(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
底面及び壁面から構成される凹部を有し、前記凹部の前記底面が光半導体素子の搭載部であり、前記凹部の前記壁面の少なくとも一部が光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる光半導体素子搭載用基板と、
前記光半導体素子搭載用基板に搭載された光半導体素子と、
を備える光半導体装置であって、
前記光反射用熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂成分と白色顔料とを含み、
前記白色顔料は、X線光電子分光法により表面の構成元素を測定した場合に、ケイ素とチタンとの元素存在比(Si/Ti)が1〜14であり、ケイ素とアルミニウムとの元素存在比(Si/Al)が1.3以上であり、且つ、ケイ素と炭素との元素存在比(Si/C)が0.3以上である酸化チタンを含む、光半導体装置。
基板、並びに該基板上に設けられた第1の接続端子及び第2の接続端子を有し、前記第1の接続端子と前記第2の接続端子との間に、光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物を有する光半導体素子搭載用基板と、
前記光半導体素子搭載用基板に搭載された光半導体素子と、
を備える光半導体装置であって、
前記光反射用熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂成分と白色顔料とを含み、
前記白色顔料は、X線光電子分光法により表面の構成元素を測定した場合に、ケイ素とチタンとの元素存在比(Si/Ti)が1〜14であり、ケイ素とアルミニウムとの元素存在比(Si/Al)が1.3以上であり、且つ、ケイ素と炭素との元素存在比(Si/C)が0.3以上である酸化チタンを含む、光半導体装置。
底面及び壁面から構成される凹部を有し、前記凹部の前記底面が光半導体素子の搭載部であり、前記凹部の前記壁面の少なくとも一部が光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる光半導体素子搭載用基板であって、
前記光反射用熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂成分と白色顔料とを含み、
前記白色顔料は、X線光電子分光法により表面の構成元素を測定した場合に、ケイ素とチタンとの元素存在比(Si/Ti)が1〜14であり、ケイ素とアルミニウムとの元素存在比(Si/Al)が1.3以上であり、且つ、ケイ素と炭素との元素存在比(Si/C)が0.3以上である酸化チタンを含む、光半導体素子搭載用基板。
基板、並びに該基板上に設けられた第1の接続端子及び第2の接続端子を有し、前記第1の接続端子と前記第2の接続端子との間に、光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物を有する光半導体素子搭載用基板であって、
前記光反射用熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂成分と白色顔料とを含み、
前記白色顔料は、X線光電子分光法により表面の構成元素を測定した場合に、ケイ素とチタンとの元素存在比(Si/Ti)が1〜14であり、ケイ素とアルミニウムとの元素存在比(Si/Al)が1.3以上であり、且つ、ケイ素と炭素との元素存在比(Si/C)が0.3以上である酸化チタンを含む、光半導体素子搭載用基板。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。また、本明細書における「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」及びそれに対応する「メタクリレート」を意味する。
【0025】
[光反射用熱硬化性樹脂組成物]
本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂成分と白色顔料とを含み、上記白色顔料が、X線光電子分光法により表面の構成元素を測定した場合に、ケイ素とチタンとの元素存在比(Si/Ti)が1〜14であり、ケイ素とアルミニウムとの元素存在比(Si/Al)が1.3以上であり、且つ、ケイ素と炭素との元素存在比(Si/C)が0.3以上である酸化チタンを含むものである。
【0026】
<XPSによる元素存在比の測定方法>
X線光電子分光法(XPS)による酸化チタン表面の構成元素の測定は、以下の方法で行うことができる。まず、酸化チタンの粉末試料を錠剤成型器で成型し、成型物を割って一部をカーボンテープに貼り付け、XPS用の試料台に固定する。XPSの測定は、島津/Kratos社製のAXIS−165にて行う。照射X線はAl−Kα線(1.4866keV)を用い、水晶(α構造)の(100)面を用いて単色化する。陰極の電圧値は15kVとし、電流値は測定の種類によって変え、ワイドスキャンの時は3mA、ナロースキャンの時は10mAとする。試料にX線を照射した結果得られる表面からの光電子を検出角度90°で取り出し、そのスペクトル測定を行う。測定範囲はφ120μm、試料表面から10nmの深さまでの範囲である。分解能に相当するパスエネルギ(小さい程分解能が高い)の値は、ワイドスキャン時に160eV、ナロースキャン時に20eVとする。まず、ワイドスキャンを行い、どのような元素が見られるのかを確認した後、O 1s、Ti 2p、C 1s、Si 2p、Al 2pのナロースキャンを行う。O 1s、Ti 2p、C 1s、Si 2p、Al 2pの各ナロースキャンの積算回数はそれぞれ3回、5回、10回、10回、10回である。以上の方法により得られたナロースキャンスペクトルにおいて、各元素に由来するピークの相対強度比に対して、各元素に固有な光電子放出効率因子、および測定に用いたXPS装置に固有な感度係数を乗じて各元素の存在比(原子数%)を計算する。
【0027】
<白色顔料>
白色顔料は、X線光電子分光法により表面の構成元素を測定した場合に、ケイ素とチタンとの元素存在比(Si/Ti)が1〜14であり、ケイ素とアルミニウムとの元素存在比(Si/Al)が1.3以上であり、且つ、ケイ素と炭素との元素存在比(Si/C)が0.3以上である酸化チタンを少なくとも含む。
【0028】
上記酸化チタンにおいて、XPSによって測定されるケイ素とチタンとの元素存在比(Si/Ti)は1〜14である。このSi/Tiの値が1未満であると、熱硬化性樹脂組成物に含まれる酸化チタンが熱や光を受けて変色し、光半導体からの光を吸収して光半導体装置の出力が低下する。一方、Si/Tiの値が14を超えると、酸化チタンの熱硬化性樹脂成分への分散性が低下し、熱硬化性樹脂組成物の溶融粘度が高くなって成形加工性が低下する。結果として光半導体装置の設計自由度が低下する傾向がある。
【0029】
また、上記酸化チタンにおいて、XPSによって測定されるケイ素とアルミニウムとの元素存在比(Si/Al)は1.3以上であり、1.3〜3であることが好ましく、1.8〜3であることがより好ましい。このSi/Alの値が1.3未満であると、熱硬化性樹脂組成物に含まれる酸化チタンが熱や光を受けて変色し、光半導体からの光を吸収して光半導体装置の出力が低下する。一方、Si/Alの値が3を超えると、酸化チタンの熱硬化性樹脂成分への分散性が低下し、熱硬化性樹脂組成物の溶融粘度が高くなって成形加工性が低下する。結果として光半導体装置の設計自由度が低下する傾向がある。
【0030】
さらに、上記酸化チタンにおいて、XPSによって測定されるケイ素と炭素との元素存在比(Si/C)は0.3以上であり、0.3〜0.8であることが好ましい。このSi/Cの値が0.3未満であると、熱硬化性樹脂組成物に含まれる酸化チタンが熱や光を受けて変色し、光半導体からの光を吸収して光半導体装置の出力が低下する。一方、0.8を超えると、酸化チタンの熱硬化性樹脂成分への分散性が低下し、熱硬化性樹脂組成物の溶融粘度が高くなって成形加工性が低下する。結果として光半導体装置の設計自由度が低下する傾向がある。
【0031】
XPSにより測定される元素存在比が上記の条件を満たす酸化チタンは、その表面にケイ素、アルミニウム及び炭素が存在していることとなる。これらの元素が表面に存在するためには、酸化チタンは上記元素を含む被覆層で表面が被覆された酸化チタンであることが好ましい。例えば、上記酸化チタンは、酸化チタン(TiO
2)としての含有量が80〜97質量%に調整された微小粒子系の酸化チタンをベースに、金属酸化物等の無機物や、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、有機酸、ポリオール及びシリコーン等の有機物で表面処理された酸化チタンであることが好ましい。酸化チタンの結晶型としては、屈折率2.7のルチル型、屈折率2.5のアナターゼ型及び屈折率2.6のブルッカイト型の3つの結晶型があり、特には限定されないが、屈折率と光吸収特性の観点から好ましくはルチル型である。表面処理剤としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア等の金属酸化物;シランカップリング剤、チタンカップリング剤、アルカノールアミン、ポリオール、シリコーンオイル、有機酸等の有機物などが挙げられる。
【0032】
本実施形態で用いられる酸化チタンは、アルミナ等のアルミニウム含有化合物、シリカ等のケイ素含有化合物、チタン含有化合物、ジルコニア等のジルコニウム含有化合物、亜鉛含有化合物、錫含有化合物、マグネシウム含有化合物、カルシウム含有化合物及びリン酸アルミニウム等のリン含有化合物、並びにこれらの水和物から選ばれた少なくとも一種の無機物で表面処理された酸化チタンであることが好ましい。中でも、本実施形態で用いられる酸化チタンは、シリカ等のケイ素含有化合物により被覆された後、さらにアルミナ等のアルミニウム含有化合物で被覆された酸化チタンであることがより好ましい。ここで、ケイ素含有化合物とアルミニウム含有化合物との被覆の順序は特に限定されず、酸化チタンは、アルミニウム含有化合物により被覆された後、さらにケイ素含有化合物で被覆された酸化チタンであってもよい。このような酸化チタンを用いることにより、熱硬化性樹脂組成物に含まれる酸化チタンが光を受けて光触媒となり、含有する熱硬化性樹脂を劣化させ光半導体からの光を吸収して光半導体装置の出力が低下する、といったことを抑制することができる。
【0033】
また、本実施形態で用いられる酸化チタンは、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、環状シリコーン、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、多価アルコール、へキサメチルジシラザン、アミノシラン及びシラザン類等の、含水酸化物と脱水縮合可能な化合物、並びにこれらの溶液から選ばれた少なくとも一種の有機物で表面処理された酸化チタンであることも好ましい。このような酸化チタンを用いることにより、熱硬化性樹脂組成物に含まれる酸化チタンが光を受けて光触媒となり、含有する熱硬化性樹脂を劣化させ光半導体からの光を吸収して光半導体装置の出力が低下する、といったことを抑制することができる。
【0034】
特に、本実施形態で用いられる酸化チタンは、上述した無機物で表面処理された後、さらに上述した有機物で表面処理された酸化チタンであることが好ましく、アルミニウム含有化合物により被覆され、次いでケイ素含有化合物で被覆された後、さらに上述した有機物で被覆された酸化チタンであることがより好ましい。このような酸化チタンを用いることにより、熱硬化性樹脂組成物に含まれる酸化チタンが光を受けて光触媒となり、含有する熱硬化性樹脂を劣化させ光半導体からの光を吸収して光半導体装置の出力が低下する、といったことをより十分に抑制することができる。
【0035】
また、本実施形態で用いられる酸化チタンは、熱硬化性樹脂成分との密着性を向上させる観点から、エポキシシラン等のシランカップリング剤を用いてさらに表面を有機処理したものであってもよい。
【0036】
上述した表面処理により被覆層が形成された酸化チタン(以下、「表面被覆酸化チタン」という)の製造方法は特に限定されず、公知の方法により製造することができる。表面被覆酸化チタンを製造する際のベースとなる酸化チタンとしては、公知の塩素法によって製造された酸化チタンや、硫酸法によって製造された酸化チタンを特に制限なく用いることができるが、光反射用熱硬化性樹脂組成物の可視光域における光学反射率を高い値で得る観点から、製造方法由来の着色性金属を低減可能な塩素法で得られた酸化チタンを用いることが好ましい。ここで、酸化チタンは、原料となる天然物から、公知の硫酸法又は塩酸法を用いて製造することができるが、硫酸法又は塩酸法のそれぞれから得られる酸化チタンは、屈折率が同等であるにもかかわらず、製造時に処理液から混入する元素の違いにより、酸化チタンの色、すなわち反射スペクトル特性が異なるものが得られる。通常、塩酸法から得られる酸化チタンは波長460〜800nmの光反射率が高く、硫酸法から得られる酸化チタンは波長460〜800nmの光反射率が前者に劣る。
【0037】
また、表面被覆酸化チタンを製造する際のベースとなる酸化チタンとして、市販の酸化チタンを用いてもよい。市販の酸化チタンとしては特に限定されないが、例えば、ルチル型酸化チタンである堺化学工業(株)製のD−918、FTR−700(いずれも商品名)、石原産業(株)製のタイペークCR−50、CR−50−2、CR−60、CR−60−2、CR−63、CR−80、CR−90、CR−90−2、CR−93、CR−95、CR−97(いずれも商品名)、テイカ(株)製のJR−403、JR−805、JR−806、JR−701、JR−800等(いずれも商品名)、冨士チタン工業(株)製のTR−600、TR−700、TR−750、TR−840、TR−900(いずれも商品名)等が挙げられる。
【0038】
酸化チタンの表面処理としては、一般にはまず無機処理を行い、次いで有機処理を行う。なお、本実施形態で用いられる酸化チタンは、少なくとも無機処理を行ったものであることが好ましく、無機処理に加えて更に有機処理を行ったものであることがより好ましい。
【0039】
酸化チタンの無機表面処理剤による表面処理は、従来公知の方法により行うことができる。例えば、酸化チタンの懸濁液に無機表面処理剤を加え、引き続き懸濁液中のpHを調整することにより難溶性酸化物水和物等で酸化チタンの表面を被覆処理する方法が挙げられる。
【0040】
本実施形態によれば、得られる表面被覆酸化チタンが樹脂に対する濡れ性や分散性に優れたものとなるように、酸化チタンに表面被覆を施すに際して、最初にアモルファスの酸化チタン被覆を形成し、さらにシリカやアルミナを含む被覆層を形成してもよい。
【0041】
酸化チタンの表面にアルミナを含む被覆層を設ける場合、該被覆層は、水溶性アルミニウム塩を無機表面処理剤として用いて形成することができる。水溶性アルミニウム塩の具体例としては、アルミン酸ナトリウム等が挙げられる。例えば、酸化チタンを水に分散させ、そこに水溶性アルミニウム塩を加え、更に硫酸または塩酸等を添加することにより、アルミナ(Al
2O
3)で酸化チタン表面を被覆することができる。
【0042】
また、酸化チタンの表面にシリカを含む被覆層を設ける場合、該被覆層は、例えばケイ酸ナトリウムを無機表面処理剤として用いて形成することができる。例えば、酸化チタンを水に分散させ、そこにケイ酸ナトリウムを加え、更に硫酸または塩酸等を添加することにより、シリカ(SiO
2)で酸化チタン表面を被覆することができる。
【0043】
本実施形態で用いられる酸化チタンは、優れた耐光性を得る観点から、リン酸アルミニウム化合物を含む被覆層を有することも好ましい。リン酸アルミニウム化合物は、オルトリン酸アルミニウム、メタリン酸アルミニウムのいずれでもよい。リン酸アルミニウム化合物の被覆量は、ベースとなる酸化チタン100質量部に対して、好ましくは、AlPO
4として0.1〜2.0質量部である。この被覆量が0.1質量部未満であると、耐光性の向上効果が十分に得られない傾向があり、2.0質量部を超えると、リン酸アルミニウム化合物に含まれる結合水の影響により、熱硬化樹脂に分散して成形した時に発泡を生じ易くなるため、外観上良好な成形体が得られない傾向がある。
【0044】
酸化チタンの表面にリン酸アルミニウム化合物を含む被覆層を設ける場合、該被覆層は、リン酸化合物及びアルミニウム化合物を無機表面処理剤として用いて形成することができる。リン酸化合物及びアルミニウム化合物は水溶性であれば特に制限は無く、例えば、リン酸化合物としてはオルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸及びその塩等が挙げられ、アルミニウム化合物としてはアルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム等が挙げられる。また、pHの調整には硫酸、塩酸等の無機酸または酢酸、ギ酸等の有機酸等の酸性化合物や、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の無機塩基性化合物を用いることができる。リン酸化合物及びアルミニウム化合物の好ましい使用量は、ベースとなる酸化チタン100質量部に対してAlPO
4として0.1〜2.0質量部のリン酸アルミニウム化合物を形成することができるように適宜、設定される。
【0045】
本実施形態において、表面被覆酸化チタンは、例えば、次のようにして得ることができる。まず、原料である酸化チタンを水に分散させて懸濁液とし、この懸濁液に無機表面処理剤を加えた後、酸又はアルカリにてpHを6〜7程度に調整して、酸化チタン表面に被覆層を形成する。次いで、懸濁液をフィルタープレス、ドラムフィルター等で濾過し、固形分を洗浄して残存する塩類を洗い流した後、バンドドライヤー、噴霧乾燥機等で乾燥して、乾燥物を得る。
【0046】
その後、この乾燥物を電気炉又はロータリーキルン等の適宜の手段を用いて、300〜1000℃の範囲、好ましくは500〜900℃の範囲の温度で焼成する。この焼成温度が300℃よりも低いときは、用いた表面処理剤からの脱水が不十分であるので、得られる表面被覆酸化チタンは、依然として、高温での揮発分を多く有する傾向がある。しかし、焼成温度が1000℃よりも高いときは、酸化チタン粒子が相互に焼結するので、分散性のよい表面被覆酸化チタンを得ることができない傾向がある。
【0047】
このようにして得られた焼成物は、そのまま公知のミルを用いて粉砕してもよいし、懸濁液としてビーズミルで粉砕を行い、濾過、水洗、乾燥の各工程を経た後、公知のミルで粉砕してもよい。後者の方法で粉砕する場合は、回転式ジェットミルを用いて、有機表面処理剤としてメチルハイドロジェンポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、環状シリコーン、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、多価アルコール、へキサメチルジシラザン、アミノシラン、シラザン類等の含水酸化物と脱水縮合可能な化合物を添加しながら粉砕してもよい。また、ベースとなる酸化チタンないし表面被覆酸化チタンと有機表面処理剤との化学結合によって水分が生成する場合には、加熱しながら粉砕を行うことが好ましい。以上の方法により、表面被覆酸化チタンを得ることができる。
【0048】
無機表面処理剤として、シリカ源としては、ケイ酸ナトリウムや四塩化ケイ素等が用いられ、また、アルミナ源としては、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム等が用いられる。
【0049】
酸化チタンの表面に、シリカを含む被覆層及びアルミナを含む被覆層を形成する場合、上記無機表面処理剤の添加量は、表面被覆すべき酸化チタン100質量部に対して、それぞれシリカ及びアルミナ換算で合計2質量部以上とすることが好ましく、2〜15質量部とすることがより好ましい。この添加量が2質量部より少ないと、酸化チタンの表面被覆が不十分となり、表面活性を抑制する効果が低下し、十分な耐光性の向上効果を得ることができない傾向がある。他方、この添加量が15質量部よりも多いと、得られる表面被覆酸化チタンの樹脂への分散性が低下する傾向がある。
【0050】
有機表面処理剤による表面処理方法としては、例えば、pHを0.5〜6、好ましくは2〜4の酸性に調整した酸化チタンの水性スラリー中に上記有機表面処理剤を添加する方法、あらかじめ調製した有機シラン化合物の水系分散液のpHを0.5〜6、好ましくは2〜4の酸性に調整した後、この水系分散液中に酸化チタンを添加する方法等を用いることができる。pHが上記範囲にあると、有機シラン化合物の加水分解反応が進み、親水性のシラノールが生成し易くなる傾向があり、また、疎水性のシラノールの重縮合物が生成し難くなるので、水系スラリー中での取扱いが容易となる傾向があるため、好ましい。また、シラノールのモノマーを生成させ、酸化チタン粒子に被覆した後、スラリーのpHを中性以上にして、重縮合させ、酸化チタン粒子の表面でオリゴマーやポリマーを生成させることもできる。
【0051】
また、有機表面処理剤としては、上述したような含水酸化物と脱水縮合可能な化合物の他、ポリオール系、トリエタノールアミンの有機酸塩などのアルカノールアミン系、アルキルクロロシラン類などのシリコーン系などの有機表面処理剤も挙げられる。
【0052】
ポリオール系の有機表面処理剤としては、分子内に水酸基を2〜4個含有する炭素数10以下の炭化水素化合物が好ましい。ポリオール系の有機表面処理剤として具体的には、例えば、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0053】
アルカノールアミン系の有機表面処理剤としては、例えば、トリエタノールアミンの有機酸塩、トリメチロールアミンの有機酸塩、トリプロパノールアミンの有機酸塩等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0054】
シリコーン系の有機表面処理剤としては、反応後にシリコーンを生成する化合物を用いてもよい。シリコーン系の有機表面処理剤としては、例えば、ジメチルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、アルコキシシラン類、アルキルクロロシラン類等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0055】
酸化チタンの有機表面処理剤による表面処理は、従来公知の方法を用いて行うことができる。例えば、酸化チタンを粉砕機で粉砕する際、有機表面処理剤のアルコール溶液を添加し、加熱しながらアルコールを蒸発させ表面処理する方法等が挙げられる。また、簡便な方法としては、酸化チタン粉末をヘンシェルミキサー等で撹拌及び混合しながら有機表面処理剤のアルコール溶液を滴下及び混合し、加熱しながらアルコールを蒸発させて表面処理する方法がある。
【0056】
本実施形態における表面被覆酸化チタンは、無機物であるシリカとアルミナの両方、又は、いずれか一方によって表面被覆がなされたものに、有機ケイ素化合物(シリコーン樹脂)で表面被覆がなされていてもよい。表面被覆に使用する材料は、ベース樹脂となる熱硬化性樹脂への分散のし易さに応じて適宜調整することができる。表面被覆酸化チタンは、樹脂成形品において気泡発生等の欠陥を抑制する観点から、高温での樹脂への練り込みや樹脂の成形加工時に加熱する際に揮発分が少ないものであることが好ましい。より具体的には、表面被覆酸化チタンは、105℃から220℃まで加熱したときの揮発分が少ないものが好ましく、このときの揮発分が0.80質量%以下であることが好ましい。更に、このような表面被覆酸化チタンは、その表面被覆によって表面活性が効果的に抑制され、その結果として、樹脂成形品に配合した場合、耐候性と耐光性とに優れた樹脂成形品を得ることができる。
【0057】
本実施形態で用いられる表面被覆酸化チタンの平均粒径は、0.01〜1.0μmであることが好ましく、0.1〜0.5μmであることがより好ましい。この平均粒径が0.01μm未満であると、凝集し易く分散性が低下することに加えて、光学反射率が低下する傾向があり、1.0μmを超えると、光学反射率が低下する傾向がある。
【0058】
光反射用熱硬化性樹脂組成物において、表面被覆酸化チタンの配合量は、熱硬化性樹脂成分100質量部に対して、70〜400質量部であることが好ましく、90〜400質量部であることがより好ましく、100〜300質量部であることが特に好ましい。この配合量が70質量部未満であると、厚みが0.1μm以下程度の硬化物としたときの光漏れが大きくなる傾向があり、400質量部を超えると、熱硬化性樹脂組成物の高い溶融粘度が原因となって成形加工性が低下する傾向がある。
【0059】
白色顔料は、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、上述した酸化チタン以外の白色顔料を更に含んでいてもよい。このような白色顔料としては、上述したXPSにより測定される元素存在比の条件を満たさない酸化チタン、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化マグネシウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、無機中空粒子等が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの白色顔料の配合量は、熱硬化性樹脂成分100質量部に対して、400質量部以下であることが好ましく、300質量部以下であることがより好ましい。この配合量が400質量部を超えると、熱硬化性樹脂組成物の高い溶融粘度が原因となって成形加工性が低下する傾向がある。
【0060】
<熱硬化性樹脂成分>
次に、熱硬化性樹脂成分について説明する。光反射用熱硬化性樹脂組成物には、熱硬化性樹脂成分として、熱硬化性樹脂、硬化剤、硬化促進剤などを含有させることができる。
【0061】
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ケイ素樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等、公知のものを使用することができる。光反射用熱硬化性樹脂組成物が光学材料用途や光半導体用途である場合には、光や熱により劣化しにくい特性を有する樹脂の種類が豊富である点で、エポキシ樹脂やケイ素樹脂が望ましい。
【0062】
以下、エポキシ樹脂とその硬化剤について例示する。
【0063】
(エポキシ樹脂)
エポキシ樹脂としては、電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料で一般に使用されているものを用いることができる。エポキシ樹脂として具体的には、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂及びオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂等の、フェノール類とアルデヒド類とからなるノボラック樹脂をエポキシ化したもの、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS及びアルキル置換ビスフェノール等のジグリシジルエーテル、ジアミノジフェニルメタン及びイソシアヌル酸等のポリアミンとエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、並びに脂環族エポキシ樹脂が挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0064】
これらのうち、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ジグリシジルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、及び、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸又は1,4−シクロヘキサンジカルボン酸から誘導されるジカルボン酸ジグリシジルエステルが、比較的着色が少ないことから好ましい。同様の理由から、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、ナジック酸及びメチルナジック酸等のジカルボン酸のジグリシジルエステルも好適である。芳香環が水素化された脂環式構造を有する核水素化トリメリット酸、核水素化ピロメリット酸等のグリシジルエステルも挙げられる。シラン化合物を有機溶媒、有機塩基及び水の存在下に加熱して、加水分解・縮合させることにより製造される、エポキシ基を有するポリオルガノシロキサンも挙げられる。
【0065】
なお、エポキシ樹脂は、その入手方法には特に制限はなく、市販のエポキシ樹脂であってもよい。市販のエポキシ樹脂としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート{商品名:セロキサイド2021、セロキサイド2021A、セロキサイド2021P(以上、ダイセル化学工業(株)製)、ERL4221、ERL4221D、ERL4221E(以上、ダウケミカル日本(株)製)}、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート{商品名:ERL4299(ダウケミカル日本(株)製)、EXA7015(大日本インキ化学工業(株)製)}、1−エポキシエチル−3,4−エポキシシクロヘキサン、リモネンジエポキシド{商品名:エピコートYX8000、エピコートYX8034、エピコートYL7170(以上、ジャパンエポキシレジン(株)製)、セロキサイド2081、セロキサイド3000、エポリードGT301、エポリードGT401、EHPE3150(以上、ダイセル化学工業(株)製)}、トリグリシジルイソシアヌレート{商品名:TEPIC(日産化学社製)}が挙げられる。
【0066】
(硬化剤)
熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂が配合される場合の硬化剤としては、電子部品封止用エポキシ樹脂成形材料で一般に使用されている硬化剤を用いることができる。このような硬化剤としては、エポキシ樹脂と反応するものであれば、特に限定されないが、着色の少ないものが好ましく、無色又は淡黄色であることがより好ましい。
【0067】
このような硬化剤としては、例えば、酸無水物系硬化剤、イソシアヌル酸誘導体系硬化剤、フェノール系硬化剤が挙げられる。酸無水物系硬化剤としては、例えば、無水フタル酸、無水マレイン酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ナジック酸、無水グルタル酸、無水ジメチルグルタル酸、無水ジエチルグルタル酸、無水コハク酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸が挙げられる。イソシアヌル酸誘導体としては、1,3,5−トリス(1−カルボキシメチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレート、1,3−ビス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレートが挙げられる。これらの硬化剤の中では、無水フタル酸、無水トリメリット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水グルタル酸、無水ジメチルグルタル酸、無水ジエチルグルタル酸又は1,3,5−トリス(3−カルボキシプロピル)イソシアヌレートを用いることが好ましい。上記硬化剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせてもよい。
【0068】
上述の硬化剤は、成形性および硬化物の機械特性の観点から、分子量が100〜400であることが好ましい。また、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等の芳香環を有する酸無水物よりも、芳香環の不飽和結合のすべてを水素化した酸無水物が好ましい。酸無水物系硬化剤として、ポリイミド樹脂の原料として一般的に使用される酸無水物を用いてもよい。
【0069】
本実施形態の光反射用熱硬化性樹脂組成物において、硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、1〜150質量部であることが好ましく、50〜120質量部であることがより好ましい。
【0070】
また、硬化剤は、エポキシ樹脂中のエポキシ基1当量に対して、当該エポキシ基との反応可能な硬化剤中の活性基(酸無水物基又は水酸基)が0.5〜0.9当量となるように配合することが好ましく、0.7〜0.8当量となるように配合することがより好ましい。上記活性基が0.5当量未満では、熱硬化性樹脂組成物の硬化速度が遅くなると共に、得られる硬化体のガラス転移温度が低くなり、十分な弾性率が得られ難くなる傾向がある。一方、上記活性基が0.9当量を超えると、硬化後の強度が低下する傾向がある。
【0071】
(硬化促進剤)
本実施形態の光反射用熱硬化性樹脂組成物には、硬化反応を促進するために、硬化促進剤を含有させることができる。硬化促進剤としては、例えば、アミン化合物、イミダゾール化合物、有機リン化合物、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、第4級アンモニウム塩が挙げられる。これらの硬化促進剤の中でも、アミン化合物、イミダゾール化合物又は有機リン化合物を用いることが好ましい。アミン化合物としては、例えば、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7、トリエチレンジアミン、トリ−2,4,6−ジメチルアミノメチルフェノールが挙げられる。また、イミダゾール化合物として、例えば、2−エチル−4−メチルイミダゾールが挙げられる。更に、有機リン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチオエート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−テトラフルオロボレート、テトラ−n−ブチルホスホニウム−テトラフェニルボレートが挙げられる。これらの硬化促進剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0072】
上記硬化促進剤の配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対して、0.01〜8質量部であることが好ましく、0.1〜3質量部であることがより好ましい。硬化促進剤の配合量が、0.01質量部未満では、十分な硬化促進効果を得られない場合があり、8質量部を超えると、得られる硬化物に変色が見られる場合がある。
【0073】
<その他の成分>
本実施形態の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、成形性を向上させる観点から、無機充填材を更に含んでいてもよい。また、無機充填材を添加する際は、熱硬化性樹脂成分との密着性を向上させる観点から、カップリング剤を添加することができる。
【0074】
(無機充填材)
無機充填材としては、例えば、シリカ、硫酸バリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウムが挙げられる。成型性の点から、無機充填剤は、シリカが好ましい。また、無機充填材の中心粒径は、白色顔料とのパッキング性を向上させる観点から、1〜100μmであることが好ましい。
【0075】
(カップリング剤)
カップリング剤としては、特に限定されないが、例えば、シランカップリング剤及びチタネート系カップリング剤が挙げられる。シランカップリング剤としては、一般にエポキシシラン系、アミノシラン系、カチオニックシラン系、ビニルシラン系、アクリルシラン系、メルカプトシラン系及びこれらの複合系が挙げられ、任意の添加量で用いることができる。なお、カップリング剤の配合量は、熱硬化性樹脂組成物全体に対して5質量%以下であることが好ましい。
【0076】
また、本実施形態の光反射用熱硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、酸化防止剤、離型剤、イオン捕捉剤等の添加剤を添加してもよい。
【0077】
[光反射用熱硬化性樹脂組成物の作製方法]
本実施形態の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、上述した各種成分を均一に分散混合することで得ることができ、その手段や条件等は特に限定されない。光反射用熱硬化性樹脂組成物を作製する一般的な方法として、各成分をニーダー、ロール、エクストルーダー、らいかい機、自転と公転を組み合わせた遊星式混合機等によって混練する方法を挙げることができる。各成分を混練する際には、分散性を向上する観点から、溶融状態で行うことが好ましい。
【0078】
混練の条件は、各成分の種類や配合量により適宜決定すればよく、例えば、15〜100℃で5〜40分間混練することが好ましく、20〜100℃で10〜30分間混練することがより好ましい。混練温度が15℃未満であると、各成分を混練させ難くなり、分散性も低下する傾向にあり、100℃を超えると、熱硬化性樹脂の高分子量化が進行し、混練時に熱硬化性樹脂が硬化してしまう可能性がある。また、混練時間が5分未満であると、十分な分散効果が得られない可能性がある。混練時間が40分を超えると、熱硬化性樹脂の高分子量化が進行し、熱硬化性樹脂が硬化してしまう可能性がある。
【0079】
本実施形態の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、高い光反射性及び耐熱性を必要とする光半導体素子実装用基板材料、電気絶縁材料、光半導体封止材料、接着材料、塗料材料並びにトランスファー成型用エポキシ樹脂成形材料など様々な用途において有用である。以下トランスファー成型用エポキシ樹脂成形材料として使用する際の例を述べる。
【0080】
本実施形態の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、トランスファー成形時の成形温度が180℃で、90秒間の条件で成形したときに、成形直後30秒以内のショアD硬度、即ち、熱時硬度が80〜95であることが好ましい。熱時硬度が80未満であると、成形体の硬化が阻害されており、金型から成形物を離型する際に成形物がなき別れるなど破壊されてしまう可能性がある。このような成形体の破壊が発生すると光半導体素子搭載用基板を製造する歩留りが低下し、光半導体装置を作製しにくくなる。
【0081】
本実施形態の光反射用熱硬化性樹脂組成物は、成形温度180℃、成形圧力6.9MPa、成形時間60〜120秒の条件でトランスファー成形した時のバリの長さが5mm以下となることが好ましい。バリの長さが5mmを超えると、光半導体素子搭載用基板を作製する際、光半導体素子搭載領域となる開口部(凹部)に樹脂汚れが発生し、光半導体素子を搭載する際の障害となる可能性があり、また、光半導体素子と金属配線とを電気的に接続する際の障害になる可能性がある。半導体装置製造時の作業性の観点から、上記バリ長さは、3mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることがさらに好ましい。
【0082】
[光半導体素子搭載用基板]
本発明の一実施形態に係る光半導体素子搭載用基板は、底面及び壁面から構成される凹部を有し、凹部の底面が光半導体素子搭載部(光半導体素子搭載領域)であり、凹部の壁面、すなわち凹部の内周側面の少なくとも一部が上述した本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなるものである。
【0083】
また、本発明の他の一実施形態に係る光半導体素子搭載用基板は、基板、並びに該基板上に設けられた第1の接続端子及び第2の接続端子を有し、第1の接続端子と第2の接続端子との間に、上述した本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物を有するものである。
【0084】
図1は、本発明の光半導体素子搭載用基板の一実施形態を示す斜視図である。光半導体素子搭載用基板110は、Ni/Agめっき104が形成された金属配線105(第1の接続端子および第2の接続端子)と、金属配線105(第1の接続端子および第2の接続端子)間に設けられた絶縁性樹脂成形体103’と、リフレクター103とを備え、Ni/Agめっき104が形成された金属配線105及び樹脂成形体103’とリフレクター103とから形成された凹部200を有している。この凹部200の底面は、Ni/Agめっき104が形成された金属配線105及び絶縁性樹脂成形体103’から構成され、凹部200の壁面はリフレクター103から構成されるものである。そして、リフレクター103及び絶縁性樹脂成形体103’の一方または両方が、上記本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる成形体である。本実施形態では、リフレクター103及び絶縁性樹脂成形体103’の両方が、上記本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる成形体である場合について説明する。
【0085】
本実施形態の光半導体素子搭載用基板の製造方法は特に限定されないが、例えば、本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いたトランスファー成形により製造することができる。
図2は、本発明の光半導体素子搭載用基板を製造する工程の一実施形態を示す概略図である。光半導体素子搭載用基板は、例えば、金属箔から打ち抜きやエッチング等の公知の方法により金属配線105を形成し、電気めっきによりNi/Agめっき104を施す工程(
図2(a))、次いで、該金属配線105を所定形状の金型151に配置し、金型151の樹脂注入口150から本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物を注入し、所定の条件でトランスファー成形する工程(
図2(b))、そして、金型151を外す工程(
図2(c))を経て製造することができる。このようにして、光半導体素子搭載用基板には、光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなるリフレクター103に周囲を囲まれてなる光半導体素子搭載領域(凹部)200が形成される。また、凹部の底面は、第1の接続端子となる金属配線105及び第2の接続端子となる金属配線105と、これらの間に設けられ光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる絶縁性樹脂成形体103’とから構成される。なお、上記トランスファー成形の条件としては、金型温度170〜200℃、成形圧力0.5〜20MPaで60〜120秒間、アフターキュア温度120℃〜180℃で1〜3時間が好ましい。
【0086】
[光半導体装置]
本発明の光半導体装置は、上記光半導体素子搭載用基板と、光半導体素子搭載用基板の凹部内に設けられた光半導体素子と、を備えるものである。また、本発明の光半導体装置は、上記凹部を充填して上記光半導体素子を封止する封止樹脂部を備えていてもよい。
【0087】
図3は、本発明の光半導体素子搭載用基板110に光半導体素子100を搭載した状態の一実施形態を示す斜視図である。
図3に示すように、光半導体素子100は、光半導体素子搭載用基板110の光半導体素子搭載領域(凹部)200の所定位置に搭載され、金属配線105とボンディングワイヤ102により電気的に接続される。
図4及び5は、本発明の光半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
図4及び5に示すように、光半導体装置は、光半導体素子搭載用基板110と、光半導体素子搭載用基板110の凹部200内の所定位置に設けられた光半導体素子100と、凹部200を充填して光半導体素子を封止する蛍光体106を含む透明封止樹脂101からなる封止樹脂部とを備えており、光半導体素子100とNi/Agめっき104が形成された金属配線105とがボンディングワイヤ102又ははんだバンプ107により電気的に接続されている。
【0088】
図6もまた、本発明の光半導体装置の一実施形態を示す模式断面図である。
図6に示す光半導体装置では、リフレクター303が形成されたリード304上の所定位置にダイボンド材306を介してLED素子300が配置され、LED素子300とリード304とがボンディングワイヤ301により電気的に接続され、蛍光体305を含む透明封止樹脂302によりLED素子300が封止されている。
【0089】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに制限されるものではない。例えば、本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物は光反射コート剤として用いることができる。この実施形態として、銅張積層板、光半導体素子搭載用基板及び光半導体素子について説明する。
【0090】
本発明に係る銅張積層板は、上述した本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いて形成された光反射樹脂層と、該白色樹脂層上に積層された銅箔と、を備えるものである。
【0091】
図7は、本発明に係る銅張積層板の好適な一実施形態を示す模式断面図である。
図7に示すように、銅張積層板400は、基材401と、該基材401上に積層された白色樹脂層402と、該白色樹脂層402上に積層された銅箔403と、を備えている。ここで、白色樹脂層402は、上述した本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いて形成されている。
【0092】
基材401としては、銅張積層板に用いられる基材を特に制限なく用いることができるが、例えば、エポキシ樹脂積層板等の樹脂積層板、光半導体搭載用基板などが挙げられる。
【0093】
銅張積層板400は、例えば、本発明の樹脂組成物を基材401表面に塗布し、銅箔403を重ね、加熱加圧硬化して上記樹脂組成物からなる白色樹脂層402を形成することにより作製することができる。
【0094】
本発明の樹脂組成物の基板401への塗布方法としては、例えば、印刷法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ロールコート法等の塗布方法を用いることができる。このとき、本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物には、塗布が容易となるように溶媒を含有させることができる。
【0095】
加熱加圧の条件としては、特に限定されないが、例えば、130〜180℃、0.5〜4MPa、30〜600分間の条件で加熱加圧を行うことが好ましい。
【0096】
上記本発明に係る銅張積層板を使用し、LED実装用等の光学部材用のプリント配線板を作製することができる。なお、
図7に示した銅張積層板400は、基材401の片面に白色樹脂層402及び銅箔403を積層したものであるが、本発明に係る銅張積層板は、基材401の両面に白色樹脂層402及び銅箔403をそれぞれ積層したものであってもよい。また、
図7に示した銅張積層板400は、基材401上に白色樹脂層402及び銅箔403を積層したものであるが、本発明に係る銅張積層板は、基材401を用いることなく、白色樹脂層402及び銅箔403のみで構成されていてもよい。この場合、白色樹脂層402が基材としての役割をはたすこととなる。この場合、例えば、ガラスクロス等に本発明の樹脂組成物を含浸させ、硬化させたものを白色樹脂層402とすることができる。
【0097】
図8は、本発明に係る銅張積層板を用いて作製された光半導体装置の一例を示す模式断面図である。
図8に示すように、光半導体装置500は、光半導体素子410と、該光半導体素子410が封止されるように設けられた透明な封止樹脂404とを備える表面実装型の発光ダイオードである。光半導体装置500において、半導体素子410は、接着層408を介して銅箔403に接着されており、ワイヤー409により銅箔403と電気的に接続されている。
【0098】
更に、本発明に係る光半導体素子搭載用基板の他の実施形態として、上述した本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いて、基材上の複数の導体部材(接続端子)間に形成された白色樹脂層を備える光半導体素子搭載用基板が挙げられる。また、本発明に係る光半導体装置の他の実施形態は、上記の光半導体素子搭載用基板に光半導体素子を搭載してなるものである。
【0099】
図9は、本発明に係る光半導体装置の好適な一実施形態を示す模式断面図である。
図9に示すように、光半導体装置600は、基材601と、該該基材601の表面に形成された複数の導体部材602と、複数の導体部材(接続端子)602間に形成された、上記本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物からなる白色樹脂層603と、を備える光半導体素子搭載用基板に、光半導体素子610が搭載され、該光半導体素子610が封止されるように透明な封止樹脂604が設けられた、表面実装型の発光ダイオードである。光半導体装置600において、光半導体素子610は、接着層608を介して導体部材602に接着されており、ワイヤー609により導体部材602と電気的に接続されている。
【0100】
基材601としては、光半導体素子搭載用基板に用いられる基材を特に制限なく用いることができるが、例えば、エポキシ樹脂積層板等の樹脂積層板などが挙げられる。
【0101】
導体部材602は、接続端子として機能するものであり、例えば、銅箔をフォトエッチングする方法等、公知の方法により形成することができる。
【0102】
光半導体素子搭載用基板は、本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物を基材601上の複数の導体部材602間に塗布し、加熱硬化して上記光反射用熱硬化性樹脂組成物からなる白色樹脂層603を形成することにより作製することができる。
【0103】
本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物の基板601への塗布方法としては、例えば、印刷法、ダイコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ロールコート法等の塗布方法を用いることができる。このとき、本発明の光反射用熱硬化性樹脂組成物には、塗布が容易となるように溶媒を含有させることができる。
【0104】
光反射用熱硬化性樹脂組成物の塗膜を加熱硬化する際の加熱条件としては、特に限定されないが、例えば、130〜180℃、30〜600分間の条件で加熱を行うことが好ましい。
【0105】
その後、導体部材602表面に余分に付着した樹脂成分は、バフ研磨等により除去し、導体部材602からなる回路を露出させ、光半導体素子搭載用基板とする。
【0106】
また、白色樹脂層603と導体部材602との密着性を確保するために、導体部材602に対して酸化還元処理やCZ処理(メック株式会社製)等の粗化処理を行なうことも好ましい。
【実施例】
【0107】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0108】
<酸化チタン1の作製>
塩素法酸化チタンの製造工程から得られる四塩化チタンを酸化処理し、ルチル型酸化チタンを得た。この酸化チタンを水に分散させて水懸濁液とした。攪拌しながら、この水懸濁液に、最終的に得られる酸化チタン1の全量を基準として、シリカからなる表面被覆の量が1.2質量%となるようにケイ酸ナトリウムを加え、次いで塩酸を加えてpHを7.0に調整した。更に、攪拌しながら、得られた水懸濁液に、最終的に得られる酸化チタン1の全量を基準として、アルミナからなる表面被覆の量が0.6質量%となるようにアルミン酸ナトリウムを加え、次いで塩酸を加えてpHを7.0に調整した。得られた懸濁液を濾過し、固形分を水洗した後、120℃で乾燥した。この乾燥した固形分をジェットミルを用いて粉砕して、表面被覆を有する酸化チタン顔料の粉末を得た。得られた酸化チタン顔料の粉末に、ハイドロジェンメチルポリシロキサン及びステアリン酸アミドをn−へキサンに溶解させた溶液を、酸化チタン1の全量を基準として、ハイドロジェンメチルポリシロキサンからなる表面被覆の量が0.5質量%、ステアリン酸アミドからなる表面被覆の量が0.2質量%となるように添加し、三井鉱山社製ヘンシェルミキサを用いて高速攪拌混合しながら粉砕し、被覆処理を行った。これにより、表面がシリカ、アルミナ、ハイドロジェンメチルポリシロキサン及びステアリン酸アミドで被覆された酸化チタン1(平均粒径:0.35μm)を得た。
【0109】
<酸化チタン2の作製>
市販で入手可能な石原産業社製の酸化チタン(商品名:CR−63、シリカ及びアルミナで表面被覆された酸化チタン)に、ハイドロジェンメチルポリシロキサン及びステアリン酸アミドをn−へキサンに溶解させた溶液を、酸化チタン2の全量を基準として、ハイドロジェンメチルポリシロキサンからなる表面被覆の量が0.5質量%、ステアリン酸アミドからなる表面被覆の量が0.2質量%となるように添加し、三井鉱山社製ヘンシェルミキサを用いて高速攪拌混合しながら粉砕し、被覆処理を行った。これにより、表面がシリカ、アルミナ、ハイドロジェンメチルポリシロキサン及びステアリン酸アミドで被覆された酸化チタン2(平均粒径:0.3μm)を得た。
【0110】
<酸化チタン3の作製>
硫酸法酸化チタンの製造工程から得られる硫酸チタニルを加水分解してメタチタン酸を得た後、これを焼成して、ルチル型二酸化チタンを得た。この酸化チタンを水に分散させて水スラリーとした。攪拌しながら、この水スラリーに、最終的に得られる酸化チタン3の全量を基準として、シリカからなる表面被覆の量が1.2質量%となるようにケイ酸ナトリウムを加え、次いで硫酸を加えてpHを7.0に調整した。更に、攪拌しながら、得られた水懸濁液に、最終的に得られる酸化チタン3の全量を基準として、アルミナからなる表面被覆の量が0.8質量%となるようにアルミン酸ナトリウムを加え、次いで硫酸を加えてpHを7.0に調整した。得られたスラリーを真空濾過して、濾過ケーキを得、この濾過ケーキを水で洗浄し、水溶性の塩類を除去した後、濾過ケーキを130℃で乾燥した。この後、乾燥させた濾過ケーキを、電気炉を用いて800℃で焼成した。得られた焼成物を水に分散させ、再度、水性スラリーとし、ビーズミルを用いて粉砕した。このスラリーを真空濾過して、濾過ケーキを得、この濾過ケーキを水で洗浄し、残存する水溶性塩類を除去した後、濾過ケーキを130℃で乾燥し、次いで、ジェットミルを用いて粉砕して、表面被覆を有する酸化チタン顔料の粉末を得た。得られた酸化チタン顔料の粉末に、ポリジメチルシロキサンをn−へキサンに溶解させた溶液を、酸化チタン3の全量を基準として、ポリジメチルシロキサンからなる表面被覆の量が0.5質量%となるように添加し、三井鉱山社製ヘンシェルミキサを用いて高速攪拌混合しながら粉砕し、被覆処理を行った。これにより、表面がシリカ、アルミナ、ハイドロジェンメチルポリシロキサン及びステアリン酸アミドで被覆された酸化チタン3(平均粒径:0.20μm)を得た。
【0111】
<酸化チタンの準備>
市販で入手可能な酸化チタンとして、以下の酸化チタンを準備した。
・石原産業社製、商品名:PF−726、表面がシリカ、アルミナ及び有機物で被覆された酸化チタン
・石原産業社製、商品名:CR−63、表面がシリカ、アルミナ及び有機物で被覆された酸化チタン、平均粒径:0.21μm
・石原産業社製、商品名:PF−691、表面がシリカ、アルミナ及び有機物で被覆されたで被覆された酸化チタン、平均粒径:0.21μm
・石原産業社製、商品名:CR−60、表面がアルミナ及び有機物で被覆された酸化チタン、平均粒径:0.21μm
・石原産業社製、商品名:CR−90、表面がシリカ、アルミナ及び有機物で被覆された酸化チタン、平均粒径:0.25μm
・石原産業社製、商品名:CR−90−2、表面がシリカ、アルミナ及び有機物で被覆された酸化チタン、平均粒径:0.25μm
・石原産業社製、商品名:S−305、表面がシリカ、アルミナ及び有機物で被覆された酸化チタン、平均粒径:0.25μm
【0112】
<X線光電子分光法(XPS)による元素存在比の測定>
以下の方法により、上記各酸化チタンの表面の含有元素を、(株)リガク製の蛍光X線分析装置システム3270を用いて、検量線により定量分析した。まず、酸化チタンの粉末試料を錠剤成型器で成型し、成型物を割って一部をカーボンテープに貼り付け、XPS用の試料台に固定した。XPSの測定は、島津/Kratos社製のAXIS−165にて行った。照射X線はAl−Kα線(1.4866keV)を用い、水晶(α構造)の(100)面を用いて単色化した。陰極の電圧値は15kVとし、電流値は測定の種類によって変え、ワイドスキャンの時は3mA、ナロースキャンの時は10mAとした。試料にX線を照射した結果得られる表面からの光電子を検出角度90°で取り出し、そのスペクトル測定を行った。測定範囲はφ120μm、試料表面から10nmの深さまでの範囲である。分解能に相当するパスエネルギ(小さい程分解能が高い)の値は、ワイドスキャン時に160eV、ナロースキャン時に20eVとした。まず、ワイドスキャンを行い、どのような元素が見られるのかを確認した後、O 1s、Ti 2p、C 1s、Si 2p、Al 2pのナロースキャンを行った。O 1s、Ti 2p、C 1s、Si 2p、Al 2pの各ナロースキャンの積算回数はそれぞれ3回、5回、10回、10回、10回である。上記XPSにより酸化チタン表面の構成元素を測定した結果を下記表1に示す。
【0113】
【表1】
【0114】
<光反射用熱硬化性樹脂組成物の作製>
(実施例1〜3及び比較例1〜7)
下記表2に示した各成分を、表2に示した配合量で配合し、ミキサーによって十分混練した後、ミキシングロールにより40℃で15分間溶融混練し、冷却、粉砕を行うことで、実施例1〜3及び比較例1〜8の光反射用熱硬化性樹脂組成物を作製した。なお、表2中の各成分の配合量の単位は質量部である。
【0115】
【表2】
【0116】
表2中の各成分の詳細は以下の通りである。
*1:トリスグリシジルイソシアヌレート(エポキシ当量:100、日産化学社製、商品名:TEPIC−S)
*2:ヘキサヒドロ無水フタル酸(和光純薬工業社製)
*3:テトラ−n−ブチルホスホニウム−o,o−ジエチルホスホロジチエート(日本化学工業社製、商品名:PX−4ET)
*4:溶融シリカ(電気化学工業社製、商品名:FB−950)
*5:溶融シリカ(アドマテックス社製、商品名:SO−25R)
*6:酸化チタン(下記表3参照)
*7:外殻材質硼珪酸ソーダガラス中空粒子(住友3M社製、商品名:S60HS)
【0117】
<光反射用熱硬化性樹脂組成物の評価>
(光反射率の測定)
実施例1〜3及び比較例1〜7で得られた光反射用熱硬化性樹脂組成物を、180℃のホットプレート上で、硬化物厚みが0.1mm±0.05mmとなるよう加圧成形した後、150℃で2時間ポストキュアして、厚み0.1mm±0.05mmのテストピースを作製した。
【0118】
得られたテストピースの光劣化性を、以下の方法で評価した。発光波長460nmの青色LED−PKGを、光出射口が上記テストピースに対向するように設置し、テストピースをホットプレート上で100℃に加熱しながら、青色LED−PKGに電流値150mAで30分間通電させ、光照射を行った。テストピースの変色度合いは、分光測色型(商品名:CM−600d、コニカミノルタ社製)を用いて、波長700nmにおける上記光照射前後のテストピースの光学反射率(光反射率)を測定することで評価した。初期反射率に対する光照射後の反射率の低下率(%)を、下記式:
低下率={(初期反射率−光照射後の反射率)/初期反射率}×100
により求めた。その結果を表3に示す。
【0119】
【表3】
【0120】
<光半導体装置の評価>
(光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いた光半導体装置の作製)
実施例1及び比較例2で得られた光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いて、トランスファー成形により、
図1に示す光半導体素子搭載用基板を作製した。リードフレームとしては、外周が3.0×1.4mmである光半導体装置搭載基板が、リードフレーム1枚当たり360個(15行×24列)成形可能なテスト用リードフレームを使用した。リードフレーム上の光半導体素子搭載領域となる金属配線は、表面をAgめっきした0.2μm厚の銅製リードフレームを用い、1つの光半導体素子搭載領域の陰極及び陽極は1対のパターンとして設計した。トランスファー成形機として、アピックヤマダ社製のCDIM(商品名)を用い、リードフレーム基板上に光反射用熱硬化性樹脂組成物の硬化物(リフレクター)の一括成形を行った。成形条件は、金型温度180℃、クランプ圧力20t、注入圧7MPa、成形時間90秒とした。
【0121】
成形後の光半導体素子搭載用基板の陽極に、光半導体素子(GENELITE社製、商品名:B1023ACGO、発光波長λ=450〜452.5nm)をAgペースト(京セラケミカル社製、商品名:CT220HS)を使用して接続した後、公知のワイヤボンダ装置を使用して金線により光半導体素子と光半導体素子搭載用基板の陰極とを接続した。次いで、光半導体素子搭載領域内に、予め蛍光体(化成オプトニクス社製、商品名:P46−Y3)を分散させた透明封止樹脂(信越化学工業社製、商品名:KJR−9022)を、公知のディスペンサーを用いて充填し、硬化させた。最後に、光半導体素子搭載用基板を公知のダイサーを用いて個片化し、光半導体装置を得た。
【0122】
(光束測定)
作製した光半導体装置の光出力測定は、装置からの発光を積分球ユニットで集光し、石英ファイバーを通じて、多チャンネル型分光光度計(大塚電子社製、商品名:MCPD9800)で検出することにより行った。作製した光半導体装置について、初期の光出力と500時間発光を行った後の光出力とを測定し、初期の光出力に対する500時間発光後の光出力の低下率(%)を求めた。その結果を表4に示す。
【0123】
【表4】
【0124】
表3及び表4に示した結果から明らかなように、実施例1〜3で得られた光反射用熱硬化性樹脂組成物は、いずれも波長700nmでの光反射率の低下が抑制され、変色が少ないことが確認された。これに対して、比較例1〜7で得られた光反射用熱硬化性樹脂組成物は、波長700nmでの光反射率の低下が発生していることが確認された。また、実施例1と比較例2の光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いてLEDパッケージを作製し比較すると、実施例1では特に光束の低下が無く安定して動作していることがわかる。上記の通り、本発明により、光出力の低下を十分に抑制することができる光反射用熱硬化性樹脂組成物を提供することができ、該光反射用熱硬化性樹脂組成物を用いることで、光取り出し効率を向上させた光半導体素子搭載用基板及び光半導体装置を提供することができる。