(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5752037
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】排ガスサンプリング分析システム
(51)【国際特許分類】
G01N 1/22 20060101AFI20150702BHJP
G01N 1/00 20060101ALI20150702BHJP
【FI】
G01N1/22 G
G01N1/00 101T
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-524798(P2011-524798)
(86)(22)【出願日】2010年7月27日
(86)【国際出願番号】JP2010062641
(87)【国際公開番号】WO2011013676
(87)【国際公開日】20110203
【審査請求日】2013年7月4日
(31)【優先権主張番号】特願2009-178832(P2009-178832)
(32)【優先日】2009年7月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100113468
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(72)【発明者】
【氏名】ラーマン モンタジール
(72)【発明者】
【氏名】日下 竹史
(72)【発明者】
【氏名】ヒル レスリー
【審査官】
土岐 和雅
(56)【参考文献】
【文献】
特開平04−216435(JP,A)
【文献】
特開昭62−157546(JP,A)
【文献】
特開2006−275983(JP,A)
【文献】
特開平02−190740(JP,A)
【文献】
特開2005−106452(JP,A)
【文献】
実開平02−043640(JP,U)
【文献】
特開平09−318572(JP,A)
【文献】
特開平03−318572(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N1/00〜1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気管に設けられて当該排気管を流れる排ガスを導入するための導入ポートに基端が接続されたメイン流路と、
前記メイン流路に排ガスを導入すべく当該メイン流路に接続された第1吸引ポンプと、
前記メイン流路上に設けられた絞り機構と、
前記絞り機構の下流においてメイン流路から延出し、当該メイン流路を流れる排ガスをサンプリングして流通する測定流路と、
前記測定流路上に設けられ、サンプリングされた排ガスを分析する分析装置と、
前記測定流路の延出点の下流においてメイン流路から延出し、当該メイン流路に補償ガスを供給する補償流路と、
前記補償流路上に設けられ、前記メイン流路に供給する補償ガスの流量を調整する流量調整機構と、を備え、
前記第1吸引ポンプが、前記絞り機構を通過して減圧された排ガスの圧力を所定値までさらに減圧するとともに、
前記流量調整機構が、前記測定流路の延出点における排ガスの圧力が所定値となるようにメイン流路に供給される補償ガスの流量を調整する排ガスサンプリング分析システム。
【請求項2】
前記導入ポートが、前記排気管において、前記排気管に設けられたフィルタ装置の上流側に設けられている請求項1記載の排ガスサンプリング分析システム。
【請求項3】
前記測定流路を構成する配管の上流側開口が、前記メイン流路と同軸上において上流側を向くように配置され、
前記測定流路を構成する配管によって等速サンプリングを行う請求項1記載の排ガスサンプリング分析システム。
【請求項4】
前記絞り機構が、
中央部に軸方向に沿ってメイン流路に連通する主絞り流路、その周囲に軸方向に沿って1又は複数のメイン流路に連通する副絞り流路が形成された可動体と、
前記可動体の下流側の外周にスライド可能に嵌合し、前記副内部流路を閉塞又は開成する固定部と、
前記可動体の外周において前記固定部及び前記可動体の間に介在して設けられ、前記可動部を前記固定部から離間させる方向に付勢するスプリングと、を備え、
前記可動体が受ける排ガスの圧力に応じて前記可動体が軸方向にスライド移動することにより、通過する排ガスの流量を調整するものである請求項1記載の排ガスサンプリング分析システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンの排ガスをサンプリングし、その成分分析を行う排ガスサンプリング分析システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の排ガスサンプリング分析システムとしては、特許文献1に示すように、内燃機関(エンジン)からの排ガスを空気により希釈した希釈排ガスを希釈配管内に流通させて、当該希釈配管内を流れる希釈排ガスの一部を試料採取配管により採取するものがある。
【0003】
そして、この試料採取配管には、希釈排ガスを採取するための試料採取プローブ、採取された希釈排ガスの流量流圧を調整する絞り弁、希釈排ガスより排ガスの成分分析を行う排ガス分析装置、一定の総量で試料採取配管内の希釈ガスを吸引するために設けられた臨界ベンチュリ及び吸引ポンプがこの順で配設されている。また、試料採取配管の排ガス分析装置と臨界ベンチュリとの間には、大気通路が接続されている。これらの構成により、試料採取配管に流入する希釈排ガスと大気通路から導入される大気の量との比に応じて排ガス分析装置を通過する希釈排ガスの流圧変化を減少させる構成としている。
【0004】
しかしながら、臨界ベンチュリ及び吸引ポンプによって試料採取配管内の希釈ガスの流量の総量を一定としているため、大気通路から供給する大気の流入流量が変化すると必ずサンプリング排ガスの流量が変化してしまうという問題がある。また、高圧の排ガスにおいては、流量の変化が大きく上記構成においては、この流量変化に対応することができないという問題もある。
【0005】
また、排ガスサンプリング分析システムに用いられる排ガス分析装置は、分析装置に導入されるサンプリング排ガスの流量及び圧力が仕様により定められており、その仕様の範囲内となるようにサンプリング排ガスの流量及び圧力を調整する必要がある。
【0006】
このため、上記特許文献1の排ガスサンプリング分析システムの希釈配管には、希釈排ガスの流れに対して下流側に定容量型ポンプが設けられ、この定容量型ポンプにより、排ガス導入配管に流入する排ガス量が変化しても希釈配管に流れる希釈排ガスの総量及び圧力を略一定に保つように構成されている。また、希釈配管には、空気導入配管が接続され、その大気取り入れ口にはエアフィルタが設けられている。
【0007】
しかしながら、上記排ガスサンプリング分析システムは、希釈配管を流れる希釈排ガスを定容量型ポンプによって希釈排ガスの総量及び圧力を略一定に保っていることからも分かるように、圧力の高い排ガスをサンプリングすることは想定していない。また、希釈配管には、空気導入配管が接続され大気取り入れ口にエアフィルタが配設されており、エアフィルタが詰まり希釈配管内の圧力が低くなることはあっても、高くなることは考えにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平4−216435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、上記問題点を一挙に解決するためになされたものであり、圧力の高い排ガスをサンプリングして測定精度を損なうことなくその排ガスの成分を分析することをその主たる所期課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
すなわち本発明に係る排ガスサンプリング分析システムは、
排気管に設けられて当該排気管を流れる排ガスを導入するための導入ポートに基端が接続されたメイン流路と、前記メイン流路に排ガスを導入すべく当該メイン流路に接続された第1吸引ポンプと、前記メイン流路上に設けられた絞り機構と、前記絞り機構の下流においてメイン流路から延出し、当該メイン流路を流れる排ガスをサンプリングして流通する測定流路と、前記測定流路上に設けられ、サンプリングされた排ガスを分析する分析装置と、前記測定流路の延出点の下流においてメイン流路から延出し、当該メイン流路に補償ガスを供給する補償流路と、前記補償流路上に設けられ、前記メイン流路に供給する補償ガスの流量を調整する流量調整機構と、を備え、前記第1吸引ポンプが、前記絞り機構を通過して減圧された排ガスの圧力を所定値までさらに減圧するとともに、前記流量調整機構が、前記測定流路の延出点における排ガスの圧力が所定値となるようにメイン流路に供給される補償ガスの流量を調整することを特徴とする。
【0011】
このようなものであれば、絞り機構により減圧された排ガスの圧力をさらに減圧するとともに、メイン流路に供給される補償ガスを調整して測定流路の延出点における排ガスの圧力を所定値としているので、測定流路を流れる排ガスの圧力及び流量を分析装置の仕様の範囲内の収めることができる。したがって、管内を高圧で流れる排ガスをサンプリングして測定精度を損なうことなく、排ガスを分析することができる。
【0012】
本発明の効果を一層顕著にするためには、前記導入ポートが
、前記排気管において、前記排気管に設けられたフィルタ装置の上流側に設けられていることが望ましい。フィルタ装置(例えばDPF)の上流ではフィルタの目詰まり等により高圧(例えば300kPa(ケージ圧))になることがあるが、本発明の排ガスサンプリング分析システムによりフィルタ装置上流の排ガスをサンプリングして分析できる。したがって、別途フィルタ装置の下流から排ガスをサンプリングして分析し、それらの分析結果を比較することにより、フィルタ装置の性能を評価できるようになる。
【0013】
測定流路内に排ガスを導入し易くするためには、前記測定流路を構成する配管の上流側開口が、前記メイン流路と同軸上において上流側を向くように配置され、前記測定流路を構成する配管によって等速サンプリングを行うことが望ましい。ここで、等速サンプリングは、メイン流路における排ガスの流速と測定流路における排ガスの流速が同一となるようにしてサンプリングすることであり、これにより、大きい粒子をロスなく吸引することができる。
【0014】
絞り機構において入力される排ガスの圧力に基づいて流量可変にするとともに、排ガス中に含まれるPM等の成分を当該絞り機構において損失しないようにするためには、前記絞り機構が、中央部に軸方向に沿ってメイン流路に連通する主絞り流路、その周囲に軸方向に沿って1又は複数のメイン流路に連通する副絞り流路が形成された可動体と、前記可動体の下流側の外周にスライド可能に嵌合し、前記副内部流路を閉塞又は開成する固定部と、前記可動体の外周において前記固定部及び前記可動体の間に介在して設けられ、前記可動体を前記固定部から離間させる方向に付勢するスプリングと、を備え、前記可動体が受ける排ガスの圧力に応じて前記可動体が軸方向にスライド移動することにより、通過する排ガスの流量を調整するものであることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
このように構成した本発明によれば、圧力の高い排ガスをサンプリングして測定精度を損なうことなくその排ガスの成分を分析することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係る排ガスサンプリング分析システムの模式的構成図である。
【
図2】同実施形態の絞り機構及びその周囲配管を模式的に示す断面図である。
【
図3】臨界ベンチュリの圧力(ゲージ圧)−流量特性を示す図である。
【
図4】同実施形態の排ガスサンプリング分析システムによる各部の流量特性を示す図である。
【
図5】同実施形態の排ガスサンプリング分析システムによる絞り機構下流の排ガス圧力(ゲージ圧)を示す図である。
【符号の説明】
【0017】
100 ・・・排ガスサンプリング分析システム
201 ・・・フィルタ装置(DPF)
PT ・・・導入ポート
2 ・・・メイン流路
3 ・・・絞り機構
P1 ・・・第1吸引ポンプ
4 ・・・測定流路
5 ・・・分析装置
6 ・・・補償流路
MFC3・・・流量調整機構
31 ・・・可動体
301 ・・・主絞り流路
302 ・・・副絞り流路
32 ・・・固定部
33 ・・・スプリング
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に本発明に係る排ガスサンプリング分析システムの一実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
本実施形態に係る排ガスサンプリング分析システム100は、内燃機関(エンジン)に接続された排気管200を流れる排ガスをサンプリングしてそのサンプリング排ガスを分析するものである。
【0020】
具体的にこのものは、
図1に示すように、排ガスを導入するための導入ポートPTに基端が接続されたメイン流路2と、メイン流路2に排ガスを導入すべく当該メイン流路2に接続された第1吸引ポンプP1と、メイン流路2上に設けられた絞り機構3と、絞り機構3の下流においてメイン流路2から延出し、当該メイン流路2を流れる排ガスをサンプリングして流通する測定流路4、測定流路4上に設けられ、サンプリングされた排ガスを分析する分析装置5と、測定流路4の延出点の下流においてメイン流路2から延出し、当該メイン流路2に補償ガスを供給する補償流路6と、補償流路6上に設けられ、メイン流路2に供給する補償ガスの流量を調整する流量調整機構MFC3と、を具備する。また、測定流路4の延出点及び補償流路6の延出点の間のメイン流路2には、補償流路6により供給された補償ガスが測定流路4に流入することを防止する逆流防止構造が設けられている。
【0021】
以下に各部について詳述する。
導入ポートPTは、排気管200に設けられた例えばDPF(Diesel Particulate Filter)等のフィルタ装置201の上流側に設けられている。このフィルタ装置201の上流においては、フィルタの目詰まり等の要因によって排ガスの圧力が高圧(例えば300kPa(ゲージ圧))になる。
【0022】
メイン流路2は、基端が導入ポートPTに接続され、その上流からベンチュリ又はオリフィスからなる絞り機構3、排ガスの圧力変動を緩衝するためのバッファ空間BS、第1流量調整機構MFC1、及び第1吸引ポンプP1がこの順で設けられている。第1流量調整機構MFC1は、流量計FM1及び流量調整弁(例えばニードルバルブ)V1からなるものである。この流量調整弁V1は、図示しない制御部により制御され、流量計FM1からの流量計測信号を受信した制御部が流量調整弁V1に制御信号を出力し、流量調整弁V1の開度を調整する。また、第1吸引ポンプP1は同じく制御部により制御され、絞り機構3下流(具体的にはバッファ空間BS内)の圧力が所定値となるように排ガスを吸引する。なお、
図1中の符号Fはフィルタ、CUは冷却器を示している。
【0023】
測定流路4は、絞り機構3の下流においてメイン流路2から延出して設けられている。この測定流路4上には、上流側(メイン流路2側)から、流量計FM2及び流量調整弁(例えばニードルバルブ)V2からなる第2流量調整機構MFC2と、ンプリングされた排ガスを分析する例えば粒子数計測装置(CPC)等の分析装置5と、第2吸引ポンプP2とがこの順で設けられている。なお、第2流量調整機構MFC2は、前述の制御部によって、分析装置5に流入する排ガス流量が一定となるように制御される。
【0024】
補償流路6は、測定流路4の延出点の下流においてメイン流路2から延出して設けられている。この補償流路6上には、流量計FM3及び圧力制御弁V3からなる第3流量調整機構MFC3が設けられている。なお、補償流路6内に補償ガスを流通させるためのポンプを設けても良い。ただし本実施形態では、第1吸引ポンプP1によってバッファ空間BSを負圧にしていることにより、補償流路6上にポンプを設けることなく、バッファ空間BS内に大気などの補償ガスを流入させることができる。なお、第3流量調整機構MFC3の圧力制御弁V3は、前述の制御部によって、絞り機構3下流(具体的にはバッファ空間BS内)の排ガス流量が所定値となるように制御される。
【0025】
このように構成した排ガスサンプリング分析システム100の動作について説明する。
排気管200のDPF201上流の圧力が高圧力(例えば300[kPa](ゲージ圧))の場合において、導入ポートPTから排ガスをサンプリングした場合、絞り機構3のベンチュリ(例えば流量性能6[lpm(リットル毎分)])により排ガスの圧力が低くなる(例えば280[kPa](ゲージ圧))。ここで、臨界ベンチュリの圧力−流量特性を
図3に示す。なお、
図3の横軸の圧力はゲージ圧である。この
図3から分かるように、絞り機構3下流の排ガスの圧力が−15[kPa](ゲージ圧)で一定の場合に、排気管200の排ガスの圧力が高くなればなるほど、ベンチュリによる降圧効果が小さくなり、ベンチュリを流れる排ガスの流量を一定に調整することができず、流量が大きくなってしまう。具体的には、排ガスの入力圧力が300[kPa](ゲージ圧)の場合には、流量性能6[lpm]のCFVでは、20[lpm]の排ガスが流れ、24[lpm]のCFVでは、100[lpm]の排ガスが流れる。つまり、CFVは、排気管200の排ガスの圧力が上昇するに連れて流れる流量も大きくなってしまう。
【0026】
このとき、測定流路4によりサンプリングして分析装置5に排ガスを導くために、絞り機構3下流の圧力及び流量を所定値とする必要がある。ここで、所定値とは、測定流路4により排ガスをサンプリングした際に、そのサンプリングされた排ガスの圧力及び流量が分析装置5の測定仕様を満たす程度の圧力及び流量である。
【0027】
そして、第1吸引ポンプP1により、絞り機構3の下流の圧力(例えば280[kPa](ゲージ圧))を所定の範囲内(例えば−35kPa〜35kPa(ゲージ圧))の所定値となるように吸引する。このように絞り機構3下流の圧力を所定の範囲内まで低くすると、測定流路4の延出点での流量が大きくなりすぎてしまう。そこで、補償流路6により補償ガスをメイン流路2に供給することにより、絞り機構3下流における排ガスの流量を小さくして、流量が所定の範囲内に収まるようにして、測定流路4の延出点における排ガスの圧力を所定の範囲内(例えば−35kPa〜35kPa(ゲージ圧))の所定値となるようにしている。
【0028】
ここで、本実施形態の排ガスサンプリング分析システムを用いた高圧排ガスのサンプリング結果について
図4、5を参照して説明する。ここで、第1吸引ポンプP1による希釈排ガス流量(補償ガスにより希釈された排ガス流量)をQ
ma、メイン流路2に供給される補償ガス流量をQ
mu、測定流路4を流れる排ガス流量をQ
ana、絞り機構3(CFV)を流れる排ガス流量をQ
v、絞り機構3下流の排ガス圧力をP
v、とする。なお、この例においては流量性能5.0[lpm]のCFVを用いた。また、
図4及び
図5に示す圧力はいずれもゲージ圧である。
【0029】
入力される排ガスの圧力を0〜300[kPa(ゲージ圧)]の範囲内で変化させても、測定流路4における排ガス流量Q
anaを約4.00[lpm]にすることができ(
図4参照)、その排ガス圧力P
vを−10.60〜−8.20[kPa(ゲージ圧)]の範囲内に収めることができる(
図5参照)。
【0030】
このように絞り機構3下流の圧力及び流量を所定値とすることによって、測定流路4上の第2吸引ポンプP2により吸引された排ガスによって分析装置5を故障させることなく、測定流路4によりサンプリングする排ガスの流量精度を向上させて希釈率を精度良く算出することができ、分析装置5での測定精度を向上させることができる。
【0031】
しかして、本実施形態の絞り機構3は流量可変ベンチュリであり、このベンチュリ3は、
図2に示すように、バッファ空間BSを形成するハウジング8内に収容されている。
【0032】
流量可変ベンチュリ3は、入力される排ガスの圧力によって流路断面積が変化するものであり、主絞り流路301及び副絞り流路302が形成された回転体形状をなす可動体31と、当該可動体31の下流側外周にスライド可能に嵌合し、副絞り流路302を閉塞又は開成する固定部32と、可動体31の外周において固定部32及び可動体31の間に介在して設けられ、可動体31を固定部32から離間させる方向に付勢するスプリング33と、を備えている。
【0033】
可動体31は、その中央部に軸方向に沿ってメイン流路2を連通する主絞り流路301、及びその周囲に軸方向に沿って1又は複数のメイン流路2を連通する副絞り流路302が形成されている。なお、本実施形態の各副絞り流路302の流路断面積は同一であり、その流路断面積は主絞り流路301の流路断面積よりも小さい。
【0034】
固定部32は、ハウジング8の内側周面に固定して設けられており、可動体31の下流側がスライド可能に嵌る凹部321と、当該凹部321の底壁に設けられた貫通孔322とを備えている。凹部321の開口径は、前記可動体31の下流側外周の径と略同一又は若干大きい。また、凹部321の底面は、副絞り流路302の下流側開口が形成された先端面(本実施形態ではテーパ状をなす)に対応してテーパ状をなす。貫通孔322は、凹部321底壁において、可動体31の主絞り流路301の流路方向と略同一方向に設けられている。
【0035】
そして、可動体31が着座した状態(可動体31が軸方向に移動して固定部32と接触し、副絞り流路302を閉塞する閉塞位置)で副絞り流路302を閉塞して主絞り流路301を流れる排ガスが貫通孔322を通過して下流に流れる。一方、可動体31が離間した状態(可動体31が軸方向に移動して固定部32から離間し、副絞り流路302が開放する開放位置)で副絞り流路302を開放し、主絞り流路301及び副絞り流路302を流れる排ガスが貫通孔322を通過して下流に流れる。この着座位置及び離間位置の間で可動体31が移動することによって副絞り流路302の流路断面積が増減する。
【0036】
スプリング33は可動体31に外嵌されており、可動体31の基端部全周に形成された鍔部311と固定部32の凹部周縁部321Rとにより挟まれて設けられる。なお、鍔部311は、ハウジング8の内側周面にスライド可能に嵌っている。つまり、スプリング33は、可動体31の外面、鍔部311の側面、固定部32の凹部周縁部及びハウジング8の内側周面により形成される空間内に収容された構成であり、スプリング33が流れる排ガスに接触しないようにしている。これにより、排ガス中に含まれるPM等の成分がスプリング33に付着することによる損失を防止することができる。
【0037】
このスプリング33は、可動体31が受ける排ガスの圧力に従って伸縮し、排ガスの圧力に応じて副絞り流路302の流路断面積を決定するものである。上記の構成により、可動体31が受ける排ガスの圧力に応じて可動体31が軸方向にスライド移動して、副絞り流路302を通過する排ガスの流量が調整され、その結果、ベンチュリ3を通過する排ガスの流量が調整される。
【0038】
そして、ハウジング8によりベンチュリ3の下流に形成されるバッファ空間BSには、測定流路4を構成する配管(以下「測定用配管4T」という。)及び補償流路6を構成する配管(以下、「補償用配管6T」という)が接続されている。このバッファ空間BSにより、排ガスの圧力の脈動及び第1吸引ポンプP1の脈動による圧力変動を緩衝することができる。なお、
図2中の符号2Tはメイン流路2を構成する配管である。
【0039】
より具体的には、測定用配管4Tが補償用配管6Tよりも上流側に接続されており、測定用配管4Tの上流側開口が、メイン流路2の流路方向と略同一方向を向くように配置されている。詳細には、測定用配管4Tの上流側開口が、前記ベンチュリの主絞り流路301の流路方向と略同一方向を向くように配置されている。本実施形態では、固定部32に形成された流路(貫通孔322)の下流側開口に近接配置されている。これにより、排気管200からサンプリングされた排ガスを直接的に測定流路4に導くことができる。また、測定用配管4Tの上流側開口と貫通孔322の下流側開口とを近接配置させることによって、補償流路6からメイン流路2に供給された補償ガスが測定流路4内に流入することを防止する逆流防止構造を構成している。
【0040】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態に係る排ガスサンプリング装置100によれば、絞り機構3により減圧された排ガスの圧力をさらに減圧するとともに、メイン流路2に供給される補償ガスを調整して測定流路4の延出点における排ガスの圧力を所定値としているので、測定流路4を流れる流路を分析装置5の仕様の範囲内の収めることができる。したがって、高圧の排ガスをサンプリングして測定精度を損なうことなく、排ガスを分析することができる。
【0041】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0042】
例えば、前記実施形態では、バッファ空間BSを形成するハウジング8内に絞り機構3を設ける構成としているが、メイン流路2上において別々に設けても良い。
【0043】
また、前記実施形態ではバッファ空間BSを設けているが、バッファ空間BSのないものであっても良い。
【0044】
さらに、逆流防止構造は、測定用配管の上流側開口をベンチュリ(絞り機構3)の下流側開口に近接配置することによって構成されているが、その他、メイン流路2を構成する配管の内面による抵抗によって構成しても良い。
【0045】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明により、圧力の高い排ガスをサンプリングして測定精度を損なうことなくその排ガスの成分を分析することができる。