【文献】
Pierce, J.M., et al.,"Homoepitaxial growth of dense ZnO(0 0 0 1) and ZnO (1 1 -2 0) films via MOVPE on selected ZnO substrates",Journal of Crystal Growth,2005年 9月15日,Vol. 283, No. 1-2,pp. 147-155
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1に記載の薄膜形成方法において、前記プラズマ中にMgを含む有機金属系材料ガスがさらに供給され、窒素(N)がドープされかつMgが添加されたZnO系化合物の薄膜を成膜対象物に形成することを特徴とする薄膜形成方法。
請求項1または2に記載の薄膜形成方法において、前記薄膜の形成後に、該薄膜を400℃以上の温度で水素を含まない雰囲気でアニールすることを特徴とする薄膜形成方法。
請求項1〜3の内のいずれか一項に記載の薄膜形成方法において、前記薄膜の形成時に成膜対象物にバイアス電位を印加してプラズマ中のイオンを膜表面に照射することを特徴とする薄膜形成方法。
請求項4に記載の薄膜形成方法において、印加するバイアス電位を、当該バイアス電位を印加しない場合に比べて形成した薄膜のフォトルミネッセンス特性が改善されるような電位に設定したことを特徴とする薄膜形成方法。
請求項4に記載の薄膜形成方法において、印加するバイアス電位は、バイアス電位を印加しない場合に比べて形成した薄膜の、材料固有のバンドギャップのバンド端発光のフォトルミネッセンス輝度が大きくなり、かつそれ以外の発光の輝度が小さくなるような電位としたことを特徴とする薄膜形成方法。
請求項4に記載の薄膜形成方法において、印加するバイアス電位を、バイアス電位を印加しない場合に比べて形成した薄膜の膜構造の平坦性が良くなるような電位としたことを特徴とする薄膜形成方法。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1は本発明の実施の形態によるプラズマ処理装置を示す概略断面図である。図示されたプラズマ処理装置1はマイクロ波励起高密度プラズマ処理装置であり、上下両端を封じられた筒状体の内側に設けられた処理室11と、この処理室11とは別の筐体内に設けられた有機金属系材料供給システム8とを備えている。
【0025】
処理室11内には、筒状体の一端側に設けられた絶縁体板2及び絶縁体板2の内側に上段シャワープレート3が設けられている。さらに、上段シャワープレート3下方には、下段シャワーノズル4、ステージ13、及び下段シャワーノズルと対向するようにステージ13上に配置された基板7が設けられている。
【0026】
ここで、マイクロ波40(ここでは周波数2.45GHz)は、絶縁体板2と上段シャワープレート3とを透過して、プラズマ処理装置1の上部のプラズマ発生領域に放射される。プラズマ励起用ガスとしてのArガス(または、Krガス、Xeガス、Heガス)は、筒状体の上側部に設けられた導入管5を介して上段シャワープレート3に供給され、上段シャワープレート3からプラズマ発生領域に均一に吹き出されている。プラズマ発生領域には、前述したように、マイクロ波40が放射されており、マイクロ波40によってプラズマ励起用ガス中にプラズマが励起され、当該プラズマはプラズマ発生領域から拡散プラズマ領域、及び、拡散プラズマ領域に設置された下段シャワーノズル4に導かれる。
【0027】
ここで、上段シャワープレート3には、導入管5を介してXe、Kr、He又はAr等のプラズマ励起用ガスと、O
2、N
2、NO、NH
3等の反応ガスを含む上段ガス42が導かれ、他方、下段シャワーノズル4には、導入管6から有機金属系材料のガスが流されることによって、基板7の表面に化合物薄膜を成膜できる。
【0028】
また、図示されたプラズマ処理装置1において、有機金属系材料供給システム8は、有機金属系材料を供給する。有機金属系材料供給システム8内には、1つ又は複数のMO容器9、MO容器10が設けられている。これらMO容器9、10から有機金属系材料が下段シャワーノズル4に導入管6を介して送られてくる。
【0029】
また、処理室11内の排ガスは、図示しない排気系12を介して、排気ダクト内を通り、小型ポンプへのいずれかの流入口から小型ポンプへと夫々導かれる。
【0030】
図示された処理室11の大きさは240mmの直径を備え、その中に直径33mmの基板7を載せるステージ13が備えられている。図示されたステージ13はモータ駆動により上下に移動ができるので最適な位置に基板を設置できる。ステージ13内部には、基板7を加熱できるようにヒータが組み込まれていて所望の温度に制御できる構成を備えている。
【0031】
図1に示されたプラズマ処理装置1の壁面は、反応生成物の付着を押さえる為に、ヒータ14により例えば100℃に温度制御されている。また、有機金属系材料供給システム8からノズル先端部に至るまでのガス管はヒータ15により各材料の容器温度以上に温度制御されている。
【0032】
処理室11の上部に配置された絶縁体板2は251mmの直径、15mmの厚さを有し、上段シャワープレート3は251mmの直径、30mmの厚さを備えている。これら絶縁体板2及び上段シャワープレート3の材質は共にアルミナセラミックである。
【0033】
図2(a)、(b)、(c)、及び(d)は、
図1の下段シャワーノズル4の構造の一例を示す図であって、「底面」「底面部分斜視図」「ノズル先端部底面」「カバーを取り付けた底面」を夫々示す写真を模した図である。
【0034】
図2(a)、(b)、(c)、及び(d)を参照すると、下段シャワーノズル4の一例が示されている。図示された下段シャワーノズル4は、有機金属材料を含んだガスを送るためのガス管21、ノズル温度を制御するための温調液管(往)23、温調液管(帰)24を備えている。さらに、ノズル温度測定用の熱電対25、全体を覆うカバー26が設けられている。
【0035】
また、ノズルの先端部下面には、ガスを均一に放出するための小さな穴が複数設けられており、例えば、0.5mmの径を有する孔27、0.7mmの径を有する孔28が備えられている。また、ノズル先端部のサイズは外径33mm、内径17mmである。
【0036】
図3(a)は、
図1の有機金属系材料供給システム8を示す図で、
図3(b)には、MO容器9を含む容器部の詳細を示す図である。
【0037】
このうち
図3(a)では、有機金属系材料が入ったMO容器9、10を通って導入管6に至るキャリアガス31、及び、ノズルからガスを均一に吹き出させる為のプッシュガス32として、Arガス(または、Krガス、Xeガス、Heガス)を使用している。
【0038】
一方、
図3(b)を参照すると、キャリアガス31は流量制御器(Mass Flow Controller, MFC)33で所望の流量に調整されてMO(Metal Organic)容器9を通って導入管6に至る。MO容器9は圧力調整器36と温度調整システム38により所望の圧力と温度に制御されている。バルブ34、バルブ35、及び、バルブ37が設けられており、これらのバルブ34、35、37によりガスの流路を切り換えることができる。
【0039】
次に、本発明の実施の形態によるプラズマ処理装置のプラズマ特性をその計測方法と共に説明する。
【0040】
図4は、本発明の実施の形態によるプラズマ処理装置のプラズマ特性の計測方法とその計測結果を示す図で、(a)は計測方法、(b)及び(c)は計測結果を示している。
【0041】
まず、
図4(a)に示すように計測方法は、プローブ16と17をそれぞれプラズマ励起領域とプラズマ拡散領域に挿入して行った。結果を
図4(b)、及び
図4(c)に示す。なお、試験条件は以下の通りであり、図中の(a)、(b)はそれぞれプラズマ励起領域とプラズマ拡散領域を示す。
【0042】
Arガス流量:200sccm
マイクロ波供給電力:600W
プローブ16と誘電板(上段シャワープレート3)間の距離:17mm
プローブ17と誘電板(上段シャワープレート3)間の距離:80mm
この計測の結果、
図4(b)に示す通り、電子温度は1eV〜2eVの低電子温度であり、かつ、
図4(c)に示す通り、電子密度は励起領域ではE12以上の高密度プラズマであることが判明した。なお、基板7上の密度は仕切り板18の開口率で制御可能である。
【0043】
次に、本発明の実施の形態によるZnO系化合物薄膜の成膜プロセスについて詳細に説明する。
【0044】
図5は本発明の実施の形態によるZnO系化合物薄膜の成膜プロセスの説明に供せられる図である。
【0045】
図5を参照すると、本発明の実施の形態による窒素をドープしたZnO成膜プロセスでは、下段ガスとしてのZnを含む有機金属系材料ガスと、上段ガスとしての酸素および窒素を含むガス(NO
2またはNO
2+N
2)を添加したArプラズマによってZnO膜を成膜する。Arプラズマの替わりにKr、Xe、Heを用いても構わない。
【0046】
ここで、Znの有機金属系材料としては、下記表1に示すように、DMZn、またはDEZnを使用した。
【0048】
図6は、有機金属系材料(DMZn、及び、DEZn)の蒸気圧特性をそれぞれ示す図である。
図6において、材料(DMZn、及び、DEZn)の蒸気圧特性がそれぞれ曲線c1及びc2で示されている。
図6に示すように、Znの有機金属系材料ガスは、温度によって蒸気圧が変化する。従って、処理室11への材料供給量を制御するためには、有機金属系材料供給システム8の温度、及び下段シャワーノズル4の温度制御が必要である。また、有機金属系材料ガスは熱によって分解することも考慮しておく必要がある。
【0049】
この実施形態では、成膜時、有機金属系材料ガスに応じて供給システムとガス管の温度が調整されている。即ち、各有機金属系材料ガスの蒸気圧−温度特性に応じて、材料が入った容器9から下段シャワーノズル4までを正の温度勾配となるように、温度制御されている。この場合、容器9、10から下段シャワーノズル4までの温度は、Znの有機金属系材料ガスの分解温度以下となるように制御されている。さらに、プラズマの照射による温度上昇を防止するため、下段シャワーノズル4には、冷却媒体流路(
図2の23、24、および図示しないがリング内)および熱電対(
図2の25)が設けられている。
【0050】
上段シャワープレート3に、導入管5を介してArガスまたはXeガス、Krガス、Heガスと、酸素および窒素を含むガス(NO
2またはNO
2+N
2)とを、下段シャワーノズル4に導入管6からZnを含んだ有機金属系材料ガスを流せば、基板14、例えば、ZnO基板面、或いは、ウェハ面上にNがドープされたZnO膜の形成ができる。
【0051】
ここで、再び
図5を参照すると、有機金属系材料供給システム8に、Mgの有機金属系材料を図示の通り付加して、下段シャワーノズル4に導入管6からMgを含んだ有機金属系材料ガスを、Znを含んだ有機金属系材料ガスと一緒に流すことによって、Mgを含みかつNがドープされたZnO膜を形成することができる。下記表2は、Mgの有機金属系材料を示している。
図7は下記表2の材料の蒸気圧特性を示している。
【0053】
また、下記表3は、NをドープしたZnO系化合物薄膜形成の使用材料の例を、ノンドープのZnO系薄膜形成の使用材料例とともに示している。下記表3に示されるように、Zn材料とともにMg材料、Cd材料、および/またはMn材料を使用して、ZnOとMgO、CdO、および/またはMnOの混晶(ZnMgO、またはZnCdO、またはZnMnO、またはZnMgCdO、またはZnMgMnO、またはZnCdMnO、またはZnMgCdMnO)でNがドープされた薄膜を形成することができる。
【0055】
次に、本発明外の比較例として、Nドーピング用反応ガスとして、酸素ガスおよび窒素ガス(O
2+N
2)、酸素および窒素を含むガス(NO、O
2+NO)等を用いた場合について説明する。
図5の装置を用い、Znの有機金属系材料としてはDMZnを用い、プラズマ励起ガスとしてArを用い、基板としてはZnO単結晶基板(Zn極性面)を用い、次の表4に示す条件で成膜した。なお、ZnO基板はノンドープながら残留キャリアによってn型伝導を示す。また、表中の『cc』とは標準状態(0℃、1atm(101.325kPa))における1分当たりの流量(以下、sccmともいう)を示す(以下同様)。
【0057】
また、Arガスと、酸素材料ガスおよびNドーピング用反応ガス各々の流量は次の表5の通りとした。
【0059】
図8(a)及び(b)は、酸素材料ガスおよびNドーピング用反応ガスとして、酸素ガスおよび窒素ガス(O
2+N
2)、酸素および窒素を含むガス(NO、O
2+NO)等を用いた場合の結果、すなわちZnO膜中の窒素濃度を、熱CVDで形成した場合とともに示す図である。
図8(a)に示すように、熱CVDでは、NOとNH
3の場合,Nが膜に入っていた。しかし、
図8(b)に示すように、マイクロ波励起プラズマを用いたZnOのCVD成膜では、窒素をドープさせることは出来なかった。なお、マイクロ波励起プラズマを用いたZnOのCVD成膜では、N
2Oの場合は膜が成長せず、O
2/NH
3の場合は良好な膜が形成できなかった。
【0060】
これに対して、本発明においては、上記同様の条件のもとで、Nドーピング用反応ガスとして、NO
2ガスを用いた場合について検討した。
図9(a)、(b)、(c)、(d)、及び(e)はNO
2ガスを用いた窒素ドープZnO膜の形成例を示す図である。
図9(a)に示すように、酸素材料ガスおよびNドーピング用反応ガスとして、NO
2ガスを用いたところ、
図9(a)に示すようにNがドープされることが判明した。
【0061】
また、
図9(b)及び(c),(d),(e)に示すように、Ar流量400ccに対して、NO
2ガスの流量を75cc、5cc、1.5ccと希薄にするほどNドープ量が増えることも分かった。このとき、窒素を含むZnO膜とn型ZnO基板からなる接合のその整流特性を測定したが、あまり良好ではなく、また接合からの発光も見られなかった。
【0062】
一方、本発明において、上記の条件にて、酸素材料ガスおよびNドーピング用反応ガスとして、NO
2ガスに窒素ガス(N
2)を添加した場合について説明する。
【0063】
図10(a)から(d)は、本発明において上記の条件にて、酸素材料ガスおよびNドーピング用反応ガスとして、NO
2ガスに窒素ガス(N
2)を添加したZnO膜の形成例を示す図である。なお、ZnO膜の形成の際は、各々45分で3回に分けて分割成膜している。
図10(a)に示すように、酸素材料ガスおよびNドーピング用反応ガスとして、NO
2ガスに窒素ガス(N
2)を添加したところ、Nがドープされるだけでなく成長レートも高くなることが判明した。
図10(d),(e)は、N
2がある場合とない場合の表面構造の原子間力顕微鏡写真を模した図を夫々示している。このとき、成長したp型のZnO膜とn型のZnO基板からなる接合の整流特性を測定したところ、
図10(b)に示すように、良好な整流特性を示し、また、
図10(c)に示すように、pn接合からの紫外発光も観察できた。
【0064】
図11はNO
2ガスおよび窒素ガスを用いた窒素ドープMgZnO膜の形成例を示す図である。なお、MgZnO膜の形成の際は、各々50分で2回に分けて分割成膜している。
図11(a)に示すように、酸素材料ガスおよびNドーピング用反応ガスとして、NO
2ガスに窒素ガスを添加して、MgZnO膜を形成したところ、やはりNがドープされた。
【0065】
図11(d)は、ZnO膜、
図11(e)はMgZnO膜を夫々示している。
【0066】
図11(b)に示すように、良好な整流特性を示し、また、
図11(c)に示すように、pn接合からの紫外発光も観察できた。
【0067】
図12(a)から(f)はNO
2ガスおよび窒素ガス用いた窒素ドープMgZn膜の形成例を示す図である。
図12(a)に示すように、NドープしたMgZnO膜を成膜後、N2雰囲気中で600℃の温度で5分間のアニールをしたところ、整流特性が向上し、
図12(b)に示すように、発光特性も向上することが分かった。
図12(c)、(e)はアニール前の表面構造を異なる倍率で示す原子間力顕微鏡写真を模した図であり、
図12(d)、(f)は、
図12(c)、(e)のアニールニール後の表面状態を示す原子間力顕微鏡写真を模した図で、倍率ともに
図12(d)、(f)と夫々対応している。
【0068】
図13(a)から(e)は酸素材料ガスおよびNドーピング用反応ガスとしてNO
2ガスを用いた窒素ドープZnO膜の形成例を示す図である。
【0069】
図13(a)に示すように、酸素材料ガスおよびNドーピング用反応ガスとしてNO
2ガスを用いたところ、熱CVDでも、PECVD(Plasma-Enhanced Chemical Vapor Deposition)と同様に、Nがドープされることが判明した。
図13(b)は熱CVD及びPECVDによるNO
2を用いたNドープZnO膜の整流特性を示している。なお、発光は見られなかった。
【0070】
図13(c),(d)は熱CVD及びPECVDによる夫々のNドープZnO膜の表面構造を示す原子間力顕微鏡写真を模した図で、
図13(d),(f)は、
図13(c),(e)を異なる倍率で示す原子間力顕微鏡写真を模した図である。なお、PECVDの場合反応ガスに窒素を添加したところ、さらに改善されることを確認しており、このことは熱CVDでも同様と考えることができる。
【0071】
図14はNドープしたMgZnO膜を用いた発光ダイオード(LED)の構造を示す断面図である。
図14に示すLEDは、
図15に示すように、発光が確認された。
【0072】
上記した実施形態では、サイズが5mm×5mmのZnO基板を載せた直径33mmのサイズを有する基板を1枚処理する場合について説明した。
【0073】
次に、基板サイズを大きくすることが可能である大口径のマイクロ波プラズマ処理装置について、
図16を参照しながら説明する。
図16は本発明の実施の形態による大口径のマイクロ波プラズマ処理装置を示す断面図である。
【0074】
図16を参照すると、大口径のマイクロ波プラズマ処理装置100は、上下の両端が封じられ、下端に設けられた排気ポート101を介して排気される処理室102を有する。
【0075】
処理室102中の下部には被処理基板103を保持する保持台104が配置されている。処理室102を均一に排気するため、処理室102は、底部から上方に延在する側壁125の上部に形成された保持台104の周囲にリング状の空間を規定しており、複数の排気ポート101は空間に連通するように等間隔で、すなわち、被処理基板103に対して軸対称に配列されている。この排気ポート101の配列により、処理室102を排気ポート101より均一に排気することができる。なお、符号122は高周波発振器である。
【0076】
処理室102の上方には、保持台104の処理基板103に対応する位置に、処理室102の外壁の一部として、誘電体のアルミナよりなり、多数(238個)の開口部、即ちガス放出孔105が形成された板状のシャワープレート106がシールリング107を介して取り付けられ、上段シャワープレートを構成している。さらに、処理室102には、シャワープレート106の外側、即ち、シャワープレート106に対して保持台104とは反対側に、アルミナよりなるカバープレート108が、別のシールリング109を介して取り付けられている。さらにその上には、支持部111、絶縁板112を介して蓋部123が設けられている。蓋部123には、冷却用のパイプ114が設けられている。シャワープレート106の上面と、カバープレート108との間には、プラズマ励起ガスを充填する空間110が形成されている。ガス放出孔105は空間110に対応する位置に配置されている。
【0077】
さらに、図示されたマイクロ波プラズマ処理装置は、板状のシャワープレート106の下部に、下段シャワープレート120としての格子状のシャワープレートを備えている。このシャワープレート120には、下段ガス導入管119が接続されている。
【0078】
また、
図17(a)の上図は
図16の大口径サセプタを示す平面図、下図は同側面断面図で、
図17(b)は
図16のマイクロ波放射アンテナを示す一部切欠き斜視図である。
図17(a)に示すように、大口径化サセプタ104aを上記保持台104として、用意することにより、複数の基板、例えば、口径33mm、0.5mm厚のウェハ103aを一度に処理することが可能である。
【0079】
この場合、広範囲にマイクロ波を均一に照射させる為には、
図17(b)に示すようなラジアルラインスロットアンテナ200を使用することが有効である。なお、
図17(b)に示すラジアルラインスロットアンテナ200はN.Gotoが1980年に発明したものである。
【0080】
図18(a)及び(b)は大口径下段シャワープレートの例を夫々示す平面図である。
図18(a)及び(b)に示すような下段シャワープレート201、202を
図1に示された下段シャワーノズル4の代わりに使用することにより均一に材料ガスを噴出することが出来る。なお、下段シャワープレート201、202は、ハッチングで示した部分が内部にガス流路を持ち、かつガス流路に連結して基板に向けた多数のガス放出口(図示せず)を持っている。ハッチングで示さない部分が開口部となって、そこをプラズマが基板に向かって通過する。
【0081】
図19(a)乃至(c)は、本発明の方法によって形成されたZn系薄膜を備えた半導体発光素子の種々の例を示す断面図である。
図19(a)を参照すると、本発明に係る半導体発光素子の一例は、ZnO基板301上に、n型ZnO膜302、ZnO膜303、及びp型ZnO膜304を本発明に係る方法で成膜することによって形成されている。
【0082】
図示されたn型ZnO膜302、ZnO膜303、及びp型ZnO膜304は、
図1或いは
図16に示されたマイクロ波プラズマ処理装置を用い、ガスを切り換えることによって連続的に成膜することができる。図示された半導体発光素子は、ZnO基板301及びp型ZnO薄膜304上に、電極(n電極)306及び電極(p電極)305がそれぞれ形成されている。
【0083】
また、
図19(b)には、サファイア基板307を用いた半導体発光素子が示されている。図示された半導体発光素子は、サファイア基板307に成膜された低温ZnOバッファ膜308を備え、当該低温ZnOバッファ膜308上に、
図19(a)と同様に、n型ZnO膜302、ZnO膜303、及びp型ZnO膜304を成膜した構造を有している。この例では、n型ZnO膜302及びp型ZnO膜304上に、それぞれn電極306及びp電極305が形成されている。
図19(b)に示された半導体素子は、低温ZnOバッファ膜308、n型ZnO膜302、ZnO膜303、及びp型ZnO膜304を備え、これらの膜は
図1等に示されたマイクロ波プラズマ処理装置を用いて連続的に成膜することができる。
【0084】
さらに、
図19(c)には、ZnO基板301上に、n型ZnMgO膜309、ZnO膜310、及びp型ZnMgO膜310を本発明に係るマイクロ波プラズマ処理装置により連続的に成膜することによって得られた半導体発光素子が示されている。この例では、p型ZnMgO膜311及びZnO基板301上にそれぞれp電極305及びn電極306が形成されている。
【0085】
図20は、本発明に係る薄膜形成方法を用いて作成された太陽電池の一例を示す図である。
図20を参照すると、太陽電池はガラス基板321、Mo電極322、Cu(In,Ga)Se
2膜323、ZnO膜324、及び透明導電膜325を有している。ここで、図示された透明導電膜325はGaZnOによって形成されている。このような構造を有する太陽電池のうち、Cu(In,Ga)Se
2膜323、ZnO膜324、及び透明導電膜325は、前述したマイクロ波プラズマ処理装置により連続的に形成できる。図示された太陽電池では、GaZnOによって形成された透明導電膜325側から太陽光325を入射させる。
【0086】
図21(a)は、本発明に係る薄膜形成方法を用いて作成された太陽電池の他の例を示す断面図で、
図21(b)は、
図21(a)の部分拡大断面図である。
【0087】
図21(a)を参照すると、太陽電池は、ガラス基板331、GaZnO又はAlZnOによって形成された透明電極332、p−ポリシリコン膜333、i−ポリシリコン膜334、n−ポリシリコン膜335、GaZnO又はAlZnOによって形成された透明電極336、及びMo電極337と、を備えている。このうち、透明電極332から透明電極336までを
図1等に示されたマイクロ波プラズマ処理装置内で連続的に成膜することができる。この構造の太陽電池では、ガラス基板331側から太陽光338が入射する。
【0088】
図示された構造において、上層のポリシリコン膜を成膜する時に、ZnO系透明導電膜332は強いプラズマ耐性を備えた膜として働く。また、表面構造を成膜条件で制御することができ、
図21(b)に示す拡大図のように、透明電極332及びポリシリコン膜333の表面に凹凸を形成することも可能である。この構造によれば、光路長が長い光の閉じ込め効果のある膜表面を形成できる。
【0089】
図22は、本発明に係る透明導電膜を備えた他の電子装置の例を示す断面図で、
図22(a)は、ZnO系透明導電膜を備えた発光素子を示し、
図22(b)は、
図22(a)の一部の拡大断面図である。
図22(a)の発光素子は、発光素子
図19(a)と同様に、ZnO基板301、n型ZnO膜302、ZnO膜303、p型ZnO膜304を備えると共に、さらに、GaZnO又はAlZnOによって形成された透明電極339を有している。また、透明電極339及びZnO基板301上には、それぞれp電極305及びn電極306が形成されている。この場合、n型ZnO膜302から透明電極339までの各薄膜を同じマイクロ波プラズマ処理装置を用いて、各薄膜に応じてガスを順次切り換えることによって連続的に形成できる。本発明に係る薄膜形成方法では、前述した通り、低電子温度プラズマを用いるため、成膜時に下層へのダメージが小さいので発光特性が良好となる。
【0090】
また、
図22(b)に示すように、成膜条件を選択することによって、表面に凹凸を形成することができ、自発光345の取り出し効率がよい表面構造を実現できる。
図22(c)は、InGaN系発光素子が電子装置の一例を示す断面図である。
図22(c)を参照すると、InGaN系発光素子は、サファイア基板307、低温GaNバッファ膜341、n型GaN膜342、InGaN/GaNによって形成されたMQW(多重量子井戸)膜343、p型GaN膜344、及びGaZnO又はAlZnOによって形成された透明電極339を有している。この構成の発光素子の低温GaNバッファ膜341から透明電極339までの各薄膜を
図1等に示されたマイクロ波プラズマ処理装置を用いて連続的に形成できる。
【0091】
図23(a)及び(b)は、本発明に係る薄膜形成方法を用いて作成されたZnO形薄膜トランジスタの例を示す断面図である。
図23(a)に示された薄膜トランジスタは、ガラス基板351の表面に選択的に形成されたゲート電極352と、当該ゲート電極352を覆うように設けられたゲート絶縁膜353を備えている。さらに、図示された薄膜トランジスタは、ゲート絶縁膜353上に選択的に形成されたZnO膜355と、当該ZnO膜355上に間隔をおいて形成されたn−ZnO膜356及びソース・ドレイン電極357を有している。ここで、ZnO膜355には、薄膜トランジスタの動作中、チャネル354が形成される。
【0092】
チャネル354を規定するZnO膜355及びn−ZnO膜356は、
図1等に示されたマイクロ波プラズマ処理装置を用いて成膜できる。
【0093】
一方、
図23(b)に示された薄膜トランジスタは、ガラス基板351、当該ガラス基板351上に選択的に形成されたZnO膜355、ZnO膜355上に間隔をおいて配置されたn−ZnO膜356、及び、n−ZnO膜356上に形成されたソース・ドレイン電極357と、を備えている。さらに、ソース・ドレイン電極357間に、ZnO膜355に接触するように設けられたゲート絶縁膜353及び当該ゲート絶縁膜353上に配置されたゲート電極352と、を有している。
【0094】
この構造の薄膜トランジスタにおいても、ZnO膜355内には、動作中、チャネル354が形成される。図示されたZnO膜355及びn−ZnO膜356は、前述したマイクロ波プラズマ処理装置によって形成することができる。
【0095】
このように、本発明に係る薄膜形成方法は、ZnO系薄膜をチャネル領域に備えた電子装置を製造するためにも応用できる。この場合、低電子温度高密度プラズマを用いることにより、薄膜トランジスタのチャネル領域をキャリア移動度の優れた良質のZnO薄膜によって形成できる。
【0096】
図24(a)乃至(d)は、本発明の薄膜形成方法によって作成された耐熱温度が200℃以下の材料の樹脂基板等を備えた電子装置の種々の例を示す断面図で、
図24(a)は樹脂基板361上に形成された太陽電池、
図24(b)はZnO系薄膜トランジスタ、
図24(c)は有機EL素子、及び
図24(d)はZnO系薄膜トランジスタを夫々示している。
【0097】
なお、樹脂基板としては、PET(ポリエチレンテレフタレート)、ポリカーボネート等のプラスチック基板或いはプラスチックフィルムを使用できる。
【0098】
図24(a)、(b)、(c)、及び(d)を参照すると、樹脂基板361上に形成された太陽電池、ZnO系薄膜トランジスタ、有機EL、及びZnO系薄膜トランジスタがそれぞれ示されている。
【0099】
図24(a)に示された太陽電池は、樹脂基板361を用いていること以外、
図22に示された太陽電池と同様である。また、
図24(b)に示されたZnO系薄膜トランジスタは、樹脂基板361を使用していること以外、
図23(a)に示されたZnO系薄膜トランジスタと同様である。
【0100】
さらに、
図24(c)に示された有機ELは、樹脂基板371、GZO膜372、ホール注入層373、電子注入性発光層374、及びGZO膜375を備えている。図示された有機ELは上下双方向に発光376している例を示している。この場合にも、本発明の薄膜形成方法は、GZO膜372及び375を形成するために適用できる。
【0101】
図24(d)に示されたZnO系薄膜トランジスタは、樹脂基板361を用いていること以外、
図24(b)に示されたZnO系薄膜トランジスタと同様である。
【0102】
従来、樹脂上に低温で良質の薄膜を形成することが困難であったため、樹脂上に電子装置を製造することは困難であった。しかしながら、本発明では、低電子温度高密度プラズマを用いることにより低温での良質の薄膜を形成でき、これによって、
図24(a)乃至(d)に示すように、樹脂上に各種の電子装置を形成できる。