特許第5751853号(P5751853)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日清製粉グループ本社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5751853
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】パン粉組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 1/176 20060101AFI20150702BHJP
【FI】
   A23L1/176
【請求項の数】4
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-23622(P2011-23622)
(22)【出願日】2011年2月7日
(65)【公開番号】特開2012-161274(P2012-161274A)
(43)【公開日】2012年8月30日
【審査請求日】2013年7月12日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000226998
【氏名又は名称】株式会社日清製粉グループ本社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】福留 真一
(72)【発明者】
【氏名】榊原 通宏
【審査官】 大久保 智之
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−196784(JP,A)
【文献】 特開2000−000072(JP,A)
【文献】 特開平05−252911(JP,A)
【文献】 特開平06−141804(JP,A)
【文献】 特開平06−169717(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 1/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥パン粉と粉状蛋白と、プロテアーゼとを含むことを特徴とするパン粉組成物であって、
該粉状蛋白量が、該乾燥パン粉100gに対して12g〜50gであり、
該プロテアーゼの量が、該乾燥パン粉1g当たりの力価として1u〜400uである、
パン粉組成物。
【請求項2】
乾燥パン粉と、粉状蛋白、プロテアーゼとを配合することを特徴とするパン粉組成物の製造方法であって、
該粉状蛋白量が、該乾燥パン粉100gに対して12g〜50gであり、
該プロテアーゼの量が、該乾燥パン粉1g当たりの力価として1u〜400uである、
方法。
【請求項3】
請求項1に記載のパン粉組成物を素材に直接付着させた後、焼き調理することを特徴とするパン粉付調理食品の製造方法。
【請求項4】
前記パン粉組成物を付着させた素材を、当該素材100gに対して50ml以下の量の油とともに焼き調理することを特徴とする請求項3に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パン粉組成物及びその製造方法、並びに当該パン粉組成物を用いる調理品の製造方法に関する。更に詳しくは、畜肉や魚介等の素材に直接まぶしても容易かつ確実に付着し、少量の油で焼いた場合にも素材の反りと焦げ斑を防止することで、衣に均一で適度な焦げ色とサクミのあるクリスピーな食感を与えるパン粉組成物及びその製造方法、並びに当該パン粉組成物を用いる調理品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
畜肉や魚介等を用いたパン粉付フライ食品は、通常、生の畜肉、例えば生の豚肉、牛肉、鶏肉等の素材や、生の魚介、例えばアジ、サケ等の素材にまず小麦粉をまぶし(打ち粉)、液卵に浸漬した後、パン粉を付着させて、大量の油で揚げることによって製造するのが一般的であるが、打ち粉、液卵への浸漬、パン粉の付着という調理工程は手間がかかり煩雑であるという問題があった。そこで、畜肉や魚介等の素材への付着機能を付与したパン粉またはパン粉を主体とするミックスを、打ち粉や液卵への浸漬を行なわず、直接生の畜肉や魚介等の素材に付着させ、大量の油で揚げる技術が開発されている(特許文献1〜3)。
【0003】
しかし、近年の健康志向、ダイエット志向の高まりから、大量の油で揚げる調理は、油脂の摂取量が多くなるため、健康志向上問題とされるようになった。そこで、油脂の摂取量を抑えるため、あるいはフライ調理後の大量の油処理、廃棄の手間を省くため、パン粉またはパン粉を主体とするミックスを生の畜肉や魚介等の素材に直接付着させた後、フライパン等を用いて、少量の油で焼き調理する技術が提案されている(特許文献4)。
【0004】
しかしながら、畜肉や魚介等の素材をフライパン等を用いて少量の油で焼き調理する場合は、素材全体が均一に高温で加熱される大量の油を使用した揚げ調理とは異なり、フライパンに接した面のみが主に高温で加熱されるため、加熱面の素材の筋繊維が収縮することにより素材に反りが生じて加熱斑が生じ、その結果、パン粉の焦げ目が不均一となったり、良好な衣のサクミが得られない。そのため、少量の油で焼き調理する場合は、例えばミラノカツレツのように、肉を事前に薄く叩き伸ばした後、パン粉付けして焼き調理を行なう必要がある。しかし、このような調理法で得られた食品には、例えばトンカツのように、大量の油で揚げる通常のパン粉付フライ食品とは外観、食感が大きく異なるという問題点がある。畜肉や魚介等の素材にパン粉またはパン粉を主体とするミックスを直接付着させ、少量の油を用いたフライパン等で焼き調理した食品において、焦げ斑、食感を効果的に改善する技術は未だなく、大量の油で揚げる通常のパン粉付フライ食品と遜色ないできばえを得るに至ってないのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭55−150870号公報
【特許文献2】特許第2888778号
【特許文献3】特許第3035287号公報
【特許文献4】特開2000−83614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる従来の問題点と実情に鑑み、畜肉や魚介等の素材への煩雑な前処理を不用とし、畜肉や魚介等の素材にパン粉またはパン粉を主体とするミックスを直接付着させ、フライパン等を用いて少量の油で焼き調理するだけで、素材の反りと焦げ斑を防止し、衣に均一で適度な焦げ色とサクミのあるクリスピーな食感を与え、大量の油で揚げる通常の蓄肉や魚介等の素材を用いたパン粉付フライ食品と遜色ない調理食品を得ることができるパン粉組成物を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、乾燥パン粉と;α化澱粉及び/又は粉状蛋白と;プロテアーゼとを含むパン粉組成物を用いれば、畜肉や魚介等の素材に直接付着させ、少量の油で焼き調理しても、素材の反りと焦げ斑を防止でき、均一で適度な焦げ色とサクミのあるクリスピーな食感のある衣を有する、パン粉付調理食品が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、乾燥パン粉と;α化澱粉及び/又は粉状蛋白と;プロテアーゼとを含むことを特徴とするパン粉組成物により、上記課題を解決したものである。
また本発明は、乾燥パン粉に、少なくともα化澱粉及び/又は粉状蛋白と、プロテアーゼとを配合することを特徴とするパン粉組成物の製造方法により、上記課題を解決したものである。
また本発明は、上記パン粉組成物を素材に直接付着させた後、焼き調理することを特徴とするパン粉付調理食品の製造方法により、上記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明パン粉組成物を用いれば、通常の揚げ調理、少量の油での焼き調理の如何を問わず、均一で適度な焦げ色とサクミのあるクリスピーな食感のある衣を有する、パン粉付調理食品を得ることができる。特に、本発明のパン粉組成物を直接、畜肉や魚介等の素材に付着させた後、フライパン等を用いて少量の油で焼き調理するだけで、素材を大量の油で揚げた通常のパン粉付フライ食品に対して遜色のない、均一で適度な焦げ色とサクミのあるクリスピーな食感のある衣を有する、パン粉付調理食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のパン粉組成物は、まず乾燥パン粉を必須構成成分として含む。当該乾燥パン粉は、小麦粉、イースト、砂糖、食塩、油脂等の一般に用いられるパン粉原料を用いて、焙焼法、電極法等の一般的な製法により製造することができるが、原料及び製法に特に制限はない。例えば、乾燥パン粉は、小麦粉、イースト、砂糖、食塩、油脂等の原料を混合し、発酵、焼成、放冷、粉砕した後、乾燥させることによって得ることができる。本発明のパン粉組成物に含まれる乾燥パン粉の大きさに特に限定はないが、平均粒径が100μm〜7mm、特に200μm〜5mmであることが好ましい。なお、ここで平均粒径とは、マイクロトラックFSA測定による中央累積値をいう。本発明のパン粉組成物に含まれる乾燥パン粉の水分は、2〜20質量%であればよいが、特に3〜15質量%であることが、保存性及び食感の上で好ましい。
【0011】
更に、本発明のパン粉組成物は、α化澱粉及び/又は粉状蛋白、並びにプロテアーゼを必須構成成分として含む。α化澱粉と粉状蛋白は、畜肉や魚介等の素材へパン粉を均一に付着させる機能、畜肉や魚介等の素材の表面に皮膜を形成する機能を担うものであり、いずれか一方のみが配合されていても両者が併用されていてもよい。本発明のパン粉組成物に用いるα化澱粉、粉状蛋白及びプロテアーゼは、粉末状で、平均粒径は、20μm〜500μm、特に40μm〜100μmの粉体であることが好ましい。500μmより大きいとパン粉の付着、肉表面の皮膜が不十分であり、また、20μm未満では、パン粉と混合時のダマ発生、製造時の飛散等があり、好ましくない。
【0012】
α化澱粉としては、例えば、コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、小麦澱粉、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉及びこれらの化工澱粉等のα化澱粉が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
粉状蛋白としては、例えば、全卵、卵白、卵黄等の卵蛋白、脱脂粉乳、ホエー蛋白等の乳蛋白、大豆蛋白や小麦蛋白等の植物性蛋白、ゼラチン等の動物性蛋白等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
プロテアーゼとしては、食品用途として使用できるものであれば、特に限定されず、植物由来、動物由来又は微生物由来のプロテアーゼが挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。プロテアーゼの種類としては、例えば、植物由来では、パパイヤやパイナップル等の根茎、果汁から抽出・精製されたプロテアーゼ(例えば、パパイン、ブロメライン等)、微生物由来では、Aspergillus属、Rhizopus属、Streptomyces属、Penicillium属、Bacillus属等から抽出・精製されたプロテアーゼ、動物由来ではペプシン、トリプシン、パンクレアチン等のプロテアーゼを挙げることができる。
【0013】
本発明のパン粉組成物は、上記パン粉、α化澱粉及び/又は粉状蛋白、並びにプロテアーゼと共に、必要に応じて、本発明のパン粉組成物により得られる調理食品の外観及び食感を害さない範囲で、調味料、乳化剤、油脂、甘味料、食塩、増粘多糖類、香辛料、色素、香料等のその他の原料を含有することもできる。
【0014】
本発明のパン粉組成物は、上述した乾燥パン粉に、少なくともα化澱粉及び/又は粉状蛋白と、プロテアーゼとを配合することによって製造することができる。すなわち、本発明のパン粉組成物は、当該乾燥パン粉へ、当該α化澱粉及び/又は粉状蛋白と、当該プロテアーゼと、必要に応じてその他の原料を混合することによって得ることができる。乾燥パン粉へのα化澱粉及び/又は粉状蛋白、プロテアーゼ等の混合は、ナウタミキサー、リボンミキサー、V型ミキサー等の一般的なミキサーのような、混合処理中に、過度に乾燥パン粉が粉砕されず、均一に原料が混合できる装置を用いて行うのが好ましい。
【0015】
本発明のパン粉組成物における、α化澱粉及び/又は粉状蛋白の配合量は、乾燥パン粉100gに対して、α化澱粉と粉状蛋白の総量が4〜50gであることが好ましく、特に12g〜24gであることが最も好ましい。乾燥パン粉100gに対するα化澱粉と粉状蛋白の総量が4g未満の場合、あるいは50gより多い場合には、衣の食感において劣るか、又は畜肉や魚介等の素材への乾燥パン粉の付着が不十分となり易い。
また、本発明のパン粉組成物におけるプロテアーゼの配合量は、当該プロテアーゼのたんぱく分解力の力価に基づき、本発明のパン粉組成物に配合される乾燥パン粉1g当たり、1u〜400uの範囲で配合されていることが好ましく、5u〜200uの範囲で配合されていることがより好ましい。1u未満であると、畜肉や魚介等の素材の反り又は焦げ斑の防止が不十分となり易い。他方、1u未満又は400uより多いと、素材にジューシー感が失われ、硬くなり易い。
【0016】
なお、本明細書において、プロテアーゼのたんぱく分解力の力価は、以下の測定法に拠る。
(植物由来のパパイン、ブロメラインのたんぱく分解力の測定法)
食品添加物公定書法に則り、5mlの0.6%ミルクカゼイン(pH8.0、0.04Mリン酸緩衝液)にシステインにより活性化したプロテアーゼ溶液1mlを加えて、37℃にて10分間反応させた時に、1分間に1μgのチロシンに相当する275nmの吸光度を0.05Mトリクロロ酢酸可溶性成分として遊離する活性を1uとする。
(パパイン、ブロメライン以外のプロテアーゼのたんぱく分解力の測定法)
天野法に則り、1mlの1.5%ミルクカゼイン(pH7.0、0.02Mリン酸緩衝液)にプロテアーゼ溶液1mlを加えて、37℃にて60分間反応させた時に、60分間に100μgのチロシンに相当する660nmの吸光度(フォーリン試薬にて呈色)を0.2Mトリクロロ酢酸可溶性成分として遊離する活性を1uとする。
【0017】
本発明のパン粉組成物は、少量の油での焼き調理による調理食品及び大量の油での揚げ調理等によるフライ食品を製造するために使用することができる。少量の油での焼き調理の場合、本発明のパン粉組成物を直接、畜肉や魚介等の素材に付着させた後、必要に応じて所定時間(例えば、約1〜10分間)放置し、これを鍋、フライパン、鉄板、オーブン等の調理器具を用いて、少量の油とともに、例えば油を薄く伸ばした上で焼き調理することにより、パン粉付調理食品を製造することができる。焼き調理する場合に必要な油の量は、畜肉や魚介等の素材100gに対して、油50ml以下であればよいが、30ml以下が好ましい。大量の油での揚げ調理の場合、本発明のパン粉組成物を直接、畜肉や魚介等の素材に付着させた後、これを油を張った揚げ鍋に投入し、通常の方法で揚げ調理することにより、フライ食品を製造することができる。焼き調理及び揚げ調理に使用する油は、一般的な食用油であれば特に制限はなく、菜種油、大豆白鮫油、米油、ゴマ油等の植物性油脂、ラード等の動物性油脂等が使用できる。
【0018】
次に実施例を示して本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0019】
実施例1〜5
表1の組成で、乾燥パン粉に、α化澱粉及び/又は粉状蛋白、ならびにプロテアーゼを混合し、均一に攪拌してパン粉組成物を調製した。
【0020】
【表1】
【0021】
比較例1〜12
表2〜3の組成で、乾燥パン粉に、α化澱粉及び/又は粉状蛋白を含むがプロテアーゼを含まない原料、あるいは、α化澱粉の代わりにα化されていない澱粉若しくは糖質を配合した、α化澱粉も粉状蛋白も含まない原料を混合し、均一に攪拌してパン粉組成物を調製した。
【0022】
【表2】
【表3】
【0023】
試験例1(α化澱粉、粉状蛋白及びプロテアーゼの効果)
豚ロース(厚さ約1.5cm、約100g×1枚)に、実施例1〜5又は比較例1〜12で得られたパン粉組成物をそれぞれ直接まぶし、その付着量を測定した。次いで、これらを約5分間放置した後、油大さじ2杯(30ml)を加えて170℃に熱したフライパン(フライパン径26cm)で片面2分半ずつ焼き、得られたトンカツについて、外観、衣の食感、及び肉質を以下の評価基準で評価した。その結果を表1〜3に示す。なお、評価の数値は、10名のパネラーによる平均値で示した。
【0024】
◎評価基準
外観
4:素材の反りがなく、均一に焦げ色がついており、極めて良好である。
3:素材の反りがほとんどなく、焦げ斑もわずかであり、良好である。
2:素材の反り、焦げ斑があり、不良である。
1:素材の反り、焦げ斑が著しく、極めて不良である。
衣の食感
4:サクミが強く、油っぽさもなく、極めて良好である。
3:サクミがあり、油っぽさも少なく、良好である。
2:サクミが弱く、油っぽく、不良である。
1:サクミに欠け、油っぽさも著しく、極めて不良である。
肉質
4:加熱斑がなく、素材のジューシーさに富み、柔らかく、極めて良好である。
3:加熱斑がほとんどなく、素材はジューシーであり、柔らかく、良好である。
2:加熱斑があり、素材のジューシーさ、柔らかさに欠け、不良である。
1:加熱斑が著しく、素材のジューシーさ、柔らかさに著しく欠け、極めて不良である。
【0025】
表1〜3より、乾燥パン粉、α化澱粉及び/又は粉状蛋白、ならびにプロテアーゼを含む本発明のパン粉組成物(実施例1〜5)を用いれば、少量の油で焼く調理法においても、素材の反り、焦げ斑がほとんどなく、衣の食感及び肉質にも優れたトンカツができることが確認された。一方、プロテアーゼを含まないパン粉組成物(比較例1〜2及び7〜12)、ならびにα化澱粉及び粉状蛋白を含まないパン粉組成物(比較例3〜6)から得られたトンカツは、衣の付着性が不十分であるか、且つ/又は外観、衣の食感及び肉質に劣ることが確認された。なお、プロテアーゼを含まないパン粉組成物では、α化澱粉及び/又は粉状蛋白を大量に含んでいる場合でも、やはり効果が得られなかった(比較例10〜12)。
【0026】
試験例2(α化澱粉及び/又は粉状蛋白の量)
表4の組成で、乾燥パン粉に、α化澱粉及び/又は粉状蛋白、ならびにプロテアーゼを混合し、均一に攪拌してパン粉組成物を調製した。当該パン粉組成物を用いて試験例1と同様の手順でトンカツを得、それを評価した。結果を表4に記す(なお表中に実施例1、3、5を再掲した)。α化澱粉及び/又は粉状蛋白の配合量は、乾燥パン粉100gに対し、4〜50gが好ましいことが確認された(試料4〜15及び実施例1、3、5)。
【0027】
【表4】
【0028】
試験例3(プロテアーゼの種類)
表5の組成で、乾燥パン粉に、α化澱粉及び粉状蛋白、ならびに各種プロテアーゼを混合し、均一に攪拌してパン粉組成物を調製した。当該パン粉組成物を用いて試験例1と同様の手順でトンカツを得、それを評価した。結果を表5に記す(なお表中に実施例5を再掲した)。本結果より、パン粉組成物に配合されるプロテアーゼは、特に限定されず、植物由来、動物由来、微生物由来のプロテアーゼが幅広く使用できることが確認された(試料19〜25及び実施例5)。
【0029】
【表5】
【0030】
試験例4(プロテアーゼの量)
表6の組成で、乾燥パン粉に、α化澱粉及び粉状蛋白、ならびにプロテアーゼを混合し、均一に攪拌してパン粉組成物を調製した。当該パン粉組成物を用いて試験例1と同様の手順でトンカツを得、それを評価した。結果を表6に記す(なお表中に実施例5を再掲した)。プロテアーゼの配合量は、乾燥パン粉1g当たり、1u〜400uの範囲で配合するのが好ましいことが確認された(試料27〜37、及び実施例5)。
【0031】
【表6】
【0032】
試験例5
鶏胸肉(厚さ約1.0cm、約50g×2枚)に、実施例5又は比較例9で得られたパン粉組成物を直接まぶし、約5分放置した後、油大さじ2杯(30ml)を加えて170℃に熱したフライパン(フライパン径26cm)で片面2分半ずつ焼き、試験例1と同様に評価を行なった。結果を表7に示す。本発明のパン粉組成物を用いれば、少量の油で焼く調理法においても、素材の反り、焦げ斑がほとんどなく、衣の食感及び肉質にも優れたチキンカツができることが確認された。
【0033】
【表7】
【0034】
試験例6
真アジを3枚に下ろしたアジの切り身(厚さ約1.0cm、約30g×3枚)に、実施例5又は比較例9で得られたパン粉組成物を直接まぶし、約5分放置した後、油大さじ2杯(30ml)を加えて170℃に熱したフライパン(フライパン径26cm)で片面2分半ずつ焼き、試験例1と同様に評価を行なった。結果を表8に示す。本発明のパン粉組成物を用いれば、少量の油で焼く調理法においても、素材の反り、焦げ斑がほとんどなく、衣の食感及び肉質にも優れたアジフライができることが確認された。
【0035】
【表8】