特許第5756054号(P5756054)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5756054LEDのリフレクター用熱硬化性樹脂組成物並びにこれを用いたLED用リフレクター及び光半導体装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5756054
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】LEDのリフレクター用熱硬化性樹脂組成物並びにこれを用いたLED用リフレクター及び光半導体装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 33/60 20100101AFI20150709BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20150709BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20150709BHJP
   C08K 3/10 20060101ALI20150709BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   H01L33/00 432
   C08L63/00 C
   C08L83/04
   C08K3/10
   C08K3/00
【請求項の数】6
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2012-93255(P2012-93255)
(22)【出願日】2012年4月16日
(65)【公開番号】特開2013-221077(P2013-221077A)
(43)【公開日】2013年10月28日
【審査請求日】2014年4月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(72)【発明者】
【氏名】塩原 利夫
(72)【発明者】
【氏名】柏木 努
(72)【発明者】
【氏名】楠木 貴行
(72)【発明者】
【氏名】堤 吉弘
【審査官】 大木 みのり
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−018786(JP,A)
【文献】 特開2013−209479(JP,A)
【文献】 特開2013−209531(JP,A)
【文献】 特開2006−140207(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00 −101/14
C08K 3/00 − 13/08
H01L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)シリコーン樹脂、エポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、及びトリアジン誘導体エポキシ樹脂のいずれかである熱硬化性樹脂 100質量部
(B)酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸バリウムから選ばれる少なくとも1種の白色顔料 3〜200質量部
(C)少なくとも下記(C−1)成分及び下記(C−2)成分を含む前記(B)成分を除く無機質充填材 200〜1300質量部
(C−1)平均粒径が30μm〜100μmであり、かつ、屈折率が前記(A)成分の熱硬化性樹脂の硬化物との屈折率の差が0.05以上である少なくとも1種の無機質充填材 100〜1000質量部
(C―2)平均粒径が30μm未満であり、前記(C−1)成分以外の少なくとも1種の無機質充填材 100〜800質量部
を含有することを特徴とするLEDのリフレクター用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
前記(C−1)成分の無機質充填材が、クリストバライト、アルミノシリケート、アルミナ、及び希土類の酸化物のいずれか1以上であることを特徴とする請求項1に記載のLEDのリフレクター用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項3】
前記(C)成分である(C−1)成分及び(C−2)成分のうち少なくとも一方は、球状であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のLEDのリフレクター用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項4】
前記LEDのリフレクター用熱硬化性樹脂組成物は、縮合反応又はヒドロシリル化反応によって硬化するものであることを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載のLEDのリフレクター用熱硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれか一項に記載のLEDのリフレクター用熱硬化性樹脂組成物で成形したものであることを特徴とするLED用リフレクター。
【請求項6】
請求項に記載のLED用リフレクターを使用したものであることを特徴とする光半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、LED用リフレクターを成形するための熱硬化性樹脂組成物並びにこれを用いたLED用リフレクター及び光半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LED(Light Emitting Diode)等の光半導体素子は、街頭ディスプレイや自動車ランプ、住宅用照明など種種のインジケータや光源として利用されるようになっている。LED用リフレクター材料として、ポリフタルアミド樹脂(PPA)等の熱可塑性樹脂が大量に使用されている。また、最近は酸無水物を硬化剤としたエポキシ樹脂などもリフレクター用材料として使用されてきている。
【0003】
LED用リフレクター材料としてシリコーン樹脂やエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂が使用できることはすでに特許文献1〜5、7〜9に記載されている。また、マトリックスアレー型リフレクターについては特許文献6に記載されている。特許文献1〜3ではエポキシ樹脂やシリコーン樹脂が記載されているが樹脂そのものについての詳細な記述がなされていない。
【0004】
一方、最近の液晶テレビのバックライトや一般照明用光源としてLED素子の高輝度化が急速にすすんでおり、この用途はLEDの信頼性や耐久性に対する要求も厳しく、従来からリフレクター材料として使用されている液晶ポリマーやPPA(ポリフタルアミド)等の熱可塑性樹脂、あるいはエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂では熱と光を同時に受けるような環境で劣化が激しく、樹脂が変色し光の反射率が低下するためリフレクターとしては使用できないという問題が生じている。
【0005】
従来、この種のリフレクター用樹脂組成物の充填材として純度の高い溶融シリカやアルミナなどがよく知られている。一般にリフレクターは光を効率よく反射させるため出来るだけ白色度が高くなければならない。アルミナは非常に硬い材料であることから樹脂組成物を混練する際、アルミナと混練装置の磨耗で黒く汚染される。このためアルミナなどの硬い充填材だけを高充填した樹脂組成物では反射率の高いリフレクターを製造することが非常に難しい。また、純度の高いアルミナなどは価格も高いことからリフレクターとした場合コスト高になる問題点もある。
【0006】
また、熱硬化性樹脂組成物で成形したリフレクターの壁の厚みが薄い場合、発光素子から発する光が外部に漏れるといった不具合も発生している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平2006−156704号公報
【特許文献2】特開2007−329219号公報
【特許文献3】特開2007−329249号公報
【特許文献4】特開2008−189827号公報
【特許文献5】特開2006−140207号広報
【特許文献6】特開2007−235085号広報
【特許文献7】特開2007−297601号広報
【特許文献8】特開2009−21394号広報
【特許文献9】特開2009−155415号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、耐熱、耐光性に優れ、光の外部への漏れも少ない硬化物を与える熱硬化性樹脂組成物、該組成物で成形したLED用リフレクター、及び該LED用リフレクターを使用した光半導体装置を提供することを目的にしたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明によれば、
(A)熱硬化性樹脂 100質量部
(B)酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸バリウムから選ばれる少なくとも1種の白色顔料 3〜200質量部
(C)少なくとも下記(C−1)成分及び下記(C−2)成分を含む前記(B)成分を除く無機質充填材 200〜1300質量部
(C−1)平均粒径が30μm〜100μmであり、かつ、屈折率が前記(A)成分の熱硬化性樹脂の硬化物との屈折率の差が0.05以上である少なくとも1種の無機質充填材 100〜1000質量部
(C―2)平均粒径が30μm未満である少なくとも1種の無機質充填材
100〜800質量部
を含有することを特徴とするLEDのリフレクター用熱硬化性シリコーン樹脂組成物を提供する。
【0010】
このようなLEDのリフレクター用熱硬化性シリコーン樹脂組成物は、耐熱、耐光性に優れ、光の外部への漏れも少ない硬化物を与える熱硬化性樹脂組成物となる。特にマトリックスアレー状のリフレクターとして好適な硬化物を与える組成物となる。即ち、このような熱硬化性樹脂組成物を用いて成形したマトリックスアレー状リフレクターが形成されたリフレクター基板は、基板の反りが少ないため、発光素子(LED素子)を搭載し封止した後のダイシング等を容易に行うことができ、更にダイシング後は、リフレクター表面や素子表面と封止樹脂との剥離不良が抑制された光半導体装置(LED装置)を得ることができる。
【0011】
またこの場合、前記(A)成分である熱硬化性樹脂は、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、及びエポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂のいずれかであることが好ましい。
【0012】
このように、前記(A)成分である熱硬化性樹脂は、特に限定されないが、これらのものが代表的なものとして挙げられる。
【0013】
また、前記(C−1)成分の無機質充填材は、(C−1)成分の無機質充填材が、クリストバライト、アルミノシリケート、アルミナ、及び希土類の酸化物のいずれか1以上であることが好ましい。
【0014】
前記(C−1)成分が、これらのものであれば、より一層光の外部への漏れも少ない硬化物を与える熱硬化性樹脂組成物となる。
【0015】
またこの場合、前記(C)成分である(C−1)、(C−2)成分の少なくとも一方は、球状であることが好ましい。
【0016】
(C)成分である無機質充填材の形状は特に問題ではないが、高充填化や混練装置との磨耗を極力減らすため球状のものが好ましく、更に、球形度としては0.7〜1.0のものが好ましい。
【0017】
またこの場合、前記LEDのリフレクター用熱硬化性シリコーン樹脂組成物は、縮合反応又はヒドロシリル化反応によって硬化するものが好ましい。
【0018】
このように、本発明の熱硬化性樹脂としては、縮合反応で硬化するタイプや、アルケニル基含有シリコーン樹脂とヒドロシリル基含有シリコーン樹脂の付加反応で硬化するタイプなどが挙げられる。
【0019】
また、本発明では、前記LEDのリフレクター用熱硬化性シリコーン樹脂組成物で成形したものであることを特徴とするLED用リフレクターを提供する。
【0020】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を成形したものであるLED用リフレクターは、耐熱、耐光性に優れ、光の外部への漏れも少ないものとなる。
更に、前記熱硬化性樹脂組成物を用いて成形したマトリックスタイプ凹型リフレクターが形成されたリフレクター基板は、基板の反りが少ないものとなる。
【0021】
また、本発明では、上記本発明のLED用リフレクターを使用したものであることを特徴とする光半導体装置を提供する。
【0022】
前記LED用リフレクターを使用した光半導体装置は、リフレクター表面や素子表面と封止樹脂との剥離不良が抑制された光半導体装置となる。
【発明の効果】
【0023】
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、耐熱、耐光性に優れ、光の外部への漏れも少なく、特にマトリックスアレー状のリフレクターとして好適な硬化物を与える熱硬化性樹脂組成物となる。
特に、このような熱硬化性樹脂組成物を用いて成形したマトリックスアレー状リフレクターが形成されたリフレクター基板は、基板の反りが少ないため、発光素子を搭載し封止した後のダイシング等を容易に行うことができ、更にダイシング後は、リフレクター表面や素子表面と封止樹脂との剥離不良が抑制された光半導体装置(LED装置)を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】(A)本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いて成形したマトリックスタイプ凹型リフレクターが形成されたリフレクター基板の斜視図、(B)該リフレクター基板を用いて製造した光半導体装置の上面図及び断面図である。
図2】(A)本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いて成形したマトリックスタイプ平面型リフレクターが形成されたリフレクター基板の上面図、(B)発光素子が搭載・封止されたリフレクター基板の断面図である。
図3】本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いて成形した個片型リフレクターの断面図及び上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明をより詳細に説明する。
前述のように、耐熱、耐光性に優れ、光の外部への漏れも少ない硬化物を与えることができるLED用リフレクターを成形するためのリフレクター材料が求められていた。
【0026】
本発明者らは、上記目的を達成するため随意検討を重ねた結果、LED用リフレクターを成形するための熱硬化性樹脂組成物を構成する硬化性樹脂の硬化物と充填材との屈折率が近い場合、リフレクター内部に収納したLED素子から発する光が外部に漏れやすいことが判った。一方、片面成形のマトリックスアレー型リフレクターを製造、使用した場合、成形品の反りを改善するためには無機質充填材を熱硬化性樹脂100質量部に対し200〜1300質量部充填する必要があることが判った。
【0027】
一般に、粒径が50μm以上、望ましくは100μm程度の充填材を充填することで高充填化が可能となることは半導体の封止樹脂組成物では公知である。しかし、LED素子を収納する凹型形状のリフレクター材料として高充填可能な充填材を充填した場合、壁厚が200μm程度となると粒径100μm程度の充填材が存在し、樹脂との屈折率が近いものでは容易に光が外部に漏れることが判明した。
【0028】
上記知見より、本発明者らは、LED用リフレクター材料として、光漏れを防止するため、以下のような2種類の粒度分布を持った無機質充填材を使用した熱硬化性樹脂組成物であれば、耐熱、耐光性に優れ、光の外部への漏れも少ない硬化物を与えることができるLED用リフレクターを成形するための熱硬化性樹脂組成物となることを見出した。
【0029】
即ち、本発明者らは、
(A)熱硬化性樹脂 100質量部
(B)酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸バリウムから選ばれる少なくとも1種の白色顔料 3〜200質量部
(C)少なくとも下記(C−1)成分及び下記(C−2)成分を含む(B)成分を除く無機質充填材 200〜1300質量部
(C−1)平均粒径が30μm〜100μmであり、かつ、屈折率が前記(A)成分の熱硬化性樹脂の硬化物との屈折率の差が0.05以上である少なくとも1種の無機質充填材 100〜1000質量部
(C―2)平均粒径が30μm未満である少なくとも1種の無機質充填材
100〜800質量部
を含有することを特徴とするLEDのリフレクター用熱硬化性シリコーン樹脂組成物がLED用リフレクター材料として有用であることを見出した。
【0030】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
(A)熱硬化性樹脂
本発明のLEDのリフレクター用熱硬化性シリコーン樹脂組成物における(A)成分の熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂とシリコーン樹脂からなるハイブリッド(エポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂)などが代表的なものである。
【0031】
エポキシ樹脂としては、一般に酸無水物硬化型のエポキシ樹脂が使用される。エポキシ樹脂としてはクレゾールノボラック型、フェノールノボラック型、ビスフェノールA型、ビフェニル型などのエポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などいかなるものでも使用可能である。
【0032】
また、エポキシ樹脂としては、トリアジン誘導体エポキシ樹脂が耐熱、耐光性の面から望ましい。トリアジン誘導体エポキシ樹脂は、熱硬化性樹脂組成物の硬化物の黄変を抑制し、かつ経時劣化の少ない半導体発光装置を実現する。かかるトリアジン誘導体エポキシ樹脂としては、1,3,5−トリアジン核誘導体エポキシ樹脂であることが好ましい。特にイソシアヌレート環を有するエポキシ樹脂は、耐光性や電気絶縁性に優れており、1つのイソシアヌレート環に対して、2価の、より好ましくは3価のエポキシ基を有することが望ましい。具体的には、トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアヌレート、トリス(α−メチルグリシジル)イソシアヌレート、トリス(α−メチルグリシジル)イソシアヌレート等を用いることができる。尚、トリアジン誘導体エポキシ樹脂の軟化点は90〜125℃であることが好ましい。
【0033】
また、本発明においてはトリアジン誘導体エポキシ樹脂と酸無水物とを、エポキシ基当量/酸無水物基当量0.6〜2.0で配合し、好ましくは酸化防止剤及び/又は硬化触媒の存在下において反応して得られた固形物の粉砕物を樹脂成分として使用することもできる。
【0034】
酸無水物は、硬化剤として作用するものであり、耐光性を与えるために非芳香族であり、かつ二重結合を有さないものが好ましく、例えば、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸、水素化メチルナジック酸無水物などが挙げられ、これらの中でもメチルヘキサヒドロ無水フタル酸が好ましい。これらの酸無水物系硬化剤は、1種類を単独で使用してもよく、また2種類以上を併用してもよい。
【0035】
酸無水物系硬化剤の配合量としては、上記したトリアジン誘導体エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対し、酸無水物基が0.6〜2.0当量であり、好ましくは1.0〜2.0当量、更に好ましくは1.2〜1.6当量である。0.6当量以上であれば硬化不良が生じ、信頼性が低下する恐れがないために好ましい。また、2.0当量以下であれば、未反応硬化剤が硬化物中に残り、得られる硬化物の耐湿性を悪化させる恐れがないために好ましい。
【0036】
更に、本発明の熱硬化性樹脂組成物における(A)成分の熱硬化性樹脂としては、シリコーン樹脂を挙げることが出来る。
熱硬化性シリコーン樹脂としては、縮合反応又はヒドロシリル化反応によって硬化するものが挙げられる。下記に示されるものが代表的なものである。
【0037】
(1)縮合反応で硬化タイプ
Si(OR(OH)(4−a−b−c)/2 (1)
(式中、Rは同一又は異種の炭素数1〜20の有機基、Rは同一又は異種の炭素数1〜4の有機基を示し、a、b、cは0.8≦a≦1.5、0≦b≦0.3、0.001≦c≦0.5であり、0.801≦a+b+c<2を満たす数である。)
【0038】
(2)(2−1)アルケニル基含有シリコーン樹脂と(2−2)ヒドロシリル基含有シリコーン樹脂の白金触媒などによる付加反応で硬化するタイプ
(2−1)アルケニル基含有シリコーン樹脂
(OR)SiO(4−d−e−f−g)/2 (2)
(式中、Rは互いに独立に、アルケニル基及びアリール基を有さない、置換もしくは非置換の一価炭化水素基である。Rはアリール基であり、Rはアルケニル基であり、Rは水素原子、メチル基、及びエチル基のいずれかである。dは0.4〜1.0、eは0〜0.5、fは0.05〜0.5、gは0〜0.5の数であり、但しd+e+f+g=1.0〜2.0を満たす数である。)
【0039】
前記一般式(2)で示されるアルケニル基含有シリコーン樹脂は、レジン構造(即ち、三次元網状構造)のオルガノポリシロキサンを主体とするものである。レジン構造のオルガノポリシロキサンは、RSiO1.5単位、RSiO単位及びRSiO0.5単位(前記式において、Rはビニル基またはアリル基であり、Rは上記R及びRと同様の基であり、好ましくはフェニル基である。kは0又は1、pは1又は2の整数であり、k+p=2を満たす数であり、qは1〜3、rは0〜2の整数であり、q+r=3を満たす数である)からなるオルガノポリシロキサンであることが好ましい。
【0040】
レジン構造のオルガノポリシロキサンは、RSiO1.5単位をT単位、RSiO単位をD単位、RSiO0.5単位をM単位とした場合、モル比で(D+M)/T=0.01〜1、好ましくは0.1〜0.5、M/T=0.05〜3、好ましくは0.1〜0.5となる量で構成されていることが好ましい。また、該オルガノポリシロキサンは、GPCにより測定されるポリスチレン換算の重量平均分子量が500〜10,000の範囲にあるものが好適である。
【0041】
レジン構造のオルガノポリシロキサンは、上記T単位、D単位、M単位に加えて、さらに他の二官能性シロキサン単位、三官能性シロキサン単位、四官能性シロキサン単位を本発明の効果を損なわない範囲で少量含有してもよい。
【0042】
レジン構造のオルガノポリシロキサンは、上記T単位、D単位、M単位の単位源となる化合物を上記モル比となるように組み合わせ、例えば、酸の存在下で共加水分解反応を行なうことによって容易に合成することができる。
【0043】
T単位源として、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、シクロへキシルトリクロロシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、シクロへキシルトリエトキシシラン、シクロペンチルトリクロロシラン、n−プロピルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランなどを用いることができる。
【0044】
D単位源として、下記のものを用いることができる。
【化1】
【0045】
M単位源として、下記のものを用いることができる。
【化2】
【0046】
また、硬化物に適度な柔軟性や低弾性化を図るために、上記オルガノポリシロキサンのほかに下記のオルガノポリシロキサンも適時配合することが出来る。
このような配合することができるオルガノポリシロキサンとしては、主鎖がジオルガノシロキサン単位(RSiO2/2単位)の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基(RSiO1/2単位)で封鎖された直鎖状構造を有するオルガノポリシロキサンが挙げられる(前記式において、RはR、R、またはRと同じ基を意味する)。
【0047】
中でも、下記式(3)で表される、両末端に各1以上のビニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサンであって、25℃における粘度が10〜1,000,000mPa・s、好ましくは1,000〜50,000mPa・sのものが作業性及び硬化性等の観点から好ましい。粘度は例えば回転粘度計により測定することができる。該直鎖状のオルガノポリシロキサンは分子鎖中に少量の分岐状構造を含有してもよい。
【0048】
【化3】
(式中、R及びRは上述したとおりであり、R’はRまたはRである。hは1、2又は3の整数である。)
【0049】
上記式(3)において、x、y及びzは、1≦x+y+z≦1,000を満足する0又は正の整数であり、好ましくは5≦x+y+z≦500、より好ましくは30≦x+y+z≦500であり、但し0.5<(x+y)/(x+y+z)≦1.0を満足する整数である。
【0050】
このような上記式(3)で表されるオルガノポリシロキサンとしては、具体的に下記のものを挙げられる。
【化4】
(上記式において、x、y、zは上述の通りである。)
【0051】
(2−2)ヒドロシリル基含有シリコーン樹脂
下記一般式(4)及び/又は下記平均組成式(5)で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン
【化5】
(式中、Rは互いに独立に、アルケニル基を有さない、置換もしくは非置換の一価炭化水素基であり、R10は水素であり、nは1〜10の整数である。)
【0052】
1112SiO(4−i−j−k)/2 (5)
(式中、R11は互いに独立に、アルケニル基及びアリール基を含まない、置換もしくは非置換の一価炭化水素基。R12はアリール基であり、iは0.6〜1.5、jは0〜0.5、kは0.4〜1.0の数であり、但しi+j+k=1.0〜2.5を満たす数である。)
【0053】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とから成る共重合体、(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位と(C)SiO3/2単位とから成る共重合体等が挙げられる。
【0054】
また、下記構造で示されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンも用いることができる。
【化6】
【0055】
ヒドロシリル基含有シリコーン樹脂のヒドロシリル基の合計当量が、(2−1)アルケニル基含有シリコーン樹脂中のアルケニル基1当量対し、0.5〜4.0当量、好ましくは0.8〜2.0当量、さらに好ましくは0.9〜1.5当量であることが好ましい。0.5当量以上であれば、付加反応が進行せず硬化物を得ることが困難となる恐れがない。また、4.0当量以下であれば、未反応のヒドロシリル基が硬化物中に多量に残存して物性が経時的に変化する原因となる恐れがないために好ましい。
【0056】
また、上記したエポキシ樹脂とシリコーン樹脂を混合したハイブリッド樹脂(エポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂)も使用することができる。
【0057】
(B)白色顔料
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、(B)成分として酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭酸バリウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸亜鉛、硫酸バリウムから選ばれる白色顔料を配合する。
白色顔料は、白色着色剤として、白色度を高めるために配合するものであり、これらは単独又は数種を併用して用いることができる。これらの中で、二酸化チタンを用いることが好ましく、この二酸化チタンの単位格子はルチル型、アナタース型、ブルカイト型のどれでも構わない。また、平均粒径や形状も限定されないが、平均粒径は通常0.05〜5.0μmであり、好ましくは0.1〜2μmである。なお、平均粒径は、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50(又はメジアン径)として求めることができる。
【0058】
(B)成分の配合は、(A)成分である熱硬化性樹脂成分100質量部に対し、3〜200部であり、好ましくは5〜150部である。3質量部未満では十分な白色度が得られない場合がある。また、200質量部を超えると機械的強度向上の目的で添加する他成分の割合が少なくなるだけでなく、成形性が著しく低下することがある。
【0059】
(C)無機質充填材
本発明のLEDのリフレクター用熱硬化性シリコーン樹脂組成物中に含まれる(C)成分は、少なくとも、下記の(C−1)成分及び下記の(C−2)成分を含む前記(B)成分を除く無機質充填材である。即ち、(C)成分は、光漏れを防止するために少なくとも2種類の粒度分布を持った無機質充填材である。
(C−1)平均粒径が30μm〜100μmであり、かつ、屈折率が前記(A)成分の熱硬化性樹脂の硬化物の屈折率と0.05以上の差がある少なくとも1種の無機質充填材
(C−2)平均粒径が30μm未満であり、前記(C−1)成分以外の少なくとも1種の無機質充填材を含む無機質充填材
【0060】
<(C−1)成分>
(C−1)成分としては、平均粒径が30μm〜100μmの無機質充填材であり、かつ該充填材の屈折率が硬化した(A)成分の熱硬化性樹脂の屈折率(Na原子のD線(輝線スペクトル)で測定)から0.05以上離れたものを使用する必要があり、使用する熱硬化性樹脂の屈折率により選択される。
硬化した(A)成分の熱硬化性樹脂の屈折率との差が0.05未満の屈折率の無機質充填材を使用した場合は、光が容易に硬化樹脂組成物内を透過し、外部に光が漏れてしまう。
平均粒径は30〜70μmが好ましく、より好ましくは35〜60μmである。ここで平均粒径とは、レーザー光回折法による粒度分布測定における質量平均値D50(又はメジアン径)として求めることができる。
【0061】
(A)成分の熱硬化性樹脂がエポキシ樹脂である場合は、硬化したエポキシ樹脂(硬化樹脂)の屈折率が1.50〜1.55程度であることから、1.55以上の屈折率を有するアルミナ、アルミノシリケート、ジルコン、希土類の酸化物(酸化イットリウム、酸化ランタン)などを(C−1)成分として挙げることが出来る。
【0062】
(A)成分の熱硬化性樹脂がシリコーン樹脂やエポキシ樹脂とシリコーン樹脂のハイブリッド(エポキシ・シリコーンハイブリッド樹脂)の場合は、硬化した樹脂の屈折率が1.41〜1.53程度であることから1.47以上の屈折率を有するクリストバライト、アルミナ、アルミノシリケート、ジルコン、希土類の酸化物(酸化イットリウム、酸化ランタン)などを(C−1)成分として挙げることが出来る。
【0063】
これら無機質充填材の形状は特に問題ではないが、高充填化や混練装置との磨耗を極力減らすため球状のものが特に望ましい。球形度としては0.7〜1.0のものが好ましい。
【0064】
(C−1)成分の充填量としては、(A)成分の熱硬化性樹脂100質量部に対し100〜1000質量部である。また、後述する(C−2)成分との合計量が200〜1300質量部となる量である。(C−1)成分の無機質充填材の添加量が100質量部未満では粗粒領域の粉末が少なすぎて高充填化することができない。また、1000質量部を超える量では逆に粗粒領域の粉が多く粘度が高くなって成形性が低下する。
【0065】
<(C−2)成分>
一方、平均粒径が30μm未満である(C−2)成分の微粉無機質充填材の屈折率は特に制限されない。好ましい平均粒径は、0.01μm〜25μmであり、より好ましくは1〜20μmであり、特に好ましくは3〜15μmである。
【0066】
(C−2)成分は、上記平均粒子径を満たす無機質充填材であれば特に制限されないが、シリカや(C−1)成分で例示したものの粒径の小さいもの(平均粒径が30μm未満)等が例示され、球状のものが好ましい。リフレクターの価格や混練装置との磨耗による汚染、硬化樹脂組成物の膨張係数を出来るだけ小さくする必要があることから、溶融シリカが好ましく、特に形状の溶融シリカが好ましい。
【0067】
(C−2)成分の充填量としては、(A)成分の熱硬化性樹脂100質量部に対し100〜800質量部であり、好ましくは、200〜600質量部である。(C−2)成分が100質量部未満では、小粒径の粒度の粉末が少なすぎてトランスファー成形や圧縮成形などの成形時に流動性が不足しリフレクターを製造できなくなることがあり、800質量部を超える量では粉の粒度分布が細かいほうに偏りすぎて粘度が高くなり流動性が低下する。
【0068】
また、上記した無機質充填材のほかに微粉末シリカ、微粉末アルミナ、窒化珪素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、三酸化アンチモン、更にガラス繊維、ウォラステナイトなどの繊維状無機質充填材も使用可能である。
【0069】
その他成分
・接着助剤
本発明は、上記(A)〜(C)成分に加え、リードフレーム等との接着を改善するためにシリコーン系接着助剤、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤などの接着助剤を配合してもよい。
シリコーン系接着助剤としては、分子中にアルコキシ基とエポキシ基等の有機官能性基を有するシロキサン化合物や分子中にヒドロシリル基(SiH基)とエポキシ基等の有機官能性基を有するシロキサン化合物等が例示され、シランカップリング剤としては、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ官能性アルコキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノ官能性アルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のメルカプト官能性アルコキシシランなどを用いることが好ましい。なお、カップリング剤の配合量は、(A)成分100質量部に対して0.01〜10質量部、特に0.1〜5質量部であることが好ましい。
【0070】
・各種添加剤
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、更に必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。例えば、反応性制御剤、離形剤、樹脂の性質を改善する目的で種々のシリコーンパウダー、熱可塑性樹脂、熱可塑性エラストマー、有機合成ゴム等の添加剤を本発明の効果を損なわない範囲で添加配合することができる。
【0071】
LEDのリフレクター用熱硬化性シリコーン樹脂組成物の製造方法
本発明のLEDのリフレクター用熱硬化性シリコーン樹脂組成物の製造方法としては、例えば(A)熱硬化性樹脂、(B)白色顔料、(C)無機質充填材、その他の添加物等を所定の組成比で配合し、これをミキサー等によって十分均一に混合した後、熱ロール、ニーダー、エクストルーダー等による溶融混合処理を行い、次いで冷却固化させ、適当な大きさに粉砕して熱硬化性樹脂組成物とすることができる。
【0072】
LED用リフレクター
本発明の熱硬化性樹脂組成物はLED用リフレクターを成形するための熱硬化性樹脂組成物であるが、該リフレクターの最も一般的な成形方法としては、トランスファー成形法や圧縮成形法が挙げられる。
トランスファー成形法では、トランスファー成形機を用い、成形圧力5〜20N/mm2、成形温度120〜190℃で成形時間30〜500秒、特に成形温度120〜180℃で成形時間30〜300秒で行うことが好ましい。
圧縮成形法では、コンプレッション成形機を用い、成形温度は120〜190℃で成形時間30〜600秒、特に成形温度120〜180℃で成形時間120〜420秒で行うことが好ましい。
更に、いずれの成形法においても、後硬化を150〜185℃で2〜20時間行ってよい。
【0073】
図1(A)に示すように、上記本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いて成形したマトリックスタイプ凹型リフレクター1が形成されたリフレクター基板10を製造することができる。また、図2(A)に示すように、上記本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いて成形したマトリックスタイプ平面型リフレクター1’が形成されたリフレクター基板10’を製造することが出来る。
【0074】
光半導体装置
上記のLED用リフレクターを使用し、光半導体装置を製造することができる。
具体的には、図1に示したマトリックスタイプ凹型リフレクター1が形成されたリフレクター基板10を用いる場合は、該マトリックス状リフレクター基板10を切断する前に、リフレクター基板10の個々の凹部(素子搭載領域)に存在するダイパッド2上に発光素子3(LED素子)をシリコーンダイボンド剤(LPS−8445S 信越化学工業製)を用いて固定し、150℃で1時間加熱することで発光素子3を固着させる。その後、金線4で発光素子3とリードフレーム5を電気的に接続する。その後、透明なシリコーン樹脂(LPS5547 信越化学工業製)や蛍光体などを配合した透明シリコーン樹脂6などをポッティングによりリフレクター基板10の凹部に流し込み、120℃で1時間、更に150℃で2時間加熱硬化させることで封止した。透明シリコーン樹脂6の封止はポッティングによる方法、あるいはトランスファー成形や圧縮成型などの封止方法でレンズ形状などに同時に形成することも出来る。
【0075】
図2(A)に示したマトリックスタイプ平面型リフレクター1’が形成されたリフレクター基板10’を用いる場合は、リフレクター基板10’を切断する前に、リフレクター基板10’に存在する個々のダイパッド2上にシリコーンダイボンド剤(LPS−8445S 信越化学工業製)を用いて固定し、150℃で1時間加熱することで発光素子(LED素子)3を固着させた。その後、金線4で発光素子3とリードフレーム5を電気的に接続する。その後、透明なシリコーン樹脂(LPS−5538 信越化学工業製)や蛍光体などを配合した透明シリコーン樹脂6などをトランスファー成形や圧縮成形などで120℃で3分の硬化条件でレンズ形状に成形封止し、更に150℃で2時間加熱硬化させる。図2(B)に、発光素子3を搭載して封止したリフレクター基板10’のC−C’断面図を示す。
【0076】
その後、いずれの発光素子を搭載して封止したリフレクター基板10、10’もダイシング、レーザー加工、ウォタージェット加工などで切断し、個片、単体化して光半導体装置を得ることができる。図1(B)に、凹部に発光素子を搭載・封止したリフレクター基板10を、ダイシングして得られた光半導体装置100の上面図及び断面図を示す。
【0077】
尚、本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いて、図3に示した個片型リフレクター101を成形してもなんら問題はない。102はリードフレームを示す。
【0078】
本発明の熱硬化性樹脂組成物で成形したLED用リフレクターを使用することで、リフレクター表面と封止樹脂である透明シリコーン樹脂の接着が強固になり、かつリフレクター表面の光による劣化もないことから光半導体装置(LED装置)の信頼性が著しく向上する。
【実施例】
【0079】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。尚、下記記載において部は質量部を示す。
【0080】
実施例、比較例で使用した、下記表1、2で示す原料の合成例及び詳細を以下に示す。
(合成例1)熱硬化性樹脂A1(エポキシ樹脂)の合成
トリアジン誘導体エポキシ樹脂(TEPIC−S) 45質量部、酸無水物(リカシッドMH) 55質量部、酸化防止剤(亜燐酸トリフェニル) 3質量部、触媒量のイミダゾール系触媒(2E4MZ)を予め反応釜により、100℃で溶融混合し、冷却して固化させた後(軟化点は60℃)、粉砕し、(A)成分の熱硬化性樹脂A1(硬化物の屈折率:1.54)を得た。
【0081】
尚、上記合成例1で用いた各反応原料は以下の通りである。
・トリアジン誘導体エポキシ樹脂
トリス(2,3−エポキシプロピル)イソシアネート(TEPIC−S:日産化学(株)製商品名、エポキシ当量100)
・酸無水物
非炭素炭素二重結合酸無水物:メチルヘキサヒドロ無水フタル酸(リカシッドMH:新日本理化(株)製商品名)
・酸化防止剤
リン系酸化防止剤:亜リン酸トリフェニル(和光純薬(株)製商品名)
・イミダゾール系触媒:2−エチル−4−メチルイミダゾール(2E4MZ:四国化成(株)製商品名)
・二酸化チタン:ルチル型(R−45M:堺化学工業(株)製商品名)
【0082】
(合成例2)熱硬化性樹脂A2(シラノール基含有シリコーン樹脂)の合成
メチルトリクロロシラン100質量部、トルエン200質量部を1Lのフラスコに入れ、氷冷下で水8質量部、イソプロピルアルコール60質量部の混合液を液中滴下した。内温は−5〜0℃で5〜20時間かけて滴下し、その後加熱して還流温度で20分間撹拌した。それから室温まで冷却し、水12質量部を30℃以下、30分間で滴下し、20分間撹拌した。更に水25質量部を滴下後、40〜45℃で60分間撹拌した。その後水200質量部を入れて有機層を分離した。この有機層を中性になるまで洗浄し、その後共沸脱水、濾過、減圧ストリップをすることにより、無色透明の固体(融点76℃)36.0質量部の熱硬化性樹脂A2を得た。硬化した樹脂の屈折率は1.41である。
【0083】
また、上記熱硬化性樹脂A1、A2の他に、(A)成分の熱硬化性樹脂として、以下のアルケニル基含有シリコーン樹脂(以下の合成例3で得られるA3−1、以下に示すA3−2)及びヒドロシリル基含有シリコーン樹脂(以下に示すA3−3、A3−4、A3−5)を用いた。
【0084】
(合成例3)ビニル基含有オルガノポリシロキサン(A3−1)の合成
フラスコにキシレン1000g、水5014gを加え、フェニルトリクロロシラン2285g(10.8mol)、ビニルジメチルクロロシラン326g(2.70mol)、キシレン1478gを混合したものを滴下した。滴下終了後3時間攪拌し、廃酸分離し水洗した。共沸脱水後にKOH0.6g(0.015mol)加え、150℃で4時間加熱還流を行った。その後、トリメチルクロロシラン2.7g(0.025mol)、酢酸カリウム2.5g(0.025mol)で中和し濾過後、溶剤を減圧留去し、透明で室温で固体のシロキサン樹脂(A3−1)を合成した。ビニル当量は0.0013mol/g、水酸基含有量は0.01質量%であった。軟化点は65℃であった。
【0085】
ビニル基含有直鎖状オルガノポリシロキサン(A3−2)としては、以下のものを用いた。
CH2=CH−Si(CH3)2O-(-Si(CH3)2O-)35-(Si(CH3)(CH=CH2)O-)5-(Si(CH3)(C6H6)O-)10-Si(CH3)2-CH=CH2
ビニル基当量は0.0015mol/g
【0086】
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A3−3)としては、下記構造のオルガノハイドロジェンポリシロキサン(0.00377mol/g)を使用した。
【化7】
(n=2.0(平均値))X:水素原子 SiH基当量0.403であった。Phはフェニル基を示す。)
【0087】
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A3−4)としては、下記構造のオルガノハイドロジェンポリシロキサン(0.0069mol/g)を使用した。
【化8】
【0088】
オルガノハイドロジェンポリシロキサン(A3−5)としては、下記構造のオルガノハイドロジェンポリシロキサン(0.0076mol/g)を使用した。
【化9】
【0089】
(B)成分の白色顔料としては、以下を用いた。
(1)酸化チタン(CR−95:石原産業(株)製):ルチル型平均粒径0.28μm)
(2)酸化亜鉛 (三井金属製)
(3)酸化マグネシウム(和光化学製 平均粒径10um)
(4)炭酸バリウム(和光化学製 純度99%)
(5)硫酸バリウム(和光化学製)
(6)珪酸マグネシウム(キシダ化学製 純度90%)
【0090】
(C)成分の無機質充填剤としては、以下を用いた。
(1)溶融球状シリカ(S−1) :平均粒径10μm、屈折率1.43、比重2.2
(2)溶融球状シリカ(S−2) :平均粒径55μm、屈折率1.43、比重2.2
(3)溶融球状シリカ(S−3):平均粒径19μm、屈折率1.43、比重2.2
(4)球状クリストバライト:平均粒径48μm、屈折率1.54、比重2.3
(5)球状アルミノシリケート:平均粒径45μm、屈折率1.65、比重2.5
(6)球状アルミナ:平均粒径43μm、屈折率1.76、比重 3.9
(7)酸化ジルコニウム:平均粒径38μm、屈折率2.4、比重 6.5
(8)球状酸化イットリウムY:平均粒径41μm、屈折率1.82、比重:8.6
(9)酸化ランタンLa :平均粒径40μm、屈折率 1.88、比重:6.5
【0091】
その他、表1、2に示す以下の成分を用いた。
(D)付加反応触媒
塩化白金酸のオクチルアルコール変性溶液(白金濃度2質量%)
(E)反応抑制剤
下記式で表わされる化合物(EMDC)
【化10】
(F)離型剤
リケスターEW 440A(理研ビタミン株式会社製)
(G)接着付与剤
下記式で示す接着付与剤
H−1
【化11】
(上記式中、jは2、hは1、sは3、tは6、uは9である。)
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
(実施例1〜12,比較例1〜4)
表1、2に示す配合(質量部)で、熱硬化性樹脂、白色顔料、無機質充填剤、その他に付加反応触媒、反応抑制材、離型剤、接着付与剤、カップリング剤(KBM403E(信越化学工業社製)、KBM803(信越化学工業社製))等を配合し、二本ロールにて混練し熱硬化性樹脂組成物を得た。尚、実施例1〜12は、無機質充填材として、(C−1)平均粒径が30μm〜100μmであり、かつ、屈折率が前記(A)成分の熱硬化性樹脂の硬化物との屈折率の差が0.05以上である少なくとも1種の無機質充填材、及び、(C―2)平均粒径が30μm未満である少なくとも1種の無機質充填材を含んでいるものである。一方、比較例1〜4は、無機質充填材として、前記(C−1)及び(C−2)のどちらか一方を含んでいるもの、又はどちらをも含んでいないものである。
【0095】
実施例1〜12、比較例1〜4で得られた熱硬化性樹脂組成物を用いて、以下の諸特性を測定した。結果を表3に示す。成型はすべてトランスファー成型機で、成型温度175℃、成型圧力6.9N/mm、成形時間180秒の条件で行った。
【0096】
スパイラルフロー値
EMMI規格に準じた金型を使用して、成型温度175℃、成型圧力6.9N/mm、成形時間120秒の条件で行った。
【0097】
室温での曲げ強度、曲げ弾性率
JIS−K6911規格に準じた金型を使用して、成型温度175℃、成型圧力6.9N/mm、成形時間120秒の条件で成形し、その後150℃で2時間ポストキュアした試験片を室温(25℃)で曲げ強度と曲げ弾性率を測定した。
【0098】
光反射率
成型温度175℃、成型圧力6.9N/mm、成形時間120秒の条件で、1辺50mm、厚さ0.35mmの正方形の硬化物を作成し、エス・デイ・ジー(株)製X-rite8200を使用して450nmの光反射率を測定した。
【0099】
光漏れ試験(光透過率)
光漏れ試験として300ミクロン厚に成形した実施例1〜12、比較例1〜4の熱硬化性樹脂組成物の試験片に450nmの光を照射し、透過する光の量を測定した。比較例1の試験片の光透過率を1.0とした際の各試験片の相対値を表3に示した。実施例1〜12の熱硬化性樹脂組成物を用いて成形されたリフレクターを用いたものは、比較例1〜4で製造したものに比べ光の漏れは非常に少ないことが確認された。
【0100】
【表3】
【0101】
(実施例13)リフレクターの成形と物性
図1(A)に示すように、リードフレーム5として全面銀メッキした銅リードフレームを用い、実施例1〜12で製造した熱硬化性樹脂組成物でマトリックスタイプ凹型リフレクター1を下記の成形条件でトランスファー成形し、マトリックスタイプ凹型リフレクター基板10を作製した(縦50mm横55mmの銅板状に開口部直径3mm、高さ0.3mmの凹部が全部で130個形成された縦40mm横50mmのリフレクター1が成型されたものとなった)。また、比較例1〜4の熱硬化性シリコーン樹脂組成物を用いて、同様の工程をおこなった。
成形条件は下記の通りである。
成形温度:170℃、成形圧力:70Kg/cm、成形時間:3分
更にポストキュアを170℃で2時間行った。
【0102】
本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いて得られたリフレクター基板はリードフレームと樹脂組成物との密着性も良好であった。また、それぞれのマトリックスタイプのリフレクター基板の反りを測定し、結果を上記表3に示す。リフレクター基板の反りは、ポストキュアした上記リフレクター基板を樹脂側で対角線の二方向で測定し平均値で示した。
本発明の熱硬化性樹脂組成物を用いて得られたリフレクター基板は反りが抑制されていることが判った。
【0103】
次に、図1に示すように、実施例1〜12の熱硬化性樹脂組成物を用いて製造したマトリックスタイプ凹型リフレクター基板10のそれぞれの凹状の底辺に露出したリードフレーム5上に青色LED素子3をシリコーンダイボンド剤(品名:LPS−8445S、信越化学(株)製)で接着固定し、金線4でもう一方のリードフレーム5と電気的に接続した。その後、シリコーン封止剤6(LPS−5547:信越化学(株)製)をLED素子3が配置された凹部にそれぞれ注入し、120℃で1時間、更に150℃で1時間硬化させ封止した。また、比較例1〜4の熱硬化性シリコーン樹脂組成物を用いて、同様の工程をおこなった。
封止工程を終えたマトリックスタイプ凹型リフレクター基板をダイシングすることで個片化し、LED装置を得た。
【0104】
これら個片型したLED装置を用い、LEDを点灯しリフレクター底面部の光漏れを肉眼で確認した。実施例1〜12の組成物で製造したリフレクターを用いたものは比較例1〜4で製造したものに比べ光の漏れは非常に少なかった。
また、実施例1〜12の組成物で製造したLED装置を25℃、湿度80%の雰囲気中に48時間放置した後、260℃のリフロー炉に3回通した。その後、パッケージ表面や素子表面と封止樹脂との接着不良を調べた。本発明の熱硬化性樹脂組成物(実施例1〜12)で成形したリフレクターを用いたものは全く剥離不良が発生しなかった。
【0105】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に含有される。
【符号の説明】
【0106】
1…マトリックスタイプ凹型リフレクター、 1’…マトリックスタイプ平面型リフレクター、 2…ダイパッド、 3…発光素子(LED素子)、 4…金線、 5…リードフレーム、 6…透明シリコーン樹脂、 10…マトリックスタイプ凹型リフレクター基板、 10’…マトリックスタイプ平面型リフレクター基板 100…光半導体装置(LED装置)、 101…個片型リフレクター、 102…リードフレーム。
図1
図2
図3