特許第5751749号(P5751749)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5751749
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】内視鏡用処置具
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/12 20060101AFI20150702BHJP
【FI】
   A61B17/39 310
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2009-224910(P2009-224910)
(22)【出願日】2009年9月29日
(65)【公開番号】特開2010-104776(P2010-104776A)
(43)【公開日】2010年5月13日
【審査請求日】2012年8月27日
【審判番号】不服2014-4516(P2014-4516/J1)
【審判請求日】2014年3月7日
(31)【優先権主張番号】特願2008-255016(P2008-255016)
(32)【優先日】2008年9月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】505246789
【氏名又は名称】学校法人自治医科大学
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】山本 博徳
(72)【発明者】
【氏名】石川 諒
【合議体】
【審判長】 高木 彰
【審判官】 松下 聡
【審判官】 関谷 一夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−248911(JP,A)
【文献】 特開平10−5237(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/26689(WO,A1)
【文献】 国際公開第2007/34708(WO,A1)
【文献】 特開2006−334242(JP,A)
【文献】 特許第3655664(JP,B2)
【文献】 欧州特許出願公開第1522269(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B18/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作部と、該操作部に接続されるとともに挿入部を構成する筒状のシースと、前記操作部の操作によって前記シースの先端開口部から突没される軸状電極と、該軸状電極の先端部に設けられた先端電極部とを備え、内視鏡の鉗子チャンネルに挿抜される内視鏡用処置具であって、
前記シースの先端部の外周面は先端側に向かって先細となる円錐テーパ状に形成され、
前記シースの先端部のテーパ部において、
記テーパ部の基端側外形寸法c、前記テーパ部の先端側外形寸法d、前記先端電極部の外形寸法eとした際に、e>dであり、0.4c≦d≦0.6cであることを特徴とする内視鏡用処置具。
【請求項2】
前記シースの先端部のテーパ部は、シースと別体の絶縁性部材によって構成され、該絶縁性部材がシースの先端開口部に取り付けられている請求項1に記載の内視鏡用処置具。
【請求項3】
前記先端電極部は、導体部と該導体部の先端側及び基端側に設けられた不導体部とから成るサンドイッチ構造に形成され、前記導体部が前記先端電極部の側面に帯状に露出形成される請求項1又は2に記載の内視鏡用処置具。
【請求項4】
前記先端電極部は、4枚の板部材を十字状に組み合わせた形状に形成された不導体部と、該不導体部の先端側及び基端側に設けられた導体部とからなる請求項1又は2に記載の内視鏡用処置具。
【請求項5】
前記テーパ部の軸方向長さbとした際に、d<bである請求項1〜4のいずれかに記載の内視鏡用処置具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は内視鏡用処置具に係り、特に内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)で用いられる内視鏡用処置具に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡的粘膜切除術は早期食道癌、早期胃癌、早期大腸癌のような腫瘍性粘膜病変部の根治術として低侵襲で確実な治療法として有用性が認識されている。近年、内視鏡的粘膜切除をより広範囲に及ぶ病変部でも確実に一括摘除できる方法として、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)という方法が開発され、普及してきた。この方法は、腫瘍周囲の粘膜を切開した後、その粘膜と固有筋層との間の粘膜下層を切断することによって、腫瘍粘膜を一括摘除する方法である。
【0003】
特許文献1、2には、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)に使用される内視鏡用処置具が開示されている。
【0004】
特許文献1の図1に開示された内視鏡用処置具は、手元操作部と、この手元操作部に接続される挿入部とから構成されており、挿入部は、非導電性の筒状の可撓性シースと、このシースの内部に挿通配置された導電性のワイヤと、シースの先端部に取り付けられるとともに前記ワイヤの先端部に接続された先端電極部とから構成される。また、ワイヤの基端部は、手元操作部に設けられたコネクタに接続され、このコネクタに高周波電流供給装置が接続されている。
【0005】
また、特許文献2の図28に開示された内視鏡用処置具は、手元操作部と、この手元操作部に接続される挿入部とから構成されている。この挿入部は、非導電性の筒状の可撓性シースと、このシースの内部に挿通配置された導電性のワイヤと、手元操作部の操作によってシースの先端部から突没されるとともに前記ワイヤの先端部に接続された軸状電極と、この軸状電極の先端部に接続された先端電極部とから構成される。また、ワイヤの基端部は、手元操作部に設けられたコネクタに接続され、このコネクタに高周波電流供給装置が接続されている。
【0006】
これらの内視鏡用処置具は、内視鏡挿入部に挿通配置されている鉗子チャンネルに挿入され、内視鏡挿入部の先端硬質部に形成された鉗子口からシースの先端部が突出される。そして、施術者は、前記先端硬質部に設けられた撮像部からの画像を観察しながら手元操作部を操作して先端電極部を操作し処置箇所の粘膜を切除する。また、特許文献2の内視鏡用処置具は、軸状電極に高周波電流を通電することによって粘膜を軸状電極で切開することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO2007/034708A1
【特許文献2】WO2008/026689A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2の内視鏡用処置具のシースは、その先端部も他の部分と同様の同一外形寸法を有する単なる筒状である。このため、内視鏡の撮像部から伝送されてくる観察像にシースの先端部が大きく映ってしまい、シースの先端部の延長上にある先端電極部、軸状電極、及び処置箇所の視認性が悪いという欠点があるとともに、切開した粘膜から粘膜下層へ先端電極部を潜り込ませづらいという欠点があった。
【0009】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、先端電極部、軸状電極、処置箇所の視認性を向上させ、また、粘膜や粘膜下層の剥離を安全にかつ容易に行なうことができる内視鏡用処置具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記目的を達成するために、操作部と、該操作部に接続されるとともに挿入部を構成する筒状のシースと、前記操作部の操作によって前記シースの先端開口部から突没される軸状電極と、該軸状電極の先端部に設けられた先端電極部とを備え、内視鏡の鉗子チャンネルに挿抜される内視鏡用処置具であって、前記シースの先端部の外周面は先端側に向かって先細となる円錐テーパ状に形成され、前記シースの先端部のテーパ部において、記テーパ部の基端側外形寸法c、前記テーパ部の先端側外形寸法d、前記先端電極部の外形寸法eとした際に、e>dであり、0.4c≦d≦0.6cであることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、シースの先端部を先細のテーパ状に形成したため、観察像に映るシースの先端部が小さくなり、これによって、従来ではシースの先端部によって邪魔されて観察することのできなかった先端電極部、軸状電極、処置箇所が観察できるようになる。したがって、本発明の内視鏡用処置具によれば、先端電極部、軸状電極、処置箇所の視認性を向上させることができるとともに、粘膜や粘膜下層の剥離を安全にかつ容易に行なうことができる。
【0012】
また、本発明によれば、前記シースの先端部のテーパ部は、連続面で先細状に、又は段階的に先細状に形成されていることが好ましい。テーパ部の連続面とは断面が直線状の面、及び円弧状の面も含む。また、段階状の面とは、断面が階段状に形成されているものを指す。すなわち、本発明のテーパ部は、先細状に形成されている全ての形態を含む。
【0013】
また、本発明によれば、前記シースの先端部のテーパ部は、シースと別体の絶縁性部材によって構成され、該絶縁性部材がシースの先端開口部に取り付けられていることが好ましい。テーパ部をシースと別体の絶縁性部材、例えば、剛性の高いセラミックスで構成し、そのセラミックスに形成されている貫通孔に軸状電極をスライド自在に支持させることにより、棒状部材の突没動作が安定し、また、切開や切除の際に軸状電極や先端電極の振れが抑制され、内視鏡用処置具の操作性が向上する。
【0014】
また、本発明によれば、前記先端電極部は、導体部と該導体部の先端側及び基端側に設けられた不導体部とから成るサンドイッチ構造に形成され、前記導体部が前記先端電極部の側面に帯状に露出形成されることが好ましい。本発明では、先端電極部の側面が帯状の導体部を不導体部で挟んだサンドイッチ構造となっているため、先端電極部の先端を固有筋層に当接させた際に、不導体部が固有筋層に当接し、導体部は固有筋層に接触しない。したがって、本発明の先端電極部によれば、固有筋層を切断することを確実に防止することができる。また、この先端電極部によれば、先端電極部を側方に移動させることによって、先端電極部の側面に粘膜下層が接触し、帯状の導体部に接触した粘膜下層が切断される。したがって、この先端電極部によれば、固有筋層を傷つけることなく、粘膜下層を切断することができる。
【0015】
また、本発明によれば、前記先端電極部は、4枚の板部材を十字状に組み合わせた形状に形成された不導体部と、該不導体部の先端側及び基端側に設けられた導体部とからなることが好ましい。
【0016】
また、本発明によれば、前記シースの先端部のテーパ部において、記テーパ部の基端側外形寸法c、前記テーパ部の先端側外形寸法d、前記先端電極部の外形寸法eとした際に、e>dであり、0.4c≦d≦0.6cである。また、d<bであることが好ましい。
【0017】
テーパ部の軸方向長さbが0.5a未満であると、視野を確保できなくなるとともに、剥離された粘膜から粘膜下層に先端電極を潜り込ませづらくなる。また、テーパ部の軸方向長さbが1.5aを超えると、テーパ部が長くなり過ぎるため、シース内に位置する軸状電極(没入状態)の長さも長くなり、シース先端における硬質な部分(軸状電極のガイド部)が長くなる。そうなると、内視鏡用処置具の鉗子チャンネル内への挿通性が悪化する。
【0018】
一方、テーパ部の先端側外形寸法dに関しては、軸状電極の径に近いことが理想ではあるが、0.4c未満であると小さすぎるため軸状電極の径も細くなってしまい、軸状電極が折損するおそれがあり、また、先端が鋭くなりすぎるため、粘膜や粘膜下層を傷つけてしまうおそれがあるとともに、軸状電極部が没入状態のとき、先端が先端電極部の基端と当接するため、先端電極部の座りが悪くなってしまう。テーパ部の先端側外形寸法dが0.6cを超えると、テーパ部の角度が鈍くなり、円筒形状に近づくため視野を確保できない。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る内視鏡用処置具によれば、シースの先端部を先細のテーパ状に形成したので、先端電極部、軸状電極、処置箇所の視認性を向上させることができるとともに、粘膜や粘膜下層の剥離を安全にかつ容易に行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施の形態の内視鏡用処置具を示す断面図
図2図1に示した内視鏡用処置具の先端電極部の構成を示す要部拡大斜視図
図3図1に示した内視鏡用処置具の要部側面図
図4図1に示した内視鏡用処置具による内視鏡的粘膜下層剥離術の施術方法を示した説明図
図5】内視鏡用処置具の軸状電極によって粘膜を切開する状態を示した説明図
図6】内視鏡用処置具の先端電極部によって粘膜下層を切除する状態を示した説明図
図7】観察視野範囲にある内視鏡用処置具の説明図
図8】内視鏡用処置具のシース先端部構造のバリエーションを示した構造図
図9】内視鏡用処置具の他の実施の形態を示した要部側面図
図10】内視鏡用処置具の他の実施の形態を示した要部側面図
図11図10に示した内視鏡用処置具の先端電極部の正面図
図12図7(A)に対応する内視鏡挿入部の先端部近傍の側面図
図13】従来のシースの側面に病変部の縁部が当接した状態を示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下添付図面に従って、本発明に係る内視鏡用処置具の好ましい実施の形態について詳述する。
【0022】
図1は、実施の形態の内視鏡用処置具10を示す断面図であり、図2は、図1の先端電極部12の構成を示す要部拡大斜視図である。
【0023】
図1に示すように、内視鏡用処置具10は、体内に挿入される挿入部14と、挿入部14に連設される手元操作部16とで構成される。内視鏡用処置具10を使用する際、手元操作部16が術者によって把持され、挿入部14が内視鏡の鉗子チャンネル(不図示)に挿抜される。
【0024】
挿入部14は、非導電性のシース18と、シース18内に挿通配置された導電性のワイヤ20と、ワイヤ20の先端に接続パイプ22を介して固定された軸状電極24と、軸状電極24の先端に設けられた先端電極部12とを備える。
【0025】
シース18は、図3の如く可撓性を有する筒状のチューブ26と、チューブ26の先端開口部に固定された硬質のカラー部材28とで構成され、チューブ26の基端部は手元操作部16の本体30に連結される。カラー部材28は、断熱性、非導電性(絶縁性)を有する硬質材(たとえばセラミック等)からなり、軸状電極24の外径よりも若干大きい内径を有する略筒状に形成される。この内径部が軸状電極24を突没させるための貫通孔28A(図1参照)となる。この貫通孔28Aに軸状電極24が挿通されることによって、軸状電極24がカラー部材28に安定的にガイドされ、先端電極部12の直進性が確保されるとともに、軸状電極24や先端電極部12の振れが抑制される。また、チューブ26と軸状電極24との間に断熱性のカラー部材28を介在させることによって、軸状電極24の熱がチューブ26に伝達することを防止でき、チューブ26の熱影響を排除できる。
【0026】
カラー部材28のシース18の先端から露出している露出部は略円錐形状に形成され、その表面は先細のテーパ面となっている。このカラー部材28のテーパ面については後述する。なお、カラー部材28は、先端電極部12の突出量(前進量)を規制する機能も兼ねており、先端電極部12をシース18に対して前進させた際に、接続パイプ22がカラー部材28に当接する。これによって、先端電極部12の前進がカラー部材28によって規制される。
【0027】
シース18のチューブ26内にはワイヤ20が挿通配置されており、ワイヤ20の基端部は、手元操作部16のコネクタ33に電気的に接続される。コネクタ33には、高周波電流供給装置(不図示)が電気的に接続されており、この高周波電流供給装置から高周波電流がワイヤ20に供給される。
【0028】
ワイヤ20の先端は、導電性の接続パイプ22に、その基端側から嵌入されており、溶接やロウ付け等によって接続パイプ22に固定される。接続パイプ22の先端側には導電性の軸状電極24が嵌入され、これも溶接やロウ付け等によって固定される。これにより、ワイヤ20と軸状電極24とが接続パイプ22を介して電気的に接続される。
【0029】
軸状電極24の先端には先端電極部12が設けられている。先端電極部12は正面側(図1の矢印A方向)から見て略歯車状に形成される。具体的には、先端電極部12には図2の如く、四つの山部と四つの谷部とが交互に配置される。山部の先端は丸みを帯びた形状になっており、後述の固有筋層32(図5参照)に押し当てても固有筋層32を切断しないような曲率で構成される。なお、先端電極部12の山部と谷部の数は4個に限定されるものではなく、3個以下であっても5個以上であってもよい。
【0030】
また、図2の先端電極部12は、金属板などからなる導体部34を、セラミックやプラスチック等の不導電性材料からなる一対の不導体部(絶縁体部)36、36で挟んだサンドイッチ構造になっている。導体部34と不導体部36は、正面側から見て同じ歯車形状で形成されており、重ね合わせた際にその側面が同一面をなすように構成されている。したがって、導体部34は、先端電極部12の側面を帯状の如く一周するように露出され、その先端側と基端側に不導体部36、36が設けられる。
【0031】
先端側の不導体部36と基端側の不導体部36は略同一の形状に形成されている。先端側の不導体部36は中央部が先端側に丸みを帯びて突出し、基端側の不導体部36は中央部が基端側に丸みを帯びて突出しており、先端電極部12全体が略球状に形成されている。先端側の不導体部36に丸みを設けたことによって、先端側の不導体部36と固有筋層32(図5参照)との摩擦が小さくなるので、不導体部36を固有筋層32に押し当てた状態であっても先端電極部12をスムーズに移動させることができる。
【0032】
導体部34は、軸状電極24と一体的に形成されており、図1のワイヤ20に電気的に接続されている。したがって、前述の高周波電流供給装置(不図示)を稼働させることによって、導体部34に高周波電流を流すことができる。なお、導体部34と軸状電極24とは一体であってもよいが、別部材であってもよい。また、導体部34と軸状電極24を電気的に別々に高周波電流供給装置に接続し、高周波電流供給装置によって導体部34と軸状電極24とを選択して高周波電流を供給するようにしてもよい。
【0033】
手元操作部16は、本体30とスライダ38とから構成され、本体30の基端部には術者の親指を掛けるための指かけ部30Aがリング状に形成されている。スライダ38は本体30にスライド自在に支持されており、スライダ38に設けたロックねじ40を操作することによって、スライダ38と本体30とのロック、及びロック解除が行われる。また、スライダ38には、術者の人指し指と中指を掛けるための指かけ部38A、38Aがリング状に形成されている。
【0034】
本体30の先端には、シース18のチューブ26の基端部が固定されており、スライダ38の先端にはワイヤ20の基端部が固定されている。したがって、スライダ38を本体30に対してスライドさせることによって、ワイヤ20、軸状電極24、及び先端電極部12がシース18に対して進退操作される。
【0035】
スライダ38を本体30に対して前方にスライドさせることにより、軸状電極24がシース18(カラー部材28)の先端から突出し、露出された状態になる。したがって、この状態で軸状電極24に高周波電流を通電することによって、露出状態の軸状電極24により粘膜42(図4(e)参照)等の切断、切開を行うことができる。
【0036】
また、スライダ38を本体30に対して後方にスライドさせることにより、先端電極部12の基端がシース18の先端に当接し、軸状電極24がシース18内に収納されて非露出状態になる。したがって、高周波電流を通電した場合、軸状電極24では切断、切開が行われず、先端電極部12の側面に帯状に露出された導体部34のみで切断が行われる。
【0037】
次に、上述した内視鏡用処置具10を用いて内視鏡的粘膜下層剥離術を行う施術方法の一例を図4(a)〜図4(g)に基づいて説明する。以下は、粘膜42に病変部42Aが存在しており、この病変部42Aを、図5の固有筋層32に傷をつけずに除去する手技である。なお、実施の形態の内視鏡用処置具10は、先端電極部12に電極の一方のみを設けたモノポーラ型であるので、処置前に予め、もう一方の電極(対極板)を被検者に取り付けておく。
【0038】
まず、内視鏡挿入部44に設けた観察光学系(不図示)によって病変部42Aをディスプレイ(不図示)上において確認する。その際、内視鏡挿入部44の噴射口からインジコカルミン等の色素を散布して病変部42Aを染色するとよい。
【0039】
次いで、図4(a)に示すように、病変部42Aの周囲に所定の間隔でマーキング46、46…を行う。マーキング46、46…の方法は特に限定するものではないが、例えば、先端が針状の高周波ナイフ48を用いてスポット的に焼灼を行う。高周波ナイフ48は、絶縁チューブの内部に細い金属導線が挿通され、且つ、その金属導線の先端が絶縁チューブの先端から所定長さだけ突出した処置具であり、高周波電流が流れることによって金属導線の突出部分が電極となり、体内壁が切開或いは切除される。
【0040】
次に、図4(b)に示すように、内視鏡挿入部44の鉗子チャンネルに注射針50を挿通させ、内視鏡挿入部44の先端から導出させる。そして、この注射針50によって、病変部42Aの周囲の粘膜下層52(図5参照)に薬液を局注(局所注射)する。薬液としては、生理食塩水が一般的であるが、粘性の大きいヒアルロン酸ナトリウムを用いてもよい。このように病変部42Aの周囲全体に局注を行うことによって、病変部42A全体が大きく膨隆した状態になる。
【0041】
次いで、内視鏡挿入部44の鉗子チャンネルから注射針を引き抜き、高周波ナイフ48を再び挿通させる。そして、図4(c)に示すように、高周波ナイフ48によってプレカットを行い、先端電極部12よりも大きい開口部54を粘膜42に開口する。なお、開口部54は、図4(a)でマーキングする際、その近傍に空けておいてもよい。
【0042】
次に、内視鏡挿入部44の鉗子チャンネルから高周波ナイフ48を引き抜き、この後、実施の形態の内視鏡用処置具10を鉗子チャンネルに挿通させ、図4(d)に示すように、先端電極部12を内視鏡挿入部44の先端から導出させる。そして、軸状電極24を露出させた後、粘膜42の開口部54に先端電極部12を挿入し、先端電極部12を粘膜下層52に図5の如く潜り込ませる。その際、消化管壁に対して垂直方向に先端電極部12をアプローチすることができる。したがって、内視鏡挿入部44の姿勢を変えることなく先端電極部12をアプローチすることができる。なお、軸状電極24の露出操作は、先端電極部12を粘膜下層52に潜り込ませた後であってもよい。
【0043】
次いで、軸状電極24に高周波電流を通電しながら、図4(e)に示すように先端電極部12をマーキング46、46…に沿って横方向に(すなわち固有筋層32と平行に)移動させる。これにより、露出状態の軸状電極24が粘膜42に接触するので、露出状態の軸状電極24によって、病変部42Aの周りの粘膜42が軸状電極24によって切開される。その際、先端電極部12の姿勢を変えることなく、先端電極部12を横方向に移動させるだけで、粘膜42の病変部42Aを切断することができる。また、その際、先端電極部12の側面に帯状に露出された導体部34にも高周波電流が通電されるので、粘膜42の切開を行うと同時に粘膜下層52も切断することができる。更に、先端電極部12の先端側に不導体部36が設けられるので、固有筋層32を傷付けることなく、粘膜42及び粘膜下層52を安全に切断することができる。
【0044】
病変部42Aを切開した後、軸状電極24をシース18内に没入させる。そして、先端電極部12の導体部34に高周波電流を通電した状態で、先端電極部12の先端を図6の如く固有筋層32に押し当てながら先端電極部12を側方に(病変部42Aの中央側に)移動させる。これにより、先端電極部12の側面に露出した導体部34が粘膜下層52に接触するので、接触した粘膜下層52が切断される。その際、導体部34と固有筋層32との間には不導体部36が介在するので、導体部34は不導体部36の厚みの分だけ固有筋層32から離れた位置を移動し、導体部34が固有筋層32に接触して固有筋層32を切断することを防止できる。
【0045】
先端電極部12を切開部分の中央側に移動させることによって、図4(f)に示すように病変部42Aが徐々に粘膜下層52から剥離される。この作業を繰り返すことによって、図4(g)に示すように病変部42Aを完全に切り離すことができる。切り離した病変部42Aは、内視鏡挿入部44の鉗子チャンネルに鉗子等の処置具を挿入し、この処置具で病変部42Aを把持することによって取り除くことができる。
【0046】
ところで、シース18の先端部である、カラー部材28の先端部は先細のテーパ状に形成されている。
【0047】
このように、シース18の先端部を先細のテーパ状に形成すると、図7(A)、図7(B)に示されるように、枠内で示した観察像に映るシース18の先端部(カラー部材28)が小さくなる。図7(A)、図7(B)の破線は、単なる円筒形状の従来のシース1の外形形状が示されている。このシース1によれば、図7(A)では切開の際、軸状電極24を突出させた状態において、シース1の先端部に邪魔されて軸状電極24の基端部側が隠れて見えないが、実線で示す実施の形態のシース18であれば、先端部が先細のテーパ状に形成されているため、軸状電極24の基端部を含む全体を観察できる。
【0048】
図12は、図7(A)に対応する内視鏡挿入部44の先端部近傍の側面図であり、内視鏡挿入部44の先端の鉗子チャンネルからシース18の先端部が突出されるとともに、シース18の先端部から軸状電極24が突出された状態が示されている。
【0049】
図12に示すように、この内視鏡挿入部44の観察光学系45の上下方向(縦方向)の観察視野角θは約90°〜100°である。図中破線で示した従来の円筒形状のシース1であっても、図中実線で示した実施の形態のシース18であっても、観察光学系45の観察視野の下方の一部を遮ることに違いはないが、その遮る角度は円筒形状のシース1の方の角度θが実施の形態のシース18の角度θよりも大きい。これにより、実施の形態によれば、軸状電極24の基端部を含む全体を観察することができる。
【0050】
また、図7(B)では、切除の際、軸状電極24をシース18に没入させた状態を示している。先端電極部12の導体部34は先端電極部12の側面全周に露出しており、導体部34に接触する粘膜下層52が切除されるが、シース1の先端部に邪魔されて先端電極部12の下部側1/3程度が隠れて見えないが、実線で示す実施の形態のシース18であれば、先端部が先細のテーパ状に形成されているため、先端電極部12の隠れて見えない部分が下部側1/4以下に低減される。
【0051】
このように、実施の形態のシース18によれば、先端電極部12、軸状電極24、切開、切除等の処置箇所を観察できる。ESDにより切開、切除される粘膜42や粘膜下層52は食道で粘膜42が0.5〜0.8mm程度、粘膜下層52が0.3〜0.7mm程度と非常に薄く(胃では1〜数mm程度)、先端電極部12をサンドイッチ構造に形成する等、安全性は確保しているが、処置箇所を確実に観察することは非常に重要である。実施の形態の内視鏡用処置具10によれば、先端電極部12、軸状電極24、処置箇所の視認性を向上させることができ、ESDの安全性を確保することができる。
【0052】
また、シース18の先端部を先細のテーパ状に形成することにより、軸状電極24の突出状態(軸状電極24による粘膜42の全周切開状態:図5参照)から、軸状電極24の没入状態(先端電極部12による粘膜下層52の剥離状態:図6参照)に移り、シース18の先端部を粘膜42内(粘膜下層52)に向けて前進させる際に、シース18の先端部を粘膜42内(粘膜下層52)に容易に進入させることができる。
【0053】
また、粘膜下層52の剥離状態(図4(f)、図6参照)においては、剥離した粘膜42や粘膜下層52の状態により、適宜潜り込ませた先端電極部12を一度外方へ抜き出し、場所や姿勢を変えて再度潜り込ませて剥離を進めていくことがある。このような場合、例えばシース18の外径と先端電極部12の外径が同程度だと、軸状電極24を没入させた状態では、切開、剥離された粘膜42が巻き上がっている状態で90度以上捲れ上がっていないと先端電極部12を粘膜42下に潜り込ませづらく、剥離していこうとする粘膜42下の粘膜下層52の線維に先端電極部12の導体部34を接触させることが困難となる。しかし、シース18の先端部をテーパ状に形成することにより、剥離された粘膜42が90度に満たない角度でしか捲り上がっていない状態でも、先端電極部12やシース18の先端部を容易に粘膜42下に潜り込ませることが可能となる。従って、先端電極部12の導体部34を容易に粘膜下層52の線維に接触させることができ、粘膜下層52を安全にかつ容易に剥離することができる。
【0054】
さらに、先端電極部12を横方向に移動させて粘膜下層52の切開、剥離を行う際、従来の単なる筒状のシース1では、粘膜42がシース1の先端部に絡み付き、この絡み付いた粘膜42により先端電極部12や処置箇所が見え難くなるという問題があったが、実施の形態のシース18では、シース18の先端部のテーパ部に当接する粘膜42が、図6の如くテーパ部のテーパ面に案内されて外方に捲くれるようになるので、先端電極部12や処置箇所が見え易くなり、先端電極部12や処置箇所の視認性がより一層向上する。
【0055】
ところで、先端電極部12を横方向に移動させて、導体部34により粘膜下層52の切開、剥離作業を開始すると、図13に示すように従来の筒状のシース1では、病変部42Aの縁部がシース1の側面に当接する。そして、先端電極部12を更に横方向に移動させると、病変部42Aの変形によりある程度は先端電極部12を横方向に移動させることはできる。しかしながら、先端電極部12の横方向移動に伴って増大する、病変部42Aの端部からの反力によって、先端電極部12の横方向移動が阻害されていく。このため、従来のシース1では、粘膜下層52の切開、剥離作業を円滑に行うことができないという問題があった。
【0056】
これに対して、図6に示した実施の形態のシース18では、カラー部材28のテーパ面によって逃げの空間43がシース18の先端部(カラー部材28を除く)と先端電極部12との間に形成されている。この逃げの空間43とカラー部材28のテーパ面とによって以下の作用、効果が生じる。
【0057】
すなわち、先端電極部12を横方向に移動させて、導体部34により粘膜下層52の切開、剥離作業を開始すると、病変部42Aの縁部は、逃げの空間43を通過してカラー部材28のテーパ面に当接する。そして、先端電極部12を更に横方向に移動させると、病変部42Aの縁部は、カラー部材28のテーパ面に案内されるとともに逃げの空間43を利用して外方に捲くれていく。この捲れ作用によって、先端電極部12は、病変部42Aの端部から過大な反力を受けなくなるので、横方向に円滑に移動する。よって、導体部34による粘膜下層52の切開、剥離作業を円滑に行うことができる。前述した逃げの空間43を内視鏡用処置具10に備えることにより、カラー部材28のテーパ面と相まって、病変部42Aの縁部を円滑に外方に捲り上げる効果が得られる。この逃げの空間43の大きさは、カラー部材28のテーパ面の角度を変えることによって適宜設定される。この逃げの空間43は、小さいよりも大きい方が好ましい。
【0058】
また、この粘膜42が捲くれる作用は、先端電極部12のコーナー部の円弧形状も少なからず寄与している。
【0059】
なお、実施の形態で言うシース18の先端部のテーパ部とは、連続面で先細状に、又は段階的に先細状に形成されているものも含むものとする。
【0060】
例えば、図8(a)で示すように、シース18の先端部とカラー部材28の先端部をともに断面が連続した直線状のテーパ面としてもよく、また、図8(b)で示すように、シース18の先端部のみを断面が連続した直線状のテーパ面としてもよく、更に、図8(c)で示すように、カラー部材28のみを円弧状のテーパ面としてもよい。また、図8(d)に示すように、カラー部材28のみを断面が連続した直線状のテーパ面としてもよい。この形態では、シース18の外周面と面一になるようなフラットな端面29がカラー部材28の全周に形成されている。この端面29が寸法誤差等によりシース18の外周面から突出した場合、端面29の基端部側コーナー部29Aの角度は90度であり、鋭角ではないので、体腔内においてそのコーナー部29Aが引っ掛かることに起因する組織等の傷つきを抑制することができる。また、図8(e)に示すように、カラー部材28を階段状に形成してテーパ面としてもよい。すなわち、実施の形態で言うテーパ部は、先細状に形成されている全ての形態を含む。
【0061】
一方、実施の形態の内視鏡用処置具10によれば、シース18の先端部のテーパ部は、シース18と別体のセラミックス製カラー部材28によって構成され、このカラー部材28がシース18の先端開口部に取り付けられている。そして、剛性の高いセラミックスに形成されている貫通孔28Aに軸状電極24をスライド自在に支持させているため、軸状電極24の突没動作が安定し、また、切開や切除の際に軸状電極24や先端電極部12の振れが抑制され、内視鏡用処置具10の操作性が向上する。
【0062】
また、実施の形態の内視鏡用処置具10の先端電極部12は、先端電極部12の側面が帯状の導体部34を不導体部36、36で挟んだサンドイッチ構造になっているので、先端電極部12の先端を固有筋層32に当接させた際に、不導体部36が固有筋層32に当接し、導体部34は固有筋層32に接触しない。したがって、固有筋層32を切断することを確実に防止することができる。また、この先端電極部12によれば、先端電極部12を側方に移動させることによって、先端電極部12の側面に粘膜下層52が接触し、帯状の導体部34に接触した粘膜下層52が切断される。したがって、この先端電極部12によれば、固有筋層32を傷付けることなく、粘膜下層52を切断することができる。
【0063】
図9は、他の実施の形態の内視鏡用処置具を示した要部側面図であり、図3に示した内視鏡用処置具10と同一、又は類似の部材については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0064】
同図に示す内視鏡用処置具はシース18の先端部に、すなわち、カラー部材28の先端部に軸状電極24の突没方向と平行な平坦面31Aが形成され、その平坦面31Aの端面31Bが大きめに形成されている。軸状電極24をシース18内に没入させると、端面31Bに先端電極部12の基端側の不導体部36の後端面36Aが面接触するため、先端電極部12がカラー部材28の端面31Aに安定的に保持される。また、カラー部材28に平坦面31Aを形成することにより、テーパ部の傾斜角度が大きくなるので、視野を更に広く確保することができる。シース18から突出したカラー部材28の軸方向長さは、軸状電極24を安定的に支持する観点からその長さが規定されている。その規定された長さの中で平坦面31Aを形成することにより、テーパ部の傾斜角度を大きく取れるので、視野確保の向上に寄与できる。
【0065】
なお、上述した実施の形態は、先端電極部12を略歯車状に形成したが、先端電極部12の形状や構成は上述した実施の形態に限定されるものではなく、様々な態様が可能である。
【0066】
たとえば、図10図11に示す先端電極部112は、四枚の板部材を十字状に組み合わせた形状に形成されている。すなわち、先端電極部112の本体114は、非導電性の四枚の板部材を90°間隔で配置し、先端電極部112の中心軸側で連結した十字状に形成されている。
【0067】
本体114の先端側は、各板部材が先端側に突出することによって四つの山部114A、114A…が形成されており、全ての山部114A、114A…の中心位置に谷部114B、114B…が形成されている。同様に、本体114の基端側は、各板部材が基端側に突出することによって山部114C、114C…が形成されており、この山部114C、114C…の中心位置に谷部114D、114D…が形成されている。
【0068】
先端側の谷部114B、114B…には十字状の電極板116が設けられている。電極板116は各山部114A、114A…の頂点から離れて配置されており、山部114A、114A…が固有筋層32に接触した場合にも電極板116が固有筋層32に接触しないようになっている。同様に、基端側の谷部114D、114D…にも十字状の電極板118が設けられている。この電極板118は、基端側の山部114C、114C…の先端から離れて配置されている。二つの電極板116、118は、軸状電極24に電気的に接続されている。
【0069】
また、本体114は全体として、先端側が基端側よりも小さく形成される。また、各山部114A、114A…、114C、114C…は、先端側ほど小さく、且つ、その先端が丸みを帯びて非切開性を有するように形成される。したがって、本体114は線維質の粘膜下層52に押し込みやすく、且つ、山部114A、114A…によって固有筋層32を傷つきさせ難い構成になっている。なお、本体114の大きさは、内視鏡の鉗子チャンネルの内寸よりも実質的に小さく形成されており、内視鏡の鉗子チャンネルに支障なく挿通できるようになっている。
【0070】
このように構成された内視鏡用処置具は、先端電極部112を先端側に進めながら粘膜下層52を切断する押し切り操作と、先端電極部112を基端側に引き戻しながら粘膜下層52を切断する引き切り操作を行うことができる。また、この内視鏡用処置具は、電極板116、118が先端電極部112の中心位置に配置されるので、先端電極部112が軸線まわりに回転しても、電極板116、118は常に中心位置に配置される。したがって、先端電極部112の姿勢に影響されることなく、粘膜下層52の切断を行うことができる。
【0071】
上記の如く構成された内視鏡用処置具の場合にも、シース18の先端部が先細のテーパ状に形成されているため、軸状電極24や処置部がシース18の先端で隠れることを防止でき、また、先端電極部112を粘膜42下に潜り込ませやすくなるため、視認性、操作性が大幅に向上する。
【0072】
なお、上述した実施の形態は、四枚の板状部材を組み合わせて本体114を形成したが、板状部材の枚数は三枚でも五枚以上でもよい。いずれの場合にも板状部材を等しい角度間隔で配置することが好ましい。
【0073】
また、実施の形態の内視鏡用処置具10によれば、図3の如く、シース18の先端部のテーパ部において、先端電極部12の外形寸法a、テーパ部の軸方向長さb、テーパ部の基端側外形寸法c、テーパ部の先端側外形寸法dとした際に、0.5a≦b≦1.5aであり、0.4c≦d≦0.6cであり、d<bであることが好ましい。
【0074】
特許第3655664号公報では、可撓管の先端部が内側に折れてあたかもテーパ状に形成された可撓管を有する高周波ナイフが開示されている。しかしながら、この可撓管のテーパ部は、視認性を向上させるためのテーパ部としては大きさが小さ過ぎるため、実施の形態の効果を得ることはできない。
【0075】
そこで、実施の形態のテーパ部の大きさとしては、先端電極部12の軸方向長さa、テーパ部の軸方向長さb、テーパ部の基端側外形寸法c、テーパ部の先端側外形寸法dとした際に、0.5a≦b≦1.5aであり、0.4c≦d≦0.6cであり、d<bであることが好ましい。
【0076】
b寸法が0.5a未満であると、特許第3655664号公報の可撓管と類似し、視認性を確保することができない。また、b寸法が1.5aを超えると、先端部の剛性が低下するので、内視鏡挿入部の鉗子チャンネルに対する挿通性が悪くなる。よって、b寸法は、0.5a≦b≦1.5aであることが好ましく、0.6a≦b≦1.2aであることがより好ましい。
【0077】
また、テーパ部の軸方向長さbが0.5a未満であると、視野を確保できなくなるとともに、剥離された粘膜42から粘膜下層52に先端電極部12を潜り込ませづらくなる。また、テーパ部の軸方向長さbが1.5aを超えると、テーパ部が長くなり過ぎるため、シース18内に位置する軸状電極(没入状態)24の長さも長くなり、シース18の先端における硬質な部分(軸状電極24のガイド部)が長くなる。そうなると、内視鏡用処置具10の鉗子チャンネル内への挿通性が悪化する。
【0078】
一方、テーパ部の先端側外形寸法dに関しては、軸状電極24の径に近いことが理想ではあるが、0.4c未満であると小さすぎるため軸状電極24の径も細くなってしまい、軸状電極24が折損するおそれがあり、また、先端が鋭くなりすぎるため、粘膜42や粘膜下層52を傷つけてしまうおそれがあるとともに、軸状電極24が没入状態のとき、先端が先端電極部12の基端と当接するため、先端電極部12の座りが悪くなってしまう。テーパ部の先端側外形寸法dが0.6cを超えると、テーパ部の角度が鈍くなり、円筒形状に近づくため視野を確保できない。一方、d<bの式は、このテーパ部が面取りでないことを明確にするための条件式である。
【0079】
なお、上述した実施の形態は、電極の一方を先端電極部12、112に設けたモノポーラ型の例で説明したが、電極の双方を先端電極部12、112に設けるバイポーラ型に適用してもよい。
【符号の説明】
【0080】
10…内視鏡用処置具、12…先端電極部、14…挿入部、16…手元操作部、18…シース、20…ワイヤ、22…接続パイプ、24…軸状電極、26…チューブ、28…カラー部材、28A…貫通孔、30…本体、32…固有筋層、33…コネクタ、34…導体部、36…不導体部、38…スライダ、40…ロックねじ、42…粘膜、44…内視鏡挿入部、46…マーキング、48…高周波ナイフ、50…注射針、52…粘膜下層、54…開口部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13