特許第5754402号(P5754402)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5754402消泡剤用オイルコンパウンド及び消泡剤組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5754402
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】消泡剤用オイルコンパウンド及び消泡剤組成物
(51)【国際特許分類】
   B01D 19/04 20060101AFI20150709BHJP
【FI】
   B01D19/04 A
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-72948(P2012-72948)
(22)【出願日】2012年3月28日
(65)【公開番号】特開2013-215633(P2013-215633A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2014年2月25日
(31)【優先権主張番号】特願2011-85087(P2011-85087)
(32)【優先日】2011年4月7日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2012-54197(P2012-54197)
(32)【優先日】2012年3月12日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織
(74)【代理人】
【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成
(74)【代理人】
【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史
(72)【発明者】
【氏名】竹脇 一幸
(72)【発明者】
【氏名】松井 智波
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 孝冬
【審査官】 神田 和輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−040717(JP,A)
【文献】 特開平06−039207(JP,A)
【文献】 特開平07−150043(JP,A)
【文献】 特開平08−206409(JP,A)
【文献】 特開平10−282027(JP,A)
【文献】 特開2005−324140(JP,A)
【文献】 特開2007−222812(JP,A)
【文献】 特許第4232031(JP,B2)
【文献】 米国特許第06136917(US,A)
【文献】 荒又幹夫,五十嵐敏昭,固体29Si NMRのシリコーンゴム中シリカ−シロキサン界面分析への応用,分析化学,日本分析化学会,1998年12月 5日,第47巻第12号,971−978頁
【文献】 HERBERT I R, CLAGUE A D H,"Detailed Structural Analysis of Polysiloxane Antifoam Agents Using Carbon-13 and Silicon-29 NMR Spectroscopy",Macromolecules,米国,1989年 8月,Vol.22 No.8,pp.3267-3275
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/00−19/04
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)25℃における粘度が10〜100,000mm2/sである本質的に疎水性のオルガノポリシロキサン:100質量部、及び
(B)微粉末シリカ:1〜20質量部
を含有する消泡剤用オイルコンパウンドであって、(B)成分の微粉末シリカは表面疎水化処理されたものであり、上記オイルコンパウンドからヘキサンを用いて分取した不溶成分について29Si−CP/MAS−NMRによって測定されたスペクトルにおいて、シリカ表面のSiO4/2(Q)単位に起因するピークのうち、未反応シラノール基を2個有するケイ素原子のピーク面積Q2及び未反応シラノール基を1個有するケイ素原子のピーク面積Q3の合計面積量(Q2+Q3)と、未反応シラノール基を持たないケイ素原子のピーク面積Q4との面積量の比[(Q2+Q3)/Q4]が、70/30〜20/80であり、かつ上記29Si−CP/MAS−NMRによって測定されたスペクトルにおいて、微粉末シリカ表面のトリオルガノシロキシ単位(M)とジオルガノシロキシ単位(D)のピーク面積量の比(M/D)が、80/20〜10/90であることを特徴とする消泡剤用オイルコンパウンド。
【請求項2】
(A)成分と(B)成分とをアルカリ性触媒の存在下で混合することにより得られたものである請求項1記載の消泡剤用オイルコンパウンド。
【請求項3】
請求項1又は2記載のオイルコンパウンドを含むことを特徴とする消泡剤組成物。
【請求項4】
オイルコンパウンドを溶媒に分散した溶液型である請求項記載の消泡剤組成物。
【請求項5】
オイルコンパウンドをポリオキシアルキレン基で変性したオルガノポリシロキサンと併用した自己乳化型である請求項記載の消泡剤組成物。
【請求項6】
オイルコンパウンドを乳化したエマルジョン型である請求項記載の消泡剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリカ表面のシラノール基の疎水化処理度が一定の範囲にコントロールされたシリカを含有する消泡剤用オイルコンパウンドに関するもので、発泡液、特にアルカリ性の発泡液中でも初期消泡性や消泡持続性が優れる消泡剤用オイルコンパウンド、及びそれを含む消泡剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコーン系消泡剤は、化学工業、食品工業、石油工業、製紙工業、織物工業、医薬品工業等の発泡を伴う工程において広く使用されており、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルビニルポリシロキサン等のシリコーンオイルと微粉末シリカとを混合したオイルコンパウンド型消泡剤が汎用的に用いられてきた。
【0003】
また、実際の使用に際しては、前記オイルコンパウンド型消泡剤を界面活性剤と共に水中に分散してなるエマルジョン型消泡剤や、ポリオキシアルキレン基で変性されたオルガノポリシロキサンとオイルコンパウンドとを併用した自己乳化型消泡剤等が提案されているが(特許文献1〜5:特開昭51−71886号公報、特公昭54−43015号公報、特公昭52−19836号公報、特公昭52−22638号公報、特公昭55−23084号公報)、それらの消泡性能は原料であるオイルコンパウンド型消泡剤に負うところが大きく、従来技術では消泡性能が不足することがあった。一例として、初期消泡性能の不足や、発泡液と長時間接触することで消泡性能が経時で低下するなどの問題が起こることがあり、このことは発泡液がアルカリ性の場合に特に顕著であった。
【0004】
これらの問題を改善し、消泡性能をより向上させるために様々な提案がなされており、例えばオイルコンパウンドに使用するシリカを予めクロロシラン等で疎水化しておく方法(特許文献6:特公昭52−31836号公報)、シリカを窒素含有有機珪素化合物で処理する方法(特許文献7:特公昭51−35556号公報)等が挙げられるが、性能的に十分ではなく、特に消泡性能の経時低下が発生することがあり、性能の更なる向上が求められてきた。
【0005】
最近ではこれらの問題に対し、疎水性オルガノポリシロキサンと、オルガノポリシロキサンで表面処理した微粉末シリカをアルカリ性触媒の存在下で混合処理することで耐アルカリ性を高めた自己乳化型消泡剤組成物(特許文献8:特許第4232031号公報)、エマルジョン型消泡剤組成物(特許文献9:特開2007−222812号公報)等が提案されてきた。
【0006】
これらの消泡剤組成物は高い消泡性能を有し、アルカリ性発泡液中での経時劣化が少ない等の耐アルカリ性も得ることができるが、発泡液のアルカリ性が非常に高かったり、発泡液に含まれる界面活性剤の量が多い、使用される工程における撹拌力が非常に強い等の過酷な条件に対しては性能が不足することがあり、更なる性能の向上が望まれていた。また、これまでの消泡剤組成物では消泡性能を確認する定量的な評価方法が無く、評価はその都度、実際の使用条件又はそれに近似した条件での性能確認を行う必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭51−71886号公報
【特許文献2】特公昭54−43015号公報
【特許文献3】特公昭52−19836号公報
【特許文献4】特公昭52−22638号公報
【特許文献5】特公昭55−23084号公報
【特許文献6】特公昭52−31836号公報
【特許文献7】特公昭51−35556号公報
【特許文献8】特許第4232031号公報
【特許文献9】特開2007−222812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、発泡液、特にアルカリ性の発泡液中でも初期消泡性が良好で且つ経時劣化が少なく、消泡性能に優れたオイルコンパウンド、及びこのオイルコンパウンドを含有する消泡剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、微粉末シリカとして、表面シラノール基が疎水化処理されたものであって、29Si−CP/MAS(Cross Polarization)/(Magic Angle Spinning)−NMRによって測定されたスペクトルにおいて、シリカ表面のSiO4/2(Q)単位に起因するピークのうち、未反応シラノール基を2個有するケイ素原子のピーク面積Q2及び未反応シラノール基を1個有するケイ素原子のピーク面積Q3の合計面積量(Q2+Q3)と、未反応シラノール基を持たないケイ素原子のピーク面積Q4との面積量の比[(Q2+Q3)/Q4]の値が70/30〜20/80であり、好ましくはシリカ表面のトリオルガノシロキシ単位(M)とジオルガノシロキシ単位(D)のピーク面積量の比(M/D)の値が80/20〜10/90であるシリカを含有するオイルコンパウンドが、アルカリ性の発泡液中でも初期消泡性が良好且つ経時での性能低下が少なく、消泡性能に優れることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
従って、本発明は、下記に示す消泡剤用オイルコンパウンド及びこれを含む消泡剤組成物を提供する。
請求項1:
(A)25℃における粘度が10〜100,000mm2/sである本質的に疎水性のオルガノポリシロキサン:100質量部、及び
(B)微粉末シリカ:1〜20質量部
を含有する消泡剤用オイルコンパウンドであって、(B)成分の微粉末シリカは表面疎水化処理されたものであり、上記オイルコンパウンドからヘキサンを用いて分取した不溶成分について29Si−CP/MAS−NMRによって測定されたスペクトルにおいて、シリカ表面のSiO4/2(Q)単位に起因するピークのうち、未反応シラノール基を2個有するケイ素原子のピーク面積Q2及び未反応シラノール基を1個有するケイ素原子のピーク面積Q3の合計面積量(Q2+Q3)と、未反応シラノール基を持たないケイ素原子のピーク面積Q4との面積量の比[(Q2+Q3)/Q4]が、70/30〜20/80であり、かつ上記29Si−CP/MAS−NMRによって測定されたスペクトルにおいて、微粉末シリカ表面のトリオルガノシロキシ単位(M)とジオルガノシロキシ単位(D)のピーク面積量の比(M/D)が、80/20〜10/90であることを特徴とする消泡剤用オイルコンパウンド。
請求項
(A)成分と(B)成分とをアルカリ性触媒の存在下で混合することにより得られたものである請求項1記載の消泡剤用オイルコンパウンド。
請求項
請求項1又は2記載のオイルコンパウンドを含むことを特徴とする消泡剤組成物。
請求項
オイルコンパウンドを溶媒に分散した溶液型である請求項記載の消泡剤組成物。
請求項
オイルコンパウンドをポリオキシアルキレン基で変性したオルガノポリシロキサンと併用した自己乳化型である請求項記載の消泡剤組成物。
請求項
オイルコンパウンドを乳化したエマルジョン型である請求項記載の消泡剤組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、アルカリ性の発泡液中でも良好な初期消泡性を有し、経時での性能低下が少なく、消泡性能に優れたシリコーン系消泡剤用オイルコンパウンド及び消泡剤組成物を提供することができる。また、その消泡性能の定量的な評価方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例1で得られたオイルコンパウンド中の不溶成分の29Si−CP/MAS−NMRスペクトルを示すチャートである。
図2】実施例3で得られたオイルコンパウンド中の不溶成分の29Si−CP/MAS−NMRスペクトルを示すチャートである。
図3参考で得られたオイルコンパウンド中の不溶成分の29Si−CP/MAS−NMRスペクトルを示すチャートである。
図4】比較例1で得られたオイルコンパウンド中の不溶成分の29Si−CP/MAS−NMRスペクトルを示すチャートである。
図5】比較例3で得られたオイルコンパウンド中の不溶成分の29Si−CP/MAS−NMRスペクトルを示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について更に詳しく説明する。
(A)成分
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、本質的に疎水性のものである。ここで、本質的に疎水性とは、一部の官能基に親水性基を含有してもオルガノポリシロキサン全体として疎水性を示すことである。
【0014】
本質的に疎水性のオルガノポリシロキサン(A)は、直鎖状のものでも分岐状のものでもよいが、特に下記平均組成式(I)で示されるものが好適である。
1mSiO(4-m)/2 (I)
【0015】
上記式(I)において、R1は置換もしくは非置換の炭素数1〜18の一価炭化水素基であり、これらは同一であっても異なっていてもよい。R1の一価炭化水素基として、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、スチリル基、α−メチルスチリル基等のアラルキル基など、又はこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基、アミノ基、水酸基等で置換したクロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基、3−アミノプロピル基、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピル基等が挙げられるが、消泡性及び経済性の面から全R1の80モル%以上、特に90モル%以上がメチル基であることが好ましい。また、mは1.9≦m≦2.2、好ましくは1.95≦m≦2.15の正数である。なお、オルガノポリシロキサンの末端は、R13Si−で示されるトリオルガノシリル基で封鎖されていても、(HO)R12Si−で示されるジオルガノヒドロキシシリル基で封鎖されていてもよい。
【0016】
この本質的に疎水性のオルガノポリシロキサン(A)のオストワルド粘度計により測定した25℃における粘度は、消泡性、作業性の面から10〜100,000mm2/sであり、好ましくは50〜30,000mm2/sである。10mm2/s未満では消泡性能が劣り、100,000mm2/sを超えるとシリコーンオイルコンパウンドの粘度が増大して作業性が悪くなる。
【0017】
(B)成分
(B)成分の微粉末シリカは公知のものでよく、例えば、煙霧質シリカ、沈降シリカ、焼成シリカ等が挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を併用して用いることができる。微粉末シリカの比表面積(BET法)は50m2/g以上であることが好ましく、より好ましくは100〜700m2/g、更に好ましくは150〜500m2/gである。比表面積が50m2/g未満では好ましい消泡性能が得られない場合がある。
【0018】
本発明においては、微粉末シリカとして、消泡性の点からその表面を疎水化処理したものが用いられる。
【0019】
微粉末シリカの添加量は、オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対して1〜20質量部、好ましくは5〜15質量部である。添加量が1質量部未満では消泡性能が劣り、20質量部より多いと、シリコーンオイルコンパウンドの粘度が増加して作業性が悪くなる。
【0020】
ここで、微粉末シリカの表面処理状態、及びその測定方法について説明する。
ケイ素の固体NMR測定法には、29Si−DD/MAS(Dipolar Decoupled/Magic Angle Spinning)−NMR法と、29Si−CP/MAS−NMR法があるが、このうち29Si−DD/MAS−NMR法は全てのケイ素原子が測定されるという特徴がある。これに対し、29Si−CP/MAS−NMR法は水素原子核を励起し、近隣のケイ素原子核へと磁化移動を行い、磁化移動されたケイ素原子核のみを検出する。磁化移動に要する時間(contact time)を5ms程度に設定すると、検出されるケイ素が大幅に限定され、水素が近傍にないケイ素及びオイル状など運動性の高いケイ素は検出され難くなるという特徴がある。
【0021】
そのため、微粉末シリカを29Si−CP/MAS−NMR法で測定すると、シリカ内部のケイ素は水素が近傍にないため検出されないのに対し、シリカ表面のケイ素はシラノール基又はシラノール基に固定された表面処理基の形で水素が近傍に存在するため検出できる。このことを利用してシリカ表面のケイ素のみを選択的に測定することができ、微粉末シリカの表面状態を定量的に評価することができる。
【0022】
また、29Si−CP/MAS−NMRでは、微粉末シリカに固定された表面処理基も選択的に検出することができる。
【0023】
なお、シラノール基と反応せず、シリカ表面に固定化されていない表面処理剤や、オイル成分等は水素原子核からの磁化移動が十分にできないため、29Si−CP/MAS−NMR法では感度が低く、ほとんど検出されることはない。
ここで、29Si−CP/MAS−NMR分析するに際しては、シリコーンオイルコンパウンド10gにヘキサン100mLを添加し、3時間振とう分散後、10,000rpm×15分の遠心分離を行い、得られた不溶成分(微粉末シリカ)を100℃にて30分乾燥した後、NMR測定することが有効である。
【0024】
29Si−CP/MAS−NMR法で測定したスペクトルは、TMS(テトラメチルシラン)基準で概ね以下のように帰属することができる。
25〜−10ppm;R234SiO1/2[トリオルガノシロキシ単位:Mと略記](R2、R3、R4;−H、−CH3、−C25、−CH=CH2、−C65等)
−10〜−50ppm;R23SiO2/2[ジオルガノシロキシ単位:Dと略記](R2、R3;−H、−CH3、−C25、−CH=CH2、−C65等)
−50〜−85ppm;R2SiO3/2[モノオルガノシロキシ単位:Tと略記](R2;−H、−CH3、−C25、−CH=CH2、−C65等)
−85〜−120ppm;SiO4/2[Qと略記]
【0025】
これらのうちSiO4/2単位については、未反応シラノール基を2つ持つケイ素原子のピークQ2、未反応シラノール基を1つ持つケイ素原子のピークQ3、未反応シラノール基を持たないケイ素原子のピークQ4がそれぞれ観測され、TMS基準の帰属は概ね以下のとおりである。
−85〜−95ppm;Q2
−95〜−105ppm;Q3
−105〜−120ppm;Q4
【0026】
ここで、Q4は全てのシラノール基を表面処理剤等で反応させたものであり、一般的にはシリカの表面処理剤は疎水化剤であることから、Q4の含有量が多ければ多いほどシリカ全体の疎水化度は高くなるということができる。
【0027】
即ち、29Si−CP/MAS−NMRによって測定された、シリカ表面の未反応シラノール基のピーク面積量の合計(Q2+Q3)と、表面疎水化剤と反応して未反応シラノール基を持たないシリカ表面のシラノール基(Q4)のピーク面積量の比[(Q2+Q3)/Q4]で、微粉末シリカの疎水化度を表すことができる。また、その値が大きいほど疎水化度は低くなり、小さいほど疎水化度は高くなる。
【0028】
この(Q2+Q3)/Q4が、70/30〜20/80、好ましくは65/35〜30/70、より好ましくは60/40〜40/60である微粉末シリカを用いると良好な消泡性能が得られる。70/30より大きいと微粉末シリカの疎水化度が低く、即ちシリカの親水性が高いため、十分な消泡性能が得られず、特にアルカリ性発泡液中での消泡持続性が劣る。また、20/80より小さいものを得ることは表面処理剤の立体障害から製造上困難である。
【0029】
また、29Si−CP/MAS−NMRによって測定された、トリオルガノシロキシ単位(M)とジオルガノシロキシ単位(D)のピーク面積量の比(M/D)が、80/20〜10/90、好ましくは70/30〜20/80、より好ましくは60/40〜30/70である微粉末シリカを用いると良好な消泡性能が得られる。80/20より大きいと、又は10/90より小さいと良好な消泡性が得られず、特にアルカリ性発泡液に添加した直後の消泡性能、即ち初期消泡性が劣る場合がある。
【0030】
本発明の微粉末シリカとしては、上述したように、表面が疎水化処理されたものを用いるが、微粉末シリカ表面の疎水化処理は従来公知の方法によって、即ち、オルガノクロロシラン、オルガノアルコキシシラン、オルガノジシラザン、オルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンシラン等の有機ケイ素化合物(表面疎水化処理剤)で親水性シリカを処理することによって行うことができる。この場合、このようにあらかじめ表面処理した微粉末シリカを使用し得るが、本発明においては、好ましくはこのようにあらかじめ表面疎水化処理された又は表面疎水化処理されていない微粉末シリカを上記(A)成分と混合することで、微粉末シリカを更に表面処理し、(Q2+Q3)/Q4及びM/Dを上述した値とすることが好ましい。
【0031】
この場合、(Q2+Q3)/Q4及びM/Dを上述した値とするには、(A),(B)成分を混合してオイルコンパウンドを製造する際に、必要に応じて上記表面疎水化処理剤を添加し、室温(25℃)〜200℃、好ましくは100〜200℃、更に好ましくは120〜180℃の温度で混合処理することが有効である。また、必要に応じて上記のシリカ表面処理に用いられる有機ケイ素化合物や、(B)成分の表面に(A)成分を反応吸着させて良好な疎水化処理を行うためのアルカリ性触媒を添加し、微粉末シリカの処理を並行して行うこともできる。アルカリ性触媒を添加した条件では、必要に応じて混合処理を行った後に中和剤を添加して中和反応を行うことができ、また濾過工程による中和塩等の除去を行うこともできる。また、必要に応じて、減圧留去により未反応の有機ケイ素化合物、及び低沸点留分の除去を行うことができる。
【0032】
なお、混合処理時間は10分〜5時間、特に1〜3時間とすることが好ましい。また、混合処理は窒素等の不活性雰囲気下で行うことが好ましい。
【0033】
前記アルカリ性触媒としては、ポリシロキサンの転移反応に用いられる公知のアルカリ性触媒である、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の酸化物、水酸化物、アルコキシド又はシリコネートを用いることができ、好ましくはカリウムシリコネート及び水酸化カリウムである。
【0034】
アルカリ性触媒の使用量は、オルガノポリシロキサン(A)100質量部に対して0.001〜5質量部、好ましくは0.01〜3質量部、より好ましくは0.05〜2質量部である。0.001質量部未満では触媒としての効果が弱い場合があり、5質量部を超える量でも触媒の効果は大きく向上しないため、コスト的に不利になる場合がある。
【0035】
本発明の製造方法において、混練を行うために使用される混練機としては、例えばゲートミキサー、ニーダー、加圧ニーダー、二軸混練機、インテンシブミキサー等が挙げられるが、特に限定されない。これら混練機は、(A),(B)成分の混合処理やシリカの表面処理、その後の中和工程等、いずれの工程においても使用することができる。
【0036】
消泡剤組成物
上記の工程で得られたシリコーンオイルコンパウンドは、そのまま使用されるか、あるいはこのシリコーンオイルコンパウンドを含む消泡剤組成物、具体的には、適当な溶媒に分散した溶液型消泡剤組成物、ポリオキシアルキレン基で変性されたオルガノポリシロキサンとの併用による自己乳化型消泡剤組成物、又は周知の乳化技術によって得られるエマルジョン型消泡剤組成物等として使用することができる。
【0037】
ここで、適当な溶媒に分散した溶液型消泡剤組成物とする場合、溶媒としては、(A)成分である本質的に疎水性のオルガノポリシロキサンが溶解する溶媒、例えばトルエン、キシレン、ヘキサン、クロロホルム、2−ブタノン、4−メチル−2−ペンタノン等が挙げられる。
【0038】
溶液型消泡剤組成物とする場合、シリコーンオイルコンパウンドの含有量は、消泡剤組成物全体の5〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは30〜70質量%である。シリコーンオイルコンパウンドの含有量が少なすぎると消泡剤組成物としての消泡性能が劣る場合があり、多すぎるとオイルコンパウンド成分の分散性を高めるという溶液型消泡剤組成物の主目的を満足できない場合がある。
【0039】
また、ポリオキシアルキレン基で変性されたオルガノポリシロキサンとの併用による自己乳化型消泡剤組成物とする場合、ポリオキシアルキレン基で変性されたオルガノポリシロキサンとしては、下記一般式(II)で示されるものが挙げられる。
527SiO−(R52SiO)x−(R56SiO)y−SiR527 (II)
【0040】
上記式(II)中、R5は互いに同一又は異種の置換もしくは非置換の炭素数1〜18の一価炭化水素基であり、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、オクタデシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、スチリル基、α−メチルスチリル基等のアラルキル基など、又はこれらの基の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をハロゲン原子、シアノ基、アミノ基等で置換したクロロメチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基、3−アミノプロピル基、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピル基等の一価炭化水素基が挙げられる。
【0041】
また、R6は下記一般式(III)で示されるポリオキシアルキレン基である。
−R8−O(CH2CH2O)a−(CH2(CH3)CHO)b−R9 (III)
上記式(III)中、R8は炭素数2〜6の二価炭化水素基であり、アルキレン基、アルケニレン基等が挙げられ、例えば、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基等が挙げられる。また、R9は水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、アセチル基又はイソシアン基であり、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。a及びbは3≦a+b≦80、好ましくは5≦a+b≦60、かつa/b=2/8〜8/2、好ましくはa/b=2.5/7.5〜7.5/2.5を満たす正数である。
【0042】
一方、R7はR5もしくはR6と同様の基、水酸基又は炭素数1〜6のアルコキシ基であり、具体的には前記のR5及びR6として例示した基、アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられる。
なお、上記式(II)中のxは5〜200、好ましくは20〜150の整数であり、yは1〜30、好ましくは1〜20の整数である。
【0043】
このポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンは、1種単独で用いても、2種以上の混合物を用いてもよいが、オストワルド粘度計により測定した25℃における粘度が、10〜10,000mm2/s、好ましくは50〜8,000mm2/s、更に好ましくは500〜5,000mm2/sであるものを用いることができる。
【0044】
ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンの具体例としては、次のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
(CH33SiO−[(CH32SiO]30−[(CH3)R’SiO]5−Si(CH33
R’:−C36O−(C24O)30−(C36O)10−C49
(CH33SiO−[(CH32SiO]30−[(CH3)R’SiO]3−Si(CH33
R’:−C36O−(C24O)20−(C36O)20−C49
(CH33SiO−[(CH32SiO]40−[(CH3)R’SiO]4−Si(CH33
R’:−C36O−(C24O)21−(C36O)7−COCH3
(CH33SiO−[(CH32SiO]50−[(CH3)R’’SiO]6−[(CH3)R’’’SiO]1−Si(CH33
R’’:−C36O−(C24O)32−(C36O)8−C49
R’’’:−C1225
(CH33SiO−[(CH32SiO]135−[(CH3)R’SiO]15−Si(CH33
R’:−C36O−(C24O)21−(C36O)21−CH3
(CH33SiO−[(CH32SiO]30−[(CH3)R’SiO]5−Si(CH33
R’:−C36O−(C24O)25.5−(C36O)8.5−C49
(CH33SiO−[(CH32SiO]27−[(CH3)R’SiO]3−Si(CH33
R’:−C36O−(C24O)23−(C36O)23−C49
【0045】
また、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンとの併用による自己乳化型消泡剤組成物には、
HO−[CH2(CH3)CHO]35−H、
HO−[CH2(CH3)CHO]70−H、
HO−(CH2CH2O)4−[CH2(CH3)CHO]30−H、
HO−(C24O)25−(C36O)35−H、
HO−(C36O)30−H、
CH2=CHCH2O−(CH2CH2O)32−[CH2(CH3)CHO]8−H、
CH2=CHCH2O−(CH2CH2O)22−[CH2(CH3)CHO]22−C49
CH2=CHCH2O−(CH2CH2O)10−CH3
で例示されるようなポリオキシアルキレン重合体や、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンプロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油等の非イオン性界面活性剤を用いてもよい。なお、上記に例示した組成式は一例であり、本発明を制限するものではない。
【0046】
また、自己乳化型消泡剤組成物とする場合、シリコーンオイルコンパウンドの含有量は、消泡剤組成物全体の5〜80質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜70質量%であり、更に好ましくは20〜60質量%である。シリコーンオイルコンパウンドの含有量が少なすぎると消泡剤組成物としての消泡性能が劣る場合があり、多すぎるとオイルコンパウンド成分の分散性を高めるという自己乳化型消泡剤組成物の主目的を満足できない場合がある。
【0047】
ポリオキシアルキレン重合体や非イオン性界面活性剤の使用量は0〜90質量%、特に0〜70質量%が好ましく、またポリオキシアルキレン基で変性されたオルガノポリシロキサンの使用量は残部であるが、消泡剤組成物全体の少なくとも20質量%以上、より好ましくは30質量%以上、更に好ましくは40質量%以上であることが好ましい。
【0048】
更に、エマルジョン型消泡剤組成物とする場合、公知の方法を用いることができるが、シリコーンオイルコンパウンドを乳化する乳化剤としては、上述したポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンや、ポリオキシアルキレン重合体、非イオン性界面活性剤等を使用することができる。
【0049】
エマルジョン型消泡剤組成物において、上記ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサンは、1種単独で用いても、2種以上の混合物を用いてもよいが、その含有量は消泡剤組成物全体の0〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量%である。含有量が30質量%を超えると組成物の消泡性能が悪くなる場合がある。
【0050】
また、エマルジョン型消泡剤組成物において、上記ポリオキシアルキレン重合体は、乳化助剤となるもので、1種単独で用いても、2種以上の混合物を用いてもよいが、その含有量は消泡剤組成物全体の0〜40質量%であることが好ましく、より好ましくは0〜20質量%である。含有量が40質量%を超えると組成物の乳化特性が悪くなる場合がある。なお、配合する場合は有効量とすることができるが、5質量%以上配合することが好ましい。
【0051】
更に、エマルジョン型消泡剤組成物において、上記非イオン性界面活性剤は、シリコーンオイルコンパウンドを水に分散させるためのものであり、1種単独で用いても、2種以上の混合物を用いてもよいが、この含有量は消泡剤組成物全体の0〜20質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜10質量%である。20質量%を超えると消泡剤組成物の粘度が高くなり、作業性が悪くなる場合がある。
【0052】
上記ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシアルキレン重合体、非イオン性界面活性剤等の乳化剤の合計量は、消泡剤組成物全体の1〜40質量%、より好ましくは5〜20質量%であることが好ましい。
【0053】
また、エマルジョン型消泡剤組成物とする場合、シリコーンオイルコンパウンドの含有量は、消泡剤組成物全体の5〜50質量%であることが好ましく、より好ましくは10〜40質量%である。シリコーンオイルコンパウンドの含有量が少なすぎると消泡剤組成物としての消泡性能が劣る場合があり、多すぎると消泡剤組成物の粘度が高くなり、作業性が悪くなる場合がある。
【0054】
エマルジョン型消泡剤組成物においては、シリコーンオイルコンパウンド、ポリオキシアルキレン変性オルガノポリシロキサン、ポリオキシアルキレン重合体、非イオン性界面活性剤等の各成分を乳化するのに必要な水を添加する必要があり、その量は各成分の含有割合の合計に対する残部であり、好ましくは各成分の合計100質量部に対して50〜2,000質量部、より好ましくは80〜400質量部となるように添加する。
【0055】
なお、エマルジョン型消泡剤組成物は、水以外の各成分の所定量を混合し、必要に応じて加熱しながら、公知の方法、例えばホモミキサー、ホモジナイザー、コロイドミル等の混合・分散機により撹拌・乳化することにより調製することができるが、特に水以外の各成分の所定量を均一に混合・分散させた後、水の一部を添加し、撹拌・乳化を行った後に更に残りの水を加え、均一に撹拌・混合して調製する方法が好ましい。
【0056】
また、エマルジョン型消泡剤組成物には、防腐の目的で少量の保存料・殺菌料を任意で添加してもよい。この保存料・殺菌料の具体例としては、次亜塩素酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、サリチル酸、サリチル酸ナトリウム、安息香酸、安息香酸ナトリウム、パラベン類、イソチアゾリン化合物等が挙げられる。この添加量は、エマルジョン型消泡剤組成物全体の0〜0.5質量%、特に0.005〜0.5質量%が好ましい。
【0057】
また、エマルジョン型消泡剤組成物には、増粘の目的で少量の増粘剤を任意で添加してもよい。この増粘剤の具体例としては、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、アクリル酸・メタクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、キサンタンガム、グアーガム等が挙げられる。この添加量は、エマルジョン型消泡剤組成物全体の0〜1.0質量%、特に0.01〜0.5質量%が好ましい。
【実施例】
【0058】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において、粘度はオストワルド粘度計により測定した25℃における値である。
また、29Si−CP/MAS−NMR分析は以下のようにして行った。
試料(オイルコンパウンド)10gに溶剤(ヘキサン)100mLを添加し、3時間振とう分散後、10,000rpm×15分の遠心分離を行った。不溶成分を100℃にて30分乾燥した後、NMR測定した。
[NMR測定条件]
装置 Bruker社AVANCE700
プローブ Bruker社 4mmφCP/MASプローブ
29Si核測定周波数 139.1MHz
観測幅 52kHz
測定法 CP/MAS法
コンタクトタイム 5ms
繰り返し時間 5s
積算回数 5,000〜10,000回
試料量 約0.1g
試料回転数 8,000Hz
温度 室温
【0059】
[実施例1]
本質的に疎水性のオルガノポリシロキサンとして、粘度が10,000mm2/sの分子鎖両末端がトリメチルシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン100質量部、微粉末シリカとして、アエロジル(Aerosil)R812[日本アエロジル社製、比表面積260m2/g]を5質量部、アルカリ性触媒として水酸化カリウムを3質量%含有するカリウムシリコネート1質量部を用い、窒素ガス雰囲気下、ゲートミキサーを使用して150℃、3時間混練した。100℃以下に冷却後、2−クロロエタノールで中和し、次いで低沸点留分の除去を行い、シリコーンオイルコンパウンド(a−1)を得た。
ヘキサンを用いてオイルコンパウンド(a−1)から不溶成分を分取し、29Si−CP/MAS−NMR(BRUKER社製、型番AVANCE700、700MHz)によって不溶成分の測定を行ったところ、(Q2+Q3)/Q4=47/53、M/D=35/65だった。図1にチャートを示す。
【0060】
このシリコーンオイルコンパウンド(a−1)30質量部に、平均組成が下記式
527SiO−(R52SiO)x−(R56SiO)y−SiR527
(但し、R5及びR7は−CH3、R6は−C36O(C24O)21(C36O)21CH3、xは135、yは15である。)
で表され、且つ粘度が2,500mm2/sであるポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン(a−2)70質量部を室温で混合して消泡剤組成物(A)を調製した。
【0061】
[実施例2]
実施例1のシリコーンオイルコンパウンド(a−1)20質量部とソルビタンモノステアレート4質量部とポリオキシエチレン(55)モノステアレート6質量部の混合物を加熱溶解後、水70質量部を加え、ホモミキサーで撹拌、乳化して消泡剤組成物(B)を調製した。
【0062】
[実施例3]
本質的に疎水性のオルガノポリシロキサンとして、粘度が8,000mm2/sでCH3SiO3/2単位を0.01モル分率含有する分岐状の分子鎖末端がトリメチルシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン100質量部、微粉末シリカとしてニプシル(Nipsil)HD−2[東ソーシリカ社製、比表面積300m2/g]を12質量部、シリカ表面処理剤としてヘキサメチルジシラザン1.0質量部を添加し、窒素ガス雰囲気下、ゲートミキサーを使用して150℃で1時間混練した。100℃以下に冷却後、更にヘキサメチルジシラザン1.8質量部を添加し、150℃で3時間混練した。冷却後にナイロンメッシュで濾過を行い、シリコーンオイルコンパウンド(c−1)を得た。
ヘキサンを用いてオイルコンパウンド(c−1)から不溶成分を分取し、29Si−CP/MAS−NMRによって不溶成分の測定を行ったところ、(Q2+Q3)/Q4=63/37、M/D=48/52だった。図2にチャートを示す。
【0063】
このシリコーンオイルコンパウンド(c−1)30質量部に、平均組成が下記式
527SiO−(R52SiO)x−(R56SiO)y−SiR527
(但し、R5及びR7は−CH3、R6は−C36O(C24O)25.5(C36O)8.549、xは30、yは5である。)
で表され、且つ粘度が1,000mm2/sであるポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン(c−2)50質量部と、平均組成が下記式
HO−(C24O)25−(C36O)35−H
で表されるポリオキシアルキレン重合体(c−3)20質量部を室温で混合して消泡剤組成物(C)を調製した。
【0064】
参考
本質的に疎水性のオルガノポリシロキサンとして、粘度が10,000mm2/sの分子鎖両末端がトリメチルシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン100質量部、微粉末シリカとして、アエロジル(Aerosil)R202[日本アエロジル社製、比表面積100m2/g]を8質量部、アルカリ性触媒として水酸化カリウム0.005質量部を用い、窒素ガス雰囲気下、ゲートミキサーを使用して150℃、3時間混練した。100℃以下に冷却後、コハク酸0.03質量部で中和し、次いでナイロンメッシュで濾過を行い、シリコーンオイルコンパウンド(d−1)を得た。
ヘキサンを用いてオイルコンパウンド(d−1)から不溶成分を分取し、29Si−CP/MAS−NMRによって不溶成分の測定を行ったところ、(Q2+Q3)/Q4=42/58、M/D=0/100だった。図3にチャートを示す。
【0065】
このシリコーンオイルコンパウンド(d−1)30質量部に、平均組成が下記式
527SiO−(R52SiO)x−(R56SiO)y−SiR527
(但し、R5及びR7は−CH3、R6は−C36O(C24O)23(C36O)2349、xは27、yは3である。)
で表され、且つ粘度が1,700mm2/sであるポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン(d−2)50質量部と、平均組成が下記式
HO−(C36O)30−H
で表されるポリオキシプロピレン重合体(d−3)20質量部を室温で混合して消泡剤組成物(D)を調製した。
【0066】
参考
参考のシリコーンオイルコンパウンド(d−1)20質量部とソルビタンモノステアレート6質量部とポリオキシエチレン(55)モノステアレート6質量部の混合物を加熱溶解後、水68質量部を加え、ホモミキサーで撹拌、乳化して消泡剤組成物(E)を調製した。
【0067】
[比較例1]
本質的に疎水性のオルガノポリシロキサンとして、粘度が10,000mm2/sの分子鎖両末端がトリメチルシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン100質量部、微粉末シリカとして、アエロジル(Aerosil)R812[日本アエロジル社製、比表面積260m2/g]を5質量部用い、窒素ガス雰囲気下、ゲートミキサーを使用して150℃、3時間混練してシリコーンオイルコンパウンド(f−1)を得た。
ヘキサンを用いてオイルコンパウンド(f−1)から不溶成分を分取し、29Si−CP/MAS−NMRによって不溶成分の測定を行ったところ、(Q2+Q3)/Q4=72/28、M/D=100/0だった。図4にチャートを示す。
【0068】
このシリコーンオイルコンパウンド(f−1)30質量部に、平均組成が下記式
527SiO−(R52SiO)x−(R56SiO)y−SiR527
(但し、R5及びR7は−CH3、R6は−C36O(C24O)21(C36O)21CH3、xは135、yは15である。)
で表され、且つ粘度が2,500mm2/sであるポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン(f−2)70質量部を室温で混合して消泡剤組成物(F)を調製した。
【0069】
[比較例2]
比較例1のシリコーンオイルコンパウンド(f−1)20質量部とソルビタンモノステアレート4質量部とポリオキシエチレン(55)モノステアレート6質量部の混合物を加熱溶解後、水68質量部を加え、ホモミキサーで撹拌、乳化して消泡剤組成物(G)を調製した。
【0070】
[比較例3]
本質的に疎水性のオルガノポリシロキサンとして、粘度が8,000mm2/sでCH3SiO3/2単位を0.01モル分率含有する分岐状の分子鎖末端がトリメチルシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン100質量部、微粉末シリカとして、ニプシル(Nipsil)HD−2[東ソーシリカ社製、比表面積300m2/g]を12質量部を用い、窒素ガス雰囲気下、ゲートミキサーを使用して150℃、3時間混練してシリコーンオイルコンパウンド(h−1)を得た。
ヘキサンを用いてオイルコンパウンド(h−1)から不溶成分を分取し、29Si−CP/MAS−NMRによって不溶成分の測定を行ったところ、(Q2+Q3)/Q4=88/12、M/Dはシリカ表面処理が成されていないため、共に0だった。図5にチャートを示す。
【0071】
このシリコーンオイルコンパウンド(h−1)30質量部に、平均組成が下記式
527SiO−(R52SiO)x−(R56SiO)y−SiR527
(但し、R5及びR7は−CH3、R6は−C36O(C24O)21(C36O)21CH3、xは135、yは15である。)
で表され、且つ粘度が2,500mm2/sであるポリオキシアルキレン変性オルガノシロキサン(h−2)70質量部を室温で混合して消泡剤組成物(H)を調製した。
【0072】
実施例1〜3、参考例1,2及び比較例1〜3で得られた消泡剤組成物(A)〜(H)について、下記方法により評価した。結果を表1に示す。
[評価方法]
消泡性(初期):
市販の水性切削油剤(ユシロ化学工業(株)製、ユシローケンFGE234)に各消泡剤サンプルを有効成分量で0.2質量%添加したものを水で30倍に希釈し、1Lビーカー中でホモミキサーにより8,000rpm×10分間撹拌した。10分間撹拌したときの液+泡の体積(mL)と、撹拌停止から完全に泡が消えるまでの時間を測定した。
【0073】
消泡性(50℃×7日後):
上記水性切削油剤に各消泡剤サンプルを有効成分量で0.2質量%添加したものを50℃で7日間保存し、その後水で30倍に希釈して、1Lビーカー中でホモミキサーにより8,000rpm×10分間撹拌した。10分間撹拌したときの液+泡の体積(mL)と、撹拌停止から完全に泡が消えるまでの時間を測定した。
【0074】
内添安定性:
上記水性切削油剤に各消泡剤サンプルを有効成分量で0.2質量%添加したものを50℃で7日間保存したときの外観を目視にて下記基準で観察した。
○:浮遊物・沈降物無し
△:浮遊物・沈降物ややあり
×:浮遊物・沈降物多い
【0075】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5