【実施例】
【0028】
以下、実施例、比較例及び応用例等をもって本発明を詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例等により何ら制限されるものではない。
【0029】
下記実施例及び比較例で得られたピロリン酸ピペラジンの純度、ナトリウム含有量及び分解点の測定は、それぞれ以下の測定方法に従って行った。
【0030】
<純度の測定方法>
(株)センシュー科学製HPLC装置(ポンプ;SSC−3150,RI検出器;ERC−7515A)、日本分光製カラムオーブン(CO−965)、ショーデックス製OH pakカラム(SB−802.5 HQ)を用い、温度40℃、流速1.0ml/min、感度32×10
-5RIU/F.S.の条件で純度の測定を行った。
【0031】
<ナトリウム含有量の測定方法>
ICP発光分析装置による元素分析により、ナトリウム含有量を定量した。
【0032】
<分解点の測定>
TG測定を行い、5%重量減少が起こった温度(サンプルの重量が5重量%減少した温度)を分解点とした。
【0033】
〔実施例1〕
押出し機(日本製鋼所製、TEX44αII−52.5BW)を用い、シリンダ温度230〜280℃、原料供給速度25kg/h、スクリュー回転数60rpmの条件で2リン酸ピペラジンを加熱混合し、ピロリン酸ピペラジンの白色粉末を得た。
【0034】
〔実施例2〕
ヘンシェルミキサー(三井鉱山製、FM150J/T、容量150L)を用い、加熱温度190〜250℃、回転数704〜1000rpmの条件で1時間、2リン酸ピペラジン40kgを加熱混合し、ピロリン酸ピペラジンの白色粉末を得た。
【0035】
〔実施例3〕
ヘンシェルミキサー(三井鉱山製、FM150J/T、容量150L)を用い、加熱温度170〜250℃、回転数990〜1590rpmの条件で1時間、2リン酸ピペラジン5kg及び75重量%リン酸100gを加熱混合し、ピロリン酸ピペラジンの白色粉末を得た。
【0036】
〔実施例4〕
攪拌機、滴下ロート、温度計及びDean−Starkコンデンサーを装着した四つ口フラスコに、2リン酸ピペラジン30g、IP2028の100g及び85重量%リン酸0.9gを入れ、210〜230℃で2時間加熱混合し、ピロリン酸ピペラジンの白色粉末27.1g(収率97%)を得た。
【0037】
〔実施例5〕
攪拌機、滴下ロート、温度計及びDean−Starkコンデンサーを装着した四つ口フラスコに、2リン酸ピペラジン30g、IP2028の100g及びリン酸ホウ素0.9gを入れ、210〜230℃で2時間加熱混合し、ピロリン酸ピペラジンの白色粉末27.5g(収率98%)を得た。
【0038】
〔実施例6〕
攪拌機、滴下ロート、温度計及びDean−Starkコンデンサーを装着した四つ口フラスコに、2リン酸ピペラジン30g及びIP2028の100gを入れ、240〜250℃で2時間加熱混合し、ピロリン酸ピペラジンの白色粉末26.2g(収率94%)を得た。
【0039】
〔実施例7〕
攪拌機、滴下ロート、温度計及びDean−Starkコンデンサーを装着した四つ口フラスコに、2リン酸ピペラジン300g及びノルマルパラフィンH(新日本石油製)1000gを入れ、230〜250℃で0.5時間加熱混合し、ピロリン酸ピペラジンの白色粉末271.2g(収率97%)を得た。
【0040】
〔実施例8〕
押出し機(日本製鋼製、TEX44αII−52.5BW)を用い、シリンダ温度230〜270℃、原料供給速度60kg/h、スクリュー回転数60rpmの条件で2リン酸ピペラジン及びリン酸メラミンを1:1の重量比で加熱混合し、ピロリン酸ピペラジンとピロリン酸メラミンとの重量比1:1の混合物を得た。得られた混合物は、固体の白色粉末であり、ナトリウム含有量が0ppmで、1%重量減少温度が300℃であった。
【0041】
〔比較例1〕
ピロリン酸ナトリウム0.5モルを水300gに分散し、10℃に冷却して塩酸1モルを加えた。ここに、水800gに溶解したピペラジン(純度97%)0.5モルを20℃以下で加えると、白色固体が析出した。この反応系を10℃で3時間攪拌した後、白色固体をろ過して水で洗浄した。さらに、ろ液にメタノール300gを加え、析出した白色固体をろ過してメタノール及び水で洗浄した。得られた全ての白色固体を乾燥し、ピロリン酸ピペラジンの白色粉末0.23モルを得た。
【0042】
実施例1〜7及び比較例1で得られたピロリン酸ピペラジンの純度、ナトリウム含有量及び分解点を、それぞれ上述した測定方法により測定した。測定結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
〔応用例及び比較応用例〕
ポリプロピレン樹脂(三井化学株式会社:射出成形用グレード)100重量部に、ステアリン酸カルシウム(滑剤)0.1重量部、テトラキス{3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル}メタン(フェノール系酸化防止剤)0.1重量部、及びビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(リン系酸化防止剤)0.1重量部を配合して、ポリプロピレン樹脂組成物を得た。得られたポリプロピレン樹脂組成物に、表1記載の難燃剤組成物及び他の配合剤(SiO
2)を配合し、200〜230℃で押し出してペレットを製造した。該ペレットを使用して220℃で射出成型し、厚さ1.6mmの試験片を得た。得られた試験片を用いて下記難燃性UL−94V試験を行なった。ただし、難燃剤としてのピロリン酸ピペラジンは、製造後、50℃、荷重0.175kg・cm
-1で1週間保存後のものを使用した。
【0045】
<難燃性UL−94V試験>
長さ127mm、幅12.7mm、厚さ1.6mmの試験片を垂直に保ち、下端にバーナの火を10秒間接炎させた後、炎を取り除き、試験片に着火した火が消える時間を測定した。次に、火が消えると同時に2回目の接炎を10秒間行ない、1回目と同様にして着火した火が消えるまでの時間を測定した。また、試験片から落下する火種により試験片の下の綿が着火するか否かについても同時に評価した。
【0046】
1回目及び2回目の燃焼時間、綿着火の有無等から、UL−94V規格に従って燃焼ランクをつけた。燃焼ランクはV−0が最高であり、以下、V−1、V−2の順に難燃性は低下する。但し、V−0〜V−2のランクの何れにも該当しないものはNRとする。さらに酸素指数についても試験を行った。
【0047】
【表2】
【0048】
表1より明らかなように、本発明の製造方法で得られたピロリン酸ピペラジンは、従来の製造方法で得られたものに比べて、ナトリウム含有量が低く、また収率もはるかに高かった。
また、表2から明らかなように、本発明の製造方法で得られた、ナトリウム含有量が10ppm以下であるピロリン酸ピペラジンを用いた難燃剤組成物は、難燃性試験の結果が良好であり、酸素指数も高かった。
【0049】
以上の結果より、ナトリウム含有量が10ppm以下である高純度のピロリン酸ピペラジンを用いることにより、優れた難燃性を有する難燃剤組成物が得られること、及び本発明の製造方法によりこのような高純度のピロリン酸ピペラジンを得られることが明らかである。