(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被加工物保持手段に保持された被加工物の上面で反射した反射光と光路長が一定の基準反射光に基づいて被加工物の厚み方向における上面までの2点間の距離を計測する計測装置において、
被加工物に所定の波長領域を備えた光を発する発光源と、
該発光源からの光を第1の経路に導くとともに該第1の経路を逆行する反射光を第2の経路に導く光分岐手段と、
該第1の経路に導かれた光を平行光に形成するコリメーションレンズと、
該コリメーションレンズによって平行光に形成された光を該被加工物保持手段に保持された被加工物に導く対物レンズと、
該被加工物保持手段に保持された被加工物の上面で反射し該対物レンズと該コリメーションレンズおよび該第1の経路を逆行して該光分岐手段から該第2の経路に導かれた反射光と光路長が一定の基準反射光との干渉を回折する回折格子と、
該回折格子によって回折した反射光の所定の波長域における光強度を検出するイメージセンサーと、
該イメージセンサーからの検出信号に基づいて被加工物の厚み方向における上面までの2点間の距離を求める制御手段と、を具備し、
該基準反射光は、被加工物を透過して被加工物の下面で反射した反射光に設定され、
該制御手段は、該イメージセンサーからの検出信号に基づいて所定の時間間隔毎に分光干渉波形を求め、該分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて波形解析を実行し、被加工物の上面で反射した反射光の光路長と基準反射光の光路長との光路長差に対応して出力される信号強度における現在出力された値と前に出力された値との絶対値の差を求め、該絶対値の差を各光路長差毎の信号強度における現在出力された値に加算し、該加算された値が最も高い光路長差を被加工物の厚み方向における上面までの2点間の距離として決定する、
ことを特徴とする計測装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した計測装置は、
図8に示すように横軸の光路長差(被加工物の厚み)における略20μmの位置を頂点として信号強度(光強度)の比較的高い山がノイズとして表れ、このノイズの山を被加工物の厚みとして誤検出することがある。本来であれば被加工物の上面(被研削面)で反射した反射光と被加工物の下面で反射した反射光(基準反射光)との干渉縞による信号強度は上記ノイズの信号強度よりかなり高い値で現れるので、高い信号強度を選択することにより被加工物の厚みを検出することができる。しかるに、被加工物の研削時における被研削面は鏡面と粗面が混在しているため、粗面で反射したときの反射光に基づく干渉縞による信号強度が上記ノイズの信号強度より低く現れることがあり、被加工物の厚みまたは上面高さ位置を誤検出する原因となる。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、その主たる技術課題は、被加工物の研削時におけるノイズ信号による誤判定を防止し、被加工物の厚みまたは上面高さ位置を正確に計測することができる計測装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記主たる技術課題を解決するため、本発明によれば、被加工物保持手段に保持された被加工物の上面で反射した反射光と光路長が一定の基準反射光に基づいて被加工物の厚み方向における上面までの2点間の距離を計測する計測装置において、
被加工物に所定の波長領域を備えた光を発する発光源と、
該発光源からの光を第1の経路に導くとともに該第1の経路を逆行する反射光を第2の経路に導く光分岐手段と、
該第1の経路に導かれた光を平行光に形成するコリメーションレンズと、
該コリメーションレンズによって平行光に形成された光を該被加工物保持手段に保持された被加工物に導く対物レンズと、
該被加工物保持手段に保持された被加工物の上面で反射し該対物レンズと該コリメーションレンズおよび該第1の経路を逆行して該光分岐手段から該第2の経路に導かれた反射光と光路長が一定の基準反射光との干渉を回折する回折格子と、
該回折格子によって回折した反射光の所定の波長域における光強度を検出するイメージセンサーと、
該イメージセンサーからの検出信号に基づいて被加工物の厚み方向における上面までの2点間の距離を求める制御手段と、を具備し、
該基準反射光は、被加工物を透過して被加工物の下面で反射した反射光に設定され、
該制御手段は、該イメージセンサーからの検出信号に基づいて所定の時間間隔毎に分光干渉波形を求め、該分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて波形解析を実行し、被加工物の上面で反射した反射光の光路長と基準反射光の光路長との光路長差に対応して出力される信号強度における現在出力された値と前に出力された値との絶対値の差を求め、該絶対値の差を各光路長差毎の信号強度における現在出力された値に加算し、該加算された値が最も高い光路長差を被加工物の厚み方向における上面までの2点間の距離として決定する、
ことを特徴とする計測装置が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、被加工物保持手段に保持された被加工物の上面で反射した反射光と光路長が一定の基準反射光に基づいて被加工物の厚み方向における上面までの2点間の距離を計測する計測装置において、
被加工物に所定の波長領域を備えた光を発する発光源と、
該発光源からの光を第1の経路に導くとともに該第1の経路を逆行する反射光を第2の経路に導く第1の光分岐手段と、
該第1の経路に導かれた光を平行光に形成するコリメーションレンズと、
該コリメーションレンズによって平行光に形成された光を第3の経路と第4の経路に分ける第2の光分岐手段と、
該第2の光分岐手段によって該第3の経路に分岐された平行光を該被加工物保持手段に保持された被加工物に導く対物レンズと、
該第2の光分岐手段によって該第4の経路に分岐された平行光を反射して該第4の経路に
基準反射光を逆行せしめる反射ミラーと、
該被加工物保持手段に保持された被加工物の上面で反射し該対物レンズと該第4の経路と該第2の光分岐手段と該コリメーションレンズおよび該第1の経路を逆行して該光分岐手段から該第2の経路に導かれた反射光と、該反射ミラーで反射し該第4の経路と該第2の光分岐手段と該コリメーションレンズおよび該第1の経路を逆行して該光分岐手段から該第2の経路に導かれた基準反射光との干渉を回折する回折格子と、
該回折格子によって回折した反射光の所定の波長域における光強度を検出するイメージセンサーと、
該イメージセンサーからの検出信号に基づいて被加工物の厚み方向における上面までの2点間の距離を求める制御手段と、を具備し、
該制御手段は、該イメージセンサーからの検出信号に基づいて所定の時間間隔毎に分光干渉波形を求め、該分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて波形解析を実行し、被加工物の上面で反射した反射光の光路長と基準反射光の光路長との光路長差に対応して出力される信号強度における現在出力された値と前に出力された値との絶対値の差を求め、該絶対値の差を各光路長差毎の信号強度における現在出力された値に加算し、該加算された値が最も高い光路長差を被加工物の厚み方向における上面までの2点間の距離として決定する、
ことを特徴とする計測装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明による計測装置においては、制御手段はイメージセンサーからの検出信号に基づいて所定の時間間隔毎に分光干渉波形を求め、分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて波形解析を実行し、被加工物の上面で反射した反射光の光路長と光路長が一定の基準反射光の光路長との光路長差に対応して出力される信号強度における現在出力された値と前に出力された値との絶対値の差を求め、該絶対値の差を各光路長差毎の信号強度における現在出力された値に加算し、該加算された値が最も高い光路長差を被加工物の厚み方向における上面までの2点間の距離として決定するので、
正確に計測することができる。例えば被加工物の研削時における被研削面が鏡面と粗面が混在し粗面で反射したときの反射光に基づく干渉縞による信号強度がノイズの信号強度より低く現れることがあっても、ノイズ信号によって誤判定することなく被加工物の厚み方向における上面までの2点間の距離を正確に計測することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に従って構成された計測装置を装備した研削機の好適な実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1には、本発明に従って構成された計測装置を装備した研削機の斜視図が示されている。
図1に示す研削機1は、全体を番号2で示す装置ハウジングを具備している。この装置ハウジング2は、細長く延在する直方体形状の主部21と、該主部21の後端部(
図1において右上端)に設けられ上方に延びる直立壁22とを有している。直立壁22の前面には、上下方向に延びる一対の案内レール221、221が設けられている。この一対の案内レール221、221に研削手段としての研削ユニット3が上下方向に移動可能に装着されている。
【0014】
研削ユニット3は、移動基台31と該移動基台31に装着されたスピンドルユニット4を具備している。移動基台31は、後面両側に上下方向に延びる一対の脚部311、311が設けられており、この一対の脚部311、311に上記一対の案内レール221、221と摺動可能に係合する被案内溝312、312が形成されている。このように直立壁22に設けられた一対の案内レール221、221に摺動可能に装着された移動基台31の前面には前方に突出した支持部313が設けられている。この支持部313に研削手段としてのスピンドルユニット4が取り付けられる。
【0015】
研削手段としてのスピンドルユニット4は、支持部313に装着されたスピンドルハウジング41と、該スピンドルハウジング41に回転自在に配設された回転スピンドル42と、該回転スピンドル42を回転駆動するための駆動源としてのサーボモータ43とを具備している。スピンドルハウジング41に回転可能に支持された回転スピンドル42は、一端部(
図1において下端部)がスピンドルハウジング41の下端から突出して配設されており、その一端(
図1において下端)にホイールマウント44が設けられている。そして、このホイールマウント44の下面に研削ホイール5が取り付けられる。この研削ホイール5は、環状の砥石基台51と、該砥石基台51の下面に装着された研削砥石52からなる複数のセグメントとによって構成されており、砥石基台51が締結ねじ53によってホイールマウント44に装着される。上記サーボモータ43は、後述する制御手段10によって制御される。
【0016】
図示の研削機1は、上記研削ユニット3を上記一対の案内レール221、221に沿って上下方向(後述する被加工物保持手段としてのチャックテーブルの保持面に対して垂直な方向)に移動せしめる研削ユニット送り機構6を備えている。この研削ユニット送り機構6は、直立壁22の前側に配設され実質上鉛直に延びる雄ねじロッド61を具備している。この雄ねじロッド61は、その上端部および下端部が直立壁22に取り付けられた軸受部材62および63によって回転自在に支持されている。上側の軸受部材62には雄ねじロッド61を回転駆動するための駆動源としてのパルスモータ64が配設されており、このパルスモータ64の出力軸が雄ねじロッド61に伝動連結されている。移動基台31の後面にはその幅方向中央部から後方に突出する連結部(図示していない)も形成されており、この連結部には鉛直方向に延びる貫通雌ねじ穴(図示していない)が形成されており、この雌ねじ穴に上記雄ねじロッド61が螺合せしめられている。従って、パルスモータ64が正転すると移動基台31即ち研削ユニット3が下降即ち前進せしめられ、パルスモータ64が逆転すると移動基台31即ち研削ユニット3が上昇即ち後退せしめられる。なお、パルスモータ64は、後述する制御手段10によって制御される。
【0017】
上記ハウジング2の主部21にはチャックテーブル機構7が配設されている。チャックテーブル機構7は、被加工物保持手段としてのチャックテーブル71と、該チャックテーブル71の周囲を覆うカバー部材72と、該カバー部材72の前後に配設された蛇腹手段73および74を具備している。チャックテーブル71は、図示しない回転駆動手段によって回転せしめられるようになっており、その上面(保持面)に被加工物としてのウエーハ11を図示しない吸引手段を作動することにより吸引保持するように構成されている。なお、ウエーハ11の表面には保護部材としての保護テープ12が貼着され、この保護テープ12側がチャックテーブル71の上面(保持面)に保持される。また、チャックテーブル71は、図示しないチャックテーブル移動手段によって
図1に示す被加工物載置域70aと上記スピンドルユニット4を構成する研削ホイール5と対向する研削域70bとの間で移動せしめられる。蛇腹手段73および74はキャンパス布の如き適宜の材料から形成することができる。蛇腹手段73の前端は主部21の前面壁に固定され、後端はカバー部材72の前端面に固定されている。蛇腹手段74の前端はカバー部材72の後端面に固定され、後端は装置ハウジング2の直立壁22の前面に固定されている。チャックテーブル71が矢印71aで示す方向に移動せしめられる際には蛇腹手段73が伸張されて蛇腹手段74が収縮され、チャックテーブル71が矢印71bで示す方向に移動せしめられる際には蛇腹手段73が収縮されて蛇腹手段74が伸張せしめられる。
【0018】
図示の研削機1は、上記チャックテーブル71に保持された被加工物の基準面から上面までの距離、即ち被加工物の厚みを計測するための計測装置8を具備している。この計測装置8は、上記カバー部材72に回動可能に配設された支持手段80によって所定の半径を持って旋回できるように支持されている。以下、計測装置8について、
図2を参照して説明する。
【0019】
図示の実施形態における計測装置8は、被加工物としてのウエーハ11(例えばシリコンウエーハ、サファイアウエーハ)に対して透過性を有する所定の波長領域を備えた光を発する発光源81と、該発光源81からの光を第1の経路8aに導くとともに該第1の経路8aを逆行する反射光を第2の経路8bに導く光分岐手段82と、第1の経路8aに導かれた光を平行光に形成するコリメーションレンズ83と、該コリメーションレンズ83によって平行光に形成された光をチャックテーブル71に保持された被加工物としてのウエーハ11に導く対物レンズ84とを具備している。
【0020】
発光源81は、例えば波長が1240〜1320nm領域の光を発光するLED、SLD、LD、ハロゲン電源、ASE電源、スーパーコンティニアム電源を用いることができる。上記光分岐手段82は、偏波保持ファイバーカプラ、偏波保持ファイバーサーキュレーター、シングルモードファイバーカプラ、シングルモードファイバーカプラサーキュレーターなどを用いることができる。なお、上記発光源81から光分岐手段82までの経路および第1の経路8aは、光ファイバーによって構成されている。
【0021】
上記第2の経路8bには、コリメーションレンズ85と回折格子86およびラインイメージセンサー87が配設されている。コリメーションレンズ85は、チャックテーブル71に保持されたウエーハ11の上面および下面で反射し対物レンズ84とコリメーションレンズ83および第1の経路8aを逆行して光分岐手段82から第2の経路8bに導かれた反射光を平行光に形成する。上記回折格子86は、コリメーションレンズ85によって平行光に形成された上記ウエーハ11の上面で反射し対物レンズ84とコリメーションレンズ83および第1の経路8aを逆行して光分岐手段82から第2の経路8bに導かれた反射光とウエーハ11の下面(基準面)で反射し対物レンズ84とコリメーションレンズ83および第1の経路8aを逆行して光分岐手段82から第2の経路8bに導かれた反射光(光路長が一定の基準反射光)との干渉を回折し、各波長に対応する回折信号をラインイメージセンサー87に送る。上記ラインイメージセンサー87は、回折格子86によって回折した反射光の各波長における光強度を検出し、検出信号を制御手段10に送る。
【0022】
制御手段10は、ラインイメージセンサー87による検出信号に基づいて所定の時間間隔(例えば100マイクロ秒)毎に
図3に示すような分光干渉波形を求める。
図3において横軸は反射光の波長(nm)を示し、縦軸は光強度を示している。
【0023】
以下、制御手段10が上記分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて実行する波形解析の一例について説明する。
制御手段10は、上記分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて波形解析を実行する。この波形解析は、例えばフーリエ変換理論やウエーブレット変換理論に基づいて実行することができるが、以下に述べる実施形態においては下記数式1、数式2、数式3に示すフーリエ変換式を用いた例について説明する。
【0027】
上記数式において、λは波長、dは上記光路長差(d)、W(λ
n)は窓関数である。
上記数式1は、cos の理論波形と上記分光干渉波形(I(λ
n))との比較で最も波の周期が近い(相関性が高い)、即ち分光干渉波形と理論上の波形関数との相関係数が高い光路長差(d)を求める。また、上記数式2は、sinの理論波形と上記分光干渉波形(I(λ
n))との比較で最も波の周期が近い(相関性が高い)、即ち分光干渉波形と理論上の波形関数との相関係数が光路長差(d)を求める。そして、上記数式3は、数式1の結果と数式2の結果の平均値を求める。
【0028】
制御手段10は、上記数式1、数式2、数式3に基づく演算を実行することにより、
図4に示すように信号強度が高い光路長差(d)を求める。
図4において横軸は光路長差(d)を示し、縦軸は信号強度を示している。
図4に示す例においては、光路長差(d)が40μmの位置で信号強度が例えば“30”の高いピーク波形が現れている。このように信号強度が例えば“30”の高いピーク波形が現れるのは、ウエーハ11の被研削面が鏡面となっている領域の反射光に基づくものである。この光路長差(d)がウエーハ11の下面から上面までの2点間の距離、即ちウエーハ11の厚み(t)に相当する。また、
図4に示す例においては、光路長差(d)が20μmの位置で信号強度が例えば“10”の比較的高いピーク波形がノイズとして現れている。
図5には次の検出時における光路長差(d)に対応した信号強度が示されている。
図5においては光路長差(d)が20μmの位置で信号強度が比較的高いピーク波形のノイズが現れるのは変わらないが、光路長差(d)が40μmの位置で信号強度が例えば“5”の波形で現れている。これは、ウエーハ11の被研削面が粗面となっている領域の反射光に基づくものである。
図5に示すデータに基づいてウエーハ11の厚み(t)を求めると、制御手段10は信号強度が高い光路長差(d)が20μmの位置を選択することになり、誤判定となる。
【0029】
そこで本発明においては、制御手段10は光路長差(d)に対応して出力される信号強度における現在出力された値と前に出力された値との絶対値の差を求め、該絶対値の差を各光路長差(d)毎の信号強度における現在出力された値に加算し、該加算された値が最も高い光路長差に基づいて被加工物の厚みを求める。即ち、上記
図4に示すデータ(前に出力された値)と
図5に示すデータ(現在出力された値)に基づいて説明すると、光路長差(d)が40μmの位置においては
図4に示すデータ(前に出力された値)においては信号強度が“30”で、
図5に示すデータ(現在出力された値)においては信号強度が“5”である。従って、光路長差(d)に対応して出力される信号強度における現在出力された値と前に出力された値との絶対値の差(A)はA=30−5=25となる。一方、光路長差(d)が20μmの位置のノイズ波形においては
図4に示すデータ(前に出力された値)および
図5に示すデータ(現在出力された値)とも信号強度が“10”である。従って、ノイズ波形における信号強度の現在出力された値と前に出力された値との絶対値の差(A)は零(0)である。次に、上述したように求められた光路長差(d)に対応して出力される信号強度における現在出力された値と前に出力された値との絶対値の差(A)を現在出力された値に加算する。この結果、光路長差(d)が40μmの位置の加算値(B)はB=5+25=30となる。一方、ノイズ波形が現れる光路長差(d)が20μmの位置の加算値(B)はB=10+0=10で常に一定である。このようにして加算値(B)を求めたならば、制御手段10は加算値(B)が最も高い光路長差(d)の位置(図示の実施形態においては40μmの位置)をウエーハ11の厚み(t)として決定する。このようにしてウエーハ11の厚み(t)を決定することにより、ウエーハの研削時における被研削面が鏡面と粗面が混在し粗面で反射したときの反射光に基づく干渉縞による信号強度がノイズの信号強度より低く現れることがあっても、ノイズ信号によって誤判定することなくウエーハ11の厚み(t)を正確に計測することができる。なお、上記前に出力された値は、現在出力された値より前に出力された値であるが何回前に出力された値を採用するかは、実験の結果確率的に信号強度の低い値が重ならないように選定する。
【0030】
次に、以上のように構成された計測装置8が装備された研削機1を用いてウエーハを所定の厚みに研削する研削方法について、
図1および
図6を参照して説明する。
即ち、表面に保護テープ12が貼着されたウエーハ11は、研削機1における被加工物載置域70aに位置付けられているチャックテーブル71上に保護テープ12側を載置する。そして、図示しない吸引手段を作動することによってチャックテーブル71上に吸引保持される。従って、チャックテーブル71上に吸引保持されたウエーハ11は、裏面11bが上側となる。チャックテーブル71上にウエーハ11を吸引保持したならば、制御手段10は図示しない移動手段を作動して、チャックテーブル71を
図1において矢印71aで示す方向に移動して研削域70bに位置付け、
図6に示すように研削ホイール5の複数の研削砥石52の外周縁がチャックテーブル71の回転中心を通過するように位置付ける。そして、計測装置8をチャックテーブル71に保持されたウエーハ11の上方である計測位置に位置付ける。
【0031】
このように研削ホイール5とチャックテーブル71に保持されたウエーハ11が所定の位置関係にセットされ、計測装置8を計測位置に位置付けたならば、制御手段10は図示しない回転駆動手段を駆動してチャックテーブル71を
図6において矢印71cで示す方向に例えば300rpmの回転速度で回転するとともに、上記サーボモータ43を駆動して研削ホイール5を矢印5aで示す方向に例えば6000rpmの回転速度で回転する。そして、制御手段10は、研削ユニット送り機構6のパルスモータ64を正転駆動し研削ホイール5を下降(研削送り)して複数の研削砥石52をウエーハ11の上面に所定の圧力で押圧する。この結果、ウエーハ11の上面即ち被研削面が研削される(研削工程)。この研削工程においては、ウエーハ11の加工時における厚み(t)が計測されている。そして、厚み検出装置8によって計測されたウエーハ11の厚み(t)が所定値に達したら、制御手段10は研削ユニット送り機構6のパルスモータ64を逆転駆動し研削ホイール5を上昇せしめる。上述した研削工程においては非接触式の計測装置8によってウエーハ11の厚み(t)を計測しているので、ウエーハ11の被研削面に傷がつくことはない。そして、計測装置8によって計測されるウエーハ11の厚み(t)は、上述したように光路長差(d)に対応して出力される信号強度における現在出力された値と前に出力された値との絶対値の差を求め、該絶対値の差を各光路長差(d)毎の信号強度における現在出力された値に加算し、該加算された値が最も高い光路長差に基づいてウエーハ11の厚み(t)を求めるので、ウエーハの研削時における被研削面が鏡面と粗面が混在し粗面で反射したときの反射光に基づく干渉縞による信号強度がノイズの信号強度より低く表れることがあっても、ノイズ信号によって誤判定することなくウエーハ11の下面から上面までの2点間の距離、即ちウエーハ11の厚み(t)を正確に計測することができる。
【0032】
次に、本発明による計測装置に他の実施形態について、
図7を参照して説明する。
図7に示す計測装置800は、チャックテーブル71に保持された例えばシリコンウエーハからなるウエーハ11の上面高さ位置を計測する計測装置である。なお、
図7に示す計測装置800は、光路長が一定の基準反射光の取り方が相違する以外は上記
図2に示す計測装置8と実質的に同一であるため、同一部材には同一符号を付してその説明は省略する。
図7に示す計測装置800は、コリメーションレンズ83によって平行光に形成された光を第3の経路8cと第4の経路8dに分ける第2の光分岐手段88を具備している。第2の光分岐手段88は、図示の実施形態においてはビームスプリッター881と、方向変換ミラー882とによって構成されている。第3の経路8cには、第3の経路8cに導かれた光をチャックテーブル71に保持された被加工物であるウエーハ11に導く対物レンズ84が配設されている。上記第4の経路8dには、第4の経路8dに導かれた平行光を反射して第4の経路8dに反射光〈基準反射光〉を逆行せしめる反射ミラー89(基準面)が配設されている。この反射ミラー89は、例えば上記対物レンズ84のレンズケースに装着されている。なお、第4の経路8dの光路長は、図示の実施形態においてはチャックテーブル71の上面までの距離に設定されている。
【0033】
図7に示す計測装置800においては、チャックテーブル71に保持されたウエーハ11の上面で反射した反射光が対物レンズ84と第2の光分岐手段88とコリメーションレンズ83および第1の経路8aを逆行して第1の光分岐手段82から第2の経路8bに導かれる。一方、上述したように反射ミラー89によって反射した反射光(光路長が一定の基準反射光)も第4の経路8dと第2の光分岐手段88とコリメーションレンズ83および第1の経路8aを逆行して第1の光分岐手段82から第2の経路8bに導かれる。このようにして第2の経路8bに導かれた各反射光がコリメーションレンズ85によって平行光に形成され、回折格子86に導かれる。回折格子86は、コリメーションレンズ85によって平行光に形成された上記ウエーハ11の上面で反射し対物レンズ84と第2の光分岐手段88とコリメーションレンズ83および第1の経路8aを逆行して第1の光分岐手段82から第2の経路8bに導かれた反射光と、上記反射ミラー89(基準面)によって反射し第4の経路8dと第2の光分岐手段88とコリメーションレンズ83および第1の経路8aを逆行して第1の光分岐手段82から第2の経路8bに導かれた反射光(光路長が一定の基準反射光)との干渉を回折し、各波長に対応する回折信号をラインイメージセンサー87に送る。上記ラインイメージセンサー87は、回折格子86によって回折した反射光の各波長における光強度を検出し、検出信号を制御手段10に送る。
【0034】
ラインイメージセンサー87からの検出信号を入力した制御手段10は、上記分光干渉波形および分光干渉差分波形を求め、分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて波形解析を実行する。即ち、分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて波形解析を実行することにより、上記ウエーハ11の上面で反射し対物レンズ84と第2の光分岐手段88とコリメーションレンズ83および第1の経路8aを逆行して第1の光分岐手段82から第2の経路8bに導かれた反射光の光路長(L1)と、上記反射ミラー89によって反射し第4の経路8dと第2の光分岐手段88とコリメーションレンズ83および第1の経路8aを逆行して第1の光分岐手段82から第2の経路8bに導かれた反射光(光路長が一定の基準反射光)の光路長(L2)との光路長差(d=L2−L1)を求め、該光路長差(d)からチャックテーブル71に保持されたウエーハ11の上面の高さ位置(図示の実施形態においては第4の経路8dの光路長がチャックテーブル71の上面までの距離に設定されているので、基準面であるチャックテーブル71の上面からウエーハ11の上面までの2点間の距離)を求める。
【0035】
以上のように、
図7に示す計測装置800においても制御手段10はイメージセンサー87からの検出信号に基づいて所定の時間間隔毎に分光干渉波形を求め、該分光干渉波形と理論上の波形関数に基づいて波形解析を実行し、被加工物の上面で反射した反射光の光路長と光路長が一定の基準反射光の光路長との光路長差に対応して出力される信号強度における現在出力された値と前に出力された値との絶対値の差を求め、該絶対値の差を各光路長差毎の信号強度における現在出力された値に加算し、該加算された値が最も高い光路長差に基づいて被加工物の厚み方向における上面までの2点間の距離を求めるので、被加工物の研削時における被研削面が鏡面と粗面が混在し粗面で反射したときの反射光に基づく干渉縞による信号強度がノイズの信号強度より低く表れることがあっても、ノイズ信号によって誤判定することなく被加工物の厚み方向における上面までの2点間の距離、即ちチャックテーブルの上面から被加工物の上面までの距離を正確に計測することができる。