特許第5751531号(P5751531)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5751531半導体基板の評価方法、評価用半導体基板、半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5751531
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】半導体基板の評価方法、評価用半導体基板、半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20150702BHJP
【FI】
   H01L21/66 Y
【請求項の数】11
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-135726(P2012-135726)
(22)【出願日】2012年6月15日
(65)【公開番号】特開2014-3060(P2014-3060A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2014年5月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131048
【弁理士】
【氏名又は名称】張川 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100095751
【弁理士】
【氏名又は名称】菅原 正倫
(72)【発明者】
【氏名】大槻 剛
【審査官】 工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−100909(JP,A)
【文献】 特開2006−310495(JP,A)
【文献】 特開2004−039918(JP,A)
【文献】 特開2010−287778(JP,A)
【文献】 特開2010−40677(JP,A)
【文献】 特開2001−274108(JP,A)
【文献】 特開2001−77168(JP,A)
【文献】 特開平11−31725(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L21/66
G01R31/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導電型の半導体基板とは異なる第2の導電型のエピタキシャル層を該半導体基板上に成長させ、該エピタキシャル層と同じ第2の導電型のウェルを該エピタキシャル層中に形成し、該ウェルの接合周辺にチャネルストップ層を設け、該ウェル中に、該ウェルと異なる第1の導電型のドーパントを拡散させてpn接合を設け一方の電極とし、もう一方の電極は前記半導体基板のエピタキシャル層を成長させていない面としてひとつのセルとし、該セルを前記半導体基板上に複数形成してTEG(Test Element Group)として使用し、各ウェル中に形成される空乏層及びエピタキシャル層と半導体基板の界面に形成される空乏層の2つの空乏層からの接合リーク電流を測定し、
前記ウェルのドーパント濃度を1×1016atoms/cmから1×1017atoms/cmとしたことを特徴とする半導体基板の評価方法。
【請求項2】
前記半導体基板上に前記エピタキシャル層を成長させた後、そのエピタキシャル層上に、窓開けした部分を有した分離酸化膜を形成し、イオン注入により前記窓開けした部分直下に前記ウェルを形成するとともに、前記分離酸化膜直下に該イオン注入で注入されるドーパントで前記チャネルストップ層を形成することを特徴とする請求項1に記載の半導体基板の評価方法。
【請求項3】
前記ウェル形成時において、前記分離酸化膜以外の酸化膜を形成せず直接イオン注入し、このイオン注入において注入量はGOI(酸化膜耐圧)に影響する欠陥が生じない範囲とすることを特徴とする請求項2に記載の半導体基板の評価方法。
【請求項4】
前記ウェル上の電極の電極面積が4mm以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体基板の評価方法。
【請求項5】
前記ウェルはドーパント濃度1×1016atoms/cmから1×1017atoms/cmで深さ2μm以下であり、前記ウェル内部に形成された拡散層はドーパント濃度1×1018atoms/cmから5×1020atoms/cmで深さ1μm以下であり、前記チャネルストップ層はドーパント濃度1×1016atoms/cmから1×1017atoms/cmで深さ0.5μm以下であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の半導体基板の評価方法。
【請求項6】
第1の導電型の半導体基板とは異なる第2の導電型のエピタキシャル層を該半導体基板上に成長させ、該エピタキシャル層と同じ第2の導電型のウェルを該エピタキシャル層中に形成し、該ウェルの接合周辺にチャネルストップ層を設け、該ウェル中に、該ウェルと異なる第1の導電型のドーパントを拡散させてpn接合を設け一方の電極とし、もう一方の電極は前記半導体基板のエピタキシャル層を成長させていない面としてひとつのセルとし、該セルを前記半導体基板上に複数形成してTEG(Test Element Group)として使用し、
前記ウェルのドーパント濃度を1×1016atoms/cmから1×1017atoms/cmとしたことを特徴とする評価用半導体基板。
【請求項7】
前記ウェル上の電極の電極面積が4mm以下であることを特徴とする請求項6に記載の評価用半導体基板。
【請求項8】
前記ウェルはドーパント濃度1×1016atoms/cmから1×1017atoms/cmで深さ2μm以下であり、前記ウェル内部に形成された拡散層はドーパント濃度1×1018atoms/cmから5×1020atoms/cmで深さ1μm以下であり、前記チャネルストップ層はドーパント濃度1×1016atoms/cmから1×1017atoms/cmで深さ0.5μm以下であることを特徴とする請求項6または7に記載の評価用半導体基板。
【請求項9】
第1の導電型の半導体基板とは異なる第2の導電型のエピタキシャル層を該半導体基板上に成長させ、該エピタキシャル層と同じ第2の導電型のウェルを該エピタキシャル層中に形成し、該ウェルの接合周辺にチャネルストップ層を設け、該ウェル中に、該ウェルと異なる第1の導電型のドーパントを拡散させてpn接合を設け一方の電極とし、もう一方の電極は前記半導体基板のエピタキシャル層を成長させていない面としてひとつのセルとし、
前記ウェルのドーパント濃度を1×1016atoms/cmから1×1017atoms/cmとしたことを特徴とする半導体装置。
【請求項10】
前記ウェル上の電極の電極面積が4mm以下であることを特徴とする請求項9に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記ウェルはドーパント濃度1×1016atoms/cmから1×1017atoms/cmで深さ2μm以下であり、前記ウェル内部に形成された拡散層はドーパント濃度1×1018atoms/cmから5×1020atoms/cmで深さ1μm以下であり、前記チャネルストップ層はドーパント濃度1×1016atoms/cmから1×1017atoms/cmで深さ0.5μm以下であることを特徴とする請求項9または10に記載の半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体基板の評価方法、特にシリコンウェーハの表層近傍の電気特性の評価方法並びに半導体基板及び半導体装置に係り、特に、半導体基板の接合リーク電流評価方法とこれに使用する半導体基板及び半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
メモリ、CCD等の固体撮像素子等の半導体装置の微細化、高性能化に伴い、それらの製品歩留まりを向上させるために、材料としてのシリコンウェーハにも高品質化が要求され、これに対応した各種シリコンウェーハが開発されている。固体撮像素子においては、シリコン基板品質が大きく影響し、特に、製品特性に直接影響を与えると推測されるウェーハ表層部の結晶性は重要である。表層品質の改善策として、1)不活性ガス又は水素を含む雰囲気中で高温処理、2)引き上げ条件の改善によりグロウ・イン(Grown-in)欠陥を低減、3)エピ成長ウェーハ等が開発されている。
【0003】
特に固体撮像素子に関しては、光を電気信号に変換するため、光を半導体内部に侵入させ、発生する電気信号から画像を構築する。そのため、最表面品質はもちろんのこと、表面から数μm程度の深さの品質も非常に重要である。
【0004】
そして、シリコンウェーハの表面品質の電気的特性の評価法として、酸化膜耐圧(GOI)評価が知られている。この酸化膜耐圧(GOI)評価では、シリコン表面に熱酸化によりゲート酸化膜を形成し、この上に電極を形成することで絶縁体であるシリコン酸化膜に電気的ストレスを印加し、この絶縁度合いによりシリコン表面品質を評価するものである。すなわち、もとのシリコン表面に欠陥や金属不純物が存在するとこれが熱酸化によりシリコン酸化膜に取り込まれ、不均一な絶縁体になる。つまり、欠陥、不純物が存在すると絶縁性が低下することから、その絶縁性の低下度合いを見ることでシリコン表面品質を評価するものである。
【0005】
GOI評価は、実デバイスにおいては、MOSFETのゲート酸化膜信頼性に関係し、これの改善に向けていろいろなウェーハ開発が行われている。GOI評価は、特にCOPに関連したGrown−in欠陥に関連した研究、ウェーハ、デバイスの改善に大きく寄与した。しかしながら、GOIで問題がなくても、デバイス歩留まりが低下するということは当然ありえるわけで、特に近年、デバイスの高集積化に伴い、このような事象が数多くなってきている。とりわけ固体撮像素子においては、空乏層外の中性領域からの拡散電流が影響するなど、その原理から考えて、ウェーハ起因のリーク電流を低減する必要性がある。
【0006】
上記の問題に直面し、シリコンウェーハ基板の開発・改善を進める訳であるが、実際に固体撮像素子などのデバイスを作製し評価してみないと効果の判別が出来ない問題があった。そこで、従来、固体撮像素子の心臓部ともいえる受光部の構造に着目し、ウェーハ面内にpn接合を形成し、このリーク電流を測定することでウェーハ品質の評価が行われている(例えば特許文献1参照)。特許文献1には、ウェーハ面内に形成されたpn接合のリーク電流を測定するセル構造として、ガードリング付きの構造が開示されている。この構造では、pn接合の周辺部分にガードリングを設け、そのガードリングによってリーク電流の面積成分(拡散電流及び発生電流からなる)と周辺成分(表面発生電流)とを分離している。つまり、この構造によれば、ガードリングに印加する電圧を調整することで、pn接合の周辺部分の空乏層幅を制御してその周辺部分からのリーク電流を抑えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3250158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の半導体基板の評価方法では、GOIではせいぜい表面数十nm、リーク電流においても1μm程度の評価領域(深さ)であり、深い領域の基板品質を反映した評価はできなかった。
【0009】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたもので、その課題は、CCD、CMOSセンサ等の高歩留まりが要求される製品に使用される高品質ウェーハのリーク電流特性を高精度で評価することが可能な半導体基板の評価方法並びに半導体基板及び半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の半導体基板の評価方法は、第1の導電型の半導体基板とは異なる第2の導電型のエピタキシャル層を該半導体基板上に成長させ、該エピタキシャル層と同じ第2の導電型のウェルを該エピタキシャル層中に形成し、該ウェルの接合周辺にチャネルストップ層を設け、該ウェル中に、該ウェルと異なる第1の導電型のドーパントを拡散させてpn接合を設け一方の電極とし、もう一方の電極は前記半導体基板のエピタキシャル層を成長させていない面としてひとつのセルとし、該セルを前記半導体基板上に複数形成してTEG(Test Element Group)として使用し、各ウェル中に形成される空乏層及びエピタキシャル層と半導体基板の界面に形成される空乏層の2つの空乏層からの接合リーク電流を測定し、前記ウェルのドーパント濃度を1×1016atoms/cmから1×1017atoms/cmとしたことを特徴とする。
【0011】
本発明の評価方法によれば、シリコンウェーハ等の半導体基板の電気的特性を評価するために、基板とは異なる導電型(第2の導電型)のエピタキシャル層(EP層)を成長させる。これによって、EP層と半導体基板との界面がpn接合になり、そのpn接合により空乏層を形成できる。また、EP層と同じ導電型のウェルを形成し、該ウェル中に、該ウェルと異なる第1の導電型のドーパントを拡散させてpn接合を設ける。これによって、ウェル中に空乏層を形成できる。そして、ウェル中に形成された拡散層を一方の電極とし、半導体基板のエピタキシャル層を成長させていない面を他方の電極として1つのセルとし、複数のセルからなるTEG(Test Element Group)を使用して接合リーク電流評価を行う。これによって、表面近傍のウェーハ品質に加え、EP層及び半導体基板の界面付近の深い領域のウェーハ品質を反映した高精度のウェーハ評価(リーク電流特性評価)が可能となる。
【0012】
さらに、本発明では、ウェルの接合周辺にチャネルストップ層が設けられているので、分離酸化膜や表面界面準位などの影響でウェル周辺に寄生空乏容量が発生するのを防止できる。よって、接合リーク電流の測定の際に、ウェル周辺からのリーク電流(周辺成分)までも測定してしまうのを防止できる。
【0013】
また、本発明において、前記半導体基板上に前記エピタキシャル層を成長させた後、そのエピタキシャル層上に、窓開けした部分を有した分離酸化膜を形成し、イオン注入により前記窓開けした部分直下に前記ウェルを形成するとともに、前記分離酸化膜直下に該イオン注入で注入されるドーパントで前記チャネルストップ層を形成する。これによって、ウェルとチャネルストップ層の両方を同一の工程(イオン注入工程)で形成できるので、製造工程を簡素にできる。
【0014】
また、本発明のウェル形成時において、前記分離酸化膜以外の酸化膜を形成せず直接イオン注入し、このイオン注入において注入量はGOI(酸化膜耐圧)に影響する欠陥が生じない範囲とする。
【0015】
一般的にはウェル形成のイオン注入前には、特開平6−163844号公報や特開平7−201974号公報に記載のように分離酸化膜以外の箇所に薄いスクリーン酸化膜(熱酸化膜)を形成する。これに対し、本発明によれば、イオン注入前の熱酸化膜(スクリーン酸化膜)を形成しないで、直接イオン注入しているので、スクリーン酸化膜を形成する工程を削減でき、かつイオン注入により導入される欠陥(GOIに影響する欠陥)をなくした状態でウェーハ評価を行うことができる。
【0016】
また、本発明において、前記ウェル上の電極の電極面積が4mm以下とするのが好ましい。これによって、接合リーク電流を測定するときの位置分解能を高く確保でき、リーク電流測定したときの電流値が大きくなりすぎるのを防止できる。
【0017】
また、本発明において、前記ウェルはドーパント濃度1×1016atoms/cmから1×1017atoms/cmで深さ2μm以下であり、前記ウェル内部に形成された拡散層はドーパント濃度1×1018atoms/cmから5×1020atoms/cmで深さ1μm以下であり、前記チャネルストップ層はドーパント濃度1×1016atoms/cmから1×1017atoms/cmで深さ0.5μm以下とするのが好ましい。本発明者の知見では、これらの数値範囲とすることにより、接合リーク電流を高精度に測定できる。
【0018】
本発明に係る評価用半導体基板は、第1の導電型の半導体基板とは異なる第2の導電型のエピタキシャル層を該半導体基板上に成長させ、該エピタキシャル層と同じ第2の導電型のウェルを該エピタキシャル層中に形成し、該ウェルの接合周辺にチャネルストップ層を設け、該ウェル中に、該ウェルと異なる第1の導電型のドーパントを拡散させてpn接合を設け一方の電極とし、もう一方の電極は前記半導体基板のエピタキシャル層を成長させていない面としてひとつのセルとし、該セルを前記半導体基板上に複数形成してTEG(Test Element Group)として使用し、前記ウェルのドーパント濃度を1×1016atoms/cmから1×1017atoms/cmとしたことを特徴とする。本発明の評価用半導体基板によれば、本発明の半導体基板の評価方法と同じ効果を得ることができる。
【0019】
本発明に係る半導体装置は、第1の導電型の半導体基板とは異なる第2の導電型のエピタキシャル層を該半導体基板上に成長させ、該エピタキシャル層と同じ第2の導電型のウェルを該エピタキシャル層中に形成し、該ウェルの接合周辺にチャネルストップ層を設け、該ウェル中に、該ウェルと異なる第1の導電型のドーパントを拡散させてpn接合を設け一方の電極とし、もう一方の電極は前記半導体基板のエピタキシャル層を成長させていない面としてひとつのセルとし、前記ウェルのドーパント濃度を1×1016atoms/cmから1×1017atoms/cmとしたことを特徴とする。本発明の半導体装置によれば、本発明の半導体基板の評価方法と同じ効果を得ることができる。
【0020】
以上のように、本発明(半導体基板の評価方法、評価用半導体基板、半導体装置)によれば、CCD、CMOSセンサ等の高歩留まりが要求される製品に使用される高品質ウェーハのリーク電流特性を、簡便かつ高精度で評価することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】シリコンウェーハ100の平面図である。
図2】セル20の断面構造を模式的に示した図である。
図3】セル20の製造工程の一例を示したフロー図である。
図4】実施例1の構造のリーク電流測定結果を示した図である。
図5】比較例1の構造のリーク電流測定結果を示した図である。
図6】比較例2の構造のリーク電流測定結果を示した図である。
図7】従来のガードリング31付きのセル30を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の評価用半導体基板としてのシリコンウェーハ100の平面図を示している。図2は、図1の箇所101におけるII−II断面図であり、本発明の半導体装置としての接合リーク電流測定用のセル20の接合構造(断面構造)を示している。なお、図7には、従来(特許第3250158号公報)のセル30の接合構造(ガードリング31付きの構造)を示している。図2のセル20は、図1のシリコンウェーハ100の面内の複数の箇所に形成されている。それら複数のセル20により、シリコンウェーハ100の品質評価のためのTEG(Test
Element Group)を構成している。なお、図1の箇所101は、セル20が形成された複数の箇所から任意に選択した一の箇所とされている。図2のセル20の接合構造と従来の接合構造30(図7参照)の一番大きな違いは、セル20には、空乏層が表層近傍及びEP層/EP基板界面の2箇所に存在していることである。以下、セル20の接合構造を詳細に説明する。
【0023】
図2のセル20は、EP基板1と、そのEP基板1上に形成されたエピタキシャル層(EP層)2と、そのEP層2の表層近傍に形成されたウェル5と、そのウェル5中に形成された拡散層6と、ウェル5の接合周辺である分離酸化膜9の直下に形成されたチャネルストップ層10とを含む形で構成されている。このセル20の特徴は、第一に、EP基板1とEP層2との導電型を変えることである。すなわち、EP層2は、EP基板1とは異なる導電型となっている。そのため、EP基板1とEP層2の界面3にはpn接合が形成されてそのpn接合による空乏層4が形成されている。また、EP層2のドーパント濃度は、EP基板1のドーパント濃度よりも小さくなっている。これにより、EP層2側に空乏層4を広げることができ、その結果、EP層2の品質評価が可能となる。
【0024】
ウェル5は、分離酸化膜9の窓開けした部分91の直下に形成されている。そのウェル5は、EP層2と同じ導電型とされる。そして、ウェル5の濃度(ウェル濃度)が、セル20の特徴の1つとされる。すなわち、ウェル5は、1×1016atoms/cmから1×1017atoms/cmの範囲となっている。特にボロンをイオン注入し、ウェル5を形成する場合は、高濃度になりすぎると、イオン注入により転位が形成されウェル5中に欠陥が形成されやすくなる。もちろん、濃度が低すぎると、もとの基板抵抗(EP基板1の抵抗)の影響を受けて、安定したリーク電流測定が行いにくくなる。本発明者らの見出した上記範囲であれば、転位の発生がなく安定した測定が可能である。また、ウェル5の深さは2μm以下が好ましい。
【0025】
なお、分離酸化膜9は、EP層2の上(厳密には拡散層6及びチャネルストップ層10の上)に形成された、セル20を他と絶縁分離するための酸化膜である。その分離酸化膜9の厚さは、後述するチャネルストップ層10を考慮して設定されている。
【0026】
拡散層6は、ウェル5中に形成され(ウェル5の表面からウェル5内部のある深さの範囲に亘って形成され)、ウェル5と異なる導電型のドーパントが拡散された層である。ウェル5(拡散層6を除く部分)と拡散層6は互いに異なる導電型となっているので、それら界面7はpn接合となっている。そのため、ウェル5内には、pn接合7による空乏層8が形成されている。拡散層6のドーパント濃度は、1×1018atoms/cmから5×1020atoms/cmの範囲が好ましい。また、拡散層6の深さは1μm以下が好ましい。拡散層6のドーパント濃度や深さを上記範囲とすることで、接合リーク電流測定に好適な空乏層8を設定できる。なお、以下では、ウェル5のうち、拡散層6を除く部分を符号「51」で示し、その符号「51」の部分を非拡散層という。
【0027】
また、拡散層6はセル20の一方の電極とされている。その電極としての拡散層6の面積(pn接合7の面積)は10mm以下とするのが好ましく、より好ましくは4mm以下とするのが好ましい。電極面積が4mmより大きくなると、リーク電流を測定するときの位置分解能が低下して、リーク電流の値が大きくなりすぎる場合がある。その結果、ウェーハの品質が悪いときのリーク電流と、品質が良いときのリーク電流との差が出にくくなる。なお、逆に電極面積が小さすぎると、リーク電流の値が小さくなりすぎる場合があり、ウェーハ品質の良否を正確に判定しにくくなる。そのため、電極面積の下限は、リーク電流の値が小さくなりすぎないように適宜に設定される。
【0028】
チャネルストップ層10は、ウェル5の接合周辺(pn接合7の周縁部の周り)に形成されている。別の言い方をすると、チャネルストップ層10は、分離酸化膜9の直下に形成されている。そのチャネルストップ層10は、非拡散層51と同一ドーパント、つまり非拡散層51と同一導電型の層とされる。チャネルストップ層10のドーパント濃度は1×1016atoms/cmから1×1017atoms/cmの範囲が好ましい。また、チャネルストップ層10の深さは0.5μm以下とするのが好ましい。チャネルストップ層10によって、分離酸化膜9や表面界面準位などの影響でウェル5周辺に寄生空乏容量が発生するのを防止できる。その結果、接合リーク電流の測定の際に、ウェル5周辺からのリーク電流(周辺成分)も測定してしまうのを防止できる。また、チャネルストップ層10のドーパント濃度や深さを上記範囲とすることで、後述するチャネルストップ層10形成時のイオン注入でGOI(酸化膜耐圧)に影響する欠陥を生じないようにできる。
【0029】
以上説明した構成を有するセル20では、上述したように拡散層6を一方の電極とし、EP基板1のEP層2を成長させていない面1a(以下、裏面という)をもう一方の電極として接合リーク電流測定に使用される。具体的には、表面6a側及び裏面1a側ともに同電位かつ逆バイアス(各pn接合7、3に対して逆バイアス)を印加する。そして、表面6a及び裏面1aそれぞれの端子に流れる電流を、2つの空乏層4、8を流れる接合リーク電流(空乏層での発生再結合電流)としてモニタリングする。本発明の構造によれば、表面6a近傍(空乏層8)に加え、それよりも深い位置にあるEP層2とEP基板1の界面(空乏層4)との2箇所の空乏品質の測定が可能になる。よって、シリコンウェーハ100の評価を精度良く行うことができる。
【0030】
次に、セル20の製造方法を説明する。図3は、セル20の製造工程の一例を示したフロー図である。先ず、EP基板1の上にEP層2をエピタキシャル成長させる(図3(A)のEP層成長工程)。それらEP基板1、EP層2を品質評価の対象とする被評価基板とする。次に、その被評価基板の上(EP層2の上)にマスクとなるマスク酸化膜90を形成する(図3(B)のマスク酸化膜形成工程)。このマスク酸化膜90は熱酸化でもCVDでも良いが、以下の点に注意する。すなわち、このあとのウェル形成のためにイオン注入を行うのであるが、このときのイオンがわずかにマスク酸化膜90を通過してチャネルストップ層を形成するように、マスク酸化膜90の厚さを設定する。この厚さは、イオンを構成する元素や、イオン注入条件(加速電圧等)に依存するため、工程、設備に適した値を採る必要がある。
【0031】
次に、マスク酸化膜90にフォトリソグラフィを行い、マスク酸化膜90をドライエッチング又はウエットエッチングにより窓開け処理を行う(図3(C)の窓開け工程)。このとき窓開けした部分91が、図2のpn接合7の接合面積(電極面積)に相当することになる。そのため、窓開けした部分91の面積は、接合面積が望ましくは4mm以下を満たすように設定される。なお、窓開けした部分91を除くマスク酸化膜90の部分が、分離酸化膜9となる。
【0032】
次に、イオン注入により、EP層2と同じ導電型のイオン13(ドーパント)をEP層2に注入する(図3(D)のイオン注入工程)。このとき、窓開けした部分91の直下及び分離酸化膜9の直下には、イオン注入層12が形成される。このイオン注入層12のうち、窓開けした部分91の直下に形成された層5がウェルとして機能し、分離酸化膜9の直下に形成された層10がチャネルストップ層として機能する。なお、このウェル5は、図2の拡散層6が形成される前のウェルに該当する。また、チャネルストップ層10は、イオン13が分離酸化膜9を通過することで、つまりセルアラインを利用して形成される。また、図3(D)の工程では、分離酸化膜9以外の酸化膜(スクリーン酸化膜のための熱酸化膜等)を形成しないで直接イオン注入を行う。これによって、製造工程を簡素化できる。また、イオン注入におけるドーズ量は、GOI(酸化膜耐圧)に影響する欠陥が生じない範囲、つまり上述したウェル5のドーパント濃度の好適範囲(1×1016atoms/cmから1×1017atoms/cmの範囲)を満たすように設定される。さらに、イオン注入における加速電圧は、分離酸化膜9の厚さ等を考慮して、チャネルストップ層10が形成できるように設定される。イオン注入を行った後、回復アニールを行う。
【0033】
次に、ウェル5内にpn接合を形成するために、ウェル5とは異なる導電型の元素を拡散させて、拡散層6を形成する(図3(E)の拡散工程)。このときの拡散はイオン注入でも固定拡散でも良い。ただし、イオン注入を使った場合には、図3(E)のイオン注入による回復熱処理と、図3(D)のイオン注入による回復熱処理(回復アニール)とを兼ねても良い。以上の各工程を経て、2箇所の位置にpn接合3、7を有したセル20(図3(E)参照)が完成する。
【実施例1】
【0034】
本発明の効果を確認するために次の実験を行った。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。抵抗率10Ω・cmのボロンドープ200mmφシリコンウェーハ(図2のEP基板1に対応)を材料として、まずこれを、重金属汚染の存在があらかじめ分かっているエピリアクタに入れて、リンをドープしたEP層を成長させる。このときのEP層は厚さ10μm、抵抗率10Ω・cmとした。この基板にPyro雰囲気1000℃、90分の処理で200nmの酸化膜を形成した。こののち、レジストを塗布し、フォトリソグラフィを行う。今回はネガレジストを選択した。マスクには各種面積の開口部を準備しておき、接合リークの面積依存を測定できるように工夫した。また同一面積で周辺長を変えたものも準備した。このレジスト付きウェーハをバッファードHF溶液にて酸化膜エッチングし、硫酸過酸化水素混合液にてレジストを除去後、RCA洗浄を実施した。このウェーハに加速電圧55KeV、ドーズ量2×1012atoms/cmでボロンをイオン注入してウェル及びチャネルストップ層を形成した。なお、このときのドーズ量2×1012atoms/cmは、ウェルのピーク濃度が1×1017atoms/cmとなるドーズ量である。その後、1000℃、窒素雰囲気下で回復アニールを実施した後、リンガラスを塗布拡散し、リンを表面より拡散することで、ウェル内にpn接合を形成した。
【0035】
本構造のリーク電流測定結果(リーク電流の分布結果)を図4に示す。なお、図4(A)は、本発明のウェーハ100の表面102側の電極(図2のウェル5側の電極)に3Vの逆バイアスを印加して、ウェル5側の電極に流れるリーク電流の測定結果を示している。また、図4(B)は、ウェーハ100を裏面103側の電極(図2のEP基板1の裏面1a)に3Vの逆バイアスを印加して、裏面1a側の電極に流れるリーク電流の測定結果を示している。また、図4では、格子状の図となっているが、各格子ごとにセル20(図2参照)を形成し、各格子ごとにリーク電流を測定したときの結果を示している。図4では、リーク電流の大きさを色の濃淡であらわしており、色が濃いほどリーク電流が大きくなっている。
【0036】
図4(A)では、ウェル5内の空乏層8(図2参照)からのリーク電流を見ていることになり、図4(B)では、EP層2とEP基板1との界面の空乏層4(図2参照)を見ていることになる。図4(A)と図4(B)を比較すると、ウェーハ100の中心付近の領域105に差が見られる。具体的には、図4(A)の領域105に比べて、図4(B)の領域105にはリーク電流が大きくなっている領域104(色が濃い領域)が含まれている。このことから、図4(B)では、ウェーハ100の表層から深い領域(EP層2とEP基板1との界面付近)の欠陥(EP層の重金属汚染)をうまく捕らえていると言える。
【0037】
このように、実施例1の構造によれば、ウェーハ100の表層近傍の品質及びウェーハ100の表層から深い領域の品質を評価できる。また、図4のレンジにおける一番薄い部分150は、7.00E−11となっていることから、実施例1の構造では、ピコアンペア(pA)レベルで接合リーク電流の測定が可能となっているのが分かる。
【比較例1】
【0038】
本発明と比較するために、以下のように、リーク電流測定用のセル構造を作製した。抵抗率10Ω・cmのボロンドープ200mmφシリコンウェーハを材料として、まずこれを、重金属汚染の存在があらかじめ分かっているエピリアクタに入れて、ボロンをドープしたEP層を成長させる。つまり、シリコンウェーハ(EP基板)とEP層は同じ導電型にする。その他は、実施例1の製造条件と同じとして、図2の構造のEP層2/EP基板1界面の空乏層4がないセル構造を作製した。
【0039】
本構造のリーク電流測定結果を図5に示す。ウェーハ面内で汚染に起因するような特徴的な分布は得られなかった。つまり、この比較例1の構造では、EP層の重金属汚染をうまく捕らえることができない。
【比較例2】
【0040】
次に、比較例2として、図2のチャネルストップ層10を持たない構造(その他は図2の構造と同じ)を作製した。具体的には、抵抗率10Ω・cmのボロンドープ200mmφシリコンウェーハを材料として、まずこれを、重金属汚染の存在があらかじめ分かっているエピリアクタに入れて、リンをドープしたEP層を成長させる。このときのEP層は厚さ10μm、抵抗率10Ω・cmとした。次にPyro雰囲気1000℃、300分の処理で800nmの酸化膜を形成した。つまり、比較例2の酸化膜は、実施例1のときよりも厚くなっている。こののち、レジストを塗布し、フォトリソグラフィを行う。このレジスト付きウェーハをバッファードHF溶液にて酸化膜エッチングし、硫酸過酸化水素混合液にてレジストを除去後、RCA洗浄を実施した。このウェーハに加速電圧55KeV、ドーズ量2×1012atoms/cmでボロンをイオン注入し、1000℃、窒素雰囲気下で回復アニール後、リンガラスを塗布拡散し、リンを表面より拡散することで、接合を形成した。この加速電圧の場合、800nmの酸化膜をボロンは通過できず、接合周辺のチャネルストップ層は形成されない。
【0041】
本構造のリーク電流測定結果を図6に示す。チャネルストップ層が無いことでリーク電流レベルが全体的に高くなっており、評価には適さないことが分かる。
【0042】
以上説明したように、本実施形態のセル及びそのセルが複数形成されてTEGとして使用されるシリコンウェーハによれば、ウェーハの表層近傍及び表層から深い領域に形成された2つの空乏層からのリーク電流を測定できる。よって、シリコンウェーハ100の表層近傍に加え、表層から深い領域のウェーハ品質の評価が可能となる。
【0043】
なお、本発明の半導体基板の評価方法、評価用半導体基板及び半導体装置は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱しない限度で種々の変更が可能である。例えば、上記実施例1では、EP基板をp型、EP層をn型の例を説明したが、EP基板をn型、EP層をp型の構造にしても良い。
【符号の説明】
【0044】
1 EP基板(半導体基板)
2 EP層(エピタキシャル層)
3、7 pn接合
4、8 空乏層
5 ウェル
6 拡散層
9 分離酸化膜
10 チャネルストップ層
20 セル(半導体装置)
100 シリコンウェーハ(評価半導体基板)
図1
図2
図3
図7
図4
図5
図6