【実施例】
【0017】
以下、本発明について実施例を挙げて詳述するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0018】
測定機器
[1]分取用GPC
日本分析工業社製、LC−9201
[2]分析用GPC
日立ハイテクノロジーズ社製、L−2000
[3]超伝導核磁気共鳴装置(NMR)
ブルカーバイオスピン製 AVANCE−500−S
[4]サイクリックボルタンメトリー(CV)
BAS社製 ALS−630C
[5]電子スペクトル(UV−Vis)
日立ハイテクノロジーズ社製、HITACHI U−3000型分光光度計
[6]電子スペクトル(UV−Vis)
株式会社日立製作所製、U−3300型紫外線分光光度計
[7]ガスクロマトグラフィー質量分析(GC−MS)
(株)島津製作所製、GC−MS−QP5050AHガスクロマトグラフ質量分析計[8]ガスクロマトグラフィー(GC)
(株)島津製作所製、GC−2010ガスクロマトグラフ分析計
【0019】
参考例1 ビタミンB
12誘導体の合成
【化15】
ビタミンB
12誘導体を以下に示す操作で合成し、1つのカルボキシル基を有する(CN)
2Cob(III)6C1エステル、及び2つのカルボキシル基を有する(CN)
2Cob(III)5C
1エステルの混合物を得た。
シアノコバラミン2.5g(1.9×10
-3 mol)のメタノール溶液300mLに
98%冷濃硫酸30mLを滴下した。遮光条件下、窒素雰囲気下で120時間加熱還流した。反応混合物を減圧濃縮し、冷水100mLを加えた後、固体炭酸ナトリウムで中和し、シアン化カリウム1.0g(1.5×10
-2mol)を加えた。四塩化炭素(100mL×2)、塩化メチレン(100mL×2)の順に抽出を行い、塩化メチレン抽出液を水(100mL×2)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧乾固した。ベンゼン/n−へキサンで再沈殿を行い、紫色粉末(914mg 収率45%)を得た。
【0020】
参考例2 ビタミンB
12モノマーの合成
【化16】
25mLの二口ナス型フラスコに参考例1で得られた1つのカルボキシル基を有するビタミンB
12誘導体200.3mg(1.86×10
-4mol)、ジメチルアミノピリジン(DMAP)117.2mg(9.59×10
-4mol)、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC/HCl)176.2mg(9.19×10
-4mol)を入れ、窒素置換した。乾燥N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液(2mL)を加えて溶解させた後、氷浴下で30分撹拌した。アミノメチルスチレン1)130μLを加え、6時間撹拌後、室温に戻して12時間撹拌した。その後、蒸留水を加え四塩化炭素50mL×3で抽出した。有機相を3%HCl水溶液100mLで洗浄した後、KCN水溶液100mLで激しく振とうし、蒸留水で2回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで脱水後、溶液を濃縮し、塩化メチレン/n−ヘキサンで再沈殿した。生成物をろ過、減圧乾燥し紫色粉末を得た(収量:126.6mg、収率:59.7%)。MALDI−TOF−MSスペクトル、UV−visスペクトル及び1HNMRスペクトルをそれぞれ
図1、
図2及び
図3に示す。
1) Vincenzo Bertini,et al.,Tetrahedron Lett.,2004,60,11407に従って合成した。
【0021】
例1 ビタミンB
12モノマーとスチレンの共重合高分子の合成
【化17】
30mLナス型フラスコに参考例2で合成したビタミンB
12モノマー50.2mg(4.41×10
−5mol)、スチレン234.3mg(2.25×10
−3mol)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)3.7mg(2.3×10
−5mol)、ベンゼン2mLを入れ、Freeze−pump−thawで脱気、窒素置換した。その後、油浴70℃で24時間撹拌して、室温に戻し、ベンゼン/メタノールで再沈殿した。組成比はUV−visスペクトルから算出した(組成比n:m=1.7:98.3)。
収量:81.3mg、Mw=36000、Mn=27000、Mw/Mn=1.34
ビタミンB
12モノマーとスチレンの共重合高分子のUV−visスペクトル、
1HNMRスペクトル及びGPCチャートをそれぞれ
図4、
図5及び
図6に示す。
【0022】
例2 ビタミンB
12モノマーとスチリルエチルトリメトキシシランの共重合高分子の合成
【化18】
30mLのシュレンク管にビタミンB
12モノマー102mg(8.59×10
−5mol)、スチリルエチルトリメトキシシラン1.10g(4.13×10
−3mol)、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)6.91mg(4.21×10
−5mol)、ベンゼン0.826gを入れ、Freeze−pump−thawで脱気、窒素置換した。その後、油浴80℃で17時間撹拌して、室温に戻しアセトン/メタノールで再沈殿した後、アセトン/水で再沈殿して紫色固体として得た。
収量:583mg、Mw=643000、Mn=164000、Mw/Mn=3.92
ビタミンB
12モノマーとスチリルエチルトリメトキシシランの共重合高分子のUV−visスペクトル及びGPCチャートをそれぞれ
図7及び
図8に示す。
【0023】
実施例3 ビタミンB
12モノマーとスチレン−ジチオカルバメート(DC)の共重合HBPの合成
【化19】
30mLのシュレンク管にビタミンB
12モノマー102mg(8.58×10
−5mol)、スチレン−DC1.14g(4.29×10
−3mol)、ジスルフィラム(DCDC)13.2mg(4.45×10
−5mol)、トルエン2.11gを入れ、30分窒素バブリングして窒素置換した。その後、油浴105℃で24時間撹拌して、室温に戻し塩化メチレン/ジエチルエーテルで再沈殿して黒紫色固体として得た。
Mw=13900、Mn=7000、Mw/Mn=1.98
ビタミンB
12モノマーとスチレン−DCの共重合HBPのUV−visスペクトル及びGPCチャートをそれぞれ
図9及び
図10に示す。
【0024】
例4 ビタミンB
12−スチレン共重合高分子のアクアシアノ化
【化20】
ビタミンB
12−スチレン共重合高分子41.5mgを塩化メチレン50mLに溶解し、30%過塩素酸水溶液40mLを加え、分液漏斗で激しく振とうした。有機相が紫色から赤色に変化した後、蒸留水で3回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで脱水後、溶媒を減圧留去してベンゼン/n−ヘキサンで再沈殿し、赤色粉末を得た(収量:29.3mg)。ビタミンB
12−スチレン共重合高分子(アコシアノ体)のUV−visスペクトルを
図11に示す。
【0025】
例5 ビタミンB
12−スチレン共重合高分子のCo(II)化
【化21】
ビタミンB
12−スチレン共重合高分子(アコシアノ体)29.3mgをアセトニトリル/ベンゼン混合溶媒100mLに溶解し、10分間撹拌しながら窒素バブリングして脱気した。そのまま溶液が赤色から黒茶色に変化するまでNaBH
4を加えた後、5分間窒素
バブリングした。その後、溶液が黒茶色から橙色に変化するまで60%過塩素酸水溶液をゆっくりと滴下した。塩化メチレン100mLを加え、蒸留水で3回洗浄した。無水硫酸ナトリウムで脱水後、溶媒を減圧留去してベンゼン/n−ヘキサンで再沈殿し、橙色粉末
を得た(収量:19.2mg)。ビタミンB
12−スチレン共重合高分子(Co(II)体)のUV−visスペクトルを
図12に示す。
【0026】
例6 ビタミンB
12−スチレン共重合高分子(Co(II)体)のサイクリックボルタンメトリー(CV)測定
ビタミンB
12−スチレン共重合高分子(Co(II)体)を用いて、高分子中のビタミンB
12誘導体0.57mM、過塩素酸テトラ−n−ブチルアンモニウム0.1MのDMF溶液2mLを調整した作用電極にグラッシカーボン電極、対電極に白金電極、参照電極にAg/AgCl電極を用いCV測定を行った。その結果を
図13に示す。
次いで、基質として臭化フェネチル40μLを加えて測定した。その結果を
図14に示す。
図13においてCo
II/Co
Iの可逆的な酸化還元波が見られ、B
12−HBPハイブリッド触媒が電気化学的に応用可能であることが確認できた。実際に
図14においてCo
II/Co
Iの不可逆的な還元波(−0.5V付近)及びコバルトアルキル錯体の1電子還元波(−1.3V付近)が見られた。これは電気化学的に活性化されたCo(I)種が臭化フェネチルを求核攻撃し、脱ハロゲン化反応が進行していることを示している。また、
図14中、+0.5V付近の可逆ピークは内部標準フェロセンに由来するものである。
【0027】
例7 耐アルカリ性試験
<実験操作>
【化22】
上記A及びBで表されるビタミンB
12誘導体、並びに
例1で得られた本発明のビタミンB
12修飾ポリマーの塩化メチレン溶液を調製し、1MのNaOH水溶液を加え、激しく振とうした。12時間後、本発明のビタミンB
12修飾ポリマーを含む溶液の塩化メチレン層のGPC分析を行った。その結果を
図16に示す。また、
図15は、各種溶液の写真を示したものであり、それらは上記Aで表されるビタミンB
12誘導体(左)、上記A
で表されるビタミンB
12誘導体(中)及び本発明のビタミンB
12修飾ポリマー(右)である。不飽和二重結合を有する部分がビタミンB
12化合物とアミド結合した本発明のビタミンB12修飾ポリマーは、安定に塩化メチレン層に存在しており、アミド結合がアルカリに対して安定であることが判明した。塩化メチレン層のGPC分析からも、本発明のビタミンB12修飾ポリマーが安定に存在することが確認された。一方、上記Bのエステル結合で連結したものは、加水分解が進行し、NaOH層へと移動した。
【0028】
例8 ビタミンB
12修飾ポリマーの自己光増感能測定
ビタミンB
12−スチレン共重合高分子(Co(II)体)をテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、高分子中のビタミンB
12誘導体の濃度が1.0×10
−6Mになるように調整した。そこにトリエタノールアミンを加え、1.0×10
−1M溶液とした。Freeze−pump−thawにより溶液中の溶存酸素を脱気した後、ブラックライト(フナコシ(株)製、15W)により反応器外表面における紫外線強度1.76mWcm
−2の紫外線を24時間照射した。紫外線照射を開始してから1、2、3、5、7及び10時間後に測定したビタミンB
12修飾ポリマー溶液のUV−visスペクトルを
図17に示す。
図17に示されたように、紫外線照により、ビタミンB
12−スチレン共重合高分子(Co(II)体)を表す470nmの吸収ピークが減少し、ビタミンB
12−スチレン共重合高分子(Co(I)体)を表す390nmの吸収ピークが増加することが示されたことから、ビタミンB
12−スチレン共重合高分子(Co(I)体)の生成を確認した。
【0029】
例9 ビタミンB
12ポリマーの光増感型触媒反応
【化23】
ビタミンB
12−スチレン共重合高分子(Co(II)体)をテトラヒドロフラン(THF)3mLに溶解し、高分子中のビタミンB
12誘導体の濃度が1.0×10
−4Mになるように調整した。そこにトリエタノールアミン及び臭化フェネチルを加え、それぞれの濃度が3.0M及び3.0×10
−2Mの溶液とした。Freeze−pump−thaw法により溶液中の溶存酸素を脱気した後、ブラックライト(フナコシ(株)製、15W)により反応器外表面における紫外線強度1.76mWcm
−2の紫外線を110時間照射した。照射後の溶液をGC及びGC−MSで測定した結果、臭化フェネチルのピーク
は観察されず、臭化フェネチルの脱臭素化反応が進行して得られるエチルベンゼン、スチレン及びtrans−1,4−ジフェニル−1−ブテンのピークが観察された。測定したGCチャートを
図18に、得られた生成物及びその収量を表1に示す。
【0030】
例10 光増感型触媒反応(ブランク実験)
トリエタノールアミン及び臭化フェネチルをテトラヒドロフラン(THF)に溶解し、それぞれの濃度が3.0M及び3.0×10
−2Mとなるように調整した。Freeze−pump−thaw法により溶液中の溶存酸素を脱気した後、ブラックライト(フナコシ(株)製、15W)により反応器外表面における紫外線強度1.76mWcm
−2の紫外線を120時間照射した。照射後の溶液をGC及びGC−MSで測定した結果、触媒であるビタミンB
12修飾ポリマーの非存在下では、脱臭素化反応が進行せず、臭化フェネチルのピークのみが観察された。
【表1】
表1 ビタミンB
12修飾ポリマーの光増感型触媒反応