特許第5756249号(P5756249)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5756249高温逆バイアステスト条件に耐え得るIII族窒化物電界効果トランジスタ(FET)
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5756249
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】高温逆バイアステスト条件に耐え得るIII族窒化物電界効果トランジスタ(FET)
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20150709BHJP
   H01L 29/778 20060101ALI20150709BHJP
   H01L 29/812 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   H01L29/80 H
【請求項の数】36
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2008-501880(P2008-501880)
(86)(22)【出願日】2006年1月30日
(65)【公表番号】特表2008-533738(P2008-533738A)
(43)【公表日】2008年8月21日
(86)【国際出願番号】US2006003259
(87)【国際公開番号】WO2006101598
(87)【国際公開日】20060928
【審査請求日】2008年6月5日
【審判番号】不服2013-11320(P2013-11320/J1)
【審判請求日】2013年6月17日
(31)【優先権主張番号】11/080,905
(32)【優先日】2005年3月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】592054856
【氏名又は名称】クリー インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CREE INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リチャード ピーター スミス
(72)【発明者】
【氏名】スコット ティー.シェパード
(72)【発明者】
【氏名】アダム ウィリアム サクスラー
(72)【発明者】
【氏名】ウー イーフェン
【合議体】
【審判長】 鈴木 匡明
【審判官】 恩田 春香
【審判官】 加藤 浩一
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2004/061293(WO,A1)
【文献】 特開平11−204778(JP,A)
【文献】 特開2003−257999(JP,A)
【文献】 特開平11−176830(JP,A)
【文献】 特開2003−142501(JP,A)
【文献】 特開2001−102565(JP,A)
【文献】 特開2000−277724(JP,A)
【文献】 特開平10−125901(JP,A)
【文献】 特開平11−163316(JP,A)
【文献】 特開平6−53253(JP,A)
【文献】 特開平9−330937(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L29/778
H01L21/338
H01L29/812
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
56ボルトのドレイン−ソース間電圧(VDS)、−8ボルトから−14ボルトのゲート−ソース間電圧(Vgs、140℃の温度で、少なくとも10時間の間という条件を含む高温逆バイアステスト条件で動作したとき、電力劣化が3.0dB未満であるIII族窒化物ベースの電界効果トランジスタ(FET)であって、
GaNチャネル層上のAlN層と、
前記AlN層上のAlGaN層と、
前記AlGaN層上のTゲートコンタクトと、
前記FETの表面上のパッシベーション層とを備え、
前記パッシベーション層は、窒化ケイ素(SiN)を含み、
前記GaNチャネル層は、2.0μmから8.0μmの厚さを有し、前記GaNチャネル層の表面の1.0μmを除くすべてが、Feで2×1016cm−3から2×1018cm−3の濃度にドープされていることを特徴とするIII族窒化物ベースの電界効果トランジスタ(FET)。
【請求項2】
56ボルトのVDS、−8ボルトのVgs、140℃の温度で、20時間の間動作したとき、電力劣化が0.44dB以下であることを特徴とする請求項1に記載のFET。
【請求項3】
前記GaNチャネル層は、2.0μmの厚さを有することを特徴とする請求項2に記載のFET。
【請求項4】
高電子移動度トランジスタ(HEMT)であり、前記AlGaN層上のソースコンタクトおよびドレインコンタクトをさらに備えることを特徴とする請求項3に記載のFET。
【請求項5】
3.0W/mmを超える電力密度を有し、3.5GHzから4.0GHzの周波数で動作することを特徴とする請求項4に記載のFET。
【請求項6】
56ボルトのVDS、−8ボルトのVgs、140℃の温度で、20時間の間動作したとき、電力劣化が1.3dB以下であることを特徴とする請求項1に記載のFET。
【請求項7】
高電子移動度トランジスタ(HEMT)であり、前記AlGaN層上のソースコンタクトおよびドレインコンタクトをさらに備えることを特徴とする請求項に記載のFET。
【請求項8】
3.0W/mmを超える電力密度を有し、3.5GHzから4.0GHzの周波数で動作することを特徴とする請求項に記載のFET。
【請求項9】
56ボルトのVDS、−8ボルトのVgs、140℃の温度で、10時間の間動作したとき、電力劣化が0.25dB以下であることを特徴とする請求項1に記載のFET。
【請求項10】
高電子移動度トランジスタ(HEMT)であり、前記AlGaN層上のソースコンタクトおよびドレインコンタクトをさらに備え、
前記パッシベーション層は、前記Tゲートコンタクト、前記AlGaN層、ならびに前記ソースコンタクトおよび前記ドレインコンタクト上に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のFET。
【請求項11】
3.0W/mmを超える電力密度を有し、3.5GHzから4.0GHzの周波数で動作することを特徴とする請求項10に記載のFET。
【請求項12】
56ボルトのVDS、−8ボルトから−14ボルトのVgs、140℃の温度で、10時間から62時間の間動作したとき、電力劣化が0.40dB以下であることを特徴とする請求項1に記載のFET。
【請求項13】
前記GaNチャネル層は、6.0μmの厚さを有し、前記GaNチャネル層のチャネル領域表面の1.0μmを除くすべてが、Feで2×1016cm−3から2×1018cm−3の濃度にドープされていることを特徴とする請求項12に記載のFET。
【請求項14】
高電子移動度トランジスタ(HEMT)であり、前記AlGaN層上のソースコンタクトおよびドレインコンタクトをさらに備えることを特徴とする請求項13に記載のFET。
【請求項15】
3.0W/mmを超える電力密度を有し、3.5GHzから4.0GHzの周波数で動作することを特徴とする請求項14に記載のFET。
【請求項16】
56ボルトのVDS、−8ボルトのVgs、140℃の温度で、10時間の間動作したとき、電力劣化が1.0dB以下であることを特徴とする請求項1に記載のFET。
【請求項17】
前記GaNチャネル層は、6.0μmの厚さを有し、15パーセントから30パーセントのAl、および15nmから40nmの厚さを有する、前記GaNチャネル層上のAlGaN層をさらに備えることを特徴とする請求項16に記載のFET。
【請求項18】
高電子移動度トランジスタ(HEMT)であり、前記AlGaN層上のソースコンタクトおよびドレインコンタクトをさらに備えることを特徴とする請求項17に記載のFET。
【請求項19】
3.0W/mmを超える電力密度を有し、3.5GHzから4.0GHzの周波数で動作することを特徴とする請求項18に記載のFET。
【請求項20】
28ボルトから70ボルトのVDS、−3.3から−14ボルトのVgs、140℃の温度で、6時間から100時間の間動作したとき、電力劣化が0.45dB以下であることを特徴とする請求項1に記載のFET。
【請求項21】
前記GaNチャネル層は、6.0μmの厚さを有することを特徴とする請求項20に記載のFET。
【請求項22】
高電子移動度トランジスタ(HEMT)であり、前記AlGaN層上のソースコンタクトおよびドレインコンタクトをさらに備えることを特徴とする請求項21に記載のFET。
【請求項23】
3.0W/mmを超える電力密度を有し、3.5GHzから4.0GHzの周波数で動作することを特徴とする請求項22に記載のFET。
【請求項24】
56ボルトのドレイン−ソース間電圧(VDS)、−8ボルトから−14ボルトのゲート−ソース間電圧(Vgs、140℃の温度で、少なくとも10時間という高温逆バイアステスト条件で、デバイスの動作を妨げる不可逆的損傷を伴わない、III族窒化物ベースの電界効果トランジスタ(FET)であって、
GaNチャネル層上のAlN層と、
前記AlN層上のAlGaN層と、
前記AlGaN層上のTゲートコンタクトと、
前記FETの表面上のパッシベーション層とを備え、
前記パッシベーション層は、窒化ケイ素(SiN)を含み、
前記GaNチャネル層は、2.0μmから8.0μmの厚さを有し、前記GaNチャネル層の表面の1.0μmを除くすべてが、Feで2×1016cm−3から2×1018cm−3の濃度にドープされていることを特徴とするIII族窒化物ベースの電界効果トランジスタ(FET)。
【請求項25】
3.0W/mmを超える電力密度を有し、3.5GHzから4.0GHzの周波数で動作することを特徴とする請求項24に記載のFET。
【請求項26】
高電子移動度トランジスタ(HEMT)を備え、前記パッシベーション層が前記HEMTの表面上にあり、前記HEMTが前記AlGaN層上のソースコンタクトおよびドレインコンタクトをさらに備えることを特徴とする請求項24に記載のFET。
【請求項27】
前記GaNチャネル層は、2.0μmの厚さを有することを特徴とする請求項26に記載のFET。
【請求項28】
前記GaNチャネル層は、6.0μmの厚さを有し、前記GaNチャネル層の5.0μmが、Feで2×1016cm−3から2×1018cm−3の濃度にドープされていることを特徴とする請求項26に記載のFET。
【請求項29】
前記GaNチャネル層は、6.0μmの厚さを有し、前記AlGaN層は、15パーセントから30パーセントのAl、および15nmから40nmの厚さを有することを特徴とする請求項26に記載のFET。
【請求項30】
56ボルトのドレイン−ソース間電圧(VDS)、−8ボルトから−14ボルトのゲート−ソース間電圧(Vgs、140℃の温度で、少なくとも10時間の間という条件を含む高温逆バイアステスト条件で動作したとき、3.0dB未満の電力劣化と、3.0W/mmを超える電力密度とを有する高電子移動度トランジスタ(HEMT)であって、
GaNチャネル層上のAlN層と、
前記AlN層上のAlGaN層と、
前記AlGaN層上のTゲートコンタクトと、
前記HEMTの表面上のパッシベーション層を備え、前記パッシベーション層は、窒化ケイ素(SiN)を含み、
前記GaNチャネル層は、2.0μmから8.0μmの厚さを有し、前記GaNチャネル層の表面の1.0μmを除くすべてが、Feで2×1016cm−3から2×1018cm−3の濃度にドープされていることを特徴とする高電子移動度トランジスタ(HEMT)。
【請求項31】
56ボルトのVDS、−8ボルトのVgs、140℃の温度で、20時間の間動作したとき、0.44dB以下の電力劣化を有し、2.0μmの厚さを有するGaNチャネル層を備えることを特徴とする請求項30に記載のHEMT。
【請求項32】
56ボルトのVDS、−8ボルトのVgs、140℃の温度で、20時間の間動作したとき、1.3dB以下の電力劣化を有し、2.0μmから8μmの厚さを有するGaNチャネル層を備え、前記GaNチャネル層のチャネル領域表面の1.0μmを除くすべてが、Feで2×1016cm−3から2×1018cm−3の濃度にドープされていることを特徴とする請求項30に記載のHEMT。
【請求項33】
56ボルトのVDS、−8ボルトのVgs、140℃の温度で、10時間の間動作したとき、0.25dB以下の電力劣化を有することを特徴とする請求項30に記載のHEMT。
【請求項34】
56ボルトのVDS、−8ボルトから−14ボルトのVgs、140℃の温度で、10時間から62時間の間動作したとき、0.40dB以下の電力劣化を有し、6.0μmの厚さを有するGaNチャネル層を備え、前記GaNチャネル層のチャネル領域表面の1.0μmを除くすべてが、Feで2×1016cm−3から2×1018cm−3の濃度にドープされていることを特徴とする請求項30に記載のHEMT。
【請求項35】
56ボルトのVDS、−8ボルトのVgs、140℃の温度で、10時間の間動作したとき、0.25dB以下の電力劣化を有し、
6.0μmの厚さを有するGaNチャネル層と、
15パーセントから30パーセントのAl、および15nmから40nmの厚さを有する、前記GaNチャネル層上のAlGaN層と
を備えることを特徴とする請求項30に記載のHEMT。
【請求項36】
28ボルトから70ボルトのVDS、−3.3から−14ボルトのVgs、140℃の温度で、6時間から100時間の間動作したとき、0.45dB以下の電力劣化を有し、6.0μmの厚さを有するGaNチャネル層を備え、前記GaNチャネル層のチャネル領域表面の1.0μmを除くすべてが、Feで2×1016cm−3から2×1018cm−3の濃度にドープされていることを特徴とする請求項30に記載のHEMT。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイスに関し、より詳細には、III族窒化物電界効果トランジスタ(FET)に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、海軍省(Department of the Navy)によって授与された契約番号N00014−02−C−0306およびN00014−02−C−0321に基づく政府支援を受けて開発された。政府は、本発明にある種の権利を有する。
【0003】
ケイ素(Si)やヒ化ガリウム(GaAs)などの材料は、無線周波数(RF)用途の半導体デバイスにおいて広く応用されている。しかし、これらのよく知られている半導体材料は、比較的小さいバンドギャップ(たとえば、室温でSiについて1.12eV、GaAsについて1.42)および/または比較的小さい絶縁破壊電圧のために、より高い電力にあまり適さない可能性がある。
【0004】
SiおよびGaAsによって引き起こされる難点に照らして、高電力および/または高周波用途やデバイスに対する関心は、炭化ケイ素(室温でアルファSiC(alpha SiC)について2.996eV)およびIII族窒化物(たとえば、室温でGaNについて3.36eV)などのワイドバンドギャップ半導体材料に転じている。これらの材料は一般的に、ヒ化ガリウム(GaN)より高い電界破壊強度を有し、GaNは一般的に、シリコンより良好な電子輸送特性を有する。
【0005】
高電力および/または高周波用途にとって特に重要なデバイスは、高電子移動度トランジスタ(HEMT)であり、HEMTは、場合によっては変調ドープ電界効果トランジスタ(MODFET)としても知られる。これらのデバイスは、いくつかの状況下で動作上の利点をもたらす可能性がある。というのは、異なるバンドギャップエネルギーを有し、、バンドギャップが小さい方の材料がより高い電子親和力を有する2つの半導体材料のヘテロ接合部に、2次元電子ガス(2DEG)が形成されるからである。2DEGは、非ドープの(非意図的にドープされた)、バンドギャップが小さい方の材料内の蓄積層であり、たとえば1013 キャリア数/cmを越える非常に高いシート電子濃度を含むことができる。従来のバルクドープ型(bulk−doped)デバイス内の電子と異なり、2DEG内の電子は、イオン不純物散乱が低減されることにより、より高い移動度を有することができる。
【0006】
この、高いキャリア濃度と高いキャリア移動度の組合せにより、HEMTは非常に高いトランスコンダクタンスを得ることができ、高周波用途にとって、金属半導体電界効果トランジスタ(MESFET)に勝る強力な性能上の利点がもたらされる可能性がある。
【0007】
窒化ガリウム/窒化アルミニウムガリウム(GaN/AlGaN)材料系で作製された高電子移動度トランジスタは、前述の高い絶縁破壊電界、それらの広いバンドギャップ、大きな伝導帯オフセット、および/または高い飽和電子ドリフト速度を含む材料特性の組合せのために、大量のRF電力を生成する潜在能力を有する。2DEG内の電子の大部分は、AlGaN内の分極に起因すると考えられる。GaN/AlGaN系のHEMTは、すでに実例が示されている。特許文献1および2には、AlGaN/GaN HEMT構造および製造方法が記載されている。特許文献3には、半絶縁性炭化ケイ素基板と、その基板上の窒化アルミニウムバッファ層と、そのバッファ層上の絶縁性窒化ガリウム層と、その窒化ガリウム層上の窒化アルミニウムガリウム障壁層と、その窒化アルミニウムガリウム活性構造上のパッシベーション層とを有するHEMTデバイスが記載されている。
【0008】
HEMTは、非特許文献3、4および特許文献25にも一般的な説明がされている。
【0009】
【特許文献1】米国特許第5192987号明細書
【特許文献2】米国特許第5296395号明細書
【特許文献3】米国特許第6316793号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/0066908A1号明細書
【特許文献5】米国特許第6849882号明細書
【特許文献6】米国特許出願第10/617843号明細書
【特許文献7】米国特許出願第10/772882号明細書
【特許文献8】米国特許出願第10/897726号明細書
【特許文献9】米国特許出願第10/849617号明細書
【特許文献10】米国特許出願第10/849589号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2003/0020092号明細書
【特許文献12】米国特許出願第10/996249号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2003/0102482A1号明細書
【特許文献14】米国特許第6841001号明細書
【特許文献15】米国特許第Re.34861号明細書
【特許文献16】米国特許第4946547号明細書
【特許文献17】米国特許第5200022号明細書
【特許文献18】米国特許第6218680号明細書
【特許文献19】米国特許第5210051号明細書
【特許文献20】米国特許第5393993号明細書
【特許文献21】米国特許第5523589号明細書
【特許文献22】米国特許第5592501号明細書
【特許文献23】米国特許出願第10/752970号明細書
【特許文献24】米国特許第6584333号明細書
【特許文献25】米国特許出願公開第2004/00124435号明細書
【非特許文献1】Heikman et al, Appl. Phys. Lett., vol. 81, pp. 439〜441, July 2002
【非特許文献2】Yu et al., “Schottky barrier engineering in III-V nitrides via the piezoelectric effect,” Applied Physics Letters, Vol. 73, No. 13, 1998
【非特許文献3】Hansen et al., “AlGaN/GaN metal-oxide-semiconductor heterostructure field-effect transistors using barium strontium titanate,” J. Vac. Sci. Technol. B22 (5), Sep/Oct 2004, 2479〜2485
【非特許文献4】Kunii et al., “A High Reliability GaN HEMT with SiN Passivation by Cat-CVD,” 2004 IEEE CSIC Digest, 197〜200
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
認定手続きの一部として、たとえばHEMT等のRF電力デバイスを高温逆バイアス(HTRB)テストで選別することが標準的な慣例である。HTRBテスト中に使用されるVGSは、少なくとも−2・(2−VGQ)または−2・(2−V)のうちより負である方と同程度に負とすることができる。ここで、VGQは、目標の用途についての静止VGSであり、Vは、デバイスの閾値電圧である。VGとVは共に一般に負である。この場合、VGとVは共に、一般的には約1.0ボルトから約3.0ボルトである最大可能ゲート電圧に関係付けられる(referenced to)。HTRB中に使用されるVDSは約2・VDQとすることができ、ここでVDQは、目標の用途についての静止VDSである。具体的には、温度をたとえば140℃等の通常動作温度に上昇して、電力デバイスに、そのデバイスが現実の用途において即座に達する可能性がある最大逆バイアス電圧がかけられる可能性がある。一般的に、テスト約1000時間程度の間行われる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のいくつかの実施形態は、約56ボルトのドレイン−ソース間電圧(VDS)、約−8ボルトから約−14ボルトのゲート−ソース間電圧(Vgs)、約140℃の温度で、約10時間を超えて動作したとき、電力劣化が約3.0dB未満であるIII族窒化物ベースの電界効果トランジスタ(FET)を提供する。
【0012】
本発明のさらなる実施形態では、FETは、約56ボルトのVDS、約−8ボルトのVgs、約140℃の温度で、約20時間の間動作したとき、電力劣化を約0.44dB以下とすることができる。前記FETは、約2.0μmの厚さを有するGaNチャネル層を備えることができる。前記FETは、高電子移動度トランジスタ(HEMT)とすることができる。前記HEMTは、前記GaNチャネル層上のAlN層と、前記AlN層上のAlGaN層と、前記AlGaN層上のTゲートコンタクトと、前記HEMTの表面上の絶縁層と、前記AlGaN層上のソースコンタクトおよびドレインコンタクトとをさらに備えることができる。前記FETは、約3.0W/mmを超える電力密度を有し、約3.5GHzから約4.0GHzの周波数で動作することができる。
【0013】
本発明のさらに他の実施形態では、FETは、約56ボルトのVDS、約−8ボルトのVgs、約140℃の温度で、約20時間の間動作したとき、電力劣化を約1.3dB以下とすることができる。前記FETは、約2.0μmから約8.0μmの厚さを有するGaNチャネル層を備えることができ、GaNチャネル層の表面の約1.0μmを除くすべてを、Feで約2×1016cm−3から約2×1018cm−3の濃度にドープすることができる。前記FETは、HEMTとすることができ、前記HEMTは、前記GaNチャネル層上のAlN層と、前記AlN層上のAlGaN層と、前記AlGaN層上のTゲートコンタクトと、前記HEMTの表面上の絶縁層と、前記AlGaN層上のソースコンタクトおよびドレインコンタクトとを備えることができる。前記FETは、約3.0W/mmを超える電力密度を有することができ、約3.5GHzから約4.0GHzの周波数で動作する。
【0014】
本発明のいくつかの実施形態では、FETは、約56ボルトのVDS、約−8ボルトのVgs、約140℃の温度で、約10時間の間動作したとき、電力劣化を約1.0dB以下とすることができる。前記FETは、前記FETの表面上のパッシベーション層を備えることができ、前記パッシベーション層は、窒化ケイ素(SiN)を含むことができる。前記FETは、HEMTとすることができる。前記HEMTは、GaNチャネル層と、前記GaNチャネル層上のAlN層と、前記AlN層上のAlGaN層と、前記AlGaN層上のTゲートコンタクトと、前記AlGaN層上のソースコンタクトおよびドレインコンタクトとを備えることができ、前記パッシベーション層が、前記Tゲートコンタクト、前記AlGaN層、ならびに前記ソースコンタクトおよび前記ドレインコンタクト上に設けられている。前記FETは、約3.0W/mmを超える電力密度を有し、約3.5GHzから約4.0GHzの周波数で動作することができる。
【0015】
本発明のさらなる実施形態では、FETは、約56ボルトのVDS、約−8ボルトから約−14ボルトのVgs、約140℃の温度で、約10時間から約62時間の間動作したとき、電力劣化を約0.40dB以下とすることができる。前記FETは、約6.0μmの厚さを有するGaNチャネル層を備えることができ、前記GaNチャネル層の表面の約1.0μmを除くすべてを、Feで約2×1016cm−3から約2×1018cm−3の濃度にドープすることができる。前記FETは、HEMTとすることができる。前記HEMTは、前記GaNチャネル層上のAlN層と、前記AlN層上のAlGaN層と、前記AlGaN層上のTゲートコンタクトと、前記HEMTの表面上の絶縁層と、前記AlGaN層上のソースコンタクトおよびドレインコンタクトとを備えることができる。前記FETは、約3.0W/mmを超える電力密度を有し、約3.5GHzから約4.0GHzの周波数で動作することができる。
【0016】
本発明のさらに他の実施形態では、FETは、約56ボルトのVDS、約−8ボルトのVgs、約140℃の温度で、約10時間の間動作したとき、電力劣化を約0.25dB以下とすることができる。前記FETは、約6.0μmの厚さを有するGaNチャネル層と、約15パーセントから30パーセントのAlおよび約15nmから約40nmの厚さを有する、前記GaNチャネル層上のAlGaN層とを備えることができる。前記FETは、HEMTとすることができる。前記HEMTは、前記GaNチャネル層と前記AlGaNとの間のAlN層と、前記AlGaN層上のTゲートコンタクトと、前記HEMTの表面上の絶縁層と、前記AlGaN層上のソースコンタクトおよびドレインコンタクトとを備えることができる。前記FETは、約3.0W/mmを超える電力密度を有し、約3.5GHzから約4.0GHzの周波数で動作することができる。
【0017】
本発明のいくつかの実施形態では、FETは、約28ボルトから約70ボルトのVDS、約−3.3から約−14のVgs、約140℃の温度で、約6時間から約100時間の間動作したとき、電力劣化を約0.45dB以下とすることができる。前記FETは、約6.0μmの厚さを有するGaNチャネル層を備えることができ、前記GaNチャネル層の表面の約1.0μmを除くすべてを、Feで約2×1016cm−3から約2×1018cm−3の濃度にドープすることができる。前記FETは、HEMTとすることができる。前記HEMTは、前記GaNチャネル層上のAlN層と、前記AlN層上のAlGaN層と、前記AlGaN層上のTゲートコンタクトと、前記HEMTの表面上の絶縁層と、前記AlGaN層上のソースコンタクトおよびドレインコンタクトとを備えることができる。前記FETは、約3.0W/mmを超える電力密度を有し、約3.5GHzから約4.0GHzの周波数で動作することができる。
【0018】
本発明のさらなる実施形態は、約56ボルトのドレイン−ソース間電圧(VDS)、約−8ボルトから約−14ボルトのゲート−ソース間電圧(Vgs)、約140℃の温度で、少なくとも約10時間という高温逆バイアステスト条件に耐え得るIII族窒化物をベースとする電界効果トランジスタ(FET)を提供する。
【0019】
本発明のさらに他の実施形態は、約56ボルトのドレイン−ソース間電圧(VDS)、約−8ボルトから約−14ボルトのゲート−ソース間電圧(Vgs)、約140℃の温度で、少なくとも約10時間の間動作したとき、約3.0dB未満の電力劣化と、約3.0W/mmを超える電力密度とを有する高電子移動度トランジスタ(HEMT)を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態が示されている添付図面を参照して、本発明について以下により十分に述べる。しかしながら、本発明は本明細書に記載されている実施形態に限定されるものと解釈すべきでない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が徹底的で完全なものとなり、また、本発明の範囲を当業者に完全に伝えるために提供されている。図面では、層および領域の厚さが、明瞭性のために誇張されている。同様の番号は、全体にわたって同様の要素を指す。本明細書で使用される「および/または」という用語は、関連付けて列挙された項目の1つまたは複数のいずれか及びすべての組合せを含む。
【0021】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態について記述するためのものにすぎず、本発明を限定するものではない。本明細書で使用される単数形は、文脈がそうではないと明らかに示さない限り、複数形もまた含むものとする。さらに、「備える」、「含む」という用語は、本明細書で使用されるとき、述べられた特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除しないことが理解されるであろう。
【0022】
層、領域、または基板等のある要素が別の要素の「上に」ある、または別の要素の「上に」延びていると言及されるとき、その要素は、他方の要素の上に直接ある、または他方の要素の上に直接延びていることができ、または介在要素が存在してもよいことが理解されるであろう。対照的に、ある要素が別の要素の「上に直接」ある、または別の要素の「上に直接」延びていると言及されるとき、介在要素は存在しない。また、ある要素が別の要素に「接続されている」または「結合されている」と言及されるとき、その要素は、他方の要素に直接に接続されている、または結合されている可能性があり、または介在要素が存在してもよいことが理解されるであろう。一方、ある要素が別の要素に「直接に接続されている」または「直接に結合されている」と言及されるとき、介在要素は存在しない。同様の番号は、本明細書全体にわたって同様の要素を指す。
【0023】
様々な要素、構成要素、領域、層、および/または区域について述べるために、第1、第2などの用語が本明細書において使用される可能性があるが、これらの要素、構成要素、領域、層、および/または区域は、これらの用語によって限定されるべきでないことが理解されるであろう。これらの用語は、ある要素、構成要素、領域、層、または区域を、別の領域、層、または区域から区別するために使用されるにすぎない。したがって、以下で検討される第1の要素、構成要素、領域、層、または区域は、本発明の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層、または区域と呼ぶことができる。
【0024】
さらに、「下(lower)」または「下端」、ならびに「上(upper)」または「上端」等の相対的な用語は、図に例示されているような、ある要素の別の要素に対する関係を説明するために本明細書において使用される可能性がある。相対的な用語は、図に示されている向きに加えて、デバイスの異なる向きを包含することが意図されていることが理解されるであろう。たとえば、図中のデバイスが裏返される場合、他の要素の「下」側にあるものとして述べられた要素は、他の要素の「上」側に配向されることになる。したがって、「下」という例示的用語は、図の特定の向きに応じて、「下」と「上」の向きを共に包含することができる。同様に、ある図中のデバイスが裏返される場合、他の要素の「下方(below)」または「下(beneath)」にあるものとして述べられた要素は、他の要素の「上方」に配向されることになる。したがって、「下方」または「下」という例示的用語は、上方と下方の向きを共に包含することができる。さらに、「外(outer)」という用語は、基板から最も遠い表面および/または層に言及するために使用することができる。
【0025】
本発明の実施形態は、本発明の理想化された実施形態の概略図である断面図を参照して説明される。したがって、たとえば製造技法および/または公差の結果として図の形状から変動することが予期されるべきである。したがって、本発明の実施形態は、本明細書で例示されている領域の特定の形状に限定されると解釈すべきでなく、たとえば製造に起因する形状の偏差を含むべきである。たとえば、三角形として図示されているエッチングされた領域は、一般的には、テーパ形、丸形、または湾曲した形態を有することになる。したがって、図示されている領域は、本質的に概略的であり、それらの形状は、デバイスの領域の正確な形状を図示することが意図されておらず、また本発明の範囲を限定することが意図されていない。
【0026】
別段の定めがない限り、本明細書で使用される(技術用語および科学用語を含む)用語のすべては、本発明が属する分野の当業者によって共通に理解されるものと同じ意味を有する。さらに、一般に使用される辞書に定義されているものような用語は、関連技術および本開示の文脈におけるそれらの意味と適合する意味を有すると解釈すべきであり、本明細書に明示の定めがない限り、理想化された又は過度に形式的な意味で解釈されない。
【0027】
別の形態に「隣接して」配置される構造または形態に対する言及は、その隣接する形態に重なり合うか、またはその下にある部分を有する可能性があることも当業者には理解されるであろう。
【0028】
本発明の実施形態は、III族窒化物ベースのHEMT等の窒化物ベースのデバイス内での使用に特に好適である可能性がある。本明細書で使用される「III族窒化物」という用語は、窒素と周期表のIII族にある元素、通常はアルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、および/またはインジウム(In)との半導体化合物を指す。この用語は、AlGaNおよびAlInGaN等の三元化合物および四元化合物も指す。当業者にはよく理解されるように、III族元素は、窒素と化合し、二元化合物(たとえば、GaN)、三元化合物(たとえば、AlGaN、AlInN)、および四元化合物(たとえば、AlInGaN)を形成することができる。これらの化合物すべては、窒素1モルが合計1モルのIII族元素と化合する実験式(empirical formula)を有する。したがって、AlGa1−xN(0≦x≦1)などの化学式がそれらを説明するためにしばしば使用される。
【0029】
本発明の実施形態について特定の構造を参照して説明するが、他の構造、および/またはGaNベースのHEMTを作製するための技法も、本発明のいくつかの実施形態において利用することができる。そのような構造および/または技法には、たとえば特許文献3、4、5、6、7、8、9、10、11、および12に述べられているものを含むことができる
【0030】
本発明の背景で論じたように、認定手続きの一部として、RF電力デバイスを高温逆バイアス(HTRB)テストで選別することが標準的な慣例である。本明細書で使用される「耐え得る」は、デバイスの破壊なく、すなわちデバイスの動作を妨げる不可逆的損傷なく、テスト条件の適用に耐えることを指す。III族窒化物デバイスは、多数の他のデバイスよりもHTRB条件下で劣化しやすい可能性がある。したがって、そのような条件に耐えることができるデバイスを生み出すことは、困難となる可能性がある。したがって、HTRB条件に耐えることができるIII族窒化物デバイスは、たとえば高電子移動度トランジスタ(HEMT)製品等の商用III族窒化物電界効果トランジスタ(FET)を開発する上で障害となる可能性がある。
【0031】
HTRBテストは、III族窒化物FET(HEMT)のいくつかの異なるウェハロットに対して行われた。約−3.0ボルトから約−4.0ボルトのピンチオフ電圧を有するHEMTについて、約28.0ボルトの直流ドレインバイアス、および56ボルトと同量までの、対応する最大ドレインスイング(drain swing)が予測された。ゲート電圧は、約2.0V乃至約3.Vから約−8ボルト乃至約−10ボルトに揺れ動く可能性がある。したがって、テストは、56ボルトのドレイン−ソース間電圧(VDS)、−8ボルトまたは−14ボルトのゲート−ソース間電圧(Vgs)を、140℃の通常動作温度で、様々な長さの時間の間使用して実行された。より早期のテストは−14ボルトのVgsを用いて行われ、より最近のテストは−8ボルトのVgsを用いて行われていた。理想的なデバイスでは、これらのテストはデバイスに対して無限の時間の間行うことができ、そのデバイスはどのような電力劣化も受けないはずであることが理解されるであろう。認定手続きのためには、テストは一般に約1000時間の間行われるが、このテストは、多数のウェハ間の相対的な差を決定するために行われたため、それよりはるかに短い時間の間行われた。
【0032】
予備的な覚え書きとして、テストはクリーのノースカロライナとカリフォルニアの施設で行われた。各施設でのストレス(stress)は実質的に同等であるが、クリーのカリフォルニアの施設によって得られた結果の方が良好に見える。たとえば、カリフォルニアチームが約0.4dBの電力劣化を得ることができる場合、ノースカロライナチームは、同じロット内のデバイス(ウェハ)について約0.8dBから約0.9dBの電力劣化を得る可能性がある。先に論じたように、6つの異なるウェハロットについてHTRB条件を使用するテストが実行された。図1Aおよび図1Bに関連して以下に論じる構造は、デバイステストの一般的な構造である。テスト・ランのそれぞれに対する具体的なデバイス仕様は以下に詳細に論じる。
【0033】
図1Aから図3に関連して以下に論じるように、本発明のいくつかの実施形態によるデバイスは、約56ボルトのドレイン−ソース間電圧(VDS)、約−8ボルトから約−14ボルトのゲート−ソース間電圧(Vgs)、約140℃の温度で、少なくとも約10時間という高温逆バイアス(HTRB)テスト条件に耐え得るIII族窒化物ベースのFETを提供する。さらに、本発明のいくつかの実施形態によるFETは、HTRBストレス条件に耐えるだけでなく、本明細書で論じられているデバイスは、以下にさらに論じるように、約3.0dB未満の電力劣化を有する。
【0034】
本発明のいくつかの実施形態による例示的デバイスが、図1Aおよび図1Bに概略的に図示されている。しかしながら、本発明の実施形態は、本明細書で述べられている特定の例示的実施形態に限定されると解釈すべきでなく、本明細書で述べられているトランジスタ特性をもたらす任意の好適な構造を含むことができる。
【0035】
ここで図1Aを参照すると、窒化物ベースのデバイスを形成することができる基板10が設けられている。本発明の特定の実施形態では、基板10は、たとえば4Hポリタイプの炭化ケイ素とすることができる半絶縁性炭化ケイ素(SiC)基板としてもよい。他の炭化ケイ素の候補ポリタイプは、3C、6H、および15Rのポリタイプを含む。「半絶縁性」という用語は、絶対的な意味ではなく、説明的に使用されている。本発明の特定の実施形態では、炭化ケイ素のバルク結晶が、室温で約1×10Ω・cm以上の抵抗率を有する。
【0036】
任意選択のバッファ層、核形成層、および/または遷移層(図示せず)を、基板10上に設けることができる。たとえば、炭化ケイ素基板とデバイスの残りの部分との間で適切な結晶構造遷移を実現するために、AlNバッファ層が設けることができる。さらに、特許文献13または14に記載されているように、歪み平衡(strain balancing)遷移層も設けることが可能である
【0037】
適切なSiC基板は、たとえば本発明の譲受人であるノースカロライナ州ダーラムのCree,Inc.によって製造され、生産方法は、たとえば特許文献15、16、17、および18に記載されている。同様に、III族窒化物のエピタキシャル成長のための技法は、たとえば特許文献19、20、21、および22に記載されている
【0038】
炭化ケイ素を基板材料として使用することができるが、本発明の実施形態は、サファイア、窒化アルミニウム、窒化アルミニウムガリウム、窒化ガリウム、ケイ素、GaAs、LGO、ZnO、LAO、InP等の好適な基板のうちの任意のものを使用することができる。いくつかの実施形態では、適切なバッファ層もまた形成することができる。
【0039】
再び図1Aを参照すると、チャネル層12が基板10上に設けられる。チャネル層12は、上述のように、バッファ層、遷移層、および/または核形成層を使用して、基板10上に堆積される可能性がある。チャネル層12は、圧縮歪み下にある可能性がある。さらに、チャネル層12および/またはバッファ、核形成、および/または遷移層を、MOCVDによって、またはMBEもしくはHVPE等の当業者に既知の他の技法によって堆積してよい。本発明のいくつかの実施形態では、GaNバッファは、非特許文献1または特許文献23に記載されているのと同様な形でFeドープすることができる。FeドープGaNバッファを有するデバイスでは、Fe濃度がチャネル領域又はGaNバッ
ファの上端の約0.01μm内で非常に低い又は約1×1016cm−3未満であるならば、GaNバッファを部分的にFeドープすることができる。
【0040】
チャネル層12は、III族窒化物、特にGaNである。チャネル層12は、非ドープの(「非意図的にドープされた」)ものとすることができ、本発明の特定の実施形態に応じて、約0.01μmから約20.0μmの厚さに成長させることができる。本発明の特定の実施形態では、チャネル層12はGaNであり、具体的なテスト・ランに関連して以下にさらに論じるように、約2.0μmから約8.0μmの厚さを有する。
【0041】
障壁層がチャネル層12上に設けられる。チャネル層12は、障壁層のバンドギャップ未満のバンドギャップを有することができ、またチャネル層12は、障壁層より大きな電子親和力を有することができる。障壁層は、チャネル層12上に堆積させることができる。本発明のいくつかの実施形態では、障壁層は、AlN層14およびAlGaN層16によって設けられる。AlN層14は、約0.2nmから約2.0nmの厚さを有することができる。AlGaN層16は、約10nmから約40nmの厚さと、約15パーセントから約30パーセントのAl組成とを有することができる。本発明のいくつかの実施形態では、AlGaN層16は、約20nmから約30nmの厚さと、約20パーセントから約35パーセントのAl組成とを有することができる。本発明のいくつかの実施形態による層の例は特許文献5に記載されている。本発明の特定の実施形態では、障壁層は、チャネル層12と障壁層との間の界面で、分極効果を介して相当なキャリア濃度を引き起こすのに十分に厚く、十分に高いAl組成およびドーピングを有する。本発明の特定の実施形態では、障壁層は、約0.4nmから約0.8nmの厚さを有するAlN層と、20パーセントを超えるAlおよび約20nmから約30nmの厚さを有するAlGaN層とを備える。AlGaN層内のAlのパーセンテージは、典型的には、約25パーセント未満である。
【0042】
図1Aにさらに図示されているように、このHEMTは、AlGaN層16上にソースコンタクト20と、ドレインコンタクト22と、ゲートコンタクト32とを備える。ソースコンタクト20とドレインコンタクト22は、これらに限らないが、チタン、アルミニウム、金、またはニッケルの合金を含む異なる材料製とすることができる。ゲートコンタクト32は、図1Aに図示されているようにTゲートであり、従来の作製技法を使用して作製することができる。好適なゲート材料は、AlGaN層16の組成によって決まる可能性があるが、いくつかの実施形態では、Ni、Pt、NiSi、Cu、Pd、Cr、W、および/またはWSiN等の、窒化物ベースの半導体材料にショットキーコンタクトを作製可能な従来の材料を使用することができる。図示されていないが、本発明のいくつかの実施形態では、パッシベーション層を、図1Aの構造上全面に堆積することができる。パッシベーション層は、窒化ケイ素(SiN)としてもよい。SiN、SiON、SiO、MgNなどに対する言及は、化学量論材料および/または非化学量論材料を指す。Tゲート32は、2層電子ビームリソグラフィープロセスによって画定することができ、約0.18μmのフットプリントを有する。
【0043】
図1Aでは、ゲートコンタクト32からソースコンタクト20までの距離が、LGSとして示されている。本発明のいくつかの実施形態では、LGSは約0.7μmとすることができる。ゲートコンタクト32からドレインコンタクト22までの距離は、LGDとして示されている。本発明のいくつかの実施形態では、LGDは約2.0μmとすることができる。ゲートコンタクト32のT字部分の長さは、LGTとして示されている。本発明のいくつかの実施形態では、LGTは約0.7μmとすることができる。ゲートコンタクト32のベースの長さは、LGBとして示されている。本発明のいくつかの実施形態では、LGBは約0.2μmとすることができる。T字の翼がゲートコンタクト32のベースから延びている距離は、LGWとして示されている。本発明のいくつかの実施形態では、LGWは約0.25μmとすることができる。図1Aのページの内側そして外側に延びているゲートコンタクト32の寸法は、本明細書では、ゲート幅Wと呼ばれる。本発明のいくつかの実施形態では、Wは約250μmとすることができる。デバイスの合計幅は30.0mmとすることができるが、これは電力レベルおよび周波数によって決まる可能性がある。デバイスの合計幅を増大するために、複数のセルを平行に配置することができる。合計幅は、組み合わされたデバイスの「周縁」と呼ぶことができる。
【0044】
本発明のいくつかの実施形態によるHEMTは、それぞれが約0.25mmの幅を有する複数のゲートフィンガ(gate finger)を備える。本明細書で論じられている本発明の実施形態は、ゲートフィンガを2つ備える。デバイスは、約0.5mmの合計幅を有する。図1Bは、本発明のいくつかの実施形態によるトランジスタの複数の単位セルを図示する断面図である。図1Bにおける同様の番号は、図1Aの同様の要素を指し、したがって、これらの要素の詳細は本明細書でこれ以上論じない。図1Bではドレイン22が別々であるが、ドレイン22は、本発明の範囲から逸脱することなく単一のレール(rail)に組み合わせることができることが理解されるであろう。本明細書で論じられているデバイスは、約3.5GHzから約4.0GHzの周波数で動作しているとき、約3.0W/mmを超える電力密度を有することができる。
【0045】
別段の表示がない限り、以下に論じられるデバイスは、上述の構造を有するデバイスである。次に、本明細書で述べられた例示的デバイスの性能について述べる。しかしながら、本発明の実施形態は、これらの特定のデバイスに限定されると解釈すべきでなく、本明細書で述べられている性能特性を提供することが可能な他のデバイスを含む。さらに、様々な動作理論が本明細書で述べられているが、本発明の実施形態は、特定の動作理論に限定されると解釈すべきでない。
【0046】
次に、6つのテスト・ランについて得られた結果について詳細に論じる。第1の一連のテスト・ランでは、高温逆バイアス(HTRB)条件でストレスを受けた後に、約0.07dBから約0.44dBに及ぶ電力劣化が生じた。テストされたデバイスは、本発明のいくつかの実施形態による、図1Aに関連して先に論じたFeドーピングまたはSiN層を含んでいなかった。上述した電力劣化を生じたHTRBストレス条件は、VDS=56ボルト、Vgs=−8ボルト、T=140℃、Time=20時間であった。これらの値は近似値であり、したがって本発明の実施形態は、これらの厳密な値に限定すべきでないことが理解されるであろう。さらに、逆ゲート−ドレイン間漏れ電流(reverse gate−to−drain leakage current)は、すべての場合において、約14〜20マイクロアンペアからわずか数マイクロアンペアに減少した。
【0047】
第2の一連のテスト・ランでは、高温逆バイアス(HTRB)条件でストレスを受けた後に、約0.06dBから約1.30dBに及ぶ電力劣化が生じた。テストされたデバイスは、図1Aに関連して先に論じたように、チャネルの下方にFeドーピングを含んでいた。さらに、GaNバッファ層は、約2.0μmから8μmの厚さを有していた。上述した電力劣化を生じたHTRBストレス条件は、VDS=56ボルト、Vgs=−8ボルト、T=140℃、Time=20時間であった。最終データにおいてバッファの厚さと信頼性との強い相関はなかったが、最良の結果は最も厚いバッファで達成された。バッファが厚いと、デバイスの表面に欠陥が生じるおそれがある。さらに、ゲート−ドレイン間逆漏れ電流(Igd)は、いくつかのウェハについて減少し、他のウェハについて増大したが、最良の結果を生じるウェハについては減少した。
【0048】
第3の一連のテスト・ランでは、高温逆バイアス(HTRB)条件でストレスを受けた後に、約0.25dB未満から約1.0dBに及ぶ電力劣化が生じた。テストされたデバイスは、図1Aに関連して先に論じたように、SiN層(約1モノレイヤ)を含んでいた。上述した電力劣化を生じたHTRBストレス条件は、VDS=56ボルト、Vgs=−8ボルト、T=140℃、Time=10時間であった。SiN層のない本発明の実施形態におけるデバイスは、約1.0dB劣化したが、SiN層を有する本発明の実施形態におけるいくつかのデバイスは、より厳しい条件下で約0.25dB未満劣化したにすぎず、低い、減少する漏れ電流を示した。
【0049】
第4の一連のテスト・ランでは、高温逆バイアス(HTRB)条件でストレスを受けた後に、約0.1dBから約0.4dBに及ぶ電力劣化が生じた。これらのデバイスは、約6μmの厚さと様々な量のFeドーピングとを有するGaNバッファを有していた。Feドーピング濃度は、約2×1016cm−3から約2×1018cm−3に及んだ。大抵のドーピングがチャネルに最も近接するウェハでは、約1.0dBから約2.0dBの電力劣化を生じた。上述した電力劣化を生じたHTRBストレス条件は、VDS=56ボルト、Vgs=−8ボルト、T=140℃、Time=10時間であった。さらに、逆漏れ電流は、大部分について、20マイクロアンペアから100マイクロアンペアの範囲内で開始し、そのままであった。ウェハのうちの1枚は、約62時間のより長いテストにおいて、約0.4dBの電力劣化を示した。さらに、別のウェハは、Vgsが−8ボルトではなく−14ボルトであったとき、約0.1dBから0.5dBの電力劣化を示した。
【0050】
第5の一連のテスト・ランでは、高温逆バイアス(HTRB)条件でストレスを受けた後に、約0.3dBから約1dBに及ぶ電力劣化が生じた。これらのデバイスは、約6μmの厚さを有するGaNバッファと、AlGaN層内の様々な量のアルミニウムとを有していた。アルミニウムの割合は、約20パーセントから約25パーセントの間で変動した。アルミニウムの変動は、テスト結果に著しい影響を及ぼすように見えなかった。上述した電力劣化を生じたHTRBストレス条件は、VDS=56ボルト、Vgs=−8ボルト、T=140℃、Time=10時間であった。逆漏れ電流の中程度の増大が、高モル分率ウェハについて観察されており、高モル分率ウェハは、より高い電荷密度、より高い電流レベル、より多くの電力出力、そしておそらくはより高い内部電界をも有していた。カリフォルニアのクリーによって測定された電力劣化は、約0.3dBから約0.6dBの間で変動し、逆漏れ電流は、概して0.1mA/mmから0.5mA/mmと1.0mA/mmの間に増大したことに留意されたい。ノースカロライナのクリーによって測定された電力劣化は約0.7dBから1.0dBの間で変動し、おそらくはストレスを加える前後でRFテストの詳細が異なることに起因する。
【0051】
最後に、第6の一連のテスト・ランでは、高温逆バイアス(HTRB)条件でストレスを受けた後に、約0.0dBから約0.45dBに及ぶ電力劣化が生じた。テストされたデバイスは、約6μmの厚さと様々な量の鉄ドーピングとを有するGaNバッファを有していた。上述した電力劣化を生じたHTRB条件は、VDS=28ボルトから約70ボルト、Vgs=−3.3ボルトから約−14ボルト、T=140℃、Time=100時間未満であった。これらのテスト・ランの結果が、図2および図3のグラフに図示されている。図2は、VDSが28Vに等しいときの、本発明のいくつかの実施形態による、テスト実施前後の出力電力(POUT)、電力付加効率(PAE)、および利得を示すプロットである。図3は、VDSが48Vに等しいときの、本発明の他の実施形態による、テスト実施前後の出力電力(POUT)、電力付加効率(PAE)、および利得を示すプロットである。
【0052】
本発明の実施形態について、本明細書において、特定のHEMT構造を参照して説明したが、本発明は、そのような構造に限定されると解釈すべきでない。たとえば、本発明の教示から依然として受益しながら、HEMTデバイスに追加の層を含めることができる。そのような追加の層は、たとえば非特許文献2または特許文献24に記載されているようなGaNキャップ層を含むことができる
【0053】
図面および明細書では、本発明の典型的な実施形態が開示されており、特定の用語が使用されているが、それらは一般的かつ説明的な意味で使用されているにすぎず、限定するためのものではない。
【図面の簡単な説明】
【0054】
図1A】本発明のいくつかの実施形態によるトランジスタの単位セルを示す断面図である。
図1B】本発明のいくつかの実施形態による複数の単位セルを示す断面図である。
図2】本発明のいくつかの実施形態による、テスト実施前後の出力電力(POUT)、電力付加効率(PAE)、および利得を示すプロットである。
図3】本発明の他の実施形態による、テスト実施前後の出力電力(POUT)、電力付加効率(PAE)、および利得を示すプロットである。
図1A
図1B
図2
図3