【実施例】
【0054】
(実施例1)
Al−イソプロポキシド粉末をエタノールに添加して5重量%濃度を有するAl−イソプロポキシド溶液を製造した。
【0055】
平均粒径が1〜3μmである一次粒子を組立てて形成した二次粒子の平均粒径が5μmであるLiCoO
2粉末100gを前記Al−イソプロポキシド溶液に添加し、撹拌機で約10分間かけて掻き混ぜて前記Al−イソプロポキシド溶液がLiCoO
2粉末の表面に均等にコーティングされるようにした。このように製造されたスラリーを約30分間放置してスラリーとAl−イソプロポキシド溶液を分離した後、Al−イソプロポキシド溶液を除去して、スラリーのみを熱処理用炉に入れた。
【0056】
前記炉で3℃/分の昇温速度で乾燥空気をフローイングながら500℃において10時間熱処理した後、炉内で冷却させて表面にアルミニウム酸化物層が形成されたリチウム二次電池用正極活物質を製造した。
【0057】
製造された正極活物質とスーパーPカーボン導電材及びフッ化ポリビニリデンバインダーを94:3:3の重量比で計量した後、N-メチルピロリドン溶媒に添加して正極活物質スラリーを製造した。このスラリーをAl−箔上に固めて乾燥した後、プレシングして正極極板を製造した。
【0058】
負極活物質としてMCF(mesocarbon fiber)と、フッ化ポリビニリデンバインダーを96:4の重量比で混合してN−メチルピロリドン溶媒に添加して負極活物質スラリーを製造した。この負極活物質スラリーをCu−ホイル上に固めて乾燥した後、プレシングして負極極板を製造した。
【0059】
前記正極極板及び負極極板を使用して通常の方法で角形のリチウムイオン電池を製造した。この時、電解液としては1M LiPF
6が溶解されたエチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、およびジエチルカーボネートの混合溶媒を使用した。
【0060】
(実施例2)
熱処理温度を500℃から300℃に変更したことを除いては前記実施例1と同様な方法で実施して角形のリチウムイオン電池を製造した。
【0061】
(実施例3)
熱処理温度を500℃から700℃に変更したことを除いては前記実施例1と同様な方法で実施して角形のリチウムイオン電池を製造した。
【0062】
(実施例4)
Al−イソプロポキシド溶液の代りにAl(NO
3)
3を水に添加して製造した5重量%の硝酸アルミニウム溶液を使用したことを除いては前記実施例1と同様な方法で実施して角形のリチウムイオン電池を製造した。
【0063】
(実施例5)
Al−イソプロポキシド溶液の代りに、Al(NO
3)
3を水に添加して製造した5重量%の硝酸アルミニウム溶液を使用し、熱処理温度を500℃から300℃に変更したことを除いては前記実施例1と同様な方法で実施して角形のリチウムイオン電池を製造した。
【0064】
(実施例6)
Al−イソプロポキシド溶液の代りに、Al(NO
3)
3を水に添加して製造した5重量%の硝酸アルミニウム溶液を使用し、熱処理温度を500℃から700℃に変更したことを除いては前記実施例1と同様な方法で実施して角形のリチウムイオン電池を製造した。
【0065】
(対照例1)
Al−イソプロポキシド溶液をLiCoO
2粉末にコーティングしていないことを除いては前記実施例1と同一に実施して角形のリチウムイオン電池を製造した。
【0066】
(比較例1)
平均粒径が10μmであるLiCoO
2粉末を使用したことを除いては前記実施例1と同一に実施して角形のリチウムイオン電池を製造した。
【0067】
(比較例2)
Al−イソプロポキシド溶液をLiCoO
2粉末にコーティングしていないことを除いては前記比較例1と同一に実施して角形のリチウムイオン電池を製造した。
【0068】
前記実施例1と対照例1の方法で製造された正極活物質のSEM写真を
図1の(a)及び(b)に各々示した。また、前記比較例1及び2の方法で製造された正極活物質のSEM写真を
図2の(a)及び(b)に各々示した。
【0069】
前記実施例1、対照例1及び比較例1〜2の方法で製造された角形のリチウムイオン電池を4.2V〜2.75Vの間で充放電を実施した。充放電は、0.2C−速度(rate)で化成(formation)された電池を、充電は全て0.2C−速度で実施した後、放電を0.5C、1C及び2CとしてC−速度変化による放電特性を測定した。
図3は実施例1と比較例1の測定結果を示し、
図4は実施例1と対照例1の測定結果を示す。
図4で放電容量は各電池の最大放電容量を100%に換算して示した。
【0070】
図3に示したように、同一にAl−イソプロポキシド溶液をLiCoO
2にコーティングして表面にアルミニウム酸化物層が形成された正極活物質であっても、使用したLiCoO
2の大きさによって放電特性が異なって現れることが分かる。LiCoO
2二次粒子の大きさが5μmであるものを使用した実施例1の電池が、10μmのものを使用した比較例1の電池に比べて高率(1.0C及び2.0C)で放電電圧が高く現れることから、本発明による実施例1の放電特性が比較例1より優れていることが分かる。
【0071】
また、
図4に示したように、同じ大きさのLiCoO
2粉末を使用したとしてもアルミニウム酸化物層が形成された実施例1の正極活物質がアルミニウム酸化物層が形成されていない対照例1の正極活物質に比べて高率(1.0C及び2.0C)で放電特性が優れていることが分かる。
【0072】
このような結果から、リチウム金属酸化物、例えばLiCoO
2の粒子の大きさが小さいほど放電電圧特性が優れており、表面にコーティング元素の酸化物層がコーティングされているものがコーティングされていないものより放電特性がさらに優れていることが分かる。
【0073】
(実施例7)
Al−イソプロポキシド溶液の代りに10重量%のホウ素エトキシド溶液を使用したことを除いては前記実施例1と同様な方法で実施して角形のリチウムイオン電池を製造した。
【0074】
(実施例8)
Al−イソプロポキシド溶液の代りに、10重量%のホウ素エトキシド溶液を使用し、熱処理温度を500℃から300℃に変更したことを除いては前記実施例1と同様な方法で実施して角形のリチウムイオン電池を製造した。
【0075】
(実施例9)
Al−イソプロポキシド溶液の代りに、10重量%のホウ素エトキシド溶液を使用し、熱処理温度を500℃から700℃に変更したことを除いては前記実施例1と同様な方法で実施して角形のリチウムイオン電池を製造した。
【0076】
実施例7〜9及び比較例1の角形リチウムイオン電池20個に対して燃焼、熱露出、過充電試験をした。燃焼試験はバーナーで電池を加熱して電池の破裂率を計算し、熱露出試験は150℃において電池を熱露出させる場合電池が破裂される時間を測定し、過充電試験は電池を1Cに過充電する場合漏液率を調査した。その結果を下記の表1に記載した。
【0077】
【表1】
(実施例10)
LiCoO
2の代わりに平均粒径が1〜3μmである一次粒子を組立てて形成した二次粒子の平均粒径が5μmであるLi
1.03Ni
0.69Mn
0.19Co
0.1Al
0.07Mg
0.07O
2を1重量%のホウ素エトキシド溶液でコーティングした後、700℃において熱処理したことを除いて前記実施例1と同様な方法でホウ素酸化物層が形成された正極活物質粉末を製造した。
【0078】
前記正極活物質粉末、スーパーPカーボン導電材及びフッ化ポリビニリデンバインダーを94:3:3の質量比で計量した後、N-メチルピロリドン溶媒に溶かして正極活物質スラリーを製造した。このスラリーをAl−箔上に固めて乾燥した後、プレシングしてコイン電池用正極極板を製造した。
【0079】
製造された正極極板と対極としてリチウム金属を使用し、Arでパージされたグローブボックス内でコインタイプの半電池を製造した。この時電解液は1M LiPF
6が溶解されたエチレンカーボネートとジメチルカーボネートの混合溶媒(1:1体積比)の標準電解液を使用した。
【0080】
(実施例11)
LiCoO
2の代わりに平均粒径が1〜3μmである一次粒子を組立てて形成した二次粒子の平均粒径が5μmであるLiNi
0.9Co
0.1Sr
0.002O
2を1重量%のホウ素エトキシド溶液でコーティングした後、700℃において熱処理したことを除いて前記実施例10と同様な方法でコイン-タイプの半電池を製造した。
【0081】
(実施例12)
LiCoO
2の代わりに平均粒径が1〜3μmである一次粒子を組立てて形成した二次粒子の平均粒径が5μmであるLiMn
2O
4を使用したことを除いて1重量%のホウ素エトキシド溶液でコーティングした後、700℃において熱処理したことを除いて前記実施例10と同様な方法でコイン−タイプの半電池を製造した。
【0082】
(実施例13)
5gのAl−イソプロポキシド粉末を95gエタノールに添加して5重量%の濃度を有するAl−イソプロポキシド溶液を製造した(溶液製造工程)。
【0083】
5gのLiCoO
2粉末を前記Al−イソプロポキシド溶液に添加して、攪拌機で約10分間掻き混ぜて前記Al−イソプロポキシド溶液がLiCoO
2粉末の表面に均等にコーティングされるようにした。混合機上部に窒素ガスを投入し、加温水を混合機外部に循環させて混合機の内部温度を60℃に維持した。このように製造された混合物を約30分間持続的に窒素ガスを注入して攪拌し、溶媒として使用されたエタノールを蒸発させる。前記乾燥された粉末をAl酸化物でコーティングして、Al酸化物層が均一に形成された粉末を得た(one‐shot工程)。
【0084】
前記粉末を600℃の温度で乾燥空気をフローイングしながら熱処理した。熱処理された粉末を篩で選り出して一定の大きさの粉末を採集しリチウム二次電池用正極活物質を製造した。
【0085】
(実施例14)
1重量%のAl−イソプロポキシド粉末を99wt%のエタノールに添加して1重量%の濃度を有するAl−イソプロポキシド溶液を製造した。前記溶液に平均粒径が10μmであるLiCoO
2粉末を添加し、前記溶液とLiCoO
2が反応できる程度に十分に混合した。前記混合物から溶液を除去し、100℃のオーブンで12時間乾燥して二次電池用正極活物質を製造した。
【0086】
(比較例3)
平均粒径が10μmでありコーティングされていないLiCoO
2粉末を正極活物質として用いたことを除いて実施例7と同様な方法でコイン−タイプの半電池を製造した。
【0087】
(比較例4)
平均粒径が10μmでありコーティングされていないLi
1.03Ni
0.69Mn
0.19Co
0.1Al
0.07Mg
0.07O
2を正極活物質として用いたことを除いて前記実施例7と同様な方法で半電池を製造した。
【0088】
(比較例5)
平均粒径が10μmでありコーティングされていないLiNi
0.9Co
0.1Sr
0.002O
2を正極活物質として用いたことを除いて前記実施例7と同様な方法で半電池を製造した。
【0089】
(比較例6)
平均粒径が20μmでありコーティングされていないLiMn
2O
4を正極活物質として用いたことを除いて前記実施例7と同様な方法で半電池を製造した。
【0090】
実施例7〜12及び比較例3〜6の方法で製造されたコイン電池に対して連続的に0.1C(1サイクル)、0.2C(3サイクル)、0.5C(10サイクル)及び1C(6サイクル)順にC 速度(rate)を変化させながら4.3V〜2.75Vの電圧範囲で充放電を実施して放電容量を測定した。このうち実施例11と比較例5のコイン電池に対するサイクルによる容量特性を
図5に示した。
図5のように実施例11のコイン電池が比較例5に比べて優れたサイクル容量特性と高い放電電位を示した。
【0091】
前記実施例7〜12及び比較例3〜6の方法で製造されたコイン電池を4.3Vまで充電した。充電が完了した電池をグローブボックスで解体した後、極板の活物質だけを10mg採取して試料として用いた。この試料を利用して3℃/分の速度で空気雰囲気下で25乃至300℃までDSC(differential scanning calorimetry)スキャンして正極活物質の熱的安定性を測定した。実施例10と比較例4の正極活物質のDSC測定結果は
図6に示されている。
図7は実施例11と比較例5の正極活物質のDSC測定結果を示した図面である。
【0092】
前記実施例7〜12及び比較例3〜6の方法で製造されたコイン電池を4.45Vまで過充電した後、グローブボックスで解体して極板の活物質だけを10mg採取して試料として用いた。この試料を利用して3℃/分の速度で空気雰囲気下で25乃至300℃までDSCスキャンした。
図8には過充電の後、実施例10と比較例4の正極活物質に対するDSC測定結果を示している。
【0093】
DSC分析は充電された正極活物質の熱的安定性を確認するために実施した。一般にリチウム二次電池の安全性は多様なメカニズムによって進められるが、特に充電状態で釘で貫通させる実験が最も重要な安全性実験の一つとして知られている。この時充電された電池の安全性に影響を及ぼす因子として多様なものがあるが、特に充電された正極とこの極板に含浸されている電解液の反応による発熱反応が重要な役割を果たすと知られている。このような現象を比較判断する方法でコイン電池を製造した後、一定の電位で充電してLi
1-xCoO
2の状態に作った後、この充電状態の物質に対するDSC測定を通じて現れる発熱温度と発熱量及び発熱カーブの結果に基づいて安全性の可否を判断することができる。
【0094】
これを、LiCoO
2を例として説明すれば、LiCoO
2は充電状態でLi
1-xCoO
2の構造を有するようになる。このような構造を有する活物質は不安定であるため電池内部の温度が高まればコバルトと結合している酸素がコバルトから遊離する。遊離した酸素は電池内部で電解液と反応して電池が爆発できる機会を提供する可能性が高い。したがって酸素分解温度とその時の発熱量は電池の安定性を示す重要な因子と言うことができる。
【0095】
図6に示すように、比較例4の発熱ピークは約220℃で大きく現れたが実施例10の発熱カーブは殆ど水平に近いもので発熱ピークを見せなかった。これは比較例4の正極活物質より実施例10の正極活物質が発熱量がはるかに減少したことを示し、これから本願発明による正極活物質の熱的安定性がはるかに優れていることが分かる。このような結果は実施例11と比較例5のDSC測定結果を示した
図7でも確認することができる。また過充電後、DSC測定結果である
図8から比較例4と実施例10の発熱ピークの面積の格差がさらに大きくなることが分かる。