)を上げると冷却速度も上昇する。この結果、650°C/minの冷却速度となった。
【0052】
得られた鋳造片は、CuにGaが固溶(α相)した組織を有し、酸素濃度は10wtppm未満となり、微細なデンドライト組織が形成された。二次デンドライトアーム間隔は32μmとなり、二次デンドライトの長さは35μmで、幅は21μmとなった。
二次デンドライトアーム間には、Ga濃度が高い相(偏析相、異相)が観察された。これは二次デンドライトアーム間に挟まれた構造となるため、デンドライト組織が微細となって形成されているため、この偏析相(異相)も均一に分散していた。
【0053】
この結果を表1に示す。次にこの鋳造片をターゲット形状に機械加工し、さらに研磨し、該研磨面を、塩化第二鉄を含む塩酸溶液でエッチングした表面の顕微鏡写真を
図2に示す。また、FE−EPMAの面分析結果を
図3の上図に示す。この図に示すように、Ga相(偏析相)が均一に分散した鋳造組織を得ることができた。
このように酸素量が少なく、Ga相(偏析相)が均一に分散した鋳造組織を持つCu−Ga合金ターゲットを用いてスパッタリングすることにより、パーティクルの発生が少なく、均質なCu−Ga系合金膜を得ることができた。
【0054】
(比較例1)
まず、銅(Cu:純度4N)原料20kgをカーボン製坩堝に入れ、坩堝内を窒素ガス雰囲気にし、1250°Cまで加熱した。この高温の加熱は、ダミーバーとCu−Ga合金溶湯を溶着させるためである。
次に、添加元素であるGa(純度:4N)をGa濃度が15at%の組成比となるように調整して、加熱坩堝に導入した。坩堝の加熱には、抵抗加熱装置(グラファイトエレメント)を使用した。溶解坩堝の形状は、140mmφ×400mmφであり、鋳型の材質はグラファイト製で、鋳造塊の形状は、65mmw×12mmtの板とし、連続鋳造した。
【0055】
原料が溶解した後、溶湯温度を1080°Cになるまで下げ、溶湯温度と鋳型温度が安定した時点で、引抜きを開始する。鋳型の前端には、ダミーバーが挿入されているので、このダミーバーを引出すことにより、凝固した鋳片引出される。
引抜きパターンは、0.5秒駆動、2.5秒停止の繰り返しで行い、周波数を変化させ、引抜き速度を30mm/minとした。引抜き速度(mm/min)と冷却速度(°C/min)は比例関係にあり、引抜き速度(mm/min)を上げると冷却速度も上昇する。この結果、200°C/minの冷却速度となった。
【0056】
得られた鋳造片は、CuにGaが固溶(α相)した組織を有し、酸素濃度は10wtppm未満となり、粗大化したデンドライト組織が形成された。二次デンドライトアーム間隔は94μmとなり、二次デンドライトの長さは64μmで、幅は61μmとなった。二次デンドライトアーム間には、Ga濃度が高い相(偏析相、異相)が観察されたが、デンドライトが大きいため、偏析相(異相)も大きくなっていた。
【0057】
この結果を表1に示す。次にこの鋳造片をターゲット形状に機械加工し、さらに研磨し、該研磨面を、塩化第二鉄を含む塩酸溶液でエッチングした表面の顕微鏡写真を
図2に示す。このように酸素量が少ないが、Ga相(偏析相)が粗大化した鋳造組織を持つCu−Ga合金ターゲットとなった。このターゲットを用いてスパッタリングすることにより、パーティクルの発生が増加し、均質なCu−Ga系合金膜を得ることができなかった。
【0058】
(比較例2)
まず、銅(Cu:純度4N)原料20kgをカーボン製坩堝に入れ、坩堝内を窒素ガス雰囲気にし、1250°Cまで加熱した。この高温の加熱は、ダミーバーとCu−Ga合金溶湯を溶着させるためである。
次に、添加元素であるGa(純度:4N)をGa濃度が20at%の組成比となるように調整して、加熱坩堝に導入した。坩堝の加熱には、抵抗加熱装置(グラファイトエレメント)を使用した。溶解坩堝の形状は、140mmφ×400mmφであり、鋳型の材質はグラファイト製で、鋳造塊の形状は、65mmw×12mmtの板とし、連続鋳造した。
【0059】
原料が溶解した後、溶湯温度を1080°Cになるまで下げ、溶湯温度と鋳型温度が安定した時点で、引抜きを開始する。鋳型の前端には、ダミーバーが挿入されているので、このダミーバーを引出すことにより、凝固した鋳片引出される。
引抜きパターンは、0.5秒駆動、2.5秒停止の繰り返しで行い、周波数を変化させ、引抜き速度を30mm/minとした。引抜き速度(mm/min)と冷却速度(°C/min)は比例関係にあり、引抜き速度(mm/min)を上げると冷却速度も上昇する。この結果、200°C/minの冷却速度となった。
【0060】
得られた鋳造片は、CuにGaが固溶(α相)した組織を有し、酸素濃度は10wtppm未満となり、粗大なデンドライト組織が形成された。二次デンドライトアーム間隔は98μmとなり、二次デンドライトの長さは62μmで、幅は65μmとなった。
二次デンドライトアーム間には、Ga濃度が高い相(偏析相、異相)が観察されたが、デンドライトが大きいため、偏析相(異相)も大きくなっていた。
【0061】
この結果を表1に示す。次にこの鋳造片をターゲット形状に機械加工し、さらに研磨し、該研磨面を、塩化第二鉄を含む塩酸溶液でエッチングした表面の顕微鏡写真を
図2に示す。このように酸素量が少ないが、Ga相(偏析相)が粗大化した鋳造組織を持つCu−Ga合金ターゲットとなった。このターゲットを用いてスパッタリングすることにより、パーティクルの発生が増加し、均質なCu−Ga系合金膜を得ることができなかった。