特許第5755412号(P5755412)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5755412高純度ピロリン酸ピペラジン及び難燃性合成樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5755412
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】高純度ピロリン酸ピペラジン及び難燃性合成樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C07D 295/02 20060101AFI20150709BHJP
   B01J 27/16 20060101ALI20150709BHJP
   C09K 21/12 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   C07D295/02 A
   B01J27/16 Z
   C09K21/12
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-110799(P2010-110799)
(22)【出願日】2010年5月13日
(62)【分割の表示】特願2003-356864(P2003-356864)の分割
【原出願日】2003年10月16日
(65)【公開番号】特開2010-229139(P2010-229139A)
(43)【公開日】2010年10月14日
【審査請求日】2010年5月28日
【審判番号】不服2013-16497(P2013-16497/J1)
【審判請求日】2013年8月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】100076532
【弁理士】
【氏名又は名称】羽鳥 修
(72)【発明者】
【氏名】木村 凌治
(72)【発明者】
【氏名】村瀬 久
(72)【発明者】
【氏名】長濱 勝
(72)【発明者】
【氏名】神本 哲男
(72)【発明者】
【氏名】中野 慎司
【合議体】
【審判長】 豊永 茂弘
【審判官】 山田 靖
【審判官】 日比野 隆治
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭48−88791(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第0126454(EP,A2)
【文献】 米国特許第3810850(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D295/02
C08K5/51
C09K21/12
C07F9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂100重量部に対し、ナトリウム含有量が10ppm以下である、下記化学式(I)で示されるピロリン酸ピペラジン20〜60重量部を配合してなる難燃性合成樹脂組成物。
【化1】
【請求項2】
上記合成樹脂がポリプロピレン樹脂である請求項記載の難燃性合成樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ナトリウム含有量の少ないピロリン酸ピペラジン及びその製造方法に関し、さらに詳細には、合成樹脂に添加される難燃剤組成物の1成分として有用なピロリン酸ピペラジン、及び、リン酸とピペラジンとを反応させて得られる2リン酸ピペラジンを脱水縮合することにより該ピロリン酸ピペラジンを安価に高純度で得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ピロリン酸ピペラジンは、合成樹脂に添加される難燃剤組成物の1成分として優れた効果を発揮するとして、注目を集めている。かかるピロリン酸ピペラジンの製造方法に関しては、既に多くの報告がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、ピペラジン塩酸塩とピロリン酸ナトリウムとを水溶液中で反応させて、ピロリン酸ピペラジンを水難溶性の沈殿として得る方法が開示されている。また、特許文献2には、無水ピペラジンとピロリン酸ナトリウム無水物とを水溶液中で反応させて塩酸処理し、ピロリン酸ピペラジンを水難溶性の沈殿として得る方法が開示されている。また、特許文献3には、ピロリン酸ナトリウムを塩酸処理し、得られたピロリン酸とヒドラジンとを水溶液中で反応させて、ピロリン酸ピペラジンを水難溶性の沈殿として得る方法が開示されている。
より詳細には、特許文献1の製造例2には、ピペラジン6水和物194gを500mlの水に溶解し、この水溶液に塩酸73gを含む300mlの塩酸水溶液を冷却しつつかきまぜながら加え、このピペラジン2塩酸水溶液にピロりん酸ナトリウム10水和物223gを1Lの水に溶解した水溶液を加えると、ピペラジンピロりん酸塩が析出すると記載されている。
特許文献2のPREPARATION Cには、無水ピペラジン43g(1当量)及びピロリン酸ナトリウム十水和物111g(1当量)を1500gの水に溶解させ、この水溶液に、塩酸36g(1当量)を水200gに溶解した溶液を、撹拌しながら加えたところ、ピロリン酸ピペラジンが析出したと記載されている。
また、特許文献4には、5Lビーカーに、ピロリン酸ナトリウム十水和物750gを水2500ccに懸濁させた懸濁液を調製し、約10℃に冷却し、約12℃を超えないように保ちながら、37%塩酸563ccを加えて酸性にした後、ここにピペラジン(97%)149gを水625ccに溶解した水溶液を、約22℃を超えないように保ちながら加え、約7℃で2〜3時間撹拌を続け、ピロリン酸ピペラジンを得たことが記載されている。
また、特許文献5及び6には、リン酸エステル化合物が難燃剤として記載されており、特許文献7には、硼酸亜鉛が難燃剤として記載されている。
【0004】
しかしながら、特許文献1〜3に開示された方法においては、実際には、水洗をもってしても、副生する塩化ナトリウムやピロリン酸ピペラジンナトリウム塩を完全に除去することが困難であった。また、一般的に、系中にアルカリ性物質が残存していると、上記ピロリン酸ピペラジンを半導体、電子機器等に使用した際に悪影響を及ぼす可能性があることが知られている。さらに、これらの方法においては、生成率が悪いこと、原料が高価であること、廃棄物の処理にコストがかかること、及び塩酸を使用するため製造にグラスライニング槽を必要とすることが原因となって、安価に製造できないことが問題となっていた。
また、特許文献4には、上述の手順でピロリン酸ピペラジンを得たことが記載されているにすぎず、特許文献5〜7には、上述の化合物がそれぞれ難燃剤として記載されているにすぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭48−88791号公報
【特許文献2】米国特許第3810850号明細書
【特許文献3】米国特許第4599375号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第126454号明細書
【特許文献5】特開2003−261711号公報
【特許文献6】特開2003−171548号公報
【特許文献7】特開2002−371198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする問題点は、上述のように、従来の方法により得られたピロリン酸ピペラジンを難燃剤組成物の1成分として用いた場合、不純物の影響により、この難燃剤組成物を使用した合成樹脂の物性が良好でなかったり、優れた難燃性を示す難燃剤組成物が得られていなかったということ、及び、従来の方法では安価にピロリン酸ピペラジンを製造することができなかったということである。
【0007】
従って、本発明の目的は、優れた難燃性を示す難燃剤組成物を提供し得る高純度のピロリン酸ピペラジン、及び該ピロリン酸ピペラジンを安価に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ピロリン酸ピペラジンとして、不純物含有量が特定量以下のものを用いることにより、優れた難燃性を示す難燃剤組成物を提供することができること、及び、このようなピロリン酸ピペラジンを、2リン酸ピペラジンを脱水縮合することにより提供できることを知見し、本発明に到達した。
【0009】
即ち、本発明は、合成樹脂100重量部に対し、ナトリウム含有量が10ppm以下である、下記化学式(I)でされるピロリン酸ピペラジン20〜60重量部を配合してなる難燃性合成樹脂組成物を提供するものである。
【0010】
【化1】
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、高純度のピロリン酸ピペラジン、及び該ピロリン酸ピペラジンを安価に得ることができる製造方法を提供することができ、この高純度のピロリン酸ピペラジンを用いることにより、優れた難燃性を示す難燃剤組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のピロリン酸ピペラジン及び難燃性合成樹脂組成物について、その好ましい実施形態に基づき詳細に説明する。
【0014】
本発明のピロリン酸ピペラジンは、ナトリウムの含有量が10ppm以下である。本発明のピロリン酸ピペラジンは、ナトリウムの含有量が10ppm以下であることにより、優れた難燃性を示す難燃剤組成物を提供することができ、該難燃剤組成物が配合された樹脂の物性を低下させることもない。
【0015】
本発明のピロリン酸ピペラジンにおける不純物としては、塩化ナトリウム、オルトリン酸、トリリン酸等が挙げられるが、本発明のピロリン酸ピペラジン中のこれらの不純物の含有量は、5重量%以下であることが好ましい。
【0016】
ナトリウムの含有量が10ppm以下である、上記化学式(I)で表される本発明のピロリン酸ピペラジンは、2リン酸ピペラジンを脱水縮合することにより得ることができる。2リン酸ピペラジンの脱水縮合は、2リン酸ピペラジンを、例えば、温度120〜320℃で、0.5〜3時間加熱することにより行なうことができる。
【0017】
上記2リン酸ピペラジンは、下記〔化2〕に示す反応式に従い、2等量のオルトリン酸と1等量のピペラジンとを反応させることにより得ることができる。この反応は、水、メタノール等の溶媒中、200〜250℃で、0.5〜1時間加熱することにより行なうことができる。
【0018】
【化2】
【0019】
上記2リン酸ピペラジンの脱水縮合を行なう手段としては、加熱及び脱水が行えるものであれば特に制限を受けるものではなく、例えば、加熱混錬設備、温風乾燥設備、又は溶剤による還流脱水法を用いることができる。
【0020】
上記加熱混錬設備を用いる方法は、詳細には、加熱温度120〜320℃、原料供給速度20〜100kg/h、回転数60〜1600rpmで2リン酸ピペラジンを脱水縮合するものである。上記加熱混錬設備としては、経済的に目的物であるピロリン酸ピペラジンを量産できるものであれば特に制限はなく、通常の混錬設備を用いることができ、例えば、押出し機、ヘンシェルミキサー、フラッシュミキサー、パドルミキサー、バンバリーミキサー、粉砕混合機、SCプロセッサ、プラストミル、KRCニーダー、真空ニーダー、加圧ニーダー等が挙げられる。これらの中でも、押出し機、ヘンシェルミキサーが、内容物と装置との接触が少なく、反応を効率よく進行させることができるため、好適である。
【0021】
上記温風乾燥設備を用いる方法は、詳細には、温風温度200〜350℃で2リン酸ピペラジンを脱水縮合するものである。温風乾燥設備としては、経済的に目的物であるピロリン酸ピペラジンを量産できるものであれば特に制限はなく、通常の温風乾燥設備を用いることができ、例えば、流動層乾燥機、振動乾燥機、振動流動層乾燥機、攪拌乾燥機、気流乾燥機、通気乾燥機、棚式乾燥機、ドライマイスター、ドラムドライヤー、エアドライヤー、マイクロウェーブドライヤー、スプレードライヤー、ディスクドライヤー、コニカルドライヤー、パドルドライヤー、ホッパードライヤー、ロータリードライヤー等が挙げられる。
【0022】
上記溶剤による還流脱水法は、具体的には、温度120〜320℃、高沸点不活性溶媒中、2リン酸ピペラジンを基準として0〜5重量%の触媒を用いて、2リン酸ピペラジンを脱水縮合する方法である。
【0023】
上記高沸点不活性溶媒は、水を同伴させることができる水の沸点以上の沸点を有する溶媒であり、その具体例としては、IP2028(出光石油化学製)、IP1620(出光石油化学製)、ノルマルパラフィン、流動パラフィン、キシレン、クメン、BTX、1,2,4,−トリメチルベンゼン、n−ウンデカン、n−ドデカン、n−トリデカン、n−テトラデカン、デカリン、ジペンテン、ビシクロヘキシル、エチルシクロヘキサン、p−メンタン、ショウノウ油、テレビン油、パイン油等が挙げられる。上記高沸点不活性溶媒は、沸点が100〜350℃であることが好ましく、上記具体例の中でも、IP2028、流動パラフィンは、溶媒の沸点が適当で、高純度のピロリン酸ピペラジンを効率よく得ることができるので好適である。また、上記高沸点不活性溶媒の使用量は、2リン酸ピペラジン100重量部に対して50〜500重量部が好ましい。
【0024】
上記触媒としては、リン酸ホウ素、リン酸、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アルミニウム等が挙げられ、これらの中でもリン酸ホウ素、リン酸は反応を促進するため好適であるが、触媒を用いなくてもよい。
【0025】
2リン酸ピペラジンを脱水縮合することにより製造された本発明のピロリン酸ピペラジンは、不純物をほとんど含有せず、耐熱性、耐水性等の物性に優れている。
【0026】
従って、本発明の製造方法によって得られたピロリン酸ピペラジンは、耐水性に優れているため、樹脂の難燃剤として好適に使用することができ、さらに、耐熱性に優れているため、樹脂の難燃剤として使用したとき、成形時の温度で組成変化を生じることがない。上記樹脂としては、種々の合成樹脂が挙げられ、具体的には、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、ポリブテン−1、ポリ−3−メチルペンテン等のα−オレフィン重合体又はエチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−プロピレン共重合体等のポリオレフィン及びこれらの共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、塩化ゴム、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−エチレン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル−塩化ビニリデン−酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル−アクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル−マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル−シクロヘキシルマレイミド共重合体等の含ハロゲン樹脂、石油樹脂、クマロン樹脂、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリル樹脂、スチレン及び/又はα−メチルスチレンと他の単量体(例えば、無水マレイン酸、フェニルマレイミド、メタクリル酸メチル、ブタジエン、アクリロニトリル等)との共重合体(例えば、AS樹脂、ABS樹脂、MBS樹脂、耐熱ABS樹脂等)、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート等の直鎖ポリエステル、ポリフェニレンオキサイド、ポリカプロラクタム及びポリヘキサメチレンアジパミド等のポリアミド、ポリカーボネート、ポリカーボネート/ABS樹脂、分岐ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリウレタン、繊維素系樹脂等の熱可塑性樹脂及びこれらのブレンド物あるいはフェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂が挙げられ、特にポリプロピレン樹脂が好ましい。
【0027】
本発明のピロリン酸ピペラジンを難燃剤として使用する場合には、上記樹脂100重量部に対して20〜60重量部配合することが好ましい。また、本発明のピロリン酸ピペラジンと共に、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸ピペラジン、ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アミド、リン酸エステル、リン酸エステルアミド等のその他の難燃剤、及び、ポリシロキサン化合物、金属酸化物、二酸化ケイ素、高級脂肪族カルボン酸等の配合剤を併用することができる。この場合、その他の難燃剤の配合量は、本発明のピロリン酸ピペラジン100重量部に対して50〜400重量部が好ましく、配合剤の配合量は、上記樹脂100重量部に対して0.05〜20重量部が好ましい。また、これらを予め混合して難燃剤組成物としてから上記樹脂に配合することもできる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例、比較例及び応用例等をもって本発明を詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例等により何ら制限されるものではない。
【0029】
下記実施例及び比較例で得られたピロリン酸ピペラジンの純度、ナトリウム含有量及び分解点の測定は、それぞれ以下の測定方法に従って行った。
【0030】
<純度の測定方法>
(株)センシュー科学製HPLC装置(ポンプ;SSC−3150,RI検出器;ERC−7515A)、日本分光製カラムオーブン(CO−965)、ショーデックス製OH pakカラム(SB−802.5 HQ)を用い、温度40℃、流速1.0ml/min、感度32×10-5RIU/F.S.の条件で純度の測定を行った。
【0031】
<ナトリウム含有量の測定方法>
ICP発光分析装置による元素分析により、ナトリウム含有量を定量した。
【0032】
<分解点の測定>
TG測定を行い、5%重量減少が起こった温度(サンプルの重量が5重量%減少した温度)を分解点とした。
【0033】
〔実施例1〕
押出し機(日本製鋼所製、TEX44αII−52.5BW)を用い、シリンダ温度230〜280℃、原料供給速度25kg/h、スクリュー回転数60rpmの条件で2リン酸ピペラジンを加熱混合し、ピロリン酸ピペラジンの白色粉末を得た。
【0034】
〔実施例2〕
ヘンシェルミキサー(三井鉱山製、FM150J/T、容量150L)を用い、加熱温度190〜250℃、回転数704〜1000rpmの条件で1時間、2リン酸ピペラジン40kgを加熱混合し、ピロリン酸ピペラジンの白色粉末を得た。
【0035】
〔実施例3〕
ヘンシェルミキサー(三井鉱山製、FM150J/T、容量150L)を用い、加熱温度170〜250℃、回転数990〜1590rpmの条件で1時間、2リン酸ピペラジン5kg及び75重量%リン酸100gを加熱混合し、ピロリン酸ピペラジンの白色粉末を得た。
【0036】
〔実施例4〕
攪拌機、滴下ロート、温度計及びDean−Starkコンデンサーを装着した四つ口フラスコに、2リン酸ピペラジン30g、IP2028の100g及び85重量%リン酸0.9gを入れ、210〜230℃で2時間加熱混合し、ピロリン酸ピペラジンの白色粉末27.1g(収率97%)を得た。
【0037】
〔実施例5〕
攪拌機、滴下ロート、温度計及びDean−Starkコンデンサーを装着した四つ口フラスコに、2リン酸ピペラジン30g、IP2028の100g及びリン酸ホウ素0.9gを入れ、210〜230℃で2時間加熱混合し、ピロリン酸ピペラジンの白色粉末27.5g(収率98%)を得た。
【0038】
〔実施例6〕
攪拌機、滴下ロート、温度計及びDean−Starkコンデンサーを装着した四つ口フラスコに、2リン酸ピペラジン30g及びIP2028の100gを入れ、240〜250℃で2時間加熱混合し、ピロリン酸ピペラジンの白色粉末26.2g(収率94%)を得た。
【0039】
〔実施例7〕
攪拌機、滴下ロート、温度計及びDean−Starkコンデンサーを装着した四つ口フラスコに、2リン酸ピペラジン300g及びノルマルパラフィンH(新日本石油製)1000gを入れ、230〜250℃で0.5時間加熱混合し、ピロリン酸ピペラジンの白色粉末271.2g(収率97%)を得た。
【0040】
〔実施例8〕
押出し機(日本製鋼製、TEX44αII−52.5BW)を用い、シリンダ温度230〜270℃、原料供給速度60kg/h、スクリュー回転数60rpmの条件で2リン酸ピペラジン及びリン酸メラミンを1:1の重量比で加熱混合し、ピロリン酸ピペラジンとピロリン酸メラミンとの重量比1:1の混合物を得た。得られた混合物は、固体の白色粉末であり、ナトリウム含有量が0ppmで、1%重量減少温度が300℃であった。
【0041】
〔比較例1〕
ピロリン酸ナトリウム0.5モルを水300gに分散し、10℃に冷却して塩酸1モルを加えた。ここに、水800gに溶解したピペラジン(純度97%)0.5モルを20℃以下で加えると、白色固体が析出した。この反応系を10℃で3時間攪拌した後、白色固体をろ過して水で洗浄した。さらに、ろ液にメタノール300gを加え、析出した白色固体をろ過してメタノール及び水で洗浄した。得られた全ての白色固体を乾燥し、ピロリン酸ピペラジンの白色粉末0.23モルを得た。
【0042】
実施例1〜7及び比較例1で得られたピロリン酸ピペラジンの純度、ナトリウム含有量及び分解点を、それぞれ上述した測定方法により測定した。測定結果を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
〔応用例及び比較応用例〕
ポリプロピレン樹脂(三井化学株式会社:射出成形用グレード)100重量部に、ステアリン酸カルシウム(滑剤)0.1重量部、テトラキス{3−(3,5−ジ第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸メチル}メタン(フェノール系酸化防止剤)0.1重量部、及びビス(2,6−ジ第三ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(リン系酸化防止剤)0.1重量部を配合して、ポリプロピレン樹脂組成物を得た。得られたポリプロピレン樹脂組成物に、表1記載の難燃剤組成物及び他の配合剤(SiO2)を配合し、200〜230℃で押し出してペレットを製造した。該ペレットを使用して220℃で射出成型し、厚さ1.6mmの試験片を得た。得られた試験片を用いて下記難燃性UL−94V試験を行なった。ただし、難燃剤としてのピロリン酸ピペラジンは、製造後、50℃、荷重0.175kg・cm-1で1週間保存後のものを使用した。
【0045】
<難燃性UL−94V試験>
長さ127mm、幅12.7mm、厚さ1.6mmの試験片を垂直に保ち、下端にバーナの火を10秒間接炎させた後、炎を取り除き、試験片に着火した火が消える時間を測定した。次に、火が消えると同時に2回目の接炎を10秒間行ない、1回目と同様にして着火した火が消えるまでの時間を測定した。また、試験片から落下する火種により試験片の下の綿が着火するか否かについても同時に評価した。
【0046】
1回目及び2回目の燃焼時間、綿着火の有無等から、UL−94V規格に従って燃焼ランクをつけた。燃焼ランクはV−0が最高であり、以下、V−1、V−2の順に難燃性は低下する。但し、V−0〜V−2のランクの何れにも該当しないものはNRとする。さらに酸素指数についても試験を行った。
【0047】
【表2】
【0048】
表1より明らかなように、本発明の製造方法で得られたピロリン酸ピペラジンは、従来の製造方法で得られたものに比べて、ナトリウム含有量が低く、また収率もはるかに高かった。
また、表2から明らかなように、本発明の製造方法で得られた、ナトリウム含有量が10ppm以下であるピロリン酸ピペラジンを用いた難燃剤組成物は、難燃性試験の結果が良好であり、酸素指数も高かった。
【0049】
以上の結果より、ナトリウム含有量が10ppm以下である高純度のピロリン酸ピペラジンを用いることにより、優れた難燃性を有する難燃剤組成物が得られること、及び本発明の製造方法によりこのような高純度のピロリン酸ピペラジンを得られることが明らかである。