(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、温度調整に用いるヒータは、そのパワーが隣接するゾーンに設けられたヒータのパワーと互いに干渉しあうことから、隣接するゾーンのヒータのパワーによってそのパワーが増減してしまう。また、近年の省エネヒータは、従来のヒータに比べてパワー出力が極めて小さいため、わずかな温度調整であっても、ヒータのパワーが飽和(0%または100%)してしまうことがある。ヒータのパワーが飽和すると、正しい温度制御ができず、熱処理の再現性が低下してしまう。このため、ヒータの温度調整においては、ヒータのパワーを考慮して定める必要がある。
【0006】
このように、ヒータの温度調整が困難となっていることから、熱処理システムの操作者が、経験や勘に基づいて微調整を行っており、熱処理システムやプロセスに関する知識や経験のない操作者であっても、ヒータのパワーが飽和することなく、温度調整を容易に行うことができるような熱処理システム及び熱処理方法が求められている。
【0007】
本発明は、上記実状に鑑みてなされたものであり、温度調整を容易に行うことができる熱処理システム、熱処理方法、及び、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点にかかる熱処理システムは、
複数枚の被処理体を収容する処理室内を加熱する加熱手段と、
前記加熱手段により加熱される処理室内の温度を含む、処理内容に応じた熱処理条件を記憶する熱処理条件記憶手段と、
前記処理室内の温度の変化と、前記加熱手段のパワーの変化との関係を示すモデルを記憶するパワー変化モデル記憶手段と、
前記熱処理条件記憶手段に記憶された処理室内の温度の変更に関する情報を受信する変更温度受信手段と、
前記変更温度受信手段により受信された変更する温度と、前記パワー変化モデル記憶手段に記憶されたモデルとに基づいて、変更した温度における加熱手段のパワーを算出するパワー算出手段と、
前記パワー算出手段により算出された加熱手段のパワーが飽和しているか否かを判別する判別手段と、
前記判別手段により前記加熱手段のパワーが飽和していると判別されると、前記加熱手段のパワーが飽和していることを示す情報を報知する報知手段と、
を備え
、
前記報知手段は、前記加熱手段のパワーが飽和しない温度を算出し、算出した温度を示す情報を報知する、ことを特徴とする。
【0010】
前記処理室は複数のゾーンに区分けされ、
前記モデル記憶手段に記憶されたモデルは、前記ゾーンごとの処理室内の温度の変化と、前記ゾーンごとの加熱手段のパワーの変化との関係を示し、
前記加熱手段は、前記処理室内のゾーンごとに温度設定可能であり、
前記変更温度受信手段は、前記ゾーンごとに変更する温度が特定され、
前記パワー算出手段は、前記ゾーンごとの加熱手段のパワーを算出する、ことが好ましい。
【0011】
本発明の第2の観点にかかる熱処理方法は、
複数枚の被処理体を収容する処理室内を加熱する加熱手段により加熱される処理室内の温度を含む、処理内容に応じた熱処理条件を記憶する熱処理条件記憶工程と、
前記処理室内の温度の変化と、前記加熱手段のパワーの変化との関係を示すモデルを記憶するパワー変化モデル記憶工程と、
前記熱処理条件記憶工程で記憶された処理室内の温度の変更に関する情報を受信する変更温度受信工程と、
前記変更温度受信工程で受信された変更する温度と、前記パワー変化モデル記憶工程で記憶されたモデルとに基づいて、変更した温度における加熱手段のパワーを算出するパワー算出工程と、
前記パワー算出工程で算出された加熱手段のパワーが飽和しているか否かを判別する判別工程と、
前記判別工程で前記加熱手段のパワーが飽和していると判別されると、前記加熱手段のパワーが飽和していることを示す情報を報知する報知工程と、
を備え
、
前記報知工程では、前記加熱手段のパワーが飽和しない温度を算出し、算出した温度を示す情報を報知する、ことを特徴とする。
【0012】
本発明の第3の観点にかかるプログラムは、
コンピュータを、
複数枚の被処理体を収容する処理室内を加熱する加熱手段により加熱される処理室内の温度を含む、処理内容に応じた熱処理条件を記憶する熱処理条件記憶手段、
前記処理室内の温度の変化と、前記加熱手段のパワーの変化との関係を示すモデルを記憶するパワー変化モデル記憶手段、
前記熱処理条件記憶手段に記憶された処理室内の温度の変更に関する情報を受信する変更温度受信手段、
前記変更温度受信手段により受信された変更する温度と、前記パワー変化モデル記憶手段に記憶されたモデルとに基づいて、変更した温度における加熱手段のパワーを算出するパワー算出手段、
前記パワー算出手段により算出された加熱手段のパワーが飽和しているか否かを判別する判別手段、
前記判別手段により前記加熱手段のパワーが飽和していると判別されると、前記加熱手段のパワーが飽和していることを示す情報を報知する報知手段、
として機能させ
、
前記報知手段は、前記加熱手段のパワーが飽和しない温度を算出し、算出した温度を示す情報を報知する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、温度調整を容易に行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の熱処理システム、熱処理方法、及び、プログラムを、
図1に示すバッチ式の縦型の熱処理装置に適用した場合を例に本実施の形態を説明する。また、本実施の形態では、成膜用ガスとして、ジクロロシラン(SiH
2Cl
2)と一酸化二窒素(N
2O)とを用いて、半導体ウエハにSiO
2膜を形成する場合を例に本発明を説明する。
【0016】
図1に示すように、本実施の形態の熱処理装置1は、略円筒状で有天井の反応管2を備えている。反応管2は、その長手方向が垂直方向に向くように配置されている。反応管2は、耐熱及び耐腐食性に優れた材料、例えば、石英により形成されている。
【0017】
反応管2の下側には、略円筒状のマニホールド3が設けられている。マニホールド3は、その上端が反応管2の下端と気密に接合されている。マニホールド3には、反応管2内のガスを排気するための排気管4が気密に接続されている。排気管4には、バルブ、真空ポンプなどからなる圧力調整部5が設けられており、反応管2内を所望の圧力(真空度)に調整する。
【0018】
マニホールド3(反応管2)の下方には、蓋体6が配置されている。蓋体6は、ボートエレベータ7により上下動可能に構成され、ボートエレベータ7により蓋体6が上昇するとマニホールド3(反応管2)の下方側(炉口部分)が閉鎖され、ボートエレベータ7により蓋体6が下降すると反応管2の下方側(炉口部分)が開口されるように配置されている。
【0019】
蓋体6の上部には、保温筒(断熱体)8を介して、ウエハボート9が設けられている。ウエハボート9は、被処理体、例えば、半導体ウエハWを収容(保持)するウエハ保持具であり、本実施の形態では、半導体ウエハWが垂直方向に所定の間隔をおいて複数枚、例えば、150枚収容可能に構成されている。そして、ウエハボート9に半導体ウエハWを収容し、ボートエレベータ7により蓋体6を上昇させることにより、半導体ウエハWが反応管2内にロードされる。
【0020】
反応管2の周囲には、反応管2を取り囲むように、例えば、抵抗発熱体からなるヒータ部10が設けられている。このヒータ部10により反応管2の内部が所定の温度に加熱され、この結果、半導体ウエハWが所定の温度に加熱される。ヒータ部10は、例えば、5段に配置されたヒータ11〜15から構成され、ヒータ11〜15には、それぞれ電力コントローラ16〜20が接続されている。このため、この電力コントローラ16〜20にそれぞれ独立して電力を供給することにより、ヒータ11〜15をそれぞれ独立に所望の温度に加熱することができる。このように、反応管2内は、このヒータ11〜15により、
図3に示すような5つのゾーンに区分されている。例えば、反応管2内のTOP(ZONE1)を加熱する場合には、電力コントローラ16を制御してヒータ11を所望の温度に加熱する。反応管2内のCENTER(CTR(ZONE3))を加熱する場合には、電力コントローラ18を制御してヒータ13を所望の温度に加熱する。反応管2内のBOTTOM(BTM(ZONE5))を加熱する場合には、電力コントローラ20を制御してヒータ15を所望の温度に加熱する。
【0021】
また、マニホールド3には、反応管2内に処理ガスを供給する複数の処理ガス供給管が設けられている。なお、
図1では、マニホールド3に処理ガスを供給する3つの処理ガス供給管21〜23を図示している。処理ガス供給管21は、マニホールド3の側方からウエハボート9の上部付近(ZONE1)まで延びるように形成されている。処理ガス供給管22は、マニホールド3の側方からウエハボート9の中央付近(ZONE3)まで延びるように形成されている。処理ガス供給管23は、マニホールド3の側方からウエハボート9の下部付近(ZONE5)まで延びるように形成されている。
【0022】
各処理ガス供給管21〜23には、それぞれ、流量調整部24〜26が設けられている。流量調整部24〜26は、処理ガス供給管21〜23内を流れる処理ガスの流量を調整するためのマスフローコントローラ(MFC)などから構成されている。このため、処理ガス供給管21〜23から供給される処理ガスは、流量調整部24〜26により所望の流量に調整されて、それぞれ反応管2内に供給される。
【0023】
また、熱処理装置1は、反応管2内のガス流量、圧力、処理雰囲気の温度といった処理パラメータを制御するための制御部(コントローラ)50を備えている。制御部50は、流量調整部24〜26、圧力調整部5、ヒータ11〜15の電力コントローラ16〜20等に制御信号を出力する。
図2に制御部50の構成を示す。
【0024】
図2に示すように、制御部50は、モデル記憶部51と、レシピ記憶部52と、ROM53と、RAM54と、I/Oポート55と、CPU(Central Processing Unit)56と、これらを相互に接続するバス57と、から構成されている。
【0025】
モデル記憶部51には、ヒータの温度の変化と、ヒータのパワー変化との関係を示すモデルとが記憶されている。なお、このモデルの詳細については後述する。
【0026】
レシピ記憶部52には、この熱処理装置1で実行される成膜処理の種類に応じて、制御手順を定めるプロセス用レシピが記憶されている。プロセス用レシピは、ユーザが実際に行う処理(プロセス)毎に用意されるレシピであり、反応管2への半導体ウエハWのロードから、処理済みの半導体ウエハWをアンロードするまでの、各部の温度の変化、反応管2内の圧力変化、ガスの供給の開始及び停止のタイミング、供給量などを規定する。
【0027】
ROM53は、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュメモリ、ハードディスクなどから構成され、CPU56の動作プログラムなどを記憶する記録媒体である。
RAM54は、CPU56のワークエリアなどとして機能する。
【0028】
I/Oポート55は、温度、圧力、ガスの流量に関する測定信号をCPU56に供給すると共に、CPU56が出力する制御信号を各部(圧力調整部5、ヒータ11〜15の電力コントローラ16〜20、流量調整部24〜26等)へ出力する。また、I/Oポート55には、操作者が熱処理装置1を操作する操作パネル58が接続されている。
【0029】
CPU56は、制御部50の中枢を構成し、ROM53に記憶された動作プログラムを実行し、操作パネル58からの指示に従って、レシピ記憶部52に記憶されているプロセス用レシピに沿って、熱処理装置1の動作を制御する。
【0030】
また、CPU56は、モデル記憶部51に記憶されているモデルと、反応管2内の各ZONE(ZONE1〜5)に配置されたヒータ11〜15の設定温度とに基づいて、ヒータ11〜15のパワーの変化を算出する。CPU56は、この算出されたヒータ11〜15のパワーの変化に基づいて、設定温度におけるヒータ11〜15のパワーを算出する。そして、CPU56は、設定温度におけるヒータ11〜15のパワーが飽和(0%または100%)しているか否かを判別する。
バス57は、各部の間で情報を伝達する。
【0031】
次に、モデル記憶部51に記憶されているモデルについて説明する。前述のように、モデル記憶部51には、ヒータの温度の変化と、ヒータのパワー変化との関係を示すモデルとが記憶されている。一般に、反応管2内の1つの収容位置(ZONE)の温度を変化させると、そのZONEだけでなく、他のZONEについても、ヒータのパワーに影響を及ぼす。
図4に、このモデルの一例を示す。
【0032】
図4に示すように、このモデルは、所定ZONEに配置されたヒータの温度を1℃上げたとき、各ZONEに配置されたヒータのパワーがどれだけ変化するかを示している。
【0033】
例えば、
図4中の破線で囲まれた箇所は、電力コントローラ16を制御してZONE1のヒータ11の温度設定値を1℃上げると、ZONE1のヒータ11のパワーが1.00%増加し、ZONE2のヒータ12のパワーが0.70%減少し、ZONE3のヒータ13のパワーが0.06%増加し、ZONE4のヒータ14のパワーが0.01%減少し、ZONE5のヒータ15のパワーが0.02%増加することを示している。
【0034】
なお、このモデルは、所定ZONEに配置されたヒータの温度を変化させたときに、各ZONEに配置されたヒータのパワーがどれだけ変化するかを示すことができるものであればよく、これ以外の種々のモデルを用いてもよい。
【0035】
また、このモデルは、プロセス条件や装置の状態によってデフォルトの数値が最適でない場合も考えられることから、ソフトウエアに拡張カルマンフィルターなどを付加して学習機能を搭載することにより、モデルの学習を行うものであってもよい。このカルマンフィルターによる学習機能については、例えば、米国特許第5 ,991,525号公報などに開示されている手法を利用することができる。
【0036】
次に、以上のように構成された熱処理装置1を用いて反応管2内(ZONE1〜5)の温度を調整する調整方法(調整処理)について説明する。この調整処理は、成膜処理を行う前のセットアップの段階で行っても、成膜処理と同時に行ってもよい。
図5は、本例の調整処理を説明するためのフローチャートである。
【0037】
この調整処理においては、操作者は、操作パネル58を操作して、プロセス種別、本例では、ジクロロシランと一酸化二窒素(N
2O)とのSiO
2膜の成膜(DCS−HTO)を選択するとともに、
図6(a)に示すように、ターゲットとするSiO
2膜の膜厚を入力する。
【0038】
まず、制御部50(CPU56)は、プロセス種別等が入力されたか否かを判別する(ステップS1)。CPU56は、必要な情報が入力されていると判別すると(ステップS1;Yes)、入力されたプロセス種別に対応するプロセス用レシピをレシピ記憶部52から読み出し、操作パネル58に表示する(ステップS2)。プロセス用レシピには、
図6(b)に示すように、選択されたプロセスにおけるZONE1〜5の温度が記憶されている。また、CPU56は、
図6(c)に示すように、記憶されたZONE1〜5の温度からヒータ11〜15のパワーを算出する。なお、当該温度で実行されたログがある場合には、ヒータ11〜15のパワーを算出せず、そのログの値を用いてもよい。
【0039】
操作パネル58にZONE1〜5の温度等が表示されると、操作者は、操作パネル58を操作して、
図7(a)に示すように、ZONE1〜5の変更温度を入力する。ここで、ZONE1〜5の変更温度は、例えば、
図8に示すような、ヒータの温度の変化と形成されるSiO
2膜の膜厚変化との関係を示すモデルを用いて算出してもよい。このモデルは、所定ZONEに配置されたヒータの温度を変化させたときに、各ZONEに配置された半導体ウエハWに形成されるSiO
2膜の膜厚がどれだけ変化するかを示すものである。例えば、操作者が操作パネル58を操作して各ZONEに配置された半導体ウエハWに形成するSiO
2膜の膜厚の変化量を特定することにより、この変化量とモデルとにより、ZONE1〜5の温度を算出することができる。
【0040】
次に、CPU56は、ZONE1〜5の変更温度が入力されたか否かを判別する(ステップS3)。CPU56は、変更温度が入力されていると判別すると(ステップS3;Yes)、変更温度におけるヒータ11〜15のパワーを算出する(ステップS4)。
【0041】
変更温度におけるヒータ11〜15のそれぞれのパワー(P)は、例えば、以下の式で求めることができる。
(P)=(M)×(ΔT)+(P0)
ここで、(M)は
図4に示すヒータの温度変化とパワー変化との関係を示すモデルであり、(ΔT)は
図7(b)に示す変更前後の差分であり、(P0)は、
図6(c)に示す記憶された温度でのヒータのパワーである。また、変更前後の差分(ΔT)は
図7(a)に示す入力された変更温度と、
図6(b)に示す記憶された温度とから算出される。
【0042】
CPU56は、変更温度におけるヒータ11〜15のパワーのいずれかが飽和(0%または100%)しているか否かを判別する(ステップS5)。CPU56は、ヒータ11〜15のパワーのいずれも飽和していないと判別すると(ステップS5;No)、この処理を終了する。
【0043】
CPU56は、ヒータ11〜15のパワーのいずれかが飽和していると判別すると(ステップS5;Yes)、例えば、
図9に示すような飽和していることを示す情報を報知し、操作者に警告する(ステップS6)。例えば、CPU56は、
図9に示す飽和していることを示す情報を操作パネル58に表示する。
【0044】
さらに、CPU56は、
図10に示すように、ヒータ11〜15のパワーのいずれもが飽和しない温度を提案(アドバイス)する(ステップS7)。例えば、CPU56は、変更温度におけるヒータ11〜15のそれぞれのパワーが飽和しない条件下で、
図6(a)に示すSiO
2膜の膜厚と、
図8に示すヒータの温度の変化と形成されるSiO
2膜の膜厚変化との関係を示すモデルとに基づいて変更温度を算出する。また、CPU56は、複数の変更温度の案が提供できるように、複数通りの変更温度を算出することが好ましい。例えば、CPU56は、
図10に示す複数の変更温度の案操作パネル58に表示する。そして、ステップS3に戻る。
【0045】
なお、このような調整処理が終了すると、CPU56は、半導体ウエハWにSiO
2膜を成膜する成膜処理を実行する。具体的には、CPU56は、ボートエレベータ7(蓋体6)を降下させ、少なくとも各ZONE1〜5に半導体ウエハWを搭載したウエハボート9を蓋体6上に配置する。続いて、CPU56は、ボートエレベータ7(蓋体6)を上昇して、ウエハボート9(半導体ウエハW)を反応管2内にロードする。そして、CPU56は、レシピ記憶部52から読み出したレシピに従って、圧力調整部5、ヒータ11〜15の電力コントローラ16〜20、流量調整部24〜26等を制御して、半導体ウエハWにSiO
2膜を成膜する。
【0046】
CPU56は、成膜処理が終了すると、ボートエレベータ7(蓋体6)を降下させ、SiO
2膜が成膜された半導体ウエハWをアンロードし、半導体ウエハWを、例えば、図示しない測定装置に搬送し、半導体ウエハWに成膜されたSiO
2膜の膜厚を測定させる。測定装置では、各モニターウエハに形成されたSiO
2膜の膜厚を測定すると、測定したSiO
2膜の膜厚データを熱処理装置1(CPU56)に送信する。
【0047】
CPU56は、測定されたSiO
2膜の膜厚データを受信すると、受信した膜厚データと、入力されたSiO
2膜の膜厚とが一致するか否かを判別し、一致しない場合には再び調整処理を実行する。本例の場合、
図11に示すように、受信した膜厚データと、入力されたSiO
2膜の膜厚とが一致した。このように、熱処理装置やプロセスに関する知識や経験のない操作者であっても半導体ウエハWの表面に目標通りのSiO
2膜を形成するための温度制御を容易に行うことができた。
【0048】
以上説明したように、本実施の形態によれば、ZONE1〜5の変更温度を入力することにより、ヒータ11〜15のパワーが算出できる。このため、熱処理装置やプロセスに関する知識や経験のない操作者であっても半導体ウエハWの表面に目標通りのSiO
2膜を形成するための温度制御を容易に行うことができる。
【0049】
本実施の形態によれば、ヒータ11〜15のパワーのいずれかが飽和していると判別すると、飽和をしていることを示す情報を操作パネル58に表示(警告)するので、操作者にヒータ11〜15のパワーのいずれかが飽和していることを容易に知らせることができる。
【0050】
さらに、本実施の形態によれば、ヒータ11〜15のパワーのいずれもが飽和しない温度を提案(アドバイス)するので、熱処理装置やプロセスに関する知識や経験のない操作者であっても半導体ウエハWの表面に目標通りのSiO
2膜を形成するための温度制御を容易に行うことができる。
【0051】
本実施の形態によれば、ZONE1〜5の変更温度を、ヒータの温度の変化と形成されるSiO
2膜の膜厚変化との関係を示すモデルを用いて算出しているので、熱処理装置やプロセスに関する知識や経験のない操作者であっても半導体ウエハWの表面に目標通りのSiO
2膜を形成するための温度制御を容易に行うことができる。
【0052】
なお、本発明は、上記の実施の形態に限られず、種々の変形、応用が可能である。以下、本発明に適用可能な他の実施の形態について説明する。
【0053】
上記実施の形態では、
図8に示す、ヒータの温度の変化と形成されるSiO
2膜の膜厚変化との関係を示すモデルを用いた場合を例に本発明を説明したが、ヒータの温度の変化と形成されるSiO
2膜の膜厚変化との関係を示すモデルを用いなくてもよい。この場合、操作者は、事前にターゲットとするSiO
2膜の膜厚を入力せず、
図7(a)に示すZONE1〜5の変更温度を入力する。また、CPU56は、ステップ7において、膜厚を考慮せず、ヒータ11〜15のパワーのいずれもが飽和しないことのみを着目して温度を提案する。なお、操作者は、提案された温度から、例えば、膜厚のバランスを考慮して変更温度を入力する。
【0054】
上記実施の形態では、ヒータ11〜15のパワーのいずれかが飽和していると判別すると、飽和をしていることを示す情報を操作パネル58に表示させて操作者に警告した後、ヒータ11〜15のパワーのいずれもが飽和しない温度を提案(アドバイス)する場合を例に本発明を説明したが、例えば、ヒータ11〜15のパワーのいずれもが飽和しない温度を提案せずに、飽和をしていることを示す情報を操作パネル58に表示させて操作者に警告するだけであってもよい。この場合にも、熱処理装置やプロセスに関する知識や経験のない操作者であっても半導体ウエハWの表面に目標通りのSiO
2膜を形成するための温度制御を容易に行うことができる。
【0055】
上記実施の形態では、反応管2内(ZONE1〜5)の温度を調整する場合にヒータ11〜15のパワーのいずれかが飽和するか否かを判別する場合を例に本発明を説明した。しかし、ヒータ11〜15のパワーは、反応管2内の温度調整のみならず、例えば、ヒータ11〜15のパワーが反応管2内に付着した累積膜厚にも依存して変化する場合がある。この場合、累積膜厚とパワーとの関係をモデル化し、温度調整していなくても、成膜処理ごとに「今の累積膜厚で成膜処理を実行したらパワーが飽和するか否か」を常時監視するようにしてもよい。さらに、累積膜厚に応じてヒータの温度の変化とヒータのパワー変化との関係を示すモデルを複数保持したり、累積膜厚の変化とヒータの温度の変化とヒータのパワー変化との関係を示すモデルを保持したりすることが好ましい。また、累積膜厚に代えて累積使用時間を用いてヒータ11〜15のパワーのいずれかが飽和するか否かを判別してもよい。
【0056】
上記実施の形態では、ジクロロシランと一酸化二窒素とを用いてSiO
2膜を形成する場合を例に本発明を説明したが、例えば、ジクロロシランとアンモニア(NH
3)とを用いたSiN膜の成膜にも本発明を適用可能である。
【0057】
上記実施の形態では、SiO
2膜を形成する場合を例に本発明を説明したが、処理の種類は任意であり、他種類の膜を形成するCVD(Chemical Vapor Deposition)装置、酸化装置などの様々なバッチ式の熱処理装置に適用可能である。
【0058】
上記実施の形態では、ヒータの段数(ゾーンの数)が5段の場合を例に本発明を説明したが、4段以下であっても、6段以上であってもよい。また。各ゾーンから抽出する半導体ウエハWの数などは任意に設定可能である。
【0059】
上記実施の形態では、単管構造のバッチ式熱処理装置の場合を例に本発明を説明したが、例えば、反応管2が内管と外管とから構成された二重管構造のバッチ式縦型熱処理装置に本発明を適用することも可能である。また、本発明は、半導体ウエハの処理に限定されるものではなく、例えば、FPD基板、ガラス基板、PDP基板などの処理にも適用可能である。
【0060】
本発明の実施の形態にかかる制御部50は、専用のシステムによらず、通常のコンピュータシステムを用いて実現可能である。例えば、汎用コンピュータに、上述の処理を実行するためのプログラムを格納した記録媒体(フレキシブルディスク、CD−ROMなど)から当該プログラムをインストールすることにより、上述の処理を実行する制御部50を構成することができる。
【0061】
そして、これらのプログラムを供給するための手段は任意である。上述のように所定の記録媒体を介して供給できる他、例えば、通信回線、通信ネットワーク、通信システムなどを介して供給してもよい。この場合、例えば、通信ネットワークの掲示板(BBS)に当該プログラムを掲示し、これをネットワークを介して搬送波に重畳して提供してもよい。そして、このように提供されたプログラムを起動し、OSの制御下で、他のアプリケーションプログラムと同様に実行することにより、上述の処理を実行することができる。