(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5755008
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】電子モジュールの固定方法、交換方法および固定構造
(51)【国際特許分類】
H05K 7/18 20060101AFI20150709BHJP
【FI】
H05K7/18 L
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2011-89422(P2011-89422)
(22)【出願日】2011年4月13日
(65)【公開番号】特開2012-222298(P2012-222298A)
(43)【公開日】2012年11月12日
【審査請求日】2014年3月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114226
【氏名又は名称】ミハル通信株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】安藤 純一
【審査官】
中田 誠二郎
(56)【参考文献】
【文献】
実開平05−021484(JP,U)
【文献】
特開平02−203596(JP,A)
【文献】
実開昭61−102095(JP,U)
【文献】
特開2009−129932(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子モジュールの固定方法であって、
底板部と、前記底板部の背面側に起立して、第1の固定部を有する固定片と、前記底板部の前方側に設けられる孔と、を具備する棚板部材と、
本体部と、前記本体部から下方に向けて形成される脚部と、前記本体部から後方側に離間して配され、下方に向けて形成される少なくとも一対の第2の固定部と、を有する固定部材と、を用い、
電子モジュールを前記棚板部材の前方側から、前記固定片に突き当たるまでスライド挿入し、前記電子モジュールの背面に設けられる第1の被固定部と、前記第1の固定部との互いの凹凸を嵌合させ、
前記棚板部材の上に、複数の前記電子モジュールを併設した状態で、前記固定部材の前記脚部を前記孔に挿入するとともに、隣り合う前記電子モジュールの前面にそれぞれ設けられる第2の被固定部と前記第2の固定部との互いの凹凸を嵌合させ、
前記固定部材を前記棚板部材に固定することを特徴とする電子モジュールの固定方法。
【請求項2】
前記第1の固定部は、前記棚板部材と一体で形成され、前方に向けて形成された突起であり、
前記第1の被固定部は、前記電子モジュールのカバーの爪を筐体に固定するための固定穴であることを特徴とする請求項1記載の電子モジュールの固定方法。
【請求項3】
前記第2の固定部は、前記固定部材に形成された一対の爪であり、
前記第2の被固定部は、前記電子モジュールの筐体に形成される放熱孔であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電子モジュールの固定方法。
【請求項4】
前記固定部材は、前記棚板部材に対してネジで固定され、
前記底板部の前方縁部が下方に折り返されており、
前記底板部の折り返し厚みは、前記ネジの前記底板部下面からの突出代以上であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の電子モジュールの固定方法。
【請求項5】
前記固定部材は、板材を折り曲げたばね性を有する構造であり、
前記底板部の前方縁部が下方に折り返されており、
前記底板部の折り返し部を、前記固定部材のばね構造で挟み込んで、前記固定部材のばね部先端に設けられた折り曲げ部を、前記底板部の前記孔の近傍に設けられた穴に差し込んで固定することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の電子モジュールの固定方法。
【請求項6】
前記脚部が、前記本体部から略垂直に下方に折り曲げられて形成されており、
前記一対の第2の固定部が、前記本体部の両側部の後方において、下方に向けて形成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の電子モジュールの固定方法。
【請求項7】
電子モジュールの交換方法であって、
底板部と、前記底板部の背面側に起立して、前方に向けて形成された突起を有する固定片と、前記底板部の前方側に設けられる孔と、を具備する棚板部材と、
本体部と、前記本体部から下方に向けて形成される脚部と、前記本体部から後方側に離間して配され、下方に向けて形成される少なくとも一対の爪と、から構成される固定部材と、を用い、
複数の電子モジュールが前記棚板部材の前方側から、前記固定片に突き当たり、前記電子モジュールの背面側に形成された、前記電子モジュールのカバーの爪を筐体に固定するための固定穴と、前記突起とが嵌合しており、
前記固定部材の前記脚部が前記孔に挿入され、前記固定部材が前記棚板部材に固定されるとともに、隣り合う前記電子モジュールにまたがるように、前記電子モジュールの前面の放熱孔と前記一対の爪とが嵌合した状態から、
前記固定部材を前記棚板部材から取り外し、
隣り合う電子モジュールの一方の電子モジュールを前方に引き出し、当該電子モジュールを撤去した後、新たに設置する電子モジュールを前記棚板部材の前方側から、前記固定片に突き当たるまでスライド挿入し、前記突起と前記固定穴とを嵌合させ、
前記固定部材の前記脚部を前記孔に挿入するとともに、隣り合う前記電子モジュールの前面にそれぞれ設けられる前記放熱孔と前記一対の爪とを嵌合させ、
隣り合う前記電子モジュールにまたがるように前記固定部材を前記棚板部材に固定することを特徴とする電子モジュールの交換方法。
【請求項8】
電子モジュールの固定構造であって、
底板部と、前記底板部の背面側に起立して、第1の固定部を有する固定片と、前記底板部の前方側に設けられる孔と、を具備する棚板部材と、
本体部と、前記本体部から下方に向けて形成される脚部と、前記本体部から後方側に離間して配され、下方に向けて形成される少なくとも一対の第2の固定部と、を有する固定部材と、を用い、
複数の電子モジュールが前記棚板部材の前方側から、前記固定片に突き当たるように挿入され、前記電子モジュールの背面側の第1の被固定部と、前記第1の固定部との互いの凹凸が嵌合しており、
前記固定部材の前記脚部が前記孔に挿入され、前記固定部材が前記棚板部材に固定されるとともに、隣り合う前記電子モジュールにまたがるように、前記電子モジュールの前面の第2の被固定部と前記第2の固定部との互いの凹凸が嵌合することを特徴とする電子モジュールの固定構造。
【請求項9】
前記第1の固定部は、前記棚板部材と一体で形成された突起であり、前記第2の固定部は、前記固定部材に形成された一対の爪であり、前記第1の被固定部および前記第2の被固定部は、ともに前記電子モジュールの筐体に形成された固定孔で、前記固定孔は被固定部として機能の他、少なくともその他の機能を有していることを特徴とする請求項8記載の電子モジュールの固定構造。
【請求項10】
前記第1の固定部は、前記棚板部材と一体で形成され、前方方向に向けて形成された突起であり、前記第1の被固定部は、前記電子モジュールのカバーの爪を筐体に固定するための固定穴であり、
前記第2の固定部は、前記固定部材に形成された一対の爪であり、前記第2の被固定部は、前記電子モジュールの筐体に形成される放熱孔であることを特徴とする請求項8または請求項9記載の電子モジュールの固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえばEIA規格のラック内に複数の電子モジュールを固定するための電子モジュールの固定方法等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ホテル、学校、競技場などにおいて、館内放送用モジュールが用いられる場合がある。このような放送用モジュール等の電子モジュールは、例えばEIAの規格(1ユニットが幅19インチ、高さ1.75インチ)に対応したラックに実装される。したがって、電子モジュールのサイズには制約がある。
【0003】
近年、より高密度な電子モジュールの実装が要求されている。このため、よりコンパクトな電子モジュールが開発されている。このような電子モジュールを採用すれば、上述のラックの1ユニットに複数台の電子モジュールを併設して実装することが可能となる。例えば、従来の半分の幅の電子モジュールを用いれば、1ユニットに2台の電子モジュールを併設することができる。
【0004】
通常、電子モジュールをラックに実装する場合、電子モジュールの両側面にL字金具を取り付け、L字金具によって電子モジュールがラックに固定される。したがって、ラックのユニット幅よりも幅狭の電子モジュールを固定する場合には、ユニット幅に応じた長さの金具を用いる必要がある。
【0005】
一方、1ユニットに複数台の電子モジュールを用いる場合には、電子モジュール同士を連結する必要がある。したがって、電子モジュールの連結部に、別途ジョイント金具を用い、連結された電子モジュールを、通常の要領でラックに固定する必要がある(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−227273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のような方法は、まず、複数台の電子モジュールを連結する必要があるため、ラックに固定するために多くの部品が必要となる。また、それぞれの電子モジュールに連結ジョイントを固定する必要があることから、連結作業性(固定作業性)が悪い。
【0008】
また、特に連結された一方の電子モジュールのみの交換・修理等を行う場合には、連結状態の電子モジュール全体をラックから取り外す必要がある。したがって、例えば2台の電子モジュールの内、1台のみを交換する際に、交換しない方の電子モジュールもラックから取り出す必要がある。このため、作業中は、交換する電子モジュールのみではなく、他方の電子モジュールの稼働も停止させる必要があるという問題があった。
【0009】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、多数の部品を用いることなく、容易に設置・交換作業を行うことができ、EIA規格などの極めて狭い空間内でも確実に複数台の電子モジュールを固定することが可能な電子モジュールの固定方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述した目的を達するために第1の発明は、電子モジュールの固定方法であって、底板部と、前記底板部の背面側に起立して、第1の固定部を有する固定片と、前記底板部の前方側に設けられる孔と、を具備する棚板部材と、
本体部と、前記本体部から下方に向けて形成される脚部
と、前記本体部から後方側に離間して配され、下方に向けて形成される少なくとも一対の第2の固定部
と、を有する固定部材と、を用い、電子モジュールを前記棚板部材の前方側から、前記固定片に突き当たるまでスライド挿入し、前記電子モジュールの背面に設けられる第1の被固定部と、前記第1の固定部との互いの凹凸を嵌合させ、前記棚板部材の上に、複数の前記電子モジュールを併設した状態で、前記固定部材の前記脚部を前記孔に挿入するとともに、隣り合う前記電子モジュールの前面にそれぞれ設けられる第2の被固定部と前記第2の固定部との互いの凹凸を嵌合させ、前記固定部材を前記棚板部材に固定することを特徴とする電子モジュールの固定方法である。
【0011】
前記第1の固定部は、前記棚板部材と一体で形成され、前方に向けて形成された突起であり、前記第1の被固定部は、前記電子モジュールのカバーの爪を筐体に固定するための固定穴であってもよい。
【0012】
前記第2の固定部は、前記固定部材に形成された一対の爪であり、前記第2の被固定部は、前記電子モジュールの筐体に形成される放熱孔であってもよい。
【0013】
前記固定部材は、前記棚板部材に対してネジで固定されてもよい。この場合、前記底板部の前方縁部が下方に折り返されており、前記底板部の折り返し厚みは、前記ネジの前記底板部下面からの突出代以上であることが望ましい。
【0014】
前記固定部材は、板材を折り曲げたばね性を有する構造であり、前記底板部の前方縁部が下方に折り返されており、前記底板部の折り返し部を、前記固定部材のばね構造で挟み込んで、前記固定部材のばね部先端に設けられた折り曲げ部を、前記底板部の前記孔の近傍に設けられた穴に差し込んで固定されてもよい。
前記脚部が、前記本体部から略垂直に下方に折り曲げられて形成されており、前記一対の第2の固定部が、前記本体部の両側部の後方において、下方に向けて形成されてもよい。
【0015】
第1の発明によれば、電子モジュールをラックに固定する際、電子モジュールをラックの前面からスライド挿入するのみでよいため、作業性に優れる。また、電子モジュールに、ラックとの固定のための金具をあらかじめ取り付ける必要もない。このため、電子モジュールを固定するための部品点数も少ない。
【0016】
また、併設する電子モジュール同士を連結する固定部材は、ラックの前面で脱着可能である。このため、一方の電子モジュールのみを交換する場合でも、他方の電子モジュールを設置した状態で作業を行うことができる。したがって、最低限の電子モジュールの稼働のみを停止すればよい。
【0017】
また、電子モジュールの背面側の固定に対し、電子モジュールのカバーの固定穴を流用すれば、電子モジュールに別途固定部材を取り付ける必要がなく、また、棚部材の背面に設けられた突起を固定穴に挿入することで、電子モジュールの左右上下方向の移動を規制して固定することができる。
【0018】
また、電子モジュールの前面側の固定に対し、電子モジュールの放熱孔を流用すれば、電子モジュールに別途固定部材を取り付ける必要がなく、また、隣り合う電子モジュールにまたがるように固定部材を配置して、それぞれの電子モジュールの放熱孔に固定部材の一対の爪を挿入することで、電子モジュールを確実に連結するとともに、電子モジュールの左右上下方向の移動を規制して固定することができる。
【0019】
また、固定部材をネジで固定する場合に、棚板部の前面を折り返し、底板部の折り返し厚みをネジの底板部下面からの突代以上とすることで、前方から見た際に、ネジの先端が下方のユニットにはみ出すことがなく、下方のユニットの設置作業等の妨げになることがない。また、折り返し部によって、底板部の撓みを防止することができる。
【0020】
第2の発明は、電子モジュールの交換方法であって、底板部と、前記底板部の背面側に起立して、前方に向けて形成された突起を有する固定片と、前記底板部の前方側に設けられる孔と、を具備する棚板部材と、
本体部と、前記本体部から下方に向けて形成される脚部
と、前記本体部から後方側に離間して配され、下方に向けて形成される少なくとも一対の爪と
、から構成される固定部材と
、を用い、複数の電子モジュールが前記棚板部材の前方側から、前記固定片に突き当たり、前記電子モジュールの背面側に形成された、前記電子モジュールのカバーの爪を筐体に固定するための固定穴と、前記突起とが嵌合しており、前記固定部材の前記脚部が前記孔に挿入され、前記固定部材が前記棚板部材に固定されるとともに、隣り合う前記電子モジュールにまたがるように、前記電子モジュールの前面の放熱孔と前記一対の爪とが嵌合した状態から、前記固定部材を前記棚板部材から取り外し、隣り合う電子モジュールの一方の電子モジュールを前方に引き出し、当該電子モジュールを撤去した後、新たに設置する電子モジュールを前記棚板部材の前方側から、前記固定片に突き当たるまでスライド挿入し、前記突起と前記固定穴とを嵌合させ、前記固定部材の前記脚部を前記孔に挿入するとともに、隣り合う前記電子モジュールの前面にそれぞれ設けられる前記放熱孔と前記一対の爪とを嵌合させ、隣り合う前記電子モジュールにまたがるように前記固定部材を前記棚板部材に固定することを特徴とする電子モジュールの交換方法である。
【0021】
第2の方法によれば、隣り合う電子モジュールの一方のみを取り外すことができ、他方の電子モジュールを稼働した状態で、一方の電子モジュールの交換作業を行うことができる。
【0022】
第3の発明は、電子モジュールの固定構造であって、底板部と、前記底板部の背面側に起立して、第1の固定部を有する固定片と、前記底板部の前方側に設けられる孔と、を具備する棚板部材と、
本体部と、前記本体部から下方に向けて形成される脚部
と、前記本体部から後方側に離間して配され、下方に向けて形成される少なくとも一対の第2の固定部
と、を有する固定部材と、を用い、複数の電子モジュールが前記棚板部材の前方側から、前記固定片に突き当たるように挿入され、前記電子モジュールの背面側の第1の被固定部と、前記第1の固定部との互いの凹凸が嵌合しており、前記固定部材の前記脚部が前記孔に挿入され、前記固定部材が前記棚板部材に固定されるとともに、隣り合う前記電子モジュールにまたがるように、前記電子モジュールの前面の第2の被固定部と前記第2の固定部との互いの凹凸が嵌合することを特徴とする電子モジュールの固定構造である。
【0023】
前記第1の固定部は、前記棚板部材と一体で形成された突起であり、前記第2の固定部は、前記固定部材に形成された一対の爪であり、前記第1、第2の被固定部は、ともに前記電子モジュールの筐体に形成された固定孔で、前記固定孔は被固定部として機能の他、少なくともその他機能を有してもよい。
【0024】
前記第1の固定部は、前記棚板部材と一体で形成され、前方方向に向けて形成された突起であり、前記第1の被固定部は、前記電子モジュールのカバーの爪を筐体に固定するための固定穴であり、前記第2の固定部は、前記固定部材に形成された一対の爪であり、前記第2の被固定部は、前記電子モジュールの筐体に形成される放熱孔であってもよい。
【0025】
第3の発明によれば、電子モジュールの設置や交換作業性に優れ、複数の電子モジュールを確実にラックに固定することが可能な電子モジュールの固定構造を得ることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、多数の部品を用いることなく、容易に設置・交換作業を行うことができ、EIA規格などの極めて狭い空間内でも確実に複数台の電子モジュールを固定することが可能な電子モジュールの固定方法等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図3】(a)は
図2のB部拡大図、(b)は
図2のC部拡大図。
【
図4】
図2のA−A線断面図であって、電子モジュール3を挿入する工程を示す図。
【
図5】(a)は電子モジュール3の背面図、(b)は(a)のF−F線断面図。
【
図7】固定部材7を示す図で、(a)は斜視図、(b)は(a)のG矢視図、(c)は(a)のH矢視図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
図1は、ラック1を示す図である。ラック1は、例えばEIA規格等で規格化されたラックである。ラック1は、例えば複数段にユニットが形成され、それぞれのユニットに電子モジュール3が実装される。
【0029】
電子モジュール3は、ラックユニットの幅の略半分の幅であり、一つのユニットに2つの電子モジュール3が併設される。なお、ラック1の形状等は図示した例に限られない。また、以下の説明では、電子モジュール3が2台併設される例を示すが、本発明はこれに限られない。例えば、3台以上の電子モジュールが併設される場合にも適用可能である。
【0030】
電子モジュール3は、棚板部材5の上に設置される。棚板部材5は、両端部でラックに固定される。棚板部材5上には固定部材7が固定される。固定部材7は、併設された電子モジュール3同士を連結するとともに、当該電子モジュールを棚板部材5上に固定するものである。
【0031】
図2は、棚板部材5の斜視図である。棚板部材5は、主に、電子モジュール3が載置される底板部9と、底板部9の両側部に略垂直に起立する側板部11とからなる断面略コの字状の板部材である。それぞれの側板部11の前方側(図中左下方向)には、両側方に広がる方向に設置固定部13が設けられる。設置固定部13は、ラック1へ棚板部材5を固定する部位である。
【0032】
底板部9の背面側(図中右上方向)には、固定片19が起立する。
図3(a)は、
図2のB部拡大図であり、固定片19近傍の拡大図である。固定片19は、底板部9に対して略垂直に設けられる。固定片19の先端部には、固定部21が形成される。第1の固定部である固定部21は、棚板部材5の前方に向けて形成された突起である。
【0033】
なお、固定片19および固定部21の設置部位および形状は図示した例に限られない。固定片19は、側板部11または底板部9に対して略垂直に形成されれば、後述する被固定部の位置に応じていずれの部位に形成してもよい。また、固定片19は、側板部11または底板部9と一体で形成してもよく、別途形成した部材を接合してもよい。
【0034】
図3(b)は、
図2のC部拡大図である。底板部9の前方側の略中央には、一対のスリット状の孔15と、ネジ孔17が形成される。孔15およびネジ孔17は、後述する固定部材を固定する部位である。なお、ネジ孔17には、必要に応じてタップ加工が施される。
【0035】
次に、棚板部材5を用いた電子モジュール3の設置および固定方法について説明する。なお、以下の説明では、電子モジュール3の配線等については説明を省略する。まず、棚板部材5の両側部の設置固定部13が、ラック1(
図1)にボルト等で固定される。
【0036】
図4は、棚板部材5に電子モジュール3を挿入する状態を示す図で、
図2のA−A線断面図である。
図4(a)に示すように、棚板部材5の前方側から電子モジュール3(点線)が挿入される(図中矢印D方向)。なお、
図4(b)に示すように、電子モジュール3は、電子モジュール3の背面が固定片19に突き当たるまで挿入される。すなわち、電子モジュール3は、固定片19によって背面方向の設置位置が規制される。
【0037】
図5(a)は、電子モジュール3の背面の概略図であり、
図5(b)は、
図5(a)のF−F線断面図である。電子モジュール3(筐体25)の背面には、各ケーブル等との接続部や、冷却ファン等が設置される。電子モジュール3の筐体25には、カバー27が被せられる。
【0038】
ここで、電子モジュール3は、狭い空間に配置されるため、例えば上面にネジ頭等が突出することは望ましくない。このため、カバー27は、筐体25に対して背面等で固定される。例えば、
図5(b)に示すように、カバー27の一部が、筐体25の背面方向に折り曲げられ、さらに折り曲げられた端部が筐体25の方向に折り返されて爪31が形成される。
【0039】
筐体25の背面には、あらかじめ爪31が嵌合する固定穴29が形成される。カバー27が筐体25に被せられた状態で、カバー27に形成された爪31が固定穴29に挿入されることで、カバー27が、筐体から外れたり、カバー27の側面が側方に広がるように変形したりすることを防止することができる。
【0040】
なお、固定穴29の形状、配置、個数等は、電子モジュールの設計によって適宜設定される。また、固定穴29は、爪31が挿入された状態であっても、カバー31によって完全に塞がれることはない。
【0041】
図6は、
図4(b)のE部拡大図であり、固定片19と電子モジュール3との接触部近傍を示す図である。
図6(a)に示すように、電子モジュール3を前方からスライド挿入すると(図中矢印D方向)、前述した固定穴29の部位に固定片19の固定部21が位置する。
【0042】
図6(b)に示すように、電子モジュール3を固定片19に接触するまで前方から押し込むと、固定部21が固定穴29に挿入される。すなわち、第1の固定部である固定部21の凸形状と、第1の被固定部である固定穴29の凹形状とが嵌合する。したがって、固定片19によって、電子モジュール3が所定以上奥に押し込まれることが防止され、さらに、固定部21によって、幅方向および高さ方向に対して電子モジュール3が移動することを防止することができる。
【0043】
ここで、
図4および
図6に示すように、底板部9の前方縁部には、必要に応じて折り返し部23aが形成される。また、同様に、底板部9の後方縁部には、必要に応じて折り返し部23bが形成される。折り返し部23a、23bは、それぞれ、底板部9の縁部が下方に折り返された部位である。折り返し部23a、23bによって、底板部9が補強され、側板部11と相まって、底板部9が撓むことを防止することができる。
【0044】
次に、固定部材7について説明する。
図7は固定部材7を示す図で、
図7(a)は斜視図、
図7(b)は
図7(a)のG矢視図、
図7(c)は
図7(a)のH矢視図である。固定部材7は、例えばプレス形成された金具である。固定部材7は、本体部41、固定爪33、脚部35等から構成される。
【0045】
本体部41は略平坦に形成され、本体部41の略中央に孔37が形成される。本体部41の両側部は、本体部41の平坦部に略垂直に上方に折り曲げられ、後方側(
図7(a)の中右上方向)の端部に、下方に向けて鉤形状の固定爪33が形成される。すなわち、第2の固定部である一対の固定爪33が形成される。
【0046】
本体部41の幅方向の略中央には、後方に向かって突起39が形成される。また、本体部41の後方側は、本体部41の平坦部に略垂直に下方に折り曲げられ、脚部35が形成される。
【0047】
図8は、電子モジュール3の前面の概略図である。電子モジュール3の前面には複数の放熱孔43が形成される。放熱孔43は、電子モジュール3の少なくとも両側方にそれぞれ形成される。
【0048】
図9は、電子モジュール3の前方側から固定部材7を取り付ける工程を示す図である。前述の通り、電子モジュール3は、棚板部材の最奥部まで押し込まれている。この状態で、底板部9には、孔15が電子モジュール3の前面から露出する。なお、孔15は、固定部材7の脚部35の形状および位置に対応させて形成される。
【0049】
図9(a)に示すように、固定部材7の脚部35が孔15に挿入される(図中矢印I方向)。同時に、固定部材7の一対の固定爪33は、併設されて隣り合う電子モジュール3にまたがるように、それぞれの放熱孔43に挿入される(図中矢印J方向)。
【0050】
図9(b)に示すように、固定爪33は、放熱孔43から電子モジュール3内部に挿入されて電子モジュール3を固定する。また、脚部35によって固定部材7の位置が規制される。なお、固定部材7を電子モジュール3および底板部9に取り付けた状態で、固定部材7の本体部41が底板部9と略平行になるように、固定部材7の前後端が下方に折り曲げられる。
【0051】
さらに、
図10に示すように、固定部材7の孔37(
図7(a))にネジ43を挿通し、底板部9に形成されたネジ孔17に螺合する。以上により、固定部材7が底板部9に固定される。すなわち、第2の固定部である固定爪33の凸形状と、第2の被固定部である放熱孔43の凹形状とが嵌合する。したがって、固定部材7によって、電子モジュール3が前方、幅方向および高さ方向に対して電子モジュール3が移動することを防止することができる。
【0052】
なお、前述したように、固定部材7の固定爪33が隣り合う電子モジュール3のそれぞれの放熱孔43に挿通される。すなわち、電子モジュール3の左右の放熱孔43の位置(少なくとも固定爪33が挿入される放熱孔の位置)は、左右対称な位置に形成される。また、固定部材7の突起39(
図7(a))が電子モジュール3の隙間に挿入される。したがって、電子モジュール3の側面同士が密着することがない。
【0053】
また、前述の通り、底板部9の前端縁には折り返し部23aが形成される。この際、折り返し部23aの折り返し厚みは、ネジ45の底板部9下面からの突出代以上となる。したがって、前方から見た際、底板部9(折り返し部23a)の下方にネジ45の下端が突出することがない。このため、この下段に同様に電子モジュールを設置する作業の妨げとなることがない。
【0054】
以上、本発明によれば、幅方向に複数の電子モジュール3を連結させて、電子モジュール3を容易にラックに固定することができる。この際、電子モジュール3同士の連結部材等を個々の電子モジュール3に固定する必要がない。
【0055】
また、電子モジュール3は、前方から押し込むだけで、背面側の固定が完了する。このため、ラックの後方に回り込んで作業を行う必要がない。また、前方側には固定部材7を取り付けるのみであるため、極めて電子モジュールの設置作業性に優れる。また、隣り合う電子モジュールの一方のみを交換する場合でも、前面の固定部材7を取り外せば、容易に一方のみの電子モジュールを取り外すことができる。すなわち、一方の電子モジュールのみを取り外して撤去した後、新たに設置する電子モジュールに配線を行い、前述と同様の方法で設置すればよい。このため、他方の電子モジュールを稼働しながら交換作業を行うことができる。
【0056】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0057】
例えば、固定部材7の固定方法は、前述したネジによるものに限られない。例えば、
図11(a)に示すように、足割りリベット47を用いてもよい。この場合には、底板部9にはネジ孔に代えて通常の穴49を形成すればよい。上方から足割りリベット47を固定部材7および穴49に挿通し、底板部9の下面側で足を割ることで、固定部材7が底板部9に固定される。
【0058】
また、
図11(b)に示すように、一部にばね部53を有する固定部材7aを用いてもよい。固定部材7aは板材が折り曲げられて構成され、ばね性を有する構造であるばね部51を有する。ばね部51は、底板部9の前方をばね構造で挟み込むように形成される。ばね部51の先端部に形成される折り曲げ部が、底板部9に形成された穴53に下方から挿入される。すなわち、固定部材7aは、他の固定具を用いることなく単体で底板部9に固定することができる。
【0059】
以上のように、固定部材を底板部9に固定する手段は、公知のいずれの手段を用いることもできる。
【0060】
また、前述の実施例では、第1の被固定部が、固定穴29である例を示したが、本発明はこれに限られない。例えば、固定穴29に限られず、固定部21が挿入可能な隙間が別途形成されれば良い。
【0061】
また、第1の固定部である固定部21の凸形状と、第1の被固定部である固定穴29の凹形状とが嵌合する例について説明したが、本発明はこれに限られない。例えば、第1の固定部を、固定片19に形成した孔とし、第1の被固定部を、電子モジュールの背面に形成した突起として、これらの凹凸を嵌合させてもよい。この場合、例えば、電子モジュールのコネクタやネジ部等の突起の一部を第1の被固定部として流用することもできる。
【0062】
同様に、第2の被固定部が、放熱孔43である例を示したが、本発明は放熱孔43に限られず、他の孔を利用してもよい。また、固定部材7側に孔や他の嵌合手段を形成し、電子モジュール3の前面に、これと嵌合可能な突起や嵌合手段を形成してもよい。いずれにしても、固定部材7と電子モジュール3の前面とに形成される何らかの凹凸形状を嵌合させることで、電子モジュールが固定されれば良い。
【0063】
すなわち、第1の被固定部および第2の被固定部を、ともに電子モジュールの筐体に形成された例えば固定孔とした場合に、固定孔が被固定部として機能の他、少なくともその他機能を有していることが望ましい。
【符号の説明】
【0064】
1………ラック
3………電子モジュール
5………棚板部材
7、7a………固定部材
9………底板部
11………側板部
13………設置固定部
15………孔
17………ネジ孔
19………固定片
21………固定部
23a、23b………折り返し部
25………筐体
27………カバー
29………固定穴
31………爪
33………固定爪
35………脚部
37………孔
39………突起
41………本体部
43………放熱孔
45………ネジ
47………足割りリベット
49………穴
51………ばね部
53………穴