特許第5756749号(P5756749)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5756749直接圧縮性および迅速崩壊性錠剤マトリックス
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  • 特許5756749-直接圧縮性および迅速崩壊性錠剤マトリックス 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5756749
(24)【登録日】2015年6月5日
(45)【発行日】2015年7月29日
(54)【発明の名称】直接圧縮性および迅速崩壊性錠剤マトリックス
(51)【国際特許分類】
   A61K 9/20 20060101AFI20150709BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20150709BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20150709BHJP
   A61K 47/42 20060101ALI20150709BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20150709BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20150709BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20150709BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20150709BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20150709BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20150709BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20150709BHJP
   A61P 1/08 20060101ALI20150709BHJP
   A61P 1/10 20060101ALI20150709BHJP
【FI】
   A61K9/20
   A61K47/10
   A61K47/38
   A61K47/42
   A61K47/12
   A61K47/22
   A61K47/26
   A61P1/04
   A61P31/00
   A61P25/04
   A61P37/08
   A61P1/08
   A61P1/10
【請求項の数】15
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-513898(P2011-513898)
(86)(22)【出願日】2009年5月25日
(65)【公表番号】特表2011-524386(P2011-524386A)
(43)【公表日】2011年9月1日
(86)【国際出願番号】EP2009003677
(87)【国際公開番号】WO2009152922
(87)【国際公開日】20091223
【審査請求日】2012年5月21日
(31)【優先権主張番号】08011238.6
(32)【優先日】2008年6月20日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】08014287.0
(32)【優先日】2008年8月11日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591032596
【氏名又は名称】メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】クラインヴェーヒター、 ダニエラ
(72)【発明者】
【氏名】モッデルモク、 ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】オグニベーネ、 ロベルト
【審査官】 牧野 晃久
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−533465(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/072534(WO,A1)
【文献】 特表2008−517988(JP,A)
【文献】 特開2004−307506(JP,A)
【文献】 特開平08−208523(JP,A)
【文献】 特表2005−533045(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/029376(WO,A1)
【文献】 特開2001−163770(JP,A)
【文献】 特開2005−325040(JP,A)
【文献】 特開2005−306770(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/060402(WO,A1)
【文献】 特開2001−114712(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/043538(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00− 9/70
A61K 47/00− 47/48
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
迅速に崩壊する錠剤を直接打錠法で製造するための、噴霧マンニトール90〜98重量部、および架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム10〜2重量部からなる共混合物であって、該共混合物はBET表面積が1.5m/gを超え、該噴霧マンニトールはフィラメント状の微細構造を有しその平均粒子径(レーザー光測定)が60〜200μmの範囲であることを特徴とする共混合物。
【請求項2】
迅速に崩壊する錠剤を直接打錠法で製造するための、噴霧マンニトール95重量部、および架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム5重量部からなる共混合物であって、BET表面積が1.5m/gを超えることを特徴とする、請求項1に記載の共混合物。
【請求項3】
BET表面積が1.9〜4.0m/gの範囲であることを特徴とする、請求項1または2に記載の共混合物。
【請求項4】
BET表面積が1.9〜2.6m/gの範囲であることを特徴とする、請求項1または2に記載の共混合物。
【請求項5】
バルク密度0.45〜0.60g/ml、タップ密度0.60〜0.75g/ml、安息角30〜38℃であることを特徴とする、請求項1から4のいずれかの一項に記載の共混合物。
【請求項6】
前記噴霧マンニトールの平均粒子径(レーザー光測定)が64〜114μmの範囲であることを特徴とする、請求項1から5のいずれかの一項に記載の共混合物。
【請求項7】
水分含量が<1重量%である、請求項1から6のいずれかの一項に記載の共混合物。
【請求項8】
圧縮されて錠剤を与えることができ、また20kNの押圧により圧縮された後に、硬度>250N、摩損度≦0.14%、および崩壊時間≦70秒である錠剤が得られることを特徴とする、請求項1から7のいずれかの一項に記載の共混合物。
【請求項9】
請求項1から8のいずれかの一項に記載の共混合物が賦形剤材料として使用されて調製される、活性化合物および/または芳香成分含有錠剤製剤。
【請求項10】
ビタミン、ミネラル物質、微量元素、機能性食品成分を含む錠剤製剤を調製するための、請求項1から8のいずれかの一項に記載の共混合物の賦形剤材料としての使用。
【請求項11】
植物成分および植物抽出物を含む錠剤製剤を調製するための、請求項1から8のいずれかの一項に記載の共混合物の賦形剤材料としての使用。
【請求項12】
合成もしくは天然色素、天然もしくは天然と同一の芳香成分、および、他のフレーバー物質(アスパルテーム、サッカリン、アセスルファムK、ネオヘスペリジンDC、スクラロース、タウマチン、およびステビオサイドの群からの甘味料果物芳香成分、ペパーミント芳香成分、メントールクエン酸および酒石酸の群からのフルーツ酸フレーバー植物抽出物;の群から選ばれるもの)を含む錠剤製剤を調製するための、請求項1から8のいずれかの一項に記載の共混合物の賦形剤材料としての使用。
【請求項13】
制酸剤または抗感染薬を含む錠剤製剤を調製するための、請求項1から8のいずれかの一項に記載の共混合物の賦形剤材料としての使用。
【請求項14】
口腔および咽頭領域の局所作用用途に使用される物質を含む錠剤製剤を調製するための、請求項1から8のいずれかの一項に記載の共混合物の賦形剤材料としての使用。
【請求項15】
オピオイド剤を含む鎮痛剤、抗アレルギー剤、抗嘔吐剤、または下痢止め剤を含む錠剤製剤を調製するための、請求項1から8のいずれかの一項に記載の共混合物の賦形剤材料としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分の存在下で、迅速に崩壊する錠剤を製造するための、新規な直接圧縮性マトリックス(directly compressible matrix)に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
固形の経口医薬品から、特に錠剤から、活性化合物を急速に放出するための、非常に迅速に崩壊し、口当たりがよく、かつ加工が簡単な、錠剤マトリックス(tablet matrix)が必要とされている。同時に、このマトリックスには、錠剤の製造後のさらなる処理、例えば、包装のためにおよび病人などにとって、取り扱いが容易になるように、圧縮により低摩耗性で十分に硬質な錠剤の提供が要求される。
【0003】
適切な予備処理を行った後のマンニトールは、容易に圧縮され、良好な保存安定性を有し、実質的にすべての活性化合物と相性がよく、かつ、同時に口当たりのよい甘味を呈するので、このようなマトリックスの基材として当然の選択である。
【0004】
しかし、このような用途として市場で現在入手可能なマンニトール調製物は、非常に複雑な構造を有しており、かつ/または、医薬製剤の特性の面で不適切である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】EP0896528B1
【特許文献2】EP1453781B1
【特許文献3】EP1319644B1
【特許文献4】WO00/76650A1
【特許文献5】EP0738252B1
【特許文献6】EP0904059B1
【発明の概要】
【0006】
目的
このような錠剤マトリックスの2つの相反する要求、すなわち高い錠剤硬度と同時に、非常に迅速な崩壊性および活性化合物の放出性は、この種の適切な製剤で一体化されなければならない。さらに、マトリックスは、錠剤の工場生産において、造粒工程無しに、他の錠剤成分と共に直接圧縮できるように、加工が非常に簡単であるべきである。
目的の達成
特定のマンニトール粉末と架橋カルボキシメチルセルロースナトリウムの共混合物が、直接打錠方法において、迅速に崩壊する錠剤を製造するための特定の粒子構造、および大きなBET表面積を有する錠剤マトリックスを与えることが、実験により今回明らかになった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
したがって、本発明は、直接打錠方法において、噴霧マンニトール90〜98重量部、特に好ましくは95重量部、および架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム10〜2重量部、特に好ましくは5重量部からなる、迅速に崩壊する錠剤を製造するための共混合物であって、BET表面積が1.5m2/gを超えることを特徴とする共混合物に関する。BET表面積が1.9〜4.0m2/gの範囲、特に、1.9〜2.6m2/gの範囲にある混合物を使用することが特に有利であることが明らかになった。バルク密度が0.45〜0.60g/mlの範囲、タップ密度が0.60〜0.75g/mlの範囲、および安息角が30〜38°の範囲であることを同時に満たす錠剤を製造するためには、同様の混合物を用いるのが非常に特に有利であることが明らかになった。
【0008】
本発明に係るこのような共混合物において、粒子は、平均粒子径(レーザー光測定)が60〜200μmの範囲、好ましくは、64〜114μmの範囲とすることができる。用いられる混合物は、好ましくは、水分含量が<1重量%である。
【0009】
このような特性を有する共混合物は、簡単な方法で圧縮されて錠剤を作ることができる。押圧20kNで圧縮すると、硬度が>250Nであって、摩損度(friability)が≦0.14%、および崩壊時間が≦70秒である錠剤を得ることができる。
【0010】
特に、本発明による共混合物は、前記の有利な特性を有する活性化合物および/または芳香成分含有錠剤製剤、およびこの賦形剤材料から調製される活性化合物を含むまたは含まない錠剤、またはその他の医薬製剤のための賦形剤材料としての使用に適している。
【0011】
これらの有利な特性により、本発明に係る賦形剤材料は、活性化合物および芳香成分を含む錠剤製剤を調製するための使用に特に適している。これらは、特に、以下の物質に適用できる。
・食品補助剤の領域の物質、例えば、ビタミン、ミネラル物質、微量元素、例えば、植物成分および植物抽出物などの機能性食品成分、
・合成および天然色素、天然および天然と同一の芳香成分、ならびに、例えば、甘味料(アスパルテーム、サッカリン、アセスルファムK、ネオヘスペリジンDC、スクラロース、タウマチン、ステビオサイド)、果物芳香成分、ペパーミント芳香成分またはメントール、クエン酸および酒石酸などのフルーツ酸、フレーバー植物抽出物などの他のフレーバー物質の領域の物質、
・例えば、制酸剤、抗感染薬などの薬理学的作用を有する物質、これらは口腔および咽頭領域の局所作用用途にも使用される、
・オピオイド剤を含む鎮痛剤、抗アレルギー剤、抗嘔吐剤、下痢止め剤など。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施例および比較例における錠剤の崩壊時間と硬度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
噴霧マンニトール(Parteck M、メルクKGaA社)と、いわゆる超崩壊剤、例えば、架橋CMCナトリウム(Ac-Di-Sol、FMCバイオポリマー社)との組合せ(混合)により、非常に幅広い硬度範囲で、低い崩壊特性を常に示す直接圧縮性錠剤マトリックスを得ることができる。共噴霧マンニトール/崩壊剤の組合せ(例えば、Ludiflash、BASF社)の場合、または他の商業的に入手可能な直接圧縮性マンニトールのグレード(DCマンニトール)と架橋CMCナトリウムとの混合による場合よりも、かなりの幅広い硬度範囲で、このように非常に短い崩壊時間が維持され得る。また、驚くべきことに、相当な機械的負荷があるにもかかわらず、マンニトールの直接圧縮特性(DC特性)は、混合操作により損なわれない。
【0014】
したがって、さらなる加工者は、得られた材料を用いて、配合成分と共に単純に混合し、次に直接圧縮することによる簡単な方法で、非常に迅速に崩壊する錠剤、例えばODT(経口分散性錠剤)を得ることができる。この非常に迅速な崩壊は、例えば、口腔および咽頭領域で活性化合物が迅速に放出され、かつAPIが急速に吸収されるための必須要件である。
【0015】
Parteck M(好ましくはParteck M200)90〜98重量部と、10〜2重量部の超崩壊剤、好ましくは架橋CMCナトリウム、例えばAc-Di-Solからなる組合せを(例えば、スクリュー式円錐型ミキサー中で)混合すると、これらの要件を非常によく満足する。硬度/崩壊時間の比に関する最良の結果は、95%のParteck M200および5%のAc-Di-Sol型SD-711(FMCバイオポリマー社)からなる組合せで得られる。
【0016】
本発明により使用され得る粉末マンニトールは、特許明細書EP0896528B1において知られた方法により調製され得る。これに対応する噴霧乾燥法により、調製が行われるのが好ましい。しかし、流動層造粒によっても実施することができる。方法は、以下の通りである。
a)任意成分としてさらに多価アルコールを少量、場合により、マンニトールと追加の多価アルコールの総量基準で最大2重量%含むことができるマンニトール水溶液を調製すること、および、
b1)その得られた溶液を温度が120〜300℃の気流中に噴霧して、その間に溶液の水を蒸発させること、または、
b2)その得られた溶液を温度が40〜150℃の気流中で流動化させてその間に溶液の水を蒸発させること。
【0017】
噴霧は、ノズルによって、好ましくは遠心噴霧器によって、遠心的に吹き付けられ、温度が120〜300℃、好ましくは140〜190℃に暖められた乾燥気流中に噴霧することにより実施される。供給される多価アルコール溶液および吹き付けられる暖かい空気の量は、多価アルコールが乾燥し、水分含量が約0.3〜約1重量%となるように互いに調整される。いかなる場合でも、水分含量は、1重量%を下回るべきである。
【0018】
多価アルコール溶液の液滴から水分を除去することにより得られる多価アルコール凝集体は、噴霧乾燥中、約50〜約70℃の温度に暖められ、一方、吹き付けられた空気は、ほぼ同じ温度に冷却される。この方法によって調製されたマンニトールのグレードは容器に集められ、冷却後には、錠剤またはトローチ剤(lozenges)の製造に直接適したものとなる。
【0019】
しかし、本発明により採用され得るマンニトールの調製は、噴霧乾燥材料の後乾燥(場合により粉体のリサイクルを含む)用の流動層を有する設備において、連続法で実施することも可能である。これに相当する設備は、例えば、特許明細書EP1453781B1およびEP1319644B1、またはWO00/76650A1によって当業者に知られている。このような設備を用いて、当業者は、粉末床、ガス気流、温度プログラムおよび任意の操作である追加の原料溶液の追加的散布、および微細な原料の生成物のリサイクル制御を具体的に調節することにより、顆粒を所望の粒子サイズに設定することができる。より簡単な設備は、特許明細書EP0738252B1またはEP0904059B1に記載されている。
【0020】
このようにして得られるマンニトールは、フィラメント状の微細構造を有すると共に、非常に大きな表面積を有する。調製される粉末中に存在する粒子の所望の粒子サイズの範囲は、噴霧乾燥設備または流動層造粒設備の操作パラメータの選択によって具体的に設定することができる。しかし、ふるいによって過大および過小サイズの粒子を分離除去することも可能であり、したがって、マンニトール粉末の平均粒子径を60〜200μmの範囲、好ましくは64〜114μmの範囲に設定することが可能である。温和な条件下で、ふるいにかけるそれ相応の方法は、当業者に知られている。これに対応する製品は、Parteck M、例えばParteck M 200という商品名で商業的に入手可能である。
【0021】
既に先に述べたように、重量基準の一定の混合比で、記載されたグレードのマンニトールおよびいわゆる超崩壊剤、錠剤製造のための賦形剤材料からなる共混合物を調製することができ、比較的低い押圧による圧縮でさえ、比較的高い錠剤硬度を有しつつ、水分の存在下で比較的短時間に崩壊する錠剤を与えることが実験により明らかになった。
【0022】
この点に関しては、種々の商品名で商業的に入手可能であり、また同様に小さな平均粒子径と同時に十分大きな表面積を有する、商業的に入手可能な架橋CMCナトリウムが、適切な超崩壊剤であることが明らかになった。架橋CMCナトリウムは、平均粒子径10〜100μmの範囲、好ましくは20〜50μmの範囲のものを使用することが好ましい。
【0023】
賦形剤材料として架橋CMCナトリウムを添加しない既知の噴霧マンニトールのグレードと比較すると、Parteck M 90〜98部と超崩壊剤、好ましくは架橋CMCナトリウム、例えばAc-Di-Sol 10〜2部の混合物からなる本発明に係る製品は、特に比較的高い押圧領域において、錠剤硬度が改善されること、すなわち、その製品は、特に「キャッピング(capping)」傾向を何ら示さないことが比較実験により明らかになった。さらに、本発明に係る製品の崩壊時間は、賦形剤材料としてCMCナトリウムを添加しない噴霧マンニトールのグレードを用いて得られた錠剤よりも、かなり短い。
【0024】
マンニトール95部および架橋CMCナトリウム5部を含む共噴霧製品は、本発明に係る製品と比較すると、同様の錠剤硬度を有する(および同様に「キャッピング傾向」を示さない)が、崩壊時間はかなり長い。この比較材料は、(乾燥物質として)マンニトールと架橋CMCナトリウムを95:5の比で、噴霧すべきマンニトール溶液中に架橋CMCナトリウムを分散させ、噴霧乾燥法または流動層造粒法によって記載された条件下で、一定撹拌しながらその液を共噴霧するという、異なる方法によって、調製される。
【0025】
商業的に入手可能な製品から得られる錠剤と比較すると、本発明に係る共混合物を含む錠剤の崩壊時間が、より幅広い硬度範囲で、短いことも見出された。したがって、本発明に係る材料は、直接打錠方法で医薬組成物を製剤化することに、また特に、口腔内において活性化合物を迅速に放出する錠剤を製造することに特に適している。
【0026】
さらに、本発明に係る共混合物を使用すると、ODT製剤用途に商業的に得られる共噴霧マンニトール/クロスポビドン/ポリ酢酸ビニル/ポビドン(Ludiflash)を用いて製造される錠剤と比較して、錠剤のより大きな硬度範囲において比較的迅速に崩壊する錠剤を得ることができる。加えて、既に言及したように、本発明に係る混合物に同程度の押圧を適用すると、より高い錠剤硬度を達成することができる。これは、調剤を行う薬剤師にとって、圧縮性に乏しい活性化合物の製剤化に特に都合がよく、また薬剤師が、より容易に打錠を行えるようになる。
【0027】
しかし、本発明に係る共混合物と比較すると、結晶または顆粒が主体であって、一層乏しい結合特性、特に高い摩損性を特徴とする他の直接圧縮性マンニトールのグレードがそうであるように、同様に噴霧マンニトールであるPearlitol 200SDもまた、AcDiSolと共に混合した後は不十分な打錠挙動を示す。
【0028】
実施された本発明に係る打錠実験、および比較例の結果は、グラフ形式で図1に示されており、図では、得られた錠剤硬度に対して、製造された錠剤の崩壊時間がプロットされている。
【0029】
文献や業界において当業者に既知の賦形剤材料を使用する場合と比較すると、本発明に係る共混合物を錠剤製造用のマトリックスとして使用すると、同程度の押圧でより硬い錠剤を都合よく得ることができる。
【0030】
打錠用ダイおよび打錠用機器をできる限り保護するために、最大20kNの好ましい低押圧範囲で打錠を実施すると、本発明に係る材料を使用することにより、非常に優れた結合特性が得られることがさらに見出された。さらに、得られた錠剤は、<1%というかなり小さい摩損度として測定された非常に優れた機械的安定性を示し、これは、成形体(compacts)の取り扱い安全性が確保されることを意味する。
【0031】
本明細書により、当業者は、本発明を広範囲に適用することができる。したがって、さらなる記載がなくとも、当業者は、当然、最も幅広い範囲で前記記載を利用できる。
【0032】
明確さに欠如がある場合、引用された出版物および特許文献が参照されるべきであることは、言うまでもない。したがって、これらの文献は、本明細書の開示内容の一部として見なされる。
【0033】
本発明の理解を深め、かつ本発明を例示するために、本発明の保護範囲内の2つの実施例を以下に示す。これらの実施例はまた、考えられる変形を例示する役目も果たす。しかし、記載された本発明の原理は普遍的に有効であって、実施例は、本出願の保護範囲を、これらの例のみに限定させるものではない。
【0034】
提供された実施例および残りの明細書の両方において、組成物中に存在する成分量は、全体として、組成物基準で常に最大100重量%またはモル%になるのみであり、また、示された百分率範囲から、より高い値が生じ得る場合でも、これを超えることはできないことは、当業者には、さらに言うまでもない。それゆえに、特に示されない限り、%データは、容量データで示される比を除き、重量%またはモル%として見なされる。
【実施例】
【0035】
実施例および明細書中、および特許請求の範囲における温度は、常に℃である。
実施例
材料の物性評価のために、以下の分析法を使用する。
・バルク密度:DIN EN ISO60に準拠。
・タップ密度:DIN EN ISO787−11:1995に準拠。
・安息角:DIN ISO4324に準拠。
・粒子サイズ分布測定:マルバーンインスツルメンツ社製のMastersizer2000バージョン5.10G、シリアルナンバー:34403−97を使用した乾式分散によるレーザー散乱;Scirocco2000(A)分散ユニット、逆圧(counterpressure)1bar;解析モデル:汎用;Fraunhofer;製造元の技術マニュアルおよび仕様に記載された性能。
・打錠試験:
5gのParteck LUB MST(植物性ステアリン酸マグネシウム)EMPROVE exp ヨーロッパ薬局方、英国薬局方、日本薬局方、米国国民医薬品集、米国食品化学物質規格集 Art.No.1.00663(メルクKGaA社、ドイツ)を、打錠特性を試験する材料495gに加え、ステアリン酸マグネシウムは、事前に250μmのふるいで堆積させ、また実験タンブルミキサー(tumble mixer)[Turbula、ウイリーAバコフェン社(スイス)]中の、密封したステンレス鋼製容器〔容量:約2l、高さ:約19.5cm、直径:約12cm、外径〕内で5分間混合する。ホッティンガーボールドウインメステックニック社(HBM)(ドイツ)製のCatman 5.0解析システムを有する偏心打錠器を備えたKorsch EK0-DMS(コルシュ社、ドイツ)で、錠剤500mg(11mmパンチ、円形、平板、斜面あり)を与える圧縮を行う。
【0036】
用いた押圧(5、10、20および30kN、各場合において±10%)に応じて、医薬製剤の特有の数値を評価するため、少なくとも100錠の錠剤を製造する。
・錠剤硬度、直径、および高さの測定:Erweka TBH30MD;エルベカ社(ドイツ);各々の場合において、各押圧当たり20錠の錠剤について測定した平均データ。
・錠剤摩耗度:エルベカ社(ドイツ)摩損度試験器;ヨーロッパ薬局方 第5版「非被膜錠剤の摩損度試験法(Friability of uncoated tablets)」に準拠した機器パラメータおよび測定性能。
・錠剤重量:20錠の錠剤重量の平均値;天秤:Mettler AT201 メトラー社(ドイツ)。
・錠剤崩壊度:バイオメーション社(ドイツ)製の4連式自動(disi 4 automated)錠剤崩壊試験器;媒体:37℃の脱イオン水;ヨーロッパ薬局方 第5版「錠剤およびカプセル剤の崩壊時間試験法(Disintegration time of tablets and capsules)」に準拠した機器パラメータおよび性能。
・BET表面積:文献「窒素吸着によるBET表面積(BET Surface Area by Nitrogen Absorption)」、S.Brunauerら(Journal of American Chemical Society、第60巻、1938年)およびDIN ISO9277に準拠した評価および性能;機器:ASAP2420マイクロメリティクス インスツルメント社(米国);容積計測法;窒素;試料重量は、試料調製時に約3g±5%(目的温度50℃まで3.0℃/分で加熱):10時間/50℃。
【0037】
顆粒および成形体の取り扱い、保管、さらなる加工、および試験は、温度19〜25℃、および相対湿度20〜35%の範囲で実施する。
【0038】
物性評価:顆粒マンニトール95重量部と架橋CMCナトリウム5重量部(95:5)(AcDiSol型SD-711;FMCバイオポリマー社)の共混合物(2例)。
【0039】
【表1】
【0040】
打錠データ:架橋CMCナトリウムを添加しない顆粒マンニトール、および共噴霧マンニトール/架橋CMCナトリウム95:5(重量部)と比較した、顆粒マンニトールと架橋CMCナトリウム95:5(重量部)(2例)の共混合物。
【0041】
【表2】
【0042】
架橋CMCナトリウムを添加しない噴霧マンニトールのグレードと比較すると、本発明に係る製品は、特に比較的高い押圧領域において錠剤硬度が改善されることを示す。言い換えると、特に「キャッピング傾向」を示さない。さらに、本発明に係る製品の崩壊時間は相当早い。
【0043】
本発明に係る製品と比較すると、マンニトール95重量部および架橋CMCナトリウム5重量部を含む共噴霧製品は、同程度の錠剤硬度を与える(および同様に「キャッピング傾向」を示さない)が、崩壊時間は著しく増加する。
【0044】
打錠データ:本発明に係る製品(2例)を、市販の直接圧縮性マンニトールのグレード(Pearlitol 200SD、Pearlitol 300、Mannogem 2080、Mannogem 3215)とCMCナトリウム(AcDiSol型SD-711)を95:5(重量部)で含む共混合物、およびODT製剤用途に定評のあるマンニトール/クロスポビドン/ポリ酢酸ビニル/ポビドン(Ludiflash)からなる直接打錠化可能な共噴霧と比較。
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
ODT製剤用途に定評のある共噴霧マンニトール/クロスポビドン/ポリ酢酸ビニル/ポビドン(Ludiflash)と比較すると、錠剤のより高い硬度範囲で比較的迅速に崩壊する錠剤を、本発明に係る製品で得ることができる。さらに、本発明に係る製品を用いると、同程度の押圧でより高い錠剤硬度を達成することができ、これは、調剤を行う薬剤師にとって、圧縮性の乏しい活性化合物の製剤化を簡単にすることを意味する。
【0048】
本発明に係る製品と比較すると、結晶または顆粒が主体であって、一層乏しい結合特性(特に高い摩損性)を特徴とする他の直接圧縮性マンニトールのグレードがそうであるように、同様に噴霧マンニトールであるPearlitol 200SDもまた、より不十分な打錠挙動を示す。
【0049】
先の実施例および比較例の結果が、グラフ形式で図1に示されており、製造された錠剤の崩壊時間が、得られた錠剤硬度に対してプロットされている。すなわち、図1は、Ludiflash(BASF社)、およびPearlitol 200SD(ロクエッテ社)と架橋CMCナトリウム(Ac-Di-Sol型SD-711、FMCバイオポリマー社)95:5の混合物と比較すると、本発明に係る製品(2実施例)の4種の押圧(5、10、20および30kN)で到達可能な錠剤硬度に、錠剤崩壊時間が依存することを示す。2つの比較例とは対照的に、本発明に係る製品は相当高い錠剤硬度においても依然として、常に早い崩壊時間を示す。
【0050】
まとめると、同程度の押圧で行なわれる先行技術を用いる場合と比較すると、本発明に係る製品を用いることによって、より硬い錠剤を得ることができる。
【0051】
したがって、材料は、打錠用ダイおよび打錠用機器を最大限可能な限り保護するために好ましい押圧範囲において、非常に優れた結合特性を示す。<1%というかなり小さい摩損度として測定された非常に優れた機械的安定性は、押圧されたコアの安全な取り扱い性を保証するものである。
【0052】
同時に、市場において商業的に入手可能な製品から得られる錠剤と比較すると、幅広い硬度範囲で崩壊時間が短い。したがって、本発明に係る材料は、直接打錠方法における医薬組成物の製剤化に、特にまた、口腔内で活性化合物を迅速に放出する錠剤の製造に特に適している。
【0053】
BET表面積:BET法により決定した、比較組成物の表面積を以下に示す。既に先に述べたように、これらの値は、S.Brunauerらの「窒素吸着によるBET表面積」、(Journal of American Chemical Society、60巻、9頁、1938年)またはDIN ISO9277に記載されている方法により求めた。測定は、マイクロメリティクスインスツルメント社(米国)[ASAP2420]の機器を使用して行った。測定は、窒素(試料重量は、試料調製時に約3g±5%(目的温度50℃まで3.0℃/分で加熱することにより乾燥)10時間/50℃)を利用した対応する容積計測法により実施した。
【0054】
【表5】
【0055】
直接圧縮性マンニトールのグレードと崩壊剤の、他の組合せと比較すると、本発明に係る製品は、非常に大きなBET表面積によって区別されることを、BETデータが示している。この表面積の増加は、本発明に係るこれらの材料の非常に優れた圧縮性、および得られた崩壊剤含有錠剤の迅速な崩壊特性に結びついている。
図1