(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
多次元の非線形データについて、複数の異なる視点に基づいて推定されたモデルを低次元に写像し、モデル推定された一の統合マップ情報を作成するマップ情報作成装置であって、
前記非線形データを処理対象データとして、前記視点ごとに有する複数の要素間で関連付けを行って記憶するデータ記憶手段と、
前記データ記憶手段に記憶された前記処理対象データに基づいて、全ての前記視点における全ての前記要素について、一の視点における一の要素ごとに、他の視点における要素に関して共通の配置構成でモデル推定を行って個別マップ情報を生成する個別マップ情報生成手段と、
前記統合マップ情報において、前記一の視点ごとに生成された他の視点に関する個別マップ情報の集合体が配置される推定位置を演算する配置位置演算手段と、
前記配置位置演算手段が演算した推定位置で特定される各視点ごとの要素に、前記データ記憶手段に記憶された全ての前記処理対象データを学習させて統合マップ情報を生成する統合マップ情報生成手段とを備え、
前記個別マップ情報生成手段、配置位置演算手段及び統合マップ情報生成手段が、前記統合マップ情報が収束するまで所定の回数繰り返して実行されることを特徴とするマップ情報作成装置。
多次元の非線形データについて、複数の異なる視点に基づいて推定されたモデルを低次元に写像し、モデル推定された一の統合マップ情報を作成するようにコンピュータを機能させるマップ情報作成プログラムであって、
前記非線形データを処理対象データとして、前記視点ごとに有する複数の要素間で関連付けを行って記憶するデータ記憶手段、
前記データ記憶手段に記憶された前記処理対象データに基づいて、全ての前記視点における全ての前記要素について、一の視点における一の要素ごとに、他の視点における要素に関して共通の配置構成でモデル推定を行って個別マップ情報を生成する個別マップ情報生成手段、
前記統合マップ情報において、前記一の視点ごとに生成された他の視点に関する個別マップ情報の集合体が配置される推定位置を演算する配置位置演算手段、
前記配置位置演算手段が演算した推定位置で特定される各視点ごとの要素に、前記データ記憶手段に記憶された全ての前記処理対象データを学習させて統合マップ情報を生成する統合マップ情報生成手段としてコンピュータを機能させ、
前記個別マップ情報生成手段、配置位置演算手段及び統合マップ情報生成手段が、前記統合マップ情報が収束するまで所定の回数繰り返して実行されることを特徴とするマップ情報作成プログラム。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を説明する。本発明は多くの異なる形態で実施可能である。また、本実施形態の全体を通して同じ要素には同じ符号を付けている。
【0032】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係るマップ作成装置について、
図1ないし
図9を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係るマップ作成装置の処理概要を示す図、
図2は、本実施形態に係るマップ作成装置のハードウェア構成図、
図3は、本実施形態に係るマップ作成装置のモジュール構成図、
図4は、本実施形態に係るマップ作成装置の処理を示す第1のフローチャート、
図5は、本実施形態に係るマップ作成装置の処理を示す第2のフローチャート、
図6は、本実施形態に係るマップ作成装置の処理を示す第3のフローチャート、
図7は、本実施形態に係るマップ作成装置におけるEステップ、Mステップの処理を模式的に示したブロック図、
図8は、本実施形態に係るマップ作成装置の各処理工程を示す図、
図9は、本実施形態に係るマップ作成装置の出力態様を示す第1の図、
図10は、本実施形態に係るマップ作成装置の出力態様を示す第2の図、
図11は、本実施形態に係るマップ作成装置において統合マップを2次元に写像する処理を示す図、
図12は、本実施形態に係るマップ作成装置の出力態様を示す第3の図、
図13は、本実施形態に係るマップ作成装置の出力態様を示す第4の図、
図14は、本実施形態に係るマップ作成装置の出力態様を示す第5の図である。
【0033】
本実施形態に係るマップ作成装置1は、単に多次元の非線形データを低次元に写像してマップを作成するだけではなく、複数の異なる視点に基づいて、それらの視点間の関係性を考慮して推定されたモデルを低次元に写像し、一のマップを作成する。すなわち、異なる視点(例えば、カスタマ、飲み物、シチュエーション等)に基づいて、それらの個々の視点で分類される情報のみからマップを作成するのではなく、各視点で分類される情報が矛盾なく最も適切に関連付けられた一のマップを作成する。したがって、作成された一のマップをある視点で見た場合に、他の視点との関係性も考慮された情報を参照することができ、複数の要素(例えば、カスタマの視点であれば人物1,人物2,・・・,人物n、飲み物の視点であれば飲料1,飲料2,・・・,飲料n等)が複雑に絡み合ったような大規模データであっても、各要素ごと及び各要素間の関係性を考慮した情報を参照することができる。また、本発明においては、各要素ごとにモデルを推定することで、広範囲に予測や分析を行うことが可能となる。
【0034】
図1に処理概念を示す。
図1では、ある大規模なデータベース(例えば、不特定多数の人によるアンケート結果等のように多次元の非線形データ)に対して、2つの視点(例えば、カスタマ、飲み物のような異なる視点から見た場合のデータの分類方法であり、ここでは視点1、視点2とする)に基づいて低次元に写像して作成されたマップを示している。各視点ごとにマップを作成した場合は、それぞれ個々の視点でマップを参照することができるが、視点1のマップと視点2のマップとは別個独立に作成され、視点間の関係性は考慮されていない。例えば、より具体的に説明すると、世代別(例えば、幼児、子供、青年、中年、老年等)に組織化されたカスタマのマップと、飲料の種別(例えば、清涼飲料、炭酸飲料、アルコール飲料等)に組織化された飲み物のマップとでは、それぞれの関係性がない。
【0035】
本実施形態に係るマップ作成装置では、
図1に示すように、それぞれの視点における各要素についてモデル推定してマップを作成する際に、他の視点における要素との関係を考慮した学習を行ってマップを作成する(ここで作成されるマップを個別マップとする)。そして、作成された各個別マップの配置位置を推定し、その推定位置の情報を用いてデータベースのデータをマップ上に配置して一のマップを作成する(ここで作成されるマップを統合マップとする)。つまり、個々のデータについて単にマップ上の位置を推定するのはなく、各視点ごとに他の視点を考慮して作成された個別マップを配置して、一の統合マップを作成するものである。
【0036】
なお、
図1は2つの視点に限定して示しているが、視点の数はいくつあってもよく、3以上の視点についてマップを作成する場合は、ある視点の要素についてモデルを推定する際に、他の全ての視点を考慮してモデルを推定するものである。
【0037】
図2に、マップ作成装置1のハードウェア構成を示す。マップ作成装置1は、CPU11、RAM12、ROM13、ハードディスク(HDとする)14、通信I/F15、及び入出力I/F16を備える。ROM13やHD14には、オペレーティングシステムや各種プログラム(例えば、マップ作成プログラム等)が格納されており、必要に応じてRAM12に読み出され、CPU11により各プログラムが実行される。通信I/F15は、他の装置(例えば、サーバ、上位装置等)と通信を行うためのインタフェースである。入出力I/F16は、キーボードやマウス等の入力機器からの入力を受け付けたり、プリンタやディスプレイ等にデータを出力するためのインタフェースである。この入出力I/F16としてUSBやRS232C等が用いられる。また、必要に応じて、光磁気ディスク、フロッピーディスク、CD−R、DVD−R等のリムーバブルディスクに対応したドライブを接続することができる。
【0038】
図3に、マップ作成装置1の機能モジュールの構成を示す。本実施形態に係るマップ作成装置1は、EMアルゴリズムにより学習を繰り返して統合マップを作成するものである。マップ作成装置1は、多次元の非線形データが記憶されているデータ記憶部30と、データ記憶部30のデータを学習して得られた視点ごとの各要素の配置構成で、暫定的に個別マップの要素の配置位置を設定する初期化処理部31と、統合マップにおける個別マップの位置を演算する配置位置演算部32と、個別マップの配置位置とデータ記憶部30に記憶されているデータを読み込んで個別マップを生成し、生成した個別マップを配置位置演算部32に対して出力する個別マップ情報生成部33と、配置位置演算部32が演算した各視点ごとの配置構成とデータ記憶部30に記憶されているデータを読み込んで統合マップを生成する統合マップ生成部34と、生成された統合マップが収束したかどうかを判定し、収束していない場合には、統合マップを配置位置演算部32に出力する収束判定部35と、統合マップが収束している場合に、利用者からの入力情報に従って、統合マップの情報を制御して出力部38に出力制御する出力制御部36と、利用者からの入力情報を受け付けると共に、データ記憶部30に記憶する実データの情報を受け付ける情報入力部37とを備える。
【0039】
データ記憶部30は、リレーショナルデータベースであり、情報入力部37から入力された収集された情報が記憶されている。例えば、カスタマによる飲み物のアンケート結果の情報が記憶されているとすると、各回答者ごとに各飲み物に対する評価情報がテーブルの形式で対応付けられて記憶される。具体例を下記の表1に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
初期化処理部31は、上記の表1に示すようなデータ記憶部30の実データを用いて、暫定的に各視点ごとの要素の配置位置を設定する。この配置位置の設定方法は、様々な方法を用いることが可能である。例えば、乱数を用いてランダムに設定してもよい。また、飲料の視点における要素の配置位置であれば、各飲料ごとの回答者の実データ(N次元のベクタ)M個を組織化した配置位置を暫定的な飲料の配置位置として設定し、カスタマの視点における要素の配置位置であれば、各回答者ごとの飲料の実データ(M次元のベクタ)N個を組織化した配置位置を暫定的な回答者の配置位置として設定することもできる。
【0042】
配置位置演算部32は、統合マップにおける個別マップの位置を演算する。初期の状態では、初期化処理部31により各視点ごとの要素の配置位置が設定されるため、ここでは処理を行わない。初期の状態から2回目以降の処理に移行した場合は、統合マップ情報生成部34で統合マップが生成され、個別マップ情報生成部33で個別マップが生成されているので、その統合マップと個別マップを入力し、統合マップにおける個別マップの位置を演算する。このとき、詳細は後述するが、例えば回答者ごとに作成された飲料の個別マップ(例えば、回答者1にとっての飲料のマップ)の位置を演算する場合、飲料の個別マップが類似している位置を求めることで回答者の位置が演算されることとなる。ここでの処理は、EMアルゴリズムにおけるEステップに相当する。
【0043】
個別マップ情報生成部33は、配置位置演算部32で演算された個別マップの位置(初期の状態の場合は、初期化処理部31で設定された配置位置)とデータ記憶部30に記憶されているデータを読み込んで個別マップを生成する。このとき、詳細は後述するが、例えば上記の例の演算で得られた回答者の位置と、データ記憶部30に記憶されている飲料ごとの回答者のデータ(表1における列方向のデータ)から、データ記憶部30に記憶されているデータを学習した飲料ごとの回答者の個別マップ(例えば、飲料1にとっての回答者のマップ)が生成される。ここで生成された個別マップは、再び配置位置演算部32に入力される。配置位置演算部32に入力された後は、ここで生成した個別マップはメモリから削除してもよい。
【0044】
統合マップ生成部34は、配置位置演算部32が演算した各視点ごとの個別マップの位置(初期の状態の場合は、初期化処理部31で設定された配置位置)とデータ記憶部30に記憶されている全てのデータを読み込んで、統合マップを生成する。すなわち、配置位置演算部32が演算した各視点における各要素ごとの全ての配置位置(例えば、上記の例の場合、回答者1の配置位置と飲料1の配置位置とで特定される配置位置(回答者1の配置位置×飲料1の配置位置))に基づいて特定される要素について、実データを入力し、全ての視点における、全ての要素を学習させた一の統合マップが生成される。この個別マップ情報生成部33の処理と統合マップ生成部34の処理が、EMアルゴリズムにおけるMステップに相当する。
【0045】
収束判定部35は、統合マップが収束しているかどうかを判定する。収束している場合は、統合マップが完成したこととなる。収束していない場合は、収束するまで上記EステップとMステップを繰り返して実行する。
【0046】
出力制御部36は、完成した統合マップの情報を利用者からの指示情報に従って出力部38に出力制御する。出力部38としては、例えば、表示画面やプリンタ等を挙げられる。上記各処理により完成した統合マップは、各視点ごとの個別マップがそれぞれ2次元であることから、視点の数が2つの場合は4次元の統合マップとなり、有効な情報として表示することができない。したがって、多次元の統合マップを2次元に写像して表現する必要がある。また、その際に利用者からの指示情報に従い、任意のパラメータを固定することで、必要な情報を見易い態様で出力することができる。
【0047】
上記各処理部の処理内容について、
図4ないし
図7を用いて詳細に説明する。ここでは、2つの視点(視点1と視点2)で個別マップを学習するものとして処理を説明するが、視点は3以上(視点1、視点2、・・・、視点n)であってもよい。
【0048】
マップの生成は、まず、初期化のEステップと初期化のMステップが実行される(S41)。EステップはEMアルゴリズムにおける期待値(E:expectation)ステップであり、Mステップは最大化(M:maximization)ステップである。この初期化の処理では、初期化処理部31が、各視点ごとに当該視点が有する要素の配置を暫定的に決めて設定する。要素の配置が設定されると、設定された配置に基づいて個別マップ情報生成部33と統合マップ情報生成部34が、個別マップ及び統合マップの初期状態を作成する。ここまでが、初期化のEステップと初期化のMステップの処理である。
【0049】
作成されたマップの初期状態に対して、S42のEステップとS43のMステップの処理がT回繰り返して行われる。以下、Eステップ、Mステップについて詳細に説明する。
【0050】
図5は、Eステップの処理を示すフローチャートである。Eステップでは、配置位置演算部32が、まず視点2について作成された視点1のi番要素の個別マップの統合マップにおける位置を演算する(S51)。次に、視点1について作成された視点2のj番要素の個別マップの統合マップにおける位置を演算する(S52)。
図7は、Eステップ、Mステップの処理を模式的に示したブロック図であり、このS51、S52の処理は、
図7における視点1の配置位置演算部71、視点2の配置位置演算部72の処理に相当する。
【0051】
ここで、
図7の変数について以下のように定義する。
視点1のi番要素(カスタマの回答者i):i
視点2のj番要素(飲み物の飲料j):j
視点2の要素のマップ上での位置(飲料のマップ上での位置):p
j
視点1の要素別の視点2の個別マップ(回答者別の飲料マップ):U
i
視点1の要素のマップ上での位置(回答者のマップ上での位置):q
i
視点2の要素別の視点1の個別マップ(飲料別の回答者マップ):V
j
統合マップ:W
kl(kは視点1のk地点、lは視点2のl地点)
入力データ:x
ij
【0052】
視点1の配置位置演算部71は、統合マップW
klと視点1の要素別の視点2の個別マップU
iとを入力し、統合マップW上における個別マップUの位置、すなわち視点1の要素(回答者)のマップ上での位置q
iが得られる。同様に、視点2の配置位置演算部72は、統合マップW
klと視点2の要素別の視点1の個別マップV
iとを入力し、統合マップW上における個別マップVの位置、すなわち視点2の要素(飲料)のマップ上での位置p
jが得られる。
【0053】
図4に戻って、S42のEステップの処理が終了すると、Mステップの処理が実行される。
図6は、Mステップの処理を示すフローチャートである。Mステップでは、個別マップ情報生成部33が、まず視点1のi番要素のモデルを作成する(S61)。次に、視点2のj番要素のモデルを作成する(S62)。また、S42のEステップの処理で得られた配置位置を用いて、統合マップ情報生成部34が、全ての視点の全ての要素のモデルを作成する(S63)。このS61〜S63の処理は、
図7の視点1の個別マップ生成部73、視点2の個別マップ生成部74、統合マップ生成部75の処理に相当する。
【0054】
図7において、視点1の個別マップ生成部73は、視点1の要素別の視点2の個別マップU
i(回答者別の飲料マップ)を生成するが、視点2の配置位置演算部72にて演算された視点2の要素(飲料)のマップ上での位置p
jと、視点1から見た場合の視点2のデータx
i(表1における行方向のデータであって、回答者ごとの飲料に関するデータ)とを用いて生成される。同様に、視点2の個別マップ生成部74は、視点1の配置位置演算部71にて演算された視点1の要素(回答者)のマップ上での位置q
iと、視点2から見た場合の視点1のデータx
j(表1における列方向のデータであって、飲料ごとの回答者に関するデータ)とを用いて、視点2の要素別の視点1の個別マップV
i(飲料別の回答者マップ)を生成する。視点1の個別マップ生成部73で生成された個別マップU
iは、再び視点1の配置位置演算部71に入力されて、統合マップW
klと共にEステップの処理に用いられる。視点2の個別マップ生成部74で生成された個別マップV
iは、再び視点2の配置位置演算部72に入力されて、統合マップW
klと共にEステップの処理に用いられる。
【0055】
統合マップ生成部75は、視点1の配置位置演算部71で演算された視点1の要素のマップ上での位置q
iと、視点2の配置位置演算部72で演算された視点2の要素のマップ上での位置p
jと、全ての入力データx
ijとを用いて、全ての視点における全ての要素を学習して統合マップW
klを生成する。生成されたW
klは、再び視点1の配置位置演算部71と視点2の配置位置演算部72に入力されて、各個別マップと共にEステップの処理に用いられる。
【0056】
一連のEステップ、Mステップの処理を模式的に示した図を
図8に示す。入力データxと各視点ごとの配置位置p,qから、個別マップU,Vを生成し、それらが統合された統合マップWが作成される。図面上は統合マップを3次元の立体で仮に示しているが、実際は4次元の統合マップができている。なお、個別マップU又はVのいずれかが1次元の個別マップである場合は、図に示すような3次元のマップが作成される。
【0057】
なお、要素の位置(例えば、飲料1の位置)を決定する際に,それ以外の視点(カスタマの視点)はすべてモデル化されているため、回答者ごとの個別の実データの情報は消失している。すなわち、飲料1の位置を決める際に、他の視点がモデル化されていることにより、暗黙の裡に要素の位置が他の視点と独立になる。つまり、他の視点の要素(例えば、回答者1、回答者2等)に左右されることなく、飲料1の位置が決定されることとなる。視点1は、視点2に対して独立であるため、回答者1の個別マップでも、回答者2の個別マップでも飲料1の位置は変わらず共通の位置となる。
【0058】
図4に戻って、上記Eステップ、Mステップが実行されると、収束判定部35が、統合マップが収束したかどうかを判定し(S44)、収束するまでEステップ、Mステップを繰り返して実行する。収束した場合は、出力制御部36が、情報入力部37が受け付けた利用者からの入力指示にしたがって、統合マップにおける必要な情報を出力部38に出力して(S45)、処理を終了する。
【0059】
以下に、統合マップの情報を表示する場合の表示例を示す。
図9、
図10において、統合マップを視点1で見た場合のマップ(飲料マップ)と視点2で見た場合のマップ(回答者マップ)とを同時に表示している。各マップ(それぞれの視点から見たマップを単視点マップとする)は、それぞれの視点を考慮してモデル化された統合マップの情報であるため、一の視点の単視点マップは、他の視点を考慮したマップとなっている。これらの単視点マップであっても、複数の視点を考慮して学習された統合マップの情報を参照することができ、分析ツールとして利用価値があるが、本実施形態では、さらに高度な分析を可能とする表示態様で統合マップ情報を表示する。
【0060】
その一例として、
図9、
図10に示すように評価用のマップ(評価マップとする)を同時に表示する。この評価用のマップは、空間における統合マップ情報を2次元のマップに落としこんだものである。すなわち、
図11に示すように、多次元の統合マップ情報を2次元のマップに写像する。こうすることで、多次元の統合マップを2次元のマップで見ることができる。
図9の場合、利用者が視点1の単視点マップの1点の要素を特定し、指示情報として入力すると、特定された要素に関する視点2のマップ(統合マップ情報を2次元マップに落とし込んだもの)が評価マップに表示されている。
図10の場合は逆で、利用者が視点2のマップの1点の要素を特定し、指示情報として入力すると、特定された要素に関する視点1のマップ(統合マップ情報を2次元マップに落とし込んだもの)が評価マップに表示されている。
【0061】
視点1の各要素と視点2の各要素は、上記の処理により統合マップで関係性が保持されており、利用者が必要な視点で情報を表示し、分析に用いることができる。つまり、
図9の評価マップの場合は、視点1のある要素に関する視点2のマップが、視点1と視点2との関係性を保持した状態の統合マップ情報として表示され、
図10の評価マップの場合は、視点2のある要素に関する視点1のマップが、視点1と視点2との関係性を保持した状態の統合マップ情報として表示される。
【0062】
なお、
図9及び
図10に示すマップの背景の色は、図に示すような多色であってもよいし、単色であってもよい。多色の場合は、色相、明度、彩度に応じて距離を示すようにしてもよい。例えば、
図9の場合、濃度が濃いほど長い距離を示し、濃度が薄いほど短い距離を示すとする。その場合、中心から若干右にずれた位置にある濃度が濃い領域を挟んで配置されている要素については、濃度が薄い領域を挟んで配置されている要素に比べて距離が長く、類似度が低いことを示している。
【0063】
他の表示例を
図12、
図13に示す。
図12は、
図10の場合と同様に単視点マップと評価マップを同時に表示するが、視点1のある要素を特定すると、その要素に関する視点2の全ての要素を分布(
図11に示すように、統合マップ情報を2次元マップに落とし込んだもの)が表示されている。利用者が特定する視点1の要素が変更されると、
図13に示すように、特定された要素に応じて評価マップ上の分布も変化する。
【0064】
なお、この表示態様で表示されている場合は、例えばマウスやタッチパネルを用いて、利用者が単視点マップ上を走査すると、それに応じて評価マップの分布の表示がアニメーションで変化するようにしてもよい。また、利用者が単視点マップ上を走査しなくても、所定の時間間隔で隣接する要素が選択されるようにしてもよく(隣接する要素の情報を順次読み込むようにしてもよく)、選択された要素に応じて所定の時間間隔で評価マップにアニメーション表示することができるようにしてもよい。
【0065】
さらに他の表示例を
図14に示す。
図14は、視点1(飲み物)、視点2(カスタマ)に加えて視点3(シチュエーション)について学習した統合マップを作成した場合の表示例である。視点が増えた場合であっても基本的なアルゴリズムは上記に示したものと変わらず、個別マップを作成する際に他の全ての視点における配置位置を考慮して作成することで、視点を2以上にすることが可能である。
【0066】
3つの視点で学習した統合マップの情報を表示する場合には、
図14に示すように背景の模様を利用する。すなわち、ある視点(ここでは、シチュエーションとする)に対応する背景の情報(色の変化により距離を表現したもの)を用意し、それぞれの背景に合わせて各視点の要素をマップで示す。そうすることで、視点3における視点1と視点2の関係を分析することができる。例えば、食事中に回答者1が好む飲料の情報や、スポーツ中に回答者2が好まない飲料等の情報を得ることが可能となる。
【0067】
上記表示例はあくまで一例であり、統合マップが完成していれば表示態様については様々な表現が可能である。
【0068】
なお、上記説明において、初期化処理部31が各視点における要素の配置位置を求める(Eステップの処理を行う)ものとしたが、マップの初期状態を生成する(Mステップの処理を行う)ものであってもよい。つまり、初期の状態ではEステップから処理を開始してもMステップから処理を開始してもどちらでもよい。
【0069】
また、表1においては、回答者と飲料の関係のみを示したが、回答者の様々な属性(例えば、年齢、性別、住所、好み、趣味、好きな食べ物、好きなスポーツ、学歴、職歴等)を付加して学習を行うようにしてもよい。その場合、各属性について単なる付加情報として学習に関与しない(学習率0)ようにしてもよいし、属性に応じて学習率に軽重を付けて関与させるようにしてもよい。
【0070】
さらに、本実施形態に係るマップ作成装置は、EMアルゴリズムを用いることで実現することができる。また、SOM(Self−Organization Maps)、GTM(Generative Topographic Map)、位相保存写像法、多様体学習法又は非線形部分空間法等のアルゴリズムを用いることもできる。
【0071】
(本発明の第2の実施形態)
本実施形態に係るマップ作成装置について、
図15及び
図16を用いて説明する。
図15は、本実施形態に係るマップ作成装置におけるSOMを用いたEステップのフローチャート、
図16は、本実施形態に係るマップ作成装置におけるSOMを用いたMステップのフローチャートである。
【0072】
ここでは、第1の視点をカスタマごとの評価とし、第1要素を回答者A、第2要素を回答者B、第i要素を回答者iとする。また、第2の視点を飲み物ごとの評価とし、第1要素を飲料1、第2要素を飲料2、第j要素を飲料jとする。以下に、具体的なアルゴリズムを説明する。表1に各パラメータの一覧を示す。
【0073】
【表2】
【0074】
図15に示すEステップでは、上記で示したように各視点(視点1,視点2)ごとに、各視点における各ユニット(i,j)の勝者位置を求め、近傍関数hを用いて各ユニットの学習率が決定される。
図16に示すM−Stepでは、各視点の各ユニットごとに他の視点のモデルが作成されると共に、Eステップで求められた各視点ごとの勝者位置を用いて、全視点の全ユニットについてモデルが推定され、統合マップが作成される。
【0075】
以上のように、本実施形態に係るマップ作成装置は、多次元の非線形データについて、複数の異なる視点に基づいて推定されたモデルを低次元に写像し、モデル推定された一の統合マップ情報を作成するものであって、前記非線形データを、前記視点(例えば、飲み物、カスタマ等)ごとに有する複数の要素間(例えば、カスタマの場合は回答者1〜1000、飲み物の場合は飲料(水)〜飲料(酒)等)で関連付けを行って記憶するデータ記憶部30と、前記データ記憶部30に記憶されたデータ(例えば、回答者ごとの飲料の評価データ(x
ij))に基づいて、全ての前記視点における全ての前記要素について、一の視点(例えば、カスタマ/飲み物)における一の要素(例えば、回答者/飲料)ごとに、他の視点(例えば、飲み物/回答者)における要素(例えば、飲料(水)〜飲料(酒)/回答者1〜回答者1000)に関して共通の配置構成でモデル推定を行って個別マップ情報(例えば、回答者ごとの飲料のマップ(マップU
i)/飲料ごとの回答者マップ(マップV
j))を生成する個別マップ情報生成部33と、前記統合マップ情報(例えば、マップW
kl)において、前記一の視点(例えば、カスタマ/飲み物)ごとに生成された他の視点(例えば、飲み物/カスタマ)に関する個別マップ情報の集合体(例えば、マップU
i/マップV
i)が配置される推定位置(例えば、回答者の配置位置q
i/飲料の配置位置p
j)を演算する配置位置演算部32と、前記配置位置演算手段が演算した推定位置(例えば、回答者の配置位置q
i/飲料の配置位置p
j)で特定される各視点ごとの要素に、前記データ記憶手段に記憶された全てのデータ(例えば、評価データ(x
ij))を学習させて統合マップ情報(例えば、マップW
kl)を生成する統合マップ情報生成手段とを備え、前記個別マップ情報生成部33、配置位置演算部32及び統合マップ情報生成部34が、前記統合マップ情報が収束するまで所定の回数繰り返して実行されるものであるため、複数の異なる視点で分類されるデータ群が複雑に絡み合っている多次元の非線形データについてモデルを推定することができ、それぞれの視点における要素間の関係性を保持したまま、異なる観点からの解析を行うことができる一の統合マップを作成することができる。
【0076】
また、本実施形態に係るマップ作成装置は、前記個別マップ情報生成部33が、前記他の視点(例えば、飲み物/カスタマ)における各要素の配置構成(例えば、飲料の配置構成p
j/回答者の配置位置q
i)と前記データ記憶部30に記憶される一の視点(例えば、カスタマ/飲み物)における各要素のデータ(例えば、回答者ごとの飲み物データ/飲み物ごとの回答者データ)とに基づいて、前記一の視点における一の要素ごとに、他の視点における要素に関して個別マップ情報(例えば、マップU
i/マップV
j)を生成するため、他の視点から見て分類されるデータ群を関連付けた個別マップを作成することができ、統合マップにおける個別マップの配置を高精度に推定することができる。