(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
支持基板の上面側に、中間電極、下側第1導電型半導体層、第1発光層、第2導電型半導体層、前記第1発光層と同一の発光波長を有する第2発光層、上側第1導電型半導体層および上側電極を順次具え、
前記上側第1導電型半導体層および第2発光層を貫通する凹部に設けられ、前記第2導電型半導体層と電気的に接続する基準電極を有し、
前記第1発光層の電流が流れる有効領域を規制する絶縁部を有し、前記第1発光層および前記第2発光層の有効領域の面積が等しいことを特徴とする半導体発光素子。
支持基板の上面側に、中間電極、下側第1導電型半導体層、第1発光層、第2導電型半導体層、前記第1発光層と同一の発光波長を有する第2発光層、上側第1導電型半導体層および上側電極を順次具え、
前記上側第1導電型半導体層および第2発光層を貫通する凹部に設けられ、前記第2導電型半導体層と電気的に接続する基準電極を有し、
前記第1発光層を、電流が流れる有効領域と電流が流れない無効領域とに分離する絶縁部を有し、前記第1発光層および前記第2発光層の有効領域の面積が等しいことを特徴とする半導体発光素子。
仮基板上に、上側第1導電型半導体層、第2発光層、第2導電型半導体層、前記第2発光層と同一の発光波長を有する第1発光層、下側第1導電型半導体層を順次形成する工程と、
前記下側第1導電型半導体層の表面に前記第1発光層まで貫通する溝を形成し、前記第1発光層の電流が流れる有効領域を規制する絶縁部を形成する工程と、
前記下側第1導電型半導体層の表面に中間電極および支持基板を順次設ける工程と、
前記仮基板を除去または分離する工程と、
前記上側第1導電型半導体層上に上側電極を形成する工程と、
前記上側第1導電型半導体層および第2発光層を貫通する凹部を設ける工程と、
該凹部内に、前記第2導電型半導体層と電気的に接続する基準電極を形成する工程と、を有し、
前記溝および前記絶縁部を形成する工程と、前記凹部を設ける工程とより、前記第1発光層および前記第2発光層の有効領域の面積を等しくすることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
仮基板上に、上側第1導電型半導体層、第2発光層、第2導電型半導体層、前記第2発光層と同一の発光波長を有する第1発光層、下側第1導電型半導体層を順次形成する工程と、
前記下側第1導電型半導体層の表面に前記第1発光層まで貫通する溝を形成し、前記第1発光層を、電流が流れる有効領域と電流が流れない無効領域とに分離する絶縁部を形成する工程と、
前記下側第1導電型半導体層の表面に中間電極および支持基板を順次設ける工程と、
前記仮基板を除去または分離する工程と、
前記上側第1導電型半導体層上に上側電極を形成する工程と、
前記上側第1導電型半導体層および第2発光層を貫通する凹部を設ける工程と、
該凹部内に、前記第2導電型半導体層と電気的に接続する基準電極を形成する工程と、を有し、
前記溝および前記絶縁部を形成する工程と、前記凹部を設ける工程とにより、前記第1発光層および前記第2発光層の有効領域の面積を等しくすることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、所定の発光ピーク波長を有するLEDの最大電流値、発光出力および順方向電圧といった特性を向上させるべく、種々の検討を行った。ここで、チップサイズの大きいLED、すなわち、チップの垂直方向を光放射方向とした場合、この垂直方向から見た発光層の面積が大きなLEDは、電流密度を抑えつつ、大きな電流を流すことが可能である。しかしながら、チップサイズが大きいことは、基板1枚あたりから作製できるチップ個数が減少することを意味し、製造コストが上がってしまう。さらに、このようなLEDは携帯電話など小さいチップサイズが求められる用途に適用できない。
【0008】
そこで、本発明者らは、特許文献1に記載されるような素子構造で、同一の発光ピーク波長をもつ2層の発光層を垂直に積層したLEDを検討した。ここで、特許文献1の素子構造のうち、第1の素子構造(pn接合型)の場合、トンネル接合には高キャリアドープのpn接合が必要であるが、このトンネル接合を得るための高ドープ自体が困難な上、ドーパントの拡散により発光素子の信頼性を低下させるおそれがある。そこで、本発明者らは、第2の素子構造(pn−np構造)のLEDを検討した。
【0009】
しかしながら、本発明者らの検討によると、当該素子構造のLEDでは、発光層が1層のLEDと比べて、多少の最大電流値の向上および順方向電圧の低下が見られたものの、発光出力はほぼ変わらず、発光層を2層にしたことにより得られると予想したほどの特性の向上を得ることができないことが判明した。
【0010】
そこで本発明は、上記課題に鑑み、同一の発光ピーク波長をもつ2層の発光層を有する半導体発光素子であって、高い最大電流値および発光出力を低い順方向電圧で得ることが可能な半導体発光素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0011】
なお、本発明は、同一の発光ピーク波長をもつ2層の発光層を有する半導体発光素子に関するものであり、特許文献2のような、互いに異なる波長の光を放出する発光層を2層設けたものとは無関係である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的を達成すべく本発明者らがさらに検討したところ、以下の知見を得た。pn−np構造のLEDの場合、基準電極から第1発光層を介して裏面電極へ、第2発光層を介して表面電極へと、それぞれ電流が流れるため、第1発光層と第2発光層とは直列回路ではなく、並列回路で駆動している。pn接合型のLEDのように第1および第2発光層が直列回路で駆動している場合には、第1発光層における抵抗成分と第2発光層における抵抗成分とが異なっていても、各発光層に流れる電流密度は同じである。しかし、並列回路の場合、第1発光層側の回路の抵抗成分と、第2発光層側の回路の抵抗成分の値に応じて、電流密度が分配されることになる。本発明者らはこの点に着目し、2つの並列回路の抵抗成分が異なる場合、抵抗値が低い回路側に優先的に電流が流れる結果、この電流の流れやすい発光層から先に発光出力が飽和し、思ったほどにチップ全体の出力値が向上しないとの着想に至った。
【0013】
そこで本発明者らは、第1発光層を含む電流回路と第2発光層を含む電流回路との抵抗成分をより近づけるように素子構造を工夫することにより、発光素子の特性を飛躍的に向上させることができることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、電流回路の中で最も抵抗成分の大きい発光層に着目し、第1発光層および第2発光層の抵抗に起因する要素(組成、面積、厚さ、配置等)を近づけることで、電流の偏りを低減することができ、特性を飛躍的に向上させることができることを見出した。
【0014】
本発明は、上記知見に基づきなされたものであり、その要旨構成は以下の通りである。
(1)支持基板の上面側に、中間電極、下側第1導電型半導体層、第1発光層、第2導電型半導体層、前記第1発光層と同一の発光波長を有する第2発光層、上側第1導電型半導体層および上側電極を順次具え、
前記上側第1導電型半導体層および第2発光層を貫通する凹部に設けられ、前記第2導電型半導体層と電気的に接続する基準電極を有し、
前記第1発光層の電流が流れる有効領域を規制する絶縁部を有
し、前記第1発光層および前記第2発光層の有効領域の面積が等しいことを特徴とする半導体発光素子。
【0015】
(2)支持基板の上面側に、中間電極、下側第1導電型半導体層、第1発光層、第2導電型半導体層、前記第1発光層と同一の発光波長を有する第2発光層、上側第1導電型半導体層および上側電極を順次具え、
前記上側第1導電型半導体層および第2発光層を貫通する凹部に設けられ、前記第2導電型半導体層と電気的に接続する基準電極を有し、
前記第1発光層を、電流が流れる有効領域と電流が流れない無効領域とに分離する絶縁部を有
し、前記第1発光層および前記第2発光層の有効領域の面積が等しいことを特徴とする半導体発光素子。
【0017】
(
3)前記第1発光層の無効領域と前記第2発光層を貫通する凹部とは、素子上面から見て中心位置が一致する上記(2)に記載の半導体発光素子。
【0018】
(
4)前記上側電極および前記中間電極の面積が等しい上記(1)〜(
3)のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【0019】
(
5)前記第1発光層および前記第2発光層の厚さが等しく、前記下側第1導電型半導体層および前記上側第1導電型半導体層の厚さが等しい上記(1)〜(
4)のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【0020】
(
6)前記下側第1導電型半導体層および前記上側第1導電型半導体層の組成が等しい上記(1)〜(
5)のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【0021】
(
7)前記第2導電型半導体層の中間にコンタクト層を具え、前記第2導電型半導体層が前記コンタクト層の上側層と下側層とに分割され、
前記基準電極が前記コンタクト層上に配置される上記(1)〜(
6)のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【0022】
(
8)前記上側層および前記下側層の厚さが等しい上記(
7)に記載の半導体発光素子。
【0023】
(
9)前記中間電極の外部との電気的接続を仲介する下側電極を有する上記(1)〜(
8)のいずれか1項に記載の半導体発光素子。
【0024】
(
10)仮基板上に、上側第1導電型半導体層、第2発光層、第2導電型半導体層、前記第2発光層と同一の発光波長を有する第1発光層、下側第1導電型半導体層を順次形成する工程と、
前記下側第1導電型半導体層の表面に前記第1発光層まで貫通する溝を形成し、前記第1発光層の電流が流れる有効領域を規制する絶縁部を形成する工程と、
前記下側第1導電型半導体層の表面に中間電極および支持基板を順次設ける工程と、
前記仮基板を除去または分離する工程と、
前記上側第1導電型半導体層上に上側電極を形成する工程と、
前記上側第1導電型半導体層および第2発光層を貫通する凹部を設ける工程と、
該凹部内に、前記第2導電型半導体層と電気的に接続する基準電極を形成する工程と、を有
し、
前記溝および前記絶縁部を形成する工程と、前記凹部を設ける工程とにより、前記第1発光層および前記第2発光層の有効領域の面積を等しくすることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【0025】
(
11)仮基板上に、上側第1導電型半導体層、第2発光層、第2導電型半導体層、前記第2発光層と同一の発光波長を有する第1発光層、下側第1導電型半導体層を順次形成する工程と、
前記下側第1導電型半導体層の表面に前記第1発光層まで貫通する溝を形成し、前記第1発光層を、電流が流れる有効領域と電流が流れない無効領域とに分離する絶縁部を形成する工程と、
前記下側第1導電型半導体層の表面に中間電極および支持基板を順次設ける工程と、
前記仮基板を除去または分離する工程と、
前記上側第1導電型半導体層上に上側電極を形成する工程と、
前記上側第1導電型半導体層および第2発光層を貫通する凹部を設ける工程と、
該凹部内に、前記第2導電型半導体層と電気的に接続する基準電極を形成する工程と、を有
し、
前記溝および前記絶縁部を形成する工程と、前記凹部を設ける工程とにより、前記第1発光層および前記第2発光層の有効領域の面積を等しくすることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【0027】
(
12)前記第1発光層の無効領域と前記第2発光層を貫通する凹部とは、素子上面から見て中心位置を一致させる上記(
11)に記載の半導体発光素子の製造方法。
【0028】
(
13)前記上側電極および前記中間電極の面積を等しくする上記(
10)〜(
12)のいずれか1項に記載の半導体発光素子の製造方法。
【0029】
(
14)前記第1発光層および前記第2発光層の厚さを等しく、前記下側第1導電型半導体層および前記上側第1導電型半導体層の厚さを等しくする上記(
10)〜(
13)のいずれか1項に記載の半導体発光素子の製造方法。
【0030】
(
15)前記下側第1導電型半導体層および前記上側第1導電型半導体層の組成を等しくする上記(
10)〜(
14)のいずれか1項に記載の半導体発光素子の製造方法。
【0031】
(
16)前記第2導電型半導体層の中間にコンタクト層を設け、前記第2導電型半導体層を前記コンタクト層の上側層と下側層とに分割し、
前記基準電極を前記コンタクト層上に配置する上記(
10)〜(
15)のいずれか1項に記載の半導体発光素子の製造方法。
【0032】
(
17)前記上側層および前記下側層の厚さを等しくする上記(
16)に記載の半導体発光素子の製造方法。
【0033】
(
18)前記支持基板の前記中間電極とは反対側に、前記中間電極の外部との電気的接続を仲介する下側電極を形成する工程を有する上記(
10)〜(
17)のいずれか1項に記載の半導体発光素子の製造方法。
(19)支持基板の上面側に、中間電極、下側第1導電型半導体層、第1発光層、第2導電型半導体層、前記第1発光層と同一の発光波長を有する第2発光層、上側第1導電型半導体層および上側電極を順次具え、
前記上側第1導電型半導体層および第2発光層を貫通する凹部に設けられ、前記第2導電型半導体層と電気的に接続する基準電極を有し、
前記第1発光層の電流が流れる有効領域を規制する絶縁部を有し、
前記上側電極および前記中間電極の面積を等しいことを特徴とする半導体発光素子。
(20)支持基板の上面側に、中間電極、下側第1導電型半導体層、第1発光層、第2導電型半導体層、前記第1発光層と同一の発光波長を有する第2発光層、上側第1導電型半導体層および上側電極を順次具え、
前記上側第1導電型半導体層および第2発光層を貫通する凹部に設けられ、前記第2導電型半導体層と電気的に接続する基準電極を有し、
前記第1発光層を、電流が流れる有効領域と電流が流れない無効領域とに分離する絶縁部を有し、
前記上側電極および前記中間電極の面積を等しいことを特徴とする半導体発光素子。
(21)仮基板上に、上側第1導電型半導体層、第2発光層、第2導電型半導体層、前記第2発光層と同一の発光波長を有する第1発光層、下側第1導電型半導体層を順次形成する工程と、
前記下側第1導電型半導体層の表面に前記第1発光層まで貫通する溝を形成し、前記第1発光層の電流が流れる有効領域を規制する絶縁部を形成する工程と、
前記下側第1導電型半導体層の表面に中間電極および支持基板を順次設ける工程と、
前記仮基板を除去または分離する工程と、
前記上側第1導電型半導体層上に上側電極を形成する工程と、
前記上側第1導電型半導体層および第2発光層を貫通する凹部を設ける工程と、
該凹部内に、前記第2導電型半導体層と電気的に接続する基準電極を形成する工程と、を有し、
前記上側電極および前記中間電極の面積を等しくすることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
(22)仮基板上に、上側第1導電型半導体層、第2発光層、第2導電型半導体層、前記第2発光層と同一の発光波長を有する第1発光層、下側第1導電型半導体層を順次形成する工程と、
前記下側第1導電型半導体層の表面に前記第1発光層まで貫通する溝を形成し、前記第1発光層を、電流が流れる有効領域と電流が流れない無効領域とに分離する絶縁部を形成する工程と、
前記下側第1導電型半導体層の表面に中間電極および支持基板を順次設ける工程と、
前記仮基板を除去または分離する工程と、
前記上側第1導電型半導体層上に上側電極を形成する工程と、
前記上側第1導電型半導体層および第2発光層を貫通する凹部を設ける工程と、
該凹部内に、前記第2導電型半導体層と電気的に接続する基準電極を形成する工程と、を有し、
前記上側電極および前記中間電極の面積を等しくすることを特徴とする半導体発光素子の製造方法。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、同一の発光ピーク波長をもつ2層の発光層を有する半導体発光素子において、発光に寄与するはずの発光層の一部にあえて電流を流さないための絶縁部を形成することで、第1発光層と第2発光層の抵抗成分を近づけるようにすることにより、高い最大電流値および発光出力を低い順方向電圧で得ることが可能となった。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、図面を参照しつつ本発明をより詳細に説明する。なお、本明細書において、本発明に従う半導体発光素子と比較例の半導体発光素子とで共通する構成要素には、原則として下2桁が同一の参照番号を付し、説明は省略する。また、発光素子の模式断面図においては、説明の便宜上、各層の厚さが実状とは異なる比率で誇張して示す。
【0037】
(実施形態1:半導体発光素子100)
本発明の一実施形態である半導体発光素子100は、
図1(A)に示すとおり、支持基板102の上面側に、中間電極(発光層側コンタクト金属層)104、下側第1導電型半導体層としてのn型半導体層106、第1発光層108、第2導電型半導体層としてのp型半導体層110、第1発光層108と同一の発光波長を有する第2発光層112、上側第1導電型半導体層としてのn型半導体層114および上側電極116を順次具え、支持基板102の下面側に設けられる下側電極118と、上側第1導電型半導体層114および第2発光層112を貫通する凹部120に設けられ、第2導電型半導体層110と電気的に接続する基準電極122と、を有する。この素子100は、第1および第2発光層108,112を含むエピタキシャル膜を成長させた仮基板と支持基板102とを接合して形成したウェーハ貼り合わせ型の素子であり、支持基板側コンタクト金属層130を介して形成された支持基板側接合金属層132と、発光層側接合金属層128との間で接合され、仮基板は接合後に除去または分離される。
【0038】
この素子100の実装例として、基準電極122は正極(+)端子へ、上側電極116および下側電極118は負極(−)端子へ接続される。すると、基準電極122から第1発光層108を介して中間電極104、支持基板102さらには下側電極118へと電流が流れる第1回路と、基準電極122から第2発光層112を介して上側電極116へと電流が流れる第2回路との2つの並列回路が形成される。
【0039】
ここで素子100では、
図1(A)および(B)に示すように、円形の凹部120により第2発光層112の一部が除去されているため、第2発光層112は、除去された分だけ第1発光層108よりも面積が小さくなっている。そこで、素子100では、絶縁部126を設け、第1発光層108の一部分を絶縁部126である円形の突起によって区切る。すなわち、第1発光層108を電流が流れる領域108a(以下、「有効領域」という。)と電流が流れない領域108b(以下、「無効領域」という。)とに分離する。すなわち、凹部120の存在により生じる第1発光層108と第2発光層112との有効領域の面積差を補償するように、絶縁部126を設ける。これにより、第1発光層108の電流が流れる有効領域108aの面積を第2発光層112の電流が流れる面積に近づけることができ、第1および第2回路における各発光層での抵抗成分をより近づけることができる。そのため、第1発光層108および第2発光層112により均等に電流が流れ、発光素子100の特性を飛躍的に向上させることができる。
【0040】
素子100では、凹部120により除去された第2発光層112の面積分だけ、第1発光層108の一部分を絶縁部126である円形の突起によって区切る。
図1(B)の破線が、第2発光層112の凹部120による除去部分および第1発光層108の絶縁部126による隔離部分を示している。このように、第1発光層108および第2発光層112の電流が流れる部分(有効領域)の面積が等しくすることで、第1発光層108および第2発光層112にさらに均等に電流が流れ、発光素子100の特性を飛躍的に向上させることができる。
【0041】
ここで、
図1では絶縁部126により区切られた無効領域には第1発光層108bおよび下側第1導電型半導体層106を残しているが、無効領域の内側については図示した例に限定されず、無効領域の内部については絶縁部やその他の材料とすることも可能である。すなわち、本発明における絶縁部は、第1発光層108の電流が流れる有効領域を規制して、上記の作用効果を生じさせるものであれば特に限定されない。ただし、例えば熱膨張係数差や基準電極形成によるクラック等の問題が生ずる場合には、発光素子にとって異種材料である絶縁部は必要十分な形とすることが好ましく、無効領域の内側の第1発光層108bおよび下側第1導電型半導体層106は残すほうがより好ましい。
【0042】
また、
図1(A)および(B)に示すように、第1発光層108の無効領域108bと第2発光層112を貫通する凹部120とは、素子上面から見て中心位置が一致することが好ましい。これにより、第1および第2回路の電流経路をより等価にすることができ、第1および第2回路における抵抗成分をより近づけることができる。
【0043】
第1発光層108および第2発光層112の厚さは等しいことが好ましい。これにより、第1および第2回路における各発光層での抵抗成分を等しくすることができ、第1および第2回路における抵抗成分をより近づけることができる。
【0044】
下側第1導電型半導体層であるn型半導体層106および上側第1導電型半導体層であるn型半導体層114の厚さおよび/または組成を等しくすることは、第1および第2回路における抵抗成分をより近づけることができるため、好ましい。
【0045】
また、素子100は、第2導電型半導体層であるp型半導体層110の中間にコンタクト層124を具え、p型半導体層110がコンタクト層124を基準に上側層110aと下側層110bとに分割され、基準電極122がコンタクト層124上に配置されている。このとき、上側層110aおよび下側層110bの厚さを等しくすることにより、第1および第2回路における抵抗成分をさらに近づけることができるため、好ましい。
【0046】
ここで本明細書において「有効領域の面積が等しい」、「厚さが等しい」などの「等しい」との表現は、厳密に数学的な意味で面積、厚さなどが等しいことを意味するものではなく、製造工程上不可避な誤差をはじめ、本発明の作用効果を奏する範囲で許容される誤差を含むものであることは勿論であり、この点は他の実施形態においても同様である。このような誤差としては、3%以内を「等しい」に含めることとする。
【0047】
半導体層の各層を構成する好適な材料としては、化合物半導体が挙げられ、例えばIII−V族化合物半導体とすることができる。III−V族化合物半導体としては、例えばn型半導体層106,114およびp型半導体層110をそれぞれAlGaAs系材料、AlGaInP系材料、AlGaN系材料などとすることができる。p型不純物としては、Mg,Zn,C、n型不純物としては、Si,Te,Seが例示できる。発光層108,112はAlGaAs系材料、AlGaAsInP系材料、AlGaN系材料などからなる単層、あるいは多重量子井戸のような積層構造などとすることができる。これらはいずれも、MOCVD法など既知の手法を用いてエピタキシャル成長させることにより形成することができる。発光波長は発光層の材料構成によるため特に限定されず、例えば250〜950nmの範囲とすることができる。ここで、第1および第2発光層は同一の組成からなる発光層であり、本明細書において「同一の発光波長を有する」とは、発光ピーク波長が同一であることを意味する。ただし、面内分布等の結晶成長工程上不可避な誤差をはじめ、本発明の作用効果を奏する範囲で許容される誤差を含むものであることは勿論であり、第1回路における発光ピーク波長と第2回路における発光ピーク波長との間で20nm以内の誤差までは許容する。各層の厚みは、例えばn型半導体層106,114は1〜10μm、発光層108,112は10〜500nm(総厚)、p型半導体層110は1〜10μmとすることができる。なお、これまで本発明における第1伝導型をn型、第2伝導型をp型として半導体層を説明したが、本発明では他の実施形態の含めこれに限定されず、第1伝導型をp型、第2伝導型をn型としても良いことは勿論である。
【0048】
p型コンタクト層124は、第2導電型半導体層110と組成が異なる第2導電型半導体層であり、第2導電型半導体層110の厚さ方向の中央に位置することが好ましい。組成を変えることで、凹部120を形成する際にエッチングを停止するタイミングをコンタクト層の表面に合わせることができ、その位置を第2導電型半導体層110の厚さ方向の中央とすることで、基準電極122からの第2導電型半導体層110の厚さを、上方向と下方向で等しくすることができる。コンタクト層124の組成は、ウェットエッチングやドライエッチングの条件によって、他に比べてエッチング速度が遅くなるなど、エッチングを止めるタイミングが分かりさえすれば特に限定されない。例えば、850nm帯のAlGaAs赤外LEDであれば、p型コンタクト層124のAl組成は0.4以上であることが望ましいが、Al組成が0.4未満であっても、エッチャントの組成を最適化させることで、エッチストップさせることは可能である。ただし、アンモニア過酸化水素混合液で行うためには、Al組成は半導体層110<p型コンタクト層124の関係が必要である。このように、AlGaAs系ではアンモニア過酸化水素水系のエッチング液組成によって、特定のAl含有量範囲の組成のエッチングを停止できる。なお、コンタクト層124は基準電極122との間の抵抗が小さくなるように設計し、第2導電型半導体層110に対してドーパントの種類やドーピング量を変えても良い。
【0049】
支持基板102を構成する好適な材料としては、例えばSi、GaAs、Ge等の半導体材料のほか、AlやCuなどの金属またはその合金材料等が挙げられ、好適には100〜400μmの厚さを有する。
【0050】
上側電極116は、例えばAuGe系合金材料からなるオーミックコンタクト層(50〜1000nm)、および、密着層としてのTi上にAuを形成したTi/Au電極からなるワイヤーボンディング用のパッド層(Ti:50〜200nm、Au:1〜3μm)からなる構造とすることができる。Au系合金材料としては、AlGaAs系材料に接する電極の場合、AuGe/Ni/Auを使用できる。
【0051】
基準電極122は、例えばAu系合金材料からなるオーミックコンタクト層(50〜1000nm)、および、密着層としてのTi上にAuを形成したTi/Au電極からなるワイヤーボンディング用のパッド層(例えばTi:50〜200nm、Au:1〜3μm)からなる構造とすることができる。Au系合金材料としては、例えばAlGaAs系材料に接する電極の場合、AuZnを使用できる。
【0052】
下側電極118は、支持基板102が半導体材料の場合、その半導体材料とオーミック接合を形成する材料から選択され、例えば支持基板としてn型GaAsを選択した場合には、AuGe/Ni/Auの積層などを選択できる。支持基板102として金属基板を使用した場合には、支持基板102が下側電極を兼ねる構造を選択することも可能である。支持基板側コンタクト金属層130も同様である。
【0053】
本実施形態において、下側電極118は中間電極の外部との電気的接続を仲介する役割を担うものであり、支持基板102を電流経路としない場合は、支持基板の上に下側電極118を形成して中間電極と直接接続してもよい。さらに、支持基板102として金属基板や金属メッキ等を使用した場合には、支持基板102自体が下側電極118を兼ねる構造とすることも可能であり、支持基板102を下側電極118とみなすこともできる。なお、本発明では第1発光層108を含む第1回路に流れる電流を中間電極104から取り出せればよいので、下側電極118は必須の構成ではない。
【0054】
中間電極104は、下側第1導電型半導体層106(本実施形態ではn型半導体層)との良好なオーミック接触を形成するための電極である。中間電極104を構成する好適な材料としては、例えばAuGe,NiおよびAuを順次形成したAuGe/Ni/Au電極が挙げられ、好適には100〜1000nmの厚さを有する。
【0055】
支持基板側接合金属層132および発光層側接合金属層128は、例えばTi/Au積層体(Au厚さ:数μm)などが挙げられる。
【0056】
絶縁部126としては、例えばSiN,SiO
2,AlNなどが挙げられ、好適には100〜1000nmの厚さを有し、突起部分を除いて中間電極104と同じ膜厚を有する。
【0057】
なお、本明細書におけるウェーハ上での膜厚の測定方法は、触針式段差計によるものであり、ウェーハ面内の5点(本実施例の3インチ基板の場合、ウェーハ中央を通る対角線上で、ウェーハ外周から1cm内側の2点を両端として均等な距離の5点)の測定の平均値で求められる。
【0058】
次に、半導体発光素子100の製造方法の一例を説明する。まず、n型GaAs基板などの支持基板102上に、例えばスパッタリング法、電子ビーム蒸着法または抵抗加熱蒸着法により、支持基板側コンタクト金属層130および支持基板側接合金属層132を形成する(S1)。このとき、支持基板側コンタクト金属層130は、所定の熱処理を行い合金化する。なお、本明細書において「抵抗加熱蒸着法」とは、真空中で金属を加熱し、蒸発させることで蒸着する方法であり、蒸着金属を加熱するために、蒸着金属を載せる高融点材料の台(例えばタングステンの線やボート)に通電して金属抵抗で発生する熱で高温にする方法である。
【0059】
次に、n型GaAs基板などの仮基板(不図示)上にn型半導体層114、第2発光層112、p型半導体層(上側層)110a、コンタクト層124、p型半導体層(下側層)110b、第1発光層108、n型半導体層106を順次、例えばMOCVD法などによりエピタキシャル成長させて形成する(S2)。
【0060】
そして、第1発光層108の一部を隔離して有効領域108aと無効領域108bとに分けるための絶縁部126を形成すべく、n型半導体層106上に、第1発光層108まで達する円形またはドーナツ形の溝を形成する(S3)。この工程では、フォトレジストで所定パターンを形成し、その後、エッチングにより溝を形成する。レジスト除去後、プラズマCVD法またはスパッタ法などにより絶縁部を成膜し、フォトレジストで溝を外周とした円形のパターンを形成し、その後エッチングにより円形部分以外の絶縁部を除去し、第1発光層108まで達する突起を含む絶縁部126を形成する(S4)。なお、溝および絶縁部の形状は、第1発光層108に電流が流れない閉じた領域を形成しさえすれば上記に限定されない。絶縁部は、半導体発光素子に一般的に用いられる絶縁材料を使用すればよく、例えばSiN,SiO
2,AlNなどである。
【0061】
次に、n型半導体層106上に、例えばスパッタリング法、電子ビーム蒸着法または抵抗加熱蒸着法により、中間電極104および発光層側接合金属層128を形成する(S5)。なお、接合面を平坦化するために、中間電極104は前記の絶縁部以外の領域に形成してよい。
【0062】
ここで、発光層側接合金属層128と支持基板側接合金属層132とを、例えば250〜400℃の範囲の温度で15〜120分間加熱圧着することにより、仮基板と支持基板102とを接合する(S6)。その後、仮基板の除去・分離は、例えば研磨またはウェットエッチングにより行うことができる(S7)。エッチング液は、仮基板の材料または分離箇所に応じて適宜選択することができる。
【0063】
次に、n型半導体層114上に、例えばスパッタリング法、電子ビーム蒸着法または抵抗加熱蒸着法により、電極金属を成膜後、フォトリソグラフィーによりレジストパターン形成後、エッチングし、レジストを剥離することにより、所定形状の上側電極116を形成する(S8)。さらに、フォトレジストにより凹部120となる箇所以外の保護パターンを形成後、エッチングにより凹部120を形成する(S9)。この際、p型のコンタクト層124がエッチングストップ層として機能する。次に、基準電極122の形成を行う(S10)。具体的には、フォトレジストで電極形成部分以外を保護するパターンを形成し、例えばスパッタリング法、電子ビーム蒸着法または抵抗加熱蒸着法により、電極金属を成膜後、リフトオフによりレジスト上の金属をレジストとともに除去し、基準電極122の形成を行う。
【0064】
ここで、凹部120は、上記絶縁部126形成のために形成した溝の外周と、素子上面からみて少なくとも一部重複していることが好ましく、中心位置、形状共に等しいことが最も好ましい。さらに、凹部120の断面形状は、上記絶縁部126形成のために形成した溝の外周の断面形状と、コンタクト層124に対して対称とすることが好ましい。第2発光層112の有効面積と第1発光層108の有効面積とを等しくするためである。さらに、第1発光層108と第2発光層112の有効領域の位置を合わせ、基準電極122から等距離にするためである。さらに、基準電極122からは光の取り出しが困難であることから、その下の第1発光層108を発光させないことで、電流の消費効率を上げる二次的な効果もある。
【0065】
次に、支持基板の裏面(発光層が形成されていない側の面)上に、例えばスパッタリング法、電子ビーム蒸着法または抵抗加熱蒸着法により、電極金属を成膜し、所定の熱処理を行い合金化して下側電極118を形成する(S11)。最後に、ダイシングを行い(S12)、半導体発光素子100を用いたLED素子を作製することができる。
【0066】
(実施形態2:半導体発光素子200)
本発明の他の実施形態である半導体発光素子200は、
図2(A)に示すとおり、支持基板202の上面側に、中間電極(発光層側コンタクト金属層)204、下側第1導電型半導体層としてのn型半導体層206、第1発光層208、第2導電型半導体層としてのp型半導体層210、第1発光層208と同一の発光波長を有する第2発光層212、上側第1導電型半導体層としてのn型半導体層214および上側電極216を順次具え、支持基板202の下面側に設けられる下側電極218と、上側第1導電型半導体層214および第2発光層212を貫通する凹部220に設けられ、第2導電型半導体層210と電気的に接続する基準電極222と、を有する。この素子200は、第1および第2発光層208,212を含むエピタキシャル膜を成長させた仮基板と支持基板202とを接合して形成したウェーハ貼り合わせ型の素子であり、支持基板側コンタクト金属層230を介して形成された支持基板側接合金属層232と、発光層側接合金属層228との間で接合され、仮基板は接合後に除去または分離される。
【0067】
この素子200の実装例として、基準電極222は正極(+)端子へ、上側電極216および下側電極218は負極(−)端子へ接続される。すると、基準電極222から第1発光層208を介して中間電極204、支持基板202さらには下側電極218へと電流が流れる第1回路と、基準電極222から第2発光層212を介して上側電極216へと電流が流れる第2回路との2つの並列回路が形成される。
【0068】
ここで素子200は、凹部220および基準電極222を素子中央部分に設け、上側電極216は基準電極222を取り囲むように線状に矩形に配置した。また、上側電極216の一部にパッド電極217を形成した。さらに、中央電極204は、
図2(B)に破線で示すように、上面から見て基準電極を中心として均等に複数配置した。
【0069】
素子200も、素子100と同様、突起を有する絶縁部226によって第1発光層208の一部が隔離されており、第1発光層208を有効領域208aと無効領域208bとに分離している。そして、第1発光層208および第2発光層212の有効領域の面積が等しくなっている。さらに、
図2(A)および(B)に示すように、第1発光層208の無効領域208bと第2発光層212を貫通する凹部220とは、素子上面から見て中心位置が一致している。そのため、第1および第2回路における各発光層での抵抗成分をより近づけることができ、半導体発光素子の特性を向上させることができる。
【0070】
この素子200では、上側電極216の面積と中間電極204の面積が等しくなっており、第1および第2回路における各電極部分での抵抗成分をより近づけることができる。なお、中間電極204の面積は、複数の中間電極の面積の総和であり、
図2(B)には一部のみ図示しており他は省略されているため、実際は上側電極216と同じ面積分存在する。
【0071】
第1発光層208および第2発光層212の厚さは等しいことが好ましい。これにより、第1および第2回路における各発光層での抵抗成分を等しくすることができ、第1および第2回路における抵抗成分をより近づけることができる。
【0072】
下側第1導電型半導体層であるn型半導体層206および上側第1導電型半導体層であるn型半導体層214の厚さおよび/または組成を等しくすることは、第1および第2回路における抵抗成分をより近づけることができるため、好ましい。
【0073】
また、素子200は、第2導電型半導体層であるp型半導体層210の中間にコンタクト層224を具え、p型半導体層210がコンタクト層224を基準に上側層210aと下側層210bとに分割され、基準電極222がコンタクト層224上に配置されている。このとき、上側層210aおよび下側層210bの厚さを等しくすることにより、第1および第2回路における抵抗成分をさらに近づけることができるため、好ましい。
【0074】
素子200の各構成部位の好適な材料、厚さ等は実施形態1と同様である。また、素子200の製造方法の一例について、実施形態1および後述の比較例3の製造方法から明らかなので省略する。
【0075】
上述したところはいずれも代表的な実施形態の例を示したものであって、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。また、以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0076】
また、以下の実施例では、第1回路および第2回路の2つの並列回路に同時に電流を流した場合で評価しているが、第1回路および第2回路に別々に電流を流すことで、第1回路の特性(順方向電圧、波長等)と、第2回路の特性(順方向電圧、波長等)とを別々に評価して対比することにより、本発明の素子の検査をすることもできる。
【実施例】
【0077】
図1〜3に示す各実施形態の半導体発光素子を試作し、性能を評価したので、以下で説明する。
【0078】
(実施例1)
実施形態1で説明した方法で本発明に従う半導体発光素子100を作製した。まず、n型GaAs基板(厚さ:350μm)上に、抵抗加熱蒸着法により支持基板側コンタクト金属層としてAuGe/Ni/Au(厚さ:800nm)を形成し、窒素雰囲気下400〜450℃で加熱して合金化処理を行った。その後、この金属層上に、抵抗加熱蒸着法により支持基板側接合金属層としてTi/Au(厚さ:100nm/1μm)を形成した。
【0079】
次に、仮基板としてのn型GaAs基板上に、MOCVD法により、上側n型半導体層(Al
0.3Ga
0.7As、厚さ:5μm、ドーパント:Te)、第2発光層(GaAs井戸構造/Al
0.2Ga
0.8Asバリア、厚さ:8nm/6nm)、p型半導体層(上側層、Al
0.2Ga
0.8As、厚さ:3μm、ドーパント:C)、p型コンタクト層(Al
0.5Ga
0.5As、厚さ:200nm、ドーパント:Zn)、p型半導体層(下側層、Al
0.2Ga
0.8As、厚さ:3μm、ドーパント:C)、第1発光層(GaAs井戸構造/Al
0.2Ga
0.8Asバリア、厚さ:8nm/6nm)、下側n型半導体層(Al
0.3Ga
0.7As、厚さ:5μm、ドーパント:Te)を順次エピタキシャル成長させた。第1発光層および第2発光層の組成と膜厚は等しく、第1発光層および第2発光層からの発光ピーク波長は850nmであった。p型コンタクト層を中心として上側と下側とで、p型半導体層、発光層、n型半導体層はいずれも組成、膜厚が等しく対称となるように設計されている。
【0080】
次に、下側n型半導体層上に、フォトレジスト(東京応化工業株式会社製、OFPR800、以下同)で所定パターンを形成し、その後、エッチングにより第1発光層まで貫通する溝を形成した。エッチング液は、NH
4OH:H
2O
2:H
2O=1:1:20(体積比)とした。レジスト除去後、プラズマCVD法により絶縁部としてSiNを成膜し、フォトレジストで溝を外周とした円形のパターンを形成し、その後BHF溶液によるエッチングにより円形部分以外の絶縁部を除去し、突起を含む絶縁部を形成した。
【0081】
次に、下側n型半導体層上に、抵抗加熱蒸着法により、中間電極としてAuGe/Ni/Au(厚さ:800nm)を形成し、さらに発光層側接合金属層としてTi/Au(厚さ:100nm/1μm)を形成した。その後、発光層側接合金属層と支持基板側接合金属層とを接着させ、400℃で60分間加熱圧着することにより、仮基板と支持基板とを接合した。その後、NH
4OH:H
2O
2:H
2O=8:100:100(体積比)のエッチング液により仮基板を除去した。
【0082】
次に、上側半導体層上に、抵抗加熱蒸着法により、AuGe/Ni/Au(厚さ:800nm)、さらにTi/Au(厚さ:100nm/1μm)を形成し、フォトレジストによりパターンを形成後、ヨウ素系エッチャントのHF水溶液によりエッチングし、レジストを剥離することにより上側電極を形成した。さらに、フォトレジストにより凹部となる箇所以外の保護パターンを形成後、NH
4OH:H
2O
2:H
2O=8:100:100(体積比)のエッチング液により凹部を形成した。この際、p型コンタクト層をエッチングストップ層とした。次に、凹部に基準電極の形成を行った。具体的には、フォトレジストで電極形成部分以外を保護するパターンを形成し、電子ビーム蒸着法によりAuZn(厚さ:300nm)、さらにTi/Au(厚さ:100nm/1μm)を形成し、アセトン・ジメチルスルホキシド中に浸漬し、レジストを膨潤させてレジスト上の金属をレジストとともに除去し、基準電極を形成した。
【0083】
次に、支持基板の裏面上に、抵抗加熱蒸着法により、下側電極としてAuGe/Ni/Au(厚さ:800nm)を形成し、窒素雰囲気下400〜450℃で加熱して合金化処理を行った。最後に、ダイシングを行い、半導体発光素子100を用いたLED素子を作製した。このようにして作製されたLED素子の寸法は以下のとおりである。
図1(B)のチップサイズ:320μm四方
上側電極サイズr(n):90μm
基準電極サイズr(p):80μm
凹部の開口直径:100μm
凹部により第2発光層が除去された部分の直径:90μm
絶縁層による溝形成外周の直径:90μm
よって、実施例1では絶縁部により第1発光層が有効領域と無効領域とに分離されており、第1発光層および第2発光層の有効面積は等しい。
【0084】
(比較例1)
実施例1において、溝形成工程およびその後の絶縁部形成工程を行わなかった以外は同様の工程によって、
図4に示す半導体発光素子400を作製した。この素子400は、
図4(A)に示すとおり、支持基板402の上面側に、中間電極(発光層側コンタクト金属層)404、下側第1導電型半導体層としてのn型半導体層406、第1発光層408、第2導電型半導体層としてのp型半導体層410、第1発光層408と同一の発光波長を有する第2発光412、上側第1導電型半導体層としてのn型半導体層414および上側電極416を順次具え、支持基板402の下面側に設けられる下側電極418と、上側第1導電型半導体層414および第2発光層412を貫通する凹部420に設けられ、第2導電型半導体層410と電気的に接続する基準電極422と、を有する。支持基板側コンタクト金属層430を介して形成された支持基板側接合金属層432と、発光層側接合金属層428との間で接合される。p型半導体層410の中間にコンタクト層424を具え、p型半導体層410がコンタクト層424を基準に上側層410aと下側層410bとに分割され、基準電極422がコンタクト層424上に配置されている。
【0085】
このようにして作製されたLED素子の寸法は以下のとおりである。
図4(B)のチップサイズ:320μm四方
上側電極サイズr(n):90μm
基準電極サイズr(p):80μm
凹部の開口直径:100μm
凹部により第2発光層が除去された部分の直径:90μm
よって、第1発光層の有効面積は、第2発光層の有効面積よりも、第2発光層が除去された面積分大きい。また、中間電極の面積は(320μm)
2であり、上側電極よりも大きい。
【0086】
(比較例2)
発光層を1層とした以外は比較例1と同様の半導体発光素子を作製した。すなわち、半導体層としては、MOCVD法により、n型半導体層(Al
0.3Ga
0.7As、厚さ:5μm、ドーパント:Te)、発光層(GaAs井戸構造/Al
0.2Ga
0.8Asバリア、厚さ:8nm/6nm)、p型半導体層(Al
0.2Ga
0.8As、厚さ:3μm、ドーパント:C)を順次エピタキシャル成長させた。発光層からの発光ピーク波長は850nmであった。また、発光層が1層であるため、凹部形成工程、基準電極形成工程は不要であった。p型半導体層上の中央部分に上側電極(直径80μm)を形成した。上側電極はp層と接触するため、AuZn(厚さ:500nm)とした。
【0087】
(評価方法)
得られた半導体発光素子に定電流電圧電源を用いて20mAの電流を流したときの順方向電圧Vfおよび積分球による発光出力Poを測定した。光出力は全光束分光測定システム(Labshere社製SLMS-1021-S)を用いて測定した。また、それぞれの半導体発光素子に徐々に大きな電流を流し、光出力が最大(最大発光出力)となったときの電流値(最大電流値)を求めた。これらの結果を表1および
図3に示す。
【0088】
【表1】
【0089】
(実施例2)
実施形態2で説明した本発明に従う半導体発光素子200を作製した。上側電極416およびパッド電極は、以下のように形成した。まずフォトレジストで電極416形成部分以外を保護するパターンを形成し、抵抗加熱法によりAuGe/Ni/Au(厚さ:800nm)形成し、アセトン・ジメチルスルホキシド中に浸漬し、レジストを膨潤させてレジスト上の金属をレジストとともに除去して後に400〜450℃での熱処理により合金化を行い、電極416を形成した。次に、フォトレジストで電極417形成部分以外を保護するパターンを形成し、さらにTi/Au(厚さ:100nm/1μm)を形成し、アセトン・ジメチルスルホキシド中に浸漬し、レジストを膨潤させてレジスト上の金属をレジストとともに除去し、電極417を形成した。その他の個別の製造工程は、パターニングの態様が多少異なること以外は実施例1と同様なので省略する。このように作成されたLED素子の寸法は以下のとおりである。
図2(B)のチップサイズ:320μm四方
上側パッド電極サイズr(n1):90μm
基準電極サイズr(p):80μm
凹部の開口直径:100μm
凹部により第2発光層が除去された部分の直径:90μm
絶縁層による溝形成外周の直径:90μm
よって、実施例2では絶縁部により第1発光層が有効領域と無効領域とに分離されており、第1発光層および第2発光層の有効面積は等しい。
矩形の上側電極の面積=複数の中間電極の面積の総和=4800μm
2
よって、上側電極および中間電極の面積は等しい。
【0090】
(比較例3)
比較例3にかかる半導体発光素子500は、
図5(A)に示すとおり、支持基板502の上面側に、中間電極(発光層側コンタクト金属層)504、下側第1導電型半導体層としてのn型半導体層506、第1発光層508、第2導電型半導体層としてのp型半導体層510、第1発光層508と同一の発光波長を有する第2発光層512、上側第1導電型半導体層としてのn型半導体層514および上側電極516を順次具え、支持基板502の下面側に設けられる下側電極518と、上側第1導電型半導体層514および第2発光層512を貫通する凹部520に設けられ、第2導電型半導体層510と電気的に接続する基準電極522と、を有する。支持基板側コンタクト金属層530を介して形成された支持基板側接合金属層532と、発光層側接合金属層528との間で接合される。
【0091】
素子500は、
図5(A)および(B)に示すように、絶縁部426に突起を形成せず、第1発光層508に無効領域を形成しない点以外は実施形態2に示した素子200と同様の方法で形成した。このようにして作成されたLED素子の寸法は以下のとおりである。
図5(B)のチップサイズ:320μm四方
上側パッド電極サイズr(n1):90μm
基準電極サイズr(p):80μm
凹部の開口直径:100μm
矩形の上側電極の面積=複数の中間電極の面積の総和=4800μm
2
よって、上側電極および中間電極の面積は等しいが、第1発光層および第2発光層の有効面積は異なる。
【0092】
(評価方法)
得られた半導体発光素子に定電流電圧電源を用いて20mAの電流を流したときの順方向電圧Vfおよび積分球による発光出力Poを測定した。光出力は全光束分光測定システム(Labshere社製SLMS-1021-S)を用いて測定した。また、それぞれの半導体発光素子に徐々に大きな電流を流し、光出力が最大(最大発光出力)となったときの電流値(最大電流値)を求めた。これらの結果を表2および
図3に示す。
【0093】
【表2】
【0094】
(評価結果)
表1に示すとおり、比較例2と比較例1とを比べると、発光層を1層から2層にしたことにより、最大電流値および順方向電圧は多少の向上するもの、発光出力はほぼ変わらず、発光層を2層にしたことにより得られると予想したほどの特性の向上を得ることができなかった。そして、表1、表2および
図3に示すとおり、比較例1と実施例1との比較、および比較例3と実施例2との比較から、第1発光層の有効領域を規制する絶縁部を設けることによって、第1発光層および第2発光層の有効面積を近づけ、第1発光層を含む電流回路と第2発光層を含む電流回路との抵抗成分をより近づけるように素子構造を工夫することができ、順方向電圧はほぼ維持したまま、最大電流値および発光出力を顕著に向上させることができた。