(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
コヒーレント光を発光する光源を少なくとも一つ含む光源部と、前記光源部が発光した光を変調して画像光を生成する画像光生成部と、前記画像光を投射する投射部とを備える投射型表示装置であって、
前記光源部から発光した光の光路中に、入射する光のうち少なくとも一部の偏光状態を変えて透過する偏光解消素子を有し、
前記偏光解消素子は、特定の形状を有する単位領域が複数個並んで配置され、
前記単位領域は、第1の領域と第2の領域と第3の領域からなり、
前記第1の領域、前記第2の領域および前記第3の領域は、互いに異なる偏光状態の光を透過し、
前記第1の領域、前記第2の領域および前記第3の領域は、長手方向と短手方向を有する一方向に長い領域であって、この順に前記短手方向へ並び、
前記単位領域が、前記短手方向へ並んでいる投射型表示装置。
【発明を実施するための形態】
【0034】
(投射型表示装置の実施形態)
図1(a)、
図1(b)は、本実施形態に係る投射型表示装置の構成を示す模式図である。発光手段であるコヒーレント光を発する光源部として、例えば半導体レーザや固体レーザなど、少なくとも1つのレーザ11から出射された光はコリメータレンズ12によって略平行光となるように集光され、偏光子13を通過する。レーザ11として例えば、半導体レーザは直線偏光の光を出射するが、製造ばらつきや使用環境温度変化等により、その偏光方向にばらつきや時間的変動を有する場合がある。偏光子13は、この光の偏光状態を一定にするためのものであるが、省略することも可能である。偏光子13を通過した光は、後述する各構成の偏光解消素子20によって偏光状態が異なる光を透過させることにより空間的な光干渉性を平均化して出射するものである。偏光解消素子20を透過した散乱光は、集光レンズ14により、画像光生成部である空間光変調器15に集光される。また、レーザ11から出射する光は、ファイバなどを用いて導光されることで散乱される光でもよく、この場合、投射型表示装置10a、10bは、
図1(a)、
図1(b)に示す構成を有するものであってもよいが、コリメータレンズ12、偏光子13を含まない構成としてもよい。
【0035】
偏光解消素子20を通過した光は、集光レンズ14を通過後、均質化されて空間変調器15へ照射される。集光レンズ14としては、例えば、開口数が大きなコンデンサレンズを使用すると、光を効率よく取り込めるので、光利用効率を高くすることができる。空間光変調器15としては、典型的には透過型液晶パネルが使用可能であるが、反射型の液晶パネルやデジタルマイクロミラーデバイス(DMD)などを使用してもよく、透過型の液晶パネルや反射型の液晶パネルを使用する時は、光の利用効率を上げるために偏光解消素子20と空間変調器15と、の間に偏光変換素子を配置してもよい。つまり、この偏光変換素子を透過させることにより、偏光状態を揃えることができ、例えば、偏光依存性のある光学素子を透過または反射させる場合、光の利用効率を高くすることができる。
【0036】
このように空間光変調器15に入射した光束は、画像信号に応じて変調され、投影レンズ16によってスクリーン17などに投影される。なお、光源は、1つのレーザ光源のみを使用する構成であっても、異なる波長の光を出射するレーザ光源を複数配置する構成であっても、コヒーレント性を有さない光源とレーザ光源とを組み合わせて用いる構成であってもよい。また、偏光解消素子20は空間変調素子15と投影レンズ16と、の間の光路中または、投影レンズ16とスクリーン17と、の間の光路中に配置してもよい。
【0037】
また、
図1(b)に示す投射型表示装置10bは、偏光解消素子20を揺動するための揺動制御部21を備えるものであり、それ以外は、
図1(a)に示す投射型表示装置10aと同じ構成を示したものである。具体的に揺動制御部21は、一定の周期で特定の方向に偏光解消素子20を揺動できればよく、モータ、バネ、圧電素子、電磁力を利用したアクチュエータなどの機械的機構を有する。偏光解消素子20を揺動させる方向は、例えば、光軸に対して垂直な面内において1次元方向に繰り返し振動させたり、光軸を中心に回転させたり、または、光軸に対して垂直な面内において円を描くように振動させたりしてもよい。さらに、揺動制御部21は、偏光解消素子20を光軸方向に振動させたり、3次元的に振動させたりする機構が備わっていてもよい。また、振動させる周期としては、人間の目によって追従できなくなる30Hz以上とすることが好ましく、50Hz以上であればより好ましい。なお、偏光解消素子20の具体的な構成と、偏光解消素子20を揺動させる方向との関係については後述する。
【0038】
(投射型表示装置に用いる偏光解消素子の第1の実施形態)
次に、本発明の投射型表示装置に用いる偏光解消素子について説明する。なお、以降説明する各偏光解消素子は、いずれも、投射型表示装置10a、10bの偏光解消素子20の位置、空間変調素子15と投影レンズ16との間の位置、または、投影レンズ16とスクリーン17との間の位置等に備えることができる。
図2(a)は、本実施形態に係る偏光解消素子30の平面模式図を示すものであり、偏光解消素子30は、第1の領域31と第2の領域32からなる単位領域33が、特定の方向に連続的に並んで配置された領域を有する。具体的に、第1の領域31および第2の領域32は長方形の領域を有し、長方形の短辺方向に、複数個の単位領域33が配置される。ここで、配置される個数として、複数個とは、5〜50個が好ましい。5個未満であれば、スペックルノイズの解消効果を十分に発揮することができず、50個を超えると単位領域33の境界で発生する回折により光量のロスが生じ、高い光利用効率が得られなくなるからである。
【0039】
そして、第1の領域31内を透過する光の偏光状態が同一であり、かつ、第2の領域32内を透過する光の偏光状態も同一であるが、これらの領域同士では、透過する光の偏光状態は互いに異なる。なお、単位領域33は、長手方向と短手方向を有して、一方向が長い領域であれば、長方形に限らず、例えば、平行四辺形や台形、その他の多角形や曲面を有する形状であってもよく、単位領域が、短手方向に複数、並ぶように配置される。また、それぞれの偏光状態で透過する光の強度が略同一となるように、第1の領域31と第2の領域32の面積は、略同一であるとよい。なお、各領域を透過する光のストークスベクトルとして、光の強度S
0を省略したが、このS
0は、透過する領域の面積に比例するので、各領域の面積が同一でない場合に、光の強度S
0を考慮してもよく、その場合は、各領域の面積が同一でなくてもよい。以降は、各領域の面積が略同一であるものとして説明する。
【0040】
図2(b)および
図2(c)は、単位領域33のみを拡大した平面模式図であり、とくに、第1の領域31および第2の領域32を透過する光の偏光状態の組み合わせの例、について示したものである。なお、第1の領域31を透過する光の偏光方向を第1の偏光方向、第2の領域32を透過する光の偏光方向を第2の偏光方向とすると、第1の偏光方向と第2の偏光方向は、互いに直交することが好ましい。具体的に、
図2(b)は、第1の偏光方向となる第1の直線偏光の光31aと、第1の偏光方向と直交する第2の偏光方向となる第2の直線偏光の光32aの様子を示す。また、これらは、直線偏光の光の組み合わせに限らず、
図2(c)に示すように、第1の偏光方向となる第1の円偏光の光31bと、第1の円偏光の光31bと直交する、つまり、第1の円偏光の光31bに対して逆回りで、第2の偏光方向となる第2の円偏光の光32bと、の組み合わせであってもよい。
【0041】
また、第1の領域31を透過する光の偏光状態と、第2の領域32を透過する光の偏光状態の組み合わせについて、ストークスパラメータSを用いて、以下のように考えることができる。まず、ストークスパラメータSは、通常(S
0、S
1、S
2、S
3)の4次元ベクトルで表すことができる。そして、光の進行方向をZ軸方向とし、Z軸方向に垂直なX−Y面を与え、S
0は光の強度、S
1は例えばX軸方向を基準に0°方向に振動する電場の強度、S
2はX軸方向を基準に45°方向に振動する電場の強度、そしてS
3は円偏光の強さを意味するものである。以降、ストークスパラメータSは光の強度S
0を省略して(S
1,S
2,S
3)の3次元ベクトルとして説明をする。
【0042】
ここで、第1の領域31を透過する光の偏光状態をストークスパラメータS(1)とし、S(1)=(S
11,S
21,S
31)で表し、第2の領域32を透過する光の偏光状態をストークスパラメータS(2)とし、S(2)=(S
12,S
22,S
32)で表す。そして、偏光解消素子30が、
図2(b)に示す偏光状態の組み合わせである場合、第1の直線偏光の光31aが、S(1)=(1,0,0)であり、第2の直線偏光の光32aが、S(2)=(−1,0,0)という関係となる。また、偏光解消素子30が、
図2(c)に示す偏光状態の組み合わせである場合、第1の円偏光の光31bが、S(1)=(0,0,1)であり、第2の円偏光の光32bが、S(2)=(0,0,−1)という関係となる。
【0043】
また、
図3は、偏光状態を表わすポワンカレ球であって、第1の領域31を透過する光の偏光状態と、第2の領域32を透過する光の偏光状態との関係について、このポワンカレ球を用いて考えることができる。ここで、ポワンカレ球の中心点Cを基準として各ストークスパラメータの位置へ向かうベクトルをストークスベクトルとする。このとき、ポワンカレ球において、まず、第1の直線偏光の光31aのストークスベクトルは、S
1軸上にプラス方向である一方、第2の直線偏光の光32aのストークスベクトルは、S
1軸上にマイナス方向である。そして、第1の円偏光の光31bのストークスベクトルは、S
3軸上にプラス方向である一方、第2の円偏光の光32bのストークスベクトルは、S
3軸上にマイナス方向である。
【0044】
ここで、第1の領域31を透過する光のストークスベクトルと、第2の領域32を透過する光のストークスベクトルと、の関係を考えると、いずれの場合も、これらのベクトルを合成するとゼロとなる。ここでは、第1の領域31を透過する光と第2の領域32を透過する光を、直線偏光の光または円偏光の光同士の組合せとしたが、これに限らず、これらの光の偏光状態を表わすストークスベクトルが互いに打ち消す関係であれば、例えば、楕円偏光の光同士であってもよい。なお、後述する他の偏光解消素子についても、単位領域を透過する光の偏光状態の関係を、ポワンカレ球を用いて説明することができる。
【0045】
次に、
図2(b)、
図2(c)に示す各偏光状態の光を透過する単位領域33の具体的な構成について説明する。まず、
図4(a)、
図4(b)は、
図2(b)のA−A´に沿って得られる断面模式図の例を示したものである。偏光解消素子30は、透明基板33a上に複屈折性材料からなる複屈折性材料層34を有し、
図4(a)、
図4(b)において、複屈折性材料層34は、第1の領域31のみに形成されている。また、
図4(b)に示すように、例えば、複屈折性材料層34により形成される凹凸を充填平坦化する、等方性透明材料からなる充填材料層35を有し、透明基板33bを、透明基板33aと対向させて一体化する構成であってもよい。
【0046】
また、透明基板33a、33bは、入射する光に対して透明であれば、樹脂板、樹脂フィルムなど種々の材料を用いることができるが、ガラスや石英ガラスなどの光学的等方性材料を用いると、透過光に複屈折性の影響を与えないため好ましい。また、透明基板33a、33bは、例えば、空気との界面に、多層膜による反射防止膜を備えると、フレネル反射による光反射損失を低減できる。また、複屈折性材料としては、水晶やLiNbO
3などの複屈折性結晶や、例えばポリカーボネートなどの有機フィルムを延伸させた複屈折性フィルムや、複屈折性を有する液晶モノマーを一方向に配向させるかまたは、ツイスト配向させた後に重合固化させた高分子液晶を用いることができる。
【0047】
また、複屈折性材料層としては、この他に、微細な凸凹状の格子形状により発生する構造複屈折または、凹凸上の格子形状の上に光学多層膜を積層してなるフォトニック結晶などを用いることができる。なお、構造複屈折、フォトニック結晶などを用いる場合、光学軸は、微細な凸凹状の格子形状の長手方向と、その長手方向と直交する方向に相当する。また、透明基板33aと複屈折性材料層34との間に図示しない配向膜が備わっていてもよく、ラビング処理された配向膜や紫外線などの光で配向方向を制御できる光配向膜、SiO
2などを斜方蒸着した配向膜や微細な溝構造により配向方向を制御する配向膜などを用いることができる。なお、以降の偏光解消素子に係る実施形態においても、とくに説明がない場合、透明基板や複屈折性材料として上記の材料を同様に用いることができる。
【0048】
次に、複屈折性材料層34の具体的構成について説明する。まず、偏光解消素子30に入射し透過する光の方向をZ方向とし、透明基板33a面をX−Y平面として考える。また、複屈折性材料層34を構成する複屈折性材料の光学軸の方向が、X−Y平面において、X軸に対して45度をなす方向に揃っているものとする。なお、光学軸は、遅相軸または進相軸を意味する。ここで、入射する波長λの光に対する、複屈折性材料の常光屈折率をn
o、異常光屈折率をn
eとすると、複屈折性材料層34の厚さdは、mを自然数として、(2m−1)λ/(2×|n
e−n
o|)に略等しい値に設定し、1/2波長板として機能させるとよい。とくに、m=1とすると、dを小さくできるとともに、波長λが所定の値より変動する場合でも、所定の偏光状態から大きく変動せず、位相差の波長依存性が安定するので好ましい。以降、|n
e−n
o|は、屈折率異方性Δnと表現する。
【0049】
そして、入射する光をY方向の直線偏光の光とするとき、第1の領域31に入射する光は、1/2波長板の機能を有する複屈折性材料層34を透過してX方向の直線偏光の光となる。一方、第2の領域32に入射する光は、偏光状態を変えずに透過するので、Y方向の直線偏光の光のままである。これより、偏光解消素子30に入射する光は、偏光状態が互いに直交する直線偏光の光が交互に並ぶような偏光状態で透過するので、スペックルノイズを低減することができる。なお、入射する光の偏光状態は、これに限らず、Y方向以外の直線偏光の光であったり、楕円偏光の光であったり、円偏光の光であったりしてもよい。いずれの偏光状態の光が入射した場合でも、透過する光の偏光状態を表わすストークスベクトルを合成したときに略ゼロになればよい。なお、後述する各実施形態については、入射する光の偏光状態はいずれも、Y方向の直線偏光の光として説明する。
【0050】
また、第2の領域32には複屈折性材料層を有しないとしたが、これに限らない。例えば、遅相軸がツイストしないものとして、第1の領域31および第2の領域32の両方に複屈折性材料層を有し、このうち、第1の領域31の厚さが、λ/(2×Δn)、第2の領域32の厚さが、λ/Δnの関係であっても、各領域を透過する光の偏光状態は
図2(b)に示すように、第1の直線偏光の光31aと第2の直線偏光の光32aとの関係となる。さらに、第1の領域31の複屈折性材料層34は1/2波長板の機能を有する構成に限らず、遅相軸が光軸方向を軸に厚さ方向に90度ツイストして配向され、旋光子としての機能を有するものであってもよい。
【0051】
次に、
図2(c)に示す偏光状態の関係となる偏光解消素子30の具体的構成について説明する。ここで、
図5(a)、
図5(b)および
図5(c)は、
図2(c)のB−B´に沿って得られる断面模式図の例を示したものである。偏光解消素子30は、第1の領域31に複屈折性材料からなる複屈折性材料層36を有し、第2の領域32に複屈折性材料からなる複屈折性材料層37を有する。なお、X,Y,Z方向は、
図4(a)、
図4(b)で示す方向と同じものとする。
【0052】
まず、
図5(a)の構成について説明する。
図5(a)の構成に基づく偏光解消素子30は、第1の領域31に複屈折性材料層36、第2の領域32に複屈折性材料層37を有し、これらを構成する複屈折性材料は同じ材料、同じ厚さを有するが、X−Y平面において、例えば、複屈折性材料層36の遅相軸の方向が、X軸に対して45度をなす方向に揃っている場合、複屈折性材料層37の遅相軸の方向が、X軸に対して−45度をなす方向に揃っているものとする。このとき、複屈折性材料層36、37の厚さdは、mを自然数として、(4m−3)λ/(4×Δn)に略等しい値に設定し、1/4波長板として機能させるとよい。また、例えば、複屈折性材料層36、37上に、図示しない充填材料層、透明基板を有して一体化する構成であってもよい。また、上記と同様の理由により、m=1であることが好ましい。
【0053】
また、
図5(b)の構成に基づく偏光解消素子30は、第1の領域31に複屈折性材料層36、第2の領域32に複屈折性材料層37を有し、これらを構成する複屈折性材料は同じ材料で、遅相軸の方向もX−Y平面において、X軸方向に対して45度をなす同じ方向に揃っているが、厚さが異なるものとする。具体的に、m、pを自然数として、複屈折性材料層36の厚さd
1は、(4m−3)λ/(4×Δn)に略等しい値に設定され、複屈折性材料層37の厚さd
2は、(4p−1)λ/(4×Δn)に略等しい値に設定されて、1/4波長板として機能させるとよい。また、例えば、複屈折性材料層36、37上に、図示しない充填材料層を充填平坦化して、透明基板を有して一体化する構成であってもよい。また、この場合も、上記と同様の理由により、m=1、p=1であることが好ましい。
【0054】
また、
図5(c)の構成に基づく偏光解消素子30は、透明基板33a上の第1の領域31のみに複屈折性材料層36を有し、透明基板33b上の第2の領域32のみに複屈折性材料層37を有する。そして、複屈折性材料層36、複屈折性材料層37によってできる凹凸を、充填材料層38により充填平坦化して一体化される。これらを構成する複屈折性材料は同じ材料、同じ厚さを有するが、X−Y平面において、例えば、複屈折性材料層36の遅相軸の方向が、X軸に対して45度をなす方向に揃っている場合、複屈折性材料層37の遅相軸の方向が、X軸に対して−45度をなす方向に揃っているものとする。このとき、複屈折性材料層36、37の厚さdは、mを自然数として、(4m−3)λ/(4×Δn)に略等しい値に設定し、1/4波長板として機能させるとよい。また、この場合も、上記と同様の理由により、m=1であることが好ましい。
【0055】
そして、
図5(a)、
図5(b)および
図5(c)の構成に基づく偏光解消素子30に入射する光をY方向の直線偏光の光とするとき、第1の領域31に入射する光は、1/4波長板の機能を有する複屈折性材料層36を透過して、第1の円偏光31bとして、例えば右回りの円偏光の光31bとなる。一方、第2の領域32に入射する光は、1/4波長板の機能を有する複屈折性材料層37を透過して、第2の円偏光32bとして、この場合、左回りの円偏光の光32bとなる。これより、偏光解消素子30に入射する光は、偏光状態が互いに直交する偏光の光、この場合、右回りの円偏光の光と左回りの円偏光の光と、が交互に並ぶような偏光状態で透過するので、スペックルノイズを低減することができる。
【0056】
また、本実施形態に係る偏光解消素子30は、透過する、第1の偏光方向と第2の偏光方向とは、互いに直交することが好ましい、として、直線偏光の光、円偏光の光を例に挙げたが、これに限らない。この他に、前述のように、
図3に示すポワンカレ球に基づき、単位領域33を透過する、これら2種類の偏光状態が、ストークスベクトルを打ち消す関係にあれば、第1の偏光方向と第2の偏光方向とが、互いに直交する楕円偏光の光であってもよく、この場合、複屈折性材料層の厚さを調整して、厚さと屈折率異方性Δnとの積で表されるリタデーション値を調整するとよい。
【0057】
また、本実施形態に係る偏光解消素子30を、投射型表示装置10bの偏光解消素子20として用いる場合、揺動制御部21は、単位領域33の長手方向とは異なる方向に振動するとよく、とくに、長手方向と直交する方向に振動させることが好ましい。このように、揺動制御部21で振動制御させることで、透過する光の偏光状態を空間的に変えるだけでなく、時間的にも変えることができるので、スペックルノイズを大きく低減することができる。
【0058】
(投射型表示装置に用いる偏光解消素子の第2の実施形態)
図6(a)は、本実施形態に係る偏光解消素子40の平面模式図を示すものであり、偏光解消素子40は、第1の領域41と第2の領域42からなる単位領域43が、2次元的に複数個、好ましくは、偏光解消素子の第1の実施形態と同じ理由で、5〜50個、連続して配置された領域を有する。具体的に、第1の領域41および第2の領域42はそれぞれ、正方形の領域を有し、単位領域43は、2つの第1の領域41と、2つの第2の領域42とが隣接して交互に配置された、いわゆる市松模様をなして、正方形の領域を有する。なお、第1の領域41および第2の領域42は、正方形に限らず、長方形や平行四辺形、多角形などの領域を与えることもできる。
【0059】
そして、第1の領域41内を透過する光の偏光状態が同一であり、かつ、第2の領域42内を透過する光の偏光状態も同一であるが、これらの領域同士では、透過する光の偏光状態は互いに異なる。また、それぞれの偏光状態で透過する光の強度が略同一となるように、第1の領域41と第2の領域42の面積は、略同一であるとよい。なお、各領域を透過する光のストークスベクトルとして、光の強度S
0を省略したが、このS
0は、透過する領域の面積に比例するので、各領域の面積が同一でない場合に、光の強度S
0を考慮してもよく、その場合は、各領域の面積が同一でなくてもよい。以降は、各領域の面積が略同一であるものとして説明する。
【0060】
図6(b)および
図6(c)は、単位領域43のみを拡大した平面模式図を示すものであり、とくに、第1の領域41および第2の領域42を透過する光の偏光状態の組み合わせの例、について示したものである。なお、第1の領域41を透過する光の偏光方向を第1の偏光方向、第2の領域42を透過する光の偏光方向を第2の偏光方向とすると、第1の偏光方向と第2の偏光方向は、互いに直交することが好ましい。具体的に、
図6(b)は、第1の偏光方向となる第1の直線偏光の光41aと、第2の偏光方向となる第2の直線偏光の光42aの様子を示したものである。また、直線偏光の光の組み合わせに限らず、
図6(c)に示すように、第1の偏光方向となる第1の円偏光の光41bと、第1の円偏光に対して逆回りの、第2の偏光方向となる第2の円偏光の光42bと、の組み合わせであってもよい。さらに、これらの光の偏光状態の組み合わせは、
図3に示すポワンカレ球を用いて、ストークスベクトルが互いに打ち消す関係であれば、例えば、楕円偏光の光同士であってもよい。
【0061】
次に、
図6(b)、
図6(c)に示す各偏光状態の光を透過する単位領域43の具体的な構成について説明する。まず、
図7(a)は、
図6(b)のC−C´に沿って得られる断面模式図の例を示したものである。偏光解消素子40は、透明基板43a上に複屈折性材料からなる複屈折性材料層44を有し、
図7(a)の複屈折性材料層44は、第1の領域41のみに形成されている。また、透明基板43aと複屈折性材料層44との間に図示しない配向膜が備わっていてもよい。複屈折性材料層44は、偏光解消素子の第1の実施形態における複屈折性材料層34と同様に、1/2波長板の機能を有する厚さ(リタデーション値)に設定されていてもよく、遅相軸が90度ツイストされて配向されていてもよい。なお、X,Y,Z方向は、
図7(b)も含め、
図4(a)、
図4(b)で示す方向と同じものとする。
【0062】
また、偏光解消素子40は、
図7(a)の構成にさらに、複屈折性材料層44により形成される凹凸を充填平坦化する、図示しない充填材料層を有したり、さらに、透明基板43aと対向する、図示しない透明基板を有したりしてもよい。また、偏光解消素子40は、第2の領域42にも、図示しない複屈折性材料層を有し、第1の領域41におけるリタデーション値と、第2の領域42におけるリタデーション値とが異なるように、複屈折性材料層の厚さが調整された構成を有するものであってもよい。なお、
図6(b)において、左から第2の領域42、第1の領域41と並んでいる部分の(断面)構成は図示してないが、例えば、
図7(a)において、第1の領域41と第2の領域42と、が入れ替わった構成として考えることができる。
【0063】
そして、入射する光をY方向の直線偏光の光とするとき、第1の領域41に入射する光は、複屈折性材料層44を透過してX方向の直線偏光の光41aとなる。一方、第2の領域42に入射する光は、偏光状態を変えずに透過するので、Y方向の直線偏光の光42aのままである。これより、偏光解消素子40に入射する光は、偏光状態が互いに直交する直線偏光の光が交互に2次元的に並ぶような偏光状態で透過するので、スペックルノイズを低減することができる。
【0064】
また、
図7(b)は、
図6(c)のD−D´に沿って得られる断面模式図の例を示したものである。偏光解消素子40は、第1の領域41に複屈折性材料からなる複屈折性材料層45を有し、第2の領域42に複屈折性材料からなる複屈折性材料層46を有する。そして、例えば、これらを構成する複屈折性材料は同じ材料で、遅相軸の方向もX−Y平面において、X軸方向に対して45度をなす同じ方向に揃っているが、厚さが異なるものとする。具体的に、m、pを自然数として、複屈折性材料層45の厚さd
1は、(4m−3)λ/(4×Δn)に略等しい値に設定し、複屈折性材料層46の厚さd
2は、(4p−1)λ/(4×Δn)に略等しい値に設定し、1/4波長板として機能させるとよい。また、例えば、複屈折性材料層45、46上に、充填材料層を充填平坦化して、透明基板を有して一体化する構成であってもよい。また、この場合も、偏光解消素子の第1の実施形態(
図5(b)に基づく)と同様の理由により、m=1、p=1であることが好ましい。
【0065】
また、偏光解消素子40は、偏光解消素子の第1の実施形態の
図5(a)、
図5(c)と同様に、第2の領域42に、複屈折性材料層45と同じ材料、同じ厚さで、遅相軸が直交する複屈折性材料層を有する構成でもよく、この場合も、さらに図示しない充填材料層および対向する透明基板を有して一体化する構成であってもよい。なお、
図6(c)において、左から第2の領域42、第1の領域41と並んでいる部分の(断面)構成は図示してないが、例えば、
図7(b)において、第1の領域41と第2の領域42と、が入れ替わった構成として与えることができる。
【0066】
そして、入射する光をY方向の直線偏光の光とするとき、第1の領域41に入射する光は、複屈折性材料層45を透過して右回りの円偏光の光41bとなる。一方、第2の領域42に入射する光は、複屈折性材料層46を透過して左回りの円偏光の光42bとなる。これより、偏光解消素子40に入射する光は、偏光状態が互いに直交する円偏光の光が交互に2次元的に並ぶような偏光状態で透過するので、スペックルノイズを低減することができる。
【0067】
また、本実施形態に係る偏光解消素子40を、投射型表示装置10bの偏光解消素子20として用いる場合、揺動制御部21は、少なくとも光軸と交差する2次元方向に振動させることが好ましく、回転振動や軌道が円を描くように振動するように制御するとよい。このように、揺動制御部21で振動制御させることで、透過する光の偏光状態を空間的に変えるだけでなく、時間的にも変えることができるので、スペックルノイズを大きく低減することができる。
【0068】
(投射型表示装置に用いる偏光解消素子の第3の実施形態)
前述した偏光解消素子の第1、第2の実施形態では、透過する光の偏光状態が互いに異なる第1の領域と第2の領域により単位領域が構成されるものについて説明した。偏光解消素子の第3の実施形態では、第1の領域、第2の領域および第3の領域により単位領域が構成される偏光解消素子について説明する。
図8(a)、
図8(b)はそれぞれ、本実施形態に係る偏光解消素子50a、50bの平面模式図を示すものであり、第1の領域51、第2の領域52および第3の領域53から構成される。また、第1の領域51内を透過する光の偏光状態が同一であり、かつ、第2の領域52内を透過する光の偏光状態も同一であり、さらに、第3の領域53内を透過する光の偏光状態も同一であるが、これらの領域同士では、透過する光の偏光状態は互いに異なる。
【0069】
図8(a)に示す偏光解消素子50aは、第1の領域51、第2の領域52および第3の領域53が長方形の領域を有し、長方形の短辺方向に、複数個、好ましくは、偏光解消素子の第1の実施形態と同じ理由で、5〜50個の単位領域54aが連続して配置される。なお、単位領域54aは、長手方向と短手方向を有して、一方向が長い領域であれば、長方形に限らず、例えば、平行四辺形や台形、その他の多角形や曲面を有する形状であってもよく、単位領域が、短手方向に複数、並ぶように配置される。
【0070】
また、
図8(b)に示す偏光解消素子50bは、第1の領域51、第2の領域52および第3の領域53が正方形の領域を有し、第2の領域52と第3の領域53が隣接してできた長方形の長辺と、第1の領域51の一辺と、が隣接してできる単位領域54bが、複数個、好ましくは5〜50個、2次元的に配列されて構成される。また、単位領域54bは、第1の領域51の一辺の線分の中心が、第2の領域52と第3の領域53とが接する位置と一致するように配置するとよい。なお、単位領域54bの配列は、その単位領域54bとなる多角形が180度回転して交互に配置される場合も含める。また、
図8(b)に示す偏光解消素子50bは、第1の領域51、第2の領域52および第3の領域53が正方形でそれぞれ2個ずつ有してできる、多角形の単位領域54cが、複数個、2次元的に配列されて構成される、と考えることもできる。
【0071】
また、単位領域54a、54bおよび54cにおける、第1の領域51の面積、第2の領域52の面積、第3の領域53の面積は、それぞれの偏光状態で透過する光の強度が略同一となるように、略同一であるとよいが、これに限らない。例えば、単位領域の中の、各領域を透過する光のストークスベクトルとして、光の強度S
0はストークスベクトルの大きさを表すが、このS
0は、透過する領域の面積に比例するので、各領域の面積が同一でない場合に、光の強度S
0を考慮してもよい。つまり、第1の領域51、第2の領域52、第3の領域53の面積が同一でない場合には各領域のストークスベクトルの大きさは異なるが、例えば、面積の広い領域の光のストークスベクトルを打ち消すように、他の領域を透過する面積および/または偏光状態を調整するようにし、各領域のストークスベクトルの合成がゼロとなるように偏光解消素子50a、50bを構成することで、同レベルの偏光解消性を得ることができる。なお、他の偏光解消素子において、単位領域に含まれる領域が3を超える場合も、同様に、光の強度S
0を考慮することができるが、とくに、記載がない場合、単位領域に含まれる各領域の面積は略同一であるものとして説明する。
【0072】
図8(c)および
図8(d)は、単位領域54aのみを拡大した平面模式図を示すものであり、とくに、第1の領域51、第2の領域52および第3の領域53を透過する光の偏光状態の組み合わせの例、について示したものである。また、単位領域の形状は異なるが、
図8(c)および
図8(d)に示す、透過する光の偏光状態は、
図8(b)の偏光解消素子50bの単位領域54bまたは単位領域54c内の各領域を透過する光の偏光状態として考えることもできる。
【0073】
具体的に、
図8(c)は、第1の偏光方向となる第1の直線偏光の光51a、第2の偏光方向となる第2の直線偏光の光52a、そして、第3の偏光方向となる第3の直線偏光の光53aの様子を示したものである。そして、これら3種類の直線偏光の光の偏光方向が互いに約120度の角度をなす関係にある。また、このように、これら3種類の偏光状態の光はいずれも、直線偏光の光の組み合わせに限らず、
図8(d)に示すように、第1の偏光方向となる(第1の)直線偏光の光51bと、第1の楕円偏光の光52bと、第2の楕円偏光の光53bと、の組み合わせであってもよい。この場合も、
図3に示すポワンカレ球に基づいて、第1の領域51、第2の領域52、第3の領域53を透過する光の各ストークスベクトルを合成すると、略ゼロとなる関係にあるようにすると好ましい。
【0074】
また、
図9(a)および
図9(b)は、
図8(a)のD−D´に沿って得られる断面模式図の例を示したものである。偏光解消素子50aは、透明基板55a上において、第2の領域52に複屈折性材料からなる複屈折性材料層56を有し、第3の領域53に複屈折性材料からなる複屈折性材料層57を有する。なお、X,Y,Z方向は、
図9(b)も含め、
図4(a)、
図4(b)で示す方向と同じものとする。また、ここでは、偏光解消素子50bの断面模式図は示さないが、配列は異なるものの、偏光解消素子50aにおける、第1の領域51、第2の領域52および第3の領域53と同じものと考える。
【0075】
まず、
図9(a)の構成について説明する。
図9(a)の構成に基づく偏光解消素子50aは、透明基板55a上に、第2の領域52に複屈折性材料層56、第3の領域53に複屈折性材料層57を有する。また、透明基板55aと複屈折性材料層56、57との間に図示しない配向膜が備わっていてもよい。そして、これらを構成する複屈折性材料は同じ材料、同じ厚さを有するが、X−Y平面において、例えば、複屈折性材料層56の遅相軸の方向が、X軸に対して−30度または60度をなす方向に揃い、複屈折性材料層57の遅相軸の方向が、X軸に対して30度または−60度をなす方向に揃っているものとする。このとき、複屈折性材料層56、57の厚さdは、mを自然数として、(2m−1)λ/(2×Δn)に略等しい値に設定し、1/2波長板として機能させるとよい。また、例えば、複屈折性材料層56、57上に、図示しない充填材料層、透明基板を有して一体化する構成であってもよい。また、上記と同様の理由により、m=1であることが好ましい。なお、
図9(a)に示す、第2の領域52、第3の領域53を透過する光の偏光状態は、互いに異なる直線偏光として便宜的に示したものである。
【0076】
そして、入射する光をY方向の直線偏光の光とするとき、第1の領域51に入射する光は、偏光状態を変えずに透過するので、Y方向の直線偏光の光51aのままである。一方、第2の領域52に入射する光は、1/2波長板の機能を有する複屈折性材料層56を透過してX軸に対して30度の角度をなす直線偏光の光52aとなり、第3の領域53に入射する光は、1/2波長板の機能を有する複屈折性材料層57を透過してX軸に対して−30度の角度をなす直線偏光の光53aとなる。これより、偏光解消素子50aに入射する光は、隣り合う領域を透過する直線偏光の光が互いに120度の角度をなすような偏光状態で透過するので、スペックルノイズを低減することができる。
【0077】
また、第1の領域51には複屈折性材料層を有しないとしたが、これに限らない。例えば、遅相軸がツイストしないものとして、第1の領域51にも複屈折性材料層56を有し、このうち、第1の領域51の厚さが、λ/(Δn)、第2の領域52の厚さが、λ/(2×Δn)の関係であっても、各領域を透過する光の偏光状態は
図8(c)に示すような関係となる。さらに、第2の領域52の複屈折性材料層56および第3の領域53の複屈折性材料層57は1/2波長板の機能を有する構成に限らず、遅相軸が光軸方向を軸に厚さ方向に+30度、−30度ツイストして配向される旋光子の機能を有するものであってもよい。
【0078】
次に、
図8(d)に示す偏光状態となる
図9(b)の構成について説明する。
図9(b)の構成に基づく偏光解消素子50aは、透明基板55a上において、第2の領域52に複屈折性材料層58、第3の領域53に複屈折性材料層59を有し、これらを構成する複屈折性材料は同じ材料で、遅相軸の方向もX−Y平面において、X軸方向に対して例えば、45度をなす同じ方向に揃っているが、厚さが異なるものとする。また、透明基板55aと複屈折性材料層58、59との間に図示しない配向膜が備わっていてもよい。そして、これらの複屈折性材料層の厚さを調整して、第1の楕円偏光の光52b、第2の楕円偏光の光53bそれぞれの楕円偏光の偏光状態を調整し、
図3に示すポワンカレ球に基づいて、これらの領域を透過する光の各ストークスベクトルを合成すると、略ゼロとなる関係にあるようにすると好ましい。また、偏光解消素子50a、50bは、例えば、複屈折性材料層58、59上に、充填材料層、透明基板を有して一体化する構成成であってもよい。なお、
図9(b)に示す、第2の領域52、第3の領域53を透過する光の偏光状態は、互いに異なる楕円偏光として便宜的に示したものである。
【0079】
また、本実施形態に係る偏光解消素子50aを、投射型表示装置10bの偏光解消素子20として用いる場合、揺動制御部21は、単位領域54aの長手方向とは異なる方向に振動するとよく、とくに、長手方向と直交する方向に振動させることが好ましい。また、偏光解消素子50bを、投射型表示装置10bの偏光解消素子20として用いる場合、揺動制御部21は、少なくとも光軸と交差する2次元方向に振動させることが好ましく、回転振動や軌道が円を描くように振動するように制御するとよい。このように、揺動制御部21で振動制御させることで、透過する光の偏光状態を空間的に変えるだけでなく、時間的にも変えることができるので、スペックルノイズを大きく低減することができる。
【0080】
(投射型表示装置に用いる偏光解消素子の第4の実施形態)
前述した偏光解消素子の第3の実施形態では、透過する光の偏光状態が互いに異なる第1の領域、第2の領域および第3の領域により単位領域が構成されるものについて説明した。偏光解消素子の第4の実施形態では、第1の領域、第2の領域、第3の領域および第4の領域により単位領域が構成される偏光解消素子について説明する。
図10(a)は、本実施形態に係る偏光解消素子60の平面模式図を示すものであり、第1の領域61、第2の領域62、第3の領域63および第4の領域64から構成される。また、第1の領域61内を透過する光の偏光状態が同一であり、かつ、第2の領域62内を透過する光の偏光状態も同一であり、かつ、第3の領域63内を透過する光の偏光状態も同一であり、さらに、第4の領域64内を透過する光の偏光状態も同一であるが、これらの領域同士では、透過する光の偏光状態は互いに異なる。
【0081】
図10(a)に示す偏光解消素子60は、いずれも正方形の領域を有する、第1の領域61、第2の領域62、第3の領域63および第4の領域64により構成される、正方形の単位領域65が、2次元的に複数個、好ましくは、偏光解消素子の第1の実施形態と同じ理由で、5〜50個が、連続して配置された領域を有する。なお、これらの4つの領域は、正方形に限らず、長方形などの領域を与えることもできる。
図10(b)および
図10(c)は、単位領域65みを拡大した平面模式図を示すものであり、とくに、第1の領域61、第2の領域62、第3の領域63および第4の領域64を透過する光の偏光状態の組み合わせの例、について示したものである。
【0082】
ここで、具体的に、
図10(b)は、第1の偏光方向となる第1の直線偏光の光61aと、第2の偏光方向となる第2の直線偏光の光62aと、第3の偏光方向となる第3の直線偏光の光63aと、第4の偏光方向となる第4の直線偏光の光64aの様子を示したものである。また、直線偏光の光の組み合わせに限らず、
図10(c)に示すように、第1の偏光方向となる第1の直線偏光の光61bと、第2の偏光方向となる第1の円偏光の光62bと、第3の偏光方向となる第2の円偏光の光63bと、第4の偏光方向となる第2の直線偏光の光64bと、の組み合わせであってもよい。さらに、これらの光の偏光状態を表わすストークスベクトルが互いに打ち消す関係であれば、例えば、楕円偏光の光が含まれてもよい。
【0083】
次に、
図10(b)、
図10(c)に示す各偏光状態の光を透過する単位領域65の具体的な構成について説明する。まず、
図11(a)および
図11(b)は、それぞれ、
図10(b)のE
1−E
1´およびE
2−E
2´に沿って得られる断面模式図の例を示したものである。偏光解消素子60は、透明基板66a上に複屈折性材料からなる複屈折性材料層67、複屈折性材料層68および複屈折性材料層69を有する。また、透明基板66aと複屈折性材料層67、68、69との間に図示しない配向膜が備わっていてもよい。そして、これらを構成する複屈折性材料は同じ材料、同じ厚さを有するが、X−Y平面において、例えば、複屈折性材料層67の遅相軸の方向が、X軸に対して22.5度または−67.5度をなす方向に揃い、複屈折性材料層68の遅相軸の方向が、X軸に対して−22.5度または67.5度をなす方向に揃い、さらに、複屈折性材料層69の遅相軸の方向が、X軸に対して45度または−45度をなす方向に揃っているものとする。なお、X,Y,Z方向は、
図11(c)、
図11(d)も含め、
図4(a)、
図4(b)で示す方向と同じものとする。
【0084】
このとき、複屈折性材料層67、68、69の厚さdは、mを自然数として、(2m−1)λ/(2×Δn)に略等しい値に設定し、1/2波長板として機能させるとよい。また、例えば、複屈折性材料層67、68、69上に、充填材料層、透明基板を有して一体化する構成であってもよい。また、上記と同様の理由により、m=1であることが好ましい。なお、
図11(a)、
図11(b)に示す、第2の領域62、第3の領域63を透過する光の偏光状態は、互いに異なる直線偏光として便宜的に示したものである。
【0085】
そして、入射する光をY方向の直線偏光の光とするとき、第1の領域61に入射する光は、偏光状態を変えずに透過するので、Y方向の直線偏光の光61aのままである。一方、第2の領域62に入射する光は、1/2波長板の機能を有する複屈折性材料層67を透過してX軸に対して−45度の角度をなす直線偏光の光62aとなり、第3の領域63に入射する光は、1/2波長板の機能を有する複屈折性材料層68を透過してX軸に対して45度の角度をなす直線偏光の光63aとなり、さらに、第4の領域64に入射する光は、1/2波長板の機能を有する複屈折性材料層69を透過してX軸方向の直線偏光の光64aとなる。これより、偏光解消素子60に入射する光は、隣り合う領域を透過する直線偏光の光が互いに45度の角度をなす直線偏光の光として透過するので、スペックルノイズを低減することができる。
【0086】
また、このとき、第1の直線偏光の光61aのストークスパラメータS(1)は、S(1)=(−1,0,0)、第2の直線偏光の光62aのストークスパラメータS(2)は、S(2)=(0,−1,0)となる。そして、第3の直線偏光の光63aのストークスパラメータS(3)は、S(3)=(0,1,0)、第4の直線偏光の光64aのストークスパラメータS(4)は、S(4)=(1,0,0)となる。これらのストークスパラメータより、
図3のポワンカレ球を用いて、各領域を透過する光のストークスベクトルを合成すると略ゼロの関係となる。
【0087】
次に、
図11(c)および
図11(d)は、それぞれ、
図10(c)のF
1−F
1´およびF
2−F
2´に沿って得られる断面模式図の例を示したものである。偏光解消素子60は、透明基板66a上に複屈折性材料からなる複屈折性材料層71、複屈折性材料層72および複屈折性材料層73を有する。また、透明基板66aと複屈折性材料層71、72、73との間に図示しない配向膜が備わっていてもよい。そして、これらを構成する複屈折性材料は同じ材料で、遅相軸の方向もX−Y平面において、X軸方向に対して例えば、45度をなす同じ方向に揃っているが、厚さが異なるものとする。
【0088】
具体的に、m、p、qを自然数として、複屈折性材料層71の厚さd
2は、(4m−3)λ/(4×Δn)に略等しい値に設定し、複屈折性材料層72の厚さd
3は、(4p−1)λ/(4×Δn)に略等しい値に設定し、1/4波長板として機能させ、複屈折性材料層72の厚さd
3は、(2q−1)λ/(2×Δn)に略等しい値に設定し、1/2波長板として機能させるとよい。また、例えば、複屈折性材料層71、72、73上に、充填材料層を充填平坦化して、透明基板を有して一体化する構成であってもよい。また、この場合も、偏光解消素子の第1の実施形態(
図5(b)に基づく)と同様の理由により、m=1、p=1、q=1であることが好ましい。
【0089】
そして、入射する光をY方向の直線偏光の光とするとき、第1の領域61に入射する光は、偏光状態を変えずに透過するので、Y方向の直線偏光の光61bのままである。一方、第2の領域62に入射する光は、1/4波長板の機能を有する複屈折性材料層71を透過して右回りの円偏光の光62bとなり、第3の領域63に入射する光は、1/4波長板の機能を有する複屈折性材料層72を透過して左回りの円偏光の光63bとなり、さらに、第4の領域64に入射する光は、1/2波長板の機能を有する複屈折性材料層73を透過してX軸方向の直線偏光の光64bとなる。これより、偏光解消素子60に入射する光は、隣り合う領域を透過する光の偏光状態が互いに異なる光として透過するので、スペックルノイズを低減することができる。
【0090】
また、このとき、第1の直線偏光の光61bのストークスパラメータS(1)は、S(1)=(−1,0,0)、第1の円偏光の光62bのストークスパラメータS(2)は、S(2)=(0,0,1)となる。そして、第2の円偏光の光63bのストークスパラメータS(3)は、S(3)=(0,0,−1)、第2の直線偏光の光64bのストークスパラメータS(4)は、S(4)=(1,0,0)となる。これらのストークスパラメータより、
図3のポワンカレ球を用いて、各領域を透過する光のストークスベクトルを合成すると略ゼロの関係となる。
【0091】
このように、単位領域65において、互いに異なる4つの偏光状態の光を透過する場合、直線偏光の光同士の組み合わせ、直線偏光の光と円偏光の光との組み合わせ、を与える例について説明したがこれに限らない。互いに異なる4つの偏光状態の光の、ストークスベクトルを合成することによって、その結果、略ゼロとなる関係が成立するような偏光状態とする組み合わせであれば、透過する光が楕円偏光の光を含むものであってもよい。
【0092】
また、本実施形態に係る偏光解消素子60を、投射型表示装置10bの偏光解消素子20として用いる場合、揺動制御部21は、少なくとも光軸と交差する2次元方向に振動させることが好ましく、回転振動や軌道が円を描くように振動するように制御するとよい。このように、揺動制御部21で振動制御させることで、透過する光の偏光状態を空間的に変えるだけでなく、時間的にも変えることができるので、スペックルノイズを大きく低減することができる。
【0093】
(投射型表示装置に用いる偏光解消素子の第5の実施形態)
前述した偏光解消素子の第4の実施形態では、透過する光の偏光状態が互いに異なる4つの領域により単位領域が構成されるものについて説明した。偏光解消素子の第5の実施形態では、第1の領域、第2の領域、第3の領域、・・・、第Nの領域により単位領域が構成される偏光解消素子について説明する(N≧5の整数)。
図12(a)は、本実施形態に係る偏光解消素子80の平面模式図を示すものであり、単位領域86は、第1の領域81、第2の領域82、第3の領域83、・・・、第(N−1)の領域84、第Nの領域85がこの順に並ぶように構成される。また、第1〜第Nの各領域内を透過する光の偏光状態が同一であるが、これらの領域同士では、透過する光の偏光状態は互いに異なる。
【0094】
偏光解消素子80は、第1の領域81〜第Nの領域85からなる単位領域86が、特定の方向に連続的に配置された領域を有する。具体的に、第1の領域81〜第Nの領域85は長方形の領域を有し、長方形の短辺方向に、複数個、好ましくは、偏光解消素子の第1の実施形態と同じ理由で、5〜50個の単位領域86が配置される。なお、単位領域86は、長手方向と短手方向を有して、一方向が長い領域であれば、長方形に限らず、例えば、平行四辺形や台形、その他の多角形や曲面を有する形状であってもよく、単位領域が、短手方向に複数、並ぶように配置される。
図12(b)および
図12(c)は、単位領域86のみを拡大した平面模式図を示すものである。具体的に、
図12(b)は、第1の偏光方向となる第1の直線偏光の光81aと、第2の偏光方向となる第2の直線偏光の光82aと、第3の偏光方向となる第3の直線偏光の光83aと、・・・、第(N−1)の偏光方向となる第(N−1)の直線偏光の光84aと、第Nの偏光方向となる第Nの直線偏光の光85aの様子を示したものである。
【0095】
また、直線偏光の光の組み合わせに限らず、
図12(c)に示すように、例えば、第1の偏光方向となる(第1の)直線偏光の光81bと、第2の偏光方向となる第1の楕円偏光の光82bと、第3の偏光方向となる第2の楕円偏光の光83bと、・・・、第(N−1)の偏光方向となる第(N−2)の楕円偏光の光84bと、第Nの偏光方向となる第(N−1)の楕円偏光の光85bと、の組み合わせであってもよい。本実施形態においても、これらの光の偏光状態を表わすストークスベクトルが互いに打ち消す関係であれば、例えば、これ以外の偏光状態同士の組合せであってもよい。そして、偏光解消素子80は、単位領域86を構成する各領域を長方形の領域としたが、これに限らず、例えば、正方形の領域が2次元的に配列されて、単位領域を構成するものであってもよい。
【0096】
次に、
図12(b)、
図12(c)に示す各偏光状態の光を透過する単位領域86の具体的な構成について説明する。まず、
図13(a)の構成について説明する。
図13(a)は、
図12(b)のG
1−G
1´に沿って得られる断面模式図の例を示したものである。偏光解消素子80は、透明基板87a上において、第2の領域82に複屈折性材料からなる複屈折性材料層92aを有し、第3の領域83に複屈折性材料からなる複屈折性材料層93aを有する。さらに、第(N−1)の領域84に複屈折性材料からなる複屈折性材料層94aを有し、第Nの領域85に複屈折性材料からなる複屈折性材料層95aを有する。また、透明基板87aと複屈折性材料層92a、93a、・・・、94a、95aとの間に図示しない配向膜が備わっていてもよい。なお、X,Y,Z方向は、
図13(b)も含め、
図4(a)、
図4(b)で示す方向と同じものとする。
【0097】
そして、これらを構成する複屈折性材料は同じ材料、同じ厚さを有するが、X−Y平面において、例えば、複屈折性材料層92aの遅相軸の方向、複屈折性材料層93aの遅相軸の方向、・・・、複屈折性材料層94aの遅相軸の方向、複屈折性材料層95aの遅相軸の方向の順に、等間隔の角度をなす方向に揃っているものとする。このとき、複屈折性材料層92a、93a、・・・、94a、95aの厚さdは、mを自然数として、(2m−1)λ/(2×Δn)に略等しい値に設定し、1/2波長板として機能させるとよい。また、例えば、複屈折性材料層92a、93a、・・・、94a、95a上に、図示しない充填材料層、透明基板を有して一体化する構成であってもよい。また、上記と同様の理由により、m=1であることが好ましい。なお、
図13(a)に示す、第2の領域82、第3の領域83、第(N−1)の領域84、第Nの領域85を透過する光の偏光状態は、互いに異なる直線偏光として便宜的に示したものである。
【0098】
そして、入射する光をY方向の直線偏光の光とするとき、第1の領域81に入射する光は、偏光状態を変えずに透過するので、Y方向の直線偏光の光81aのままである。一方、第2の領域82に入射する光は、1/2波長板の機能を有する複屈折性材料層92aを透過してY軸に対して、(180/N)の角度をなす直線偏光の光82aとなり、第3の領域83に入射する光は、1/2波長板の機能を有する複屈折性材料層93aを透過してY軸に対して、2×(180/N)の角度をなす直線偏光の光83aとなる。また、第(N−1)の領域84に入射する光は、1/2波長板の機能を有する複屈折性材料層94aを透過してY軸に対して、(N−2)×(180/N)の角度をなす直線偏光の光84aとなり、第Nの領域85に入射する光は、1/2波長板の機能を有する複屈折性材料層95aを透過してY軸に対して、(N−1)×(180/N)の角度をなす直線偏光の光85aとなる。これより、偏光解消素子80に入射する光は、隣り合う領域を透過する直線偏光の光が互いに(180/N)度の角度をなすような偏光状態で透過するので、スペックルノイズを低減することができる。
【0099】
また、第2の領域82の複屈折性材料層92a、第3の領域83の複屈折性材料層93a、・・・、第(N−1)の領域84の複屈折性材料層94a、第Nの領域85の複屈折性材料層95aは1/2波長板の機能を有する構成に限らず、遅相軸が光軸方向を軸に厚さ方向にツイストして配向されるものであってもよい。このとき、各領域のツイスト角を考えると、第2の領域82の複屈折性材料層92aは(180/N)度、第3の領域83の複屈折性材料層93aは2×(180/N)、・・・、第(N−1)の領域84の複屈折性材料層94aは(N−2)×(180/N)度、第Nの領域85の複屈折性材料層95aは(N−1)×(180/N)となる。さらに、第1の領域81には複屈折性材料層を有しないとしたが、これに限らない。例えば、遅相軸がツイストしないものとして、第1の領域81にも図示しない複屈折性材料層を有し、このうち、第1の領域81の複屈折性材料層の厚さが、λ/(Δn)、第2の領域82の厚さが、λ/(2×Δn)の関係であってもよく、また、第1の領域81の複屈折性材料層の光学軸が例えばY軸方向と一致するようにしても、各領域を透過する光の偏光状態は
図12(b)に示すような関係となる。
【0100】
次に、
図12(c)に示す偏光状態となる
図13(b)の構成について説明する。
図13(b)の構成に基づく偏光解消素子80は、透明基板87a上において、第2の領域82に複屈折性材料層92b、第3の領域83に複屈折性材料層93b、・・・、第(N−1)の領域84に複屈折性材料層94b、第Nの領域85に複屈折性材料層95bを有し、これらを構成する複屈折性材料は同じ材料で、遅相軸の方向もX−Y平面において、X軸方向に対して例えば、45度をなす同じ方向に揃っているが、厚さが異なるものとする。また、透明基板87aと複屈折性材料層92b、93b、・・・、94b、95bとの間に図示しない配向膜が備わっていてもよい。
【0101】
そして、これらの複屈折性材料層の厚さを調整して、例えば、第1の楕円偏光の光82b、第2の楕円偏光の光83b、・・・、第(N−2)の楕円偏光の光84b、第(N−1)の楕円偏光の光85b、それぞれの偏光状態を調整し、
図3に示すポワンカレ球に基づいて、これらの領域を透過する光の各ストークスベクトルを合成すると、略ゼロとなる関係にあるようにすると好ましい。また、偏光解消素子80は、例えば、複屈折性材料層92a、93a、・・・、94a、95a上に、充填材料層、透明基板を有して一体化する構成であってもよい。なお、
図13(b)に示す、第2の領域82、第3の領域83、・・・、第(N−1)の領域84、第Nの領域85を透過する光の偏光状態は、互いに異なる楕円偏光として便宜的に示したものである。
【0102】
また、本実施形態に係る偏光解消素子80を、投射型表示装置10bの偏光解消素子20として用いる場合、揺動制御部21は、単位領域86の長手方向とは異なる方向に振動するとよく、とくに、長手方向と直交する方向に振動させることが好ましい。このように、揺動制御部21で振動制御させることで、透過する光の偏光状態を空間的に変えるだけでなく、時間的にも変えることができるので、スペックルノイズを大きく低減することができる。
【0103】
(投射型表示装置に用いる偏光解消素子の第6の実施形態)
前述した投射型表示装置に用いる偏光解消素子は、それぞれ、単位領域を有し、単位領域を構成する複数の領域のうち、各領域を透過する光は同一の偏光状態となるための構成を有するものであった。偏光解消素子の第6の実施形態では、単位領域を有するが、この単位領域は、透過する光の偏光状態が連続して変化する。
図14(a)は、本実施形態に係る偏光解消素子100の平面模式図を示すものであり、正方形の単位領域101が、2次元的に複数個、好ましくは、偏光解消素子の第1の実施形態と同じ理由で、5〜50個連続して配置された領域を有する。また、2次元的な配列としては
図14(a)に図示するように単位領域101が正方形で配列される他に、三角形や多角形等で配列されるものであってもよい。
【0104】
図14(b)、
図14(c)は、単位領域101を拡大した平面模式図を示すものである。具体的に、
図14(b)は、単位領域101の中心から放射状に光学軸102aが与えられ、
図14(c)は、単位領域101の中心より同心円状に光学軸102bが与えられるものである。なお、
図14(b)および
図14(c)は、光学軸が連続的に変化するような状態を例に挙げたが、これに限らない。
図14(b)の場合、例えば、単位領域の中心を基点に30°ずつ、12個の領域を与え、各領域の光学軸が一方向に揃うような擬似的な放射状の光学軸としてもよい。さらに、
図14(c)の場合も、例えば、単位領域の中心を基点に30°ずつ、12個の領域を与え、各領域の光学軸が一方向に揃うような擬似的な同心円状の光学軸としてもよい。この場合、擬似的な同心円状としては、厳密に正十二角形のような光学軸のパターンとなる。以下、放射状、同心円状は、上記の擬似的な放射状、擬似的な同心円状も含むものとして説明する。また、
図14(d)は、偏光解消素子100の断面模式図を示すものであり、偏光解消素子100は、透明基板103aと透明基板103bとの間に、所定の配向をされた複屈折性材料層104を有する。なお、透明基板103aと複屈折性材料層104との間、透明基板103bと複屈折性材料層104との間に図示しない配向膜を有してもよい。
【0105】
また、複屈折性材料層104における複屈折性材料として高分子液晶を用いる場合、配向方向をUV光照射によりパターニングする方法を用いたり、透明基板103a、104bに溝形状を加工したりすることにより、この面内において所望の配向を得ることができる。この他に、複屈折性材料層104として、格子形状に加工された構造複屈折構造において、光学軸を周期的に変化させたものであってもよい。さらに、格子形状の上に多層膜を成膜して、屈折率異方性を発現するフォトニック結晶を用いて、光学軸方向を周期的に変化させたものであってもよい。
【0106】
また、複屈折性材料層104が図示しない配向膜で挟持される場合、透明基板103a側の配向膜と透明基板103b側の配向膜は、透明基板の平面方向から見たときの配向方向が同一となるように重ねられたものである。そして、このような配向膜の構成により、複屈折性材料層104を構成する複屈折性材料の光学軸は、厚さ方向に捩れのない状態で配向されている。また、配向膜は、ポリイミド膜等をラビング処理して得られるが、例えば、SiO
2を斜方蒸着させてもよい。複屈折性材料層104を構成する複屈折性材料としては、液晶や高分子液晶が好ましく用いられる。また、高分子液晶を用いる場合、例えば、偏光解消素子100は、透明基板103bや透明基板103b側の図示しない配向膜が取り除かれた構成であってもよい。
【0107】
次に、複屈折性材料層の厚さについて考える。ここで、偏光解消素子100に入射する波長λの光に対して、複屈折性材料層104の厚さdは、mを自然数として、(2m−1)λ/(2×Δn)に略等しい値に設定し、1/2波長板として機能させるとよい。また、この場合も、上記と同様の理由により、m=1であることが好ましい。
【0108】
そして、入射する光をY方向の直線偏光の光とするとき、光学軸102a、102bが、Y軸方向またはX軸方向である部分を透過する光は、偏光状態を変えずに透過するので、Y方向の直線偏光の光のままである。そして、光学軸102a、102bが、Y軸方向を基準に角度θ(≠0°、かつ、≠±90°)である部分を透過する光は、1/2波長板の光学特性に基づき、Y軸方向より2θの角度をなす直線偏光の光で透過する。このように、例えば、
図14(b)に示す放射状の光学軸分布の単位領域や、
図14(c)に示す同心円状の光学軸分布の単位領域を有する偏光解消素子100は、連続的に光学軸が変化しているので、透過する直線偏光の光も連続的に変化するように分布する。
【0109】
また、本実施形態に係る偏光解消素子において、例として、単位領域内の光学軸が放射状または同心円状とした。この場合、透過する光はいずれも、直線偏光の光として与えられるが、
図3に示すポワンカレ球に基づくと、いずれもポワンカレ球の赤道に沿ったストークスベクトルが発生し、これらのベクトルが打ち消し合って略ゼロとなる。また、単位領域は、上記の例に限らず、
図3に示すポワンカレ球に基づいて、単位領域を透過する光の各ストークスベクトルを合成して、略ゼロとなる関係にあれば、円偏光の光や楕円偏光の光を含むものであってもよい。
【0110】
また、本実施形態に係る偏光解消素子100を、投射型表示装置10bの偏光解消素子20として用いる場合、揺動制御部21は、少なくとも光軸と交差する2次元方向に振動させることが好ましく、回転振動や軌道が円を描くように振動するように制御するとよい。このように、揺動制御部21で振動制御させることで、透過する光の偏光状態を空間的に変えるだけでなく、時間的にも変えることができるので、スペックルノイズを大きく低減することができる。
【0111】
(投射型表示装置に用いる偏光解消素子の第7の実施形態)
偏光解消素子の第7の実施形態は、単位領域内を透過する光の偏光状態が連続して変化する、第6の実施形態とは異なる形態を有するものである。
図15(a)、
図15(b)は、それぞれ、本実施形態に係る偏光解消素子110a、110bの平面模式図を示すものであって、それぞれ、長方形の単位領域111、単位領域116が、長方形の短辺方向に、複数個、好ましくは、偏光解消素子の第1の実施形態と同じ理由で、5〜50個連続的に配置される。また、
図15(a)、
図15(b)に示すように、単位領域111、116はそれぞれ、単位領域の短軸方向に波状に分布する光学軸111a、116aを有し、この波の1周期分が、単位領域の短辺の長さに相当する。なお、
図15(a)および
図15(b)は、光学軸が連続的に変化するような状態を例に挙げたが、これに限らない。例えば、光学軸が一部不連続となる部分を含むような、擬似的な波状のパターンであってもよい。以下、波状は、上記の擬似的な波状も含むものとして説明する。
【0112】
また、偏光解消素子110a、110bの断面模式図については省略するが、第6の実施形態に係る偏光解消素子100における
図14(d)と同様の構造として考える。つまり、1/2波長板としての機能を有する複屈折性材料層を有し、例えば、この複屈折性材料層を構成する複屈折性材料の光学軸が平面から見たときに波状に分布するものである。
【0113】
次に、具体的に、光学軸が分布する波状の形状について説明する。波状の分布形状としては、サイン曲線、コサイン曲線、上凸の半円と下凸の半円とを交互に繋ぎ合わせた周期曲線や、上凸の放物線と下凸の放物線とを交互につなぎ合わせた周期曲線などを与えることができる。また、波の進行方向、例えば、
図15(a)、
図15(b)でいうX軸方向を基準として、波の傾斜が45度を含む形状とすると、この傾斜45度となる部分に、例えば、Y方向の直線偏光の光が入射するとき、X方向の直線偏光の光となって透過する。また、波の傾斜が0度となる部分も必ず含まれるので、この場合、透過する光は、互いに直交する、X方向の直線偏光の光とY方向の直線偏光の光と、をいずれも含むので好ましい。
【0114】
また、例えば、サイン曲線の形状としては、
{P/(2π)}×sin{2π(x/P)} ・・・ (1)
とすると、光学軸の最大傾斜αが45度となり、透過する光について、互いに直交する直線偏光の光が含まれるので好ましい。また、xは、波の進行方向の座標軸、Pはピッチを表す。なお、
図15(a)は、光学軸の最大傾斜αが45度となる波状の分布を有する偏光解消素子110aを示すものである。
【0115】
また、偏光解消性を高めるためには、
図3に示すポワンカレ球に基づいて、単位領域111、116を透過する光の各ストークスベクトルを合成すると、略ゼロとなる関係にあるようにすると好ましい。この場合、周期曲線1周期分において透過する光の偏光状態について、X方向の成分とY方向の成分との合計が略等しくなるように設計するとよい。例えば、ピッチPを1[mm]とし、サイン曲線の振幅係数を0.104[mm]や0.569[mm]にするとサイン曲線1周期において透過する光の偏光状態としては、X方向の成分とY方向の成分が略等しくなる。ここで、
図15(b)は、光学軸の最大傾斜αが74.4度となる波状の分布を有し、上記でいう、ピッチPが1[mm]、サイン曲線の振幅係数が0.569[mm]の設計例を含む偏光解消素子110bを示すものである。
【0116】
また、波状の波形について、波の進行方向であるx方向に対し、光学軸の傾斜角が一定の割合で変化するとともに、最大傾斜αが45°となる設計とすると、透過する光の偏光状態について、x方向の成分とy方向の成分との合計が略等しくなるので偏光解消性が高くなるので好ましい。このような設計に基づく形状としては、例えば、mを整数として、
−P/4+mP≦x≦P/4+mP、であるとき、
(P/π)ln|cos(πx/P−mπ)|
−(P/π)ln|cos(π/4)| ・・・ (2a)
であるとともに、
P/4+mP≦x≦3P/4+mP、であるとき、
−(P/π)ln|cos{πx/P−(1+2m)π/2}|
+(P/π)ln|cos(π/4)| ・・・ (2b)
とすることが好ましい。
【0117】
また、本実施形態に係る偏光解消素子110a、110bを、投射型表示装置10bの偏光解消素子20として用いる場合、揺動制御部21は、少なくとも光軸と交差する面における1次元方向に振動させることが好ましく、周期方向に振動させることがより好ましく、さらに、2次元方向に回転振動や軌道が円を描くように振動するように制御すると好ましい。このように、揺動制御部21で振動制御させることで、透過する光の偏光状態を空間的に変えるだけでなく、時間的にも変えることができるので、スペックルノイズを大きく低減することができる。
【0118】
また、本実施形態に係る偏光解消素子は、光学軸が連続的に変化する、波状の周期的分布を有するものとしたが、軽微な程度に波状の分布が離散的になる部分があっても、一定レベルの偏光解消性を有していれば同等の効果を得ることができる。
【実施例】
【0119】
(実施例1)
本実施例では、偏光解消素子の第2の実施形態に基づき、単位領域43が第1の領域41と第2の領域42で、市松模様となる配置となる偏光解消素子を作製する。まず、石英ガラスからなる透明基板の一方の面に反射防止膜を形成する。そして、反射防止膜側とは反対側の面にポリイミドを塗布、焼成し、同一の方向に直線的にラビング処理を施すことにより配向膜を形成する。
【0120】
次に、配向膜の上に高分子液晶を約6.6μmの厚さになるように形成し、これにより配向膜のラビング方向に光学軸が揃った均一な厚さの高分子液晶の層を得る。また、高分子液晶は、波長532nmの光に対して、常光屈折率n
oが1.50、異常光屈折率n
eが1.54となる特性を有する材料を用いる。その後、フォトリソグラフィ工程およびドライエッチング工程を経て、高分子液晶の層を、0.5mm×0.5mmの正方形の領域が一定間隔で規則的に除去されるようにし、高分子液晶が残った領域と高分子液晶を除去した領域とが市松模様をなすようにパターニングする。ここで、高分子液晶が残った領域と高分子液晶が除去された領域はいずれも0.5mm×0.5mmの正方形となる。これより、単位領域が1mm×1mmの正方形の市松模様で、さらに、この単位領域が13×11の配列となるように複数個並べられたパターンを得る。
【0121】
次に、高分子液晶の層のパターニングによりできる凹凸に、等方性光学材料を充填して、もう1枚の石英ガラス基板に接着させることで、偏光解消素子を得る。そして、作製した偏光解消素子に、波長532nmの直線偏光の光を石英ガラス基板面に略垂直方向に入射する。このとき、入射する直線偏光の光の偏光方向が、高分子液晶の配向方向に対して45度の角度をなすように、偏光解消素子を配置する。
【0122】
このように波長532nmの直線偏光の光が入射すると、高分子液晶を有する領域を透過する光は、入射する直線偏光の光の偏光方向と直交する直線偏光の光となって透過する。一方、高分子液晶が除去された領域を透過する光は、入射する直線偏光の光のまま透過する。これより、隣り合う領域を透過する光は互いに直交する偏光方向の光となり、投射型表示装置のレーザ光源と投影レンズとの間の光路中に、偏光解消素子を配置すると、レーザの干渉により発生するスペックルノイズを低減することができる。
【0123】
(実施例2)
本実施例も、実施例1と同様に、偏光解消素子の第2の実施形態に基づき、単位領域43が第1の領域41と第2の領域42で、市松模様となる配置となるが、実施例1とは別の構成となる偏光解消素子を作製する。まず、石英ガラスからなる透明基板にポリイミドを形成する工程は実施例1と同じである。そして、ポリイミドの表面について、基準方向に直線的にラビング処理を施す。その後、0.5mm×0.5mmの領域が市松模様状に開口したマスクをあてて、最初にラビングした基準方向に対して45度の方向にラビングする。これにより、ポリイミドの表面において、ラビング方向が0度方向と45度方向となる2つの領域を有する配向膜を得る。
【0124】
次に、配向膜の上に高分子液晶を約6.6μmの厚さになるように形成し、これにより配向膜のラビング方向に光学軸が揃った均一な厚さの高分子液晶の層を得る。この高分子液晶の層は、光学軸の方向が0度方向の領域と45度方向の領域とで市松模様をなすようにパターニングされる。また、高分子液晶は、実施例1と同じ材料を用いる。これより、単位領域が1mm×1mmの正方形の市松模様で、さらに、この単位領域が13×11の配列となるように複数個並べられたパターンを有する偏光解消素子を得る。
【0125】
そして、作製した偏光解消素子に、波長532nmの直線偏光の光を石英ガラス基板面に略垂直方向に入射する。このとき、入射する直線偏光の光の偏光方向が、いずれかの光学軸、つまり0度または45度の方向に合うように、偏光解消素子を配置する。このように波長532nmの直線偏光の光が入射すると、一方の領域を透過する光は、入射する直線偏光の光の偏光方向と直交する直線偏光の光となって透過する。これに対し、他方の領域を透過する光は、入射する直線偏光の光のまま透過する。これより、隣り合う領域を透過する光は互いに直交する偏光方向の光となり、投射型表示装置のレーザ光源と投影レンズとの間の光路中に、偏光解消素子を配置すると、レーザの干渉により発生するスペックルノイズを低減することができる。