(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
白色粒子を、少なくとも50℃の温度で、酸を加えながら、元素状炭素、および有機ポリマーの水性調製物、ならびに任意選択で追加の添加剤とよく混合して、冷却し、乾燥させることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色粒子を含むコアと、元素状炭素を含んだシェルとを含む粒子の形態をとるレーザー添加剤(laser additive)、該レーザー添加剤を調製するための方法、ならびに黒色、灰色、または有色の有機ポリマー、特に、プラスチック、コーティング(coating)、自動車用塗料、粉体塗料(powder coatings)、印刷インク、紙用塗料(paper coatings)、および製紙原料(papermaking stocks)をレーザーマーキングするための、該レーザー添加剤の使用に関する。
【0002】
レーザー光線による商品のラベリングは、今や、ほぼすべての産業部門において標準的な技術となっている。したがって、例えば、製造データ、バッチ番号、消費期限、バーコード、会社ロゴ、シリアル番号などを、プラスチックまたはプラスチックフィルムに付けなければならないことが頻繁にある。
【0003】
ラベリングに必要なコントラストは、以下の方法によって好ましくは生じる:
1.異なる色の層の除去
これは、限られた範囲でしか使用することしかできない、非常に複雑な方法であることが不利である。
【0004】
2.有機マトリックスの炭化
これは、現在、最も頻繁に用いられている方法である。炭化は、ここでは、有機マトリックス自体におけるレーザー光線の吸収によって、または添加された吸収剤による吸収によって起こる。両方の場合において、ポリマー材料の炭化は、周囲のマトリックスを燃焼させる短時間の熱ショックによって起こる。ここでは、そのマトリックスが燃焼時に十分な程度に炭素を形成する能力が、マーキングの結果のために決定的に重要である。したがって、用いられたポリマー、またはマトリックス配合が、マーキングの結果にかなりの影響を与える。こうした依存性の結果、一般に、特定の用途に適したマーキング結果を見つけ出すためには、多大な予備実験を要する。組成が変化した場合、多くの場合では、原料の品質が変動した場合にも、好適な刻印パラメーターを常に再決定しなければならない。
【0005】
3.添加顔料の変色
それら自体がレーザー衝撃(bombardment)時に変色を行う(本質的にマーキングする)顔料または添加剤を開発することが、上述した依存性を回避するために、すでにしばらく前から試みられている。そのような添加剤は、周囲のマトリックスからほぼ独立にマークを生じさせる。したがって、それらは、すべてのプラスチックに用いることができる。コーティング、塗料、および印刷などの薄い層においてでさえ、層を著しく傷つけることなく、マークが可能である。
【0006】
しかし、特に上記の最初の2つの方法は、淡い、または淡色の背景への黒色または暗色のマーキングの付与に適するだけである。しかし、有色、灰色、または黒色の背景上における白色または淡色の刻印が、例えばコンピュータのキーボードのために望まれる、レーザーマーキングの用途も知られている。そのようなマーキングは、機械的影響に高い耐性を有するべきであり、特に、耐摩耗性であるべきであり、また、それらの淡い、好ましくは白い着色を、できるだけ少ない変化で、長期間にわたって保持すべきである。
【0007】
これらの目的のために、高エネルギーレーザー光線の作用を通して脱色される、すなわち本質的にマーキングする暗色から黒色の添加剤が、一般に、暗いまたは暗色のプラスチックに添加される。しかし、レーザー照射を受ける領域は、一般に広くなく、加えて、完全な脱色は、レーザー衝撃によって達成できないことが頻繁にあるので、マーキングされた領域上の色の単なる除去は、有色から黒色の周囲との低いコントラストをもたらすだけであることが多いことが判明している。
【0008】
したがって、レーザー光線にさらされた領域とその周囲の表面との間のコントラストをかなり高める、淡色の泡(foam)形成を、添加剤の脱色と同時にまたはこれの代わりに、レーザー衝撃によるマーキング内に得ることもできれば有利であることが分かっている。この方法によって、ほぼ白色であるレーザーマーキングの製作が可能になる。
【0009】
しかし、上記のレーザーマーキングには、マーキング内の泡形成が、表面の盛り上がりをもたらすことが頻繁にあり、加えて、ある程度の多孔性を必然的に有するという欠点がある。マーキングの機械的負荷時、例えば、黒色上に白色マーキングされたコンピュータキーボードの使用時に、一定の圧力が、マーキングされた領域に長期間にわたって加わる。この圧力は、特に、多孔性の泡が、マーキングされていないキーボード表面の残部よりも盛り上がっている場合に、その泡を圧縮し、その結果、レーザーマーキングのコントラストがかなり低下し、同時に、キーボード表面上のマーキングの摩耗が増大する。
【0010】
したがって、特には有色、灰色、または黒色の背景上に、機械的負荷の下でさえも長期間にわたって不変のままである、レーザー衝撃による淡色から白色のマーキングをもたらす、レーザー添加剤に対する要求が引き続き存在する。
【0011】
したがって、本発明の目的は、その添加剤でドープされた(doped)ポリマーにおけるレーザー光の作用下で、非常に優れたマーキング結果、特に、暗色の背景上に、高コントラストで鮮明な淡色から白色のマーキングを与え、機械的に耐性のあるレーザーマーキングをもたらし、工業規模で簡単に調製できる、レーザーマーキング用添加剤を見つけることである。
【0012】
本発明の目的はさらに、このタイプのレーザー添加剤を調製するための方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、このタイプのレーザー添加剤の使用を示すことにある。
【0014】
白色のコアと、レーザー照射によって脱色できる、好ましくは黒色または灰色のシェルとからなる粒子は、プラスチックをレーザーマーキングするためのマーキング添加剤として極めて適していることが、今や判明した。
【0015】
本発明は、白色粒子を含むコアと、シェルとを含む粒子の形のレーザー添加剤であって、コアが、1つまたは複数の粒子からなり、少なくとも100nmの大きさを有し、指向性高エネルギー光線(directed high-energy radiation)の作用に対して化学的に安定であり、シェルが、元素状炭素を含む、レーザー添加剤に関する。
【0016】
本発明はさらに、本発明によるレーザー添加剤を調製するための方法であって、個々の粒子(individual particles)の形態、または複数の粒子を含む凝集体の形態をとり、この個々の粒子または凝集体が少なくとも100nmの大きさを有する白色粒子に、元素状炭素を含むシェルを付与し、かつ、その白色粒子が、指向性高エネルギー光線の作用に対して化学的に安定である方法に関する。
【0017】
本発明はまた、特に、プラスチック、プラスチックフィルム、コーティング、自動車用塗料、粉体塗料、印刷インク、紙用塗料、および製紙原料における、黒色、灰色、または有色の有機ポリマー系(organic polymer systems)のレーザーマーキング用添加剤としての、本発明によるレーザー添加剤の使用に関する。
【0018】
さらに、本発明はまた、本発明によるレーザー添加剤を含む有機ポリマー系に関する。
【0019】
本発明によるレーザー添加剤でドープされたそのポリマー系は、レーザー光の作用下で、黒色、暗色、または有色の背景上で、高コントラストおよび際立ったエッジの鮮明さ(sharpness)を有する淡色から白色のマーキングを示す。
【0020】
本発明によるレーザー添加剤は、微細粒子(finely divided particles)の形態、好ましくは粉末の形態をとる。この形態で、該添加剤は、それぞれのポリマー適用媒体(polymeric application medium)中に容易に組み込める。
【0021】
粉末粒子の形および大きさは、ここでは特に決定的ではない。一般に、その粒子は、球形、卵形、レンズ形、または円筒形である。その形は、コアの材料として用いられる白色粒子の形、および後の被覆(sheathing)プロセスによって決定される。被覆材料、および被覆の層の厚さに応じて、様々な大きさの、不揃い(irregular)であるが、しばしば実質的に球形の粒子が得られる。個々の粒子の大きさは、ここでは大きく変化することができ、一般的には、0.2から250μmの範囲にある。狭い粒度分布が有利であるが、必要ではない。
【0022】
本発明によるレーザー添加剤の粒子は、コア、およびコアを囲むシェルから構成される。コアの被覆は、完全である必要はなく、コアの表面の主たる部分(predominant part)が、シェルによって囲まれれば十分である。コア表面の比較的小さい部分(<50%)のみがシェルによって囲まれている場合、該レーザー添加剤は、総粒径に応じて、適用媒体において視認可能であろうが、そのような場合は、一般に望ましくはない。したがって、コア表面の>50%が、シェルによって覆われることが好ましい。
【0023】
本発明によるレーザー添加剤のコアは、1つまたは複数の白色粒子からなり、少なくとも100nmの大きさを有する。コアが、複数の白色粒子からなる場合、これらは、凝集体の形態をとり、総粒径が少なくとも100nmである。凝集体を形成する粒子の一次粒径が、100nm未満になり得ることは言うまでもなく;それは、好ましくは10から50nmの範囲にある。コアの大きさは、コアの最大軸の長さであるとみなされ、一次粒径は、一次粒子の最大軸の長さであるとみなされる。
【0024】
本発明の語義において、白色粒子は、380nmから780nmの波長範囲において、スペクトル吸収を実質的に有さず、これらの波長で、入射光を全方向に反射する粒子である。平坦な表面に付けた平坦な粉末床(powder bed)が、従来の測色計を使用して日光下で測定したとき、ハンターLab系(Hunter L,a,b system)で測定して、>50から100の輝度値Lを有するが、無彩色点の領域におけるaおよびb値、すなわち10未満、特に7未満のaおよびb値を有するほど高度に入射可視光を反射するならば、その白色粒子のサンプルは、本発明の語義における白色と考えられる。そのような色値は、通常、人間の目で白色と認識される。実際のサンプルが、理想的な白色のサンプルと相違することは言うまでもない。しかし、少なくとも100nmの大きさを有する粒子または凝集体は、正常な視力を有する観察者が、これらの粒子または凝集体を含む顔料床を、比較サンプルなしで白色と認識したならば、本発明の語義における白色とみなされる。
【0025】
それに対して、可視波長領域において吸収がなく、かつ、100nm未満の大きさを有する材料を含む個々の粒子または凝集体では、本発明に従って意図した使用の場合に、十分な白さは得ることができない。
【0026】
コアの大きさが増すにつれて、コアの粒子の隠蔽力は増大する。一般的には、コアの大きさは、0.1から200μmの範囲にある。特に優れたエッジの鮮明さを有する、非常に高コントラストのマーキングを達成するためには、0.2から100μmの大きさを有するコアが好ましい。
【0027】
本発明によるレーザー添加剤のコアを形成する個々の粒子または凝集体の形は、二次的な役割を果たすにすぎない。原則として、コアは、すべての既知の粒子形、例えば、フレーク、球体、繊維、立方体、棒、直方体を有することもできるし、不揃いな形のほぼ等方性の(isotropic)顆粒(granules)の形態をとることもできる。球体または立方体などの等方性の形、あるいは、不揃いな形の顆粒が好ましい。複数の粒子を含む凝集体は、粒子の不揃いの塊(heaps)の形態をとることが頻繁にある。
【0028】
本発明の語義において、好適な白色粒子は、これらを囲む媒体に関係なく、指向性高エネルギー光線の作用下で化学的に安定である、微細な材料である。本発明の目的では、これは、白色粒子としての使用に好適な材料が、これらを囲む媒体に関係なく、指向性高エネルギー光線の作用下で変化しない、少なくとも光学的には変化しない、すなわち、それらの白色着色を保持するが、好ましくはいかなる化学変化もしないことを意味するものとする。これらの材料には、例えば、従来の白色顔料、または白色フィラーがある。
【0029】
しかし、例えば塗料に最も頻繁に用いられる白色顔料、すなわち、二酸化チタンは、指向性高エネルギー光線の作用下およびある種の必要条件(還元条件)下で、青色から灰色を有し、従ってもはや白色ではない亜酸化物に還元できるので好適ではないことを強調すべきである。
【0030】
こうした理由から、本発明によるレーザー添加剤に用いられるコア粒子は、それらを囲む媒体に関係なく、指向性高エネルギー光線の作用下で有色化合物、特に有色酸化物に還元されない、対応する大きさのオーダーの白色顔料または白色フィラーである。
【0031】
コアに好適な材料は、好ましくは、酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素、硫酸バリウム(重晶石)、カオリン、またはタルクであり、それぞれの場合において、最小の大きさが100nmである個々の粒子、または凝集体の形態をとる。カオリン、タルク、および硫酸バリウムが、特に好ましい。
【0032】
本発明の語義において、指向性高エネルギー光線とは、下記の通りの従来型レーザーの光線を意味するものとする。レーザーによって発生した光線は、単色で、実質的に平行で、長距離にわたってコヒーレントであり、通常束になっている(bundled)。そのレーザー光線の波長は、通常、157nmと10.6μmの間である。
【0033】
コアを囲むシェルは、元素状炭素を含む。これは、カーボンブラックの形態、または黒色顔料の形態をとる。粉末形態で、または水性カーボンブラック分散物の形態で用いることができる、粒径1から100nmの、工業グレードのあらゆる種類のカーボンブラックまたはカラーブラック(colour black)、例えば、商品名Derussol(登録商標)、Color Black FW、またはColour Black Sで知られるEvonik製のカーボンブラック、特に、Colour Black FW 1、Derussol(登録商標)A、およびDerussol(登録商標)N 25/Lが好適である。
【0034】
元素状炭素は、単純な混合によって、接着力を介して、コア粒子の表面に結合できるが、コアを囲むシェルが、元素状炭素に加えて、有機ポリマーを含むことも有利である。有機ポリマーの助けによって、元素状炭素は、コア粒子の表面に非常に均一に付着できるのと同時に、この被覆の中に組み込まれる。
【0035】
ここでの好適な有機ポリマーは、高エネルギー光線によって炭化されないものである。有機ポリマーは、アミノ樹脂の群から、特に、メラミン樹脂、尿素樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素/メラミン混合物、またはポリアミドの群から好ましくは選択される。これらのポリマー、またはこれらのポリマーを調製するための出発材料は、単純なプロセスにおいて元素状炭素と混合することができ、ポリマーの形態でコアの表面に付着することができる。
【0036】
元素状炭素は、本発明によるレーザー添加剤のシェル中に、シェルの重量に対して0.1から50重量%、好ましくは、0.1から20重量%の割合で存在する。
【0037】
原則として、すでに記述した材料とは別のさらなる添加剤は、本発明によるレーザー添加剤の調製に必要ではない。
【0038】
しかし、好ましい実施形態では、本発明によるレーザー添加剤は、コア粒子、元素状炭素、および有機ポリマーのほかに、1種または複数の保護コロイドをさらに含むこともできる。これらのコロイドは、個々の粒子としてのコア粒子の粒径が、本発明によるレーザー添加剤の調製にすでに十分である場合に、比較的多数のコア粒子が共に固まることを妨げる。
【0039】
好適な保護コロイドは、そうした目的で当業者に公知のクラスの化合物、特に、部分加水分解ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、およびヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロースエーテル(Tylose)、ポリアクリレート、デンプン、タンパク質、アルギネート、ペクチン、またはゼラチンなどの水溶性ポリマーである。セルロースエーテル、特に、ヒドロキシエチルセルロースが、とりわけ好ましい。
【0040】
保護コロイドは、本発明によるレーザー添加剤の調製に使用される調製物(preparation)の重量に対して、0.01から5%、好ましくは、0.1から2%という少量で添加する。ここでは、コアの大きさは、用いられる保護コロイドの量、および追加的に存在する任意の界面活性剤を介して、目標に合わせて調節することができる。保護コロイドの量を増やすと、コアの大きさが減少するという原理が、ここでは基本的に適用される。
【0041】
本発明の語義において、前記大きさ、粒径、または一次粒径とは、それぞれの場合において、各粒子(コア、一次粒子、または本発明による粒子状レーザー添加剤)の最大軸の長さであるとみなされる。この大きさは、原則として、当業者に熟知されている、粒径測定のための任意の方法を使用して測定することができる。粒径測定は、該レーザー添加剤の大きさに応じて、例えば、高分解能光学顕微鏡において、しかしより良好には、走査電子顕微鏡(SEM)または高分解能電子顕微鏡(HRTEM)などの電子顕微鏡において、しかしまた原子間力顕微鏡(AFM)においてでも、いくつもの個々の粒子を直接観察し、測定することによって、後者ではそれぞれの場合に適切な画像分析ソフトウェアを用いて、簡単に行うことができる。粒径測定は、レーザー回折の原理で作動する測定機器(例えば、Malvern Mastersizer 2000、APA200、Malvern Instruments Ltd.、UK)を使用して有利に行うこともできる。粒径も体積における粒度分布も、これらの測定機器を使用して、標準の方法(SOP)で、顔料懸濁物から測定することができる。本発明によると、最後に述べた測定方法が好ましい。
【0042】
本発明によるレーザー添加剤は、好ましくは、灰色または黒色粉末の形態をとる。コアおよびシェルは、重量比が、20:1から1:1、好ましくは、8:1から2:1である。
【0043】
コアが、前記の大きさのオーダーのカオリン、タルク、または硫酸バリウムからなり、シェルが、メラミン樹脂または尿素−ホルムアルデヒド樹脂を、各場合において、カーボンブラックと組み合わせて含む、本発明によるレーザー添加剤が特に好ましい。
【0044】
固有色(inherent colour)が暗色、灰色、または黒色である有機ポリマーまたはポリマー系(polymer systems)の中に、本発明による粒子状レーザー添加剤が導入され、これらが、高エネルギー光線の作用(レーザー衝撃)にさらされた場合、元素状炭素を含むレーザー添加剤のシェルは脱色される。これは、粒子状カーボンブラックをCO
2の形成を伴うレーザー吸収剤として使用した時に同様に起こるが、これはレーザー添加剤のコアを囲むシェルに生じ、そこでは、それが微細孔の(fine−pored)形態をとり、レーザー添加剤の粒子状コアのすぐそばにある。シェルに好ましくは使用される有機ポリマーは、レーザー照射条件下で炭化しないので、シェル全体が、脱色される。同時に、白色コアのために潜在的に存在する入射光の散乱が活性化し、白色コアは、適宜、コアを囲むシェルと相互作用して、マーキングされた場所で視認可能になり、周囲の(暗色の)プラスチックとの高いコントラストを形成する。暗色の背景上の、淡色から白色の高コントラストのマーキングだけでなく、際立ったエッジの鮮明さを有するマーキングも得られる。マーキングされた物品の表面での泡形成は、ほとんど起こらない。こうした理由から、達成されたマーキングは、機械的に極めて安定であり、機械的負荷が増大しても、コントラストも明瞭さも失わない。
【0045】
本発明はさらに、粒子の形態をとる本発明によるレーザー添加剤を調製するための方法であって、個々の粒子または凝集体の形態をとり、高エネルギー光線の作用に対して化学的に安定である、少なくとも100nmの大きさを有する白色粒子に、元素状炭素を含むシェルが付与される方法に関する。
【0046】
元素状炭素のほかに、有機ポリマーも含むシェルは、コアを形成する白色粒子に、特に好ましくは付着される。
【0047】
ここでは、そのポリマーは、特に、アミノ樹脂の群から、特に、メラミン樹脂、尿素樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素/メラミン混合物、またはポリアミドの群から選択される。
【0048】
これらのポリマーが選択されれば、本発明によるレーザー添加剤のコアを形成する白色粒子の、元素状炭素を含むポリマーシェルを用いたコーティングが、分散したコア粒子および、好ましくは同様に分散したカーボンブラックの形態をとる、元素状炭素の存在下で、アミノ樹脂の水性の調製物の、好ましくは溶液の、湿式化学法の酸触媒重縮合(wet−chemical acid−catalysed polycondensation)によって行われる。アミノ樹脂の縮合物は、水に不溶であり、元素状炭素と共にコアの表面に沈殿する。
【0049】
好ましくは用いられるさらなる材料は、すでに上記した。ここではそれらを参照する。
【0050】
本発明による方法では、白色粒子の形態をとる、コアとして上述した材料は、少なくとも50℃の温度で、酸を添加しながら、元素状炭素、および有機ポリマーの水性調製物(aqueous preparation)、ならびに任意選択で追加の添加剤とよく(intimately)混合して、冷却し、乾燥させる。有機ポリマーの分散物および溶液の両方を、水性調製物として用いることができる。
【0051】
pHを、1と7の間、好ましくは、2と5の間の値に調整することによって、元素状炭素を含むポリマーシェルは、コアを形成する白色粒子上に沈着する。反応時間は、通常、10分と60分の間である。反応生成物を冷却した後、そのバッチを、100℃と250℃の間の温度で、2から20時間にわたって乾燥させる。得られた粉末は、粉砕作業および/またはふるい分け作業によって、さらに調製することができる。灰色から黒色の粉末が得られる。
【0052】
本発明はまた、有機ポリマー、特に、暗色、灰色、または黒色のプラスチックをレーザーマーキングするための、上記のレーザー添加剤の使用に関する。
【0053】
特に、本発明はまた、プラスチック、特に、暗色、灰色、または黒色の、好ましくは、灰色または黒色の、本発明によるレーザー添加剤を含むプラスチックに関する。
【0054】
特に、マーキングしようとする有機ポリマーまたはポリマー系に対して0.1から30重量%、好ましくは、0.5から20重量%、きわめて特に好ましくは、1から10重量%の濃度の本発明によるレーザー添加剤の添加を通して、同程度の濃度の市販の(発泡性)レーザー吸収剤を用いるよりも著しく高いコントラストが、ポリマーのレーザーマーキングにおいて達成される。前記濃度は、所望のコントラストだけでなく、使用媒体(use medium)の層の厚さにも依存している。したがって、レーザービームに十分な数の顔料粒子を与えるために、プラスチックにおいてよりも、印刷およびコーティング用途で、かなり高い濃度が必要となる。
【0055】
しかし、ポリマーまたはポリマー系における、好ましくは、熱可塑性物質、熱硬化性物質、またはエラストマーにおける、本発明によるレーザー顔料の濃度は、用いられるポリマー材料にも依存している。割合の低いレーザー顔料は、ポリマー系をわずかに変化させ、その加工性に影響を及ぼさない。
【0056】
さらに、任意の種類のカラーバリエーション、特に、ポリマーの暗色、灰色、または黒色の着色を可能にし、同時に、レーザーマーキングの視認性を確実にする着色剤を、ポリマーに添加することができる。好適な着色剤は、特に、レーザーマーキングの間に分解せず、レーザー光の下で反応しない、有色の金属酸化物顔料、ならびに有機の顔料および染料である。
【0057】
しかし、レーザービームの作用下で、本発明によるレーザー添加剤で達成できるマーキングは、暗色、灰色、または黒色の背景上で、特に高いコントラストおよび鮮明なエッジを有するので、ポリマーを灰色または黒色に着色する着色剤がきわめて特に好ましい。白色または淡色のプラスチックに本発明によるレーザー添加剤を添加した時に、淡い淡色から白色のレーザーマーキングは、同様に得ることができるが、達成可能なコントラストは、しかしながら、低いものでしかない。加えて、灰色または黒色のレーザー添加剤の添加は、少量で用いられるだけであっても、ポリマーの元々の着色を変えるであろう。それに対して、暗色、灰色、または黒色のポリマー系での、本発明によるレーザー添加剤の使用は、比較的多い量でも可能であり、それによって、所期の高コントラストの淡色マーキングがもたらされる。
【0058】
レーザーマーキングに好適なポリマー材料は、例えば、Ullmann, Vol 15, pp. 457 ff, Verlag VCHに記載されている通りの、特に、すべての既知のプラスチック、特に、熱可塑性物質、さらには、熱硬化性物質およびエラストマーである。好適なポリマーは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリエステル−エステル、ポリエーテル−エステル、ポリフェニレンエーテル、ポリアセタール、ポリウレタン、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリメタクリル酸メチル、ポリビニルアセタール、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)、アクリロニトリル−スチレン−アクリレート(ASA)、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、およびポリエーテルケトン、ならびに、例えば、PC/ABS、MABSなどの、それらのコポリマー、混合物、および/またはポリマーブレンドである。
【0059】
本発明によるレーザー添加剤は、ポリマー顆粒、表面コーティング剤、印刷インク、または製紙原料を、レーザー添加剤と混合させ、場合によっては、熱の作用下でその混合物を変形させることによって、マーキングしようとするポリマー、好ましくは、プラスチックまたはプラスチックフィルム、あるいはコーティング、例えば、塗料、紙用塗料または粉体塗料、自動車用塗料、あるいはカラー印刷物(colour print)に組み込まれる。次いで、製紙原料、印刷インク、および表面コーティング剤は、従来の方式で、さらに処理される。レーザー添加剤は、一斉にまたは逐次的に、ポリマーに添加することができる。作用条件下で温度安定性である、接着剤、ポリマー相溶性有機溶剤、安定剤、および/または界面活性剤を、レーザー添加剤を組み込む間に、ポリマー、好ましくは、プラスチック顆粒に任意選択で添加することができる。
【0060】
レーザー添加剤でドープされるプラスチック顆粒は、一般的に、初めに、プラスチック顆粒を好適なミキサーに入れ、それらを任意の添加剤で濡らし、次いで、レーザー添加剤を添加し、組み込むことによって調製される。ポリマーは、一般に、カラーコンセントレート(マスターバッチ)もしくはコンパウンドを介して着色される(pigmented)。得られた混合物は、次いで、押出成型機または射出成型機で、直接加工することができる。加工時に形成された成型物は、レーザー顔料の非常に均一な分布を示す。その後、好適なレーザーを使用して、レーザーマーキングが行われる。
【0061】
レーザー刻印は、パルスレーザー、好ましくは、Nd:YAGレーザーの光路の中にサンプルを導入することによって行われる。さらに、例えば、マスク技術を介した、エキシマレーザーを使用する刻印が可能である。しかし、所望の結果は、使用された添加剤よる吸収が高い領域の波長を有する従来タイプの他のレーザーを使用して、達成することもできる。得られるマークは、レーザーの照射時間(パルスレーザーの場合は、パルスの数)および照射出力、ならびに使用されるプラスチック系によって決定される。使用されるレーザーの出力は、各用途に依存し、また、個々の場合それぞれにおいて、当業者によって容易に決定することができる。
【0062】
使用されるレーザーは、157nmから10.6μmの範囲、好ましくは、532nmから10.6μmの範囲の波長を一般的に有する。ここでは、例えば、CO
2レーザー(10.6μm)およびNd:YAGレーザー(1064または532nm)、またはパルスUVレーザーを挙げることができる。エキシマレーザーは、以下の波長を有する:F
2エキシマレーザー(157nm)、ArFエキシマレーザー(193nm)、KrClエキシマレーザー(222nm)、KrFエキシマレーザー(248nm)、XeClエキシマレーザー(308nm)、XeFエキシマレーザー(351nm)、周波数逓倍した(frequency−multiplied)、355nm(周波数3倍)または265nm(周波数4倍)の波長を有するNd:YAGレーザー。Nd:YAGレーザー(1064または532nm)およびCO
2レーザーの使用が、特に好ましい。用いられるレーザーのエネルギー密度は一般的に、0.3mJ/cm
2から50J/cm
2の範囲、好ましくは0.3mJ/cm
2から10J/cm
2の範囲にある。パルスレーザーの使用時に、パルス周波数は、一般的に、1から60kHzの範囲にある。本発明による方法で用いることができる対応するレーザーは、市販されている。
【0063】
本発明によるレーザー添加剤でドープされたポリマーは、これまで、従来の印刷プロセスが、プラスチックおよびプラスチックフィルムの刻印に用いられたすべての分野で使用することができる。例えば、本発明によるポリマーから作製された成型組成物、半完成製品、および完成部品は、電気産業、電子産業、および自動車産業で使用することができる。例えば、本発明に従ってドープされたポリマーからなる、ケーブル、ひも(lines)、装飾条片(decorative strips)、または、加熱、換気、および冷却部門の機能部品、あるいは、キーボード、スイッチ、プラグ、レバー、およびハンドルのラベリングおよび刻印は、アクセスしにくい領域でも、レーザー光のおかげでマーキングすることができる。さらに、本発明によるポリマー系は、食品部門や玩具部門での包装に用いることができる。包装上のマークは、それらが、耐払拭性であり、特に、機械的に安定、例えば、耐引っかき性で、後の滅菌プロセスの間安定であり、また、マーキングプロセスの間に、衛生的に付けることができるという事実によって特徴づけられる。さらに、例えば、ワインボトル用の、プラスチックのコルクを刻印することができる。
【0064】
完全なラベルの像は、再利用システム用の包装に、耐久的に付けることができる。さらに、本発明によるポリマー系は、医療用技術で、例えば、ペトリ皿、マイクロタイタープレート、使い捨て注射器、アンプル、サンプル容器、供給チューブおよび医療用の収集袋
または保存袋のマーキングで使用される。
【0065】
レーザー刻印のさらに重要な適用分野は、動物の個々のラベリング用のプラスチック製マーク、いわゆる家畜タグまたはイヤマークである。動物に特定的に属する情報は、バーコードシステムを介して保存される。この情報は、スキャナーによって、必要な時に、再度呼び出すことができる。そのマークが、幾年かの間、動物に付いたままである場合もあるので、刻印は、非常に耐久性のあるものでなければならない。
【0066】
このように、本発明によるレーザー添加剤でドープされたポリマーからなる、成型組成物、半完成品、および完成部品のレーザーマーキングは可能である。高い機械的負荷にさらされる、灰色、黒色、または暗色のプラスチック部品をレーザーマーキングするための、本発明によるレーザー添加剤の使用が、特に好ましい。暗色または黒色の背景上での、耐久性のある白色または淡色のマーキングが、ここで、達成することができる。加えて、本発明によるレーザー添加剤は、様々に着色された暗色のプラスチック組成物中に、それらの光学的外観を変えてしまうことなく(曇りなし)、任意選択で導入することができる。
【0067】
本発明によるレーザー添加剤をプラスチックで使用した時に、レーザー衝撃時のプラスチック表面で、レーザー添加剤の発泡は、実質的に起こらない。これは、得られた淡色のレーザーマーキングが、プラスチック表面上で、多孔性をほとんど有さず、したがって、機械的負荷時に、はがされることも、圧縮されることもないことを意味する。したがって、達成可能な淡色のマーキングは、機械的に安定で、耐久性がある。
【0068】
以下の例は、本発明を説明することを意図したものであるが、それを限定するものではない。示したパーセントのデータは、重量パーセントである。
【0069】
例1:
粒径が、D
90=22μm(標準条件下で、Malvern Instruments Ltd.Mastersizer 2000を使用して測定した)であるカオリン50gを、50gの水中でペーストにする。25gのメラミン−ホルムアルデヒド樹脂(Madurit MW 830、Ineos、75%溶液)と、1gのカーボンブラック(Evonik製のColor Black FW 1)とを、そのカオリン懸濁物中で撹拌する。50gの0.3%チロース溶液(SE Tylose GmbH&Co.KG製のTylose H20)を添加し、そのバッチを、ビーズミル(Getzmann「Dispermat」溶解機の付属のビーズミル)中で分散させる。それに続き、分散済みのバッチを、70℃に温めて、撹拌しながら、約26mlの1モル塩酸を使用して、pH3.5に調整する。30分の反応時間の後、バッチをそのまま冷却させる。それに続き、バッチを、吸込みフィルターを通して濾過し、200℃で一晩乾燥させる。このようにして得られた材料を、粉砕し、ふるい分ける(メッシュ幅が40μmのふるい)と、標準条件下でMalvern Instruments Ltd.Mastersizer 2000を使用して測定した粒径が、D
90=31μmである、黒色の粉末が得られる。
【0070】
得られた粉末を、黒色染料を供給したポリプロピレン中に、2%の割合で組み込み、得られたコンパウンドを、射出成型機で、6×9cmの試験プレートの形にする。
【0071】
パルス周波数1〜20kHz、および速度300mm/sのNd:YAGレーザーを使用して、試験プレートに、文字形態の白色のマーキングを付ける。マーキングした試験領域の集中的な圧力負荷(120分にわたって、金属物品でこする)時に、プラスチックの表面はなめらかになるが、白色のマーキングは有意な変化を全く見せない。
【0072】
比較例1:
カーボンブラック(Colour Black FW 1)を、例1と類似の方法で黒色のポリプロピレン中に、2%の割合で組み込み、射出成型機で、例1に示した寸法の試験プレートの形にする。例1に類似のパルス周波数およびレーザー速度で動作するNd:YAGレーザーを使用して、白色の文字を試験プレートに書き込む。得られたマーキングは、例1によるマーキングに匹敵するコントラストを示す。例1で述べた圧力負荷の下で、マーキングの白さは、短時間(30分)内に、黄褐色に変化する。
【0073】
例2:
粒径が、D
90=22μm(標準条件下で、Malvern Instruments Ltd.Mastersizer 2000を使用して測定した)であるカオリン(Merck KGaAの製品)50gを、25gの尿素−ホルムアルデヒド樹脂(Kaurit液体、50%、BASF製の製品)、4gの水性カーボンブラック分散物(Evonik製のDerussol(登録商標)N25/L、カーボンブラック含有量25%)、および50gの0.3%チロース溶液(SE Tylose GmbH&Co.製の製品Tylose H20、0.15gが、60℃で、49.85gの水に溶解したもの)と、溶解機中で分散させる。それに続き、その分散済みのバッチを70℃に温めて、撹拌しながら、10%シュウ酸の添加によって、pH3から4を確立する。60分の反応時間の後、バッチをそのまま冷却させる。そのバッチを、脱イオン水で洗浄し、それに続き、吸込みフィルターを通して濾過し、180℃で一晩乾燥させる。このようにして得られた材料を、粉砕し、ふるい分ける(メッシュ幅が40μmのふるい)と、標準条件下でMalvern Instruments Ltd.Mastersizer 2000を使用して測定した粒径が、D
90=28μmである、黒色の粉末が得られる。
【0074】
得られた粉末を、黒色染料を供給したポリプロピレン中に、2%の割合で組み込み、得られたコンパウンドを、射出成型機で、6×9cmの試験プレートの形にする。パルス周波数1〜20kHz、および速度300mm/sのNd:YAGレーザーを使用して、試験プレートに、文字形態の白色のマーキングを付ける。マーキングした試験領域の集中的な圧力負荷(120分にわたって、金属物品でこする)時に、プラスチックの表面はなめらかになるが、白色のマーキングは有意な変化を全く見せない。