【実施例】
【0042】
以下、本発明の実施例及び比較例を示し、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
<酸化珪素負極活物質の調製>
シリコン系負極活物質として、以下のように酸化珪素負極活物質を準備した。平均粒子径が5μm、BET比表面積が3.5m
2/gの珪素酸化物SiO
x(x=1.01)100gをバッチ式加熱炉内に仕込んだ。油回転式真空ポンプで炉内を減圧しつつ炉内を1,100℃に昇温し、1,100℃に達した後にCH
4ガスを0.3NL/min流入し、5時間のカーボン被覆処理を行った。なお、この時の減圧度は800Paであった。処理後は降温し、97.5gのSiO
2中にSiが分散した粒子をカーボン被覆した黒色粒子を得た。得られた黒色粒子は、平均粒子径5.2μm、BET比表面積が6.5m
2/gで、黒色粒子に対するカーボン被覆量5.1質量%の導電性粒子であった。
【0043】
<電解液調製>
非水電解質として、LiPF
6をエチレンカーボネート:ジエチルカーボネート=1:1(体積比)の混合溶液に1.0mol/Lとなるよう溶解させた溶液を調製し、充放電試験に用いる電解液とした。なお、電解液を調製する作業は、大気中の水分が電解液内に拡散するのを防ぐためアルゴンガスを充填したグローブボックス内で行った。
【0044】
<電極作製>
まず、重量平均分子量が1,000,000のポリアクリル酸(和光純薬工業株式会社)12.0gに対して、イオン交換水を加え、100.0gの12.0%ポリアクリル酸水溶液を調製した。
【0045】
次いで増粘剤として、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC−Na)(株式会社ダイセル製 CMC−Na#2200)3.0gに対して、イオン交換水を加え、100.0gの3.0%CMC−Na水溶液を調製した。
【0046】
上記のように作製した酸化珪素負極活物質5.0質量部と、黒鉛系負極活物質としての球状造粒黒鉛(粒子径D50=10μm 日本黒鉛工業株式会社 CGB−10)95.0質量部に対して、SBRエマルション(JSR株式会社 TRD−102A)を1.5質量部(固形分換算)と、上記のように調製したCMC−Na水溶液を1.5質量部(固形分換算)加えた後、イオン交換水を加えて混合することにより、ペーストを作製した。
【0047】
上記のように調製した重量平均分子量1,000,000のポリアクリル酸水溶液を1.5質量部(固形分換算)上記ペーストに対して加え、再度撹拌し、負極ペーストを得た。
【0048】
このペーストを幅200mm、厚さ11μmの電解銅箔の片面に対してドクターブレード(塗布幅100mm、塗布厚125μm)を用いて塗布し、85℃30分の真空予備乾燥に付した後、130℃5時間の真空乾燥を行った。こうして得られた電極を、直径15.858mmの円形に打ち抜き、負極とした。
【0049】
また、コバルト酸リチウム93.0質量部とアセチレンブラック3.0質量部、ポリフッ化ビニリデン4.0質量部を混合し、さらにN−メチル−2−ピロリドンを加えてペーストとし、このペーストを厚さ16μmのアルミ箔に塗布し、85℃30分の真空予備乾燥に付した後、ローラープレスにより電極を加圧成形した。この電極を130℃5時間の真空乾燥に付し、直径15.858mmの円形に打ち抜き、正極とした。
【0050】
作製した負極及び正極と、調製した非水電解質、厚さ20μmのポリプロピレン製微多孔質フィルムのセパレータを用いて評価用コイン型リチウムイオン二次電池を作製した。
【0051】
<充放電試験>
作製したコイン型リチウムイオン二次電池を、2日室温で放置した後、25℃の恒温乾燥機中で、二次電池充放電試験装置(アスカ電子株式会社製)を用いた充放電を行った。コインセルの電圧が4.2Vに達するまで0.5CmA相当の定電流で充電を行い、セル電圧が4.2Vに達した後は電圧を保ちながら電流を減少させて充電を行い、電流値が0.1CmA相当を下回った時点で充電を終了した。放電は0.5CmA相当の定電流で行い、セル電圧が2.5Vに達した時点で放電を終了した。以上の充放電試験を50回繰り返した。1サイクル目の放電容量に対する、50サイクル目の放電容量維持率を表1に記載する。
【0052】
(実施例2)
実施例1で作製した酸化珪素負極活物質5.0質量部と、球状造粒黒鉛95.0質量部に対して、SBRエマルションを1.5質量部(固形分換算)と、実施例1で調製したCMC−Na水溶液を1.5質量部(固形分換算)加えた後、イオン交換水を加えて混合することにより、ペーストを作製した。
【0053】
実施例1で作製したポリアクリル酸水溶液を5.0質量部(固形分換算)上記ペーストに対して加え、再度撹拌し、負極ペーストを得た。
【0054】
上記負極ペーストを用いた以外は実施例1と同じ条件により負極を作製し、電池試験を行った。結果を表1に記載する。
【0055】
(実施例3)
実施例1で作製した酸化珪素負極活物質5.0質量部と、球状造粒黒鉛95.0質量部に対して、SBRエマルションを1.5質量部(固形分換算)と、実施例1で調製したCMC−Na水溶液を1.5質量部(固形分換算)加えた後、イオン交換水を加えて混合することにより、ペーストを作製した。
【0056】
実施例1で作製したポリアクリル酸水溶液を10.0質量部(固形分換算)上記ペーストに対して加え、再度撹拌し、負極ペーストを得た。
【0057】
上記負極ペーストを用いた以外は実施例1と同じ条件により負極を作製し、電池試験を行った。結果を表1に記載する。
【0058】
(実施例4)
まず、ポリアクリル酸水溶液として、重量平均分子量が250,000のポリアクリル酸(和光純薬工業株式会社)30.0gに対して、イオン交換水を加え、100.0gの30.0%ポリアクリル酸水溶液を得た。
【0059】
次に、実施例1で作製した酸化珪素負極活物質5.0質量部と、球状造粒黒鉛95.0質量部に対して、SBRエマルションを1.5質量部(固形分換算)と、実施例1で調製したCMC−Na水溶液を1.5質量部(固形分換算)加えた後、イオン交換水を加えて混合することにより、ペーストを作製した。
【0060】
分子量250,000のポリアクリル酸水溶液を5.0質量部(固形分換算)上記ペーストに対して加え、再度撹拌し、負極ペーストを得た。
【0061】
上記負極ペーストを用いた以外は実施例1と同じ条件により負極を作製し、電池試験を行った。結果を表1に記載する。
【0062】
(実施例5)
実施例1で作製した酸化珪素負極活物質25.0質量部と、球状造粒黒鉛75.0質量部に対して、SBRエマルションを1.5質量部(固形分換算)と、実施例1で調製したCMC−Na水溶液を1.5質量部(固形分換算)加えた後、イオン交換水を加えて混合することにより、ペーストを作製した。
【0063】
実施例1で作製したポリアクリル酸水溶液を10.0質量部(固形分換算)上記ペーストに対して加え、再度撹拌し、負極ペーストを得た。
【0064】
上記負極ペーストを用いた以外は実施例1と同じ条件により負極を作製し、電池試験を行った。結果を表1に記載する。
【0065】
(実施例6)
実施例1で作製した酸化珪素負極活物質50.0質量部と、球状造粒黒鉛50.0質量部に対して、SBRエマルションを1.5質量部(固形分換算)と、実施例1で調製したCMC−Na水溶液を1.5質量部(固形分換算)加えた後、イオン交換水を加えて混合することにより、ペーストを作製した。
【0066】
実施例1で作製したポリアクリル酸水溶液を15.0質量部(固形分換算)上記ペーストに対して加え、再度撹拌し、負極ペーストを得た。
【0067】
上記負極ペーストを用いた以外は実施例1と同じ条件により負極を作製し、電池試験を行った。結果を表1に記載する。
【0068】
(実施例7)
まず、ポリアクリル酸の表面処理液として、重量平均分子量が1,000,000のポリアクリル酸5.0gにイソプロピルアルコール(IPA)を加えて50.0gとし、10.0%ポリアクリル酸IPA溶液を調製した。
【0069】
次に、上記ポリアクリル酸IPA溶液20.0gと、実施例1で作製した酸化珪素負極活物質18.0gとを混合してスラリーを作製した。このスラリーを80℃で真空乾燥し、黒色の固体を得た。この固体を、解砕及び目開き25μmの篩に掛けることで、酸化珪素負極活物質に対して10.0%のポリアクリル酸を表面処理した酸化珪素負極活物質粉体を15.1g得た。
【0070】
上記で得た処理粉体15.0質量部(酸化珪素の分が15.0質量部を占めるという意味であり、表面のポリアクリル酸は1.5質量部になる)と、球状造粒黒鉛85.0質量部に対して、SBRエマルションを1.5質量部(固形分換算)と、実施例1で調製したCMC−Na水溶液を1.5質量部(固形分換算)加えた後、イオン交換水を加えて混合することにより、負極ペーストを作製した。
【0071】
上記負極ペーストを用いた以外は実施例1と同じ条件により負極を作製し、電池試験を行った。結果を表1に記載する。
【0072】
(実施例8)
実施例1で作製した酸化珪素負極活物質5.0質量部と、球状造粒黒鉛95.0質量部に対して、SBRエマルションを0.5質量部(固形分換算)と、実施例1で調製したCMC−Na水溶液を1.5質量部(固形分換算)加えた後、イオン交換水を加えて混合することにより、ペーストを作製した。
【0073】
実施例1で作製したポリアクリル酸水溶液を5.0質量部(固形分換算)上記ペーストに対して加え、再度撹拌し、負極ペーストを得た。
【0074】
上記負極ペーストを用いた以外は実施例1と同じ条件により負極を作製し、電池試験を行った。結果を表1に記載する。
【0075】
(実施例9)
実施例1で作製した酸化珪素負極活物質5.0質量部と、球状造粒黒鉛95.0質量部に対して、SBRエマルションを3.0質量部(固形分換算)と、実施例1で調製したCMC−Na水溶液を1.5質量部(固形分換算)加えた後、イオン交換水を加えて混合することにより、ペーストを作製した。
【0076】
実施例1で作製したポリアクリル酸水溶液を5.0質量部(固形分換算)上記ペーストに対して加え、再度撹拌し、負極ペーストを得た。
【0077】
上記負極ペーストを用いた以外は実施例1と同じ条件により負極を作製し、電池試験を行った。結果を表1に記載する。
【0078】
(比較例1)
実施例1で作製した酸化珪素負極活物質50.0質量部と、球状造粒黒鉛50.0質量部に対して、SBRエマルションを1.5質量部(固形分換算)と、実施例1で調製したCMC−Na水溶液を1.5質量部(固形分換算)加えた後、イオン交換水を加えて混合することにより、負極ペーストを得た。
【0079】
上記負極ペーストを用いた以外は実施例1と同じ条件により負極を作製し、電池試験を行った。結果を表1に記載する。
【0080】
(比較例2)
実施例1で作製した酸化珪素負極活物質50.0質量部と、球状造粒黒鉛50.0質量部に対して、結着材として、PVdF(株式会社クレハ PVdF#9210)10.0質量部(固形分換算)とNMPを加えて撹拌し、負極ペーストを得た。
【0081】
上記負極ペーストを用いた以外は実施例1と同じ条件により負極を作製し、電池試験を行った。結果を表1に記載する。
【0082】
(比較例3)
実施例1で作製した酸化珪素負極活物質5.0質量部と、球状造粒黒鉛95.0質量部に対して、SBRエマルションを1.5質量部(固形分換算)と、実施例1で調製したCMC−Na水溶液を1.5質量部(固形分換算)加えた後、イオン交換水を加えて混合することにより、ペーストを作製した。
【0083】
実施例1で作製したポリアクリル酸水溶液を1.0質量部(固形分換算)上記ペーストに対して加え、再度撹拌し、負極ペーストを得た。
【0084】
上記負極ペーストを用いた以外は実施例1と同じ条件により負極を作製し、電池試験を行った。結果を表1に記載する。
【0085】
(比較例4)
実施例1で作製した酸化珪素負極活物質5.0質量部と、球状造粒黒鉛95.0質量部に対して、SBRエマルションを1.5質量部(固形分換算)と、実施例1で調製したCMC−Na水溶液を1.5質量部(固形分換算)加えた後、イオン交換水を加えて混合することにより、ペーストを作製した。
【0086】
実施例1で作製したポリアクリル酸水溶液を20.0質量部(固形分換算)上記ペーストに対して加え、再度撹拌し、負極ペーストを得た。
【0087】
上記負極ペーストを用いた以外は実施例1と同じ条件により負極を作製し、電池試験を行った。結果を表1に記載する。
【0088】
(比較例5)
実施例1で作製した酸化珪素負極活物質5.0質量部と、球状造粒黒鉛95.0質量部に対して、SBRエマルションを0.3質量部(固形分換算)と、実施例1で調製したCMC−Na水溶液を1.5質量部(固形分換算)加えた後、イオン交換水を加えて混合することにより、ペーストを作製した。
【0089】
実施例1で作製したポリアクリル酸水溶液を5.0質量部(固形分換算)上記ペーストに対して加え、再度撹拌し、負極ペーストを得た。
【0090】
上記負極ペーストを用いた以外は実施例1と同じ条件により負極を作製し、電池試験を行った。結果を表1に記載する。
【0091】
(比較例6)
実施例1で作製した酸化珪素負極活物質5.0質量部と、球状造粒黒鉛95.0質量部に対して、SBRエマルションを5.0質量部(固形分換算)と、実施例1で調製したCMC−Na水溶液を1.5質量部(固形分換算)加えた後、イオン交換水を加えて混合することにより、ペーストを作製した。
【0092】
実施例1で作製したポリアクリル酸水溶液を5.0質量部(固形分換算)上記ペーストに対して加え、再度撹拌し、負極ペーストを得た。
【0093】
上記負極ペーストを用いた以外は実施例1と同じ条件により負極を作製し、電池試験を行った。結果を表1に記載する。
【0094】
【表1】
【0095】
実施例1〜9及び比較例1〜6からわかるように、黒鉛系負極活物質とシリコン系負極活物質を併用した負極を作製する際、従来の黒鉛系負極活物質を使用した負極の作製条件に対して、ポリアクリル酸を規定の量だけ添加することで、サイクル特性を向上することができる。
【0096】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。