特許第5753650号(P5753650)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5753650リチウム二次電池用正極活物質及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5753650
(24)【登録日】2015年5月29日
(45)【発行日】2015年7月22日
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/36 20060101AFI20150702BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20150702BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20150702BHJP
【FI】
   H01M4/36 A
   H01M4/505
   H01M4/525
【請求項の数】7
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2009-51192(P2009-51192)
(22)【出願日】2009年3月4日
(62)【分割の表示】特願2001-292095(P2001-292095)の分割
【原出願日】2001年9月25日
(65)【公開番号】特開2009-152214(P2009-152214A)
(43)【公開日】2009年7月9日
【審査請求日】2009年4月1日
【審判番号】不服2013-18126(P2013-18126/J1)
【審判請求日】2013年9月19日
(31)【優先権主張番号】2000-56246
(32)【優先日】2000年9月25日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】2001-36767
(32)【優先日】2001年6月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung SDI Co.,Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【弁理士】
【氏名又は名称】松永 宣行
(74)【代理人】
【識別番号】100159042
【弁理士】
【氏名又は名称】辻 徹二
(72)【発明者】
【氏名】權 鎬 眞
(72)【発明者】
【氏名】ジュン−ウォン スー
(72)【発明者】
【氏名】丁 元 一
【合議体】
【審判長】 河原 英雄
【審判官】 大橋 賢一
【審判官】 真々田 忠博
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−16566(JP,A)
【文献】 特開平7−192720(JP,A)
【文献】 特開平6−325791(JP,A)
【文献】 特開平11−317230(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00-4/62 10/05-10/0587
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が1乃至3μmである一次粒子及び該一次粒子二つ以上が集まって形成された二次粒子で形成された、平均粒が1μm以上μm以下である下記の化学式1乃至6からなる群より選択される一つ以上のリチウム化合物からなるコアと、前記コア上に形成されたホウ素酸物を含む表面処理層と、を含むリチウム二次電池用正極活物質。
【化1】
(前記式において、0.95≦x≦1.1、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0<α≦2であり、MはNiまたはCoであり、M’はAl、Ni、Co、Cr、Fe、Mg、Sr、V、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th及びPaからなる群より選択される一つ以上の元素であり、M”はAl、Cr、Mn、Fe、Mg、Sr、V、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th及びPaからなる群より選択される一つ以上の元素であり、AはOである。)
【請求項2】
前記表面処理層内のホウ素の含量は正極活物質に対して2×10−5乃至1重量%である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記表面処理層内のホウ素の含量は正極活物質に対して0.001乃至1重量%である、請求項2に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項4】
平均粒が1乃至3μmである一次粒子と該一次粒子二つ以上で組立てられた二次粒子で形成された、平均粒が1μm以上μm以下である下記の化学式1乃至6からなる群より選択される一つ以上のリチウム化合物を、コーティング元素がホウ素であるコーティング元素源を1〜10重量%含む有機溶液または水溶液でコーティングする段階と、前記コーティングされた化合物を熱処理する段階と、を含むリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【化2】
(前記式において、0.95≦x≦1.1、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0<α≦2であり、MはNiまたはCoであり、M’はAl、Ni、Co、Cr、Fe、Mg、Sr、V、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th及びPaからなる群より選択される一つ以上の元素であり、M”はAl、Cr、Mn、Fe、Mg、Sr、V、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th及びPaからなる群より選択される一つ以上の元素であり、AはOである。)
【請求項5】
前記熱処理工程は空気または酸素雰囲気下で300乃至800℃の温度で1乃至15時間実施する、請求項4に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項6】
前記コーティング工程はリチウム化合物と、コーティング元素がホウ素であるコーティング元素源を含む有機溶液または水溶液を、前記コーティング工程を混合工程、溶媒除去工程及び乾燥工程を一つの容器で実施できる一元化工程で実施する混合機に注入し、前記混合機内の温度を持続的に増加させて実施する、請求項4または5に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項7】
前記コーティング元素がホウ素であるコーティング元素源が、ホウ素メトキシド、ホウ素エトキシド、又はホウ素プロポキシドである、請求項4〜6のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリチウム二次電池用正極活物質及びその製造方法に関し、さらに詳しくは熱的安定性に優れた正極活物質及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウム二次電池は可逆的にリチウムイオンの挿入及び脱離が可能な物質を正極及び負極として使用し、前記正極と負極との間に有機電解液またはポリマー電解液を充填して製造し、リチウムイオンが正極及び負極で挿入/脱離される時の酸化、還元反応によって電気エネルギーを生成する。
【0003】
リチウム二次電池の負極活物質としてはリチウム金属を使用していたが、リチウム金属を使用する場合、デンドライトの形成による電池の短絡によって爆発の危険があるためリチウム金属の代わりに非晶質炭素または結晶質炭素などの炭素系物質に代替されている。特に、最近では炭素系物質の容量を増加させるために炭素系物質にホウ素を添加してホウ素コーティングされたグラファイト(BOC)で製造している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
正極活物質としてはカルコゲナイド化合物が用いられており、その例としてLiCoO、LiMn、LiNiO、LiNi1−xCo(0<x<1)、LiMnOなどの複合酸化物が研究されている。前記正極活物質のうちLiMn、LiMnOなどのMn系正極活物質は合成が容易で値段が比較的に安く、環境に対する汚染の恐れも少ないので魅力のある物質ではあるが、容量が少ないという短所を持っている。LiCoOは良好な電気伝導度と高い電池電圧そして優れた電極特性を示し、現在Sony社等で商業化され市販されている代表的な正極活物質であるが、値段が高いという短所を有している。LiNiOは前記で言及した正極活物質のうち最も価格が安く、最も高い放電容量の電池特性を有しているが、合成するのが難しいという短所を抱いている。
【0005】
この中で正極活物質としてはLiCoOが主に用いられており、最近Sony社でAlを約1乃至5重量%ドーピングしたLiCo1−xAlを開発し、A&TB社ではSnOをドーピングしたLiCoOを開発した。
【0006】
前述した正極及び負極活物質で構成されたリチウム二次電池は使用するセパレータと電解質の種類によってリチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池及びリチウムポリマー電池に分類することができる。リチウムイオン電池はセパレータとして多孔性ポリプロピレン/ポリエチレンフィルムを使用し、電解質としてはリチウム塩が溶解されたカーボネート系列の有機溶媒を使用する電池を言う。リチウムイオンポリマー電池は電解質として多孔性SiOなどとフッ化ポリビニリデン系列のポリマー基材に前記有機溶媒を含浸させたものを使用し、この電解質がセパレータの役割もするので、別途のセパレータを使用する必要はない。また、リチウムポリマー電池は電解質として純粋なリチウムイオン伝導性を有するSO系列の無機物質または有機物質を使用する電池を言う。
【0007】
前記構成のリチウム二次電池の形態としては円筒形、角形、コイン形などがある。円筒形電池はリチウムイオン二次電池を例として説明すれば、正極、負極とセパレータを重ね巻きしてロールケーキのようなスパイラル形の極板群を製造し、この極板群を円筒形電池ケースに入れた後、電解液を注入した電池を言う。角形電池は前記極板群を角形電池ケースに入れて製造した電池を言い、コイン形電池は前記極板群をコイン形電池ケースに入れて製造した電池を言う。また、ケースの材質によってスチールまたはAl材質の缶を使用した電池とパウチ電池に区別することができる。缶電池は前記電池ケースがスチールまたはAlの薄い板で製造されたもののことを言い、パウチ電池はビニル袋のような多層構造からなる1mm以内の厚さの柔軟な材質に前記極板群を入れて製造された電池であって、電池の厚さが缶電池に比べて薄く、柔軟な構造を有する電池を言う。
【0008】
このようなリチウム二次電池は最近電子機器が小型化及び軽量化されるにつれてますます高容量、長寿命などの電気化学的特性に優れた電池を開発するための研究が進められている。
【0009】
本発明は前述した問題点を解決するためのものであって本発明の目的は、サイクル寿命特性と放電電位特性が向上したリチウム二次電池用正極活物質を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、前記リチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記本発明の目的を達成するために、本発明は、平均粒度が1乃至3μmである一つ以上の一次粒子で組立てられて形成される平均粒度が1μm以上10μm未満の二次粒子を有するリチウム化合物を含むコア、及び前記コア上にコーティングされたコーティング元素を含む酸化物を含むか、またはコーティング元素を含む水酸化物、オキシヒドロキシド(oxyhydroxide)、オキシカーボネート(oxycarbonate)、ヒドロキシカーボネート(hydroxycarbonate)またはこれらの混合物を含む表面処理層を含むリチウム二次電池用正極活物質を提供する。
【0012】
また、本発明は前記正極活物質の製造方法として、平均粒度が1乃至3μmである一つ以上の一次粒子で組立てられて形成される平均粒度が1μm以上10μm未満である二次粒子を有するリチウム化合物を、コーティング元素源(coating‐element source)を含む有機溶液または水溶液(以下、コーティング溶液)でコーティングし、前記コーティングされた化合物を熱処理する工程を含むリチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0013】
上述のように、本発明のリチウム二次電池用正極活物質は平均粒径が1〜3μmである一次粒子を組立てて形成した二次粒子の平均粒径が10μm未満と小さく、表面にコーティング元素の酸化物層が形成されていて優れた放電特性を示す。このように放電特性が向上することによって、本発明のリチウム二次電池用正極活物質を使用した電池は充放電サイクルの進行による優れた電力特性を発揮することができ、このような電池を電子製品に適用する場合使用時間を増やすことができる。また本発明のリチウム二次電池用正極活物質は一定範囲の粒子寸法を有し、表面にコーティング元素の酸化物層を含んで熱的安定性が大幅向上し、従って電池システムでの安全性向上に大きい影響を及ぼす効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施例1及び対照例1の方法で製造された正極活物質の表面状態を各々示すSEM写真である。図中(a)は実施例1のSEM写真を示し、(b)は対照例1のSEM写真を示している。
図2】比較例1及び比較例2の方法で製造された正極活物質の表面状態を各々示すSEM写真である。図中(a)は比較例1のSEM写真を示し、(b)は比較例2のSEM写真を示している。
図3】本発明の実施例1及び比較例1の方法で製造された正極活物質の放電容量を示したグラフである。
図4】本発明の実施例1及び対照例1の方法で製造された正極活物質の放電容量を示したグラフである。
図5】実施例11と比較例5のコイン電池のサイクル数に対する容量特性を示したグラフである。
図6】実施例10と比較例4の正極活物質に対するDSC測定結果を示した図面である。
図7】実施例11と比較例5の正極活物質に対するDSC測定結果を示した図面である。
図8】実施例10と比較例4の正極活物質に対する過充電の後のDSC測定結果を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0016】
本発明のリチウム二次電池用正極活物質は平均粒度が1乃至3μmである一つ以上の一次粒子で組立てられて形成され、平均粒度が1μm以上10μm未満である二次粒子を有するリチウム化合物を含むコア、及び前記コア上に形成されたコーティング元素を含む酸化物を含むか、またはコーティング元素を含む水酸化物、オキシヒドロキシド、オキシカーボネート、ヒドロキシカーボネートまたはこれらの混合物を含む表面処理層を含む。
【0017】
本発明の正極活物質のコアを構成するリチウム化合物は平均粒度が1乃至3μmである一つ以上の一次粒子で組立てられてなる、平均粒度が1μm以上10μm未満である二次粒子で構成される。本明細書において、一次粒子は小さい単位の粒子のことを言い、二次粒子は一つ以上の一次粒子が組立てられた固まり(mass)のことを言う。
【0018】
本発明の正極活物質では、一次粒子の平均粒度条件には大きい意味はなく、二次粒子の平均粒度条件が重要である。二次粒子の平均粒度が1μmより小さいものを使用する場合には、Liの反応速度に問題を生じて熱的安定性が悪くなり電池システムの安全性が脆弱になる問題点があり、10μm以上であるものは高率条件で容量特性が悪くなる問題点があって好ましくない。
【0019】
前記リチウム化合物としては下記の化学式1乃至11からなる群より選択される一つ以上の化合物を好ましく用いることができる。これら化合物のうちリチウム−コバルトカルコゲナイド、リチウム−マンガンカルコゲナイド、リチウム−ニッケルカルコゲナイドまたはリチウム−ニッケル−マンガンカルコゲナイド化合物を本発明にさらに好ましく用いることができる。
【0020】
【化1】
(前記式において、0.95≦x≦1.1、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、0<α≦2であり、MはNiまたはCoであり、M’はAl、Ni、Co、Cr、Fe、Mg、Sr、V、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th及びPaからなる群より選択される一つ以上の元素であり、M”はAl、Cr、Mn、Fe、Mg、Sr、V、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Ac、Th及びPaからなる群より選択される一つ以上の元素であり、AはO、F、S及びPからなる群より選択される元素であり、XはF、S及びPからなる群より選択される元素である。)
前記表面処理層のコーティング元素はMg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Ga、Ge、B、As及びZrからなる群より選択される元素であるのが好ましい。
【0021】
前記一つ以上の表面処理層内のコーティング元素の含量は正極活物質に対して2×10−5乃至1重量%であるのが好ましく、0.001乃至1重量%であるのがさらに好ましい。
【0022】
本発明の正極活物質は発熱温度が高く、発熱量が小さくて熱的安定性が優れている。
【0023】
本発明の一実施例によると、前記コアはリチウム−コバルトカルコゲナイド化合物を含み、前記表面処理層はAlである。また、他の実施例によると、前記コアはリチウム−マンガンカルコゲナイド化合物またはリチウム−コバルトカルコゲナイド化合物を含み、前記表面処理層はホウ素が含まれた酸化物を含む。
【0024】
以下、本発明の正極活物質の製造方法を詳細に説明する。
【0025】
リチウム化合物をコーティング元素源を含むコーティング溶液でコーティングする。
【0026】
前記コーティング元素源を含む有機溶液はコーティング元素源を有機溶媒または水に溶解させて製造したり、この混合物を還流させて製造することができる。前記有機元素源はコーティング元素またはコーティング元素含有アルコキシド、塩または酸化物を含む。有機溶媒または水に溶解される適当なコーティング元素の形態はこの分野の通常の知識によって選択されることができる。例えば、有機溶媒を使用すると、コーティング元素またはコーティング元素を含むアルコキシド、塩または酸化物をコーティング元素として使用でき、水を溶媒として使用すると、コーティング元素を含む塩または酸化物を使用することができる。また、例えばホウ素を含むコーティング溶液はHB(OH)、B、HBOなどを有機溶媒または水に溶解させて製造することができる。
【0027】
前記コーティング溶液の製造時に使用されるコーティング元素としては、有機溶媒または水に溶解できるものはいずれも使用でき、その代表的な例としてMg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、AsまたはZrがある。
【0028】
前記コーティング溶液のうちコーティング源を含む有機溶液の製造時に使用可能な有機溶媒としてはメタノール、エタノールまたはイソプロパノールのようなアルコール、ヘキサン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、エーテル、メチレンクロライド、アセトンなどがある。
【0029】
前記コーティング元素を含む有機溶液の代表的な例としては、コーティング元素含有アルコキシドがある。前記アルコキシド溶液は前記コーティング元素をメタノール、エタノールまたはイソプロパノールのようなアルコールに溶解させこれを還流して製造したり、またはメトキシド、エトキシドまたはイソプロポキシドのようなコーティング元素を含むアルコキシドをアルコールに溶解させて製造することもできる。このようなコーティング元素のアルコキシド溶液の例として、Siアルコキシド溶液としては市販されているテトラエチルオルトシリケート(tetraethylorthosilicate:TEOS)溶液またはシリケートをエタノールに溶解して製造したテトラエチルオルトシリケート溶液がある。
【0030】
前記コーティング溶液のうちコーティング元素を含む水溶液の製造時に用いることができるコーティング元素の塩またはコーティング元素の酸化物の代表的な例としてはバナジン酸アンモニウム(NH(VO))のようなバナジウム酸塩、酸化バナジウム(V)などがある。
【0031】
コーティング溶液でコーティング元素の濃度は有機溶液または水溶液に0.1乃至50重量%であり、さらに好ましくは1乃至20重量%である。前記コーティング元素の濃度が0.1重量%より低ければ前記コーティング溶液でリチウム化合物をコーティングする効果が現れず、前記コーティング溶液の濃度が50重量%を超えるとコーティング層の厚さがあまりに厚くなり好ましくない。
【0032】
このように調製されたコーティング溶液で、平均粒度が1乃至3μmである一つ以上の一次粒子で組立てられて形成される平均粒度が1μm以上10μm未満である二次粒子を有するリチウム化合物をコーティングする。
【0033】
前記リチウム化合物は一つ以上の二次粒子を含む。前記二次粒子の平均粒径は1μm以上10μm未満であり、前記二次粒子は平均粒径が1乃至3μmである一つ以上の一次粒子で組立てられてなる。
【0034】
前記コーティング方法としてはスパッタリング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、ディップコーティング法など汎用コーティング方法を用いることができるが、最も簡便なコーティング法として単純に粉末をコーティング溶液に浸して取り出すディップコーティング法を用いるのが好ましい。前記ディップコーティング法はコーティング溶液とリチウム化合物を混合し(混合工程)、得られた混合物から溶液を除去して後(溶液除去工程)、常温乃至200℃の温度で1乃至24時間乾燥する。製造された生成物はリチウム化合物を含むコアと、このコア上に形成されたヒドロキシド、オキシヒドロキシド、オキシカーボネート、ヒドロキシカーボネート及びこれらの混合物を含むコーティング層を含む。得られた生成物を正極活物質として用いることができる。
【0035】
または、前記コーティング工程を混合工程、溶媒除去工程及び乾燥工程を一つの容器で実施できる一元化工程(one‐shot process)で実施することもできる。前記一元化工程は非常に簡単であるので製造費用が節減でき、コアに均一な表面処理層を形成することが可能である。
【0036】
前記一元化工程をより詳しく説明すると、下記の通りである。
【0037】
前記コーティング溶液と前記リチウム化合物を混合機に投入し攪拌しながら、前記混合機の温度を増加させる。また、フラッシング(flushing)ガスを前記混合機に注入することができる。前記フラッシングガスは前記コーティング溶液で前記溶媒の揮発を促進させて、前記混合機に存在するガスを放出する役割を果たす。前記フラッシングガスとしてはCOや水分のないガスとして窒素ガスまたはアルゴンガスなどの不活性ガスが好ましい。または前記フラッシングガス注入の代わりに真空状態を維持して前記一元化工程を実施することも可能である。
【0038】
前記混合機としてはリチウム化合物とコーティング溶液をよく混合させることができる一方、温度を上昇させることができればよく、特別な制約はない。
【0039】
前記混合機内で、前記リチウム化合物はコーティング溶液でコーティングされ、残ったコーティング溶液は外部温度の増加及び攪拌により蒸発されて除去される。従って前記一元化工程は溶液コーティングされた化合物を他の容器(トレー)に移動させて、このトレーで乾燥工程を実施する二つの工程を一つの連続工程で一つの容器内で実施することができる。
【0040】
前記一元化工程を実施すると、乾燥工程をコーティング工程と同時に実施することができるので、乾燥工程を別途に実施する必要はない。
【0041】
コーティング溶液がコーティングされたリチウム化合物粉末を300乃至800℃で5乃至15時間熱処理する。さらに均一な結晶性活物質を製造するために前記熱処理工程は乾燥空気または酸素をフローイング(flowing)する条件下で遂行するのが好ましい。この時、熱処理温度が300℃より低ければイオン伝導性が優れているコーティングが形成されないため、リチウムイオンの移動が妨害を受けることがある。また、前記熱処理温度が800℃より高ければLi蒸発によって、所望の当量比が得られず結晶構造に問題がある活物質が合成されて好ましくない傾向がある。
【0042】
前記熱処理工程で前記コーティング溶液がコーティング元素含有酸化物に変化して、平均粒度が1乃至3μmである一つ以上の一次粒子で組立てられて形成される、平均粒度が1μm以上10μm未満である二次粒子を有するリチウム化合物の表面にコーティング元素を含む酸化物(表面処理層)がコーティングされた活物質が製造される。
【0043】
活物質の表面に形成された表面処理層は、前記リチウム化合物の元素及びコーティング溶液から由来した元素を含む。例えば、LiCoOをアルミニウムアルコキシド溶液でコーティングした後、熱処理すればコバルトとアルミニウムの複合金属酸化物及び/またはアルミニウムの酸化物で表面処理された正極活物質を得ることができる。
【0044】
前記コーティング及び熱処理工程は一つ以上のコーティング溶液を使用して実施し、一つのコーティング層に一つ以上のコーティング元素が含まれるようにすることができる。また一つ以上のコーティング元素を含む第1有機溶液または水溶液で1次コーティングした後、熱処理し、次いで一つ以上のコーティング元素を含む第2有機溶液または水溶液で2次コーティングした後、熱処理して二重層を形成することもできる。一つ以上のコーティング溶液で順次に3回以上コーティング及び熱処理して表面処理層が3つ以上になるようにすることもできる。
【0045】
本発明で使用したリチウム化合物は商業的に流通される平均粒度が1乃至3μmであるものを組立てて使用することもでき、合成されたリチウム化合物粉末のうち平均粒度が1乃至3μmであるものを選別した後、これを組立てて使用することもでき、これらリチウム化合物を混合して使用することも可能である。
【0046】
前記リチウム化合物の合成方法は次の通りである。まずリチウム塩及び他の元素の塩を所望の当量比通り混合する。前記リチウム塩としては一般にマンガン系リチウム二次電池用正極活物質を製造するのに用いられているものであればいずれでも用いることができ、その代表的な例として硝酸リチウム、酢酸リチウム、水酸化リチウムなどがある。前記他の元素の塩としてはマンガン塩、コバルト塩、ニッケル塩またはニッケルマンガン塩を用いることができる。
【0047】
前記マンガン塩としては酢酸マンガン、二酸化マンガンなどを使用することができ、前記コバルト塩としては酸化コバルト、硝酸コバルトまたは炭酸コバルトなどを用いることができる。また、ニッケル塩としては水酸化ニッケル、硝酸ニッケルまたは酢酸ニッケルなどを用いることができる。前記ニッケルマンガン塩はニッケル塩とマンガン塩を共沈方法で沈殿させて製造されたものを用いることができる。他の元素の塩としてマンガン塩、コバルト塩、ニッケル塩またはニッケルマンガン塩と共にフッ素塩、硫黄塩またはリン塩を沈殿させることも可能である。前記フッ素塩としてはフッ化マンガン、フッ化リチウムなどを用いることができて、前記硫黄塩としては硫化マンガン、硫化リチウムなどを用いることができる。前記リン塩としてはHPOを用いることができる。前記マンガン塩、コバルト塩、ニッケル塩、ニッケルマンガン塩、フッ素塩、硫黄塩及びリン塩が前記化合物に限られるわけではない。
【0048】
混合方法は、例えば、モルタルグラインダー混合を使用することができ、この時、リチウム塩及び他の元素の塩の反応を促進するために、エタノール、メタノール、水、アセトンなど適切な溶媒を添加して溶媒が殆どなくなるまでモルタルグラインダー混合を実施するのが好ましい。
【0049】
得られた混合物を約400乃至600℃の温度で1乃至5時間一次熱処理して準結晶性状態のリチウム化合物前駆体粉末を製造する。前記一次熱処理温度が400℃より低ければリチウム塩と他の元素の塩の反応が十分でないという問題点がある。また熱処理して製造された前駆体粉末を乾燥させた後、または熱処理過程の後に乾燥空気をフローイングしながら前記前駆体粉末を常温で再混合させてリチウム塩を均一に分布させることも可能である。
【0050】
得られた準結晶性前駆体粉末を700乃至900℃の温度で約10乃至15時間2次熱処理する。2次熱処理温度が700℃より低ければ結晶性物質が形成され難い問題点がある。前記熱処理工程は乾燥空気または酸素をフローイングする条件下で1乃至5℃/分の速度で昇温して実施し、各熱処理温度で一定の時間維持した後、自然 冷却することからなる。
【0051】
次に、製造されたリチウム化合物の粉末を常温で再混合させてリチウム塩をさらに均一に分布させるのが好ましい。
【0052】
前記方法で製造したリチウム化合物粉末のうち一次粒子の平均粒度が1乃至3μmであるリチウム化合物粉末は組立てられて平均粒度が1μm以上10μm未満である二次粒子を形成する。
【0053】
次に、本発明の理解のために好ましい実施例を提示する。しかし、下記の実施例は本発明をより容易に理解するために提供されるものであり、本発明が下記の実施例に限られるわけではない。
【実施例】
【0054】
(実施例1)
Al−イソプロポキシド粉末をエタノールに添加して5重量%濃度を有するAl−イソプロポキシド溶液を製造した。
【0055】
平均粒径が1〜3μmである一次粒子を組立てて形成した二次粒子の平均粒径が5μmであるLiCoO粉末100gを前記Al−イソプロポキシド溶液に添加し、撹拌機で約10分間かけて掻き混ぜて前記Al−イソプロポキシド溶液がLiCoO粉末の表面に均等にコーティングされるようにした。このように製造されたスラリーを約30分間放置してスラリーとAl−イソプロポキシド溶液を分離した後、Al−イソプロポキシド溶液を除去して、スラリーのみを熱処理用炉に入れた。
【0056】
前記炉で3℃/分の昇温速度で乾燥空気をフローイングながら500℃において10時間熱処理した後、炉内で冷却させて表面にアルミニウム酸化物層が形成されたリチウム二次電池用正極活物質を製造した。
【0057】
製造された正極活物質とスーパーPカーボン導電材及びフッ化ポリビニリデンバインダーを94:3:3の重量比で計量した後、N-メチルピロリドン溶媒に添加して正極活物質スラリーを製造した。このスラリーをAl−箔上に固めて乾燥した後、プレシングして正極極板を製造した。
【0058】
負極活物質としてMCF(mesocarbon fiber)と、フッ化ポリビニリデンバインダーを96:4の重量比で混合してN−メチルピロリドン溶媒に添加して負極活物質スラリーを製造した。この負極活物質スラリーをCu−ホイル上に固めて乾燥した後、プレシングして負極極板を製造した。
【0059】
前記正極極板及び負極極板を使用して通常の方法で角形のリチウムイオン電池を製造した。この時、電解液としては1M LiPFが溶解されたエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、およびジエチルカーボネートの混合溶媒を使用した。
【0060】
(実施例2)
熱処理温度を500℃から300℃に変更したことを除いては前記実施例1と同様な方法で実施して角形のリチウムイオン電池を製造した。
【0061】
(実施例3)
熱処理温度を500℃から700℃に変更したことを除いては前記実施例1と同様な方法で実施して角形のリチウムイオン電池を製造した。
【0062】
(実施例4)
Al−イソプロポキシド溶液の代りにAl(NOを水に添加して製造した5重量%の硝酸アルミニウム溶液を使用したことを除いては前記実施例1と同様な方法で実施して角形のリチウムイオン電池を製造した。
【0063】
(実施例5)
Al−イソプロポキシド溶液の代りに、Al(NOを水に添加して製造した5重量%の硝酸アルミニウム溶液を使用し、熱処理温度を500℃から300℃に変更したことを除いては前記実施例1と同様な方法で実施して角形のリチウムイオン電池を製造した。
【0064】
(実施例6)
Al−イソプロポキシド溶液の代りに、Al(NOを水に添加して製造した5重量%の硝酸アルミニウム溶液を使用し、熱処理温度を500℃から700℃に変更したことを除いては前記実施例1と同様な方法で実施して角形のリチウムイオン電池を製造した。
【0065】
(対照例1)
Al−イソプロポキシド溶液をLiCoO粉末にコーティングしていないことを除いては前記実施例1と同一に実施して角形のリチウムイオン電池を製造した。
【0066】
(比較例1)
平均粒径が10μmであるLiCoO粉末を使用したことを除いては前記実施例1と同一に実施して角形のリチウムイオン電池を製造した。
【0067】
(比較例2)
Al−イソプロポキシド溶液をLiCoO粉末にコーティングしていないことを除いては前記比較例1と同一に実施して角形のリチウムイオン電池を製造した。
【0068】
前記実施例1と対照例1の方法で製造された正極活物質のSEM写真を図1の(a)及び(b)に各々示した。また、前記比較例1及び2の方法で製造された正極活物質のSEM写真を図2の(a)及び(b)に各々示した。
【0069】
前記実施例1、対照例1及び比較例1〜2の方法で製造された角形のリチウムイオン電池を4.2V〜2.75Vの間で充放電を実施した。充放電は、0.2C−速度(rate)で化成(formation)された電池を、充電は全て0.2C−速度で実施した後、放電を0.5C、1C及び2CとしてC−速度変化による放電特性を測定した。図3は実施例1と比較例1の測定結果を示し、図4は実施例1と対照例1の測定結果を示す。図4で放電容量は各電池の最大放電容量を100%に換算して示した。
【0070】
図3に示したように、同一にAl−イソプロポキシド溶液をLiCoOにコーティングして表面にアルミニウム酸化物層が形成された正極活物質であっても、使用したLiCoOの大きさによって放電特性が異なって現れることが分かる。LiCoO二次粒子の大きさが5μmであるものを使用した実施例1の電池が、10μmのものを使用した比較例1の電池に比べて高率(1.0C及び2.0C)で放電電圧が高く現れることから、本発明による実施例1の放電特性が比較例1より優れていることが分かる。
【0071】
また、図4に示したように、同じ大きさのLiCoO粉末を使用したとしてもアルミニウム酸化物層が形成された実施例1の正極活物質がアルミニウム酸化物層が形成されていない対照例1の正極活物質に比べて高率(1.0C及び2.0C)で放電特性が優れていることが分かる。
【0072】
このような結果から、リチウム金属酸化物、例えばLiCoOの粒子の大きさが小さいほど放電電圧特性が優れており、表面にコーティング元素の酸化物層がコーティングされているものがコーティングされていないものより放電特性がさらに優れていることが分かる。
【0073】
(実施例7)
Al−イソプロポキシド溶液の代りに10重量%のホウ素エトキシド溶液を使用したことを除いては前記実施例1と同様な方法で実施して角形のリチウムイオン電池を製造した。
【0074】
(実施例8)
Al−イソプロポキシド溶液の代りに、10重量%のホウ素エトキシド溶液を使用し、熱処理温度を500℃から300℃に変更したことを除いては前記実施例1と同様な方法で実施して角形のリチウムイオン電池を製造した。
【0075】
(実施例9)
Al−イソプロポキシド溶液の代りに、10重量%のホウ素エトキシド溶液を使用し、熱処理温度を500℃から700℃に変更したことを除いては前記実施例1と同様な方法で実施して角形のリチウムイオン電池を製造した。
【0076】
実施例7〜9及び比較例1の角形リチウムイオン電池20個に対して燃焼、熱露出、過充電試験をした。燃焼試験はバーナーで電池を加熱して電池の破裂率を計算し、熱露出試験は150℃において電池を熱露出させる場合電池が破裂される時間を測定し、過充電試験は電池を1Cに過充電する場合漏液率を調査した。その結果を下記の表1に記載した。
【0077】
【表1】
(実施例10)
LiCoOの代わりに平均粒径が1〜3μmである一次粒子を組立てて形成した二次粒子の平均粒径が5μmであるLi1.03Ni0.69Mn0.19Co0.1Al0.07Mg0.07を1重量%のホウ素エトキシド溶液でコーティングした後、700℃において熱処理したことを除いて前記実施例1と同様な方法でホウ素酸化物層が形成された正極活物質粉末を製造した。
【0078】
前記正極活物質粉末、スーパーPカーボン導電材及びフッ化ポリビニリデンバインダーを94:3:3の質量比で計量した後、N-メチルピロリドン溶媒に溶かして正極活物質スラリーを製造した。このスラリーをAl−箔上に固めて乾燥した後、プレシングしてコイン電池用正極極板を製造した。
【0079】
製造された正極極板と対極としてリチウム金属を使用し、Arでパージされたグローブボックス内でコインタイプの半電池を製造した。この時電解液は1M LiPFが溶解されたエチレンカーボネートとジメチルカーボネートの混合溶媒(1:1体積比)の標準電解液を使用した。
【0080】
(実施例11)
LiCoOの代わりに平均粒径が1〜3μmである一次粒子を組立てて形成した二次粒子の平均粒径が5μmであるLiNi0.9Co0.1Sr0.002を1重量%のホウ素エトキシド溶液でコーティングした後、700℃において熱処理したことを除いて前記実施例10と同様な方法でコイン-タイプの半電池を製造した。
【0081】
(実施例12)
LiCoOの代わりに平均粒径が1〜3μmである一次粒子を組立てて形成した二次粒子の平均粒径が5μmであるLiMnを使用したことを除いて1重量%のホウ素エトキシド溶液でコーティングした後、700℃において熱処理したことを除いて前記実施例10と同様な方法でコイン−タイプの半電池を製造した。
【0082】
(実施例13)
5gのAl−イソプロポキシド粉末を95gエタノールに添加して5重量%の濃度を有するAl−イソプロポキシド溶液を製造した(溶液製造工程)。
【0083】
5gのLiCoO粉末を前記Al−イソプロポキシド溶液に添加して、攪拌機で約10分間掻き混ぜて前記Al−イソプロポキシド溶液がLiCoO粉末の表面に均等にコーティングされるようにした。混合機上部に窒素ガスを投入し、加温水を混合機外部に循環させて混合機の内部温度を60℃に維持した。このように製造された混合物を約30分間持続的に窒素ガスを注入して攪拌し、溶媒として使用されたエタノールを蒸発させる。前記乾燥された粉末をAl酸化物でコーティングして、Al酸化物層が均一に形成された粉末を得た(one‐shot工程)。
【0084】
前記粉末を600℃の温度で乾燥空気をフローイングしながら熱処理した。熱処理された粉末を篩で選り出して一定の大きさの粉末を採集しリチウム二次電池用正極活物質を製造した。
【0085】
(実施例14)
1重量%のAl−イソプロポキシド粉末を99wt%のエタノールに添加して1重量%の濃度を有するAl−イソプロポキシド溶液を製造した。前記溶液に平均粒径が10μmであるLiCoO粉末を添加し、前記溶液とLiCoOが反応できる程度に十分に混合した。前記混合物から溶液を除去し、100℃のオーブンで12時間乾燥して二次電池用正極活物質を製造した。
【0086】
(比較例3)
平均粒径が10μmでありコーティングされていないLiCoO粉末を正極活物質として用いたことを除いて実施例7と同様な方法でコイン−タイプの半電池を製造した。
【0087】
(比較例4)
平均粒径が10μmでありコーティングされていないLi1.03Ni0.69Mn0.19Co0.1Al0.07Mg0.07を正極活物質として用いたことを除いて前記実施例7と同様な方法で半電池を製造した。
【0088】
(比較例5)
平均粒径が10μmでありコーティングされていないLiNi0.9Co0.1Sr0.002を正極活物質として用いたことを除いて前記実施例7と同様な方法で半電池を製造した。
【0089】
(比較例6)
平均粒径が20μmでありコーティングされていないLiMnを正極活物質として用いたことを除いて前記実施例7と同様な方法で半電池を製造した。
【0090】
実施例7〜12及び比較例3〜6の方法で製造されたコイン電池に対して連続的に0.1C(1サイクル)、0.2C(3サイクル)、0.5C(10サイクル)及び1C(6サイクル)順にC 速度(rate)を変化させながら4.3V〜2.75Vの電圧範囲で充放電を実施して放電容量を測定した。このうち実施例11と比較例5のコイン電池に対するサイクルによる容量特性を図5に示した。図5のように実施例11のコイン電池が比較例5に比べて優れたサイクル容量特性と高い放電電位を示した。
【0091】
前記実施例7〜12及び比較例3〜6の方法で製造されたコイン電池を4.3Vまで充電した。充電が完了した電池をグローブボックスで解体した後、極板の活物質だけを10mg採取して試料として用いた。この試料を利用して3℃/分の速度で空気雰囲気下で25乃至300℃までDSC(differential scanning calorimetry)スキャンして正極活物質の熱的安定性を測定した。実施例10と比較例4の正極活物質のDSC測定結果は図6に示されている。図7は実施例11と比較例5の正極活物質のDSC測定結果を示した図面である。
【0092】
前記実施例7〜12及び比較例3〜6の方法で製造されたコイン電池を4.45Vまで過充電した後、グローブボックスで解体して極板の活物質だけを10mg採取して試料として用いた。この試料を利用して3℃/分の速度で空気雰囲気下で25乃至300℃までDSCスキャンした。図8には過充電の後、実施例10と比較例4の正極活物質に対するDSC測定結果を示している。
【0093】
DSC分析は充電された正極活物質の熱的安定性を確認するために実施した。一般にリチウム二次電池の安全性は多様なメカニズムによって進められるが、特に充電状態で釘で貫通させる実験が最も重要な安全性実験の一つとして知られている。この時充電された電池の安全性に影響を及ぼす因子として多様なものがあるが、特に充電された正極とこの極板に含浸されている電解液の反応による発熱反応が重要な役割を果たすと知られている。このような現象を比較判断する方法でコイン電池を製造した後、一定の電位で充電してLi1-xCoOの状態に作った後、この充電状態の物質に対するDSC測定を通じて現れる発熱温度と発熱量及び発熱カーブの結果に基づいて安全性の可否を判断することができる。
【0094】
これを、LiCoOを例として説明すれば、LiCoOは充電状態でLi1-xCoOの構造を有するようになる。このような構造を有する活物質は不安定であるため電池内部の温度が高まればコバルトと結合している酸素がコバルトから遊離する。遊離した酸素は電池内部で電解液と反応して電池が爆発できる機会を提供する可能性が高い。したがって酸素分解温度とその時の発熱量は電池の安定性を示す重要な因子と言うことができる。
【0095】
図6に示すように、比較例4の発熱ピークは約220℃で大きく現れたが実施例10の発熱カーブは殆ど水平に近いもので発熱ピークを見せなかった。これは比較例4の正極活物質より実施例10の正極活物質が発熱量がはるかに減少したことを示し、これから本願発明による正極活物質の熱的安定性がはるかに優れていることが分かる。このような結果は実施例11と比較例5のDSC測定結果を示した図7でも確認することができる。また過充電後、DSC測定結果である図8から比較例4と実施例10の発熱ピークの面積の格差がさらに大きくなることが分かる。
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図1
図2