【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明の効果を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0027】
参考例、実施例、比較例において、反応は常圧固定床流通式反応装置を用いた。反応管には内径17mmのガラス管を用い、加熱は長さ約300mmの電気管状炉を用いて加熱した。反応器内部には触媒を保持する石英ウールを設置し石英ウール上に触媒を所定量設置した(触媒層)。原料の1,2−プロパンジオール(プロピレングリコール)は市販の試薬(和光純薬製特級グレード)をそのまま希釈せずに用いた。原料の供給はマイクロフィーダーを用いて所定の供給速度で反応装置上部の壁面に供給した。キャリアガスも反応器の上部より供給され、反応器上部から下部へのダウンフローとなる。原料は反応管内壁を伝って管の下部へと落ちていく間に電気炉によって加熱蒸発され、触媒層へと導かれる。気化した原料もキャリアガスと同様にダウンフローで反応管上部から下部へと流れる。
触媒層を通過した反応ガスは反応管下部から反応装置をでて、アセトンドライアイスにて冷却されたトラップへと導かれる。反応生成物はここで冷却、凝縮され一部オフガスはトラップで凝縮せずに系外へと導かれる。
アセトンドライアイストラップにて凝縮した反応生成物はガスクロマトグラフィー(島津製作所製GC−8A FID検出器、カラム:DB−WAXワイドボア0.53mm膜厚1μm 30m、キャリアガス:ヘリウム)にて分析、定量された。
検量線補正後、原料のプロピレングリコールの残量、生成物のプロパナールの収量を決定し、この値から転化率(モル%)及び選択率(モル%)を求めた。転化率(モル%)及び選択率(モル%)は、以下の式に基づき、求められる。
【0028】
転化率(モル%)=[(原料の量(モル)−原料の残量(モル))/原料の量(モル)]×100
選択率(モル%)=[目的物の収量(モル)/(原料の量(モル)−原料の残量(モル))]×100
【0029】
<参考例1>
(触媒の調製)
シリカ(富士シリシア化学製、キャリアクトQ10)に公知の含浸法にて、30重量%のヘテロポリ酸(ケイタングステン酸、和光純薬製 特級試薬)を担持し、シリカ担持ケイタングステン酸を調製した。これらの触媒におけるケイタングステン酸の担持量は30重量%であった。
【0030】
(ヘテロポリ酸触媒を用いたプロパナールの製造)
上記調製した触媒0.5gを固定床常圧気相流通反応装置内に設置した。その後、水素気流中250℃に触媒層を加熱し、1時間前処理を施した。前処理後、固定床常圧気相流
通反応装置の上部からキャリアガスとして水素を90ml/minの流速で流し、水を含まない1,2−プロパンジオールを1.92ml/hにて水素と共に供給して気化させて触媒層へ供給し反応を行った。なお、トラップの冷却は、氷水とした。1,2−プロパンジオール転化率、プロパナール選択率及びDXL選択率を表1に示す。
【0031】
【表1】
12PD:1,2−プロパンジオール、PA:プロパナール、DXL:2−エチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン
【0032】
ヘテロポリ酸を触媒とすると、1,2−プロパンジオール転化率、プロパナール選択率が、時間の経過に従い、大きく減少した。結果を
図5に示す。
【0033】
<比較例1>
(触媒の調製)
シリカアルミナ(N632HN、日揮化学製)を触媒として用いた。
【0034】
(シリカアルミナ触媒を用いたプロパナールの製造)
上記調製した触媒0.3gを固定床常圧気相流通反応装置内に設置した。その後、水素気流中300℃に触媒層を加熱し、1時間前処理を施した。前処理後、固定床常圧気相流通反応装置の上部からキャリアガスとして水素を90ml/minの流速で流し、水を含まない1,2−プロパンジオールを3.65ml/hにて水素と共に供給して気化させて触媒層へ供給し反応を行った。1,2−プロパンジオール転化率、プロパナール選択率及びDXL選択率を表2に示す。
【0035】
<実施例1>
(触媒の調製)
シリカアルミナ(N632HN、日揮化学製)を担体として用いて、含浸法により銅を担持し、銅担持シリカアルミナを調製した。
すなわち、N632HNに分解後のCuOが2wt.%となるようにCu(NO
3)
2を含浸した後、100℃で一晩乾燥させ、500℃で2時間焼成し、2wt.%でCuOを担持したN632HNを得た。以下、表記は「N632HN−CuO−2」(担体名−金属−担持量(wt.%))とする。
【0036】
(銅担持シリカアルミナ触媒を用いたプロパナールの製造)
上記調製した触媒0.3gを固定床常圧気相流通反応装置内に設置した。その後、水素気流中300℃に触媒層を加熱し、1時間前処理を施した。前処理後、固定床常圧気相流通反応装置の上部からキャリアガスとして水素を90ml/minの流速で流し、水を含まない1,2−プロパンジオールを3.65ml/hにて水素と共に供給して気化させて触媒層へ供給し反応を行った。1,2−プロパンジオール転化率、プロパナール選択率及
びDXL選択率を表2に示す。
【0037】
【表2】
12PD:1,2−プロパンジオール、PA:プロパナール、DXL:2−エチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン、−:データなし
【0038】
比較例1の水素共存下シリカアルミナ触媒では、1,2−プロパンジオール転化率、プロパナール選択率が、時間の経過に従い、減少した。
これに対し、実施例1の水素共存下銅担持シリカアルミナ触媒では、1,2−プロパンジオール転化率の低下が抑制された。すなわち、活性の低下が抑制されていることがわかる。また、プロパナール選択率の低下も抑制された。結果を
図1に示す。なお、工業的には、数%程度の触媒活性の低下でも、効率(触媒の寿命及び収率等)への影響が非常に大きいため、活性の劣化を抑制することは大変有用である。
【0039】
<実施例2>
(銀担持シリカアルミナ触媒を用いたプロパナールの製造)
シリカアルミナ(N632HN、日揮化学製)に担持させる金属を銀とした以外は実施例1に準じて反応を行った。すなわち、N632HNに分解後のAg
2Oが2wt.%となるようにAgNO
3を含浸し、N632HN−Ag
2O−2」を調製し、触媒として用いた。1,2−プロパンジオール転化率、プロパナール選択率及びDXL選択率を表3に示す。
【0040】
【表3】
12PD:1,2−プロパンジオール、PA:プロパナール、DXL:2−エチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン
【0041】
水素共存下銀担持シリカアルミナ触媒では、1,2−プロパンジオール転化率の低下が抑制された。すなわち、銅担持触媒と同様に、活性の低下が抑制されていることがわかる。また、副生成物の生成が抑制され、プロパナール選択率が向上した。結果を
図2に示す。
【0042】
<実施例3>
(触媒の調製)
アルミナ(DC2282、ダイヤキャタリスト製)を担体として用いて、含浸法により銅を担持し、銅担持アルミナを調製した。
すなわち、DC2282に分解後のCuOが2wt.%となるようにCu(NO
3)
2を含浸した後、100℃で一晩乾燥させ、500℃で2時間焼成し、2wt.%でCuOを担持したDC2282を得た。以下、表記は「DC2282−CuO−2」(担体名−金属−担持量(wt.%))とする。
【0043】
(銅担持アルミナ触媒を用いたプロパナールの製造)
上記調製した触媒0.5gを固定床常圧気相流通反応装置内に設置した。その後、水素気流中350℃に触媒層を加熱し、1時間前処理を施した。前処理後、固定床常圧気相流通反応装置の上部からキャリアガスとして水素を90ml/minの流速で流し、水を含まない1,2−プロパンジオールを1.92ml/hにて水素と共に供給して気化させて触媒層へ供給し反応を行った。プロパナール選択率、DXL選択率及びその他の化合物の選択率を表4に示す。
【0044】
<比較例2>
(アルミナ触媒を用いたプロパナールの製造)
アルミナ(DC2282、ダイヤキャタリスト製)を触媒とした以外は実施例3に準じて反応を行った。プロパナール選択率、DXL選択率及びその他の化合物の選択率を表4に示す。
【0045】
【表4】
12PD:1,2−プロパンジオール、PA:プロパナール、DXL:2−エチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン
【0046】
水素共存下アルミナ触媒では、初期活性は大きいものの反応時間の経過と共に触媒の失活が顕著であった。
水素共存下銅担持アルミナ触媒では、1,2−プロパンジオール転化率は、いずれの反応時間においても99.5%以上であった。すなわち、触媒活性が低下しないことがわかる。また、プロパナール選択率も低下するのではなく、経時的に向上した。結果を
図3に示す。
また、従来技術のヘテロポリ酸触媒では、プロパナール選択率を向上させるために、原料を水で希釈する必要があったが、本発明の触媒では、原料を水で希釈しなくても、高い選択性が得られることがわかる。
【0047】
<実施例4>
(温度の影響)
反応温度を400℃とした以外は実施例3に準じて反応を行った。350℃と400℃
におけるプロパナール選択率、DXL選択率及びその他の化合物の選択率を表5に示す。
【0048】
【表5】
PA:プロパナール、DXL:2−エチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン
【0049】
反応温度が400℃でも、1,2−プロパンジオール転化率は、いずれの反応時間においても99.5%以上であった。すなわち、触媒活性が低下せず、プロパナール選択率も、経時的に向上した。結果を
図3に示す。
【0050】
<比較例3>
(水素共存の影響)
キャリアガスとして、窒素を30ml/minとした以外は実施例3に準じて反応を行った。プロパナール選択率、DXL選択率及びその他の化合物の選択率を表6に示す。
【0051】
【表6】
PA:プロパナール、DXL:2−エチル−4−メチル−1,3−ジオキソラン
【0052】
1,2−プロパンジオール転化率は、いずれの反応時間においても99.5%以上であった。水素共存下に比べ、プロパナール選択率が低いことがわかる。結果を
図4に示す。