特許第5751244号(P5751244)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5751244-ガス浄化装置 図000003
  • 特許5751244-ガス浄化装置 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5751244
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】ガス浄化装置
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/04 20060101AFI20150702BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20150702BHJP
   B01D 53/02 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
   B01D53/04 A
   B01J20/20 B
   B01D53/02 Z
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-261297(P2012-261297)
(22)【出願日】2012年11月29日
(65)【公開番号】特開2014-104447(P2014-104447A)
(43)【公開日】2014年6月9日
【審査請求日】2014年4月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(72)【発明者】
【氏名】佐橋 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】山脇 健
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−126166(JP,A)
【文献】 特開平07−075734(JP,A)
【文献】 特開2000−015045(JP,A)
【文献】 特開2000−279749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 9/00−9/22
B01D 53/02−53/12
B01D 53/34−53/85
B01J 20/00−20/34
Thomson Innovation
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理ガスが通過するハウジングと、
該ハウジング内に設けられた、腐食性成分を吸着する活性炭エレメントと、
該活性炭エレメントに被処理ガスを流通させるファン
該活性炭エレメントよりも上流側において該ハウジングを横断するように設けられたプレフィルタと、
該活性炭エレメントよりも下流側において該ハウジングを横断するように設けられたアフターフィルタと、
該活性炭エレメントのガス通過差圧の検出手段及びガス通過量検出手段と、
該検出手段の検出値に基づいて前記活性炭エレメントの交換時期を判定する判定手段と
を備えたガス浄化装置であって、
前記判定手段は、ガス通過差圧の判定手段とガス通過量の判定手段とを有し、
前記活性炭エレメントは、通気性の内筒及び外筒と、該内筒と外筒との間のスペースの一端側を閉鎖するリング状の第1のエンドプレートと、活性炭エレメントの他端側を全面的に閉鎖する第2のエンドプレートと、該内筒と外筒との間のスペースに充填された粒状活性炭とを有し、
前記粒状活性炭は、ヨウ化カリウム添加量が0.01〜10wt%のヨウ化カリウム添着活性炭であることを特徴とするガス浄化装置。
【請求項2】
請求項1において、前記プレフィルタは不織布よりなり、前記アフターフィルタはHEPAフィルタよりなることを特徴とするガス浄化装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記ファンは、前記活性炭エレメントのガス通過線速度が0.2〜0.35m/secとなるように定速で回転することを特徴とするガス浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス浄化装置に係り、特に腐食性成分を吸着する活性炭エレメントを備えたガス浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
硫黄酸化物や硫化水素等を空気中から除去するために、ヨウ化カリウムを添着した活性炭を用いることが知られている(特開2003−10688)。また、硫化水素等の悪臭成分を除去するために、塩化銅や金属酸化物を担持させた活性炭を用いることが特開平9−262273に記載されている。
【0003】
特開2004−89963には、臭気成分含有ガスを、相対湿度85%以上に調湿した後、活性炭含有ハニカム状吸着剤と接触させて臭気成分を吸着除去する方法が記載されている。
【0004】
特開2000−157620には、硫化水素などを含有した排泄物臭気成分含有空気をファンによって活性炭充填床に通過させて脱臭する脱臭装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−10688
【特許文献2】特開平9−262273
【特許文献3】特開2004−89963
【特許文献4】特開2000−157620
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
腐食性成分含有被処理ガスを活性炭の成形体や充填床などの活性炭エレメントに通過させ続けると、次第に活性炭の吸着残存容量が減少し、遂には活性炭が破過(ブレーク)して腐食性成分がリークするようになる。
【0007】
従来、この腐食性成分のリークを検出するために、ガス分析を行うか、又は金属片よりなるテストピースを吸着装置の出口側に配置し、このテストピースの腐食状況からリークの有無を判断するようにしているが、判定に時間がかかると共に、実際にリークが発生した後でなければ検出することができないという短所があった。
【0008】
本発明は、腐食性成分が実際にリークが開始する前に、また過度に早期となることなく、適性時期に活性炭エレメントを交換することができるガス浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のガス浄化装置は、被処理ガスが通過するハウジングと、該ハウジング内に設けられた、腐食性成分を吸着する活性炭エレメントと、該活性炭エレメントに被処理ガスを流通させるファン、該活性炭エレメントよりも上流側において該ハウジングを横断するように設けられたプレフィルタと、該活性炭エレメントよりも下流側において該ハウジングを横断するように設けられたアフターフィルタと、該活性炭エレメントのガス通過差圧の検出手段及びガス通過量検出手段と、該検出手段の検出値に基づいて前記活性炭エレメントの交換時期を判定する判定手段とを備えたガス浄化装置であって、前記判定手段は、ガス通過差圧の判定手段とガス通過量の判定手段とを有し、前記活性炭エレメントは、通気性の内筒及び外筒と、該内筒と外筒との間のスペースの一端側を閉鎖するリング状の第1のエンドプレートと、活性炭エレメントの他端側を全面的に閉鎖する第2のエンドプレートと、該内筒と外筒との間のスペースに充填された粒状活性炭とを有し、前記粒状活性炭は、ヨウ化カリウム添加量が0.01〜10wt%のヨウ化カリウム添着活性炭であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のガス浄化装置に腐食性成分含有被処理ガスを通過させると、腐食性成分が活性炭エレメントに吸着され、浄化されたガスが取り出される。このガス浄化装置へのガス供給を継続すると、活性炭の圧密化等によって活性炭エレメントの圧損が増加し、風量が減少する。本発明では、活性炭エレメントのガス通過差圧及びガス通過量の少なくとも一方を検出し、これに基づいて活性炭エレメントの交換時期の判定を行う。例えば、通過差圧が所定値以上となるか、又は通過量が所定量以下となった場合に活性炭エレメントの交換時期と判定することにより、活性炭エレメントを適切な時期に交換することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施の形態に係るガス浄化装置の長手方向の断面図である。
図2】吸着ユニットの断面図であり、(a)図は活性炭エレメントの軸心方向の断面図、(b)図は(a)図のB−B線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。図1の通り、腐食性成分含有被処理ガスがダクト1から吸着ユニット2に導入され、浄化ガスがダクト3を通って流出する。
【0015】
吸着ユニット2は、円筒形のハウジング4と、該ハウジング4の上流側の端部を横断するように設けられた不織布等よりなるプレフィルタ5と、該プレフィルタ5と活性炭エレメント7との間に配置されたファン6と、該ファン6からの送気を透過させるように設けられた該活性炭エレメント7と、ハウジング4の下流側の端部を横断するように設けられたHEPAフィルタなどよりなるアフターフィルタ8とを有する。
【0016】
活性炭エレメント7は、図2に示すように、それぞれ多孔板、メッシュ等よりなる通気性の内筒10及び外筒11と、該内筒10と外筒11との間のスペースの一端側を閉鎖するリング状のフロントエンドプレート12と、活性炭エレメント7の他端側を全面的に閉鎖するリヤエンドプレート13と、内筒10と外筒11との間のスペースに充填された粒状活性炭14とを有する。
【0017】
この実施の形態では、活性炭にヨウ化カリウムが添着されている。ヨウ化カリウムの添着量は0.01〜10wt%であることが好ましい。
【0018】
前記ハウジング4の内面には中心孔15aを有したリング状の取付座15が設けられている。活性炭エレメント7のフロントエンドプレート12が該取付座15にボルト等によって脱着自在に取り付けられている。中心孔15aと内筒10とは、略等径であり、同軸状に配置されている。外筒11の直径はハウジング4よりも小径である。外筒10はハウジング4と同軸状に設置されており、外筒10の外周面とハウジング4の内周面との間が通気空間となっている。活性炭エレメント7のガス通過線速度は0.2m/s以上、特に0.3〜0.35m/s程度が好ましい。
【0019】
ダクト1,3にはそれぞれ圧力センサ20,21が設けられ、それらの検出信号が判定装置22に入力される。ダクト3には熱線流速計などの流量センサ23が設けられており、この流量センサの検出信号が判定装置22に入力される。
【0020】
このように構成されたガス浄化装置において、ファン6を駆動すると、腐食性成分含有被処理ガスがダクト1からプレフィルタ5を透過して吸着ユニット2内に流入し、活性炭エレメント7の内筒10、活性炭14の充填部及び外筒11を透過し、浄化ガスがアフターフィルタ8を透過し、ダクト3へ流出する。ファン6を定速で回転させ、運転を継続する。そして、圧力センサ20,21の差(差圧)と、流量センサ23の検出流量とを判定装置22で経時的に判定する。
【0021】
運転を継続すると、差圧が徐々に上昇し、通過流量が徐々に低下する。そこで、差圧が予め設定した所定値以上となるか、又は流量が所定流量以下となったときには、活性炭エレメント7を取付座15から取り外し、新品(又は活性炭再生済み)の活性炭エレメント7と交換する。
【0022】
活性炭エレメント7から腐食性成分のリークが開始するときの差圧又は流量を予め求めておき、これに安全率を勘案した値を上記の所定値又は所定流量として設定するのが好ましい。
【0023】
腐食性成分のリークが検出されたときには、活性炭の破過を通知する通知手段を作動させる。通知手段は警告ランプの点灯手段、警告音の発生手段、警告メールの送信手段などが挙げられるが、これに限定されない。
【0024】
これにより、腐食性成分がリークする前に、また過度に早期となることなく適切な時期に活性炭エレメント7を交換することができる。
【0025】
なお、上記の差圧や流量センサの計測は連続的に行ってもよく、間欠的(例えば数時間〜数箇月に1回の頻度)に行ってもよい。
【0026】
ガスは一過式に流通させてもよく、循環流通させてもよい。
【実施例】
【0027】
本発明の効果を確認するための実験を行った。
【0028】
内径200mm、外径350mm、長さ500mmであり、粒状活性炭充填量15kgの図2に示す構造の活性炭エレメントを図1のハウジング内に設置し、ガス浄化装置を構成した。粒状活性炭は粒径2.4〜4.7mmのものが90wt%の粒度のものである。活性炭にはヨウ化カリウムを0.5wt%添着した。このガス浄化装置に硫化水素濃度100ppb程度に調整した空気を通風し、差圧及び風量を計測した。また、活性炭の破過の有無については、ハウジングの出口側ダクトで測定した硫化水素濃度の変化により判定した。結果を表1に示す。
【0029】
【表1】
【0030】
表1より、活性炭破過と風量減少、差圧上昇に相関があることが確認された。また、表1より、風量が11m/minを下回った時点、風量が初期量の75%を下回った時点、差圧が190Paを上回った時点、または差圧が初期値の140%を上回った時点のいずれかの時点で活性炭が破過したと判定できることが認められた。従って、破過する前の例えば15ヶ月経過時の値を設定値とし、この設定値に達したならば活性炭エレメントを交換することにより、活性炭エレメントが適切時期に交換される。
【符号の説明】
【0031】
1,3 ダクト
2 吸着ユニット
4 ハウジング
5 プレフィルタ
6 ファン
7 活性炭エレメント
8 アフターフィルタ
14 活性炭
20,21 圧力センサ
22 判定装置
23 流量センサ
図1
図2