(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数配置された第2の領域における各々の前記第2の領域は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック及び特色のうち少なくとも一つの有色の色材から成ることを特徴とする請求項1又は2記載の透過潜像画像を有する印刷媒体。
前記第2の領域は、透過率3%以上100%以下で形成された前記潜像部と前記第1のカムフラージュ部が同じ色又は異なる2色から成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の透過潜像画像を有する印刷媒体。
前記i)の場合、前記第1の網点部を挟んで対向するように配置された同じ色を有する複数の前記第2の領域は、前記第1の網点部を挟んで対向するように配置された前記第2の領域同士を結ぶ仮想線の延長線上に規則的に配置されていることを特徴とする請求項4記載の透過潜像画像を有する印刷媒体。
前記ii)の場合、前記第1の領域に隣り合うように配置された同じ色を有する複数の前記第2の領域は、前記第1の領域に隣り合うように配置された前記第2の領域同士を結ぶ仮想線の延長線上に規則的に配置されていることを特徴とする請求項4記載の透過潜像画像を有する印刷媒体。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他いろいろな実施の形態が含まれる。
【0034】
図1は、本発明における透過潜像画像を有する印刷媒体(1)(以下「印刷媒体」という。)の一例を示す図である。この印刷媒体(1)は、
図1(a)に示すように、少なくとも一部に本発明における透過潜像画像が形成されている透過潜像領域(2)を有している。
【0035】
この印刷媒体(1)は、可視光源下における反射光(拡散光)下では、
図2(a)に示すような可視画像(3)(太陽の図柄)を視認することができ、可視光源下における透過光下では、
図2(b)に示すような第一の潜像画像(4)(「123」の文字)を視認することができるという効果を奏するものである。この二つの画像の視認原理については後述する。
【0036】
透過潜像領域(2)は、印刷媒体(1)の断面図である
図1(b)に示すように、三つの層から構成されている。透過潜像領域(2)については、
図1に示すように、印刷媒体(1)の一部に形成してもよいが、印刷媒体(1)の全面を透過潜像領域(2)として形成してもよい。また、透過潜像領域(2)を構成している三つの層については、基材(6)、隠蔽層(7)及び画像形成層(8)から形成されている。この三つの層について次に説明する。
【0037】
(第1の実施形態)
まず基材(6)について説明する。基材(6)は、少なくとも一部が無色及び/又は有色の光透過性材料(5)を用いて形成されている。また、光透過性材料の透過率は、3%以上100%以下の範囲であることが好ましい。無色(透明)の透過性基材としては、PETや塩ビ等の材質で形成された透明フィルムがある。また、有色の透過性基材としては、前述の無色(透明)のPETフィルム等に染料や顔料等の着色成分を含有させたものがあり、さらに、透過性のある有色インキや有色フィルムを重ねて形成したものでもよい。
【0038】
また、基材(6)に透過性のある金属光沢調フィルム(東レ株式会社製、PICASUS等)を用いてもよい。金属光沢調フィルムとは、異種ポリマーを多層に積層し形成したポリエステルフィルムであり、金属を使用せずに金属調の光沢を得ることが可能な光透過性材料のことである。
【0039】
本発明における光透過性材料(5)については、
図3(a)に示すように印刷媒体(1)の全面、すなわち、基材自体を光透過性材料(5)で形成してもよいが、本発明の基材(6)はこれに限定されるものではなく、基材(6)の一部が光透過性材料で形成されていてもよい。
【0040】
例えば、
図3(b)に示すように、透過潜像領域(2)に相当する部分にのみ光透過性材料(5)が形成されていてもよい。
【0041】
次に隠蔽層(7)について説明する。隠蔽層(7)は、下層に当たる基材(6)の透過性を抑える役割を担っている。また、隠蔽層(7)は、後述する上層の画像形成層(8)により形成される可視画像に影響を与えない色彩を有する必要がある。したがって、隠蔽層(7)は、白インキ、マットインキ(マットタイプのOPニス)等を用いることが可能だが、下層の透過性を抑えられる隠蔽材料で、かつ、上層の可視画像(3)に影響を与えない材料であれば特に限定されない。本実施の形態では、白インキを用いて形成することで説明する。なお、白インキには、オフセット印刷用UVインキとしてDIC株式会社製 ダイキュアRTX 白、インクジェット印刷用UVインクとして東洋インキ製造株式会社製 LIOJET FV03 ホワイト等がある。なお、本発明において、インクジェット印刷方式のインキは、「インク」と定義し、その他の印刷方式のインキは「インキ」と定義する。
【0042】
この隠蔽層(7)は、
図4に示すように、一部に隠蔽材料が施されていないくり抜き部(9)を有している。
図4(a)に示した隠蔽層(7)の構成については、後述する画像形成層(8)の網点構成に対応した構成となっている。この網点構成は、本発明に用いる微細な網点構成となるものであるが、詳細は画像形成層(8)の説明の際に行うこととする。
【0043】
図4(a)は、隠蔽層(7)の一部を拡大した模式図であるが、隠蔽層(7)は、後述する画像形成層(8)に対応するように、二つの領域から形成されている。この二つの領域は、前述のとおり、下層である基材(6)の透過性を隠蔽する役割を持っていることから、第1の隠蔽領域(10)と、第2の隠蔽領域(11)で構成されている。また、第2の隠蔽領域(11)は、隠蔽材料が施されている第2aの隠蔽部(12)と隠蔽材料が施されていないくり抜き部(9)によって構成されている。
【0044】
ここで、隠蔽面積率とは、隠蔽層(7)における第1の隠蔽領域(10)又は第2aの隠蔽部(12)の単位面積当りの隠蔽材料を形成する面積の割合のことである。例えば、第2aの隠蔽部(12)において、隠蔽面積率80%とは、第2aの隠蔽部(12)の面積の内、隠蔽材料を形成した面積の割合が80%のことである。この場合、第2aの隠蔽部(12)の面積の20%は、隠蔽材料が形成されていないため、下層である基材(6)が露出した状態となる。
【0045】
よって、第2aの隠蔽部(12)を第1の隠蔽領域(10)よりも隠蔽面積率を低くするというのは、隠蔽面積率を下げることにより下層である基材(6)の露出面積率を上げ、第1の隠蔽領域(10)よりも第2aの隠蔽部(12)の透過性の低下を抑えることになる。つまり、印刷媒体(1)を反射光(拡散光)下から透過光下へ変化させた際に、第1の隠蔽領域(10)に対応する画像形成層(8)の第1の領域(13)の透過光よりも、第2aの隠蔽部(12)に対応する画像形成層(8)の第1のカムフラージュ部(16)の透過光の単位面積当りの光の強さが高くなり、結果的に透過光下における第一の潜像画像(4)の視認性が向上することがあるからである。
【0046】
しかし、隠蔽面積率を低くしたことにより、くり抜き部(9)、すなわち基材(6)の透過光と第2の隠蔽領域(11)の透過光の強さが近似し、透過光下における第一の潜像画像(4)の視認性が低下するおそれもある。よって、第2の隠蔽領域(11)の隠蔽面積率は、適宜設定する必要がある。
【0047】
また、前述したように第2の隠蔽領域(11)は、くり抜き部(9)を有しており、この
図4(a)のX1−X2における(拡大)断面図である
図4(b)に示すように、くり抜き部(9)には、白インキが施されていない。
【0048】
このくり抜き部(9)の大きさは、後述する画像形成層(8)における第2の領域(14)を用いて形成する第一の潜像画像(4)の階調に合わせて適宜設定するものである。これは、通常の網点を用いて階調画像を形成するときに、網点の大小により階調を表現するものと同じ考え方である。
【0049】
この第2の隠蔽領域(11)にくり抜き部(9)が形成されていることで、印刷媒体(1)を上方から観察すると、透過性の基材(6)からの透過光がくり抜き部(9)を経て最上層の画像形成層(8)の第2の領域(14)で形成している第一の潜像画像(4)を視認することができることとなる。
【0050】
次に、画像形成層(8)について説明する。画像形成層(8)は、可視光源下の拡散光領域において視認可能な連続階調画像を含む可視画像(3)を網点により形成する。そこで、画像形成層(8)の網点構成について
図5を用いて説明する。
【0051】
画像形成層(8)は、
図5(a)に示す可視画像(3)を形成しており、網点構成は、
図5(b)に一部拡大図として示した構成である。この網点構成は、第1の領域(13)及び第2の領域(14)により形成され、第1の領域(13)と第2の領域(14)がマトリックス状に複数配置されている。この二つの領域をマトリックス状に配置することで、可視画像(3)及び第一の潜像画像(4)は、モアレを発生することがなくなる。
【0052】
図5(b)に示すように、第1の領域(13)に囲まれるように第2の領域(14)が配置され、第2の領域(14)は、第1の領域(13)よりも小さい面積で第1の領域(13)の外周に沿って、等間隔に配置されている。第2の領域(14)を第1の領域(13)よりも大きい面積で形成した場合には、第2の領域(14)がノイズとなって、可視光源下における可視画像(3)の視認性を低下させてしまうこととなる。この網点構成の詳細については、本出願人が既に出願している特許第3544536号公報に開示されている。
【0053】
第1の領域(13)内には、第1の網点部(13a)が配置され、可視画像(3)は、第1の領域(13)内における第1の網点部(13a)と第1の網点部(13a)以外の領域との面積比率に応じて、複数配置された第1の領域(13)により階調を付与することが可能となる。
【0054】
また、第2の領域(14)は、透過光下において印刷媒体(1)を観察すると視認可能な第一の潜像画像(4)を形成するための領域であり、第一の潜像画像(4)を視認可能とするために第2の領域(14)の透過率は、3%以上100%以下の範囲とする必要がある。この第2の領域(14)は、本発明の特徴点である第一の潜像画像(4)をフルカラー又は複数色で表現するための重要な要素である。そのために、第一の潜像画像(4)となる原画像をイエロー(以下「Y」という。)、シアン(以下「C」という。)、マゼンタ(以下「M」という。)、ブラック(以下「Bk」という。)及び特色の色成分のうち、少なくとも二つの成分に分解する。色成分の色数は、2色以上4色以下にすることが望ましい。色成分の色数が3色の場合において、一つの第1の領域(13)を囲む四つの第2の領域(14)に対して、少なくとも二つの色成分の第2の領域(14)が配置される。
【0055】
例えば、
図5(b)に示すように、第1の領域(13)の一つを囲むように第2の領域(14)が四つ配置されているが、その四つの第2の領域(14)においては、Y成分から成る有色の色材により形成された第2yの領域(14y)が一つ、M成分から成る有色の色材により形成された第2mの領域(14m)が一つ、更にはC成分から成る有色の色材により形成された第2cの領域(14c)が二つとなっている。
【0056】
図6は、第2の領域(14)に配置された色成分の配置例を説明するための図である。
図6(a)は、一つの第1の領域(13)に対して、一つの色成分(例えば、Y)から成る有色の色材により形成された第2の領域(14y)が第1の網点部(13a)を挟んで対向するように配置され、残りの色成分(例えば、M及びC)から成る有色の色材により、二つの第2の領域(14m及び14c)が同じ第1の網点部(13a)を挟んで対向するように配置され、全ての色成分から成る有色の色材により形成された第2の領域(14)が一つの第1の領域(13)を囲むように配置されている。この場合、
図6(a)に示したように、同じ色成分から成る有色の色材は、複数配置されている中で、仮想線(T1−T2)上に配置されているように、規則性を有している。
【0057】
一つの第1の領域(13)を囲む四つの第2の領域(14)において、一つの色成分から成る有色の色材のみを二つ配置する場合に、第1の網点部(13a)を挟んで対向するように二つ配置することにより、前述したような仮想線(T1−T2)上に同じ色成分から成る第2の領域(14)が配置されることとなる。
【0058】
また、
図6(b)に示す配置は、第1の領域(13)に隣接して配置された第2の領域(14)において、同じ色成分から成る有色の色材により形成された二つの第2の領域(14)を隣り合うように配置するものである。例えば、一つの第1の領域(13)に対して、Y成分から成る有色の色材により形成された第2yの領域(14y)と、M成分から成る有色の色材により形成された第2mの領域(14m)を二つ配置する場合、同じ色成分の二つの第2yの領域(14y)は、
図6(a)のように、第1の網点部(13a)を挟んで対向するように配置されるのではなく、隣り合うように配置され、同じように、同じ色成分の二つの第2mの領域(14m)も隣り合うように配置される。
【0059】
また、二つの色成分(例えば、Y及びM)により囲まれている第1の領域(14)と隣接する別の第1の領域(13)においては、その二つの色成分(例えば、Y及びM)とは異なる色成分(例えば、C)から成る第2の領域(13c)を隣り合うように配置する。この規則に基づいて第1の領域(13)及び第2の領域(14)を複数配置すると、
図6(b)のように、仮想線(T1−T2)上に同じ色成分から成る第2の領域(14)が配置されることとなる。
【0060】
なお、前述した色成分の配置については一例であって、どこにYMCを配置するかについては、前述した配置の規則に基づいていれば、出現させたい第一の潜像画像(4)の色彩に合わせて適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。各々の第2の領域については、一つの色成分から成る有色の色材のみで形成されていてもよいが、二つ以上の色成分から成る有色の色材が混合された色材を用いて形成されていてもよく、さらに、一つの色成分から成る有色の色材を二つ以上重ね合わせて形成してもよい。いずれにしても、形成された第2の領域の色が同じ又は異なることで本発明のフルカラー潜像を形成するものであり、形成前の段階の色材の色にとらわれるものではない。以下、
図6(a)で説明した、同じ色成分から成る有色の色材を用いて同じ色に形成された二つの第2の領域(14)が第1の網点部(13a)を挟んで対向するように配置した構成で説明する。
【0061】
次に、隠蔽層(7)に形成されているくり抜き領域(9)により、画像形成層(8)の第2の領域(14)に実質的に形成される潜像部(15)及びその周囲の第1のカムフラージュ部(16)について説明する。
【0062】
図7(a)は、
図5(b)で示した複数配置された第1の領域(13)及び第2の領域(14)の中の一組を取り出した際における基材(6)、隠蔽層(7)及び画像形成層(8)の積層状態を示す斜視図であり、
図7(b)は、
図7(a)のY1−Y2の断面図である。
【0063】
図7(a)及び
図7(b)に示すように、隠蔽層(7)の第1の隠蔽領域(10)と画像形成層(8)の第1の領域(13)が同じ位置に形成され、同様に、第2の隠蔽領域(11)と第2の領域(14y)は、同じ位置に積層されている。この第2の領域(14y)は、Y成分の1色により形成されているが、
図7(b)に示すように、くり抜き部(9)上に積層されている第2の領域(14y)の一部は、隠蔽材料がないために、実質的には基材(6)の上に積層されている状態となっている。基材(6)は、光透過性材料(5)により形成されているため、観察条件を反射光下から透過光下へ変化させると、基材(6)自体は色変化を生じることとなる。そこで、透過性を抑える役目の隠蔽材料を施していないくり抜き部(9)の上の第2の領域(14)に該当する箇所は、観察条件を反射光下から透過光下へ変化させると、基材(6)の透過性の影響を受ける領域と、隠蔽材料が施されていることにより、基材(6)の透過性の影響を受けない領域に分かれる。この透過性の影響を受ける箇所を本発明では潜像部(15)とし、その潜像部(15)の周囲の透過性の影響を受けない箇所を第1のカムフラージュ部(16)と定義する。
【0064】
そこで、画像形成層(8)の構成を既に説明した
図5及び
図6の第2の領域(14)では、点線により潜像部(15)を示したところである。
【0065】
第2の領域(14)は、光透過性材料(5)(基材(6)自体が光透過性材料の場合には、透過性基材(6))からの透過光を直接受ける潜像部(15)と、隠蔽材料により透過光が抑えられている第1のカムフラージュ部(16)から構成されていているため、この構成の違いにより、印刷媒体(1)を反射光(拡散光)下から透過光下へと変化させると、基材(6)は、透過光を通過させる特性を有していることから、隠蔽層(7)のくり抜き部(9)の上層にある潜像部(15)が基材(6)の透過光の影響を実質的に直接受けるため、他の第2aの隠蔽部(12)の上層にある第1のカムフラージュ部(16)とは、色彩が異なって視認され、第一の潜像画像(4)が形成される。さらに、くり抜き部(9)と第2aの隠蔽部(12)との面積比率に応じて、潜像部(15)と第1のカムフラージュ部(16)も面積比率に差が生じ、複数配置された第2の領域(14)の潜像部(15)により階調を付与することが可能となる。
【0066】
第2の領域(14)については、前述のとおり、隠蔽層(7)におけるくり抜き部(9)を介して、基材(6)の光透過性材料の透過光により潜像部(15)を形成可能とするために、第2の領域(14)は、透過率3%以上100%以下の範囲で形成する。この範囲よりも低いと、最下層の基材(6)の透過光を視認することができない。
【0067】
前述のとおり潜像部(15)は、基材(6)上の最上層である画像形成層(8)の第2の領域(14)が形成されていることとなるが、基材(6)は、定位置の可視光源に対して観察条件を反射光下から透過光下へ変化させると、透過光の影響を受けて色が変化する材料によって形成されているため、本発明における第一の潜像画像(4)を出現させるには、透過光下においてのみ基材(6)の透過性を利用した潜像部(15)を視認させることが必要となる。したがって、反射光(拡散光)下においては、第2の領域(14)内の第1のカムフラージュ部(16)と潜像部(15)を等色とする必要がある。
【0068】
反射光(拡散光)下において、第2の領域(14)内の潜像部(15)と第1のカムフラージュ部(16)が等色となることで、第一の潜像画像(4)は視認されず、印刷媒体(1)を透かして観察することで、潜像部(15)における基材(6)が透過性を発揮することにより、潜像部(15)は、第1のカムフラージュ部(16)との色差ΔEが所定の値変化し、透過性を発揮することにより、潜像部(15)により形成された第一の潜像画像(4)を視認することができる。
【0069】
本発明における等(同)色とは、可視光源下の拡散光領域で観察した際に、色差ΔEが6未満のことを示す。一般的に、色差ΔEが6前後においては、異なった色として視認される可能性がある。ただし、前述のとおり、本発明においては、第1の領域(13)及び第2の領域(14)は、肉眼ではそれぞれの領域を区別して視認することができない微細な大きさにより構成している。そのことから、色差ΔEが6未満であれば、可視光源下の拡散光領域において、肉眼では第2の領域(14)内における潜像部(15)と第1のカムフラージュ部(16)は等色として視認される。
【0070】
なお、メタメリズムの関係により、可視光源下の拡散光領域において観察した際に、肉眼で等しい色に視認された色が、特定の光源下の拡散光領域において観察した際に、異なる色で視認された場合においても、本発明においては、第2の領域(14)における潜像部(15)と第1のカムフラージュ部(16)は、等色に形成されていることとする。
【0071】
図5(b)に示した画像形成層(8)を構成する網点構成における各領域の面積(縦×横)は、例えば、第1の領域(13)をm×mで形成し、第2の領域(14)をn×nで形成すると、m>n>0の範囲内で適宜設定することが可能である。
【0072】
画像形成層(8)を構成する第1の領域(13)及び第2の領域(14)を印刷するインキは、一般の商業印刷に用いるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(Bk)のプロセス基本インキを用いることができ、さらには、プロセス基本インキを除く特殊な色を有する特色インキを用いることができる。インキの種別としては、オフセットインキ、グラビアインキ、スクリーンインキ及びインクジェットプリンタ用インク等がある。
【0073】
(各画像の観察原理)
各層の構成及び積層状態における位置関係等について説明したところであるが、ここで、前述した各層の構成及び位置関係における本発明の可視画像(3)及び第一の潜像画像(4)の視認原理について説明する。
【0074】
まず、可視画像(3)及び第一の潜像画像(4)を視認するために必要となる観察位置について説明する。前述のとおり、画像形成層(8)における潜像部(15)と第1のカムフラージュ部(16)は、可視光源下の拡散光領域において等色として視認されることで、肉眼では、潜像部(15)(実際には、潜像部(15)から視認することができる基材(6))を視認することができず、反対に、透過光下においては、肉眼で潜像部(15)が視認可能となるように構成する。一般的に物体の色は、光源、観察環境(温度)及び物体の分光反射率等により決定される。これらの観察条件により視認する色の感じ方はそれぞれ異なるが、本発明においての観察条件は、一定の条件であるものとする(例えば、観察条件:光源がD65で観察環境が20℃)。
【0075】
図8は、本発明に関わる印刷媒体(1)を、定位置の可視光源(R)に対して観察位置を反射光(拡散光)及び透過光で観察した際の可視光源(R)、視点(E1、E2)及び印刷媒体(1)の三つの位置関係を示した図である。可視光源(R)と視点(E1)と印刷媒体(1)が
図8(a)に示す位置関係にあるとき、反射光(拡散光)下で観察したことになる。また、可視光源(R)と視点(E2)と印刷媒体(1)が
図8(b)に示す位置関係にあるときは、透過光下で観察したことになる。
【0076】
次に、観察位置の変化により、潜像部(15)と第1のカムフラージュ部(16)との色差ΔEが所定の値変化する原理について説明する。前述のとおり、本発明における反射光(拡散光)とは、定位置の可視光源(R)からの入射光角度が45°の場合において、受光角度が−10〜10°となる位置であり、透過光とは、定位置の可視光源(R)と視点(E2)を結ぶ直線上に印刷媒体(1)を置き、印刷媒体(1)を可視光源(R)に対して透かして観察する位置のことである。印刷媒体(1)において、潜像部(15)及び第1のカムフラージュ部(16)は、
図8(a)に示す反射光(拡散光)を意味する位置関係では等色であり、肉眼では、それぞれの領域を区別して視認することができず、可視画像(3)のみが視認される。
【0077】
反対に、
図8(b)に示す透過光下において、少なくとも透過潜像領域(2)の潜像部(15)は、光透過性材料(5)を用いた基材(6)で形成している。それにより、観察位置を定位置の可視光源(R)に対して反射光(拡散光)下から透過光下へ変化させることで、明度及び/又は色が変化し、画像形成層(8)における潜像部(15)と第1のカムフラージュ部(16)の色差ΔEが所定の値変化する。よって、潜像部(15)が視認可能となり、複数配置された潜像部(15)によって形成された第一の潜像画像(4)が視認可能となる。
【0078】
図9は、本発明に関わる反射光(拡散光)下又は透過光下における、それぞれの潜像部(15)及び第1のカムフラージュ部(16)の色差ΔEを示すグラフであり、
図9の左側は、反射光(拡散光)下における潜像部(15)及び第1のカムフラージュ部(16)の色差ΔEを示し、
図9の右側は、透過光下における潜像部(15)及び第1のカムフラージュ部(16)の色差ΔEを示す。なお、
図9における網点構成は、
図5(b)と同じ構成とする。
【0079】
測定サンプルは、まず、測定サンプルA(4×4cm)として第1の領域(13)を解像度600dpi(以下、同じ解像度のものとする)で30×30ピクセルに相当する面積及び第2の領域(14)を12×12ピクセルに相当する面積とし、YMCの色成分により、第2の領域(14y、14m及び14c)として、基材(6)である0.2mmの厚さを有するPETフィルム上に、隠蔽層(7)として第2の隠蔽領域(11)におけるくり抜き部(9)の面積率を100%(第2の隠蔽領域(11)が全てくり抜き部(9)になっている状態)とし、白インク(東洋インキ製造株式会社製、LIOJET FV03 ホワイト)を用いて、インクジェット印刷により第1の隠蔽領域(10)のみを隠蔽面積率100%(ベタ印刷)とし、画像形成層(8)として第1の領域(13)を印刷せずに第2の領域(14)の第1のカムフラージュ部(16)の面積率を0%とし、YMCの色成分による三つの第2の領域(14y、14m及び14c)をプロセスインク(東洋インキ製造株式会社製、LIOJET FV03 シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック)を用いてインクジェット印刷により作製した。
【0080】
また、測定サンプルB(4×4cm)は、第1の領域(13)を30×30ピクセルに相当する面積及び第2の領域(14)を12×12ピクセルに相当する面積として、基材(6)として0.2mmの厚さを有するPETフィルム上に、隠蔽層(7)として第2の隠蔽領域(11)におけるくり抜き部(9)の面積率を0%(第2の隠蔽領域(11)にくり抜き部(9)がない状態)とし、白インク(東洋インキ製造株式会社製、LIOJET FV03 ホワイト)を用いて、インクジェット印刷により第1の隠蔽領域(10)及び第2の隠蔽領域(11)を隠蔽面積率100%(ベタ印刷)し、画像形成層(8)として第1の領域(13)を印刷せずに第2の領域(14)の第1のカムフラージュ部(16)の面積率を100%とし、YMCの色成分による三つの第2の領域(14y、14m、14c)をプロセスインク(東洋インキ製造株式会社製、LIOJET FV03 シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック)を用いて、インクジェット印刷により作製した。
【0081】
図9に示した反射光(拡散光)下における潜像部(15)及び第1のカムフラージュ部(16)の色差ΔEを示すグラフと、
図9に示した透過光下における潜像部(15)及び第1のカムフラージュ部(16)の色差ΔEは、自記分光光度計(HITACHI製、U−4000形)を用いて、測定サンプルA及び測定サンプルBの波長400〜700nmの分光反射率及び分光透過率を測定し、得られた値から色差ΔEを算出した。なお、測定サンプルA及び測定サンプルBは、画像形成層(8)として第1の領域(13)を印刷していないため、測定サンプルA(第1のカムフラージュ部(16)の面積率を0%、すなわち、潜像部(15)の面積率を100%)及び測定サンプルB(第1のカムフラージュ部(16)の面積率を100%)との色差ΔEを、潜像部(15)及び第1のカムフラージュ部(16)との色差ΔEとして表記する。
【0082】
図9に示したように、反射光(拡散光)下においては、潜像部(15)及び第1のカムフラージュ部(16)との色差ΔEは、1.47と相対的に小さい値を示している。前述したとおり、色差ΔEが6未満であれば等色であることから、反射光(拡散光)下においては、潜像部(15)及び第1のカムフラージュ部(16)は等色といえる。よって、潜像部(15)及び第1のカムフラージュ部(16)は、肉眼で識別することが困難であり、その結果、透過潜像領域(2)内に形成された第一の潜像画像(4)は視認することができない。
【0083】
反対に、
図9に示した透過光下においては、潜像部(15)及び第1のカムフラージュ部(16)との色差ΔEが、6.76を示している。反射光(拡散光)下における、潜像部(15)と第1のカムフラージュ部(16)との色差ΔEが1.47に対して、透過光下における、潜像部(15)と第1のカムフラージュ部(16)との色差ΔEは6.76である。つまり、観察位置を反射光(拡散光)下から透過光下へ変化させることで、色差ΔEは、1.47から6.76へと、5.29変化する。よって、色差ΔEが5以上変化することで、潜像部(15)及び第1のカムフラージュ部(16)は、肉眼で識別することが可能となり、その結果、透過潜像領域(2)内に形成された第一の潜像画像(4)を視認することが可能となる。
【0084】
なお、可視光源(R)に対し、反射光(拡散光)と透過光は、観察位置を変えることにより切り替えられる。つまり、基材(6)を可視光源(R)に対して透かして見ることで、潜像部(15)及び第1のカムフラージュ部(16)は、肉眼で識別することが可能となる。その結果、透過潜像領域(2)内に形成された第一の潜像画像(4)を視認することが可能となる。
【0085】
(本発明における可視画像の視認原理)
さらに、詳細に可視画像(3)を視認することができる原理を説明する。
図10は、本発明に関わる印刷媒体(1)に形成された透過潜像領域(2)を、定位置の可視光源(R)下の拡散光領域において、肉眼で視認した場合の平面図及び一部拡大の模式図である。透過潜像領域(2)は、可視光源(R)下の拡散光領域において、
図10(b)に示した一部拡大図のように、第1の網点部(13a)が視認可能となり、逆に、画像形成層(8)における潜像部(15)及び第1のカムフラージュ部(16)は、等色として視認されるため、それぞれの領域を区別することはできない。したがって、潜像部(15)によって形成される第一の潜像画像(4)を視認することはできず、
図10(a)に示した可視画像(3)のみが視認される。
【0086】
図10(c)は、可視画像(3)を視認することができるときの印刷媒体(1)、光源(R)及び視点との関係を示す模式図である。印刷媒体(1)を可視光源(R)下の拡散光領域において、肉眼で視認した際には、まず、第1の領域(13)においては、可視光源(R)からの入射光(R1)によって、正反射光(R2)と拡散光(R3)が生じ、拡散光領域では、拡散光(R3)が得られる。
【0087】
第2の領域(14)においては、可視光源(R)からの入射光(R1)によって、正反射光(R4)と拡散光(R5)が生じ、拡散光領域では、拡散光(R5)が得られる。また、第2の領域(14)は、潜像部(15)及び第1のカムフラージュ部(16)で構成されていることから、双方に対してそれぞれ正反射光(図示せず)と拡散光(図示せず)が得られる。潜像部(15)及び第1のカムフラージュ部(16)は、可視光源下の拡散光領域で観察したときに、等色となるように形成されていることから、それぞれの領域における拡散光の差異は、肉眼では視認することができない。
【0088】
本発明における画像形成層(8)を構成する網点構成においては、第1の領域(13)は、第2の領域(14)より面積を大きく構成する。したがって、可視光源下における拡散光領域においては、第1の領域(13)が第2の領域(14)よりも支配的に観察される。また、前述のとおり第2の領域(14)における潜像部(15)及び第1のカムフラージュ部(16)は、可視光源下の拡散光領域で観察したときに、等色となるように形成されていることから、潜像部(15)によって形成されている第一の潜像画像(4)を視認することはできず、可視画像(3)のみが視認可能となる。
【0089】
(本発明における第一の潜像画像の視認原理)
次に、第一の潜像画像(4)が視認される原理の詳細を説明する。
図11は、本発明に関わる印刷媒体(1)に形成された透過潜像領域(2)を、定位置の透過光下において、肉眼で視認した場合の平面図及び模式図である。透過潜像領域(2)は、透過光下において、
図11(b)に示した一部拡大図のように、潜像部(15)(隠蔽層(7)のくり抜き部(9)に対応した位置)は、肉眼で視認可能となる。つまり、第一の潜像画像(4)を視認することが可能となる。
【0090】
これは、反射光(拡散光)下において等色となって区別することができなかった第2の領域(14)における潜像部(15)と第1のカムフラージュ部(16)が、透過光下においては、潜像部(15)の下部に当たる基材(6)からの透過光によって、その上層のくり抜き部(9)を介して画像形成層(8)の潜像部(15)と第1のカムフラージュ部(16)との色差ΔEが所定の値変化し、同じ第2の領域(14)内において、潜像部(15)と第1のカムフラージュ部(16)とを肉眼で区別することが可能となったからである。
【0091】
図11(c)を用いて、可視光源(R)下の透過光下における第一の潜像画像(4)の視認原理について説明する。印刷媒体(1)を可視光源(R)の透過光下において肉眼で視認した際には、まず、第1の領域(13)に対しては、可視光源(R)からの入射光(R1)によって、透過光(R4)が得られる。
【0092】
第一の潜像画像(4)を形成する潜像部(15)では、透過光(R5)が得られる。また、第1のカムフラージュ部(16)では、可視光源(R)からの入射光(R1)によって透過光(R4)が得られる。
【0093】
よって、潜像部(15)は、光透過性材料(5)で形成されている基材(6)からの透過光を受け、第1の領域(13)及び第1のカムフラージュ部(16)のそれぞれの透過光(R4)よりも高くなり、その明度の差異によって第1のカムフラージュ部(16)に対して潜像部(15)に高い色差ΔEが生じて透過潜像画像として第一の潜像画像(4)を視認することができる。よって、可視光源下の透過光下においては、印刷媒体(1)を観察した場合に、新たな第一の潜像画像(4)を視認することができる。
【0094】
(第1の実施形態の変形例)
次に第1の実施形態の変形例について説明するが、基材(6)及び隠蔽層(7)については、第1の実施形態と同様であるため省略することとし、併せて画像形成層(8)の一部についても、第1の実施形態と重複するところは省略することとする。
【0095】
第1の実施形態の変形例では、第1の実施形態と異なる構成として、
図12(a)及び(b)に示すように、第2の領域(14)が潜像部(15)と第1のカムフラージュ部(16)とで異なる2色の有色の色材により形成されているところである。ただし、潜像部(15)については、前述のとおり、くり抜き部(9)を介して基材(6)の透過性を視認することができない構成としなければならないため、透過率3%以上100%以下の範囲で形成する。この範囲よりも低いと、最下層の基材(6)の透過性を視認することができない。
【0096】
また、拡散光領域においては、第一の潜像画像(4)を視認不可能とするため、第1のカムフラージュ部(16)と潜像部(15)は、等色となるように形成する。
【0097】
第1の実施形態の変形例における層構成を図示したものが
図13である。
図13(a)及び(b)に示すように、隠蔽層(7)のくり抜き部(9)とその上に形成する画像形成層(8)の潜像部(15)は、同じ位置に配置され、同様に、第2aの隠蔽領域(12)と第1のカムフラージュ部(16)は、同じ位置に配置される。
【0098】
図13に示した層構成とすることで、第1の実施形態と同様に、可視光源下における拡散光領域では、異なる2色の有色の色材で形成された潜像部(15)と第1のカムフラージュ部(16)は、等色として視認されるため、潜像部(15)と第1のカムフラージュ部(16)は区別されず、画像形成層(8)の第1の領域(13)によって形成された可視画像(3)のみが視認され、印刷媒体(1)を透かして透過光下で観察したときに、透過率の高い潜像部(15)を介し、さらに、くり抜き部(9)を介して基材(6)が視認されることで、潜像部(15)と第1のカムフラージュ部(16)に高い色差が生じることで区別され、更には潜像部(15)が複数配置されたことにより形成された第一の潜像画像(4)を視認することが可能となる。
【0099】
以上説明したとおり、第1の実施形態の変形例では、画像形成層(8)における第2の領域(14)において、潜像部(15)と第1のカムフラージュ部(16)を異なる2色の有色の色材で形成することとするが、潜像部(15)の透過率を3%以上100%以下の範囲で形成し、かつ、拡散光領域において、第一の潜像画像(4)を視認不可能とするため、第1のカムフラージュ部(16)と潜像部(15)は、等色となるように形成することが重要となる。
【0100】
(第2の実施形態)
次に、本発明の別の形態について説明するが、基材(6)及び画像形成層(8)については、第1の実施形態と同様であるため省略することとし、併せて、隠蔽層(7)の一部についても第1の実施の形態と重複するところは省略することとする。
【0101】
第2の実施形態では、第1の実施形態と異なるところとして、隠蔽層(7)においてくり抜き部(9)を形成せず、第2aの隠蔽部(12)よりも隠蔽面積率の低い面積率の第2bの隠蔽部(17)を形成することで、隠蔽面積率及び透過率の差異により潜像部(15)を形成するところである。
【0102】
まず、隠蔽層(7)における層構成について、
図14を用いて説明する。隠蔽層(7)は、第1の実施形態と同様に、基材(6)の透過性を隠蔽する役割を担っているため、第1の実施の形態と同様に、白インキを用いて形成する。ただし、第1の実施形態におけるくり抜き部(9)に該当する箇所にも、
図14(c)に示すように白インキを印刷することとするが、第1の隠蔽領域(10)及び第2aの隠蔽部(12)の隠蔽面積率よりも低い隠蔽面積率によって形成することとし、この領域を、第2bの隠蔽部(17)と定義する。
【0103】
したがって、隠蔽層(7)を構成している第1の隠蔽領域(10)、第2aの隠蔽部(12)及び第2bの隠蔽部(17)の隠蔽面積率の関係は、第1の隠蔽領域(10)≧第2aの隠蔽部(12)>第2bの隠蔽部(17)となる。ただし、第2bの隠蔽部(17)は、透過光下において下層の基材(6)の透過性を伴わせる必要があるため、隠蔽面積率については、0%以上100%未満の範囲とする必要がある。
【0104】
また、第1の隠蔽領域(10)及び第2aの隠蔽部(12)は、反射光(拡散光)下において下層の基材(6)の透過性を抑える必要があるため、隠蔽面積率については、0%よりも大きく、100%以下の範囲とする必要がある。なお、前述のとおり、第2bの隠蔽部(17)は、白インキを印刷することで、第1の実施形態におけるくり抜き部(9)と区分けして定義しているが、第2bの隠蔽部(17)の隠蔽面積率を0%としてもよい。例えば、第1の実施形態と同様に、第1の隠蔽領域(10)の隠蔽面積率を100%、第2aの隠蔽部(12)の隠蔽面積率を100%、第2bの隠蔽部(17)の隠蔽面積率を0%としてもよい。なお、隠蔽層(7)の光透過率(例えば、白インキで形成した隠蔽面積率100%の隠蔽層(7)の光透過率)によって、前述の第1の隠蔽領域(10)、第2aの隠蔽部(12)及び第2bの隠蔽部(17)の隠蔽面積率の適正範囲は異なるため、前述の適正範囲に限定するものではない。
【0105】
第2bの隠蔽部(17)を、第1の隠蔽領域(10)及び第2aの隠蔽部(12)よりも隠蔽面積率を低くすることにより、前述のとおり、透過光下において基材(6)における透過光が視認されることとなるため、第2bの隠蔽部(17)を複数配置することで、第一の潜像画像(4)を形成することとなる。なお、第1の隠蔽領域(10)、第2aの隠蔽部(12)及び第2bの隠蔽部(17)の隠蔽面積率を0%若しくは0%に近似した設定である、すなわち、隠蔽層(7)を略除いた設定とした場合でも、印刷媒体(1)として第2bの隠蔽部(17)の透過性が第1の領域(13)及び第2の領域(14)よりも高ければ、透過光下における第一の潜像画像(4)は視認可能である。しかし、第1の隠蔽領域(10)及び第2aの隠蔽部(12)と第2bの隠蔽部(17)の隠蔽面積率が近似すると、透過光下における第一の潜像画像(4)の視認性が低下するおそれもあるので、第1の隠蔽領域(10)、第2aの隠蔽部(12)及び第2bの隠蔽部(17)の隠蔽面積率を適宜設定する必要がある。
【0106】
隠蔽層(7)をこのような構成とすることで、第2bの隠蔽部(17)が他の隠蔽領域よりも隠蔽面積率が低いため、透過光下では、基材(6)の透過光の強度が他の隠蔽領域よりも大きくなり、画像形成層(8)の第2の領域(14)内において、隠蔽層(7)の第2bの隠蔽部(17)に相当する領域が基材(6)の透過光により、第1の実施形態で説明した第一の潜像画像(4)を形成するための潜像部(15)となる。
【0107】
(第3の実施形態)
次に、本発明の別の形態について説明するが、基材(6)、隠蔽層(7)及び画像形成層(8)の三つの層構成自体は、前述の第1の実施形態及び第2の実施形態と同様であるため、重複するところは省略することとする。
【0108】
第1の実施形態及び第2の実施形態では、反射光(拡散光)下で視認可能な可視画像(3)と透過光下で視認可能な第一の潜像画像(4)を形成するものであったが、本第3の実施形態では、さらに、赤外線光源下において視認可能となる第二の潜像画像(18)を形成するものである。
【0109】
第3の実施形態における印刷媒体(1)は、外観上、
図1と同様である。ただし、形成されている画像については、
図15(a)及び(b)に示すように、第1の実施形態及び第2の実施形態で説明した反射光(拡散光)下で視認可能な可視画像(3)及び透過光下で視認可能な第一の潜像画像(4)と、
図15(c)で示すように、本実施形態で新たに加えられた赤外線光源下で視認可能となる第二の潜像画像(18)の三つである。
【0110】
この第二の潜像画像(18)を形成するには、画像形成層(8)において第1の実施形態及び第2の実施形態とは異なる構成とする必要があるため、以下、画像形成層(8)の構成について説明する。なお、基材(6)及び隠蔽層(7)については、第1の実施形態及び第2の実施形態と同様である。
【0111】
画像形成層(8)における可視画像(3)を示したのが
図16(a)であり、その網点構成の一部拡大図が
図16(b)である。
図16(b)に示すように、基本の網点構成は、前述した第1の実施形態及び第2の実施形態と同様であり、第1の領域(13)を囲むように第2の領域(14)が隙間なく配置されている。ここで、前述の実施形態と異なるところとして、第1の領域(13)内に別の第3の領域(19)が配置されているところである。
【0112】
図16(c1)は、可視画像(3)及び第1の領域(13)の一例を示す図である。第1の領域(13)は、可視光源下における反射光(拡散光)下において視認可能な可視画像(3)を形成する領域である。可視画像(3)を形成するための構成については、既に説明したため省略するが、本実施形態における第二の潜像画像(18)は、赤外線光源下において視認可能となるため、第1の網点部(13a)は、赤外線吸収色素を含まない有色の色材(特に有色インキ)を用いて形成する。第1の網点部(13a)は、赤外線吸収色素を含まない有色の色材によって形成することで、赤外線カメラ等の特殊な鑑定装置を用いて観察した場合においては、可視画像(3)を視認することができない。
【0113】
なお、赤外線吸収色素を含まない有色の色材には、赤外線吸収特性を有さなければ特に限定されず、公知のグラビアインキ、スクリーンインキ及びプロセスインキ等を使用することができる。例えば、基本4色インキのうち、一般的なシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色材は、赤外線を吸収しない性質を持っており、これら3色を重ね合わせた減法混色により黒色系を表現すれば、赤外線を吸収しない色素と同様な効果が得られる。また、赤外透過特性を有する黒色系の色材としてクロモファインブラックインキ(大日精化工業株式会社製)やインクジェットプリンタ用の染料系インク(例えば、Canon製染料系ブラックインク等)を使用することもできる。
【0114】
図16(c2)は、第一の潜像画像(4)及び第2の領域(14)の一例を示す図である。第2の領域(14)は、透過光下において視認可能な第一の潜像画像(4)を形成する領域である。この構成についても前述した第1の実施形態及び第2の実施形態と同様であるため、説明を省略する。なお、本実施形態では、一つの第1の領域(13)を囲む四つの第2の領域(14)について、YMCの三つの色成分のうち、一つの色成分を二つの第2の領域(14)に配置し、残りの二つの第2の領域(14)に、残りの二つの色成分からそれぞれ成る第2の領域(14)を配置した形態とした。
【0115】
図16(c3)は、第二の潜像画像(18)及び第3の領域(19)の一例を示す図である。第3の領域(19)は、
図16(c3)に示した、赤外線光源下において視認可能な第二の潜像画像(18)を形成する領域であり、第3の網点部(19a)及び第2のカムフラージュ部(19b)により構成されている。第二の潜像画像(18)は、第3の領域(19)における第3の網点部(19a)と第2のカムフラージュ部(19b)との面積比率に応じて、複数配置された第3の領域(19)により階調を付与することが可能となる。第3の領域(19)において、第3の網点部(19a)は、赤外線吸収色素を含む有色の色材を用いて形成する。
【0116】
なお、赤外線吸収色素を含む有色の色材には、カーボンブラックを主体としたブラック(Bk)がある。ただし、赤外線吸収特性を有する有色の色材であればこれに限定しない。例えば、赤外領域に吸収を持つ有機色素として、ポリメチレン系、フタロシアニン系、アゾ系及びアントラキノン系等の化合物が挙げられ、無機系の赤外線吸収剤として、アンチモンドープ酸化錫や錫ドープ酸化インジウムが挙げられる。
【0117】
第3の領域(19)において、第2のカムフラージュ部(19b)は、赤外線吸収色素を含まない有色の色材を用いて、第3の網点部(19a)と等色に形成する。前述のとおり、本発明における等色とは、可視光源下の反射光(拡散光)下で観察した際に、肉眼で等しい色に視認される色を指し、具体的には、色差ΔEが6未満の色とする。なお、メタメリズムの関係により、可視光源下の反射光(拡散光)下において観察した際に、肉眼で等しい色に視認された色が、特定の光源下の反射光(拡散光)下において観察した際に、異なる色で視認された場合においても、本発明においては、第2のカムフラージュ部(19b)及び第3の網点部(19a)は等色に形成されていることとする。
【0118】
第3の網点部(19a)を、赤外線吸収色素を含む有色の色材を用いて形成し、第2のカムフラージュ部(19b)を、赤外線吸収色素を含まない有色の色材を用いて、第3の網点部(19a)と等色に形成することで、可視光源下においては、第3の網点部(19a)及び第2のカムフラージュ部(19b)は、等色として視認される。そのため、第3の領域(19)は、均一な平網状態となり、肉眼では、第二の潜像画像(18)を認識することはできないが、赤外線カメラ等の特殊な鑑定装置を用いて観察した場合においては、第二の潜像画像(18)を視認することが可能となる。
【0119】
第3の網点部(19a)及び第2のカムフラージュ部(19b)は、第3の領域(19)内に重畳又は毛抜き合わせにより形成することが可能であるが、本発明においては重畳により形成することが好ましい。毛抜き合わせにより形成した際には、高い刷り合せ精度が要求される。刷り合わせ精度が低い際には、第3の網点部(19a)の周囲に被印刷部が発生する。それにより、可視光源下において、第3の領域(19)は、均一な平網状態とはならず、肉眼で第二の潜像画像(18)が視認可能となるおそれがある。
【0120】
以上の画像形成層(8)の構成を用いた状態で三つの層により透過潜像領域(2)を構成した状態を示した図が
図17(a)であり、
図17(a)におけるY1−Y2断面図が
図17(b)である。
図17(a)のとおり、第3の実施形態の印刷媒体(1)は、
図7を用いて説明した第1の実施形態の構成に、前述の第3の領域(19)が加わった構成となっている。なお、本第3の実施形態は、第3の網点部(19a)を、赤外吸収色素を含む色材で形成するため、隠蔽層(7)については、赤外線吸収色素を含まないことが必要となる。仮に、隠蔽層(7)が赤外線吸収色素を含むような場合、赤外線光源下において、第3の網点部(19a)で形成した第二の潜像画像(18)を視認することができなくなる。
【0121】
さらに、隠蔽材料により形成された隠蔽層(7)は、赤外線領域での透過率が80%以下であることが好ましい。隠蔽層(7)の赤外線領域での透過率が80%以上となった場合には、第3の実施形態により得られた印刷媒体を赤外線光源下において観察した際に、基材(6)を隠蔽する隠蔽層(7)が透過し、第1の領域(13)、第2の領域(14)及び第3の領域(19)は、全て透過した状態として基材(6)が観察される。そのため、基材(6)が赤外線吸収色素を含んでいる場合、濃度が高く(黒っぽく)観察される。したがって、第3の網点部(19a)を、他の領域と識別することができず、その結果、赤外線光下において観察可能な第二の潜像画像(18)を視認することができなくなるため、隠蔽層(7)の赤外線領域での透過率を80%以上とすることは、好ましくない。
【0122】
図18は、本発明に関わる白インキ及びマゼンタインキの分光透過率の一例を示すグラフである。
図18における(a)は、本発明における隠蔽材料の分光透過率であり、測定サンプルとして白インク(東洋インキ製造株式会社製 LIOJET FV03 ホワイト)を用いてインクジェット印刷により無色(透明)のPETフィルムにベタ印刷を施したものを用いた。
図18における(b)は、本発明における隠蔽材料の分光透過率であり、測定サンプルとして白インク(東洋インキ製造株式会社製 LIOJET FV03 ホワイト)を用いてインクジェット印刷によりPETフィルムに、
図18における(a)に示したサンプルに対し印刷濃度を下げて印刷を施したものを用いた。
【0123】
図18における(c)は、本発明における赤外線吸収色素を含まない色材の分光透過率であり、測定サンプルとしてマゼンタインク(東洋インキ製造株式会社製 LIOJET FV03 マゼンタ)を用いて、インクジェット印刷によりPETフィルムにベタ印刷を施したものを用いた。なお、
図18に示した分光透過率は、各測定サンプルの分光透過率から、基材である無色(透明)のPETフィルム単体の分光透過率を除算したものを示しており、分光透過率は、自記分光光度計(HITACHI製 U−4000形)を用いて測定した。
【0124】
760〜800nmの赤外線領域において、分光透過率の変化をそれぞれ比較すると、隠蔽材料(a)における分光透過率は、いずれの領域においても50%程度と略一定である。印刷濃度を下げて印刷した隠蔽材料(b)における分光透過率は、赤外線領域において80%程度とベタ印刷した隠蔽材料(a)と比べると高い値となっている。赤外線吸収色素を含まない赤外線透過材料(c)は、赤外線領域においては、95%程度とベタ印刷した白インク(a)及び印刷濃度を下げて印刷した白インク(b)に比べ、高い値となっている。なお、同一の波長においては、赤外線吸収色素を含まない色材の場合、分光透過率が低い方が、濃度が高く(白っぽく)視認され、反対に分光透過率が高い方が、濃度が低く(透明っぽく)視認される。なお、赤外線カメラを用いて観察した際には、隠蔽材料(a)は白く、印刷濃度を下げて印刷した隠蔽材料(b)は淡い白に、また、赤外線透過材料(c)は、略透明に観察された。
【0125】
第2の領域(14)において、第1のカムフラージュ部(16)は、可視光源下における反射光(拡散光)下において潜像部(15)と等色であり、第1のカムフラージュ部(16)の周囲に赤外線吸収色素を含む有色の色材か、又は含まない有色の色材を用いて形成する。前述のとおり、第1のカムフラージュ部(16)は、隠蔽材料を施さないくり抜き部(9)を介して、基材(6)である光透過性材料(5)を一部露出させることにより形成されている。このため、基材(6)が赤外線吸収色素を含んでいる場合、第1のカムフラージュ部(16)は、赤外線吸収色素を含む有色の色材で形成する必要があり、基材(6)が赤外線吸収色素を含まない場合、第1のカムフラージュ部(16)は、赤外線吸収色素を含まない有色の色材で形成する必要がある。これは、第二の潜像画像(18)を赤外線カメラ等の装置で観察した際に、第二の潜像画像(18)の視認性に影響を及ぼすからである。
【0126】
基材(6)が赤外線吸収色素を含む場合及び含まない場合と、第1のカムフラージュ部(16)を形成する有色の色材が赤外線吸収色素を含む場合及び含まない場合の第二の潜像画像(18)の観察画像の違いについては、後述する。
【0127】
第3の実施形態の網点構成におけるそれぞれの領域の面積(縦×横)は、第1の領域(13)をm×mで形成し、第2の領域(14)をn×nで形成し、第3の領域(19)をk×kで形成したとすると、m>n>0及びm>k>0の範囲内で適宜設定することが可能である。好ましくは、第1の領域(13)をm×m(m≧2、mは整数)、第3の領域(19)をk×k(k≧1、kは整数)、第2の領域(14)をn×n(n≧1、nは整数)で形成し、更に第1の領域(13)の面積が、第2の領域(14)及び第3の領域(19)の面積の和よりも大きい(m
2>n
2+k
2)ことが好ましい。第1の領域(13)の面積が、第2の領域(14)及び第3の領域(19)の面積の和よりも小さい場合には、可視光源下の反射光(拡散光)下で観察した際に、第2の領域(14)及び第3の領域(19)がノイズとなり、可視画像(3)の視認性を低下させ、好ましくない。
【0128】
図19は、本発明に関わる透過性の基材(6)、隠蔽層(7)を形成する隠蔽材料、赤外線吸収色素を含まないインキ及び赤外線吸収色素を含むインキの分光反射率の一例を示すグラフである。
図19における(a)は、本発明における基材(6)の分光反射率であり、測定サンプルとして赤外線吸収色素を含まない0.2mmの厚さを有する無色(透明)のPETフィルムを用いた。
図19における(b)は、本発明における隠蔽層(7)の分光反射率であり、測定サンプルとして、白インク(東洋インキ製造株式会社製 LIOJET FV03 ホワイト)を用いてインクジェット印刷により前述のPETフィルムにベタ印刷を施したものを用いた。
図19における(c)は、本発明における赤外線吸収色素を含まない色材の分光反射率であり、測定サンプルとしてマゼンタインク(東洋インキ製造株式会社製 LIOJET FV03 マゼンタ)を用いてインクジェット印刷によりPETフィルムにベタ印刷を施したものを用いた。
図19における(d)は、本発明における赤外線吸収色素を含む色材の分光反射率であり、測定サンプルとしてブラックインク(東洋インキ製造株式会社製 LIOJET FV03 ブラック)を用いてインクジェット印刷によりPETフィルムにベタ印刷を施したものを用いた。
【0129】
なお、
図19に示した分光反射率は、自記分光光度計(HITACHI製、U−4000形)を用いて測定した。
【0130】
400〜760nmの可視光領域と、760〜800nmの赤外線領域において、分光反射率の変化をそれぞれ比較すると、PETフィルム(a)における分光反射率は、いずれの領域においても95%前後と略一定である。白インク(b)における分光反射率は、可視光領域の短波長を除き、可視光領域及び赤外線領域、いずれの領域においてもPETフィルム(a)と略同じである。また、マゼンタインク(c)における分光反射率は、赤外線領域においては、95%前後と略一定である。ブラックインク(d)における分光反射率は、赤外線領域においては、5%前後と略一定である。なお、同一の波長においては、分光反射率が高い方が、濃度が低く(白っぽく)視認され、反対に分光反射率が低い方が、濃度が高く(黒っぽく)視認される。なお、赤外線カメラを用いて観察した際には、PETフィルム(a)及びマゼンタインク(c)は、白っぽく(略透明)、白インク(b)は白く、ブラックインク(d)は黒く観察された。
【0131】
(第二の潜像画像の視認原理)
図20は、本発明に関わる第3の実施形態の網点構成により形成した印刷媒体(1)の透過潜像領域(2)を、赤外線カメラを介して観察した場合(以下「赤外線光源下」という。)の平面図及び模式図である。
図20を用いて、赤外線光源下における第二の潜像画像(18)の観察原理について説明する。
図20(a)に示すように、赤外線光源下において、赤外線カメラで透過潜像領域(2)を観察した場合、画像形成層(8)の下層となる隠蔽層(7)は、白インキを用いて構成されているため、前述のとおり白く観察される。また、第1の領域(13)は、赤外線吸収色素を含まない有色の色材を用いて構成されているので白く観察される。
【0132】
潜像部(15)は、赤外線吸収色素を含まない有色の色材を用いて形成されている場合、下層である隠蔽層(7)のくり抜き部(9)を介して基材(6)が観察され、基材(6)が赤外線吸収色素を含む場合は若干黒く観察される。同様に、潜像部(15)が、赤外線吸収色素を含む有色の色材を用いて形成されている場合も黒く観察される。そのため、第1のカムフラージュ部(16)は、赤外線光源下において観察した場合に潜像部(15)と同程度の濃度になるようにする必要があり、適宜赤外線吸収色素を含む有色の色材を用いて形成することになる。この場合、赤外線領域において観察した際に、第1のカムフラージュ部(16)は、若干黒く観察される。
【0133】
つまり、潜像部(15)と第1のカムフラージュ部(16)は、赤外線領域において若干黒っぽく観察される。よって、第2の領域(14)は、
図20(a)及び
図20(b)に示すように、一様な濃度を有するベタ領域(20)として観察される。つまり、潜像部(15)で構成された第一の潜像画像(4)は、観察されない。また、第3の網点部(19a)は、赤外線吸収色素を含む有色の色材で形成されており、前述のとおり赤外線領域において黒っぽく観察される。一方、第2のカムフラージュ部(19b)は、赤外線吸収色素を含まない有色の色材で形成されており、前述のとおり赤外線領域において白っぽく観察される。よって、赤外線光源下において印刷媒体(1)を観察した場合、第2の領域(14)で構成された一様な濃度のベタ領域(20)を背景として第3の網点部(19a)で構成された第二の潜像画像(18)を観察することができる。
【0134】
なお、前述のとおり赤外線光源下においては、基材(6)に赤外線吸収色素を含む光透過性材料を用いた場合、ベタ領域(20)も観察可能であるが、本発明における第二の潜像画像(18)は、第3の領域(19)により形成された画像のみをいう。
【0135】
基材(6)が赤外線領域において若干黒く観察される場合や、潜像部(15)が、赤外線吸収色素を含む有色の色材を用いて形成されている場合について、
図20を用いて説明したが、次に、基材(6)に赤外線吸収色素を含まず、赤外線領域において分光反射率が高く(90%以上)、潜像部(15)が、赤外線吸収色素を含まない有色の色材を用いて形成されている場合について、
図21を用いて説明する。
【0136】
図21は、本発明に関わる第3の実施形態の網点構成により形成した印刷媒体(1)の透過潜像領域(2)を、赤外線光源下において観察した場合の平面図及び模式図である。
図21を用いて、赤外線光源下において、第二の潜像画像(18)が観察可能となる原理について説明する。
図21(a)に示すように、赤外線光源下において透過潜像領域(2)を観察した場合、画像形成層(8)の下層となる隠蔽層(7)は、白インキを用いて構成されているため、前述のとおり白く観察される。また、第1の領域(13)は、赤外線吸収色素を含まない有色の色材を用いて構成されているので白く観察される。
【0137】
潜像部(15)は、赤外線吸収色素を含まない有色の色材を用いて形成されており、基材(6)も赤外線吸収色素を含まず、赤外線領域において分光反射率が高い(90%以上)ことから、赤外線領域において白っぽく観察される。これに伴い、第1のカムフラージュ部(16)は、赤外線吸収色素を含まない有色の色材を用いて形成する必要があり、赤外線領域において観察した際に、白っぽく観察される。
【0138】
つまり、潜像部(15)と第1のカムフラージュ部(16)は、赤外線領域において白っぽく観察される。よって、第2の領域(14)は、
図21(a)及び
図21(b)に示すように、ベタ領域(20)は観察されず、一様な白い画像として観察される。つまり、潜像部(15)で構成された第一の潜像画像(4)は、観察されない。また、第3の網点部(19a)は、赤外線吸収色素を含む有色の色材で形成されており、前述のとおり赤外線領域において黒っぽく観察される。一方、第2のカムフラージュ部(19b)は、赤外線吸収色素を含まない有色の色材で形成されており、前述のとおり赤外線領域において白っぽく観察される。よって、赤外線光源下において印刷媒体(1)を観察した場合、第3の網点部(19a)で構成された第二の潜像画像(18)を観察することができる。
【0139】
本発明の画像形成層(8)の第1の領域(13)により形成する可視画像(3)、潜像部(15)により形成する第一の潜像画像(4)及び第3の網点部(19a)により形成する第二の潜像画像(18)は、文字、数字、記号、絵柄及び風景等を適宜設定することが可能であるが、第一の潜像画像(4)については、文字、数字、記号及び絵柄等の場合、ポジ画像で形成することが好ましく、人物や風景等の場合には、ネガ画像で形成することが好ましい。
【0140】
また、前述の説明では、第一の潜像画像(4)の原画像をYMCのそれぞれの色成分に色分解したが、RGBカラーモードのR(レッド)、G(グリーン)及びB(ブルー)の各色成分で色分解し、第2の領域(14)をRGBの3つの色成分で構成し、RGBの各領域をYMCプロセスインキか、又はRGBに相当する特色インキで構成してもよい。同様に第一の潜像画像(4)の原画像を2色で色分解し、2色の特色インキで第2の領域(14)をそれぞれ構成してもよい。
【0141】
基材(6)、隠蔽層(7)及び画像形成層(8)をそれぞれ形成する方法としては、オフセット印刷方式、グラビア印刷方式、スクリーン印刷方式、フレキソ印刷方式、インクジェットプリンタ及びレーザプリンタ等、特に限定されるものではない。
【0142】
以下、本発明における透過潜像画像を有する印刷媒体(1)について、実施例を用いて詳細に説明するが、以下の実施例に限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された技術的な範疇であれば、適宜、変更が可能なことはいうまでもない。
【実施例1】
【0143】
実施例1として、
図1に示すように、左下部に本発明における透過潜像領域(2)を形成したカード型の印刷媒体である証明書(以下「証明書」という。)(1)を作製した。この証明書(1)を可視光源下における反射光(拡散光)下で観察すると、
図2(a)に示した太陽の図柄を視認することができ、証明書(1)を透かして透過光下で観察すると、太陽の図柄の中に、
図2(b)に示した明朝体の「123」の文字をフルカラー画像として視認することができる。
【0144】
本実施例1における証明書(1)の基材(6)は、0.2mmの厚さを有する無色(透明)のPETフィルムを用いた。したがって、本実施例1では、基材全面である、すなわち、基材自体に光透過性材料(5)を用いたこととなる。
【0145】
次に、基材(6)上の透過潜像領域(2)に当たる領域以外を、白インク(東洋インキ製造株式会社製 LIOJET FV03 ホワイト)を用いてベタ刷りし、透過潜像領域(2)は、基材(6)のPETフィルムの透過性を抑えるための第1の隠蔽領域(10)及び前述した実施の形態におけるくり抜き部(9)を除く第2aの隠蔽部(12)を、同じ白インクを用いて隠蔽層(7)を形成した。
【0146】
なお、第1の隠蔽領域(10)とくり抜き部(9)を除いた第2aの隠蔽部(12)は、ともに隠蔽面積率100%(ベタ)で印刷した。また、くり抜き部(9)を含めた第2の隠蔽領域(11)は、この白インクの上に印刷する画像形成層(8)の第2の領域(14)と対応した位置となっている。
【0147】
次に、白インクにより形成した隠蔽層(7)の上に、プロセスインク(東洋インキ製造株式会社製 LIOJET FV03 シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック)を用いて、
図5(b)に示すような網点構成により、
図5(a)の模様となる画像形成層(8)である、すなわち、第1の領域(13)及び第2の領域(14)を形成した。
【0148】
なお、
図5(b)に示した網点構成において、第1の領域(13)の面積は、30×30ピクセルに相当する面積で形成し、第2の領域(14)は、12×12ピクセルに相当する面積で形成した。
【0149】
また、第2の領域(14)は、YMCの三つの色成分から成る有色インキにより形成しており、その配置については、第1の実施形態で説明したように、一つの第1の領域(13)を囲む四つの第2の領域(14)において、一つの色成分については、二つの第2の領域(14)に配置し、残りの二つの第2の領域(14)には、残りの色成分から成る第2の領域(14)をそれぞれ一つずつ配置した。なお、この第2の領域(14)の下層の隠蔽層(7)には、前述のとおり、白インキを印刷していないくり抜き部(9)が配置されているが、反射光下では、この第2の領域(14)の下層にくり抜き部(9)が形成されていることは視認することができない。
【0150】
この隠蔽層(7)のくり抜き部(9)と同じ位置となる上層の画像形成層(8)における第2の領域(14)は、潜像部(15)となって、透過性の基材(6)の透過光の影響を受けて第一の潜像画像(4)を形成するものである。
【0151】
この潜像部(15)によって形成する第一の潜像画像(4)を、反射光(拡散光)下において視認させないために、第2の領域(14)における潜像部(15)以外の領域である第1のカムフラージュ部(16)は、反射光(拡散光)下において潜像部(15)と等色となるように形成した。拡散光領域(例えば、受光角度0°)における、第1のカムフラージュ部(16)と潜像部(15)との色差ΔEは1.14であった。
【0152】
なお、第1の網点部(13a)の形状については、円形ドットで形成した。
【0153】
以上の構成により形成した証明書(1)の印刷領域(2)を、可視光源下における反射光(拡散光)下において肉眼で観察したところ、
図2(a)に示した可視画像(3)を視認することができ、
図2(b)に示した第一の潜像画像(4)は視認することができなかった。
【0154】
また、証明書(1)を透かして透過潜像領域(2)を観察したところ、
図2(b)に示した第一の潜像画像(4)をフルカラー画像として視認することができ、逆に、
図2(a)に示した可視画像(3)を視認することはできなかった。
【実施例2】
【0155】
実施例2として、
図22に示すように、右下部に本発明における透過潜像領域(2´)を形成したカード型の証明書(1´)を作製した。この証明書(1´)を可視光源下における反射光(拡散光)下で観察すると、透過潜像領域(2´)は、
図23(a)に示した「複数のハート型」を視認することができ、証明書(1´)を光源に対して透かして透過光下で視認すると、透過潜像領域(2´)は、
図23(b)に示した「合格」の文字を視認することができ、赤外線光源下において観察した場合には、
図23(c)に示すような「スマイル」の画像を視認することができる。
【0156】
本実施例2における証明書(1´)の基材(6´)は、0.2mmの厚さを有する無色(透明)のPETフィルムを用いた。したがって、本実施例2では、基材全面である、すなわち、基材自体に光透過性材料(5)を用いたこととなる。
【0157】
次に、基材(6´)上の透過潜像領域(2´)に当たる領域以外を、白インク(東洋インキ製造株式会社製 LIOJET FV03 ホワイト)を用いてベタ刷りし、透過潜像領域(2´)は、同じ白インクを用いて、(後述する)基材(6´)のPETフィルムの透過性を抑えるための第1の隠蔽領域(10´)及び第2aの隠蔽部(12´)と、さらには、、第2aの隠蔽部(12´)に隣接する箇所(実施例1におけるくり抜き部(9)に対応する位置)に、基材(6´)の透過性を視認可能な程度の隠蔽面積率となる第2bの隠蔽部(17´)を有するように隠蔽層(7´)を形成した。
【0158】
なお、第1の隠蔽領域(10´)及び第2aの隠蔽部(12´)は、隠蔽面積率100%、第2bの隠蔽部(17´)は、隠蔽面積率10%で印刷した。また、第2aの隠蔽部(12´)及び第2bの隠蔽部(17´)は、この白インクの上に印刷する画像形成層(8´)の潜像部(15´)と対応した位置関係を有している。
【0159】
次に、白インクにより形成した隠蔽層(7´)の上の全面に、プロセスインク(東洋インキ製造株式会社製 LIOJET FV03 シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック)を用いて画像形成層(8´)を形成した。この画像形成層(8´)については、透過潜像領域(2´)以外は、網点による通常の印刷を行い、透過潜像領域(2´)は、第1の領域(13´)内に第3の領域(19´)を配置した第2の実施形態と同じ網点構成とし、第2の領域(14´)は、第1の実施形態及び第1の実施形態の変形例と同じ円形ドットの網点構成とした。
【0160】
なお、少なくとも画像形成層(8´)の透過潜像領域(2´)の網点構成は、第1の領域(13´)を30×30ピクセルに相当する面積、第2の領域(14´)を12×12ピクセルに相当する面積及び第3の領域(19´)を9×9ピクセルに相当する面積で形成した。
【0161】
第1の領域(13´)において、第1の網点部(13a´)は円形ドットであり、プロセスインク(東洋インキ製造株式会社製 LIOJET FV03 シアン、マゼンタ及びイエロー)を用いて印刷した。第1の網点部(13a´)と第1の網点部(13a´)以外の領域との面積比率を変化させ、可視画像(3´)を形成した。
【0162】
第2の領域(14´)は、一つの第1の領域(13´)に対して隣り合うように配置され、その同じ色を有する二つの第2の領域(14´)以外の残りの二つの第2の領域(14´)が、二つの第2の領域(14´)の色とは異なる色で、かつ、同じ色を有して、一つの第1の領域(13´)に対して隣り合うように配置されている構成とした。
【0163】
また、第2の領域(14´)は、第1の実施形態の変形例と同様に、潜像部(15´)と第1のカムフラージュ部(16´)とで異なる2色の有色インキにより形成した。その中の潜像部(15´)は、下層の第2bの隠蔽部(17´)を介して基材(6´)の透過光を視認することができる程度の透過率を有する必要があるため、透過率85%で形成した。
【0164】
潜像部(15´)によって形成する第一の潜像画像(4´)を、反射光(拡散光)下において視認させないために、第2の領域(14´)における潜像部(15´)以外の第1のカムフラージュ部(16´)は、反射光(拡散光)下において潜像部(15´)と等色となるように印刷した。隠蔽層(7´)における第2aの隠蔽部(12´)及び第2bの隠蔽部(17´)の面積比率を変化し、第一の潜像画像(4´)を形成した。反射光(拡散光)下における、潜像部(15´)と第1のカムフラージュ部(16´)との色差ΔEは0.65であった。
【0165】
第3の領域(19´)において第3の網点部(19a´)は、円形ドットであり、ブラックインク(東洋インキ製造株式会社製 LIOJET FV03 ブラック)を用いて印刷した。第2のカムフラージュ部(19b´)は、プロセスインク(東洋インキ製造株式会社製 LIOJET FV03 シアン、マゼンタ、イエロー)を重ね合わせて黒色に印刷した。第3の網点部(19a´)及び第2のカムフラージュ部(19b´)の面積比率を変化し、第二の潜像画像(18´)を形成した。
【0166】
本実施例2の証明書(1´)における透過潜像領域(2´)の構成と、その透過潜像領域(2´)以外の領域の構成を模式的に示したのが
図24である。
図24(a)は、透過潜像領域(2´)以外の領域の構成を示しており、0.2mmの厚さを有する無色(透明)のPETフィルムの基材(6´)上に白インクが印刷され、更にその上に、プロセスインクにより可視画像(3´)を形成するための網点が印刷されている。
【0167】
図24(b)は、透過潜像領域(2´)の構成を示しており、透明の基材(6´)の上に、第1の隠蔽領域(10´)、第2aの隠蔽部(12´)及び第2bの隠蔽部(17´)が白インクにより印刷され、第1の隠蔽領域(10´)の上には、第1の領域(13´)を印刷し、第2aの隠蔽部(12´)及び第2bの隠蔽部(17´)の上には、第2の領域(14´)を印刷し、第1の領域(13´)内に第3の領域(19´)を印刷した。
【0168】
このような層構成及び網点構成の位置関係としたことで、第2の領域(14´)において、第2bの隠蔽部(17´)を介して透過性の基材(6´)の透過光を受けた潜像部(15´)と第1のカムフラージュ部(16´)との色差ΔEが変化して潜像部(15´)により形成された第一の潜像画像(4´)を視認することが可能となる。また、第2bの隠蔽部(17´)以外の領域については、白インクにより基材(6´)の透過性を抑えているため、透過性のない状態で、白インクの上に印刷されているプロセスインクにより可視画像(3´)が形成されていることとなる。
【0169】
実施例2にて作製した証明書(1´)を、可視光源が定位置の可視光源下の反射光(拡散光)下において肉眼で観察したところ、可視画像(3´)の「複数のハート型」を視認することができ、第一の潜像画像(4´)及び第二の潜像画像(18´)は視認することができなかった。次に、実施例2にて作製した証明書(1´)を透かして透過光下において肉眼で観察したところ、第一の潜像画像(4´)の「合格」の文字をフルカラー画像として視認することができた。このとき、可視画像(3´)及び第二の潜像画像(18´)は視認することができなかった。
【0170】
さらに、実施例2にて作製した証明書(1´)を、赤外線光源下において、赤外線カメラ(ワテック株式会社製、CCDカメラWAT−704Rに富士写真フィルム株式会社製、シャープカットフィルターIR−80を装着したもの)を介して観察した。可視画像(3´)及び第一の潜像画像(4´)は、観察することができなかったが、第3の網点部(19a´)で構成された第二の潜像画像(18´)が暗く(黒っぽく)表示され、第二の潜像画像(18´)の「スマイル」を明瞭に視認することができた。