【実施例】
【0038】
以下の実施例において、質量分析装置ESI-FT-MSは、Bruker社製REFLEX IIを用いた。また、HPLCは、Waters社製Delta600を用い、カラムとしてMightysil RP-18 GP 250-4.6 (4.6 x 250 mm, 5 μm, 関東化学)を付け、流速1 ml/minで流した。最初アセトニトリル:水=30:70で10分流し、10分後直ちに40:60に変更した。その後50分かけて50:50に変わるよう直線的にグラジェントをかけた。215nmでのUV吸収を検出した。蛍光スキャナーは、GEヘルスケア社製Typhoonを用いた。溶媒及び試薬は市販の試薬グレードを用いた。
【0039】
また、この明細書において、次の略号を使用する。
2−(2−ニトロフェニル)プロピルオキシカルボニル(NPPOC)
二炭酸ジ-ターシャリー-ブチル(Boc
2O)
N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)
4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)
ジクロロメタン(CH
2Cl
2、DCM)
N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)
フェニルイソチオシアネート(PITC)
N−メチルモルフォリン(NMM)
N−ヨードスクシンイミド(NIS)
トリフルオロメタンスルホン酸(TfOH)
安息香酸(BzOH)
トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(TMSOTf)
テトラヒドロフラン(THF)
トリフルオロ酢酸(TFA)
tert(ターシャリー)−ブトキシカルボニル(Boc)
9H−フルオレン−9−イルメトキシカルボニル(Fmoc)
ベンゾイル(Bz)
ベンジル(Bn)
チオフェニル(SPh)
アリール(Ar)
室温(r.t.)
ガラクトース(Gal)
グルコサミン(GlcN)
グリシン(Gly)
2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)
ユニケモハイドロキシ保護基(UCHP)(特許文献1及び2記載のY基の総称)
【0040】
実施例1
この実施例では、一枚のガラス上に結合位置の異なる3種類の2糖を作りわけている。
実施例1A(アクセプターを基板に結合する工程)
ガラス(13)(シリカガラスを3-アミノプロピルトリエトキシシラン処理後、6−ヒドロキシヘキサン酸を結合させた物。これによりガラス表面に水酸基を有するリンカーが共有結合している)にFmocGlyを導入し、導入されたFmocの量を定量することにより水酸基のローディング量を0.0235mmol/gと決定した。
そのガラス(13)の全面にまず、3位水酸基がBocを持った1重合のY基(-[(CH
3CH
2)
2CH]N-CH
2-CO-)で保護され、4位水酸基がNPPOCで保護され、6位水酸基がBocを持った2重合のY基により保護されたグルコサミンドナー(15)を導入した。
ガラス(13)3枚((i)1.561g(2.7cm x 2.6cm x 0.1cm)、(ii)2.190g(5.0cm x 2.5cm x 0.1cm)、(iii)2.178g(5.0cm x 2.5cm x 0.1cm))に、グルコサミンドナー(15)(566mg)、モレキュラーシーブス4A(4.67g)、NIS(309mg)を加え、窒素雰囲気下、脱水ジクロロメタン(6ml)を加えて、-30℃で振盪した。そこにTfOH (122μl)を加え-30℃で1日振盪した。ガラスをNa
2S
2O
3水溶液/アセトン、水、メタノール、DMFの順に洗浄後、縮合時に切断されたBoc基の再導入のため、DMF(6ml)、Boc
2O(600μl)、飽和重曹水(600μl)を加え、室温にて4時間振盪した。ガラスを水/DMF、DMF、クロロホルムの順に洗浄後真空乾燥し、ガラス(16)を得た。
ガラス上の構造確認の為に、ガラス(16)を少々砕き玉尾酸化の条件にさらし、切り出しを行い、MS(MALDI-TOF)を測定し目的物(化合物17)を確認した。
化合物17:MALDI-TOF-MS, C
59H
95Cl
3N
6O
20Na+ (M+Na)+の計算値:1335.56, 実測値:1336.5
【0041】
【化1】
【0042】
縮合されなかった未反応の水酸基に対してBzキャッピングを行った。ガラス(16)にBz
2O (600mg)、DMAP (15mg)、ピリジン(6ml)を加え室温にて4時間振盪した。反応液を除去した後、もう一度同じ量でBz化を4時間行った。反応液を除去した後、ガラスを水/DMF、2N―塩酸水、水、DMF,クロロホルムの順で洗浄し真空乾燥した。
Bzキャッピング後のガラスを4領域に区別する為にガラス切りで下記スキームに示すように十字の線を書いた。
【0043】
【化2】
【0044】
それぞれ、以下、領域1、領域2,領域3,領域4と呼ぶ。領域1には単糖(GlcN)、領域2には2糖(Galβ1-4GlcN)、領域3には2糖(Galβ1-3GlcN)、領域4には2糖(Galβ1-6GlcN)を作り分ける。
【0045】
実施例1B(Galβ1-4GlcN構造を構築する工程)
まず、GlcNの4位水酸基を選択的に脱保護し、Galβ1-4GlcN構造を構築する為に、領域2だけに光を当てる。ガラスをアセトニトリル10ml、水10mlの混合溶媒中に浸し、360nmの光(9.19 mW/cm
2)を領域2にだけ室温下30分照射した。水、アセトンの順にガラスを洗浄し、真空乾燥することにより、領域2に存在するGlcNの4位に結合したNPPOC基を脱離したガラス(18)を得た。
領域2のガラスを少々砕き玉尾酸化することにより選択的にNPPOCが脱離された化合物19を確認した。
化合物19:MALDI-TOF-MS, C
49H
86Cl
3N
5O
16Na+ (M+Na)+の計算値:1128.50, 実測値:1129.1
【0046】
【化3】
【0047】
ガラス(18)にガラクトースドナー(20)を縮合する。3枚のガラス(18)((i)1.1697g、(ii)1.5026g、(iii)2.1835g)に、ガラクトースドナー(20)(116.4mg)、モレキュラーシーブス4A(5g)を入れ窒素雰囲気下、無水ジクロロメタン(6ml)を入れ、−15℃に冷却した。−15℃にてTMSOTf(85μl)を入れそのまま2時間振盪した。ガラスをクロロホルム、DMF、クロロホルムの順で洗浄し真空乾燥した。この縮合操作はもう一度同じ条件にて繰り返した。縮合時に脱離したBoc基の再導入の為に、縮合後のガラスにDMF(7ml)、Boc
2O(700μl)、飽和重曹水(700μl)を加え室温にて6時間振盪した。ガラスをDMF/水、DMF、クロロホルムの順で洗浄し真空乾燥した。この再Boc化も同じ条件にて繰り返しガラス(21)を得た。
ガラス上の構造確認の為に、ガラス(21)の領域2を少々砕き玉尾酸化の条件にさらし切り出しを行い、MS(MALDI-TOF)を測定し目的物(22)を確認した。
化合物22:MALDI-TOF-MS, C
83H
118Cl
3N
5O
22Na+ (M+Na)+の計算値:1664.72, 実測値:1664.7
【0048】
【化4】
【0049】
次に、他の領域の4位水酸基をBz基にてキャッピングをする為に、他の領域(領域1,3,4)に光を当て、NPPOCを脱離する。
ガラスをアセトニトリル10ml、水10mlの混合溶媒中に浸し、360nmの光(9.19 mW/cm
2)を領域1,3,4だけに室温下30分照射した。水、アセトンの順にガラスを洗浄し、真空乾燥することにより、領域1,3,4に存在するGlcNの4位に結合したNPPOC基を脱離したガラスを得た。その後、ガラスにBz
2O(500mg)、DMAP(50mg)、ジクロロメタン(10ml)を加え室温にて1日振盪した。2N-塩酸水/アセトン、水、DMF、クロロホルムの順にガラスを洗浄し、真空乾燥した。このBzキャッピングを同条件で繰り返し、ガラス(23)を得た。
構造確認のため、領域1を玉尾酸化し、MSを測定した。その結果、GlcNの4位がBz化された化合物24を確認した。
化合物24:MALDI-TOF-MS, C
56H
90Cl
3N
5O
17Na+ (M+Na)+の計算値:1232.53, 実測値:1233.5
【0050】
【化5】
【0051】
次に、GlcNの3位水酸基を選択的に脱保護する。特許文献1及び2記載の方法に従いY基の重合度を一つずつ減少させる。3位の1重合のY基を脱離すると共に、6位の2重合のY基を1重合にする。ガラス(23)に、20%TFA/ジクロロメタン(20ml)を加え30分間室温にて振盪した。反応液を除去した後、もう一度同じ反応を繰り返した。ガラスをクロロホルム、DMFの順に洗浄後、DMF(8ml)、PITC(4ml)、NMM(960μl)を加え、室温にて30分間振盪した。ガラスをDMF、クロロホルムの順に洗浄後、20%TFA/ジクロロメタン(20ml)を加え30分間室温にて振盪した。反応液を除去した後、もう一度同じ反応を繰り返した。ガラスをクロロホルム、DMFの順に洗浄後、DMF(8ml)、Boc
2O(800μl)、飽和重曹水(800μl)を加え、室温にて1日振盪した。ガラスをDMF/水、DMF、クロロホルムの順に洗浄し真空乾燥した。その後もう一度Boc化を同様に行い、ガラス(25)を得た。
構造確認のため、領域1のガラスを少々砕きピリジン(1ml)、無水酢酸(500μl)を加え室温にて1時間振盪し、DMF、クロロホルムの順に洗浄した後、玉尾酸化し、MSを測定した。その結果、GlcNの3位がAc化され(選択的に脱保護された3位水酸基にアセチル基が選択的に導入された)、6位が1重合のY基により保護された化合物26を確認した。
化合物26:MALDI-TOF-MS, C
39H
58Cl
3N
3O
14Na+ (M+Na)+の計算値:920.29, 実測値:920.4
【0052】
【化6】
【0053】
選択的に脱保護された3位水酸基に光切断保護基であるNPPOCを導入する。ガラス(25)にピリジン(10ml)、NPPOC-OPNP(324mg)、DMAP(229mg)を加え室温にて1日振盪した。ガラスをアセトン、2N-塩酸水/アセトン、水/アセトン、DMF、クロロホルムの順に洗浄し、真空乾燥した。このNPPOC化はさらに2回同様に行い、合計3回行い、ガラス(27)を得た。
構造確認のため、領域1のガラスを少々砕き玉尾酸化し、MSを測定した。その結果、GlcNの3位がNPPOC化された化合物28を確認した。
化合物28:MALDI-TOF-MS, C
47H
65Cl
3N
4O
17Na+ (M+Na)+の計算値:1085.33, 実測値:1085.3
【0054】
【化7】
【0055】
実施例1C(Galβ1-3GlcN構造を構築する工程)
領域3に選択的にGalβ1-3GlcN構造を構築するために、領域3のみ3位水酸基を脱保護し、他の領域はBz基にてキャッピングする必要がある。
まず、領域1,2,4に対して3位水酸基のBzキャッピングを行う。ガラス(27)をアセトニトリル10ml、水10mlの混合溶媒中に浸し、360nmの光(9.19 mW/cm
2)を領域1,2,4にだけ室温下30分照射した。水、アセトンの順にガラスを洗浄し、真空乾燥することにより、領域1,2,4に存在するGlcNの3位に結合したNPPOC基を脱離したガラスを得た。その後、ガラスにBz
2O(500mg)、DMAP(50mg)、ジクロロメタン(10ml)を加え室温にて1日振盪した。2N-塩酸水/アセトン、水、DMF、クロロホルムの順にガラスを洗浄し、真空乾燥した。このBzキャッピングを同条件で繰り返し、ガラス(29)を得た。
構造確認のため、領域1を玉尾酸化し、MSを測定した。その結果、GlcNの3位がBz化された化合物30を確認した。
化合物30:MALDI-TOF-MS, C
44H
60Cl
3N
3O
14Na+ (M+Na)+の計算値:982.30, 実測値:982.3
【0056】
【化8】
【0057】
次は領域3に選択的に光を当て3位水酸基を脱保護させる。ガラス(29)をアセトニトリル10ml、水10mlの混合溶媒中に浸し、360nmの光(9.19 mW/cm
2)を領域3にだけ室温下30分照射した。水、アセトンの順にガラスを洗浄し、真空乾燥することにより、領域3に存在するGlcNの3位に結合したNPPOC基を脱離したガラス(31)を得た。
領域3のガラスを少々砕き玉尾酸化することにより選択的にNPPOCが脱離された化合物32を確認した。
化合物32:MALDI-TOF-MS, C
37H
56Cl
3N
3O
13Na+ (M+Na)+の計算値:878.28, 実測値:878.4
【0058】
【化9】
【0059】
ガラス(31)の領域3に選択的にガラクトースを導入する。ガラス(31)にガラクトースドナー(20)(232.8mg)、モレキュラーシーブス4A(5g)を加え窒素雰囲気下、無水ジクロロメタン(6ml)を加え-15℃に冷却した。-15℃でTMSOTf(169μl)を加え、2時間振盪した。ガラスをクロロホルム、DMF、クロロホルムの順に洗浄し真空乾燥した。縮合時に切断されたBoc基の再導入のために、ガラスにDMF(10ml)、Boc
2O(1ml)、飽和重曹水(1ml)を加え室温にて6時間振盪した。ガラスをアセトン、2N-塩酸水/アセトン、水/アセトン、DMF、クロロホルムにて洗浄後真空乾燥した。この再Boc化はもう一度同じ条件にて繰り返し、ガラス(33)を得た。
ガラス上の構造確認の為に、ガラス(33)の領域3を少々砕き玉尾酸化の条件にさらし切り出しを行い、MS(MALDI-TOF)を測定し目的物(34)を確認した。
化合物34:MALDI-TOF-MS, C
71H
88Cl
3N
3O
19Na+ (M+Na)+の計算値:1414.50, 実測値:1414.5
【0060】
【化10】
【0061】
次は、未反応の水酸基をBz基にてキャッピングを行う。ガラス(33)にBz
2O(500mg)、DMAP(50mg)、ジクロロメタン(10ml)を加え室温にて1日振盪した。2N-塩酸水/アセトン、水、DMF、クロロホルムの順にガラスを洗浄し、真空乾燥した。このBzキャッピングを同条件で繰り返した。その後、GlcNの6位水酸基を選択的に脱保護する。ガラスに、20%TFA/ジクロロメタン(20ml)を加え30分間室温にて振盪した。反応液を除去した後、もう一度同じ反応を繰り返した。ガラスをクロロホルム、DMFの順に洗浄後、DMF(8ml)、PITC(4ml)、NMM(960μl)を加え、室温にて30分間振盪した。ガラスをDMF、クロロホルムの順に洗浄後、真空乾燥し、6位水酸基が選択的に脱保護されたガラスを得た。その後6位水酸基にNPPOCを導入した。ガラスにジクロロメタン(10ml)、NPPOC-OPNP(324mg)、DMAP(229mg)を加え室温にて1日振盪した。ガラスをアセトン、2N-塩酸水/アセトン、水/アセトン、DMF、クロロホルムの順に洗浄し、真空乾燥した。このNPPOC化はもう一度同様に行い、ガラス(35)を得た。
構造確認のため、領域1のガラスを少々砕き玉尾酸化し、MSを測定した。その結果、GlcNの6位がNPPOC化された化合物36を確認した。
化合物36:MALDI-TOF-MS, C
42H
48Cl
3N
3O
15Na+ (M+Na)+の計算値:962.20, 実測値:962.2
【0062】
【化11】
【0063】
実施例1D(Galβ1-6GlcN構造を構築する工程)
領域4に選択的にGalβ1-6GlcN構造を構築するために、領域4のみ6位水酸基を脱保護し、他の領域はBz基にてキャッピングする必要がある。まず、領域1,2,3に対して6位水酸基のBzキャッピングを行う。ガラス(35)をアセトニトリル10ml、水10mlの混合溶媒中に浸し、360nmの光(9.19 mW/cm
2)を領域1,2,3のみに室温下30分照射した。水、アセトンの順にガラスを洗浄し、真空乾燥することにより、領域1,2,3に存在するGlcNの6位に結合したNPPOC基を脱離したガラスを得た。その後、ガラスにBz
2O(500mg)、DMAP(50mg)、ジクロロメタン(10ml)を加え室温にて1日振盪した。2N-塩酸水/アセトン、水、DMF、クロロホルムの順にガラスを洗浄し、真空乾燥した。このBzキャッピングを同条件で繰り返し、ガラス(37)を得た。
構造確認のため、領域1を玉尾酸化し、MSを測定した。その結果、GlcNの6位がBz化された化合物38を確認した。
化合物38:MALDI-TOF-MS, C
39H
43Cl
3N
2O
12Na+ (M+Na)+の計算値:859.18, 実測値:859.5
【0064】
【化12】
【0065】
次は領域4に選択的に光を当て6位水酸基を脱保護させる。ガラス(37)をアセトニトリル10ml、水10mlの混合溶媒中に浸し、360nmの光(9.19 mW/cm
2)を領域4にのみ室温下30分照射した。水、アセトンの順にガラスを洗浄し、真空乾燥することにより、領域4に存在するGlcNの6位に結合したNPPOC基を脱離したガラス(39)を得た。
領域4のガラスを少々砕き玉尾酸化することにより選択的にNPPOCが脱離された化合物40を確認した。
化合物40:MALDI-TOF-MS, C
32H
39Cl
3N
2O
11Na+ (M+Na)+の計算値:755.15, 実測値:756.3
【0066】
【化13】
【0067】
ガラス(39)の領域4に選択的にガラクトースを導入する。ガラス(39)にガラクトースドナー(20)(232.8mg)、モレキュラーシーブス4A(5g)を加え窒素雰囲気下、無水ジクロロメタン(6ml)を加え-15℃に冷却した。-15℃でTMSOTf(169μl)を加え、2時間振盪した。ガラスをクロロホルム、DMF、クロロホルムの順に洗浄し真空乾燥し、各領域を作り分けたガラス(41)を得た。
【0068】
各領域のガラスを少々砕き玉尾酸化することによりそれぞれ選択的に目的の構造が合成できていることを確認した。領域1から化合物42(目的の単糖)、領域2から化合物43(目的の2糖(Galβ1-4GlcN))、領域3から化合物44(目的の2糖(Galβ1-3GlcN))、領域4から化合物45(目的の2糖(Galβ1-6GlcN))を得た。
化合物42:MALDI-TOF-MS, C
39H
43Cl
3N
2O
12Na+ (M+Na)+の計算値:859.18, 実測値:859.7
化合物43:MALDI-TOF-MS, C
66H
71Cl
3N
2O
17Na+ (M+Na)+の計算値:1291.37, 実測値:1292.5
化合物44:MALDI-TOF-MS, C
66H
71Cl
3N
2O
17Na+ (M+Na)+の計算値:1291.37, 実測値:1291.7
化合物45:MALDI-TOF-MS, C
66H
71Cl
3N
2O
17Na+ (M+Na)+の計算値:1291.37, 実測値:1291.8
【0069】
【化14】
【0070】
以上の結果より、本発明の手法を用いると構造の異なる糖鎖をビルドアップ的に基板上に合成できることがわかる。
すべての工程をMSにより追跡できた事、及び特許文献1及び2記載の方法により、Y基を用いた重合度の減少による水酸基の連続的脱保護は、選択的に進行することが証明されている事から、目的の領域に目的の化合物が合成できていることは確かであるが、念のため標品を用いたHPLCの保持時間の比較を行った。
領域2,3,4を玉尾酸化することにより得られる3種類の2糖、化合物(43)(Galβ1-4GlcN)、化合物(44)(Galβ1-3GlcN)、化合物(45)(Galβ1-6GlcN)に対して、メタノール中、NaOMeを作用してそれぞれ化合物(46)、(47)、(48)を得た。別途用意したこれら3種と同じ構造の化合物標品と、HPLCの保持時間を比較した。C-18HPLCカラムを用い、1ml/minの流速で流し、215nmでのUV吸収を検出した。最初アセトニトリル:水=30:70で10分流し、10分後直ちに40:60に変更した。その後50分かけて50:50に変わるようグラジェントをかけた。標品の保持時間は化合物(46)、(47)、(48)それぞれ46.232分、45.572分、40.230分であるのに対し、各領域から得られた2糖由来のピークはそれぞれ45.700分、45.023分、39.510分であり、正確に各結合が合成できていることが証明された。
【0071】
【化15】
【0072】
実施例2(レクチンによりガラス表面糖鎖が認識されることの確認)
ビルドアップ的に合成した糖鎖がレクチンにより認識されることを以下のようにして証明した。
リンカーを導入したガラス(49)に対し、実施例1に記載した方法に従いNPPOCを導入し、その後未反応のOH基をBzでキャッピングを行いガラス(50)を得た。そこに、星形に光を当てることにより星形にNPPOCが脱離し、星形に水酸基が脱保護されたガラス(51)を得た。
そこにガラクトースドナー(52)を縮合した。ガラス(51)(50mg)にガラクトースドナー(52)(10mg)、NIS(10mg)を加え窒素雰囲気下、無水ジクロロメタンを加え-30℃に冷却した。そこにTfOH(4μl)を加え、-30℃で1日振盪した。ガラスを飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液/アセトン、水、メタノール、DMF、クロロホルムの順に洗浄し、真空乾燥することによりガラス(53)を得た。すべての保護基を脱保護するために、ガラス(53)にメタノール(1ml)を加え、NaOMeをpH11になるまで加えた後、室温にて1日振盪した。ガラスを水、2N−塩酸水、水、DMF、クロロホルムの順に洗浄し真空乾燥することによりガラス(54)を得た。
【0073】
ガラス(54)を1%PBSに浸し15分振盪した。溶液を除去した後、1%BSA入り1%PBS溶液(1%BSA/PBS)に浸し6℃にて12時間振盪した。溶液を除去した後、ビオチン化されたRCA120レクチン(50μl、10μg/ml)でガラスを覆い4時間室温にて軽く振盪した。溶液を除去した後、1%PBS溶液を加え軽く5分間振盪、その後溶液を除去するという洗いの操作を3回繰り返した。
溶液を除去したガラスにアビジン化されたAlexaFluor488(登録商標)(0.1mg)/(1%BSA/PBS(800μl))で覆い2時間室温にて軽く振盪した。溶液を除去した後上記洗いの操作を3回繰り返した。ガラスの蛍光を蛍光スキャナーで観察した。532nmレーザーを用い励起させ、蛍光フィルターとして526nmのバンドパスフィルターを用いて観察した結果、
図17のように星形に光った。つまり、星形に光を当てて光切断保護基を脱離した所にガラクトースが導入され、その導入されたガラクトースをレクチンが認識したためである。これによりビルドアップ的にガラス上で合成した糖鎖をレクチンが認識可能であることが証明できた。
【0074】
【化16】
【0075】
実施例3(光切断保護基としてW(Z)基を使用した例)
実施例1では光切断保護基としてW基を直接水酸基に結合させていたが、この実施例では光切断保護基としてW(Z)基でも可能であることを示す。
リンカーを導入したガラス(55)(5.59g、水酸基のローディング = 0.01652 mmol/g)に光切断保護基を持たないグルコサミン誘導体ドナー(56)(509mg)、モレキュラーシーブス4A(5g)、NIS(249g)を入れ窒素雰囲気下、無水ジクロロメタン(5ml)を入れ、−30℃に冷却した。−30℃にてTfOH(98μl)を入れそのまま1日振盪した。ガラスをDMF、チオ硫酸ナトリウム水溶液/アセトン、水、DMFの順で洗浄した。このガラスにDMF(12ml)、Boc
2O(1ml)、飽和重曹水(1ml)を加え室温にて12時間振盪した。ガラスをDMF/水、DMF、クロロホルムの順で洗浄し真空乾燥し、ガラス(57)を得た。
ガラスに結合した化合物の構造確認の為に、ガラス(57)を少々砕き玉尾酸化の条件にさらし切り出しを行い、MS(MALDI-TOF)を測定し目的物(58)を確認した。目的通りグルコサミン誘導体がガラス上に導入された。
化合物58:MALDI-TOF-MS, C
71H
109Cl
3N
6O
19Na+ (M+Na)+の計算値:1477.67, 実測値:1478.0
【0076】
【化17】
【0077】
ガラス(57)の未反応の水酸基をBz基にてキャッピングを行った。ガラス(57)にBzOH(750mg)、DIC(900μl)、DMAP(12mg)、ジクロロメタン(12ml)を加え6℃にて12時間振盪した。クロロホルム、水/アセトン、DMF、クロロホルムの順に洗浄し真空乾燥した。次は、6位水酸基を選択的に脱保護するためにY基の重合度を1つずつ減少させる。この操作により6位水酸基が選択的に脱保護されると共に、3位水酸基の2つのY基が1つだけ脱離する。Bzキャッピングしたガラスに、20%TFA/ジクロロメタン(20ml)を加え30分間室温にて振盪した。反応液を除去した後、もう一度同じ反応を繰り返した。ガラスをクロロホルム、DMFの順に洗浄後、DMF(8ml)、PITC(4ml)、NMM(960μl)を加え、室温にて30分間振盪した。ガラスをDMF、クロロホルムの順に洗浄後、20%TFA/ジクロロメタン(20ml)を加え30分間室温にて振盪した。反応液を除去した後、もう一度同じ反応を繰り返した。ガラスをクロロホルム、DMFの順に洗浄後、DMF(8ml)、Boc
2O(800μl)、飽和重曹水(800μl)を加え、室温にて12時間振盪した。ガラスをDMF/水、DMF、クロロホルムの順に洗浄し真空乾燥し、ガラス(59)を得た。
構造確認のため、ガラスを少々砕きピリジン(1ml)、無水酢酸(500μl)を加え室温にて3時間振盪し、DMF、クロロホルムの順に洗浄した後、玉尾酸化し、MSを測定した。その結果、GlcNの6位がAc化され(選択的に脱保護された6位水酸基にアセチル基が選択的に導入された)、3位が1重合のY基により保護された化合物60を確認した。
化合物60:MALDI-TOF-MS, C
54H
77Cl
3N
4O
16Na+ (M+Na)+の計算値:1165.43, 実測値:1166.3
【0078】
【化18】
【0079】
ガラス(59)((i)1.160g、(ii)1.174g)にそれぞれ(i)NPPOC-UCHP(54mg)、(ii)NPPOC-Gly(66mg)を加えジクロロメタン((i)1.5ml、(ii)1.5ml)を加えた。そこにDIC((i)48μl、(ii)72μl)を加え6℃に冷却した後、DMAP((i)5mg、(ii)7mg)を加え、6℃で12時間振盪した。それぞれのガラスをクロロホルム、水/アセトン、DMF、クロロホルムの順に洗い、真空乾燥しガラス(61、62)を得た。構造確認のため、ガラスをそれぞれ少々砕きピリジン(1ml)、無水酢酸(500μl)を加え室温にて2時間振盪し、DMF、クロロホルムの順に洗浄した後、玉尾酸化し、MSを測定した。その結果、GlcNの6位にNPPOC-UCHP及びNPPOC-Glyがそれぞれ導入された化合物63,64を確認した。
化合物63:MALDI-TOF-MS, C
69H
97Cl
3N
6O
20Na+ (M+Na)+の計算値:1457.57, 実測値:1457.6
化合物64:MALDI-TOF-MS, C
64H
87Cl
3N
6O
20Na+ (M+Na)+の計算値:1387.49, 実測値:1388.0
【0080】
【化19】
【0081】
ガラス(61)及び(62)それぞれに光を当て6位水酸基の選択的脱保護を検討した。
それぞれのガラスをTHF/水(10ml/10ml)に浸し、PITC(120μl)を加えしばらく振盪した後、360nm(8.6 mW/cm
2)の光を室温にて30分間照射した。その後、水、アセトン、DMFの順にガラスを洗浄し、DMF(1.5ml)、PITC(500μl)、NMM(120μl)を加え室温にて30分間振盪した。ガラスをDMF、アセトン、DMF、クロロホルムの順に洗浄し真空乾燥することによりガラス(65)とガラス(66)をそれぞれ得た。
ガラス上の構造確認の為に、それぞれのガラスを少々砕き、構造確認を行った。ガラス(65、66)はそれぞれ玉尾酸化し、MSを測定した。その結果両方から同じ目的物(67、68)をそれぞれ確認した。ガラス(65)においては、念のため、遮光した部分のガラスを玉尾酸化の条件にさらし切り出しを行い、MS(MALDI-TOF)を測定した所、未反応体である化合物(63)を確認した。
化合物67:MALDI-TOF-MS, C
52H
75Cl
3N
4O
15Na+ (M+Na)+の計算値:1123.42, 実測値:1123.4
化合物68:MALDI-TOF-MS, C
52H
75Cl
3N
4O
15Na+ (M+Na)+の計算値:1123.42, 実測値:1123.7
化合物63:MALDI-TOF-MS, C
69H
97Cl
3N
6O
20Na+ (M+Na)+の計算値:1457.57, 実測値:1458.0
【0082】
【化20】
【0083】
以上の結果より、W(Z)基でも光により選択的に切断可能であり、本発明に使用可能であることがわかる。
【0084】
実施例4
光切断保護基W基の種類を検討した。
水酸基に対して光切断保護基として、Aqmoc基、NPPOC基、MNPPOC基を導入し、光により切断されるか検討した。3,4位水酸基が脱保護されたGal(69)に対してそれぞれの光切断保護基を導入し化合物70,71,72を得た。これらに各種溶媒中太陽光を照射して反応をTLCで追跡した。結果、いずれにおいてもTHF/水=1/1の溶液中で反応させると定量的に脱保護でき、化合物73を与える事が判明し、このような光切断保護基が本発明に使用可能である事がわかる。
ここで、compound:化合物、solvent:溶媒、product:生成物、by-product:副生成物、no solvent:溶媒なし、50% aq THF:50%THF水溶液、CH
2Cl
2:ジクロロメタン、2% DBU in CH
2Cl
2:2%DBU含有ジクロロメタン、2% DIPEA in CH
2Cl
2:2%DIPEA含有ジクロロメタン、CH
3CN:アセトニトリル、1,4-dioxane:1,4−ジオキサン、50% aq MeOH:50%メタノール水溶液を示す。
【0085】
【化21】
【0086】
実施例5
分岐を有する4糖を合成した例
リンカーが結合したガラス(74)3.75g(ローディング0.0347mmol/g)に、ガラクトースドナー(75)(413mg)、NIS(263.7mg)、モレキュラーシーブス4A(2g)、脱水ジクロロメタン(6ml)を加え、−30℃に冷却した。−30℃にてTfOH(103.7μl)を加え、そのまま−30℃で3時間振盪した。DMF、チオ硫酸ナトリウム水溶液/アセトン、水、DMFで洗浄後、DMF(10ml)、Boc
2O(1ml)、飽和重曹水(1ml)を加え室温にて6時間振盪した。水/DMF、DMFで洗浄後、もう一度同じようにBoc化を行った。構造確認のため、ガラスを少々砕き玉尾酸化し、MSを測定した。その結果、目的の化合物77を確認した。
化合物77:MALDI-TOF-MS, C
63H
81N
3O
16Na+ (M+Na)+の計算値:1158.55, 実測値:1158.9
【0087】
【化22】
【0088】
未反応の水酸基をベンゾイルキャッピングする為に、ガラス(76)にBzOH(500mg)、DIC(600μl)、ジクロロメタン(10ml)を加えた後、6℃にてDMAP(8mg)を加え、そのまま6℃で12時間振盪した。ガラスを水/アセトン、DMF、クロロホルムにて洗浄後、真空乾燥した。乾燥したガラスに、20%ピペリジン/DMF(10ml)を加え室温にて30分間振盪した。DMFで洗浄後、DMF(7.5ml)、PITC(2.5ml)、NMM(600μl)を加え室温にて30分間振盪した。ガラスをDMF、アセトン、アセトン/水、DMF、クロロホルムの順に洗浄し、真空乾燥した。乾燥したガラスに、ピリジン(10ml)、NPPOC-OPNP(225mg)、DMAP(32mg)を加え室温にて1日振盪した。2N-塩酸水/アセトン、水/アセトン、DMF、クロロホルムの順に洗浄し、真空乾燥した。乾燥したガラスにもう一度同じようにNPPOC化を行った。構造確認の為にガラスを少々砕き玉尾酸化を行い、3位水酸基にNPPOCが導入された化合物79を確認した。
化合物79:MALDI-TOF-MS, C
51H
67N
3O
17Na+ (M+Na)+の計算値:1016.44, 実測値:1016.6
【0089】
【化23】
【0090】
ガラス(78)に十字の傷を付け、下記のように4つの領域に分割した。それぞれ、領域1,領域2,領域3,領域4と呼ぶ。領域1はGal(ガラクトース)単糖、領域2はGalβ1-3Gal2糖、領域3はGlcNβ1-4Gal2糖、領域4はGalβ1-4Glcβ1-4(Galβ1-3)Gal4糖(分岐あり)を作り分ける。
【0091】
【化24】
【0092】
ガラス(78)の領域1および3を露光する。ガラス(78)をTHF/水(10ml/10ml)に浸し、領域1および3に360 nmのUV光(9.19 mW/cm
2)を30分間照射した。得られたガラスは水、アセトンの順に洗浄後真空乾燥しガラス(80)を得た。構造確認の為、領域1のガラスを少々砕き玉尾酸化し、3位NPPOCが選択的に除去された化合物81を確認した。
化合物81:MALDI-TOF-MS, C
41H
58N
2O
13Na+ (M+Na)+の計算値:809.38, 実測値:810.0
【0093】
【化25】
【0094】
ガラス(80)にBz
2O(600mg)、DMAP(400mg)、ジクロロメタン(10ml)を加え室温で12時間振盪した。アセトン、2N-塩酸水/アセトン、水/アセトン、DMF、クロロホルムの順に洗浄し、真空乾燥した。このBz化はもう一度同じように繰り返した。Bz化を行ったガラスをTHF/水(10ml/10ml)に浸し、領域2および4に360 nmのUV光(9.19 mW/cm
2)を30分間照射した。得られたガラスは水、アセトンの順に洗浄後真空乾燥しガラス(82)を得た。構造確認の為、領域1および領域2のガラスを少々砕き玉尾酸化し、領域1から化合物83、領域2から化合物84を確認した。
化合物83:MALDI-TOF-MS, C
48H
62N
2O
14Na+ (M+Na)+の計算値:913.41, 実測値:913.3
化合物84:MALDI-TOF-MS, C
41H
58N
2O
13Na+ (M+Na)+の計算値:809.38, 実測値:809.3
【0095】
【化26】
【0096】
ガラス(82)の領域2および4のガラクトースの3位水酸基に2糖目のガラクトースを導入する。ガラス(82)にガラクトースドナー(85)(389mg)、モレキュラーシーブス4A(5g)、脱水ジクロロメタン(6ml)を加え−15℃に冷却した。そこに、TMSOTf(283μl)を加え、−15℃で2時間振盪した。ガラスをクロロホルム、DMF、DMF/飽和重曹水の順に洗浄した。得られたガラスに、DMF(10ml)、Boc
2O(1ml)、飽和重曹水(1ml)加え、室温にて6時間振盪した。DMF/水、DMF、クロロホルムの順に洗浄した後、もう一度同じようにBoc化の反応を行った。得られたガラスにBz
2O(600mg)、DMAP(400mg)、ジクロロメタン(10ml)を加え室温で12時間振盪した。アセトン、2N-塩酸水/アセトン、水/アセトン、DMF、クロロホルムの順に洗浄し、真空乾燥した。このBz化はもう一度同じように繰り返し、ガラス(86)を得た。構造確認の為、領域2のガラスを少々砕き玉尾酸化し、2糖化合物87を確認した。
化合物87:MALDI-TOF-MS, C
75H
90N
2O
19Na+ (M+Na)+の計算値:1345.60, 実測値:1345.7
【0097】
【化27】
【0098】
ガラス(86)にジクロロメタン(16ml)、TFA(4ml)を加え、室温にて30分間振盪した。反応液を除去した後、もう一度同じ反応を繰り返した。クロロホルム、DMFの順にガラスを洗浄後、DMF(8ml)、PITC(4ml)、NMM(960μl)加え、室温にて30分間振盪した。ガラスをDMF、クロロホルムの順に洗浄し、真空乾燥する事により4位水酸基を脱保護したガラス(88)を得た。構造確認の為、領域1と2のガラスを少々砕きそれぞれ玉尾酸化し、領域1から化合物89を、領域2から化合物90を確認した。
化合物89:MALDI-TOF-MS, C
36H
41NO
11Na+ (M+Na)+の計算値:686.26, 実測値:686.2
化合物90:MALDI-TOF-MS, C
63H
69NO
16Na+ (M+Na)+の計算値:1118.45, 実測値:1118.3
【0099】
【化28】
【0100】
ガラス(88)にジクロロメタン(10ml)、NPPOC-OPNP(271mg)、DMAP(191mg)を加え室温にて12時間振盪した。反応液を除去し、アセトン、2N-塩酸水/アセトン、水/アセトン、DMF、クロロホルムの順にガラスを洗浄後、真空乾燥した。得られたガラスにもう一度同じ操作を繰り返し行い、4位水酸基にNPPOC基が導入されたガラス(91)を得た。構造確認の為、領域1のガラスを少々砕き玉尾酸化し、目的の化合物92を確認した。
化合物92:MALDI-TOF-MS, C
46H
50N
2O
15Na+ (M+Na)+の計算値:893.31, 実測値:893.3
【0101】
【化29】
【0102】
ガラス(91)の領域1および2を露光する。ガラス(91)をTHF/水(10ml/10ml)に浸し、領域1および2に360 nmのUV光(9.19 mW/cm
2)を30分間照射した。水、アセトンの順に洗浄後真空乾燥した。得られたガラスに、Bz
2O(600mg)、DMAP(400mg)、ジクロロメタン(10ml)を加え室温で12時間振盪した。アセトン、2N-塩酸水/アセトン、水/アセトン、DMF、クロロホルムの順に洗浄し、真空乾燥した。このBz化はもう一度同じように繰り返しガラス(93)を得た。構造確認の為、領域1および領域2のガラスを少々砕き玉尾酸化し、領域1から化合物94、領域2から化合物95を確認した。
化合物94:MALDI-TOF-MS, C
43H
45NO
12Na+ (M+Na)+の計算値:790.28, 実測値:790.3
化合物95:MALDI-TOF-MS, C
70H
73NO
17Na+ (M+Na)+の計算値:1222.48, 実測値:1222.5
【0103】
【化30】
【0104】
ガラス(93)の領域3を露光する。ガラス(93)をTHF/水(10ml/10ml)に浸し、領域3に360 nmのUV光(9.19 mW/cm
2)を30分間照射した。水、アセトンの順に洗浄後真空乾燥し、ガラス(96)を得た。構造確認の為、領域3のガラスを少々砕き玉尾酸化し、化合物97を確認した。
化合物97:MALDI-TOF-MS, C
36H
41NO
11Na+ (M+Na)+の計算値:686.26, 実測値:687.0
【0105】
【化31】
【0106】
ガラス(96)の領域3のガラクトースの4位水酸基に、2糖目としてグルコサミンを導入する。ガラス(96)にグルコサミンドナー(98)(198mg)、NIS(176mg)、モレキュラーシーブス4A(2g)、脱水ジクロロメタン(8ml)を加え−30℃に冷却した。そこに、TfOH(69μl)を加え、−30℃で3時間振盪した。ガラスをクロロホルム、DMF、チオ硫酸ナトリウム水溶液/アセトン、水、DMF、クロロホルムの順に洗浄後、真空乾燥しガラス(99)を得た。構造確認の為、領域3のガラスを少々砕き玉尾酸化し、2糖化合物100を確認した。
化合物100:MALDI-TOF-MS, C
66H
65Cl
3N
2O
20Na+ (M+Na)+の計算値:1333.31, 実測値:1334.0
【0107】
【化32】
【0108】
ガラス(99)にBz
2O(600mg)、DMAP(400mg)、ジクロロメタン(10ml)を加え室温で12時間振盪した。アセトン、2N-塩酸水/アセトン、水/アセトン、DMF、クロロホルムの順に洗浄し、真空乾燥した。このBz化はもう一度同じように繰り返した。得られたガラスをTHF/水(10ml/10ml)に浸し、領域4に360 nmのUV光(9.19 mW/cm
2)を30分間照射した。水、アセトンの順に洗浄後真空乾燥し、ガラス(101)を得た。構造確認の為、領域4のガラスを少々砕き玉尾酸化し、化合物102を確認した。
化合物102:MALDI-TOF-MS, C
63H
69NO
16Na+ (M+Na)+の計算値:1118.45, 実測値:1118.7
【0109】
【化33】
【0110】
ガラス(101)の領域4の1糖目のガラクトース4位水酸基に、ラクトースを導入する。ガラス(101)にラクトースドナー(103)(303mg)、NIS(176mg)、モレキュラーシーブス4A(5g)、脱水ジクロロメタン(6ml)を加え−30℃に冷却した。そこに、TfOH(69μl)を加え、−30℃で3時間振盪した。ガラスをクロロホルム、DMF、チオ硫酸ナトリウム水溶液/アセトン、水、DMF、クロロホルムの順に洗浄後、真空乾燥しガラス(104)を得た。構造確認の為、領域4のガラスを少々砕き玉尾酸化し、4糖化合物105を確認した。
化合物105:MALDI-TOF-MS, C
124H
117NO
33Na+ (M+Na)+の計算値:2170.74, 実測値:2172.4
【0111】
【化34】
【0112】
以上の結果より、領域1にはガラクトース単糖(化合物94)、領域2にはGalβ1-3Gal(化合物95)、領域3にはGlcNβ1-4Gal(化合物100)、領域4にはGalβ1-4Glcβ1-4(Galβ1-3)Gal(化合物105)が選択的に合成できることがわかる。 ここで、領域4においては、基板上の3位水酸基に対してガラクトースドナー(85)を導入し、まず、Galβ1-3Gal2糖を得、その後この2糖をアクセプターとして使用し、これに、ラクトースドナー(103)を導入して4糖を合成している。
つまり、第1のアクセプターに第1のドナーを縮合させて第1の生成物を得、これを第2のアクセプターとし、これに第2のドナーを縮合させて第2の生成物を得る、という工程を順次必要な回数実施することにより、一枚の基板上で分岐構造及び/又は直鎖構造を有するコンビナトリアルライブラリーを効率よく合成することができる。
【0113】
実施例6
実施例1においてガラスの代わりに、板状PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂の表面に真空紫外光(VUV)を照射した後、APTES(3-アミノプロピルトリエトキシシラン)処理により表面にアミノ基を導入した樹脂基板を用いても、同様に基板上での糖鎖の作り分けが可能であった。
【0114】
実施例7
実施例1のグルコサミンドナー(15)において、3位水酸基の保護基を、Bocで保護された1重合のY基(-[(CH
3CH
2)
2CH]N-CH
2-CO-)に代えて、Bu
4NFで選択的に脱保護可能なTBDMS基(tert-butyldimethylsilyl group: ターシャリー−ブチルジメチルシリル基)にし、6位水酸基の保護基をBocで保護された2重合のY基(-[(CH
3CH
2)
2CH]N-CH
2-CO-)に代えて、DDQで選択的に脱保護可能なPMB基(p-methoxybenzyl group: パラメトキシベンジル基)にしたドナーを用いても同様に基板上での糖鎖の作り分けが可能であった。